マルチキャスト配信は複数の受信装置に同一データを同時に送信しており、通常、多くの受信装置は正しく受信できるように送受信のシステム設計がされている。しかし、移動する受信装置でマルチキャスト配信を受信する場合、受信装置の場所により電波の強度が低下したり、あるいは電波の干渉が大きい条件下にある受信装置では正しく受信できず、欠損データが生じる場合がある。その場合、マルチキャスト配信が一方向の送信システムのため、ユニキャスト通信のように送信元に欠損データを再送要求することができない。そのため、受信装置では欠損データがある状態で復号しなければならず、映像、音声などが正常に再生できないという課題があった。
これを解決するためP2P(Peer to Peer)を用いて受信装置間で欠損データを補完し合うことが考えられるが、P2Pでは欠損データが生じた受信装置が「探索要求メッセージ」を発信してネットワークに存在する各通信装置(一般的にピアと称する)を中継し、同一のコンテンツを所有する受信装置を広範囲に探さなければならず、ネットワークのトラフィックの増大を招くことが課題であった。
そこで、特許文献1にあるように、送信するデータを分割した部分データに誤り検出符号を付加して配信し、すべての受信端末から、受信した部分データの誤りの有/無の情報を送信元に集め、受信装置間で欠損データを補完し合うための受信装置の組み合わせを送信元ですべて決定し、それを各受信端末に通知して欠損データの補完を行わせることが提案されている。
しかしながら、この方法ではマルチキャスト配信する機能を持つだけの送信元が、多数の受信装置の受信状況を収集し、補完し合う受信装置間の組合せをすべて決定して通知するという機能を備えなければならず、受信装置が非常に多い場合、送信元の処理作業に膨大な負担がかかるという課題があった。また、マルチキャスト配信の受信が終了した後でなければこのような処理を行うことは困難であり、データのダウンロードの場合は良いが、リアルタイムのマルチキャスト配信には適用できないという課題があった。また、特許文献2はマルチキャスト配信には関係はないが、P2Pでホップ数を用いてメッセージライフ値とメッセージライフ値の初期値とを比較し、メッセージを発信した通信端末が属するグループおよび自己との距離を把握するようにして近傍の通信端末を探索するようにしている。これはP2Pでトラフィックの増大を招かないようにする方法であるが、マルチキャスト配信の観点からはマルチキャスト配信に参加していない無関係の通信端末にも情報を送信するため、無駄なトラフィックが存在している。
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、送信元であるサーバに新たな機能を付加して処理作業の負荷を増大させることなく、また、ネットワークのトラフィックの増大を招かず、さらにダウンロードのみならずリアルタイムのマルチキャスト配信の場合にも適用でき、正しく受信できなかったために生じた欠損データを確実に補完できるマルチキャスト配信システム、マルチキャスト配信方法およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
(1)本発明は、サーバ(例えば、図1のサーバ100に相当)と複数のルータ(例えば、図1のルータ200に相当)と複数の受信側装置(例えば、図1の受信側装置500a〜500fに相当)とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムであって、前記ルータが、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブル(例えば、図1のマルチキャストグループIPアドレステーブル210に相当)を備え、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記複数のルータのうち、最も近傍のルータに、前記データテーブル内のIPアドレスの開示を要求する開示要求手段(例えば、図2の開示要求部501に相当)と、該開示されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する検索手段(例えば、図2の検索部502に相当)と、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する受信手段(例えば、図2の受信部503に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する補完手段(例えば、図2の補完部504に相当)と、を備えたことを特徴とするマルチキャスト配信システムを提案している。
この発明によれば、ルータは、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置の開示要求手段は、複数のルータのうち、最も近傍のルータに、データテーブル内のIPアドレスの開示を要求する。検索手段は、開示されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する。受信手段は、検索した受信側装置から欠損データを受信する。補完手段は、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。つまり、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、最も近傍にあるルータに対してルータが保持するマルチキャストグループIPアドレステーブルを問い合わせ、このテーブルを参照して他の受信側装置のIPアドレスを知ることができる。そのIPアドレスの中で、最もネットワーク上で近傍の1つの受信装置にマルチキャストで配信されたデータがあるかどうかを確認し、そのデータが正しく受信できたかどうかを問い合わせ、欠損データを送信可能であれば自分宛てに送ってもらうように要求する。もし、その受信側装置に配信されたコンテンツが存在しない、または正しく受信できていない、あるいは送信不可能な状態であれば、他の受信側装置に問い合わせを同様に繰り返していく。また、最も近傍のルータで開示されたIPアドレスの受信側装置に欠損データを送信可能な受信側装置が一つも無い場合は、次に近傍のルータにIPアドレスの開示を要求するというように、欠損データを送信可能な受信側装置が見つかるまで、順次近傍のルータに開示要求を繰り返していく。
(2)本発明は、サーバ(例えば、図4のサーバ100に相当)と複数のルータ(例えば、図4のルータ220に相当)と複数の受信側装置(例えば、図4の受信側装置510a〜510fに相当)とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムであって、前記ルータが、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブル(例えば、図4のマルチキャストグループIPアドレステーブル210に相当)と、前記複数の受信側装置に、前記IPアドレス情報を配信する配信手段(例えば、図5の配信部222に相当)と、を備え、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する検索手段(例えば、図6の検索部511に相当)と、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する受信手段(例えば、図6の受信部503に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する補完手段(例えば、図6の補完部504に相当)と、を備えたことを特徴とするマルチキャスト配信システムを提案している。
この発明によれば、ルータが、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、ルータの配信手段は、複数の受信側装置に、IPアドレス情報を配信する。複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置の検索手段は、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する。受信手段は、検索した受信側装置から欠損データを受信する。補完手段は、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。つまり、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、その周知されたIPアドレス情報に基づいて、自分の近傍のマルチキャストグループの受信側装置に問い合わせをすることができる。
(3)本発明は、サーバ(例えば、図8のサーバ110に相当)と複数のルータ(例えば、図8のルータ230に相当)と複数の受信側装置(例えば、図8の受信側装置520a〜520fに相当)とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムであって、前記サーバが、予め通信環境に関する諸条件に基づいて、受信確率の高い受信側装置を複数決定し、決定した該受信側装置のIPアドレスを前記複数の受信側装置に配信する配信手段(例えば、図9の配信部112に相当)を備え、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する検索手段(例えば、図10の検索部521に相当)と、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する受信手段(例えば、図10の受信部503に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する補完手段(例えば、図10の補完部504に相当)と、を備えたことを特徴とするマルチキャスト配信システムを提案している。
この発明によれば、サーバの配信手段は、予め通信環境に関する諸条件に基づいて、受信確率の高い受信側装置を複数決定し、決定した受信側装置のIPアドレスを複数の受信側装置に配信する。複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置の検索手段は、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する。受信手段は、検索した受信側装置から欠損データを受信する。補完手段は、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。つまり、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、その周知されたIPアドレス情報に基づいて自分の近傍のマルチキャストグループの受信側装置に問い合わせをすることができる。
(4)本発明は、サーバ(例えば、図12のサーバ100に相当)と複数のルータ(例えば、図12のルータ220に相当)と複数の受信側装置(例えば、図12の受信側装置530a〜530fに相当)とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムであって、前記ルータが、データテーブル(例えば、図12のマルチキャストグループIPアドレステーブル210に相当)を備え、前記複数の受信側装置が、過去の受信結果を保存する保存手段(例えば、図13の保存部531に相当)と、該過去の受信結果に基づいて、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上であるか否かを判定する判定手段(例えば、図13の判定部532に相当)と、該正しく受信できた確率が所定のしきい値以上である場合に、その旨を示す信号とIPアドレスとを前記ルータに送信する送信手段(例えば、図13の送信部533に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記複数のルータのうち、最も近傍のルータに、前記データテーブル内のIPアドレスの開示を要求する開示要求手段と、該配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する検索手段(例えば、図13の検索部511に相当)と、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する受信手段(例えば、図13の受信部503に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する補完手段(例えば、図13の補完部504に相当)と、を備えたことを特徴とするマルチキャスト配信システムを提案している。
この発明によれば、複数の受信側装置の保存手段は、過去の受信結果を保存する。判定手段は、過去の受信結果に基づいて、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上であるか否かを判定する。送信手段は、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上である場合に、その旨を示す信号とIPアドレスとをルータに送信する。複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置の検索手段は、複数のルータのうち、最も近傍のルータに、データテーブル内のIPアドレスの開示を要求し、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する。受信手段は、検索した受信側装置から欠損データを受信する。補完手段は、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。これにより、受信側装置はルータや配信元から受信側装置のIPアドレス情報を入手できなくても、宣言した近傍の受信側装置に直接問い合わせることが可能になる。
(5)本発明は、サーバと複数のルータと複数の受信側装置とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムにおけるマルチキャスト配信方法であって、前記ルータが、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記複数のルータのうち、最も近傍のルータに、前記データテーブル内のIPアドレスの開示を要求する第1のステップ(例えば、図3のステップS101に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該開示されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する第2のステップ(例えば、図3のステップS103からステップS106に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する第3のステップ(例えば、図3のステップS108に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する第4のステップ(例えば、図3のステップS109に相当)と、を備えたことを特徴とするマルチキャスト配信方法を提案している。
この発明によれば、ルータは、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置は、複数のルータのうち、最も近傍のルータに、データテーブル内のIPアドレスの開示を要求し、開示されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索して、検索した受信側装置から欠損データを受信し、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。つまり、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、最も近傍にあるルータに対してルータが保持するマルチキャストグループIPアドレステーブルを問い合わせ、このテーブルを参照して他の受信側装置のIPアドレスを知ることができる。そのIPアドレスの中で、最もネットワーク上で近傍の1つの受信装置にマルチキャストで配信されたデータがあるかどうかを確認し、そのデータが正しく受信できたかどうかを問い合わせ、欠損データを送信可能であれば自分宛てに送ってもらうように要求する。もし、その受信側装置に配信されたコンテンツが存在しない、または正しく受信できていない、あるいは送信不可能な状態であれば、他の受信側装置に問い合わせを同様に繰り返していく。
(6)本発明は、サーバと複数のルータと複数の受信側装置とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムにおけるマルチキャスト配信方法であって、前記ルータが、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、前記ルータが、前記複数の受信側装置に、前記IPアドレス情報を配信する第1のステップ(例えば、図7のステップS201に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する第2のステップ(例えば、図7のステップS203からステップS206に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する第3のステップ(例えば、図7のステップS208に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する第4のステップ(例えば、図7のステップS209に相当)と、を備えたことを特徴とするマルチキャスト配信方法を提案している。
この発明によれば、ルータは、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、複数の受信側装置に、IPアドレス情報を配信する。複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置は、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索し、検索した受信側装置から欠損データを受信し、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。つまり、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、その周知されたIPアドレス情報に基づいて、自分の近傍のマルチキャストグループの受信側装置に問い合わせをすることができる。
(7)本発明は、サーバと複数のルータと複数の受信側装置とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムにおけるマルチキャスト配信方法であって、前記サーバが、予め通信環境に関する諸条件に基づいて、受信確率の高い受信側装置を複数決定し、決定した該受信側装置のIPアドレスを前記複数の受信側装置に配信する第1のステップ(例えば、図10のステップS301に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する第2のステップ(例えば、図10のステップS303からステップS306に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する第3のステップ(例えば、図10のステップS308に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する第4のステップ(例えば、図10のステップS309に相当)と、を備えたことを特徴とするマルチキャスト配信方法を提案している。
この発明によれば、サーバは、予め通信環境に関する諸条件に基づいて、受信確率の高い受信側装置を複数決定し、決定した受信側装置のIPアドレスを複数の受信側装置に配信する。複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置は、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索し、検索した受信側装置から欠損データを受信し、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。つまり、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、その周知されたIPアドレス情報に基づいて自分の近傍のマルチキャストグループの受信側装置に問い合わせをすることができる。
(8)本発明は、サーバと複数のルータと複数の受信側装置とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムにおけるマルチキャスト配信方法であって、前記複数の受信側装置が、過去の受信結果を保存する第1のステップ(例えば、図14のステップS401に相当)と、前記複数の受信側装置が、該過去の受信結果に基づいて、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上であるか否かを判定する第2のステップ(例えば、図14のステップS402に相当)と、前記複数の受信側装置が、該正しく受信できた確率が所定のしきい値以上である場合に、その旨を示す信号とIPアドレスとを前記ルータに送信する第3のステップ(例えば、図14のステップS403に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記複数のルータのうち、最も近傍のルータに、前記データテーブル内のIPアドレスの開示を要求する第4のステップ(例えば、図14のステップS404に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する第5のステップ(例えば、図14のステップS406からステップS409に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する第6のステップ(例えば、図14のステップS411に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する第7のステップ(例えば、図14のステップS412に相当)と、を備えたことを特徴とするマルチキャスト配信方法を提案している。
この発明によれば、複数の受信側装置は、過去の受信結果を保存し、過去の受信結果に基づいて、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上であるか否かを判定して、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上である場合に、その旨を示す信号とIPアドレスとをルータに送信する。複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置は、複数のルータのうち、最も近傍のルータに、データテーブル内のIPアドレスの開示を要求し、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索し、検索した受信側装置から欠損データを受信し、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。これにより、受信側装置はルータや配信元から受信側装置のIPアドレス情報を入手できなくても、宣言した近傍の受信側装置に直接問い合わせることが可能になる。
(9)本発明は、サーバと複数のルータと複数の受信側装置とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムにおけるマルチキャスト配信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記ルータが、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記複数のルータのうち、最も近傍のルータに、前記データテーブル内のIPアドレスの開示を要求する第1のステップ(例えば、図3のステップS101に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該開示されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する第2のステップ(例えば、図3のステップS103からステップS106に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する第3のステップ(例えば、図3のステップS108に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する第4のステップ(例えば、図3のステップS109に相当)と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
この発明によれば、ルータは、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置は、複数のルータのうち、最も近傍のルータに、データテーブル内のIPアドレスの開示を要求し、開示されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索して、検索した受信側装置から欠損データを受信し、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。つまり、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、最も近傍にあるルータに対してルータが保持するマルチキャストグループIPアドレステーブルを問い合わせ、このテーブルを参照して他の受信側装置のIPアドレスを知ることができる。そのIPアドレスの中で、最もネットワーク上で近傍の1つの受信装置にマルチキャストで配信されたデータがあるかどうかを確認し、そのデータが正しく受信できたかどうかを問い合わせ、欠損データを送信可能であれば自分宛てに送ってもらうように要求する。もし、その受信側装置に配信されたコンテンツが存在しない、または正しく受信できていない、あるいは送信不可能な状態であれば、他の受信側装置に問い合わせを同様に繰り返していく。
(10)本発明は、サーバと複数のルータと複数の受信側装置とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムにおけるマルチキャスト配信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記ルータが、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、前記ルータが、前記複数の受信側装置に、前記IPアドレス情報を配信する第1のステップ(例えば、図7のステップS201に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する第2のステップ(例えば、図7のステップS203からステップS206に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する第3のステップ(例えば、図7のステップS208に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する第4のステップ(例えば、図7のステップS209に相当)と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
この発明によれば、ルータは、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存したデータテーブルを備え、複数の受信側装置に、IPアドレス情報を配信する。複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置は、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索し、検索した受信側装置から欠損データを受信し、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。つまり、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、その周知されたIPアドレス情報に基づいて、自分の近傍のマルチキャストグループの受信側装置に問い合わせをすることができる。
(11)本発明は、サーバと複数のルータと複数の受信側装置とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムにおけるマルチキャスト配信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記サーバが、予め通信環境に関する諸条件に基づいて、受信確率の高い受信側装置を複数決定し、決定した該受信側装置のIPアドレスを前記複数の受信側装置に配信する第1のステップ(例えば、図10のステップS301に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する第2のステップ(例えば、図10のステップS303からステップS306に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する第3のステップ(例えば、図10のステップS308に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する第4のステップ(例えば、図10のステップS309に相当)と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
この発明によれば、サーバは、予め通信環境に関する諸条件に基づいて、受信確率の高い受信側装置を複数決定し、決定した受信側装置のIPアドレスを複数の受信側装置に配信する。複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置は、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索し、検索した受信側装置から欠損データを受信し、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。つまり、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、その周知されたIPアドレス情報に基づいて自分の近傍のマルチキャストグループの受信側装置に問い合わせをすることができる。
(12)本発明は、サーバと複数のルータと複数の受信側装置とからなり、該サーバから該複数の受信側装置にデータを一斉配信するマルチキャスト配信システムにおけるマルチキャスト配信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記複数の受信側装置が、過去の受信結果を保存する第1のステップ(例えば、図14のステップS401に相当)と、前記複数の受信側装置が、該過去の受信結果に基づいて、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上であるか否かを判定する第2のステップ(例えば、図14のステップS402に相当)と、前記複数の受信側装置が、該正しく受信できた確率が所定のしきい値以上である場合に、その旨を示す信号とIPアドレスとを前記ルータに送信する第3のステップ(例えば、図14のステップS403に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記複数のルータのうち、最も近傍のルータに、前記データテーブル内のIPアドレスの開示を要求する第4のステップ(例えば、図14のステップS404に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、該配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する第5のステップ(例えば、図14のステップS406からステップS409に相当)と、前記複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置が、前記検索した受信側装置から該欠損データを受信する第6のステップ(例えば、図14のステップS411に相当)と、該受信した欠損データにより、前記配信されたデータを補完する第7のステップ(例えば、図14のステップS412に相当)と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
この発明によれば、複数の受信側装置は、過去の受信結果を保存し、過去の受信結果に基づいて、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上であるか否かを判定して、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上である場合に、その旨を示す信号とIPアドレスとをルータに送信する。複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置は、複数のルータのうち、最も近傍のルータに、データテーブル内のIPアドレスの開示を要求し、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索し、検索した受信側装置から欠損データを受信し、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。これにより、受信側装置はルータや配信元から受信側装置のIPアドレス情報を入手できなくても、宣言した近傍の受信側装置に直接問い合わせることが可能になる。
本発明によれば、欠損データが生じた受信側装置が、正しく受信できた受信側装置がネットワーク上の近傍で、どこに存在するかを知ることが可能になり、容易に問い合わせできるようになることから、正しく受信できた受信側装置から直接データを受信することにより、確実に欠損データを補完することができるという効果がある。これにより、マルチキャスト配信を行う送信元は新たな機能を付加して処理作業の負荷を増大させることなく、また、近傍の受信装置間による送受信のため遅延時間が少なく、ネットワークトラフィックの増大を招かずに、さらにダウンロードおよびリアルタイムのマルチキャスト配信の場合にも適用でき、正しく受信できなかった欠損データを確実に補完できるという効果が得られる。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
<第1の実施形態>
図1から図3を用いて、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムについて説明する。
<マルチキャスト配信システムの一部の構成>
図1に示すように、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムの一部は、サーバ100と、ルータ200と、スイッチ300と、アクセスポイント400と、受信側装置500a〜500fとから構成され、ルータ200は、マルチキャストグループIPアドレステーブル210を備えている。なお、ここでは、受信側装置500bが配信されたデータの一部に欠損があるものとして、以下、説明する。
サーバ100は、配信元装置であり、配信対象データを構成する各部分データに誤り検出符号を付加してマルチキャスト通信により複数の受信側装置500a〜500f(配信先装置)へ送信する。
ルータ200は、2つ以上の異なるネットワーク間を相互接続する通信機器であり、通常はOSI基本参照モデルでの第1層(物理層)から第3層(ネットワーク層)までの接続を担う。一般的に用いられるルータは、基本機能として各ネットワーク間でのIPパケット(第3層)をやり取りできるようにする装置であるが、実際は基本に加えてさまざまな付加機能を実現している。
なお、マルチキャスト配信では、ルータはマルチキャスト配信に参加するグループを管理するためのプロトコルであるIGMP(nternet Group Management Protocol)を用いている(例えば非特許文献1及び2参照)。マルチキャストの配信に参加を希望する受信側装置500a〜500fはIGMPを用いて、ルータ200にマルチキャストメンバーシップレポートであるJoin信号を送信し、マルチキャストグループに加入する。これにより、ルータ200は、マルチキャストグループに参加する受信装置のIPアドレスをマルチキャストグループIPアドレステーブル210に記録し保持している。ルータ200は、定期的にIGMPでQuery信号を送信し、ルータ200の送信先にマルチキャストグループに属する受信側装置500a〜500fが存在しているかどうかを確認し、受信側装置500a〜500fからマルチキャストメンバーシップレポートによる返答が無くなるまでマルチキャストグループIPアドレステーブル210を維持している。
スイッチ300は、複数のアクセスポイント400に対する切り替えを行う通信機器である。アクセスポイント400は、無線LANクライアントを、相互に接続したり、他のネットワークに接続する無線機の一種である。受信側装置500a〜500fは、マルチキャスト配信するデータを受信する通信機器である。
<受信側装置の構成>
図2に示すように、受信側装置500a〜500fは、開示要求部501と、検索部502と、受信部503と、補完部504とから構成されている。
開示要求部501は、複数のルータ200のうち、最も近傍のルータに、マルチキャストグループIPアドレステーブル210内のIPアドレスの開示を要求する。検索部502は、開示されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する。受信部503は、ルータ200、スイッチ300、アクセスポイント400を介して、サーバ100からマルチキャスト配信されるデータを受信するとともに、検索した受信側装置から欠損データを受信する。補完部504は、受信した欠損データにより、配信されたデータを補完する。
具体的には、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置(図1の受信側装置500b)は、最も近傍にあるルータ200に対してルータ200が保持するマルチキャストグループIPアドレステーブル210内のIPアドレスを問い合わせ、このマルチキャストグループIPアドレステーブル210を参照して他の受信側装置500c、500eのIPアドレスを知ることができる。そのIPアドレスの中で、最もネットワーク上で近傍の1つの受信側装置にマルチキャストで配信されたデータがあるかどうかを確認し、そのデータが正しく受信できたかどうかを問い合わせ、欠損データを送信可能であれば、データを送信してもらうように要求する。仮に、その受信側装置に配信されたコンテンツが存在しない、または正しく受信できていない、あるいは送信不可能な状態であれば、他の受信側装置に問い合わせを同様に繰り返していく。
なお、ネットワーク上で近傍の受信側装置の探索は、IPアドレスにおけるセグメントを用いたり、ネットワークで使用されるTTL(Time To Live)値や、ルーティングテーブルにあるメトリック(またはホップ数)により経由するルータの数が少ないネットワークを選択することで可能になる。
<マルチキャスト配信システムの処理>
図3を用いて、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムの処理について説明する。 複数の受信側装置500a〜500fのうち、欠損データがある受信側装置500bが、複数のルータ200のうち、最も近傍のルータに、マルチキャストグループIPアドレステーブル210内のIPアドレスの開示を要求し(ステップS101)、近傍の受信側装置500c、500eのIPアドレスを選択して(ステップS102)、選択した近傍の受信側装置との問い合わせを開始する(ステップS103)。
問い合わせの内容としては、まず、同一のコンテンツがあるか(ステップS104)を問い合わせ、ない場合(ステップS104の「No」)には、ステップS101に戻る。一方、ある場合には、次に、そのコンテンツを正しく受信できたか否か(ステップS105)を問い合わせ、正しく受信できていない場合(ステップS105の「No」)には、ステップS101に戻る。一方、正しく受信できている場合には、次に、そのデータを送信可能か否か(ステップS106)を問い合わせ、送信可能でない場合(ステップS106の「No」)には、ステップS101に戻る。
一方、送信可能な場合(ステップS106の「Yes」)には、欠損データの送信要求を行い(ステップS107)、欠損データの受信が完了する(ステップS108)と、補完処理を実行する(ステップS109)。
以上、説明したように、本実施形態によれば、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置は、最も近傍にあるルータに対してルータが保持するマルチキャストグループIPアドレステーブルを問い合わせ、このマルチキャストグループIPアドレステーブルを参照して他の受信側装置のIPアドレスを知ることができる。そのIPアドレスの中で、最もネットワーク上で近傍の1つの受信装置にマルチキャストで配信されたデータがあるかどうかを確認し、そのデータが正しく受信できたかどうかを問い合わせ、欠損データを送信可能であれば自分宛てに送ってもらうように要求する。もし、その受信側装置に配信されたコンテンツが存在しない、または正しく受信できていない、あるいは送信不可能な状態であれば、他の受信側装置に問い合わせを同様に繰り返していくため、欠損データが生じた受信側装置が、正しく受信できた受信側装置がネットワーク上の近傍で、どこに存在するかを知ることが可能になり、容易に問い合わせできるようになることから、正しく受信できた受信側装置から直接データを受信することにより、確実に欠損データを補完することができるという効果がある。
<第2の実施形態>
図4から図7を用いて、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムについて説明する。
<マルチキャスト配信システムの一部の構成>
図4に示すように、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムの一部は、サーバ100と、ルータ220と、スイッチ300と、アクセスポイント400と、受信側装置510a〜510fとから構成され、ルータ220は、マルチキャストグループIPアドレステーブル211を備えている。なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。また、ルータ220および受信側装置510a〜510fの詳細については、後述する。さらに、ここでは、受信側装置500aが配信されたデータの一部に欠損があるものとして、以下、説明する。
<ルータの構成>
図5に示すように、本実施形態に係るルータは、データテーブル(マルチキャストグループIPアドレステーブル)221と、配信部222とから構成されている。
マルチキャストグループIPアドレステーブル221は、マルチキャスト配信に参加を表明した受信側装置のIPアドレスを保存する。配信部222は、複数の受信側装置510a、510c、510fに、IPアドレス情報を配信する。
<受信側装置の構成>
図6に示すように、受信側装置510a〜510fは、検索部511と、受信部503と、補完部504とから構成されている。
検索部511は、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置510c、510fに、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する。
具体的には、正しくマルチキャストを受信できず欠損データがある受信側装置510aは、最も近傍にあるルータ220から配信されるマルチキャストグループIPアドレステーブル211を参照して他の受信側装置510c、510fのIPアドレスを知ることができる。そのIPアドレスの中で、最もネットワーク上で近傍の1つの受信側装置にマルチキャストで配信されたデータがあるかどうかを確認し、そのデータが正しく受信できたかどうかを問い合わせ、欠損データを送信可能であれば、データを送信してもらうように要求する。仮に、その受信側装置に配信されたコンテンツが存在しない、または正しく受信できていない、あるいは送信不可能な状態であれば、他の受信側装置に問い合わせを同様に繰り返していく。
なお、ネットワーク上で近傍の受信側装置の探索は、IPアドレスにおけるセグメントを用いたり、ネットワークで使用されるTTL(Time To Live)値や、ルーティングテーブルにあるメトリック(またはホップ数)により経由するルータの数が少ないネットワークを選択することで可能になる。
<マルチキャスト配信システムの処理>
図7を用いて、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムの処理について説明する。まず、ルータ220が、複数の受信側装置510a〜510fに、マルチキャストグループIPアドレステーブル211内のIPアドレス情報を配信する(ステップS201)。
複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置510aは、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置510c、510fに、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索し、近傍の受信側装置のIPアドレスを選択して(ステップS202)、選択した近傍の受信側装置との問い合わせを開始する(ステップS203)。
問い合わせの内容としては、まず、同一のコンテンツがあるか(ステップS204)を問い合わせ、ない場合(ステップS204の「No」)には、ステップS201に戻る。一方、ある場合には、次に、そのコンテンツを正しく受信できたか否か(ステップS205)を問い合わせ、正しく受信できていない場合(ステップS205の「No」)には、ステップS201に戻る。一方、正しく受信できている場合には、次に、そのデータを送信可能か否か(ステップS206)を問い合わせ、送信可能でない場合(ステップS206の「No」)には、ステップS201に戻る。
一方、送信可能な場合(ステップS206の「Yes」)には、欠損データの送信要求を行い(ステップS207)、欠損データの受信が完了する(ステップS208)と、補完処理を実行する(ステップS209)。
以上、説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様にルータ220は、Join信号を受け、既にマルチキャストグループIPアドレステーブル211を保持しているとする。ルータ220は、マルチキャストグループに参加している受信装置のマルチキャストグループIPアドレステーブルを、マルチキャストグループに参加している各受信装置に対して、マルチキャスト配信と同時あるいは前後の時刻に配信し周知する。これにより、正しく受信できなかった受信装置はその周知されたIPアドレス情報に基づいて、自分の近傍のマルチキャストグループの受信装置に欠損データについての問い合わせをすることができる。
<第3の実施形態>
図8から図11を用いて、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムについて説明する。
<マルチキャスト配信システムの一部の構成>
図8に示すように、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムの一部は、サーバ110と、ルータ230と、スイッチ300と、アクセスポイント400と、受信側装置520a〜520fとから構成されている。なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。また、サーバ110および受信側装置520a〜520fの詳細については、後述するが、ルータ230については、通常のルーティング動作のみを行うことから詳細な説明は、省略する。さらに、ここでは、受信側装置520aが配信されたデータの一部に欠損があるものとして、以下、説明する。
<サーバの構成>
図9に示すように、本実施形態に係るサーバは、指定部111と、配信部112とを備えている。
指定部111は、予め通信環境に関する諸条件に基づいて、受信確率の高い受信側装置520c、520fを決定する。配信部112は、指定部111が決定した受信側装置520c、520fのIPアドレスを他の受信側装置に配信する。
<受信側装置の構成>
図10に示すように、受信側装置520a〜520fは、検索部521と、受信部503と、補完部504とから構成されている。
検索部521は、サーバ110が指定し、そのIPアドレスを配信した受信確率の高い受信側装置520c、520fのIPアドレスのうち、該当する受信側装置に、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索する。
具体的には、配信元であるサーバ110は、配信元が所有するマルチキャスト配信を正しく受信できる確率の高い複数の受信側装置520c、520fをマルチキャスト配信の前に配置し指定しておく。あるいは、配信元が所有する受信側装置ではなく、利用者であるマルチキャストグループの受信側装置の中から正しく受信できる確率の高い受信装置を指定してもよい。
なお、配信元が所有する受信確率の高い受信側装置については、事前に配信元が試験して正しく受信できる確率が一定以上であることを確認して分散配置しておき、これを指定する。あるいは、利用者であるマルチキャストグループの受信側装置の場合は、その受信側装置の過去の受信状況のレポートを事前に配信元が収集し、正しく受信できた確率が一定以上であったことを確認し、これを指定する。
配信元はそれら指定する受信装置のIPアドレス情報を、マルチキャスト配信と同時あるいは、前後の時刻に、マルチキャストグループの全ての受信側装置に送信し指定しておく。
<マルチキャスト配信システムの処理>
図11を用いて、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムの処理について説明する。まず、サーバ110が、それぞれの受信側装置520a〜520fに指定した受信側装置520c、520fのIPアドレスの配信する(ステップS301)。
複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置520aは、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置520c、520fに、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索し、近傍の受信側装置のIPアドレスを選択して(ステップS302)、選択した近傍の受信側装置との問い合わせを開始する(ステップS303)。
問い合わせの内容としては、まず、同一のコンテンツがあるか(ステップS304)を問い合わせ、ない場合(ステップS304の「No」)には、ステップS301に戻る。一方、ある場合には、次に、そのコンテンツを正しく受信できたか否か(ステップS305)を問い合わせ、正しく受信できていない場合(ステップS305の「No」)には、ステップS301に戻る。一方、正しく受信できている場合には、次に、そのデータを送信可能か否か(ステップS306)を問い合わせ、送信可能でない場合(ステップS306の「No」)には、ステップS301に戻る。
一方、送信可能な場合(ステップS306の「Yes」)には、欠損データの送信要求を行い(ステップS307)、欠損データの受信が完了する(ステップS308)と、補完処理を実行する(ステップS309)。
以上、説明したように、本実施形態によれば、配信元であるサーバが、配信元が所有するマルチキャスト配信を正しく受信できる確率の高い複数の受信側装置をマルチキャスト配信の前に配置し指定して、それら指定する受信装置のIPアドレス情報を、マルチキャスト配信と同時あるいは、前後の時刻に、マルチキャストグループの全ての受信側装置に送信することから、マルチキャスト配信を正しく受信できなかった受信装置は、その周知されたIPアドレス情報に基づいて自分の近傍のマルチキャストグループの受信装置に問い合わせをすることができる。
<第4の実施形態>
図12から図14を用いて、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムについて説明する。
<マルチキャスト配信システムの一部の構成>
図12に示すように、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムの一部は、サーバ100と、ルータ220と、スイッチ300と、アクセスポイント400と、受信側装置530a〜530fとから構成されている。なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。また、受信側装置530a〜530fの詳細については、後述する。さらに、ここでは、受信側装置530aが配信されたデータの一部に欠損があるものとして、以下、説明する。
<受信側装置の構成>
図13に示すように、受信側装置530a〜530fは、保存部531と、判定部532と、送信部533と、検索部511と、受信部503と、補完部504とから構成されている。
保存部531は、過去の受信結果を保存する。判定部532は、過去の受信結果に基づいて、正しく受信できた確率が所定のしきい値以上であるか否かを判定する。送信部533は、該正しく受信できた確率が所定のしきい値以上である場合に、その旨を示す信号とIPアドレスとをルータ220に送信する。
具体的には、マルチキャストグループの受信側装置は欠損データ補完の問い合わせを受け入れ対応が可能である場合に、ルータに対して「問い合わせ対応可能」を宣言しておき、ルータから宣言した複数の受信側装置のIPアドレスを、一括してマルチキャストグループの受信側装置に配信する。
あるいは、問い合わせの受け入れ対応が可能な受信側装置は自ら、マルチキャスト配信で使用するマルチキャストIPアドレスを用いて近傍の受信側装置に対し、自分のIPアドレスを送信して「問い合わせ対応可能」を宣言してもよい。
「問い合わせ対応可能」を宣言する受信側装置は、過去のマルチキャスト配信の受信状況から、すべて正しく受信できている、あるいは正しく受信できる確率が一定の閾値以上であることを確認していることが条件である。
一方、安全性を考慮して偽りの宣言による混乱を避けるため、必要に応じて第3の実施形態のように、過去の正しく受信できた確率のレポートを配信元であるサーバに送り届け、配信元から受信側装置の認証を事前に得ておいてもよい。このとき、認証は公開鍵暗号方式のデジタル署名で受信装置の本人確認をしてもよい。
<マルチキャスト配信システムの処理>
図14を用いて、本実施形態に係るマルチキャスト配信システムの処理について説明する。まず、それぞれの受信側装置530a〜530fが、過去の受信結果を保存し(ステップS401)、正しく受信できた確率が所定の閾値以上か否かを確認する(ステップS402)。
このとき、正しく受信できた確率が所定の閾値以下であれば(ステップS402の「No」)、ステップS401に戻り、所定の閾値以上であれば(ステップS402の「Yes」)受信側装置が、正しく受信できた確率が所定の閾値以上である旨の信号とIPアドレスとをルータ220に送信する(ステップS403)。
そして、最も近傍のルータ220に、マルチキャストグループIPアドレスデータテーブル内のIPアドレスの開示を要求し(ステップS404)、複数の受信側装置のうち、欠損データがある受信側装置530aは、配信されたIPアドレスのうち、該当する受信側装置520c、520eに、マルチキャストで配信されたデータを正しく受信できたかどうかを問い合わせ、正しく受信できた受信側装置を検索し、近傍の受信側装置のIPアドレスを選択して(ステップS405)、選択した近傍の受信側装置との問い合わせを開始する(ステップS406)。
問い合わせの内容としては、まず、同一のコンテンツがあるか(ステップS407)を問い合わせ、ない場合(ステップS407の「No」)には、ステップS401に戻る。一方、ある場合には、次に、そのコンテンツを正しく受信できたか否か(ステップS408)を問い合わせ、正しく受信できていない場合(ステップS408の「No」)には、ステップS401に戻る。一方、正しく受信できている場合には、次に、そのデータを送信可能か否か(ステップS409)を問い合わせ、送信可能でない場合(ステップS409の「No」)には、ステップS401に戻る。
一方、送信可能な場合(ステップS409の「Yes」)には、欠損データの送信要求を行い(ステップS410)、欠損データの受信が完了する(ステップS411)と、補完処理を実行する(ステップS412)。
以上、説明したように、本実施形態によれば、マルチキャストグループの受信側装置は欠損データ補完の問い合わせを受け入れ対応が可能である場合に、ルータに対して「問い合わせ対応可能」を宣言しておき、ルータから宣言した複数の受信側装置のIPアドレスを、一括してマルチキャストグループの受信側装置に配信するため、受信側装置はIPアドレス情報を入手し、宣言した近傍の受信側装置に直接問い合わせることが可能になる。
なお、マルチキャスト配信システムの処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをサーバ、ルータ、受信側装置に読み込ませ、実行することによって本発明のマルチキャスト配信システムを実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、第1の実施形態から第4の実施形態において、受信側装置間で問い合わせして欠損データを送受信し、あるいは問い合わせできるIPアドレスを他の受信側装置に周知、指定、宣言する配信方法は、マルチキャスト配信する同じネットワークを使用するだけではなく、他の通信方法のネットワークを使用することが考えられる。たとえば、無線LANをマルチキャスト配信で使用している場合は有線LAN、WiMAX(登録商標)、携帯網を用いる、および同室内などであれば近距離通信であるBluetooth(登録商標)、UWB、ZigBee、NFC、RFIDなどを用いることが可能である。このように他の通信手段を併用すると、リアルタイムのデータをマルチキャスト配信している最中であっても、マルチキャスト配信のネットワークを混雑させずに受信端末間で欠損データを送受信して補完が可能になる。また、マルチキャスト配信を無線LANによる例示で説明したが、無線LANだけでなく、その他の無線通信方式や可視光通信方式、有線方式によるマルチキャスト配信の場合も同様に本発明を使用できる。
また、送信する全データの部分である欠損データを補完する場合、マルチキャスト配信の全データを複数の部分データに分割して送信する。この部分データは伝送パケット単位や誤り訂正(FEC)により分割したデータブロック単位でよく、それぞれパケットIDやシーケンスNo.などを用いて部分データを個別に識別可能である。