JP5891145B2 - ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、制御精度を向上できるブレーキ制御装置を提供することにある。
なお、以下に説明する実施例は、多くのニーズに適応できるように検討されており、制御精度を向上できることは検討されたニーズの1つである。以下の実施例では、さらに、ペダルフィールを向上できるとのニーズにも対応している。
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のブレーキ制御装置を適用したハイブリッド車両の制駆動系を示すシステム構成図、図2は実施例1のブレーキ制御装置の回路構成図である。
[システム構成]
液圧制御ユニットHUは、ブレーキコントロールユニット(液圧制御部)BCUからの指令に基づいて、左前輪FLのホイルシリンダW/C(FL)、右後輪RRのホイルシリンダW/C(RR)、右前輪FRのホイルシリンダW/C(FR)、左後輪RLのホイルシリンダW/C(RL)の各液圧を増減または保持する。液圧制御ユニットHUとブレーキコントロールユニットBCUにより、車輪に設けられたホイルシリンダW/C内のブレーキ液の液圧をコントロールして制動力を発生させる液圧制動装置が構成される。
モータジェネレータMGは、三相交流モータであり、左右後輪RL,RRのリアドライブシャフトRDS(RL),RDS(RR)とディファレンシャルギアDGを介してそれぞれ連結され、モータコントロールユニットMCUからの指令に基づいて、力行または回生運転し、後輪RL,RRに駆動力または回生制動力を付与する。
インバータINVは、モータコントロールユニットMCUからの指令に基づいて、バッテリBATTの直流電力を交流電力に変換しモータジェネレータMGに供給することで、モータジェネレータMGを力行運転する。一方、モータコントロールユニットMCUからの指令に基づいて、モータジェネレータMGで発生する交流電力を直流電力に変換してバッテリBATTを充電することで、モータジェネレータMGを回生運転する。
モータコントロールユニットMCUは、モータジェネレータMGによる駆動力または回生制動力の出力制御の状況と、現時点で発生可能な最大回生制動力を、通信線2を介してブレーキコントロールユニットBCU、駆動コントローラ1へと送る。ここで、「発生可能な最大回生制動力」は、例えば、バッテリBATTの端子間電圧と電流値とから推定されるバッテリSOCや、車輪速センサ3により算出(推定)される車体速(車速)から算出する。また、旋回時には、車両のステア特性も加味して算出する。
すなわち、バッテリSOCが上限値または上限値に近い状態にある満充電時には、バッテリ保護の観点から過充電防止を図る必要がある。また、制動により車速が減少した場合、モータジェネレータMGで発生可能な最大回生制動力は減少する。さらに、高速走行時に回生制動を行うと、インバータINVが高負荷となるため、高速走行時にも最大回生制動力を制限または禁止する。
モータジェネレータMG、インバータINV、バッテリBATTおよびモータコントロールユニットMCUより、車輪(左右後輪RL,RR)に対して回生制動力を発生させる回生制動装置が構成される。
駆動コントローラ1は、直接または通信線2を介して、アクセル開度センサ4からのアクセル開度、車輪速センサ3により算出される車速(車体速)、バッテリSOC等が入力される。
駆動コントローラ1は、各センサからの情報に基づき、エンジンENGの動作制御と、図外の自動変速機の動作制御と、モータコントロールユニットMCUへの指令によるモータジェネレータMGの動作制御とを行う。
ブレーキコントロールユニットBCUは、マスタシリンダ圧とブレーキペダルストローク量に基づいて車両に必要な制動力であるドライバ要求制動力を算出する。そして、ドライバ要求制動力を回生制動力と摩擦制動力とに配分し、回生制動力が得られるようモータコントロールユニットMCUへ指令を出力すると共に、摩擦制動力が得られるよう液圧制御ユニットHUの動作を制御する。
ここで、実施例1では、回生協調制御として、摩擦制動力よりも回生制動力を優先し、ドライバ要求制動力を回生分で賄える限りは液圧分を用いることなく、最大限(最大回生制動力)まで回生分の領域を拡大している。これにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギー回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギーの回収を実現している。なお、ブレーキコントロールユニットBCUは、回生制動中、車速の低下や上昇等に伴い回生制動力が制限される場合には、回生制動力を減少させ、その分だけ摩擦制動力を増加させて必要な制動力(ドライバ要求制動力)を確保する。逆に、回生制動力の制限が緩和された場合には、回生制動力を増加させ、その分だけ摩擦制動力を減少させる。
実施例1の液圧制御ユニットHUは、P系統とS系統との2系統からなる、X配管と呼ばれる配管構造を有している。なお、図2に記載された各部位の符号の末尾に付けられたP,SはP系統、S系統を示し、RL,FR,FL,RRは左後輪、右前輪、左前輪、右後輪に対応することを示す。以下の説明では、P,S系統または各輪を区別しないとき、P,SまたはRL,FR,FL,RRの記載を省略する。
実施例1の液圧制御ユニットHUは、クローズド油圧回路を用いている。ここで、クローズド油圧回路とは、ホイルシリンダW/Cへ供給されたブレーキ液を、マスタシリンダM/Cを介してリザーバタンクRSVへと戻す油圧回路をいう。
ブレーキペダルBPは、インプットロッドIRを介してマスタシリンダM/Cに接続されている。インプットロッドIRには、気圧式アクチュエータを倍力源としてインプットロッドIRの入力を倍力する気圧式倍力装置(倍力装置)101が設けられている。気圧式倍力装置101の構造のついては後述する。
マスタシリンダM/Cは、タンデムマスタシリンダであり、プライマリ室15aとセカンダリ室15bとを構成するプライマリピストン15cおよびセカンダリピストン15dを有し、両ピストン15c,15dがスプリング15eの弾性力を受けることで、ブレーキペダルBPが踏み込まれていないときには各ピストン15c,15dを押してブレーキペダルBPを初期位置側に戻す。プライマリ室15aは液圧制御ユニットHUのP系統と接続され、セカンダリ室15bはS系統と接続されている。
リザーバタンクRSVは、ブレーキペダルBPが初期位置のとき、プライマリ室15aおよびセカンダリ室15bのそれぞれと図外の管路を介して接続されるもので、インプットロッドIRのストロークに応じてマスタシリンダM/C内にブレーキ液を供給、またはマスタシリンダM/C内の余剰ブレーキ液を貯留する。
マスタシリンダM/CとポンプPの吐出部10bとは、管路11と管路(第2ブレーキ回路)31により接続される。管路11には、常開型(非通電時に全開し、通電時に閉方向へ作動する)の比例電磁弁であるゲートアウト弁12が設けられている。管路11には、ゲートアウト弁12を迂回する管路32が設けられている。管路32上には、チェック弁13が設けられている。チェック弁13は、マスタシリンダM/CからホイルシリンダW/Cへ向かうブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
管路31上には、チェック弁20が設けられている。チェック弁20は、ポンプPから管路11へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
ポンプPの吐出部10bとホイルシリンダW/Cとは、管路18により接続される。管路18上には、各ホイルシリンダW/Cに対応する常開型の比例電磁弁であるソレノイドイン弁(増圧制御弁)19が設けられている。管路11,18により、第1ブレーキ回路が構成される。
管路18上には、ソレノイドイン弁19を迂回する管路21が設けられ、この管路21には、チェック弁22が設けられている。このチェック弁22は、ホイルシリンダW/CからポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。管路18は、管路11と管路31との接続点で接続されている。
ホイルシリンダW/Cとリザーバ23とは管路24により接続される。管路24には、常閉型(非通電時に全閉し、通電時に開方向へ作動する)の電磁弁であるソレノイドアウト弁(減圧制御弁)25が設けられている。管路24,30により第4ブレーキ回路が構成される。
マスタシリンダM/Cとリザーバ23とは管路26により接続される。また、リザーバ23とポンプPの吸入部10aとは、管路30により接続される。管路26,30により第3ブレーキ回路が構成される。
ブレーキコントロールユニットBCUは、運転者のブレーキ操作時に車輪がロック傾向になったことを検知すると、当該車輪に対し、ロックを防止しつつ最大の制動力を発生させるためにホイルシリンダ圧の減圧、保持、増圧を繰り返すアンチロックブレーキ(ABS)制御を実施する。
ABS減圧制御時には、図2の状態からソレノイドイン弁19を閉弁すると共にソレノイドアウト弁25を開弁し、ホイルシリンダW/Cのブレーキ液をリザーバ23に逃がすことでホイルシリンダ圧を低下させる。ABS保持制御では、ソレノイドイン弁19およびソレノイドアウト弁25を共に閉弁することでホイルシリンダ圧を保持する。ABS増圧制御では、ソレノイドイン弁19を開弁すると共にソレノイドアウト弁25を閉弁し、ポンプPを作動させてリザーバ23に貯留されたブレーキ液をホイルシリンダW/Cへ供給することでホイルシリンダ圧を増加させる。ABS制御の作動時、回生制動力が発生している場合、すなわち、回生協調制御中である場合には、回生制動力をゼロとし、摩擦制動力を早期に立ち上げて回生制動力から摩擦制動力へのすり替えを行う。
なお、実施例1の液圧制御ユニットHUは、上記ABS制御に加え、各弁およびポンプPを作動させることにより、車両旋回時にオーバーステア傾向やアンダーステア傾向が強くなったことを検出すると、所定の制御対象輪のホイルシリンダ圧を制御して車両挙動安定化を図る車両挙動安定制御、運転者のブレーキ操作時に実際にマスタシリンダM/Cで発生する圧力よりも高い圧力をホイルシリンダW/Cで発生させるブレーキアシスト制御、オートクルーズコントロールにより先行車との相対関係に応じて自動的に制動力を発生させる制御等の自動ブレーキ制御を実施可能である。
図3は、マスタシリンダを含む気圧式倍力装置の縦断面図である。
気圧式倍力装置101は、薄板によって形成されたフロントシェル102とリアシェル103とが結合されて構成されるハウジング104を備え、ハウジング104内は、ダイアフラム105を有するパワーピストン106によって定圧室107と変圧室108との2室に区画されている。フロントシェル102およびリアシェル103は、略有底円筒形であり、これらは、フロントシェル102の外周の開口縁部に、リアシェル103の外周の開口縁部を嵌合し、これらの間にダイアフラム105の外周部を挟み込むことによって気密に結合されている。
フロントシェル102の底部の中央開口109にはマスタシリンダM/Cの後端部が挿入され、フロントシェル102にはマスタシリンダM/Cが取り付けけられている。リアシェル103の底部の中央部には、後述するバルブボディ111を挿通させるための後部円筒部112が突出されている。後部円筒部112の周囲には、車体のダッシュパネル(図示せず)に当接するリア座面113が形成されている。
タイロッド114は、フロントシェル102およびリアシェル103の直径方向2箇所に配置されており(一方のみ図示する)、取り付けネジ部115によってフロントシェル102にマスタシリンダM/Cを固定し、固定ネジ部116によってリア座面113を上述の車体のダッシュパネル(図示せず)に固定する。また、リア座面113には、これをダッシュパネルに固定するためのリアボルト(図示せず)がカシメによって固定されている。
バルブボディ111の前端の円筒部111Aには、反力調整機構150が設けられる。バルブボディ111は、その推力を、反力調整機構150を介して、出力ロッド128へ伝達する。出力ロッド128は、先端部128Aがプライマリピストン15cに当接し、基端部128Bがカップ状に形成されて円板形のリアクション部材155が収容される。そして、出力ロッド128は、リアクション部材155を介して、反力調整機構150から力の伝達を受けるとともにマスタシリンダM/Cからの反力を伝達するように構成されている。
バルブボディ111の後端の小径筒部111C内には、プランジャ131が挿入されている。プランジャ131は、バルブボディ111の円筒部111Aと小径筒部111Cとの間の拡径部によって軸方向へ摺動可能且つ気密に案内されており、前端の凸部が、反力伝達部材153との間にジャンプインクリアランスとなる隙間Cを持って対向されている。プランジャ131には、バルブボディ111の後端開口から挿入されたインプットロッドIRの先端部が連結される。インプットロッドIRの基端部は、バルブボディ111の後端部に装着された通気性を有するダストシール134を貫通させて外部へ延びている。また、インプットロッドIRの基端部には、ブレーキペダルBP(図3参照)に連結させるためのクレビス135が取り付けけられる。また、バルブボディ111の小径筒部111Cには、プランジャ131によって開閉弁が制御される制御弁132が挿入されている。制御弁132は、一端がインプットロッドIRに係止された弁ばね141によって閉弁方向に付勢される。
そして、ブレーキペダルBPが操作されて、バルブボディ111に対してプランジャ131が前進すると、定圧通路136を、変圧通路137に対して遮断したままの状態で大気(ダストシール134側)に接続する。このとき、変圧通路137は、ダストシール134を介して大気に開放されるように構成されている。バルブボディ111の側壁111Dを径方向に延びる変圧通路137には、ストップキー138が挿入される。ストップキー138は、リアシェル103の円筒部112の段部に係合することで、バルブボディ111の後退位置を制限する。また、ストップキー138は、プランジャ131の外周溝に移動可能に係合させることで、バルブボディ111とプランジャ131との相対変位量を制限する。
マスタシリンダM/Cには、開口側に、先端部がカップ状に形成された円筒形のプライマリピストン15cが嵌装され、底部側にカップ状のセカンダリピストン15dが嵌装されている。プライマリピストン15cの後端部は、マスタシリンダM/Cの開口部から突出して、定圧室107内において出力ロッド128の先端部に当接している。
マスタシリンダM/Cの側壁の上部には、プライマリ室15aおよびセカンダリ室15bをリザーバタンクRSVに接続するためのリザーバポート166,167が設けられる。マスタシリンダM/Cのシリンダボアと、プライマリピストン15cおよびセカンダリピストン15dとの間は、それぞれ2つのシール部材168A,168Bおよび169A,169Bによってシールされる。シール部材168A,168Bは、軸方向へリザーバポート166を挟むように配置される。そして、プライマリピストン15cが非制動位置(図3参照)に位置する場合、プライマリ室15aがプライマリピストン15cの側壁に設けられたポート170を介してリザーバポート166に連通する。
そして、プライマリピストン15cが非制動位置から所定(遊び)のストロークS1だけ前進すると、シール部材168Bによってポート170が閉じてプライマリ室15aがリザーバポート166から遮断され、プライマリ室15aが加圧される。同様に、シール部材169A,169Bは、軸方向へリザーバポート167を挟むように配置される。そして、セカンダリピストン15dが非制動位置に位置する場合、セカンダリ室15bがセカンダリピストン15dの側壁に設けられたポート171を介してリザーバポート167に連通する。そして、セカンダリピストン15dが非制動位置から所定(遊び)のストロークS1だけ前進すると、シール部材169Bによってポート171が閉じてセカンダリ室15bがリザーバポート167から遮断され、セカンダリ室15bが加圧される。
プライマリ室15a内のプライマリピストン15cとセカンダリピストン15dとの間には、ばねアセンブリ172が介装される。また、セカンダリ室15b内のマスタシリンダM/Cの底部とセカンダリピストン15dとの間には、戻しばね173としての圧縮コイルばねが介装される。ばねアセンブリ172は、圧縮コイルばねを伸縮可能なリテーナによって所定の圧縮状態で保持し、そのばね力に抗して圧縮可能としたものである。そして、プライマリピストン15cおよびセカンダリピストン15dは、通常は同時に移動してプライマリ室15aおよびセカンダリ室15bを同時に加圧する。
次に、気圧式倍力装置101の動作を説明する。なお、図6は、インプットロッドIRへの入力F(ブレーキペダルBPへの踏力)と、マスタシリンダM/Cの液圧P(および制動力)、インプットロッドIRのストロークLとの関係を示す。
図3に示す非制動状態(ブレーキペダルBPの非操作状態)においては、プランジャ131が非制動位置(図3参照)に位置し、定圧室107と変圧室108とが同圧であるため、パワーピストン106に推力は生じない。この状態で、定圧通路136(定圧室107)と変圧通路137(変圧室108)とは、制御弁132によって遮断される。
ブレーキペダルBPの踏み込みが開始され(図6における入力F1)、戻しばね140と反力ばね159とのばね力に抗して、インプットロッドIRによってプランジャ131を前進させると、制御弁132からプランジャ131が離間し、変圧通路137が大気に開放されて、変圧室108に大気が導入される。これにより、定圧室107と変圧室108との間に差圧が生じ、この差圧によってパワーピストン106に推力が発生する。その結果、バルブボディ111が前進してリアクション部材155を介して出力ロッド128を前進させ、マスタシリンダM/Cのプライマリピストン15cを押圧する。バルブボディ111の前進により、制御弁132によって変圧通路137が大気から遮断されて、定圧室107と変圧室108との差圧、すなわち、パワーピストン106の推力が維持されるので、バルブボディ111は、プランジャ131の移動に追従して移動する。
ブレーキペダルBPがさらに踏み込まれて、プライマリピストン15cのストロークがストロークS2に達すると、バルブボディ111の前進により、マスタシリンダM/Cの液圧が上昇し、液圧による反力が増大して、リアクション部材155から反力伝達部材153に伝達される反力が反力調整ばね157のばね力を超え、図5に示されるように、反力伝達部材153が後退してプランジャ131に当接する(図6における入力F3)。これにより、マスタシリンダM/Cの液圧による反力の一部がプランジャ131に伝達される。その結果、伝達される力は小さくなるが、マスタシリンダM/Cの液圧上昇に伴う反力がブレーキペダルBPに伝達され、反力ばね159による反力だけでは得ることができない剛性感のあるブレーキフィーリングを付与することができる。また、このとき、弾性体で形成されるリアクション部材155は、リアクション部材155から反力伝達部材153に反力を伝達するために、変形して反力受部材152の内孔152Aに膨出してくる。しかし、このリアクション部材155の膨出は、反力調整ばね157のばね力により抑えられ、その変形量が小さいものとなる。
その後、ブレーキペダルBPがさらに踏み込まれて、プライマリピストン15cのストロークがストロークS3となり、全負荷点に達すると(図6における入力F4)、倍力比はさらに小さくなる。そして、ブレーキペダルBPを戻してインプットロッドIRへの入力を解除すると、プランジャ131が後退し、制御弁132によって、変圧通路137が大気から遮断された状態で定圧通路136に接続される。これにより、定圧室107と変圧室108との差圧が解消され、パワーピストン106の推力が消失して、パワーピストン106は、プランジャ131の移動に追従して後退して非制動状態(図3参照)に戻る。
実施例1では、上記ストローク制御領域において、回生制動力が最大回生制動力限界値(モータジェネレータMGの特性により決まる最大回生制動力の上限)に達するように設定している。これにより、回生協調制御中は常時、マスタシリンダM/Cの液圧に左右されない良好なペダルフィールを維持できる。
次に、回生協調制御の各シーンにおける液圧制御ユニットHUの動作およびその作用を、タイムチャートと油圧回路を用いて説明する。油圧回路上では、ブレーキ液の流れを矢印付きの太線で示す。なお、P系統のみを図示しているが、S系統についても同様である。
図7は、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだときのタイムチャートである。
時点t1では、運転者がブレーキペダルBPの踏み込みを開始し、ドライバ要求制動力の増加に応じて回生制動力が立ち上がる。このとき、液圧制御ユニットHUでは、図8に示すように、同一系統のソレノイドアウト弁25FR,25RLのうち、一方のソレノイドアウト弁25RLを開弁し、マスタシリンダM/Cから流出したブレーキ液をリザーバ23へ貯留する。これにより、ドライバ要求制動力のほとんどを回生制動力で賄うことができ、エネルギー回収効率を向上できる。なお、僅かな一定の摩擦制動力が発生しているが、これはリザーバ23に残る圧力である。このとき、ブレーキペダルストロークは気圧式倍力装置101のストローク制御領域にあるため、マスタシリンダ圧にかかわらず、ブレーキペダルストロークとペダル反力との関係は一定に維持され、良好なペダルフィールを維持できる。なお、同一系統のソレノイドアウト弁25FR,25RLのうち一方のみを開弁しているため、2つのソレノイドアウト弁25FR,25RLを開弁する場合と比較して、駆動する制御弁数の削減による音振、耐久性の向上を図ることができる。
時点t2では、車速の低下による最大回生制動力の低下に伴い回生制動力が減少し始めるため、液圧制御ユニットHUでは、図9に示すように、ソレノイドアウト弁25RLを閉弁すると共に、モータMの回転数制御によりポンプPを作動させ、リザーバ23に貯留されたブレーキ液をホイルシリンダW/Cに供給する。これにより、回生制動力の減少に応じて摩擦制動力を立ち上げることができ、ドライバ要求制動力に対する回生制動力の不足分を摩擦制動力によって補うことができる。このとき、ホイルシリンダW/Cには既に略一定のホイルシリンダ圧が発生しているため、ガタ詰め効果により摩擦制動力を立ち上げる際の応答性を向上できる。
時点t3では、回生制動力から摩擦制動力へのすり替えが完了したため、モータMを停止すると共にソレノイドアウト弁25RLを閉弁する。
時点t1は、図7に示したタイムチャートの時点t1と同様であるため説明を省略する。
時点t2では、運転者がブレーキペダルBPの踏み戻しを開始したため、回生制動力が低下し始める。
時点t3では、ブレーキペダルストロークがゼロとなったため、ソレノイドアウト弁25RLを閉弁する。
図11は、運転者がブレーキペダルBPを踏み増ししたときのタイムチャートである。
時点t1は、図7に示したタイムチャートの時点t1と同様であるため説明を省略する。
時点t2では、運転者がブレーキペダルBPの踏み増しを開始したため、回生制動力が増加し始める。
時点t3では、回生制動力が最大回生制動力に達したため、液圧制御ユニットHUでは、図9に示したように、ソレノイドアウト弁25RLを閉弁し、モータMの回転数制御によりポンプPを作動させ、リザーバ23に貯留されたブレーキ液をホイルシリンダW/Cに供給する。これにより、ドライバ要求制動力に対する回生制動力の不足分を摩擦制動力により補うことができる。
時点t4,t5は、図7に示したタイムチャートの時点t2,t3と同様であるため説明を省略する。
時点t1では、運転者がブレーキペダルBPの踏み込みを開始するが、車速が高く回生制動力が制限(禁止)されているため、液圧制御ユニットHUは、マスタシリンダM/Cから流出したブレーキ液を各ホイルシリンダW/Cへ供給し、摩擦制動力のみでドライバ要求制動力を達成する。
時点t2では、車速の低下により回生制動力の制限が緩和され、回生制動力が立ち上がり始める。このとき、液圧制御ユニットHUでは、図13に示すように、同一系統のソレノイドアウト弁25FR,25RLのうち、一方のソレノイドアウト弁25RLを開弁し、ホイルシリンダW/Cから流出したブレーキ液をリザーバ23へ貯留する。これにより、摩擦制動力から回生制動力へのすり替えを実現できる。このとき、ブレーキペダルストロークは気圧式倍力装置101のストローク制御領域にあるため、マスタシリンダ圧にかかわらず、ブレーキペダルストロークとペダル反力との関係は一定に維持され、良好なペダルフィールを維持できる。
時点t3では、摩擦制動力から回生制動力へのすり替えが完了する。
時点t4,t5は、図7に示したタイムチャートの時点t2,t3と同様であるため説明を省略する。
従来のブレーキ制御装置では、回生制動装置の作動時、余剰のブレーキ液をリザーバに貯留する際、ゲートアウト弁、ソレノイドイン弁およびソレノイドアウト弁を動作させてマスタシリンダ圧とホイルシリンダ圧をコントロールしている。このため、複数の弁を正確に動作させる必要があり、精度が問題となる。
これに対し、実施例1のブレーキ制御装置では、ソレノイドアウト弁25のみを正確に動作させればよいため、従来装置に対して制御精度の向上を図ることができる。
実施例1の気圧式倍力装置101は、運転者のブレーキ操作開始から所定のストロークS2までのストローク範囲としてのストローク制御領域を備える。ストローク制御領域では、ブレーキペダルBPにマスタシリンダM/Cの液圧による反力は作用せず、反力ばね159のばね力による反力のみが作用する。
上記ストローク制御領域では、ブレーキペダルストロークの増加に伴いブレーキペダル踏力が増加する特性としている。よって、コンベンショナルなブレーキのペダルフィールに近似した良好なペダルフィールが得られる。
また、ストローク制御領域では、マスタシリンダM/Cの液圧にかかわらずブレーキペダルストロークに対するブレーキペダル踏力があらかじめ設定された所定の関係を維持する。よって、コンベンショナルなブレーキのペダルフィールに近似した良好なペダルフィールが得られる。
実施例1のブレーキ制御装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) 車輪に設けられたホイルシリンダW/C内のブレーキ液の液圧をコントロールして制動力を発生させる液圧制動装置(液圧制御ユニットHUおよびブレーキコントロールユニットBCU)と、車輪に対して電気的な制動力を発生させる回生制動装置(モータジェネレータMG、インバータINV、バッテリBATTおよびモータコントロールユニットMCU)とを備え、両制動装置を用いて制動力を発生させる車両に用いられるブレーキ制御装置であって、マスタシリンダM/CとホイルシリンダW/Cとの間に設けられた常開のソレノイドイン弁19と、ABS減圧制御時にホイルシリンダW/C内のブレーキ液が流れ込むリザーバ23と、ホイルシリンダW/Cとリザーバ23との間に設けられたソレノイドアウト弁25と、回生制動装置による制動時に運転者によるブレーキ操作に伴ってマスタシリンダM/Cから流出したブレーキ液をリザーバ23内に流入させる際、およびホイルシリンダW/C内のブレーキ液をリザーバ23内に流入させる際に、ソレノイドイン弁19を非制御とし、ソレノイドアウト弁25を制御するブレーキコントロールユニットBCUと、を備えた。
これにより、制御精度の向上を図ることができる。
(2) ブレーキコントロールユニットBCUは、ソレノイドアウト弁25のみを制御する。
これにより、制御精度の向上を図ることができる。
これにより、ストローク制御領域では、ペダル反力の変動を小さく抑えることができる。
(4) 気圧式倍力装置101は、ストローク制御領域において、ブレーキペダルストロークの増加に伴いブレーキペダル踏力が増加する。
これにより、良好なペダルフィールが得られる。
(5) 運転者のブレーキ操作力を増幅する気圧式倍力装置101を備え、気圧式倍力装置101は、運転者のブレーキ操作開始から所定のストロークS2までのストローク範囲において、マスタシリンダM/Cの液圧にかかわらずブレーキペダルストロークに対するブレーキペダル踏力があらかじめ設定された所定の関係を維持するストローク制御領域を備えた。
これにより、良好なペダルフィールが得られる。
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例では、本発明をハイブリッド車両に適用した例を示したが、電動車両にも適用できる。
(a) 請求項5に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御部は、前記ストローク制御領域で実行されることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、回生制動装置の作動時は常に良好なペダルフィールを維持できる。
(b) (a)に記載のブレーキ制御装置において、
前記ストローク制御領域において前記運転者のブレーキ操作に伴い略一定のホイルシリンダ液圧が発生することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ガタ詰め効果により摩擦制動力を立ち上げる際の応答性を向上できる。
(c) 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御部は、運転者によるブレーキ操作が開始し前記回生制動装置による制動を行う際に運転者によるブレーキ操作に伴って前記マスタシリンダから流出したブレーキ液を前記リザーバへ流入させることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、制御精度の向上を図ることができる。
(d) 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御部は、運転者によるブレーキ操作中に前記回生制動装置による制動力が上昇し、前記液圧制動装置の制動力を減少させるときに前記ホイルシリンダから流出したブレーキ液を前記リザーバへ流入させることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、液圧制動装置による制動力から回生制動装置による制動力へのすり替えを実現できる。
前記ホイルシリンダ、前記減圧制御弁および前記増圧制御弁は、1つのブレーキ配管系統に複数個、前記リザーバは1つ設けられ、
前記液圧制御部は、前記減圧制御弁のうち所定のホイルシリンダとリザーバとの間の1つの減圧制御弁を開弁し前記所定のホイルシリンダ内のブレーキ液および他のホイルシリンダ内のブレーキ液を前記リザーバへ流入させることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、駆動する制御弁数の削減による音振、耐久性の向上を図ることができる。
(f) 車輪に設けられたホイルシリンダ内のブレーキ液の液圧をコントロールして制動力を発生させる液圧制動装置と、前記車輪に対して電気的な制動力を発生させる回生制動装置とを備え、前記両制動装置を用いて制動力を発生させる車両に用いられるブレーキ制御装置であって、
ブレーキ回路中に設けられたポンプと、
運転者のブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと前記ブレーキ液圧が作用するように構成されたホイルシリンダとを接続する第1ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路と前記ポンプの吐出側とを接続する第2ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記マスタシリンダ側に設けられた常開のゲートアウト弁と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記ゲートアウト弁よりも前記マスタシリンダ側の位置と前記ポンプの吸入側とを接続する第3ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記ホイルシリンダ側に設けられた常開の増圧制御弁と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記増圧制御弁よりも前記ホイルシリンダ側の位置と前記ポンプの吸入側とを接続する第4ブレーキ回路と、
前記第4ブレーキ回路上に設けられた常閉の減圧制御弁と、
前記第4ブレーキ回路上であって前記減圧制御弁よりも前記ポンプの吸入側に設けられると共に、前記第3ブレーキ回路に接続するリザーバと、
前記回生制動装置による制動時に運転者によるブレーキ操作に伴って前記マスタシリンダから流出したブレーキ液および前記ホイルシリンダ内のブレーキ液を前記各弁のうち前記減圧制御弁のみを制御して前記リザーバ内に流入させる液圧制御部と、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、制御精度の向上を図ることができる。
運転者のブレーキ操作力を増幅する倍力装置を備え、
前記倍力装置は、運転者のブレーキ操作開始から所定量のブレーキペダルストローク範囲において、マスタシリンダM/Cの液圧にかかわらずブレーキペダルストロークに対するブレーキペダル踏力があらかじめ設定された所定の関係を維持するストローク制御領域を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ストローク制御領域では、ペダル反力の変動を小さく抑えることができる。
(h) (f)に記載のブレーキ制御装置において、
前記倍力装置は、前記ストローク制御領域において、前記ブレーキペダルストロークの増加に伴いブレーキペダル踏力が増加することを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、良好なペダルフィールが得られる。
(i) (f)に記載のブレーキ制御装置において、
運転者のブレーキ操作力を増幅する倍力装置を備え、
前記倍力装置は、運転者のブレーキ操作開始から所定量のブレーキペダルストローク範囲おいて、前記マスタシリンダの液圧にかかわらず前記ブレーキペダルストロークに対するブレーキペダル踏力があらかじめ設定された所定の関係を維持するストローク制御領域を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、良好なペダルフィールが得られる。
(j) (f)に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御部は、運転者によるブレーキ操作が開始し前記回生制動装置による制動を行う際に運転者によるブレーキ操作に伴って前記マスタシリンダから流出したブレーキ液を前記リザーバへ流入させることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、制御精度の向上を図ることができる。
前記液圧制御部は、運転者によるブレーキ操作中に前記回生制動装置による制動力が上昇し、前記液圧制動装置の制動力を減少させるときに前記ホイルシリンダから流出したブレーキ液を前記リザーバへ流入させることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、液圧制動装置による制動力から回生制動装置による制動力へのすり替えを実現できる。
(l) (k)に記載のブレーキ制御装置において、
前記ホイルシリンダ、前記減圧制御弁および前記増圧制御弁は、1つのブレーキ配管系統に複数個、前記リザーバは1つ設けられ、
前記液圧制御部は、前記減圧制御弁のうち所定のホイルシリンダとリザーバとの間の1つの減圧制御弁を開弁し前記所定のホイルシリンダ内のブレーキ液および他のホイルシリンダ内のブレーキ液を前記リザーバへ流入させることを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、駆動する制御弁数の削減による音振、耐久性の向上を図ることができる。
運転者のブレーキ操作によってマスタシリンダから流出したブレーキ液をリザーバ内に貯留するときに1つの制御弁を駆動することを特徴とするブレーキ制御方法。
よって、1つの制御弁のみを駆動すればよいため、制御精度の向上を図ることができる。
(n) (m)に記載のブレーキ制御装置において、
前記ホイルシリンダ内のブレーキ液を前記リザーバ内に流入させるときに前記1つの制御弁のみを駆動することを特徴とするブレーキ制御方法。
よって、1つの制御弁のみを駆動すればよいため、制御精度の向上を図ることができる。
(o) (n)に記載のブレーキ制御装置において、
前記1つの制御弁は、前記ホイルシリンダと前記リザーバとの間に設けられた減圧制御弁であることを特徴とするブレーキ制御方法。
よって、1つの減圧制御弁のみを駆動すればよいため、制御精度の向上を図ることができる。
BCU ブレーキコントロールユニット(液圧制動装置,液圧制御部)
HU 液圧制御ユニット(液圧制動装置)
INV インバータ(回生制動装置)
M/C マスタシリンダ
MCU モータコントロールユニット(回生制動装置)
MG モータジェネレータ(回生制動装置)
W/C ホイルシリンダ
19 ソレノイドイン弁(増圧制御弁)
23 リザーバ
25 ソレノイドアウト弁(減圧制御弁)
Claims (3)
- 車輪に設けられたホイルシリンダ内のブレーキ液の液圧をコントロールして制動力を発生させる液圧制動装置と、前記車輪に対して電気的な制動力を発生させる回生制動装置とを備え、前記両制動装置を用いて制動力を発生させる車両に用いられるブレーキ制御装置であって、
マスタシリンダと前記ホイルシリンダとの間に設けられた常開の増圧制御弁と、
ABS減圧制御時に前記ホイルシリンダ内のブレーキ液が流れ込むリザーバと、
前記ホイルシリンダと前記リザーバとの間に設けられた減圧制御弁と、
前記回生制動装置による制動時に運転者によるブレーキ操作に伴って前記マスタシリンダから流出したブレーキ液を前記リザーバ内に流入させる際、および前記ホイルシリンダ内のブレーキ液を前記リザーバ内に流入させる際に、前記増圧制御弁を非制御とし、前記減圧制御弁を制御する液圧制御部と、
運転者のブレーキ操作力を増幅する倍力装置と、
を備え、
前記倍力装置は、運転者のブレーキ操作開始から所定量のブレーキペダルストローク範囲において、前記マスタシリンダの液圧にかかわらず前記ブレーキペダルストロークに対するブレーキペダル踏力があらかじめ設定された所定の関係を維持するストローク制御領域を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。 - 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御部は、前記減圧制御弁のみを制御することを特徴とするブレーキ制御装置。 - 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記倍力装置は、前記ストローク制御領域において、前記ブレーキペダルストロークの増加に伴いブレーキペダル踏力が増加することを特徴とするブレーキ制御装置。
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