JP5855988B2 - リチウム二次電池の正極活物質粉末、及びリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池の正極活物質粉末、及びリチウム二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池の正極活物質粉末、及びこれを用いたリチウム二次電池に関する。
リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池と称されることもある)の正極を構成する正極活物質として、リチウムとマンガンを構成元素として含む、スピネル構造のマンガン酸リチウムが知られている。本出願人は、この種の正極活物質の粉末において、単一粒子の割合を所定割合以上とすることで、高いレート特性を得る、という提案を、既に行った(特開2010−212260号公報参照。)。ここで、「単一粒子」とは、詳細な定義は後述するが、概説すると、1個の単結晶一次粒子が、多結晶粒子や凝集粒子を形成せずに、実質的に単独で存在している結晶粒子のことをいう(但し、当該単結晶一次粒子に他の微粒子が付着することはあり得る。)。
本発明の目的は、リチウム二次電池における、充放電容量、耐久性及びレート特性をよりいっそう向上させること、及び、リチウム二次電池における充放電容量、耐久性及びレート特性をよりいっそう向上させることができる、リチウム二次電池の正極活物質粉末(以下、単に「正極活物質粉末」と称する。)を提供することにある。
本発明のリチウム二次電池は、多数の正極活物質粒子を含む正極と、負極活物質を含む負極と、を備えている。また、本発明の正極活物質粉末は、多数の前記正極活物質粒子の集合体であって、前記正極を製造する際に用いられるものである。前記正極活物質粒子は、リチウムとマンガンを構成元素として含む、スピネル構造のマンガン酸リチウムの粒子である。
本発明の特徴は、
粒径が2dより大きな粒子の体積割合が、全体の5%以下であり、
粒径が0.5dより小さな粒子の体積割合が、全体の5〜35%であり、
粒径が0.5dより大きな粒子のうちの40面積%以上が、単一粒子である
ことにある。
ここで、「d」は、レーザ回折法による体積基準の粒度分布におけるモード径(最大頻度の粒径)である。また、「面積%」は、多数の粒子中の特定のものの割合を、所定平面における専有面積を基準として百分率で表したものである。すなわち、「面積%」は、粒径の計測が可能な全ての粒子が占有する面積をAとし、特定の(着目する)特性の粒子が占有する面積をaとした場合に、以下の式により算出される。なお、これらの面積は、例えば、電子顕微鏡等による撮影画像を市販の画像処理ソフトウェアで処理することによって取得可能である。
100・a/A
「単一粒子」とは、下記(1)及び(2)をともに満たすことで、実質的に単独で存在する粒子をいう:(1)粒径の1/2以上の大きさのスピネル構造のマンガン酸リチウム単結晶一次粒子を含む。(2)前記単結晶一次粒子と同等の大きさの他のスピネル構造のマンガン酸リチウム粒子との間で凝集を形成しない、又は、前記単結晶一次粒子の前記他のマンガン酸リチウム粒子との間の付着部が当該単結晶一次粒子の周回の長さの1/5以下の長さとなる。但し、「単一粒子」には、前記単結晶一次粒子に対して、これよりも小径の微粒子等の付着物が付着したものが含まれる。
具体的には、例えば、BiやBiMn10等のビスマス化合物が、前記付着物として、前記単結晶一次粒子に付着し得る。この場合、前記正極活物質粒子は、上述のビスマス化合物(例えばBi及び/又はBiMn10)を、ビスマスのマンガンに対する割合が0.005〜0.5mol%となる範囲で含有している。
前記正極活物質粒子は、結晶性が高いことが好適である。具体的には、前記正極活物質粒子は、粉末X線回折パターンにおけるマンガン酸リチウムの格子歪(η)の値が0.7×10−3以下となるように形成されていることが好適である。
前記正極活物質粒子は、凝集粒子が少ないことが好適である。具体的には、前記正極活物質粉末におけるメディアン径D50[μm]と、BET比表面積から下記式(1)を用いて算出したDBET[μm]と、の比D50/DBETが、1〜6となるように、前記正極活物質粒子が形成されていることが好適である。
BET=6/(M・S) …(1)
(上記式(1)中、Mは前記正極活物質粉末の真密度[g/cm]を示し、SはBET比表面積[m/g]を示す。)
また、前記正極活物質粉末は、大粒径に(具体的には前記モード径dが8〜25μmとなるように)形成されていることが好適である。
本発明による、充放電容量、耐久性及びレート特性の向上効果の理由については、鋭意研究中であり現在のところ完全には明らかにはなっていないが、以下のように推定される。
(A)活物質充填密度の増大:比較的小さな粒径の前記正極活物質粒子(具体的には粒径が0.3dより小のもの:これを以下「小粒子」と称する。)と、これよりも大きな粒径の前記正極活物質粒子(すなわち粒径がd近辺:これを以下「大粒子」と称する。)と、が一定割合で共存することにより、隣り合う前記大粒子同士の間隙に前記小粒子が入り込む。これにより、前記正極における正極活物質の充填密度が増大し、以て単位体積あたりの充放電容量が向上する。
(B)電極作製時の粒子内のクラック発生の抑制:単一粒子化された前記大粒子のみを単独で用いて前記正極を作成した場合、同一粒径の多結晶粒子を用いた場合と比較して、粒子内におけるクラックが発生しやすい。かかるクラックは、主として、混合等の工程中に、粒子同士が衝突することで発生する。特に、前記大粒子にビスマス化合物等の付着物が付着している場合、当該付着物の付着部への応力集中が生じることで、クラックがさらに発生しやすくなる。
この点、本発明においては、前記正極の作成工程中の前記正極活物質粒子の内部のクラックの発生が、隣り合う前記大粒子同士の間隙に入り込んだ前記小粒子の緩衝作用によって、良好に抑制される。したがって、前記正極活物質粒子の内部のクラックの発生による充放電容量の低下が、良好に抑制される。特に、単一粒子化された前記正極活物質粒子(前記大粒子)を用いることによるレート特性の向上効果が、より良好に発現される。
(C)充放電時の粒子内のクラック発生の抑制:周知の通り、前記正極活物質粒子は、充放電時に体積が膨張・収縮する。このとき、前記正極活物質粒子の内部にて、クラックが生じることがあり得る。この点、単一粒子化された前記正極活物質粒子は、同一粒径の多結晶粒子のように粒界における応力緩和が生じないため、充放電時の体積膨張・収縮に伴うクラックが発生しやすいのが通常である。
これに対し、本発明においては、隣り合う前記大粒子同士の間隙に前記小粒子が入り込むことで、前記正極内(正極活物質層内)における圧密性(consolidation characteristics)が向上し、前記大粒子が受ける等方的な圧縮応力がより大きくなる。これにより、充放電時の体積膨張・収縮に伴うクラックの発生が抑制されて耐久性が向上する。また、万一クラックが発生した場合であっても、当該発生したクラックが圧縮応力によって閉じられることで、前記正極活物質粒子内のリチウムイオンの移動による導電性が維持され、以て充放電容量の低下が良好に抑制される。
(D)充放電時の粒子表面に沿った空隙発生の抑制:上述のような前記正極活物質粒子の充放電時の体積の膨張・収縮により、前記正極内にて、前記正極活物質粒子の表面に沿って空隙が発生することがあり得る。かかる空隙は、例えば、前記正極活物質粒子と、これを分散状態で支持する導電性の結着材と、の剥離によって生じる。かかる空隙が発生すると、前記正極材表面における電子伝導性が損なわれ、正極材へのリチウム出入りが困難となり、充放電容量が低下する。この点、単一粒子化された前記正極活物質粒子は、同一粒径の多結晶粒子と比較して表面の凹凸が小さいため、上述のような空隙(剥離)が発生しやすい。
これに対し、本発明においては、隣り合う前記大粒子同士の間隙に前記小粒子が入り込むことで、上述のように前記正極内(正極活物質層内)における圧密性が向上し、前記大粒子が受ける等方的な圧縮応力がより大きくなる。これにより、上述のような空隙(剥離)の発生が良好に抑制され、以て耐久性が向上する。また、前記正極内におけるリチウムイオンの移動による導電性が向上するため、レート特性が向上する。
図1Aは、本発明の一実施形態であるリチウム二次電池の概略構成を示す断面図である。 図1Bは、図1Aに示されている正極板の拡大断面図である。 図2は、図1Bに示されている正極活物質粒子(実施例3)の集合体としての正極活物質粉末の粒度分布を示すグラフである。 図3Aは、図1Bに示されている正極活物質粒子の模式図である。 図3Bは、図1Bに示されている正極活物質粒子の模式図である。 図3Cは、図1Bに示されている正極活物質粒子の模式図である。 図3Dは、図1Bに示されている正極活物質粒子の模式図である。 図4は、図1Bに示されている正極活物質粒子の外観を示す、走査電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の好適な実施形態を、実施例及び比較例を用いつつ説明する。なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。
よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態や実施例の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態や実施例に対して施され得る各種の変更(modification)の例示は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、可能な限り末尾にまとめて記載されている。
1.リチウム二次電池の概略構成
図1Aは、本発明の一実施形態であるリチウム二次電池1の概略構成を示す断面図である。図1Aを参照すると、本実施形態のリチウム二次電池1は、いわゆる液体型であって、電池ケース2と、セパレータ3と、電解質4と、負極5と、正極6と、を備えている。
セパレータ3は、電池ケース2内を二分するように設けられている。電池ケース2内には、液体の電解質4が収容されているとともに、負極5及び正極6がセパレータ3を隔てて対向するように設けられている。
電解質4としては、例えば、電気特性や取り扱い易さから、有機溶媒等の非水系溶媒にリチウム塩等の電解質塩を溶解させた、非水溶媒系の電解液が好適に用いられる。もっとも、ポリマー電解質、ゲル電解質、有機固体電解質、無機固体電解質も、電解質4として問題なく用いることができる。
非水電解液の溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピオンカーボネート等の鎖状エステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の誘電率の高い環状エステル;鎖状エステルと環状エステルの混合溶媒;等を用いることができ、鎖状エステルを主溶媒とした環状エステルとの混合溶媒が特に適している。
非水電解液の調製にあたって上述の溶媒に溶解させる電解質塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(RfSO)(Rf′SO)、LiC(RfSO、LiCnF2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO)2[ここでRfとRf′はフルオロアルキル基]、等を用いることができる。これらは、それぞれ単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上述の電解質塩の中でも、炭素数2以上の含フッ素有機リチウム塩が特に好ましい。この含フッ素有機リチウム塩は、アニオン性が大きく、かつイオン分離しやすいので、上述の溶媒に溶解し易いからである。非水電解液中における電解質塩の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.3mol/l以上、より好ましくは0.4mol/l以上であって、1.7mol/l以下、より好ましくは1.5mol/l以下であることが望ましい。
負極5に係る負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵、放出できるものであればよく、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素質材料が用いられる。また、金属リチウムや、ケイ素,スズ、インジウム等を含む合金、リチウムに近い低電位で充放電できるケイ素,スズ等の酸化物、Li2.6Co0.4N等のリチウムとコバルトとの窒化物、等のリチウム吸蔵物質も、負極活物質として用いることができる。さらに、黒鉛の一部は、リチウムと合金化し得る金属や酸化物などと置き換えることもできる。負極活物質として黒鉛を用いた場合には、満充電時の電圧をリチウム基準で約0.1Vとみなすことができるため、電池電圧に0.1Vを加えた電圧で正極6の電位を便宜上計算することができることから、正極6の充電電位が制御しやすく好ましい。
2.正極の構成
図1Bは、図1Aに示されている正極6の拡大断面図である。図1Bを参照すると、正極6は、正極集電体61と、正極活物質層62と、を備えている。正極活物質層62は、結着材621と、正極活物質粒子622及び623と、から構成されている。なお、図1A及び図1Bに示されているリチウム二次電池1及び正極6の基本的な構成(電池ケース2、セパレータ3、電解質4、負極5、正極集電体61、及び結着材621を構成する材質を含む。)は周知であるので、本明細書においては、その詳細な説明は省略されている。
正極活物質粒子622は、比較的大きな粒子であって、そのうちの所定割合が単一粒子である。一方、正極活物質粒子623は、比較的小さな粒子であって、単一粒子、多結晶粒子、あるいは凝集粒子である。これらは、導電性の結着材621内にて分散状態で支持されている。
本実施形態においては、正極活物質粒子622及び623の集合体である正極活物質粉末が、以下の特性を有している。
モード径dが8〜25μmであり、
粒径が2dより大きな粒子の体積割合が、全体の5%以下であり、
粒径が0.5dより小さな粒子の体積割合が、全体の5〜35%であり、
粒径が0.5dより大きな粒子のうちの40面積%以上が、単一粒子である。
好ましくは、粒径が0.5dより小さな粒子の体積割合が、全体の10〜30%である。
ここで、モード径dは、レーザ回折法による体積基準の粒度分布における最大頻度の粒径である。図2は、図1Bに示されている正極活物質粒子622及び623の集合体としての正極活物質粉末(具体的には後述する実施例3)の粒度分布を示すグラフである。なお、図2においては、0.5d、d及び2dの位置が、矢印で示されている。
図3A〜図3Dは、図1Bに示されている正極活物質粒子622の模式図である。以下、図3A〜図3Dを用いて、本発明における「単一粒子」の意義について詳細に説明する。
図3Aに示されているように、「単一粒子」として存在する正極活物質粒子622は、典型的には、他のマンガン酸リチウム粒子との凝集体を形成せず単独で存在するマンガン酸リチウム単結晶一次粒子622aを含んでいる。具体的には、「単一粒子」として存在する正極活物質粒子622は、凝集体を形成せず単独で存在するマンガン酸リチウム単結晶一次粒子622aのみからなるものであってもよいし、図3Aに示されているように、マンガン酸リチウムとは異なる材料からなる付着物622b1,622b2,622b3…がマンガン酸リチウム単結晶一次粒子622aに付着したものであってもよい。
但し、図3Bに示されているように、マンガン酸リチウム結晶微粒子622c1,622c2(これらは単結晶である場合と多結晶である場合とがあり得る)…がマンガン酸リチウム単結晶一次粒子622aに付着したものであって、付着量が僅かである場合や、図3Cに示されているように、マンガン酸リチウム単結晶一次粒子622a同士が僅かな付着部を介して結合されている場合は、レート特性に対する悪影響がほとんどない。これに対し、図3Dに示されているように、マンガン酸リチウム単結晶一次粒子622a同士の付着部が大きい場合は、付着部(粒界部)におけるリチウムイオンの拡散が阻害されることで、レート特性が低下する。
そこで、図3A〜図3Dに示されているように正極活物質粒子622が複数の粒子からなる場合に、これが「単一粒子」であるか否かは、以下のようにして決定される:正極活物質粒子622を構成する或る1つのマンガン酸リチウム単結晶一次粒子622aの(平面視あるいは所定断面による断面視における)周回の長さに対して、他の粒子との付着部ADの長さ(複数ある場合はその合計)が1/5以下である場合、当該正極活物質粒子622は、当該マンガン酸リチウム単結晶一次粒子622aを「母粒子」として含む「単一粒子」である。かかる基準からすると、図3A〜図3Cに示されている正極活物質粒子622は「単一粒子」であり、図3Bにおけるマンガン酸リチウム結晶微粒子622c1,622c2は上記の「母粒子」とはなり得ず、図3Dに示されている正極活物質粒子622は「単一粒子」ではないことになる。
図4は、図1Bに示されている正極活物質粒子622(後述する大粒子A2)の外観を示す、走査電子顕微鏡写真である。この図4に示されているように、「単一粒子」として存在する正極活物質粒子622における「母粒子」としてのマンガン酸リチウム単結晶一次粒子622aには、実際には、多くの場合、他のマンガン酸リチウム結晶微粒子622c1や、ビスマス化合物からなる付着物622b1等が付着している。
3.製造方法の概要
以下、本実施形態の正極活物質粉末(正極活物質粒子622及び623)の製造方法の概要について説明する。
まず、リチウム化合物と、マンガン化合物と、ビスマス化合物と、を含む混合粉末を調製する。なお、リチウム化合物及びマンガン化合物として、リチウムとマンガンとをともに含む化合物(例えば、LiMn)が用いられ得る。また、マンガン化合物及びビスマス化合物として、マンガンとビスマスとをともに含む化合物(例えば、BiMn10)が用いられ得る。さらに、上述の混合粉末には、粒成長を促進させるために、スピネル構造のマンガン酸リチウムからなる種結晶が添加され得る。この種結晶は、粒成長の際の核として機能するものである。このとき、ビスマス化合物が種結晶に付着していてもよい。
リチウム化合物としては、例えば、LiCO、LiNO、LiOH、Li、LiO、CHCOOLi、Li(OCH)、Li(OC)、Li(OC)、Li(OC)、Li(C1119)、Li、LiCl、等が用いられ得る。マンガン化合物としては、MnO、MnO、Mn、Mn、MnCO、MnOOH、Mn(OCH、Mn(OC、Mn(OC、MnC、Mn(CHCOO)、MnCl、Mn(NO、等が用いられ得る。なお、マンガンをリチウム以外の置換元素で置換する場合には、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、セリウム化合物等が、混合粉末原料中に含有される。
アルミニウム化合物としては、例えば、α−Al、γ−Al、AlOOH、Al(OH)、Al(OCH、Al(OC、Al(OC、Al(OC、AlOCl、Al(NO、等が用いられ得る。また、マグネシウム化合物としては、例えば、MgO、Mg(OH)、MgCO、Mg(OCH、Mg(OC、Mg(OC、Mg(OC、Mg(C1119、MgCl、Mg(C、Mg(NO、MgC、等が用いられ得る。ニッケル化合物としては、例えば、NiO、Ni(OH)、NiNO、Ni(C、NiC、NiCO、NiCl、等が用いられ得る。コバルト化合物としては、例えば、Co、CoO、Co(OH)、CoCO、CoC、CoCl、Co(NO、Co(OC、等が用いられ得る。チタン化合物としては、例えば、TiO、TiO、Ti、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(OC、TiCl、等が用いられ得る。ジルコニウム化合物としては、例えば、ZrO、Zr(OH)、ZrO(NO、Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC、Zr(OC、ZrOCl、等が用いられ得る。セリウム化合物としては、例えば、CeO、Ce(OH)、Ce(NO、等が用いられ得る。
上述の混合粉末には、必要に応じて、粒成長促進助剤が添加されてもよい。粒成長促進助剤(フラックス助剤あるいは低融点助剤)としては、低融点酸化物・塩化物・硼化物・炭酸塩・硝酸塩・水酸化物・蓚酸塩・酢酸塩、アルコキシド、過マンガン酸塩、等が用いられ得る。粒成長促進助剤は、種結晶とは別々に添加されてもよいし、種結晶に付着させた状態で添加されてもよいし、両者が併用されてもよいが、両者が併用された状態で添加されることが好ましい。粒成長促進助剤が種結晶に付着することで、付着した箇所を基点に、種結晶が効果的に粒成長する一方、種結晶と別々に添加されることで、種結晶がない部分もある程度の粒成長が進み、種結晶が異常粒成長することを抑制する。これにより、結晶粒の粒径がより均一化する。
上述の混合粉末は、必要に応じて粉砕してもよい。例えば、混合粉末の粒径は10μm以下であることが好ましい。このため、混合粉末の粒径が10μmより大きい場合は、乾式又は湿式の粉砕方法により、粒径が10μm以下になるように、上述の混合粉末を粉砕することが好ましい。粉砕方法は特に限定されないが、ポットミル、ビーズミル、ハンマーミル、ジェットミル等が用いられ得る。
次に、上述の混合粉末を用いて、適宜の形状の成形体に成形する。成形方法については、特に限定はなく、例えば、従来周知の成形方法を用いることが可能である。具体的には、テープ状、シート状、あるいは薄片状の成形体を得る場合には、
・ドクターブレード法
・スクリーン印刷法
・原料粒子粉末のスラリーを熱したドラム上に塗布し、乾燥させたものをスクレイパーで掻き取る、ドラムドライヤー法
・原料粒子粉末のスラリーを熱した円板面上に塗布し、乾燥させたものをスクレイパーで掻き取る、ディスクドライヤー法
・スリットを設けた口金に原料粒子粉末を含む粘土を押し出す、押出成形法
等の成形方法を利用することが可能である。なお、上述の成形方法で得られた成形体をさらにローラー等で加圧することにより、その密度を高めるようにしてもよい。
これらの成形方法の中でも、均一なシート状の成形体が得られるドクターブレード法が好ましい。このドクターブレード法は、例えば、可撓性を有する板(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の有機ポリマー板等)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体とすることによって行われる。そして、この成形体と板とを剥離することにより、焼成前の成形体が得られる。スラリーは、粘度が500〜4000mPa・sとなるように調製されるのが好ましく、また、減圧化で脱泡されるのが好ましい。
また、中空状の造粒体は、スプレードライヤーの条件を適宜設定することで作製することができる。径が10〜30μmの粒状の成形体(バルク成形体)を作製する方法としては、例えば、スプレードライ法、原料粒子粉末をローラー等で加圧する方法、押出成形された棒状やシート状の成形体を切断する方法、等を用いることができる。また、ハニカム状や棒状の成形体を作製する方法としては、例えば、押出成形法等を用いることができる。また、ロール状の成形体を作製する方法としては、例えば、ドラムドライヤー法等を用いることができる。
続いて、上述の成形体を、830〜1050℃で焼成(熱処理)する。これにより、成形体は、スピネル型マンガン酸リチウム(正極活物質)の焼成体となる。焼成温度が830℃未満であると、粒成長が不十分な場合がある。一方、焼成温度が1050℃を超える(例えば1100℃程度にまで達する)と、スピネル型マンガン酸リチウムが、酸素を放出することで、層状岩塩構造のマンガン酸リチウムと酸化マンガンとに分解する場合がある。
焼成工程は、例えば、上述の成形体をアルミナ製の坩堝や鞘内に投入し、この坩堝や鞘を炉内にさらに投入することで行われ得る。上述の成形体が坩堝や鞘内に投入される際には、上述の成形体は、適当な長さあるいは形状になるように、予め加工(折り曲げや切断等)され得る。あるいは、シート状の成形体は、シート間での重なりが小さくなるように1枚ごとにセッターに載せられた状態で焼成され得る。
なお、焼成雰囲気は酸素雰囲気(酸素分圧の高い状態)であってもよい(この場合、酸素分圧は、例えば、焼成雰囲気の気圧の50%以上であることが好ましい。)。これにより、スピネル型マンガン酸リチウムの酸素放出が起こりにくくなり、以て上述のような分解や酸素欠損の発生が効果的に抑制される。また、焼成において、上述の粒成長促進助剤や種結晶が存在することで、焼成温度が比較的低温(例えば900℃程度)でも粒成長が促進され、以て結晶性が高められる等の効果が奏されると推察される。
焼成の際の昇温速度を適宜調節する(例えば50〜500℃/時)ことにより、焼成後の一次粒子の粒径を均一化することができる。また、低温度域で温度を保持し、その後焼成温度で焼成することにより、一次粒子を均一に粒成長させることができる。この場合、低温度域としては、例えば、焼成温度が900℃のとき、400〜800℃とすることができる。また、焼成温度よりも高い温度に保ち、結晶の核を形成させた後に焼成温度で焼成することによっても、一次粒子を均一に粒成長させることができる。この場合、焼成温度よりも高い温度としては、例えば、焼成温度が900℃のとき、1000℃等とすることができる。
焼成は2段階に分けて行うこともできる。例えば、酸化マンガン及びアルミナの混合粉末をシート状に成形して一旦焼成した後、リチウム化合物を添加して更に焼成することにより、マンガン酸リチウムを形成することができる。また、リチウム含有率が高いマンガン酸リチウム結晶を形成した後、酸化マンガンやアルミナを添加して更に焼成することにより、マンガン酸リチウムを形成することもできる。
続いて、得られた焼結体に対して、解砕及び/又は分級を行う。解砕は、湿式又は乾式の処理により、一次粒子を破壊しない一方で隣接する一次粒子同士の付着部(粒界部)にて劈開が生じる程度で行われる。解砕処理の方法としては、特に限定されないが、所定の開口径のメッシュやスクリーンに押し当てて解砕する方法や、ポットミル、ビーズミル、ハンマーミル、ジェットミル等を用いる方法等が用いられ得る。分級処理の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、所定の開口径のメッシュで篩い分けする方法、水簸による方法、気流分級機、篩分級機、エルボージェット分級機等を用いる方法等が用いられ得る。
所定の粒度分布、及び所定の単一粒子の割合を有する、正極活物質粉末は、上述の解砕及び/又は分級の条件を適宜設定することによって得ることが可能である。あるいは、所定の粒度分布、及び所定の単一粒子の割合を有する、正極活物質粉末は、上述の解砕及び/又は分級によって得られた複数種類の粉末を混合することによっても得ることが可能である。すなわち、例えば、得られた焼結体に対する解砕及び/又は分級の条件が異なる複数種類の粉末を混合することで、所定の粒度分布、及び所定の単一粒子の割合を有する、正極活物質粉末を得ることが可能である。
なお、得られた正極活物質粉末を上述の焼成温度よりも低い温度で再度熱処理することで、酸素欠損を修復するとともに、解砕時の結晶性の乱れを回復させることが可能である(但し、かかる再熱処理は、必須ではない。)。もっとも、解砕処理に先立つ焼成工程における焼成温度からの降温時に、所望の温度で一定時間保持することは、これにより酸素欠損が修復されるため、再熱処理としての効果がある。解砕処理後(又は分級処理後)に再熱処理をする場合、再熱処理した粉末を再び解砕・分級処理してもよい。この場合の、再度の解砕・分級処理には、前述した方法等を用いることができる。
4.具体例(実施例)
以下、本実施形態の正極板2の製造方法の具体例、及びその評価結果について説明する。
4−1.正極活物質粉末の製造方法
(1)スラリー調製
Li1.08Mn1.83Al0.09の化学式となるように、LiCO粉末(本荘ケミカル株式会社製、ファイングレード、平均粒径3μm)、MnO粉末(東ソー株式会社製、電解二酸化マンガン、FMグレード、平均粒径5μm、純度95%)、及びAl(OH)粉末(昭和電工株式会社製 製品型番「H−43M」、平均粒径0.8μm)を秤量し、さらに、Bi粉末(平均粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を、MnO原料に含まれるマンガンに対するビスマスの添加量が表1に記載した量となるように秤量した。この秤量物100部と、分散媒としての有機溶媒(トルエン及びイソプロピルアルコールを等量混合した混合液)100部とを、合成樹脂製の円筒型広口瓶に入れ、ボールミル(直径5mmのジルコニアボール)で16時間、湿式混合及び粉砕を行った。
上述の湿式混合及び粉砕によって得られた粉末100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:積水化学工業株式会社製 製品型番「BM−2」)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2-ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(花王株式会社製 製品名「レオドールSP−O30」)2重量部と、を混合し、さらに、この混合物を減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、その粘度を4000mPa・sに調整することで、スラリーを調製した(粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。以下同様。)。
(2)成形
上述のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが表1に記載した値となるように、シート状に成形した。PETフィルムから剥がしたシート状の成形体をカッターで300mm角に切断することで、正方形状の成形体を多数作製した。
(3)熱処理(焼成)
得られた正方形状の成形体をアルミナ製の鞘(寸法:90mm×90mm×高さ60mm)に、「くしゃくしゃ」に丸めた状態で入れ、フタをあけた状態(すなわち空気雰囲気中)で、600℃で2時間脱脂し、その後、900℃で12時間焼成した。
(4)解砕・分級
焼成後のシート状成形体を、以下の条件で選択した平均開口径を有するポリエステル製メッシュの上に載置してヘラで軽くふるいに押し付けて解砕した。その後、解砕後の粉末をエタノールに分散して、超音波洗浄機にて超音波処理(38kHz・5分)した後、平均開口径5μmのポリエステル製メッシュに通してメッシュ上に残った粉末を回収することで、焼成時又は粉砕時に発生した粒径5μm以下の微粒子を除去した。これにより、表1に記載の大粒子A1〜A3及びB1〜B3を得た。一方、焼成後のシート状成形体を、直径5mmのナイロン玉石を用いて、ポットミルにて3時間乾式解砕することで、表1に記載の小粒子Cを得た。
シート状成形体の厚さ10μm以下の水準:平均開口径10μm
シート状成形体の厚さ11〜20μmの水準:平均開口径20μm
シート状成形体の厚さ20μm超の水準:平均開口径40μm
上述のようにして得られた大粒子A1〜A3及びB1〜B3並びに小粒子Cの、メディアン径D50[μm]及びBET比表面積[m/g]の値を、表1に示す。なお、メディアン径D50[μm]を含む粒度分布関係の測定は、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製 製品型番MT3300EXII)を用いて、0.02μm〜2000μmの範囲を132の粒径区分に対数分割することにより行った。また、比表面積は、流動式比表面積測定装置(株式会社島津製作所製 製品名「フローソーブIII2305」)により、窒素を吸着ガスとして測定した。
(5)混合
上述のようにして得られた大粒子A1〜A3及びB1〜B3並びに小粒子Cを、表2に示されている重量割合にて秤量した後、ガラス容器中に投入して振り混ぜて乾式混合することで、実施例1〜6及び比較例1〜5の正極活物質粉末を得た。なお、表2中の「Bi含有割合」及び「Bi化合物種類」は、下記の「ビスマス含有割合」及び「ビスマス化合物種類」の測定結果を示すものである。
4−2.評価方法
(1)ビスマス含有割合
正極活物質粉末試料(実施例1〜6及び比較例1〜5)に塩酸を加えて加圧分解することで調製した溶液試料を、ICP発光分光分析装置(株式会社堀場製作所製 製品名「ULTIMA2」)に投入して、リチウム、マンガン、及びビスマスの定量分析をし、この定量分析に基づいて、マンガン酸リチウムに含まれるマンガンに対する、ビスマス化合物に含まれるビスマスの含有割合を算出した。
(2)ビスマス化合物種類
X線回折装置(株式会社リガク製 製品名「ガイガーフレックスRAD−IB」)を用いて同定した。X線回折(XRD)では確認できないほど微量な場合は、電子線マイクロアナライザ(日本電子株式会社製 製品型番「JXA−8800」)を用いたEPMA(Electron Probe Micro-Analysis)により、ビスマスが検出される領域で他の成分が検出された場合、ビスマスはその成分と化合物となって存在しているものとした。
(3)粒度分布
モード径d、粒径が2dより大きな粒子の体積割合(D>2d)、粒径が0.5dより小さな粒子の体積割合(D<0.5d)、及びメディアン径D50は、上述のように、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。なお、モード径d及びメディアン径D50は、体積基準の粒度分布ヒストグラムにおける、該当する粒径区分の中心値とした。また、粒径が0.5dより大きな粒子のうちの単一粒子の割合[面積%]は、以下のようにして測定した。
正極活物質粉末試料(実施例1〜6及び比較例1〜5)と、導電性樹脂(クルツァー社製 商品名「テクノビット5000」)と、を混合して硬化させたものを、機械研磨し、さらに断面試料作成装置(日本電子株式会社製 製品型番「SM−09010」)を用いてイオン研磨することで、走査電子顕微鏡観察用断面試料を作成した。このようにして作成した断面試料の反射電子像を、走査型電子顕微鏡(製品名「ULTRA55」、ZEISS社製)を使用して観察した。
反射電子像においては、結晶方位が異なる場合、チャネリング効果によりコントラストが異なる。このため、観察している粒子の中に粒界部が含まれる場合、試料の観察方位(試料の傾き)を僅かに変えると、粒界部が明瞭になったり、不明瞭になったりする。この性質を利用して、粒界部の存在を確認することができる。このようにして、観察している粒子が、単一粒子であるのか、あるいは結晶方位が異なる一次粒子が連なった多結晶粒子又は凝集粒子であるのかを、識別することができる。
また、図3A〜図3Dに示されているような粒子形態における、単一粒子であるか否かの識別は、画像処理ソフトウェア(Media Cybernetics社製 商品名「Image−Pro」)を使用して、以下のようにして行った:反射電子像から見積られる粒子の周回の長さに対して、付着部の長さ(付着部が複数ある場合は全付着部の長さの合計)が1/5以下である場合、その粒子は単一粒子とみなした。
そして、断面反射電子像中の粒子について、互いに直交する二つの径の平均値を粒径[μm]とした場合、粒径>0.5dとなる粒子が占有する全ての面積(B)と、粒径>0.5dとなる粒子のうち単一粒子が占有する面積(b)とを、画像処理ソフトウェア(Adobe社製 商品名「photoshop(登録商標)」)を使用して測定し、(b/B)×100の値を算出することで、粒径>0.5dとなる粒子における単一粒子の割合(面積%)を得た。
(4)格子歪
正極活物質粉末試料(実施例1〜6及び比較例1〜5)の粉末X線回折パターンを、X線回折装置(ブルカーAXS社製 製品名「D8 ADVANCE」)を用いて下記の条件により測定し、WPPD(Whole-Powder-Pattern Decomposition)法により解析することで、格子歪(η)を算出した。
X線出力:40kV×40mA
ゴニオメーター半径:250mm
発散スリット:0.6°
散乱スリット:0.6°
受光スリット:0.1mm
ソーラースリット:2.5°(入射側、受光側)
測定法:試料水平型の集中光学系による2θ/θ法(2θ=15〜140°を測定、ステップ幅0.01°)
走査時間:メインピーク((111)面)の強度が10000counts程度になるように設定
なお、具体的な解析手順を以下に説明する。
1.トータルプロファイルフィッティングソフトウェア(製品名「DIFFRACplus TOPAS」)起動、測定データ読み込み。
2.Emission Profile設定(Cu管球、Bragg Brentano集中光学系を選択)。
3.バックグラウンド設定(プロファイル関数としてルジャンドルの多項式を使用、項数は8〜20に設定)。
4.Instrument設定(Fundamental Parameterを使用、スリット条件、フィラメント長、サンプル長を入力)。
5.Corrections設定(Sample displacementを使用。試料ホルダーへの試料充填密度が低い場合、Absorptionも使用する。この場合、Absorptionは試料の線吸収係数で固定)。
6.結晶構造設定(空間群F−d3mに設定。格子定数・結晶子径・格子歪を使用。結晶子径と格子歪によるプロファイルの広がりをローレンツ関数に設定)。
7.計算(バックグラウンド、Sample displacement、回折強度、格子定数、結晶子径、格子歪を精密化)。
8.結晶子径の標準偏差が精密化した値の6%以下であれば、解析終了。6%より大きい場合は、手順9へ。
9.格子歪によるプロファイルの広がりをガウス関数に設定(結晶子径はローレンツ関数のまま)。
10.計算(バックグラウンド、Sample displacement、回折強度、格子定数、結晶子径、格子歪を精密化)。
11.結晶子径の標準偏差が精密化した値の6%以下であれば、解析終了。6%より大きい場合は、解析不可。
12.得られた格子歪の値にπ/180を乗じることで、ηとする。
(5)電池特性
正極活物質粉末試料(実施例1〜6及び比較例1〜5)、導電剤としてのアセチレンブラック、結着材としてのPVDF、及び溶剤としてのNMPを、90:5:5:100の重量比でハイブリッドミキサーを用いて混合することで、正極ペーストを調製した。この正極ペーストを、正極集電体であるアルミニウム箔上に載せた後に150μmのギャップに調整したアプリケーターで塗膜化し、80℃で10時間乾燥した。乾燥後の正極ペーストとアルミ箔との積層体を、直径14mmで平面視略円形に打抜き、2t/cmでプレス成形することで、正極を作成した。
このようにして作成した正極、リチウム金属板からなる負極層とステンレス板からなる負極集電体とを積層してなる負極、及びリチウムイオン透過性を有するポリエチレンフィルムからなるセパレータを、正極におけるアルミニウム箔側を外側(セパレータと反対側)に向けつつ、正極−セパレータ−負極層−負極集電板の順に積層し、この積層体を電解液で満たすことでリチウム二次電池(コインセル)を作製した。なお、電解液は、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を等体積比で混合した有機溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度となるように溶解することで調製した。このようにして製造したリチウム二次電池(コインセル)を用いて、以下の要領で、初期容量及びサイクル特性の評価を行った。
(5−1)初期容量[mAh/g]
試験温度を20℃として、以下の充放電操作を1サイクルとするサイクル充放電を、合計3サイクル繰り返した:(1)0.1Cレートの電流値で電池電圧が4.3Vとなるまで定電流充電し、(2)電池電圧を4.3Vに維持する電流条件で電流値が1/20に低下するまで定電圧充電し、(3)10分間休止した後、1Cレートの電流値で電池電圧が3.0Vになるまで定電流放電し、さらにその後10分間休止する。そして、3サイクル目の放電容量の測定値を、初期容量とした。
(5−2)サイクル特性[%]
試験温度を60℃として、以下の充放電操作を1サイクルとするサイクル充放電を、合計100サイクル繰り返した:5Cレートの定電流で4.3Vまで充電した後、5Cレートの定電流で3.0Vまで放電した。100回目の放電容量を1回目の放電容量で除した値を百分率で表した値を、サイクル特性とした。
4−3.評価結果
実施例1〜6及び比較例1〜5の正極活物質粉末試料に対して、上述の手順で評価を行った結果を、表3及び表4に示す。以下、表1〜表4を参照しつつ、評価結果について考察する。なお、サイクル特性は、80%以上の場合が「良好」、75%未満が「不良」とする。
実施例1〜6は、
モード径dが8〜25μmであり、
粒径が2dより大きな粒子の体積割合が、全体の5%以下であり、
粒径が0.5dより小さな粒子の体積割合が、全体の5〜35%であり、
粒径が0.5dより大きな粒子のうちの40面積%以上が、単一粒子である
という特性を満たす範囲で、大粒子の粒径、及び大粒子と小粒子との混合比率を変えたものである。実施例1〜6の正極活物質粉末試料によれば、良好な初期容量とサイクル特性とが達成された。
これに対し、小粒子Cを配合しなかった比較例1においては、粒径が0.5dより小さな粒子の体積割合が不足し、隣り合う大粒子同士の間隙に小粒子が入り込むことによる所定の効果が発現されず、サイクル特性が不良となった。一方、小粒子Cの配合量が過剰である比較例2においては、粒径が0.5dより小さな粒子の体積割合が多すぎるために、サイクル特性が若干低くなった。
また、大粒子の粒径が大きすぎる(B1:メディアン径D50=26μm)比較例3においてはモード径dが上記所定範囲よりも大きくなり、大粒子の粒径が小さすぎる比較例4(B2:メディアン径D50=6μm)においてはモード径dが上記所定範囲よりも小さくなり、ともにサイクル特性が若干低くなった。さらに、粒径が0.5dより大きな粒子のうちの単一粒子の割合が低い比較例5においては、サイクル特性が不良となった。
5.変形例
なお、上述の実施形態や具体例は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具現化の一例を単に示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の実施形態や具体例によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の実施形態や具体例に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
以下、変形例について幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、本変形例においても同一の名称及び同一の符号が付されているものとする。そして、当該構成要素の説明については、上述の実施形態における説明が、矛盾しない範囲で適宜援用され得るものとする。
もっとも、変形例とて、下記のものに限定されるものではないことは、いうまでもない。本発明を、上述の実施形態や下記変形例の記載に基づいて限定解釈することは、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。また、上述の実施形態の構成、及び下記の各変形例に記載された構成の全部又は一部が、技術的に矛盾しない範囲において、適宜複合して適用され得ることも、いうまでもない。
本発明の適用対象であるリチウム二次電池1の構成は、上述のような構成に限定されない。具体的には、例えば、電解質としては、ゲルポリマー電解質が用いられ得る。また、正極活物質の組成についても、上述の具体例(実施例)以外のものでも何ら問題ない。
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した先行出願や各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして適宜援用され得る。
1 リチウム二次電池
2 電池ケース
3 セパレータ
4 電解質
5 負極
6 正極
61 正極集電体
62 正極活物質層
621 結着材
622 正極活物質粒子
622a マンガン酸リチウム単結晶一次粒子
622b1 付着物
622b2 付着物
622b3 付着物
622c1 マンガン酸リチウム結晶微粒子
622c2 マンガン酸リチウム結晶微粒子
623 正極活物質粒子
特開2010−212260号公報

Claims (2)

  1. 多数の正極活物質粒子の集合体である、リチウム二次電池の正極活物質粉末であって、
    前記正極活物質粒子は、リチウムとマンガンを構成元素として含む、スピネル構造のマンガン酸リチウムの粒子であり、
    レーザ回折法による体積基準の粒度分布における最大頻度の粒径であるモード径をdとし、
    多数の正極活物質粒子中の特定のものの割合を、所定平面における専有面積を基準として百分率で表したものを、面積%とし
    前記所定平面における前記多数の正極活物質粒子それぞれについて、互いに直交する二つの径の平均値を粒径とした場合に、
    粒径が2dより大きな粒子の体積割合が、全体の5%以下であり、
    粒径が0.5dより小さな粒子の体積割合が、全体の5〜35%であり、
    粒径が0.5dより大きな粒子のうちの40面積%以上が、単一粒子であり、
    前記単一粒子は、
    当該単一粒子の粒径の1/2以上の大きさのスピネル構造のマンガン酸リチウム単結晶一次粒子を含み、且つ、当該単一粒子と同等の大きさの他のスピネル構造のマンガン酸リチウム粒子との間で凝集を形成しない粒子、
    又は、
    当該単一粒子の粒径の1/2以上の大きさのスピネル構造のマンガン酸リチウム単結晶一次粒子を含み、且つ、当該単一粒子と同等の大きさの他のスピネル構造のマンガン酸リチウム粒子との間の付着部が当該単結晶一次粒子の周回の長さの1/5以下の長さとなることで実質的に単独で存在する粒子であって、
    前記モード径dは、8〜25μmである、
    ことを特徴とする、リチウム二次電池の正極活物質粒子粉末。
  2. 多数の正極活物質粒子を含む、正極と、
    負極活物質を含む、負極と、
    を備えた、リチウム二次電池であって、
    前記正極活物質粒子は、リチウムとマンガンを構成元素として含む、スピネル構造のマンガン酸リチウムの粒子であり、
    多数の前記正極活物質粒子のレーザ回折法による体積基準の粒度分布における最大頻度の粒径であるモード径をdとし、
    多数の正極活物質粒子中の特定のものの割合を、所定平面における専有面積を基準として百分率で表したものを、面積%とし
    前記所定平面における前記多数の正極活物質粒子それぞれについて、互いに直交する二つの径の平均値を粒径とした場合に、
    粒径が2dより大きな粒子の体積割合が、全体の5%以下であり、
    粒径が0.5dより小さな粒子の体積割合が、全体の5〜35%であり、
    粒径が0.5dより大きな粒子のうちの40面積%以上が、単一粒子であり、
    前記単一粒子は、
    当該単一粒子の粒径の1/2以上の大きさのスピネル構造のマンガン酸リチウム単結晶一次粒子を含み、且つ、当該単一粒子と同等の大きさの他のスピネル構造のマンガン酸リチウム粒子との間で凝集を形成しない粒子、
    又は、
    当該単一粒子の粒径の1/2以上の大きさのスピネル構造のマンガン酸リチウム単結晶一次粒子を含み、且つ、当該単一粒子と同等の大きさの他のスピネル構造のマンガン酸リチウム粒子との間の付着部が当該単結晶一次粒子の周回の長さの1/5以下の長さとなることで実質的に単独で存在する粒子であって、
    前記モード径dは、8〜25μmである、
    ことを特徴とする、リチウム二次電池。
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