JP5928374B2 - 非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐震性を必要とする建築構造部材用として好適な、非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法に係り、特に、板厚:19mm以上で、円形鋼管柱あるいは角形鋼管柱など、冷間曲げ加工を施される用途に好適なものに関する。
近年、地震時の安全性確保の観点から建築構造物などにおいては、素材として、優れた耐震性を有する鋼板(鋼材)を用いることが要求されている。また、これまでの研究成果で、降伏比の低い鋼板(鋼材)ほど耐震性に優れることが明らかにされている。
このため、建築構造物には、降伏比(YR)が80%以下の低降伏比鋼材を使用することが義務付けられている(新耐震設計法1981年施工)。さらに、最近では、建築構造物の高層化や大スパン化などに伴い、建築構造物に、従来より高い強度を有する550MPa級高張力鋼材を適用する事例が増加している。
従来、低降伏比を有する550MPa級以上の高張力鋼材は、二相域加熱処理や焼戻処理などの熱処理を施して製造されるのが一般的であった。しかし、熱処理を施すことは、工程が複雑となり製造工期が長期化して、製造コストが高騰するという問題を残していた。このため、上記した二相域加熱処理や焼戻処理を省略した非調質低降伏比高張力鋼材の検討が進められてきた。
例えば、特許文献1には、C:0.02〜0.04%、固溶B:0.0002〜0.002%を含有し、合金元素含有量に関係する式CENが0.21〜0.30%の範囲を満足する組成と、ベイナイトを主体とし、島状マルテンサイトを0.8〜2.5体積%分散させた組織からなる590MPa級の非調質型低降伏比高張力鋼板が提案されている。特許文献1に記載された技術では、制御圧延のみで製造するとしている。しかし、特許文献1に記載された技術では、鋼板のC含有量を0.02〜0.04%と低炭素化しており、そのため、所望の高強度を確保するためにさらに合金元素量を多量に含有する必要があり、製造コストの高騰を招くという問題がある。
また、特許文献2には、C:0.045〜0.08%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.6〜2.0%を含み、P、S、Al、Nを調整して含有し、さらにMo及び/又はWを特定の関係式を満足するように含有し、Pcmが0.22%以下となる組成と、板厚中央部の組織が、フェライトを主相とし、20体積%以下の、島状マルテンサイト(MA相)を主とする硬質相を含む複合組織である低降伏比を有する高張力厚鋼板が記載されている。このような組織とすることにより、所望の低降伏比が実現できるとしている。また、このような組織とするために、特許文献2に記載された技術では、上記した組成の鋼素材を、圧延終了温度を表面温度で800〜950℃とする熱間圧延と、0.5〜50℃/sの平均冷却速度で580〜670℃の温度範囲まで加速冷却する冷却処理とを順次施すことが好ましいとしている。しかし、特許文献2に記載された技術では、高価なMo、Wを含有させることを必要とし、製造コストの高騰を招くという問題がある。
特許文献3には、C:0.03〜0.30%、Si:0.05〜0.60%、Mn:0.50〜2.5%、Al:0.005〜0.1%を含む鋼を、加熱し、圧延終了温度を900℃〜Ar3変態点の範囲の温度とし該温度域での累積圧下率を30%未満とする熱間圧延と、熱間圧延後空冷し、表面温度が(Ar3変態点−20℃)〜(Ar3変態点−80℃)の範囲の温度となってから水冷を開始し350〜600℃間で冷却停止する加速冷却を施す、低降伏比非調質鋼の製造方法が記載されている。
特許文献4には、C:0.03〜0.30%、Si:0.05〜0.60%、Mn:0.50〜2.5%、Al:0.005〜0.1%を含む鋼を、加熱し、圧延終了温度を900℃〜Ar3変態点の範囲の温度とし、該温度域での累積圧下率を30%未満とする熱間圧延と、熱間圧延後空冷し、表面温度が(Ar3変態点−20℃)〜(Ar3変態点−80℃)の範囲の温度となってから水冷を開始し250℃以下になるまで加速冷却を施し、その後焼戻し熱処理を行う、低降伏比非調質鋼の製造方法が記載されている。
特許文献5には、C:0.01〜0.20%、Si:0.6%以下、Mn:0.50〜2.2%、Al:0.001〜0.1%、Nb:0.003〜0.030%、Ti:0.005〜0.020%、N:0.006%以下を含む鋼片を、900℃以下の累積圧下量が30%以上で仕上温度がAr3+100℃以下Ar3以上となる熱間圧延を行い、鋼板を(Ar3−20℃)〜(Ar3−100℃)まで空冷し、この温度から水冷を開始し、400〜550℃の範囲で冷却を停止する、低降伏比非調質鋼の製造方法が記載されている。
特許文献3〜5に記載された技術では、合金元素添加量を削減するために、加速冷却を活用して高強度化を図り、高強度と低降伏比を両立させている。これらの技術では、鋼片にAr3変態点以上で圧延を完了する熱間圧延を施した後、加速冷却を開始する前に、オーステナイト+フェライトの二相域温度まで空冷して初析フェライトを生成させることによって低降伏比化を図っている。しかし、これらの技術では、空冷中に生成する初析フェライトと硬質第2相の微細化を図るのが難しく、特に初析フェライト生成量の多い表層部の靱性が低下しやすいという問題があった。また、僅かな冷却開始温度の違いによっても、フェライト生成率が異なってくるため、鋼板ごとの材質ばらつきが大きくなり、安定した鋼板製造が難しいという問題があった。
また、特許文献6には、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Al:0.001〜0.1%、N:0.001〜0.010%を含む鋼片に、加熱し900℃までの範囲で累積圧下率が10〜80%の粗圧延と、粗圧延後、2〜40℃/sの加速冷却を(Ar3変態点+50℃)〜(Ar3変態点−50℃)まで行いオーステナイト(γ)相を過冷し、さらに累積圧下率が30〜90%の仕上圧延を650℃以上で終了し、さらに、5〜40℃/sの加速冷却を250〜450℃まで行う低降伏比高張力鋼材の製造方法が記載されている。
特許文献6に記載された技術では、粗圧延の後に加速冷却を行って、γ相をAr3温度付近まで過冷却したうえで、仕上圧延を行うことにより、過冷されたγ相から微細なフェライト(α)を生成させ、さらに仕上圧延後に加速冷却を行うことで、軟質相であるフェライト(α)の微細化と、軟質相と硬質相の比率を適切に制御して高靭性と低降伏比化を両立させることができるとともに、生産性の向上が可能となるとしている。この技術によれば、高価な合金元素の多量含有や生産性の低い複雑な熱処理を必要とすることなく、低降伏比高張力鋼材が製造できるとしている。
また、特許文献7には、Ac3点以上の温度の鋼片または鋼板を、表層から少なくとも板厚方向に製品時板厚の1mm〜30%の領域(表層部)を2℃/s以上の冷却速度でAr1点以下まで急冷し、該表層部がAr3点以下の温度になってから圧延を開始若しくは再開し、(Ac3−50℃)〜Ac3の範囲で圧延を終了し、その後Ac3点以上に復熱することなく、当該表層部をAr1点まで1℃/s以上で冷却し、さらに(Ac1−100℃)〜Ac1の範囲で3min以上滞留させる表層低降伏強度鋼板の製造方法が記載されている。これにより、鋼板板厚の1mm〜30%までの表裏層部の組織が、板厚内部のフェライト粒径の3倍以上の粒径を有するものとなり、降伏強さが板厚内層の降伏強さより5kg/mm以上低く、表層低降伏強度鋼板となるとしている。
特開2000−219934号公報 特開2007−177325号公報 特開昭63−219523号公報 特開昭63−223123号公報 特開平1−301819号公報 特開平10−306316号公報 特開平6−49596号公報
ところで、建築構造物では、柱−梁接合部や柱−ダイアフラム接合部などが多数存在し、多数のT継手や十字継手が形成されている。このようなT継手部や十字継手部では、地震による揺れで変形が生じた時に、溶接止端部など鋼板表面に大きな歪が集中する。
図1に、地震による引張・圧縮繰り返し変形を受けた場合に、プレスコラム(冷間成形角形鋼管)や円形鋼管を用いた柱1と通しダイアフラム2の接合部(十字継手)が破壊する状況を模式的に示す。接合部が引張・圧縮繰り返し変形を受けると、通常、溶接部3の溶接止端部で延性亀裂が発生し、該延性亀裂が柱1の板厚中央に向かって伝播(進展)して最終破断に至る。なお、符号4は裏当金である。
このため、破断に至るまでの変形量を大きくするには、柱の表層付近の材質、すなわち、鋼板表層部の延性・靭性が優れていることが重要となるが、建築構造物で使用される冷間曲げ加工によって成形された円形鋼管やプレスコラムの場合、冷間曲げ加工によって鋼板表層付近が著しく硬化し、鋼板を無加工のまま使用する場合と比べて、表層付近の延性・靭性が低下した状態となっている。
そのため、冷間成形角形鋼管を柱に用いた設計は「冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル」(建築センター)によって運用され、2009年には「2008年版冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル」(建築センター)に準拠した設計法として、冷間成形角形鋼管を柱に使用する場合の構造規程が告示されている。
しかしながら、最近、建築構造物は安全性の他にデザイン性も重視されるようになったため、上記構造規程を緩和させうる、冷間加工を施された後においても、表層付近の延性・靭性の低下が少ない低降伏比高張力厚鋼板を用いた円形鋼管やプレスコラムが要望されている。
特許文献1〜6に記載された技術は、いずれも、全厚引張試験片または板厚1/4tや1/2t位置での丸棒引張試験片により評価される機械的特性(引張特性、延性、靭性)を所望の特性とすることを目的としてなされた技術であり、板厚1/4tや1/2t位置の丸棒引張試験片による引張特性は鋼板表層付近での特性を示唆するものではないから、その特性も不明である。
また、特許文献1〜6による制御圧延や加速冷却(TMCP技術)による鋼板は例えば図2に示すように、表層の硬さが最も高く、板厚中央の硬さが最も小さくなる板厚方向の硬さ分布を有している。このような板厚方向硬さ分布を有する鋼板に冷間曲げ加工を施すと、表裏面近傍の硬さがさらに増加して、図2の「曲げ加工後」のような硬さ分布となり、板厚中央部と表層部の硬さの差がさらに拡大する。
特許文献7に記載された技術によれば、鋼板の表裏層部を低降伏強さとすることができ、冷間曲げ加工後の鋼板表層部の延性を向上させることができるが、鋼板の表層部のフェライト粒が粗大であるため、靭性が十分であるとはいえず、部材として建築構造物に組み入れられた場合、該部材から脆性破壊を発生させることが懸念される。
そこで、本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、焼入焼戻や焼準等の熱処理を施すことなく、また合金含有量を最小限に抑制したうえで、プレスコラムや円形鋼管を用いた建築構造物部材用として好適な、冷間曲げ加工後においても鋼板表層部の硬さ増加が少なく、鋼板表層部の延性、靭性に優れた、降伏強さ:385MPa以上、引張強さ:550MPa以上、降伏比:75%以下を有する非調質低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、板厚方向に不均一な硬さ分布をある程度許容することを前提とし、方針1.冷間曲げ加工による塑性歪は、鋼板の表裏面で最大、板厚中央付近の中立点ではゼロとなり、冷間曲げによる加工硬化は鋼板表層部で最も顕著となるため、冷間曲げ加工前の板厚方向硬さ分布を制御し、まず、表層部付近の硬さを低下する。方針2.板厚中央部の硬さをそのままにして表層部の硬さを低下すれば、鋼板全厚での強度が低下してしまうので、板厚中央部で一定以上の硬さ(強度)を確保する。以上の方針により、鋭意検討を行い、以下の知見を得た。
1.表層部付近の硬さを低下させ、さらには低降伏比を達成するためには、少なくとも表層部のミクロ組織において、軟質相であるフェライト(好ましくは50面積%以上)を析出させ、硬質相との複相組織とすることが必要で、さらに、表層部におけるフェライトの平均粒径を所望の適正範囲内に調整することにより、表層部の延性・靭性を所望の範囲内とすることができる。
2.下記(1)〜(4)を満足する厚鋼板であれば、冷間曲げ加工後にも建築構造物部材用として必要な変形性能を確保できる。
(1)鋼板の、少なくとも表層部(表面および裏面から板厚方向に1〜5mmの領域)ミクロ組織をフェライトおよび硬質相からなる複相組織とすること。
(2)鋼板表層部の平均硬さが225HV以下を満足すること。
(3)鋼板表層部と板厚中央部の硬度差が60HV以下であること。
(4)鋼板表層部の平均フェライト粒径が4.0〜18.0μmの範囲を満足すること。
ここで、硬質相とはパーライト、ベイナイト、マルテンサイトのうちの1種または2種以上からなる相を意味し、鋼板表層部とは鋼板表裏面から板厚方向に1〜5mmの領域を、また、板厚中央部とは板厚中心±2mmの領域を指す。なお、鋼板表層部の組織、硬さを限定した理由は、溶接構造物の破壊に対しては、鋼板表面または裏面から板厚方向に1〜5mmの領域である表層部の影響が大きいことを見出したことに基づく。
鋼板表面または裏面から板厚方向に1mm未満の領域である最表層を除外したのは、最表層が、圧延や加速冷却などによって極めて複雑な熱履歴を受けるため、最表層部のミクロ組織を制御することは極めて困難な場合が多いためである。
さらに、本発明者らは、冷間加工後の表層部延性・靭性の向上に加えて、大入熱溶接熱影響部の靭性向上に及ぼす各種要因ついて鋭意研究した。その結果、Nb、Moの含有が、大入熱溶接熱影響部の靭性を著しく劣化させることを見出した。Nb、Moは、焼入れ性を向上させる元素であり、島状マルテンサイトを含む、上部ベイナイトの生成に大きく寄与し、大入熱溶接熱影響部の靭性を著しく劣化させる。そこで、大入熱溶接熱影響部の靭性向上のために、本発明では、Nb、Moを添加することなく、さらに不純物としてもNb、Moの含有を厳しく制限することが必要であるという知見を得た。
本発明は、かかる知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で、C:0.05〜0.16%、Si:0.05〜0.45%、Mn:1.2〜1.8%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.005〜0.020%、N:0.0040%以下、4.0≧Ti/N≧2.0、さらに、不純物元素としてNb、Moを、Nb:0.004%以下、Mo:0.04%未満に制限し、さらに下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが、0.35〜0.48を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成と、少なくとも鋼板の表層部において、平均結晶粒径が4.0〜18.0μmフェライトと、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上からなる硬質相からなり、フェライト面積率が45%〜70%のミクロ組織を有し、鋼板の表層部の平均硬さが225HV以下で、該表層部と板厚中央部との硬度差が60HV以下であることを特徴とする、冷間加工後の表層部の延性・靭性に優れる降伏強さ385MPa以上、引張強さ550MPa以上、降伏比75%以下である非調質低降伏比高張力厚鋼板。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 (1)
(ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Cu、Niは各元素の含有量(質量%)で含有しない場合は0とする。)
2.成分組成が、さらに質量%で、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.80%、Cr:0.05〜0.60%、V:0.01〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%の1種または2種以上を含有することを特徴とする1に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
3.成分組成が、更に質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%の1種または2種を含有することを特徴とする1または2に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
4.更に、下記(2)式で定義されるACRが0.2〜0.8であることを特徴とする3に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
ACR=[(Ca+0.29×REM)−{0.18+130×(Ca+0.29×REM)}×O]/(1.25×S) (2)
(ここで、Ca、REM、O、Sは各元素の含有量(質量%))
5.成分組成が1乃至4のいずれか一つに記載の鋼素材を1050〜1200℃に加熱後、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下量が30%以上で、圧延終了温度が表面温度で900℃以下Ar3変態点以上となる熱間圧延を行い、その後、第一段冷却とし表面温度でAr3変態点以上の温度から、板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度2℃/s以上で、表面温度が(Ar3変態点−100℃)以下550℃以上となるまで加速冷却し、冷却停止後復熱させ、第二段冷却として表面温度が(Ar3変態点−20℃)以下600℃以上、かつ、表面温度が極大値をとった時点から、式(3)を満たす時間t1(秒)以上、式(4)を満たす時間t2(秒)以内から、板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度2℃/s以上で、冷却停止後の復熱で表面温度が600℃以下400℃以上になる冷却停止温度まで加速冷却することを特徴とする非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
Figure 0005928374
Figure 0005928374
6.前記第一段冷却は、表面温度でAr3変態点以上の温度から冷却を開始し、板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度2℃/s以上で、冷却停止温度が表面温度で550℃以上となる加速冷却を、複数回繰り返す冷却とし、該複数回の加速冷却において、冷却停止温度が表面温度で(Ar3変態点−100℃)以下550℃以上となる加速冷却を少なくとも1回含むことを特徴とする5に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
7.第二段冷却を、表面温度が(Ar3変態点−20℃)以下600℃以上、かつ、表面温度が極大値をとった時点から、式(3)を満たす時間t1(秒)以上、式(4)を満たす時間t2(秒)以内から、板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度2℃/s以上で、冷却停止後復熱で表面温度が400℃以上となる冷却停止温度まで加速冷却する冷却を、複数回繰り返す冷却とし、前記複数回の加速冷却において、冷却停止後の復熱で表面温度が600℃以下400℃以上になる冷却停止温度まで冷却する加速冷却を最終冷却とすることを特徴とする5または6に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、冷間曲げ加工後においても、鋼板表層部の硬さ増加が少なく、鋼板表層部の延性、靭性に優れ、建築構造物部材用として好適な、降伏強さ:385MPa以上、引張強さ:550MPa以上の高強度と降伏比:75%以下の低降伏比を有する非調質低降伏比高張力厚鋼板を、熱処理を施すことなく、また多量な合金含有を行うことなく、製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明になる非調質低降伏比高張力厚鋼板は、鋼構造物の軽量化や、鋼構造物の耐震性の向上に大きく寄与するという効果もある。
柱−ダイアフラム接合部における破壊状況を説明する模式図。 非調質厚鋼板の板厚方向硬さ分布を説明する模式図。 プレスコラム−ダイアフラム接合部の三点曲げ試験(コラム曲げ試験)方法の概略を説明する模式図。 図3の試験体における溶接部近傍を説明する模式図。 コラム曲げ試験の要領を説明する模式図。 コラム曲げ試験における荷重−変形量ヒステリシス曲線を説明する模式図。 本発明における冷却工程の冷却条件を説明する模式図。
本発明では、成分組成、ミクロ組織、板厚方向の硬さ分布を規定する。
[成分組成]以下の説明において、%は質量%とする。
C:0.05〜0.16%
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保するのに有用な元素である。さらにCは、硬質相の体積率を増加させ、降伏比を低下させる作用を有する。このような効果を得るためには0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.16%を超える含有は、溶接性と靭性を顕著に低下させる。このため、Cは0.05〜0.16%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.06〜0.15%である。
Si:0.05〜0.45%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶し鋼材の強度を増加させる。このような効果を得るためには0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.45%を超える含有は、母材の靱性を低下させるとともに、溶接熱影響部(HAZとも言う)靱性を顕著に低下させる。このため、Siは0.05〜0.45%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.05〜0.35%である。
Mn:1.2〜1.8%
Mnは、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有する元素で安価であり、高価な他の合金元素の含有を最小限に抑えることを目的の一つとする本発明では、所望の高強度(引張強さ550MPa以上)を確保するために、1.2%以上の含有を必要とする。一方、1.8%を超える含有は、母材の靱性およびHAZ靱性を著しく低下させる。このため、Mnは1.2〜1.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.2〜1.6%である。
P:0.020%以下
Pは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であるが、靱性、とくに溶接部の靱性を低下させる元素であり、本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、過度の低減は、精錬コストを高騰させ経済的に不利となるため、0.005%程度以上とすることが好ましい。一方、0.020%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Pは0.020%以下に限定した。なお、好ましくは0.015%以下である。
S:0.005%以下
Sは、鋼中ではMnS等の硫化物系介在物として存在し、母材および溶接部の靱性を劣化させるとともに、鋳片中央偏析部などに多量に偏在して鋳片等における欠陥を発生しやすくする。このような傾向は0.005%を超える含有で顕著となる。このため、Sは0.005%以下に限定した。好ましくは0.003%以下である。なお、過度のS低減は、精錬コストを高騰させ、経済的に不利となるため、Sは0.001%程度以上とすることが望ましい。
Al:0.05%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいては、脱酸剤として、もっとも汎用的に使われる。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、母材の靱性が低下するとともに、溶接時に溶接金属に混入して溶接金属部靱性を低下させる。このため、Alは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.045%である。
N:0.0040%以下
Nは、鋼中に固溶している場合には、冷間加工後に歪時効を起こし靭性を劣化させるため、本発明ではできるだけ低減することが望ましい。0.0040%を超えて含有すると、靭性の劣化が著しくなる。このため、Nは0.0040%以下に限定した。
Ti:0.005〜0.020%
Tiは、Nとの親和力が強い元素であり、凝固時にTiNとして析出し、鋼中の固溶Nを減少させ、冷間加工後のNの歪時効による靭性劣化を低減する作用を有する。また、Tiは、HAZの組織改善を介して、HAZ靭性の向上にも寄与する。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.020%を超えて含有すると、TiN粒子が粗大化し、上記した効果が期待できなくなる。このため、Tiは0.005〜0.020%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.007〜0.015%である。
4.0≧Ti/N≧2.0
本発明では、N含有量(質量%)に見合う量のTiを含有させ、固溶NをTiNとして固定する。このため、Ti含有量(質量%)とN含有量(質量%)との比、Ti/Nが2.0以上を満足するように、Ti含有量(質量%)、N含有量(質量%)を調整する。Ti/Nが2.0未満では、N含有量(質量%)に比べてTi含有量(質量%)が少なすぎ、多くのNが固溶Nとして残存して、HAZ靭性が低下、溶接部からの脆性破壊発生により部材変形性能が低下する場合がある。このため、Ti/Nを2.0以上に限定した。一方、Ti/Nが4.0を超えて大きくなると、TiN粒子が粗大化して、所望の効果を確保できなくなる。このため、Ti/Nを2.0〜4.0の範囲に限定した。なお好ましくは、2.5〜3.5の範囲である。
Nb:0.004%以下、Mo:0.04%未満
Nb、Moは、焼入れ性を向上する元素であり、島状マルテンサイトを含む上部ベイナイトを生成しやすくして、大入熱溶接熱影響部の靭性を低下させる。このため、本発明では、Nb、Moは添加しない。不可避的不純物として含有される場合は、Nb:0.004%以下、Mo:0.04%未満に限定し、製造コストの許す範囲で少なくする。
不可避的不純物として、Nbが0.004%を超えて、または、Moが0.04%を超えて含有すると、大入熱溶接熱影響部の靭性が低下する。なお、Nb:0.004%以下、Mo:0.04%未満を満足させるためには、Nb、Moの含有量が少ない原材料や、溶製炉耐火物等を使用することで肝要である。
Ceq:0.35〜0.48
Ceqが、0.35未満では、所望の母材強度を確保できないうえ、溶接熱影響部の軟化を所望の許容限度内に抑えることができない。一方、Ceqが、0.48を超えて高くなると、溶接性が低下するとともに、母材靭性、HAZ靭性が低下する。このため、Ceqは0.35〜0.48の範囲に限定した。なお、好ましくは0.36〜0.46である。なお、Ceqは次式による。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15(ここで、C、 Mn、Cr、Mo、V、Cu、Niは各元素の含有量(質量%)で含有しない場合は0とする。)
上記した成分が基本成分で残部Feおよび不可避的不純物であるが、さらに、選択元素として、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.80%、Cr:0.05〜0.60%、V:0.01〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有できる。
Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.80%、Cr:0.05〜0.60%、V:0.01〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Vはいずれも、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、選択して含有できる。
Cuは、固溶強化や焼入性向上を介して、鋼板の強度を増加させ、厚鋼板の高強度化に寄与する。このような効果を得るためには、0.05%以上含有することが好ましいが、0.50%を超える含有は、合金コストの増加や熱間脆性による表面性状の劣化を招く.このため、含有する場合には、Cuは0.05〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.10〜0.40%である。
Niは、靱性をほとんど劣化させることなく、鋼板の強度を増加させる元素であり、しかもHAZ靱性への悪影響も小さく、厚鋼板の高強度化に有用な元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上含有することが好ましいが、0.80%を超える多量の含有は、Niが高価な元素であるため、合金コストの増加を招く。このため、含有する場合は、Niは0.05〜0.80%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.10〜0.80%である。
Crは、焼入性向上を介し、母材の強度を増加させる元素であり、厚鋼板の高強度化に有用な元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上含有することが好ましいが、0.60%を超える含有は、合金コストの増加を招く。このため、含有する場合には、Crは0.05〜0.60%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.10〜0.60%である。
Vは、析出強化を介して母材の強度を増加させる元素であり、厚鋼板の高強度化のために有用な元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが好ましいが、0.05%を超える含有は、母材やHAZの靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Vは0.01〜0.05%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.02〜0.04%である。
Bは焼入れ性の向上を介し、鋼の強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るために、0.0003%以上含有することが好ましいが、0.0030%を超える含有は、母材やHAZ靭性を劣化させる。このため、含有する場合には、Bは0.0003%〜0.0030%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0006〜0.0020%である。
Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%の1種または2種
Ca、REMはいずれも、硫化物の形態制御を介して母材の靭性向上および延性向上に寄与する。また、微細な硫化物粒子を鋼中に分散させた場合には、フェライト変態核として作用することによってHAZ靱性の向上にも寄与する。これらの効果を得るためには、Caでは少なくとも0.0005%、REMは少なくとも0.010%を含有することが好ましいが、Ca、REMをいずれも0.0050%を超えて含有すると、過剰な介在物が生成し、逆に靱性が低下する場合がある。このため、含有する場合には、Caは0.0005〜0.0050%、REMは0.0010〜0.0050%の範囲に限定することが好ましい。
なお、Ca、REMを含有する場合には、硫化物の形態制御作用を確保するために、下式で定義される炭素当量ACRが0.2〜0.8を満足するように、調整することが好ましい。
ACRをこの範囲に調整すると、圧延時に鋼中に微細なCaおよび/またはREMの硫酸化物(オキシサルファイド)が分散し、さらに溶接後の冷却時に介在物(Caおよび/またはREMの硫酸化物)表面にMnSが析出する。
このような複合介在物・析出物が粒内フェライトの生成サイトとして機能して、溶接ボンド部付近のミクロ組織が低靭性の上部ベイナイトで占められることを防止し、靭性を向上させる。
ACRが0.2未満ではCa、REM量が不足し、所望の複合介在物・析出物を生成させることができないうえ、母材および溶接熱影響部靭性に有害なMnSが増加する。一方、ACRが0.8を超えると、ほとんどのSはCaおよび/またはREMの介在物中に取り込まれ、介在物表面に析出するMnSが不足し、介在物が粒内フェライト生成サイトとして十分に機能しなくなる。このため、ACRは0.2〜0.8の範囲に限定することが好ましい。
ACR=[(Ca+0.29×REM)−{0.18+130×(Ca+0.29×REM)}×O]/(1.25×S)
(ここで、Ca、REM、O、Sは各元素の含有量(質量%))
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、O:0.005%以下が許容できる。
[ミクロ組織]
本発明では、鋼板の少なくとも表層部(鋼板表面から板厚方向に1mm〜5mmの領域で、以降同じとする)のミクロ組織を平均結晶粒径が4.0〜18.0μmのフェライトと、硬質相としてパーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上からなり、フェライト面積率が45%〜70%の複相組織とする。
降伏比75%以下の低降伏比と降伏強さ385MPa以上、引張強さ550MPa以上の高強度とを兼備させるために、鋼板の最表層(鋼板表面から板厚方向に1mm未満の領域)を除き、軟質相であるフェライトと、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上からなる硬質相からなる複相組織とする。
軟質相であるフェライトと前記硬質相を組み合わせた複相組織とすることにより、優れた延性と所望の高強度、さらに低降伏比とを両立させることができる。フェライト面積率は、YR75%以下を達成するため45%以上とし、また降伏強さ385MPa以上、引張強さ550MPa以上を確保するため70%以下とする。
硬質相は、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトのうちから選ばれた1種または2種以上とする。硬質相の種類とそれらの分率は、所望の強度と靭性、さらには化学成分や板厚によって適宜選択することができる。
フェライトの平均結晶粒径は、靭性および降伏比や伸びに大きく影響する。フェライト粒径が4.0μm未満では、降伏比が急激に上昇し、均一伸びが低下し、塑性変形能が大きく低下する。一方、フェライト粒径が18.0μmを超えて粗大化すると、靱性が低下し、脆性破壊が発生しやすくなるため、4.0〜18.0μmの範囲に限定した。なお、好ましくは7.0〜14.0μmである。平均結晶粒径の求め方は実施例において説明する。
鋼板の表層部が上述したミクロ組織の場合、鋼板表層部の塑性変形能が大きく向上するので、冷間曲げ加工を施した後に、鋼板表層部の靭性・延性の低下が抑制され、地震による変形時に溶接止端部などからの延性亀裂の発生が抑制される。
[板厚方向の硬さ分布]
鋼板の表層部の平均硬さが225HV以下で、該表層部と板厚中央部(板厚中央位置を中心に±2mmの領域で、以降同じとする)との硬度差が60HV以下である板厚方向の硬さ分布とする。
鋼板表層部の硬さが225HVを超えると、冷間曲げ加工を施した後に、鋼板表層部の硬さがさらに増加し、鋼板表層部の靭性・延性が著しく低下し、建築構造物の柱−梁接合部などの部材(T継手、十字継手)で、地震による変形時に溶接止端部など表層部から亀裂を発生しやすくなる。
また、板厚全体で所定の強度を確保するため、板厚方向の硬度差はできるだけ少ないことが望ましい。表層部と板厚中央部との硬度差が60HV超えて大きくなると、地震等による変形時に、溶接接合部の形状によっては、相対的に強度の低い板厚中央部に変形が集中し、早期に破壊が発生する場合がある。このような破壊を防止して必要な部材性能を確保するために、表層部と板厚中央部の硬度差を60HV以下、なお、好ましくは硬度差55HV以下、より好ましくは50HV以下とする。板厚中央部の硬さは175〜200HVとすることが所望の高強度を確保するために好ましい。硬さ試験方法は実施例において説明する。
本発明に係る厚鋼板は、上記組成の鋼素材に、熱間圧延を施し厚鋼板とする圧延工程と、該圧延工程に引続き、一段冷却と一段冷却を停止し、復熱後に行う二段冷却とからなる二段階の加速冷却を行う冷却工程とを備えた製造方法で製造する。
鋼素材の製造方法は、特に限定する必要はなく、常用の溶製方法、鋳造方法がいずれも適用できるが、上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等で溶製し、脱酸処理や脱ガスプロセスを経て、連続鋳造法などで鋼素材(スラブ)とすることが好ましい。
得られた鋼素材(スラブ)は、まず加熱され、熱間圧延されて厚鋼板となる圧延工程を施される。圧延工程では、鋼素材を加熱温度:1050〜1200℃に加熱し、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下量が30%以上で、圧延終了温度が表面温度で900℃以下Ar3変態点以上とする熱間圧延を施し、所定板厚の厚鋼板とする。
加熱温度:1050〜1200℃
加熱温度が1050℃未満では、強度が低下しやすく、一方、1200℃を超えると、組織が粗大化して得られる靱性が低下したり、焼入性が増加しすぎて、表層硬さが増加しやすくなる。このため、鋼素材の加熱温度は1050℃〜1200℃の範囲に限定した。なお、好ましくは1080℃〜1150℃である。
表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下量:30%以上
ミクロ組織を適度に微細化するため、鋼板の表面温度が950℃以下の温度域で制御圧延を行う。該温度域での累積圧下量が30%未満では、組織が粗大化し、また焼入性が増加しすぎて、所望の靭性、表層硬さを確保できなくなる。このため、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下量を30%以上に限定した。なお、好ましくは35%以上である。
圧延終了温度:表面温度で900℃以下Ar3変態点以上
圧延終了温度が表面温度で900℃を超えると、組織が粗大化し、焼入性が増加しすぎて、所望の靭性、表層硬さを確保できなくなる。一方、圧延終了温度が表面温度でAr3変態点未満では、圧延中あるいは圧延直後にフェライトが生成し、粗大化して、表層部の靱性が低下する。このため、圧延終了温度は表面温度で900℃以下Ar3温度以上に限定した。なお、好ましくは880〜780℃である。
なお、Ar3変態点は、下記式を用いて算出した値を用いるものとする。
Ar3変態点(℃)=900−332C+6Si−77Mn−20Cu−50Ni−18Cr−68Mo
(式において、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo:各元素の含有量(質量%)で、上記式で記載された元素が含有されない場合には、当該元素を0として計算するものとする。)
圧延後、加速冷却する冷却工程を施す。冷却工程は、第一段冷却と、冷却を停止し復熱させる過程と、第二段冷却とからなる。第一段冷却で、表層部を過冷却したのち復熱させ、第二段冷却の開始までの時間(冷却停止時間)を利用して、表層部のフェライト変態を進行させて所望の表層ミクロ組織を得る。第二段冷却は、第一段冷却後に、未変態である部分をパーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の硬質相とするために行う。未変態部分を硬質相とすることにより、最終組織を(フェライト+(パーライト,ベイナイトおよび/またはマルテンサイト))とすることができ、所望の高強度、低降伏比を実現できる。
[第一段冷却]
第一段冷却は、表面温度でAr3変態点以上の温度から冷却を開始し、板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度で2℃/s以上の冷却速度で加速冷却し、表面温度が(Ar3変態点−100℃)以下550℃以上、好ましくはかつ表面と板厚中央位置との温度差が150℃以上、となる時点で、加速冷却を停止する。
第一段冷却の開始温度:表面温度でAr3変態点以上
第一段冷却の開始温度が、Ar3変態点未満では、加速冷却開始前にフェライトが生成し、粗大化するため、表層部のフェライト粒の微細化が達成できなくなる。このため、第一段冷却の開始温度をAr3変態点以上に限定した。
第一段冷却の冷却速度:板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度で2℃/s以上
冷却速度が2℃/s未満では、冷却が遅く、冷却中に粗く靭性の低いフェライト粒が生成する場合がある。このため、第一段冷却の冷却速度を、板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度で2℃/s以上に限定した。なお、第一段冷却の冷却速度の上限はとくに限定する必要はなく、板厚、冷却装置の能力によってほぼ決定され、板厚:60mmでは概ね5℃/s程度以上となる。「板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度」とは、板厚(t)の1/4位置における加速冷却開始から終了までの平均の冷却速度をいう。
第一段冷却の冷却停止温度:表面温度で(Ar3変態点−100℃)以下550℃以上
本発明における第一段冷却では、表層部とそれより内部との温度差が大きくなるように冷却し、第一段冷却停止後の復熱と、復熱後、第二段冷却を開始するまでの時間(以降、保持時間と呼ぶ)に、表層部にフェライトを生成させる。
冷却停止温度が、表面温度で(Ar3変態点−100℃)を超えると、その後の復熱温度が高すぎて、表層部におけるフェライト生成が不十分となる。一方、冷却停止温度が550℃未満では、表層部の温度が低温となりすぎて、復熱後の冷却中に相変態がほぼ完了し、表層部がベイナイトやマルテンサイトなどの硬質相主体の組織となる。このため、第一段冷却の冷却停止温度は表面温度で(Ar3変態点−100℃)以下550℃以上とする。第一段冷却の冷却停止温度は、好ましくは650〜550℃である。
[復熱および第二段冷却]
第一段冷却を停止したのち、フェライトを生成させるために復熱後、第二段冷却を開始する。復熱は、復熱後に鋼板表面温度が(Ar3変態点−20℃)以下600℃以上となり、且つ所定の保持時間を満足するまで行う。
鋼板表面温度が600℃未満では、表層部において強度および降伏比が比較的高い針状フェライトやベイナイトが生成するので、表層部の伸びの低下や降伏比の上昇などが生じ、変形能の低下を招く。一方、表面温度で(Ar3変態点−20℃)を超えると、復熱後に相変態が進行せず、表層部におけるフェライト生成が不十分となるため、(Ar3変態点−20℃)以下600℃以上となるまで保持する。
保持時間(復熱後、鋼板の表面温度が極大値をとった時点から、第二段冷却の開始までの時間)は下記(3)式を満たす時間t1(秒)以上、下記(4)式を満たす時間t2(秒)以内とする。
Figure 0005928374
Figure 0005928374
保持時間がt1(秒)未満であると、鋼板表層部に析出するフェライトが50%未満になり、鋼板の表層軟化、およびYR≦80%を達成できなくなる。また、保持時間がt2(秒)を超えると、鋼板の表層部に析出するフェライトが70%を超えてしまい、鋼板が軟化し、TS強度が550MPa未満となるため保持時間はt1(秒)以上t2(秒)以内とする。
このように、復熱を行うと、第二段冷却開始時点で表面と板厚中央の温度差が60℃以下となり、第二段冷却終了時点で、表層部のフェライト面積分率として45〜70%が得られ、且つ表面と板厚中央の板厚方向のフェライト生成量の差を小さくし、表層部と板厚中央部との硬度差を60HV以下とすることができる。
第二段冷却は、板厚(t)の1/4位置で2℃/s以上の平均冷却速度で、該第二段冷却を停止した後の復熱で表面温度が600℃以下400℃以上になる冷却停止温度まで加速冷却する。
第二段冷却の冷却速度:板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度で2℃/s以上
未変態部分を硬質相とするために、第二段冷却では、2℃/s以上、好ましくは8℃/s以上で冷却する。冷却速度が2℃/s未満では、硬質相への変態量が低下し、所望の高強度、低降伏比を実現できなくなる。
第二段冷却の冷却停止温度:冷却を停止した後の復熱で表面温度が600℃以下400℃以上になる温度
第二段冷却の冷却停止温度が、第二段冷却の冷却停止後の復熱で表面温度が600℃超えとなる温度では、硬質相への変態量が低下したり、自己焼戻しによって強度が低下し、所望の高強度を確保できなくなる。一方、復熱で表面温度が400℃未満となるような冷却停止温度では、硬質相硬さが高くなりすぎて靱性が低下する。このため、第二段冷却の冷却停止温度は、冷却を停止した後の復熱で表面温度が600℃以下400℃以上になる温度に限定した。復熱後の温度は、加速冷却停止時の板厚(t)の1/2位置の温度に依存するので各種伝熱計算から予測することができる。
第二段冷却後、強度および靭性の調整を目的として、焼戻工程を施してもよい。焼戻しは、400℃以上700℃以下の温度で行うことが好ましい。焼戻温度が400℃未満では、所望の効果を期待できない。一方、700℃を超える温度では、強度低下が著しくなる。
本発明では、第一段冷却と第二段冷却の両方、またはいずれかのみを、1回の加速冷却からなる冷却に代えて、冷却停止とその後の復熱とを挟んで、複数回繰り返す冷却としてもよい。
加速冷却を複数回に分割することにより、表層と内部との温度差を、過度に大きくすることなく、目的の温度まで冷却することが可能となる。また、複数回繰り返す中で所期の冷却効果を得ればよいことから、冷却温度制御の選択肢が拡大でき、冷却温度制御の精度を向上させることができる。図7にこのような冷却を行った場合の鋼板温度の履歴の一例を模式的に示す。なお図において保持時間は上述した復熱の保持時間を示す。
第一段冷却を複数回の冷却によるものとする場合、最初の加速冷却(第1回冷却)の開始温度は一回の場合と同様の理由により表面温度でAr3変態点以上とする。
加速冷却の冷却速度は第一段冷却における最初の冷却と最後の冷却までの板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度とし、一回の場合と同様の理由により2℃/s以上とする。
板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度は、板厚(t)の1/4位置における加速冷却開始から終了までの平均の冷却速度で図7のA点からB点までの平均の冷却速度とする。A点は、板厚1/4t位置における温度が表面の冷却開始温度に等しくなった時点であり、B点は、第一段冷却における最後の加速冷却を停止した時点である。
第一段冷却における複数回の加速冷却において、冷却停止温度が表層部で550℃未満となると、冷却中に、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じて、表層部が硬質化するため、すべての加速冷却の冷却停止温度を550℃以上とする。
第一段冷却は、表層部と内部との温度差がある程度生じるように冷却し、冷却停止後の復熱、及び保持時間の間に、表層部にフェライトを生成させることを目的とするので、複数回の加速冷却の全てが、冷却停止温度が表面温度で(Ar3変態点−100℃)を超えると、その後の復熱時に、鋼板温度が高くなりすぎて、表層部でのフェライト生成が不十分となる。このため、複数回の加速冷却のうち、少なくとも1回の冷却停止温度を(Ar3変態点−100℃)以下とする。
第二段冷却の冷却を、冷却停止とその後の復熱とを挟んで、複数回繰り返す冷却とする場合、最初の加速冷却(第1回冷却)は一回の場合と同様に復熱後の温度と時間を満足させた後に開始する。
第二段冷却を構成する複数回の加速冷却の冷却速度は第一段冷却における最初の冷却と最後の冷却までの板厚1/4t位置の平均冷却速度とし、一回の場合と同様の理由により2℃/s以上とする。
板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度は、板厚(t)の1/4位置における加速冷却開始から終了までの平均の冷却速度で図7のC点からD点までの平均の冷却速度とする。C点は、板厚(t)の1/4位置における温度が表面の冷却開始温度に等しくなった時点であり、D点は、第二段冷却における最後の加速冷却を停止した時点である。
第二段冷却の最終冷却は、一回の場合と同様の理由により、冷却停止後の復熱で表面温度が600℃以下400℃以上になるような冷却停止温度まで冷却する。
所望する冷却温度制御の精度に応じて、第一段冷却と第二段冷却の両方、またはいずれかのみを複数回繰り返す冷却とする。以下、実施例を用いて更に本発明を詳細に説明する。
表1に示す組成を有する鋼素材に、表2に示す圧延工程、冷却工程を施し、板厚:40mmの厚鋼板とした。冷却工程では、第一段冷却の冷却停止−復熱後、第二段冷却を施した。各工程における、鋼板温度は、赤外線放射温度計で表面温度を測定し、板厚1/4t位置の温度、板厚中央温度を種々の伝熱計算法を用いて算出した。
得られた厚鋼板について、組織観察、硬さ試験、引張試験、衝撃試験を実施した。試験方法は次の通りとした。
(1)組織観察
板厚全厚の組織観察用試験片のL方向断面を研磨、ナイタール腐食後、表層部と板厚中央部を光学顕微鏡(倍率:400倍)または走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)を用いて、ミクロ組織を各3視野以上観察し、撮像して画像解析により、組織の種類、およびフェライトの組織分率(面積率%)を求めた。
また、表層部については、フェライトの平均結晶粒径(公称粒径という場合がある)を求めた。フェライトの公称粒径は、結晶粒の平均面積を求め、得られた結晶粒の平均面積の平方根とした。
(2)硬さ試験
板厚全厚の硬さ測定用試験片を採取し、ビッカース硬さ計を用いて、JIS Z 2244の規定に準拠して、板厚方向断面について、硬さ測定を行った。測定位置は、表層部、および板厚中央部とし、各領域で板厚方向に1mmピッチで、4点以上測定した。試験荷重(試験力)は1kg(9.8kN)とした。得られた硬さHVを算術平均し、その領域での平均硬さHVとした。
(3)引張試験
引張方向がL方向となるように、JIS Z 2201の規定に準拠して、JIS5号全厚引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を求めた。また、得られた測定値から、降伏比YR(=YS/TS×100%)を算出した。
(4)衝撃試験
板厚(t)の1/4位置および表面下1mm(試験片中央位置が表面下6mm)位置から、JIS Z 2242に準拠して、Vノッチ衝撃試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。なお、vTrsが、−40℃以下である場合を靭性に優れるとした。
(5)コラム曲げ試験
得られた厚鋼板を用いて、冷間プレス加工により、角形鋼管(プレスコラム)を作製した。角形鋼管(プレスコラム)の断面寸法は、500×500(mm)、長さは3250(mm)とし、シーム(継目)溶接は両面各1層のサブマージアーク溶接とした。
図3にコラム曲げ試験の試験体6を示す。4面BOX柱3aの左右にSN490鋼板製通しダイアフラム(板厚40mm)2a、2aを介して角形鋼管(プレスコラム)1a、1aと取り付けた。各部材間の溶接は炭酸ガス溶接とした。
4面BOX柱の強度と剛性をプレスコラムに比べて十分高くすることにより、試験中にプレスコラム以外で塑性変形が生じないようにした。図4に試験体6におけるプレスコラム1a、ダイアフラム2a、4面BOX柱3aの溶接部近傍を拡大して示す。図において4a、5aは溶接部を示す。図示した試験体6を用いて、以下の要領でコラム曲げ試験を行った。
試験体6の両端部を支持し、図5に示すように、試験体6の中央部に上下方向に正負の荷重を繰り返し負荷する、3点繰り返し曲げ試験(コラム曲げ試験)を実施した。荷重Pと変形量(回転角)θを測定し、図6に示すような荷重(モーメント、M)−変形量(回転角、θ)ヒステリシス曲線を作成した。
局部座屈または脆性破壊によって荷重(モーメント)が最大値から5%低下した時点を試験体の破壊とみなし、それまでの試験体の塑性回転角の合計(累積塑性回転角Σθpl)を求め、試験体の塑性変形能の指標として累積塑性変形倍率ηを求め、30以上である場合、構造部材の耐震性(塑性変形性能)に優れるとした。なお、ηは下式より算出される。
η=Σθpl/θp
但し、θp=(Pp/2)L/(3・E・I)+Pp/2/(G・Aw)
ここで、Pp:全塑性時荷重(N)=Mp/L、
L:コラムの片持ち長さ(ダイアフラムからコラム端支持点までの距離、3250mm)
E:ヤング率205000(MPa)、G:剪断剛性率79000(MPa)、
Mp:コラムの全塑性モーメントで下式による。
Figure 0005928374
I:コラムの断面2次モーメント、σy:鋼材の降伏強度(MPa)
ここでIは下式による。
Figure 0005928374
D:コラム径(mm)、t:コラム板厚(mm)、
r:コラム角部内面の曲げ半径、R=r+t
Aw:剪断面積(mm)で下式による。
Figure 0005928374
表3に(1)から(5)の試験結果を示す。本発明例(厚鋼板No.2、4、5、10、11、15、16、17)はいずれも、降伏強さYS:385MPa以上、引張強さTS:550MPa以上、降伏比YR:75%以下を有し、さらに表層部および板厚方向1/4t位置でのvTrsが−40℃以下を満足する、高強度、高靭性の非調質低降伏比高張力厚鋼板である。
さらに、本発明例はいずれも、表層部の平均硬さが225HV以下で、表層部と板厚中央部との硬度差が60HV以下となる板厚方向硬さ分布を有し、冷間曲げを施しプレスコラムに加工し、プレスコラム−ダイアフラム接合部構造部材を構成した場合、プレスコラム−ダイアフラム接合部の3点曲げ試験における累積塑性変形倍率が30以上であり、耐震性能(塑性変形性能)に優れた、構造部材とすることができる。
一方、成分組成および/またはミクロ組織が本発明の範囲外となる比較例(厚鋼板No.1、3、6〜9、12〜14、18〜24)は、強度、降伏比、靭性が不足しているか、冷間加工後の表層部の延性、靭性が低下し、構造部材としての累積塑性変形倍率ηが低くなっている。
Figure 0005928374
Figure 0005928374
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表1に示す鋼No.A〜No.Eの組成を有する鋼素材を用いて、冷却工程のうち、第一段冷却を、冷却停止とその後の復熱を1回以上繰り返す加速冷却とし、第二段冷却を、冷却停止とその後の復熱を1回以上繰り返す加速冷却として、板厚:40mmの厚鋼板を製造した。得られた厚鋼板について、実施例1と同様の条件で、組織観察、硬さ試験、引張試験、衝撃試験およびコラム曲げ試験を実施した。
表4に製造条件を、表5に試験結果を示す。本発明例(厚鋼板No.A1〜A5、A8)はいずれも、降伏強さYS:385MPa以上、引張強さTS:550MPa以上、降伏比YR:75%以下を有し、さらに表層部および板厚方向1/4t位置でのvTrsが−40℃以下を満足する、高強度、高靭性の非調質低降伏比高張力厚鋼板である。
本発明例はいずれも、表層部の平均硬さが225HV以下で、表層部と板厚中央部との硬度差が60HV以下となる板厚方向硬さ分布を有し、冷間曲げでプレスコラムに加工し、プレスコラム−ダイアフラム接合部構造部材を構成した場合、プレスコラム−ダイアフラム接合部の3点曲げ試験における累積塑性変形倍率が30以上の、耐震性能(塑性変形性能)に優れた、構造部材とすることができる。一方、本発明の範囲を外れる比較例(厚鋼板No.A6、A7)は、所望の引張強度または降伏強度、所望の降伏比が確保できていないか、所望の板厚方向硬さ分布が確保できておらず構造部材としての累積塑性変形倍率ηが低くなっている。
Figure 0005928374
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1 柱
2 通しダイアフラム
3 溶接部
4 裏当て金
1a プレスコラム
2a ダイアフラム(通しダイアフラム)
3a 4面BOX柱
4a、5a 溶接部
6 試験体

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.16%、Si:0.05〜0.45%、Mn:1.2〜1.8%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、Al:0.05%以下、Ti:0.005〜0.020%、N:0.0040%以下、4.0≧Ti/N≧2.0、さらに、不純物元素としてNb、Moを、Nb:0.004%以下、Mo:0.04%未満に制限し、さらに下記(1)式で定義されるCeqが、0.35〜0.48を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成と、少なくとも鋼板の表面および裏面から板厚方向に1〜5mmの領域である表層部において、平均結晶粒径が4.0〜18.0μmのフェライトと、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上からなる硬質相からなり、フェライト面積率が45%〜70%のミクロ組織を有し、鋼板の表層部の平均硬さが225HV以下で、該表層部と板厚中央部との硬度差が60HV以下であることを特徴とする、冷間加工後の表層部の延性・靭性に優れる降伏強さ385MPa以上、引張強さ550MPa以上、降伏比75%以下である非調質低降伏比高張力厚鋼板。
    Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 (1)
    (ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Cu、Niは各元素の含有量(質量%)で含有しない場合は0とする。)
  2. 成分組成が、さらに質量%で、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.80%、Cr:0.05〜0.60%、V:0.01〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
  3. 成分組成が、更に質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0010〜0.0050%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
  4. 更に、下記(2)式で定義されるACRが0.2〜0.8であることを特徴とする請求項3に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板。
    ACR=[(Ca+0.29×REM)−{0.18+130×(Ca+0.29×REM)}×O]/(1.25×S) (2)
    (ここで、Ca、REM、O、Sは各元素の含有量(質量%)で含有しない場合は0とする。)
  5. 成分組成が請求項1乃至4のいずれか一つに記載の鋼素材を1050〜1200℃に加熱後、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下量が30%以上で、圧延終了温度が表面温度で900℃以下Ar3変態点以上となる熱間圧延を行い、その後、第一段冷却として表面温度でAr3変態点以上の温度から、板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度2℃/s以上で、表面温度が(Ar3変態点−100℃)以下550℃以上となるまで加速冷却し、冷却停止後復熱させ、第二段冷却として表面温度が(Ar3変態点−20℃)以下600℃以上、かつ、表面温度が極大値をとった時点から、下記(3)式を満たす時間t1(秒)以上、下記(4)式を満たす時間t2(秒)以内から、板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度2℃/s以上で、冷却停止後の復熱で表面温度が600℃以下400℃以上になる冷却停止温度まで加速冷却することを特徴とする、少なくとも鋼板の表面および裏面から板厚方向に1〜5mmの領域である表層部において、平均結晶粒径が4.0〜18.0μmのフェライトと、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上からなる硬質相からなり、フェライト面積率が45%〜70%のミクロ組織を有し、鋼板の表層部の平均硬さが225HV以下で、該表層部と板厚中央部との硬度差が60HV以下であり、降伏強さ385MPa以上、引張強さ550MPa以上、降伏比75%以下である非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
    Figure 0005928374
    Figure 0005928374
  6. 前記第一段冷却は、表面温度でAr3変態点以上の温度から冷却を開始し、板厚(t)の1/4位置の平均冷却速度2℃/s以上で、冷却停止温度が表面温度で550℃以上となる加速冷却を、複数回繰り返す冷却とし、該複数回の加速冷却において、冷却停止温度が表面温度で(Ar3変態点−100℃)以下550℃以上となる加速冷却を少なくとも1回含むことを特徴とする請求項5に記載の非調質低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
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