JP5908800B2 - ムライト前駆体ゾル及びムライトの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加熱により二酸化ケイ素が生成する二酸化ケイ素前駆体ゾルを原料とするムライト前駆体ゾルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるムライト前駆体ゾルを原料とするムライトの製造方法に関するものである。
ムライトは、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複酸化物(3Al・2SiO)であり、耐熱性が高く熱膨張率が低いことから耐熱衝撃性に優れており、また、高温下での機械的強度の低下が小さいことから、高温構造材料として使用されている。
ムライトの合成方法としては、二酸化ケイ素の粉末と酸化アルミニウムの粉末を混合し、加熱する方法(固相法)が一般的である。しかしながら、この方法では、ムライトの単一相を得るためには、1400℃〜1600℃という高温で加熱する必要がある。そのため、従前から、ムライトをより低温で合成できる手段が望まれていた。
セラミックス材料をより低温で合成することを意図した場合、想到される一般的な手段は原料粉末をより微粉化することであるが、出発原料をゾルとすれば、粉末原料の固相反応によって目的物質を合成させる場合に比べて、合成温度を低下させることができると期待される。
加えて、ムライトは、エネルギー輻射による遮熱を目的として、基材の表面に種類の異なる材料相を複数積層する新規技術の開発において、複数の材料相をボンディングする相の候補に挙げられている。そのため、この点からも、コーティングによりムライトの薄層を形成できるムライト前駆体ゾルが要請されている。
従来、金属酸化物の前駆体ゾルを製造する方法としては、有機溶媒に溶解させた金属アルコキシドを加水分解させるという方法が一般的である。しかしながら、近年では、産業界に対して揮発性有機化合物(VOC)の排出を低減することが要請されており、ゾルの分散媒は水系であることが望ましい。
一方、本発明者らは、既に、α−酸化アルミニウムが低温で生成するα−酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法を提案している(この技術に関する特許出願は出願公開前であるため、公知文献に該当しない)。このα−酸化アルミニウム前駆体ゾルは、有機溶媒を使用せずに得られる水系ゾルであるため、VOC排出の低減に対する社会的な要請に沿うものであり、環境に与える負荷が低減されている。
それ以前の酸化アルミニウム前駆体ゾルとしては、Yoldasによって提案されたベーマイトゾルが公知である(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。これは、アルミニウムプロポキシド、アルミニウム−sec−ブトキシド、アルミニウムメトキシド等のアルミニウムアルコキシドを、過剰量の水に加熱下で添加して加水分解した後、塩酸、硝酸等の酸を添加し加熱下で解膠することにより得たゾルである。そのため、解膠のために添加する酸としての塩酸や硝酸に由来して、酸化アルミニウムを合成する加熱処理において、窒素や塩素を含む有害なガスが発生するという問題があった。これに対して、本発明者らの提案による上記α−酸化アルミニウム前駆体ゾルは、α−酸化アルミニウムを生成させる加熱処理において、塩素、窒素、硫黄等の元素を含有する有害なガスが発生するおそれがなく、環境に与える負荷が更に低減されているという利点がある。
従って、環境に与える負荷を低減して、加熱により二酸化ケイ素を製造できる二酸化ケイ素前駆体ゾルを得ることができれば、この二酸化ケイ素前駆体ゾルを、発明者らの提案による上記α−酸化アルミニウム前駆体ゾルと共に用いることにより、環境に与える負荷を低減して、ムライトを低温で製造できるムライト前駆体ゾルを得ることができると期待される。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、環境に与える負荷を低減して、加熱により二酸化ケイ素を製造できる二酸化ケイ素前駆体ゾルを原料とするムライト前駆体ゾルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるムライト前駆体ゾルを原料とし、低温でムライトを合成できるムライトの製造方法の提供を、課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明に使用する二酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法は、「テトラエトキシシランを、カルボン酸または水酸化テトラアルキルアンモニウム、及び、水と混合し撹拌する」ものである。
「カルボン酸」としては、酢酸、ギ酸、乳酸、シュウ酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸を例示することができる。また、「水酸化テトラアルキルアンモニウム」としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムを例示することができる。
本製造方法によれば、後述するように、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸テトラエチル)に、カルボン酸または水酸化テトラアルキルアンモニウムを添加し、水と混合し撹拌するのみの極めて簡易な方法で、二酸化ケイ素の前駆体であるゾルを製造することができる。本製造方法では有機溶媒を積極的に使用していないため、得られるゾルは分散媒が水系であると言える。そのため、VOC排出の低減に対する社会的な要請に沿うものであり、環境に与える負荷が低減されている。
また、本製造方法により得られるゾルは、ケイ素、炭素、水素、及び酸素の元素のみからなる。従って、加熱処理において、塩素、窒素、硫黄等の元素を含有する有害なガスが発生するおそれがなく、環境に与える負荷が更に低減されている。
酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法は、上記構成において、「テトラエトキシシランに対するカルボン酸の割合は、ケイ素1モルに対しカルボキシル基2モル以下の割合である」ものとすることができる。
ケイ素は4価の原子であるため、テトラエトキシシランとカルボン酸を反応させようとする場合、カルボン酸の割合はケイ素1モルに対してカルボキシル基が4モルとなる割合とする、或いは、より確実に反応させるために、ケイ素1モルに対するカルボキシル基の割合を4モル以上とするのが、当業者の通常の考え方である。このような当業者の常識に反して、本発明では、後述するように、ケイ素1モルに対してカルボキシル基が2モル以下の割合であっても、安定なゾルを製造できることが確認された。これにより、二酸化ケイ素を合成する加熱処理の際に、カルボキシル基に由来して発生する二酸化炭素が低減され、環境に与える負荷をより低減することができる。
なお、「ケイ素1モルに対するカルボキシル基の割合が2モル」とは、カルボン酸がモノカルボン酸である場合はケイ素1モルに対しカルボン酸が2モル、カルボン酸がジカルボン酸である場合はケイ素1モルに対しカルボン酸が1モル、カルボン酸がトリカルボン酸である場合はケイ素1モルに対しカルボン酸が2/3モル、となる割合である。
酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法は、上記構成において、「テトラエトキシシランに対する水酸化テトラアルキルアンモニウムの割合は、ケイ素1モルに対しヒドロキシル基2モル以下の割合である」ものとすることができる。
水酸化テトラアルキルアンモニウムは1価の塩基であるから、テトラエトキシシランと水酸化テトラアルキルアンモニウムを反応させようとする場合、水酸化テトラアルキルアンモニウムの割合はケイ素1モルに対してヒドロキシル基が4モルとなる割合とする、或いは、より確実に反応させるために、ケイ素1モルに対するヒドロキシル基の割合を4モル以上とするのが、当業者の通常の考え方である。このような当業者の常識に反して、本発明では、後述するように、ケイ素1モルに対してヒドロキシル基が2モル以下の割合であっても、安定なゾルを製造できることが確認された。これにより、二酸化ケイ素を合成する加熱処理の際に、ヒドロキシル基に由来して発生する二酸化炭素が低減され、環境に与える負荷をより低減することができる。
本発明にかかるムライト前駆体ゾルの製造方法は、「上記に記載の二酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法により製造された二酸化ケイ素前駆体ゾルを、非晶質の水酸化アルミニウムをカルボン酸と混合し撹拌することにより製造されたα−酸化アルミニウム前駆体ゾルと、混合し撹拌する」ものである。
「非晶質の水酸化アルミニウム」とは、結晶が極めて微小で秩序ある構造を取っておらず、図9に例示するように、X線回折パターンにピークが表れない水酸化アルミニウムを指している。ここで、図9のX線回折パターンは、下記の条件で測定したものである。
X線回折パターンの測定条件
粉末X線回折装置:リガク製、RINT−Ultima III/PC
管球:CuKα線(モノクロ付き)
出力:電圧40kV,電流40mA
ステップ幅:0.02°(回折角度10°〜70°)
計測速度:2°/min
なお、結晶構造を有する水酸化アルミニウムをカルボン酸と混合し撹拌しても、α−酸化アルミニウムゾルは得られない。その理由は明らかではないが、結晶が極めて微小で秩序ある構造をとり得ない不安定な状態が、ゾルの生成に有利に作用しているものと考察している。
本製造方法によれば、非晶質の水酸化アルミニウムをカルボン酸と混合し撹拌するのみの極めて簡易な方法で製造されたα−酸化アルミニウム前駆体ゾルを、上述のように極めて簡易な方法で製造された二酸化ケイ素前駆体ゾルと混合し撹拌するのみの極めて簡易な方法で、ムライト前駆体ゾルを製造することができる。
また、複酸化物であるムライトの生成源である二酸化ケイ素前駆体及びα−酸化アルミニウム前駆体が、共にゾルであるため、二酸化ケイ素の粉末と酸化アルミニウムの粉末とを混合し加熱する従来法に比べて、低い温度でムライトを合成することができる。具体的には、後述のように、1000℃という低い温度でムライトの結晶化が始まり、1200℃でムライトの単一相となることが確認された。
また、本製造方法で得られるムライト前駆体ゾルは、有機溶媒を使用せずに製造したα−酸化アルミニウム前駆体ゾルを、有機溶媒を積極的に使用せずに製造した二酸化ケイ素前駆体ゾルと混合・撹拌して得られた水系ゾルであるため、VOC排出の低減に対する社会的な要請に沿うものであり、環境に与える負荷が低減されている。
また、本製造方法で用いるα−酸化アルミニウム前駆体ゾルは、アルミニウム、炭素、水素、及び酸素の元素のみからなる。これにより、ケイ素、炭素、水素、及び酸素の元素のみからなる上記の二酸化ケイ素前駆体ゾルと混合・撹拌して得られるムライト前駆体ゾルは、加熱処理の際に、塩素、窒素、硫黄等を含有する有害なガスが発生するおそれがなく、環境に与える負荷を低減してムライトを合成することができる。
本発明にかかるムライトの製造方法は、「上記に記載のムライト前駆体ゾルの製造方法により製造されたムライト前駆体ゾルを、酸化雰囲気下で、少なくとも1000℃で加熱する」ものである。
本製造方法によれば、環境に与える負荷を低減して、従来法より低温で、簡易に、ムライトを製造することができる。なお、上述したように、少なくとも1200℃で加熱することにより、単一相のムライトを製造することができるが、この1200℃という温度であっても、従来法に比べて有意に低い温度である。
上記の製造方法により製造される二酸化ケイ素前駆体ゾルは、「ケイ素イオン1モルに対し2モル以下の酢酸イオン、ギ酸イオン、または、乳酸イオンを含有する」ものである。
本構成の二酸化ケイ素前駆体ゾルは、上述の二酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法において、カルボン酸としてギ酸、酢酸または乳酸を使用し、ケイ素に対するカルボキシル基の割合を2モル以下とした場合に製造されるゾルであり、従来にない新規なゾルである。
以上のように、本発明の効果として、環境に与える負荷を低減して、加熱により二酸化ケイ素を製造できる二酸化ケイ素前駆体ゾルを原料とするムライト前駆体ゾルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるムライト前駆体ゾルを原料とし、低温でムライトを合成できるムライトの製造方法を、提供することができる。
酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法、これを原料とする本発明の一実施形態であるムライト前駆体ゾル及びムライトの製造方法の工程図である。 図1の製造方法で製造された二酸化ケイ素前駆体ゾルを所定温度で加熱した試料のX線回折パターンを示す図である。 図1の製造方法に使用するα−酸化アルミニウム前駆体ゾルを所定温度で加熱した試料のX線回折パターンを示す図である。 図1の製造方法で製造されたムライト前駆体ゾルを所定温度で加熱した試料のX線回折パターンを示す図である。 図1の製造方法で製造されたムライト前駆体ゾルの示差熱重量分析の結果を示す図である。 図1の製造方法で製造されたムライト前駆体ゾルにエチレングリコールを添加し、1000℃で加熱した試料のX線回折パターンを示す図である。 図1の製造方法で製造されたムライト前駆体ゾルにエチレングリコールを添加し、1100℃で加熱した試料のX線回折パターンを示す図である。 アルミニウム水酸化物の水における溶解平衡を濃度及びpHとの関係で示した図である。 非晶質の水酸化アルミニウムのX線回折パターンを示す図である。
以下、二酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法、該製造方法により製造される二酸化ケイ素前駆体ゾル、該二酸化ケイ素前駆体ゾルを原料とする本発明の一実施形態であるムライト前駆体ゾルの製造方法、及び、該製造方法により製造されるムライト前駆体ゾルを原料とするムライトの製造方法について、図1乃至図8を用いて説明する。
本実施形態の二酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法は、図1に示すように、テトラエトキシシランを、カルボン酸または水酸化テトラアルキルアンモニウム、及び、水と混合し撹拌する工程P11を備えている。この製造方法において、カルボン酸を使用する場合、テトラエトキシシランに対するカルボン酸の割合は、ケイ素1モルに対しカルボキシル基2モル以下の割合とすることができる。また、水酸化テトラアルキルアンモニウムを使用する場合、テトラエトキシシランに対する水酸化テトラアルキルアンモニウムの割合は、ケイ素1モルに対しヒドロキシル基2モル以下の割合とすることができる。
一方、本実施形態のムライトの製造方法は、同じく図1に示すように、上記の製造方法により製造された二酸化ケイ素前駆体ゾルを、α−酸化アルミニウム前駆体ゾルと、ケイ素とアルミニウムのモル比が1:3となる割合で混合し撹拌してゾル混合物とする工程P31と、ゾル混合物を酸化雰囲気下で、少なくとも1000℃の温度で加熱する工程P32とを具備している。ここで、ゾル混合物が、ムライト前駆体ゾルに相当する。なお、加熱の工程P32の前に、ゾル混合物を乾燥させる工程、仮焼する工程を行っても良い。
上記のムライトの製造方法に使用するα−酸化アルミニウム前駆体ゾルは、非晶質の水酸化アルミニウムをカルボン酸と混合し撹拌する工程P21により、製造することができる。この製造方法において、水酸化アルミニウムは、非晶質であれば粉末として市販されているものも使用可能であるが、アルミニウム塩から生成させた水酸化アルミニウムの沈殿物を、乾燥させることなく使用することもできる。乾燥させていないゲル状の水酸化アルミニウムは、非常に不安定な状態にあるため、カルボン酸との混合・撹拌によりα−酸化アルミニウム前駆体ゾルを生成させる原料とする非晶質の水酸化アルミニウムとして、適している。
非晶質の水酸化アルミニウムをアルミニウム塩から生成させる場合、α−酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法は、アルミニウム塩の水溶液のpHを4〜11として水酸化アルミニウムの沈殿物を生成させる工程と、生成した水酸化アルミニウムの沈殿物を溶媒と分離する工程と、分離された水酸化アルミニウムを乾燥させることなくカルボン酸と混合し撹拌する工程を備えている。なお、図8に、アルミニウム水酸化物の水における溶解平衡を水溶液の濃度及びpHとの関係で示すように、水溶液のpHが4〜11であれば、水溶液の濃度に殆ど影響されず水酸化アルミニウムが沈殿する。ここで、図8は、下記の文献に掲載された溶解度積のデータに基づいて作成した図である。
G.Charlot著、曽根興三・田中元治訳、「定性化学分析II 溶液中の化学反応 改訂版」共立出版、1974年、p.291
非晶質の水酸化アルミニウムを生成する上記方法において、アルミニウム塩としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩を使用することができる。
なお、上記方法において、水酸化アルミニウムの沈殿物を溶媒と分離する工程の後に、沈殿物を水洗する工程を設けても良い。これにより、沈殿物に付着する溶媒から、アルミニウム塩に由来する陰イオンや、アルミニウム塩の水溶液のpHを調整するために使用した添加剤に由来するイオンを、ほぼ完全に除くことができる。例えば、アルミニウム塩としてアルミニウムの塩化物、硝酸塩、硫酸塩を使用する場合は、沈殿物に僅かに付着している溶媒から、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオンを水洗によって取り除くことができるため、後の加熱処理において塩素、窒素、硫黄を含有する有害なガスが僅かながら発生するおそれを回避することができる。一方、アルミニウム塩として、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩を使用する場合など、加熱により有害なガスを発生する元素をアルミニウム塩が有していない場合は、分離された水酸化アルミニウムを水洗することなく、非晶質の水酸化アルミニウムとして使用することも可能である。なお、水洗の工程を行うことにより、より高純度のα−酸化アルミニウムを得ることができるが、要請される純度に応じて、水洗工程の有無を選択することができる。
<二酸化ケイ素前駆体ゾルの製造>
テトラエトキシシラン(関東化学製,99.9%)0.01モルに、カルボン酸または水酸化テトラアルキルアンモニウムを添加し、水を加えて混合し、全量が10mlの試料S1−0.5〜試料S4−2を調製した。具体的には、試料S1−0.5,試料S1−1,試料S1−2は何れもカルボン酸として酢酸(ナカライテスク製,99.7%)を使用し、ケイ素1モルに対するカルボキシル基の割合をそれぞれ0.5モル、1モル、2モルとした。また、試料S2−0.5,試料S2−1,試料S2−2は何れもカルボン酸としてギ酸(ナカライテスク製,98.0%)を使用し、ケイ素1モルに対するカルボキシル基の割合をそれぞれ0.5モル、1モル、2モルとした。更に、試料S3−0.5,試料S3−1,試料S3−2は何れもカルボン酸として乳酸(関東化学製,85.0%)を使用し、ケイ素1モルに対するカルボキシル基の割合をそれぞれ0.5モル、1モル、2モルとした。
一方、試料S4−0.5,S4−1,S4−2は何れも水酸化テトラアルキルアンモニウムとして水酸化テトラメチルアンモニウム(シグマアルドリッチ製,25質量%)を使用し、ケイ素1モルに対するヒドロキシル基の割合をそれぞれ0.5モル、1モル、2モルとした。対照例として、テトラエトキシシラン0.01モルに、水のみを添加して混合し、全量を10mlとした試料Rを調製した。
試料S1−0.5〜試料S4−2、及び、試料Rを24時間撹拌し、撹拌による変化を肉眼で観察した。撹拌には、振とう器(東京理科器製,マルチシェーカーMMS−3010にBASE−L50を装着)を使用し、振とう速度260rpmで行った。その結果を表1にまとめて示す。なお、対照例の試料Rは、テトラエトキシシランに水を添加し混合した際に白色沈殿が生じ、24時間の撹拌によって白色沈殿に変化は見られなかった。
Figure 0005908800
表1では、24時間の撹拌によって無色透明なゾルが得られた試料を「◎」、白色沈殿が僅かに残るが上澄みが透明であった試料、または、全体が白濁しているが撹拌を開始した当初より白濁の度合いが明らかに減じている試料を「○」、沈殿物に変化がない場合を「×」で表示している。表1に示すように、試料S1−2,試料S4−0.5,試料S4−1は、24時間の撹拌により無色透明の液となり、テトラエトキシシランのほぼ全量からゾルが生成したと考えられる。すなわち、これらの試料では、次のようなゾルが生成していると考えられる。
試料S1−2のゾル:ケイ素イオン1モルに対し2モルの酢酸イオンを含有する二酸化ケイ素前駆体ゾル
試料S4−0.5のゾル:ケイ素イオン1モルに対し0.5モルの水酸化物イオンを含有する二酸化ケイ素前駆体ゾル
試料S4−1のゾル:ケイ素イオン1モルに対し1モルの水酸化物イオンを含有する二酸化ケイ素前駆体ゾル
上記のゾルは、何れも加熱処理により二酸化ケイ素を生成する二酸化ケイ素前駆体ゾルであることが、X線回折パターンの測定により確認された。例として、試料S1−2のX線回折パターンを、図2に示す。なお、X線回折パターンは、ゾルの乾燥物を1000℃〜1400℃の所定温度まで昇温速度5℃/minで昇温し、空気雰囲気で2時間加熱した後、下記の条件で測定した。なお、ゾルの乾燥は、乾燥機を使用し150℃で12時間行った。
X線回折パターンの測定条件
粉末X線回折装置:リガク製、Ultima IV
管球:CuKα線
出力:電圧40kV,電流30mA
ステップ幅:0.02°(回折角度20°〜60°)
計測速度:2°/min
図2に示すように、JCPDSに記載された二酸化ケイ素(クリストバライト)の格子定数と対比すると、1200℃の加熱処理によりクリストバライトのピークが認められ、1400℃の加熱処理により、結晶性の高いクリストバライトの単一相となっている。
このように、24時間の撹拌により無色透明のゾルが得られた試料は、短時間の撹拌操作で、且つ、高い効率で二酸化ケイ素前駆体ゾルが得られるため、実用性が高く好適であると考えられた。また、24時間の撹拌後の評価(観察結果)が「○」であった試料は、部分的に二酸化ケイ素前駆体ゾルが生成していると考えられ、ゾルの生成量は、原液の濃度や撹拌時間により調整できると予想された。
<ムライトの製造方法(1) α−酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造>
非晶質の水酸化アルミニウムに、水及びカルボン酸を添加して混合・撹拌し、試料A1−1.5〜試料A2−3を調製した。具体的には、試料A1−1.5,A1−2,A1−3は何れもカルボン酸としてギ酸を使用し、アルミニウム1モルに対するカルボキシル基の割合をそれぞれ1.5モル、2モル、3モルとした。また、試料A2−1,A2−1.5,A2−2,A2−3は何れもカルボン酸として酢酸を使用し、アルミニウム1モルに対するカルボキシル基の割合をそれぞれ1モル、1.5モル、2モル、3モルとした。なお、水の添加量は、何れの試料についても質量比で水酸化アルミニウムの6倍とした。各試料を48時間撹拌し、撹拌による変化を肉眼で観察した。撹拌には、上記の振とう器を使用し、振とう速度260rpmで行った。その結果を表2に示す。
Figure 0005908800
表2における評価の表示は、表1における評価の表示と同じである。表2に示すように、カルボン酸がギ酸の場合はアルミニウム1モルに対するカルボキシル基の割合が2モル以上で、カルボン酸が酢酸の場合はアルミニウム1モルに対するカルボキシル基の割合が1.5モル以上で、ゾルが得られた。また、カルボン酸がギ酸の場合も酢酸の場合も、アルミニウム1モルに対するカルボキシル基の割合が大きくなるほど、短時間の撹拌で液の透明度が増加した。得られたゾルは、下記のゾルであると考えられた。
試料A1−2のゾル:アルミニウムイオン1モルに対し2モルのギ酸イオンを含有するα−酸化アルミニウム前駆体ゾル
試料A1−3のゾル:アルミニウムイオン1モルに対し3モルのギ酸イオンを含有するα−酸化アルミニウム前駆体ゾル
試料A2−1.5のゾル:アルミニウムイオン1モルに対し1.5モルの酢酸イオンを含有するα−酸化アルミニウム前駆体ゾル
試料A2−2のゾル:アルミニウムイオン1モルに対し2モルの酢酸イオンを含有するα−酸化アルミニウム前駆体ゾル
試料A2−3のゾル:アルミニウムイオン1モルに対し3モルの酢酸イオンを含有するα−酸化アルミニウム前駆体ゾル
なお、無色透明となった試料A1−3,A2−1.5,A2−2,A2−3は、水酸化アルミニウムのほぼ全量からゾルが生成したと考えられ、短時間の撹拌操作で、且つ、高い効率でα−酸化アルミニウム前駆体が得られるため、実用性が高く好適であると考えられた。
試料A1−2,A2−1.5,A2−2のゾルのように、本実施例で使用するα−酸化アルミニウム前駆体ゾルは、アルミニウムが3価の原子であるにも関わらず、非晶質の酸化アルミニウムに対するカルボン酸の割合を、アルミニウム1モルに対しカルボキシル基3モル未満となる割合として製造し得るところにも特徴がある。
なお、図示しない示差熱重量分析の結果、及び、有機元素分析の結果から、試料A1−3のゾルの乾燥物の化学式は、次のようであると考えている。
Al(HCOOH)OH 〜 Al(HCOOH)(OH)
試料A1−3のゾルは、アルミニウム1モルに対するカルボキシル基の割合を3モルとして製造したものであるが、単純なAl(HCOOH)という構成ではない点が注目される。ここで、有機元素分析には、有機微量元素分析装置(ヤナコ分析工業製,CHNコーダーMT−6)を使用した。
上記のようにして得られたゾルは、X線回折パターンの測定により、何れも加熱処理により、約950℃という低温でα−酸化アルミニウムを生成することが確認されている。例として、試料A1−3について計測されたX線回折パターンを、図3に示す。なお、X線回折パターンは、ゾルの乾燥物を350℃〜1100℃の所定温度で2時間加熱した後、下記の条件で測定した。なお、ゾルの乾燥は、乾燥機を使用し150℃で12時間行った。
X線回折パターンの測定条件
粉末X線回折装置:リガク製、RINT−Ultima III/PC
管球:CuKα線(モノクロ付き)
出力:電圧40kV,電流40mA
ステップ幅:0.02°(回折角度10°〜70°)
計測速度:2°/min
図3に示すように、JCPDSに記載されたα−酸化アルミニウム及びγ−酸化アルミニウムの格子定数と対比すると、800℃の加熱処理によりγ−酸化アルミニウムのピーク(図示、一点鎖線の楕円内)が認められ、950℃の加熱処理でα−酸化アルミニウムのピークが認められる。そして、1000℃の加熱処理ではγ−酸化アルミニウムのピークはほぼ消失し、α−酸化アルミニウムの単一相となる。このように、上記のα−酸化アルミニウム前駆体ゾルからは、950℃という低温でα−酸化アルミニウムが生成する。
<ムライトの製造方法 (2)ムライトの合成>
上記の二酸化ケイ素前駆体ゾルと上記のα−酸化アルミニウム前駆体ゾルとを、ケイ素とアルミニウムのモル比が1:3となる割合、すなわち、ムライトの化学量論比となる割合で混合・撹拌し、ゾル混合物とした。具体的には、二酸化ケイ素前駆体ゾルとして、無色透明のゾルが生成した試料S1−2,S4−0.5,S4−1のゾルを使用し、それぞれ試料A1−3のα−酸化アルミニウム前駆体ゾルと混合した試料を、それぞれ試料M1,M2,M3とした。各試料のゾル混合物を24時間撹拌し、撹拌による変化を肉眼で観察した。撹拌には、上記の振とう器を使用し、振とう速度260rpmで行った。
その結果、テトラエトキシシランと酢酸とを、ケイ素1モルに対するカルボキシ基の割合を2モルとして反応させて得た試料S1−2の二酸化ケイ素前駆体ゾルを、α−酸化アルミニウム前駆体ゾルと混合した試料M1のゾル混合物は、無色透明であった。一方、試料M2,M3のゾル混合物は、白濁していた。このことから、試料M1のゾル混合物は、ムライトを効率良く合成できる実用的な前駆体ゾルとして好適であると考えられた。
次に、試料M1のゾル混合物を100℃で24時間乾燥させた後、乾燥物を900℃〜1300℃の所定温度まで昇温速度5℃/minで昇温し、空気雰囲気で2時間加熱した。各温度で加熱した試料についてX線回折パターンを測定した結果を、図4に示す。なお、X線回折パターンの測定条件は、以下のようである。
X線回折パターンの測定条件
粉末X線回折装置:リガク製、Ultima IV
管球:CuKα線
出力:電圧40kV,電流30mA
ステップ幅:0.02°(回折角度15°〜65°)
計測速度:2°/min
図4から明らかなように、1000℃以上の加熱で、JCPDSに記載された値と同位置に回折ピークが認められ、少なくとも1000℃の加熱でムライトが結晶化していることが確認された。また、この時点では、中間生成物(Al−Siスピネル)と考えられるピークが認められるが(図示、一点鎖線の楕円内)、少なくとも1200℃の加熱で、中間生成物のピークが消失し、ムライトの単一相となることが確認された。この1200℃という温度は、固相反応によってムライトを合成する従来の方法に比べると、有意に低温である。
また、試料M1のゾル混合物について行った示差熱重量分析の結果を、図5に示す。ここで、示差熱重量分析は、示差熱重量同時測定装置(SII製,EXSTAR TG/DTA6300)を使用し、昇温速度5℃/min、流速200ml/minの空気雰囲気下で行った。図5から明らかなように、300℃付近に大きな重量減少及び発熱ピークが測定され、この温度でゾルの乾燥物が熱分解して有機物が燃焼していると考えられた。また、600℃より高温では重量がほぼ一定となっており、約600℃という低温でムライトの組成となっていると考えられた。また、約1000℃に認められる発熱ピーク(図示、矢印)は、上記のX線回折パターンの測定結果と考え合わせると、ムライトの結晶化によるものと考えられた。
上記のゾル混合物(ムライト前駆体ゾル)に、エチレングリコールを添加した試料M1−e1〜M1−e4を用いて、ムライト前駆体ゾルのムライト化を検討した結果を次に示す。試料M1−e1,M1−e2,M1−e3,M1−e4は、試料M1のゾル混合物(ムライト換算で、濃度約0.81モル/リットル)に対し、エチレングリコール(関東化学製,純度99.5%)を、体積比でそれぞれ1倍、2倍、3倍、及び4倍添加し、撹拌・混合して調製した。
各試料を150℃で24時間乾燥させた後、乾燥物を温度1000℃または1100℃まで昇温速度5℃/minで昇温し、空気雰囲気で2時間加熱した。1000℃で加熱した試料についてX線回折パターンを測定した結果を図6に、1100℃で加熱した試料についてX線回折パターンを測定した結果を図7に示す。また、図6及び図7では、エチレングリコールを添加していない試料M1のX線回折パターンを、あわせて示している。なお、X線回折パターンの測定条件は、何れも以下のようである。
X線回折パターンの測定条件
粉末X線回折装置:リガク製、Ultima IV
管球:CuKα線
出力:電圧40kV,電流30mA
ステップ幅:0.02°(回折角度15°〜65°)
計測速度:2°/min
図6及び図7から、エチレングリコールを添加した何れの試料においても、エチレングリコールを添加していない試料M1に比べて、明らかにムライトのピークがシャープであり、ムライトの結晶性が高くなっている(結晶化したムライトの割合が高い)ことが分かる。そして、同一の加熱温度でも、エチレングリコールの添加量が多い試料ほど、ムライトのピークはよりシャープであり、エチレングリコールの添加によってムライトの結晶化が促進されていると考えられた。
また、加熱温度が1000℃の場合は全試料で、加熱温度が1100℃の場合は試料M1,M1−e1,M1−e2,M1−e3で、中間生成物(Al−Siスピネル)と考えられるピークが認められるが(図示、一点鎖線の楕円内)、1100℃で加熱した試料M1−e4はムライトの単一相であった。上述のように、エチレングリコールを添加していない試料M1では、加熱温度が1150℃の段階でまだ中間性生物のピークが確認されており、ムライトの単一相となったのは加熱温度が1200℃の場合であった。これと対比すると、試料M1−e4では少なくとも100℃低い加熱温度でムライトの単一相となっており、エチレングリコールの添加によって、より低温でムライトを合成することができると考えられた。
また、このようにエチレングリコールを添加しても、加熱処理において塩素、窒素、硫黄等を含有する有害なガスは発生しないため、環境に与える負荷を低減してムライトを合成することができる。
なお、エチレングリコールの添加によって、ムライトの結晶性が高くなり、ムライトの合成温度を低温化できる理由は検討中である。しかしながら、ムライト源としてSiとOが存在する二酸化ケイ素前駆体ゾルと、ムライト源としてAlとOが存在するα−酸化アルミニウム前駆体ゾルとの混合物からムライトが生成するためには、Oを介したSiとAlとの結合(Si−O−Al)が形成されなければならない。そのため、エチレングリコールの添加によって、ゾル混合物の混合状態が均質化されることによりSiとAlが接近し、上記の結合が形成されやすくなっているものと考えることができる。
以上のように、上記実施例の二酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法によれば、テトラエトキシシランをカルボン酸または水酸化テトラアルキルアンモニウム及び水と混合し撹拌するのみの極めて簡易な方法で、二酸化ケイ素の前駆体であるゾルを製造することができる。
また、二酸化ケイ素前駆体ゾルの製造のために有機溶媒を使用していないことに加え、このゾルはケイ素、炭素、水素、及び酸素の元素のみからなり、加熱の際に有害なガスが発生しない。従って、環境に与える負荷を低減して、二酸化ケイ素を製造することができる。
加えて、上記実施例の二酸化ケイ素前駆体ゾルの製造方法によれば、ケイ素イオン1モルに対する酢酸イオンの割合が2モル以下である無色透明の二酸化ケイ素前駆体ゾル、或いは、ケイ素イオン1モルに対する水酸化物イオンの割合が2モル以下である無色透明の二酸化ケイ素前駆体ゾルを製造することができる。これにより、加熱の際に発生する二酸化炭素が低減され、環境に与える負荷をより低減して、二酸化ケイ素を合成することができる。
更に、上記実施例のムライトの製造方法によれば、二酸化ケイ素前駆体及びα−酸化アルミニウム前駆体として、共にゾルを使用しているため、二酸化ケイ素の粉末及び酸化アルミニウムの粉末を混合し1400℃〜1600℃以上で加熱する従来の固相法に比べて、低い温度である1000℃でムライトを合成することができ、1200℃の加熱で単一相のムライトを得ることができる。
加えて、二酸化ケイ素前駆体ゾル及びα−酸化アルミニウム前駆体ゾルの混合物に、エチレングリコールを添加することにより、ムライトの結晶性が高まり、より低温の加熱で単一相のムライトを得ることができる。
また、上記実施例のムライトの製造方法において使用するα−酸化アルミニウム前駆体ゾルは、その製造のために有機溶媒を使用していないことに加え、加熱の際に有害なガスが発生しない。従って、そのようなα−酸化アルミニウム前駆体ゾルと上記の二酸化ケイ素前駆体ゾルとを組み合わせることにより、環境に与える負荷を低減してムライトを合成することができる。
更に、上記実施例のムライトの製造方法において使用するα−酸化アルミニウム前駆体ゾルについては、アルミニウム1モルに対してカルボキシル基が3モルに満たない割合のカルボン酸(ギ酸、酢酸)の添加で、ほぼ全量の水酸化アルミニウムから無色透明のゾルが得られる。従って、そのようなα−酸化アルミニウム前駆体ゾルと上記の二酸化ケイ素前駆体ゾルとを組み合わせる本実施例のムライトの製造方法によれば、ムライトを生成させる加熱処理の際に発生する二酸化炭素を低減させることが可能であり、環境に与える負荷をより低減することができる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
なお、上記の二酸化ケイ素前駆体ゾルを単独で加熱処理することにより、二酸化ケイ素を生成させることができ、或いは、二酸化ケイ素前駆体ゾルとα−酸化アルミニウム前駆体ゾルとのゾル混合物を加熱処理することにより、ムライトを合成することができるが、これに限定されず、二酸化ケイ素前駆体ゾルを他の金属酸化物の前駆体と混合して加熱処理を行うことにより、アルミニウム以外の金属とケイ素との複酸化物を生成させることも可能である。
また、二酸化ケイ素前駆体ゾルは、二酸化ケイ素の粉末やバルク体を製造するための前駆体として使用できる他、二酸化ケイ素のコーティング膜を形成するコーティング剤として有用であると期待される。また、上記のムライト前駆体ゾルは、ムライトの粉末やバルク体を製造するための前駆体として使用できる他、ムライトのコーティング膜を形成するコーティング剤として有用であると期待される。
P11 テトラエトキシシランを、カルボン酸または水酸化テトラアルキルアンモニウム、及び水と混合し撹拌する工程
P21 非晶質の水酸化アルミニウムをカルボン酸及び水と混合し撹拌する工程
P31 二酸化ケイ素前駆体ゾルをα−酸化アルミニウム前駆体ゾルと混合し撹拌する工程
P32 ムライト前駆体ゾルを加熱する工程
米国特許第3944658号明細書
B.E.Yoldas,"Alumina Sol Preparation from Alkoxides",Ceramic Bulletin,1975,Vol.54(3),p.289−290

Claims (4)

  1. テトラエトキシシランを、カルボン酸または水酸化テトラアルキルアンモニウム、及び、水と混合し撹拌することにより製造された二酸化ケイ素前駆体ゾルを、
    非晶質の水酸化アルミニウムをカルボン酸と混合し撹拌することにより製造されたα−酸化アルミニウム前駆体ゾルと、混合し撹拌する
    ことを特徴とするムライト前駆体ゾルの製造方法。
  2. テトラエトキシシランに対するカルボン酸の割合は、ケイ素1モルに対しカルボキシル基2モル以下の割合である
    ことを特徴とする請求項1に記載のムライト前駆体ゾルの製造方法。
  3. テトラエトキシシランに対する水酸化テトラアルキルアンモニウムの割合は、ケイ素1モルに対しヒドロキシル基2モル以下の割合である
    ことを特徴とする請求項1に記載のムライト前駆体ゾルの製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載のムライト前駆体ゾルの製造方法により製造されたムライト前駆体ゾルを、
    酸化雰囲気下で、少なくとも1000℃で加熱する
    ことを特徴とするムライトの製造方法。
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