JP5851957B2 - 清酒における糖質の低減方法および清酒の製造方法 - Google Patents

清酒における糖質の低減方法および清酒の製造方法 Download PDF

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本発明は、清酒における糖質の低減方法および清酒の製造方法に関する。
近年、消費者の健康志向、および肥満防止についての関心の高まりから、糖質および脂質等を管理した食事が、好まれる傾向にある。この影響をうけ、嗜好品であるアルコールに関しても、糖および糖質をカットした商品が求められており、糖質をカットしたビールおよび発泡酒等の市場は、拡大傾向にある。
他方、清酒についても、糖質および糖類を抑えた商品の需要が高まっている。しかしながら、清酒は、酒税法の点から、使用できる原料が、米、米麹、醸造アルコール、酵素および水等に限られるため、ビール等と同様の方法によって糖類および糖質をカットすることが困難である。そこで、清酒に特化した糖類および糖質の低減方法が研究され、実用化されるに到っている。具体的には、酒母、麹、蒸米、水を仕込んで、発酵させる「もろみ造り」の工程において、α−グルコシダーゼ等の酵素を添加する方法が開示されている(特許文献1〜3)。これらの方法によると、もろみ中の糖質について、酵母が資化できるグルコースにまでオリゴ糖を分解することで、糖類および糖質の低減を実現できる。しかしながら、このような方法によると、単糖や二糖の糖類は、十分に低減できるものの、清酒全重量からタンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分を除いて算出される糖質は、ある程度まで低減できるものの、それ以下に低減することが困難である。このため、健康増進法第31条に基づく栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)で定める、例えば、糖質0.5%未満であることを意味する「糖質ゼロ」との表記を行うには、例えば、最終的に醸造アルコールおよび/または水を添加する必要がある。このため、さらに、糖質を低減する方法の確立が求められる。
特開2006−061153号公報 特開2009−100777号公報 特開2010−104270号公報
本発明は、清酒における糖質をさらに低減させる方法を提供することを課題とする。
本発明の課題を解決するために、本発明の方法は、下記の(A)〜(C)工程を有し、且つ、下記の条件1〜条件3の少なくとも一つの条件を満たすことを特徴とする、清酒におけるエチル−α−(D)−グルコシド、グリセロールおよび/またはα-D-グルコシルグリセロール含量の低減方法である。
(A)掛米および麹米を準備する工程
(B)前記(A)工程の掛米および麹米に汲水を添加する仕込み工程
(C)前記(B)工程の混合物を、酵素剤の存在下、酵母により発酵させる発酵工程
条件1:前記(A)工程において、相対的に高い精米歩合の掛米を使用する
条件2:前記(B)工程において、汲水の添加量を相対的に高く設定する
条件3:前記(C)工程において、前記酵素剤として、5’−ホスホジエステラーゼ、ホスファターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リパーゼおよび酸性エンドプロテアーゼからなる群から選択された少なくとも一つの酵素を使用する
本発明の方法は、清酒の糖質の低減方法であって、前記本発明のエチル−α−(D)−グルコシド、グリセロールおよび/またはα−D-グルコシルグリセロール含量の低減方法により、清酒の糖質を低減することを特徴とする。
本発明の方法は、清酒の製造方法であって、前記本発明のエチル−α−(D)−グルコシド、グリセロールおよび/またはα−D−グルコシルグリセロール含量の低減方法により、清酒を製造することを特徴とする。
前述のように、従来の清酒の製造方法では、糖質を一定値まで低減できたものの、前記一定値未満への低減が困難であった。これに対して、本発明者らは、鋭意研究の結果、従来の清酒の製造方法では、エチル−α−(D)−グルコシド、グリセロールおよび/またはα−D−グルコシルグリセロールが糖質として残存することを見出した。これらの成分は、清酒に含まれる成分としては知られているものの、清酒の組成成分として分析対象とはなっておらず、当然、糖質の含有量に影響を与える成分として、当該技術分野の当業者によって全く認識されていなかった。そこで、本発明者らは、これらの成分を低減する方法について研究を行った結果、清酒の製造工程において、前述のように、掛米の精米歩合の条件1、汲水の添加量の条件2、および発酵工程における酵素剤の条件3のいずれかを満たすことによって、従来の製造方法では実現できなかった、清酒における糖質含量のさらなる低減を達成するに到った。
本発明によれば、従来の製造方法では実現できなかった糖質のさらなる低減が可能となる。このため、例えば、製品化工程において、原酒の割水による希釈を抑制でき、醸造用アルコールの添加割合を抑制でき、醸造用アルコールを添加しない純米酒、醸造用アルコールの添加割合が低い本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒等、栄養表示基準で定められた「糖質ゼロ表記」の規定を満たす付加価値の高い清酒を提供できる。
図1は、本発明の実施例において、エチル−α−(D)−グルコシドの経時的変化を示すグラフであり、(A)が、液化仕込みの結果、(B)が、粒仕込みの結果である。 図2は、本発明の実施例において、上槽酒のエチル−α−(D)−グルコシド濃度を示すグラフであり、(A)が、液化仕込みの結果、(B)が、粒仕込みの結果である。る。 図3は、本発明の実施例において、エチル−α−(D)−グルコシド濃度の経時的変化を示すグラフである。 図4は、本発明の実施例において、上槽酒の成分濃度を示すグラフである。 図5は、本発明の実施例において、上槽酒のエキス分の組成を示すグラフである。 図6は、本発明の実施例において、エキス分の経時的変化を示すグラフである。
本発明の方法は、前述のように、清酒におけるエチル−α−(D)−グルコシド、グリセロールおよび/またはα−D-グルコシルグリセロール含量の低減方法であり、下記の(A)〜(C)工程を含み、且つ、下記の条件1〜条件3の少なくとも一つの条件を満たすことを特徴とする。
(A)掛米および麹米を準備する工程
(B)前記(A)工程の掛米および麹米に汲水を添加する仕込み工程
(C)前記(B)工程の混合物を、酵素剤の存在下、酵母により発酵させる発酵工程
条件1:前記(A)工程において、相対的に高い精米歩合の掛米を使用する
条件2:前記(B)工程において、汲水の添加量を相対的に高く設定する
条件3:前記(C)工程において、前記酵素剤として、5’−ホスホジエステラーゼ、ホスファターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リパーゼおよび酸性エンドプロテアーゼからなる群から選択された少なくとも一つの酵素を使用する
本発明において、以下、エチル−α−(D)−グルコシドを「α−EG」、α−D-グルコシルグリセロールを「α−GG」という。本発明は、例えば、清酒におけるα−EG、グリセロールおよびα−GGのうち、少なくとも1種類を低減できればよく、いずれか2種類を低減できることが好ましく、3種類を低減できることがさらに好ましい。
本発明において、糖質および糖類は、例えば、健康増進法第31条に基づく栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に定義されている。糖質は、例えば、食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分および水分の量を控除して算定される成分であり、糖類は、例えば、単糖および二糖を意味する。
本発明によれば、例えば、前述のように、効率良く、α−EG、グリセロールおよび/またはα−GGの低減、これに伴う糖質の低減が可能である。このため、例えば、従来法と比較して、発酵期間の短縮も可能である。
本発明は、例えば、前記条件1〜条件3のうち、いずれか1つの条件を満たしてもよいし、いずれか2つの条件を満たしてもよいし、3つの条件全てを満たしてもよい。本発明は、例えば、前記条件1〜条件3の全てを満たすことが好ましい。
本発明は、例えば、さらに、(D)工程として、前記(C)工程で得られる発酵液(以下、もろみともいう)から、酒粕を除去し、清澄画分を回収する回収工程を含んでもよい。この工程を、上槽工程ともいう。前記回収方法は、特に制限されず、例えば、圧搾、ろ過等があげられ、中でも圧搾が好ましい。
本発明は、例えば、さらに、(E)工程として、前記清澄画分に加熱処理を施す加熱工程を含んでもよい。前記加熱処理により、殺菌処理を行うことができ、一般的に、火入れ(ひいれ)と呼ばれる。前記加熱処理の条件は、特に制限されず、加熱温度は、例えば、50〜90℃であり、好ましくは60〜80℃であり、より好ましくは60〜70℃であり、殺菌時間は、例えば、5〜60分であり、好ましくは5〜30分であり、より好ましくは5〜15分である。
本発明は、例えば、前記(D)工程または前記(E)工程の後、さらに、(F)工程として、前記清澄画分のオリ除去処理工程を含んでもよい。前記清澄画分は、例えば、前記(D)工程により得られる清澄画分でもよいし、前記(E)工程により得られる加熱処理を施した加熱清澄画分でもよい。オリ除去処理は、例えば、前記清澄画分について、オリを沈殿させるオリ下げ工程と、沈殿したオリを除去する除去工程を含むことが好ましい。
本発明は、例えば、前記(F)工程の後、さらに、(G)工程として、前記清澄画分のろ過処理工程を含んでもよい。前記ろ過処理は、例えば、活性炭等が使用できる。
本発明において、前記(E)〜(G)工程は、例えば、いずれか1工程を含んでもよいし、2工程以上を含んでもよいし、全ての工程を含んでもよい。また、本発明において、前記(E)〜(G)工程の順序は、特に制限されない。
本発明について、以下、条件1を満たす実施形態1、条件2を満たす実施形態2、条件3を満たす実施形態3を例示する。なお、各実施形態は、特に示さない限り、それぞれの記載を援用できる。
(実施形態1)
本実施形態1は、前記(A)〜(C)工程を含み、掛米の精米歩合が前記条件1を満たす形態である。
前記(A)工程は、掛米と麹米とを準備する工程であって、本実施形態においては、相対的に高い精米歩合の掛米を使用する。前記精米歩合の値が相対的に高い程、α−EG、グリセロールおよび/またはα−GGの清酒における含有量を相対的に低い値に低減でき、これに伴い、清酒の糖質を相対的に低い値に低減できる。
前記掛米の精米歩合は、下限が、例えば、80%、好ましくは、82%であり、より好ましくは、85%であり、上限が、例えば、97%、好ましくは、95%であり、より好ましくは、90%であり、その範囲は、例えば、80−97%、好ましくは、80−95%であり、より好ましくは、80−90%であり、また、例えば、82−95%であり、さらに好ましくは、85−95%である。
総米は、通常、掛米と麹米からなる。前記総米に対する麹米の比率(重量比)は、特に制限されず、公知の比率があげられ、例えば、5−100%であり、前記総米に対する掛米の比率(重量比)は、例えば、前記麹米の比率(%)の残分(%)である。
掛米および麹米の原料米の種類は、特に制限されず、例えば、清酒製造における通常の米が使用でき、好ましくは、一般米または酒造好適米があげられる。前記米は、例えば、山田錦、五百万石、美山錦、雄町、コシヒカリ、ヒノヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまち、キヌヒカリ、はえぬき、キララ397、七つ星、星の夢、つがるロマン、日本晴、祝、加工用米等があげられる。また、前記米は、例えば、品位について制限がなく、農産物検査法第3条に基づき、前記米に係る玄米の品位が、例えば、1等級、2等級、3等級、規格外でもよい。
前記掛米は、例えば、原料米を蒸した蒸米を、前記麹米と混合してもよいし、原料米を液化した融米を、前記麹米と混合してもよい。前者を使用する場合、後述する(B)工程は、例えば、粒仕込みともいい、後者を使用する場合、後述する(B)工程は、例えば、液化仕込みともいう。前記液化した融米は、例えば、特開昭59−66875号公報の方法により調製できる。前記液化した融米を使用する場合、前記総米における前記融米の比率は、例えば、前記融米の調製に使用した原料米として換算することができる。
麹米(米麹)は、一般に、蒸した米に麹菌(アスペルギルス・オリゼ)を繁殖させたものである。清酒製造に使用する麹米に用いる米麹は、平成元年11月22日 国税庁告示第8号「清酒の製法品質表示基準を定める件[1]」において、「米こうじとは、白米にこうじ菌を繁殖させたもので、白米のでんぷんを糖化させることができるものをいい、特定名称の清酒は、こうじ米の使用割合(白米の重量に対するこうじ米の重量の割合をいう。以下同じ)が、15%以上のものに限るものとする。」と定められている。麹菌は、特に制限されず、清酒製造における通常の麹菌が使用でき、例えば、株式会社ビオックの吟醸、酒母用、もろみ用、機械製麹用、純米吟醸用、純米酒用、本醸造用、経済酒用、良い香り、液化仕込み用や、樋口松之助商店のひかみ吟醸用、ハイ・G、ダイヤモンド印、もと立用、もろみ用、ひかみもろみ用20号、ひかみもろみ用30号、ひかみ特選粉状A、エースヒグチ、ヒグチ粉状菌、白峯、かおり、強力糖化菌、液化仕込み用等があげられる。
前記(B)工程は、前記掛米および麹米に対して、汲水を添加する仕込み工程である。前記掛米、麹米および/または汲水を添加する回数は、例えば、1回でもよいし、2回以上に分けて行ってもよい。後者は、例えば、段仕込みともいう。
前記掛米および麹米に対する汲水の添加割合は、特に制限されず、公知の添加割合があげられる。具体例として、前記掛米と麹米との合計重量に対する汲水の合計重量は、下限が、例えば、1.7倍であり、上限が、例えば、5倍であり、好ましくは3倍であり、より好ましくは2.5倍であり、さらに好ましくは2.1倍であり、その範囲は、例えば、1.7〜5倍であり、好ましくは1.7〜3倍であり、より好ましくは1.7〜2.5倍であり、さらに好ましくは1.7〜2.1倍である。前記汲水の添加条件は、例えば、後述する条件2が好ましい。汲水の添加割合は、汲水歩合ともいう。前記汲水は、前記仕込み工程において前記添加割合を満たすことが好ましく、具体的には、前記仕込み工程の最終時において、前記添加割合を満たし、この条件を満たした上で、次工程である発酵工程に進むことが好ましい。前記添加割合は、前記仕込み工程において、例えば、開始時に満たしてもよいし、途中段階における汲水の補充により満たしてもよいし、終了時における汲水の補充により満たしてもよい。中でも、前記仕込み工程の終了時に、前記添加割合を満たすように、前記汲水を添加することが好ましい。前記仕込み工程において、前記途中段階で汲水を補充する場合、例えば、連続的に補充してもよいし、非連続的に補充してもよい。
前記(B)工程における処理条件は、特に制限されず、例えば、温度5−25℃であり、処理時間1−7日である。
前記(C)工程は、前記(B)工程の混合物を、酵素剤の存在下、酵母により発酵させる発酵工程である。前記発酵工程は、もろみ造り工程ともいう。
前記酵母は、特に制限されず、清酒製造における通常の酵母が使用できる。前記酵母は、例えば、酵母を大量に増殖させた酒母が好ましい。前記酵母は、例えば、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeであり、特に、醸造特性の高い株として、協会系酵母である、きょうかい1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15号、尿素非生産酵母である、KArg7号、KArg9号、KArg10号、泡なし酵母である、きょうかい601、701、901、1001、1401、1501、1601、1701、1801号等があげられる。前記酵母は、この他に、例えば、秋田今野商店の取り扱い酵母である、清酒用No.2、No.4、No.4A、No.5、No.9A、No.12、No.17、No.24、No.25、No.32、No.35等もあげられる。
前記酵素剤は、特に制限されず、糖質を低減する清酒製造における通常の酵素があげられる。前記酵素は、例えば、α−グルコシダーゼ、トランスグルコシダーゼ、グルコアミラーゼ等があげられる。前記各酵素の由来は、特に制限されず、植物、動物および微生物等のいずれであってもよい。具体例としては、例えば、糸状菌由来、好ましくは、Aspergillus属由来、より好ましくはAspergillus niger由来があげられる。前記酵素剤は、この他に、例えば、後述する条件3の酵素(5’−ホスホジエステラーゼ、ホスファターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リパーゼおよび酸性エンドプロテアーゼ)を使用してもよい。本実施形態において、例えば、前者(例えば、α−グルコシダーゼおよび/またはグルコアミラーゼ等)と後者(5’−ホスホジエステラーゼ、ホスファターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リパーゼおよび/または酸性エンドプロテアーゼ)とを組合せて使用してもよい。前記酵素剤の種類は、特に制限されず、例えば、いずれか1種類でもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記グルコアミラーゼは、例えば、アマノSD(商品名、天野エンザイム社)等の市販品が使用できる。
前記混合物において、前記酵素剤の添加割合(合計)は、特に制限されないが、酒税法で定められた清酒における最大添加量に基づくと、例えば、前記掛米の重量に対して、下限が、例えば、1/1,000,000重量であり、好ましくは、1/10,000重量であり、上限が、例えば、1/1000重量であり、その範囲は、例えば、1/1,000,000重量であり、好ましくは、1/10,000〜1/1000重量である。
前記(C)工程において発酵の条件は、特に制限されず、通常の条件が例示できる。発酵温度は、例えば、約10〜35℃であり、好ましくは約10〜25℃であり、発酵期間は、例えば、約10〜50日間、好ましくは、約12〜40日間である。
そして、前記(C)工程により得られる発酵液は、例えば、前述のように、酒粕を除去して清澄画分を回収することにより、清酒が得られる。前記清澄画分は、例えば、前述のように、さらに、加熱処理、オリ除去処理、ろ過処理等を施してもよい。
(実施形態2)
本実施形態2は、前記(A)〜(C)工程を含み、汲水の添加量が前記条件2を満たす形態である。本実施形態2は、特に示さない限り、前記実施形態1と同様である。
前記(A)工程は、掛米と麹米とを準備する工程である。本実施形態において、使用する掛米の精米歩合は、特に制限されず、例えば、80−97%の精米歩合があげられ、好ましくは、前記実施形態1における条件1の精米歩合である。
前記(B)工程は、前記掛米および麹米に対して、汲水を添加する仕込み工程であって、本実施形態において、汲水の添加量を相対的に高く設定する。本実施形態において、前記汲水の添加量が相対的に高い程、α−EG、グリセロールおよび/またはα−GGの清酒における含有量を相対的に低い値に低減でき、これに伴い、清酒の糖質を相対的に低い値に低減できる。
掛米と麹米との合計重量に対する汲水の合計重量は、下限が、例えば、1.7倍であり、好ましくは、1.9倍であり、上限が、例えば、5倍であり、好ましくは3倍であり、より好ましくは2.5倍であり、さらに好ましくは2.1倍であり、その範囲は、例えば、1.7〜5倍であり、好ましくは1.7〜3倍であり、より好ましくは1.7〜2.5倍であり、さらに好ましくは1.7〜2.1倍である。
前記(B)工程において、前記汲水歩合は、例えば、前記(B)工程の最終の汲水歩合であり、例えば、前記掛米、麹米および/または汲水の添加回数は、前述のように、1回でもよいし、2回以上に分けて行ってもよい。
前記(B)工程の後は、前記実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態3は、前記(A)〜(C)工程を含み、酵素剤が前記条件3を満たす形態である。本実施形態3は、特に示さない限り、前記実施形態1および2と同様である。
前記(C)工程において、前記条件3の酵素剤は、5’−ホスホジエステラーゼ、ホスファターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リパーゼおよび酸性エンドプロテアーゼであり、いずれか1種類でもよいし、いずれか2種類を併用してもよいし、3種類全てを併用してもよい。前記条件3の酵素剤を使用する場合、前記条件3の酵素剤を使用しない場合と比較して、α−EG、グリセロールおよび/またはα−GGの清酒における含有量を相対的に低減でき、これに伴い、清酒の糖質を相対的に低減できる。
前記各酵素の由来は、特に制限されず、植物、動物および微生物等のいずれであってもよい。前記5’−ホスホジエステラーゼおよびホスファターゼは、例えば、Penicillium citrinum由来があげられ、市販品として、商品名ヌクレアーゼ「アマノ」G(天野エンザイム社)、ポリフェノールオキシダーゼは、例えば、白色腐朽菌(Trametes sp.)由来があげられ、市販品として、商品名ラッカーゼダイワ Y120(天野エンザイム社)、リパーゼは、例えば、Aspergillus niger由来およびPenicillium camembertii由来、Rhizopus niveus由来等があげられ、市販品として、商品名リパーゼA「アマノ」6および商品名リパーゼG「アマノ」50(天野エンザイム社)、商品名ニューラーゼF3G(天野エンザイム社)等があげられ、酸性エンドプロテアーゼとして、例えば、Rhizopus niveus由来があげられ、市販品として、商品名ニューラーゼF3G(天野エンザイム社)等があげられる。
前記混合物において、前記条件3の酵素剤の添加割合(合計)は、特に制限されないが、酒税法で定められた清酒における最大添加量に基づくと、例えば、前記掛米の重量に対して、下限が、例えば、1/1,000,000重量であり、好ましくは、1/10,000重量であり、上限が、例えば、1/1000重量であり、その範囲は、例えば、1/1,000,000重量であり、好ましくは、1/10,000〜1/1000重量である。
前記(C)工程において、前記酵素剤として、前述の酵素の他、例えば、前記実施形態1で例示した酵素(例えば、α−グルコシダーゼおよび/またはグルコアミラーゼ等)を併用してもよい。
前記(B)工程の後、前記(C)工程以降は、例えば、前記実施形態1または2と同様である。
つぎに、本発明の清酒の糖質の低減方法は、前述のように、前記本発明のα−EG、グリセロールおよび/またはα−GG含量の低減方法により、清酒の糖質を低減する方法ことを特徴とする。すなわち、本発明の清酒の糖質の低減方法は、前記(A)〜(C)工程を含み、且つ、前記条件1〜条件3の少なくとも一つの条件を満たすことを特徴とする。
また、本発明の清酒の製造方法は、前述のように、前記本発明のα−EG、グリセロールおよび/またはα−GG含量の低減方法により、清酒を製造することを特徴とする。すなわち、本発明の清酒の製造方法は、前記(A)〜(C)工程を含み、且つ、前記条件1〜条件3の少なくとも一つの条件を満たすことを特徴とする。
本発明の糖質の低減方法および清酒の製造方法は、前記本発明のα−EG、グリセロールおよび/またはα−GG含量の低減方法と同じ条件で処理を行うことが特徴であって、その他の構成および条件は、何ら制限されない。なお、本発明において、清酒の糖質を低減できるメカニズムは、例えば、前述のように、α−EG、グリセロールおよび/またはα−GG含量の低減によると考えられるが、本発明は、この推定には制限されない。本発明は、例えば、α−EG、グリセロールおよび/またはα−GG含量の低減にかかわらず、前記(A)〜(C)工程において、前記条件1〜条件3の少なくとも一つを満たすことで実行できる。
本発明の糖質の低減方法および清酒の製造方法は、前記本発明のα−EG、グリセロールおよび/またはα−GG含量の低減方法を援用できる。
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により制限されない。
[参考例]
本例では、市販されている糖質ゼロ表示または糖類ゼロ表示の清酒製品について、HPLCによって糖組成の分析を行った。
(1)分析対象品
サンプル1〜3:糖質ゼロ表示の市販品清酒
サンプル4:糖類ゼロ表示の市販品清酒
サンプル5:通常の市販品清酒
(2)結果
これらの結果を下記表1に示す。表1に示すように、糖質ゼロ表示のサンプル1〜3は、いずれも、通常品であるサンプル5と比較して、糖類に該当するグルコース、マルトースおよびイソマルトースが、同様の挙動で極めて低い値に低減されていた。これに対して、α−EGおよびグリセロールは、糖質ゼロ表記のサンプル1〜3の間で、大幅なばらつきが生じ、特に、グリセロールは、通常品であるサンプル5よりも高い値を示した。また、糖類ゼロ表示のサンプル4に関しては、通常品であるサンプル5と比較して、グルコースおよびイソマルトースは、低減されているものの、他の成分は、いずれも高い値を示した。この結果から、従来の方法では、α−EG、グリセロールおよびα−GGが残存するため、さらなる糖質の低減が妨げられていたと考えられる。
Figure 0005851957
[実施例A1]
本例では、精米歩合が60%、72%、85%の掛米原料を使用し、以下の方法により液化仕込みと粒仕込みを行い、上槽酒(清酒)における成分の変動を確認した。
精米歩合60%:No.65 五百万石
精米歩合72%:No.66 日本晴
精米歩合85%:No.67 日本晴
(1)液化仕込み
掛米原料を用いて、以下の方法により液化を行った。液化には、液化酵素として、TU(商品名クライスターゼSD−TU20、酵素名α−アミラーゼ、天野エンザイム社製)とYC(商品名コクゲンSD−YC15、酵素名α−アミラーゼ、天野エンザイム社製)とを重量比7:3で使用し、酵素の総量と総米の総重との比が、1:3,500となるようにした。
掛米原料である白米164gを液化処理して得られた液化液に、麹米原料である白米36gから得られた麹米と、汲水を混合した。なお、前記白米の液化処理には、前記汲水の一部を使用し、前記液化処理に使用した汲水と、前記液化液と麹米とに混合した汲水とを合わせて、合計400mLとなるように調製した。
前記液化液の調製に使用した掛米原料と麹米の調製に使用した麹米原料とをあわせた総米200gに対する汲水歩合は、200%であり、前記総米おける麹米の割合は36%であった。前記混合液に、酵素剤としてグルコアミラーゼ(商品名アマノSD、天野エンザイム社)5mgと酵母培養液5mlと希釈乳酸液1mlを添加して、30日間の発酵を行った。前記酵母培養液は、酵母きょうかい901を、YPD培地を用いて、30℃で24時間培養したものを使用した。発酵開始時の酒母における初期酵母密度は、1×10個/mlとした。希釈乳酸は、90%乳酸を、水で体積比1/10に希釈して調製した。発酵は、発酵開始日(1日目)の温度を20℃とし、2日目の温度を18℃に設定し、3日以降の温度を15℃に設定した。
(2)粒仕込み
掛米原料である白米164gを蒸して得られた蒸米に、麹米原料である白米36gから得られた麹米と、汲水400mlを混合した。前記蒸米の調製に使用した掛米原料と前記麹米の調製に使用した麹米原料とをあわせた総米200gに対する汲水歩合および前記総米における麹米の割合は、前記(1)の液化仕込みと同じである。前記混合液に、酵素剤としてグルコアミラーゼ(商品名スミチームSG、新日本化学工業株式会社)2mgと酵母培養液5mlと希釈乳酸液1mlを添加して、30日間の発酵を行った。前記酵母培養液および前記希釈乳酸液は、前記(1)と同様のものを使用し、同様の条件とした。発酵温度は、15℃に設定した。
(3)成分の経時的変化
そして、前記(1)の液化仕込みのもろみおよび前記(2)の粒仕込みのもろみについて、30日間の発酵の間、発酵液からサンプルを採取した(3、7、10、14、17、21、24、29日目)。そして、これらのサンプルについて、HPLCによって、α−EG、グリセロールおよびα−GGの含有量を測定した。
これらの結果を、図1に示す。図1は、α−EGの濃度の経時的変化を示すグラフである。図1(A)が、液化仕込みの結果であり、ひし形◇のプロットが、精米歩合60%の掛米を使用した液化仕込みの結果、四角□のプロットが、精米歩合72%の掛米を使用した液化仕込みの結果、三角△のプロットが、精米歩合85%の掛米を使用した液化仕込みの結果である。図1(B)は、粒仕込みの結果であり、ひし形◇のプロットが、精米歩合60%の掛米を使用した粒仕込みの結果であり、四角□のプロットが、精米歩合72%の掛米を使用した粒仕込みの結果であり、三角△のプロットが、精米歩合85%の掛米を使用した粒仕込みの結果である。
図1に示すように、α−EGは、掛米の精米歩合が高い程、その含有量を低減できることがわかった。
(4)上槽酒の分析
また、30日間の発酵により得られたもろみから、酒粕を除去し、清澄画分を上槽酒として回収した。
前記上槽酒について、酒質の分析を行った。各種パラメーターは、独立行政法人酒類総合研究所が定める「酒類総合研究所標準分析法」(平成22年11月4日、http://www.nrib.go.jp/data/nribanalysis.htm)の「3.清酒」の規定に基づいて分析した。具体的には、アルコールは、「3−4 アルコール分 A)−2 振動式密度計法」、日本酒度は、「3−3 比重(日本酒度) B)振動式密度計法」、アミノ酸度は、「3−6 アミノ酸」、酸度は、「3−5 総酸」、エキス分は、「3−7 エキス分」に基づいて行った。そして、エキス分からタンパク質を控除した値(エキス分−タンパク質)を「簡易算定糖質」とした。糖質は、エキス分から、タンパク質、脂質、食物繊維および灰分を控除した値である。清酒において、脂質、食物繊維および灰分は、糖質とタンパク質と比較して無視できる量しか含まれず、「エキス分−タンパク質」は、間接的に糖質を示すパラメーターとして使用できる。さらに、エキス分、タンパク質および簡易算定糖質について、前記上槽酒のアルコール度数を13.5%に設定した際の換算値を求めた。
これらの結果を、表2に示す。表2に示すように、液化仕込みおよび粒仕込みのいずれにおいても、簡易算定糖質(エキス分−タンパク質)は、精米歩合が高いほど低減できた。この結果から、精米歩合を高く設定することで、糖質を低減できることがわかった。また、液化仕込みの場合、精米歩合72%から精米歩合85%に変更した際の簡易算定糖質減少量は、精米歩合60%から精米歩合72%に変更した際の簡易算定糖質減少量に対して、7.8倍となった。また、液化仕込みおよび粒仕込みともに、精米歩合を90%、95%および97%とすることで、精米歩合85%と比較して、さらに簡易算定糖質が減少することが明らかとなった。
Figure 0005851957
また、HPLCによる糖の分析結果を、図2に示す。図2は、上槽酒におけるα−EG濃度を示すグラフであり、図2(A)が液化仕込み、図2(B)が粒仕込みの結果を示す。図2に示すように、液化仕込みおよび粒仕込みのいずれにおいても、精米歩合が高いほどα−EGを低減できることがわかった。
[実施例B1]
本例では、仕込み工程において汲水歩合を増加させ、清酒における成分の変動を確認した。
(1)液化仕込み
まず、精米歩合78%の加工用米を掛米原料として使用し、液化により融米を調製し、これを掛米とした。そして、仕込み工程における最終の汲水歩合が、150%、170%、190%、210%となるように、表3の配合量で一段仕込みを行った。なお、表3において、酒母は、仕込み開始時の条件であり、留添は、1回目の添加条件である。前記酒母は、前記留添の1日前の条件である。そして、前記留添を発酵処理の1日目としてカウントし、発酵を行った。処理温度は、留添以前の仕込み工程を25℃で行い、1日目の留添を25℃、2日目以降の発酵を15℃で行った。特に示さない限り、仕込みと発酵は、前記実施例A1と同様に行った。
Figure 0005851957
(2)成分の経時的変化
そして、前記(1)の液化仕込みのもろみについて、30日間の発酵の間、発酵液からサンプルを採取した。そして、これらのサンプルについて、HPLCによって、α−EG、α−GGおよびグリセロールの含有量を測定した。
これらの結果を、図3に示す。図3は、α−EG濃度の経時的変化を示すグラフである。図3において、ひし形◇のプロットが、汲水歩合150%、四角□のプロットが、汲水歩合170%、三角△のプロットが、汲水歩合190%、バツ×のプロットが、汲水歩合210%の結果である。
図3に示すように、汲水歩合の増加することによって、α−EGについて、発酵時の経時的な増加を抑制できた。
(3)上槽酒の分析
また、18日間の発酵により得られたもろみから、酒粕を除去し、清澄画分を上槽酒として回収した。
前記上槽酒について、生産性の確認として、アルコール度数(%)および酒化率(L/t)を測定した。酒化率は、1トンの白米から生成されるアルコール量(L)の割合を示す。これらの結果を、表4に示す。表4に示すように、汲水歩合の増加によって、アルコール度数(%)は低下するが、酒化率(L/t)は、いずれも十分な値が得られた。このため、汲水歩合を増加させても、生産性は維持できることがわかった。
Figure 0005851957
つぎに、前記上槽酒について、酒質の分析を行った。各パラメーターは、前記実施例A1と同様である。これらの結果を、表5に示す。表5(A)に、前記上槽酒の分析結果を示し、表5(B)に、各上槽酒のアルコール度数を13%に設定した際の換算値を示す。表5に示すように、汲水歩合が高い程、エキス分の値が減少した。この結果から、汲水歩合を高く設定することで、糖質を低減できることがわかった。さらに、汲水歩合を、総米に対して210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340および350%と増加させることで、汲水歩合を総米に対して150%とした場合と比較して、さらに糖質を低減でき、α−EGは、顕著に低減した。
Figure 0005851957
また、HPLCによる糖の分析結果を、図4に示す。図4は、上槽酒における成分の濃度を示すグラフであり、アルコール度数を13度に設定した概算値を示す。図4に示すように、汲水歩合を高くすることによって、α−EG、グリセロールおよびα−GGの濃度を低減できることがわかった。
[実施例B2]
本例では、汲水歩合を158%、203%とし、以下の液化仕込みを行い、清酒における成分の変動を確認した。
(1)液化仕込み
まず、精米歩合78%の加工用米を掛米原料として使用し、液化により融米を調製し、これを掛米とした。そして、仕込み工程における最終の汲水歩合が158%および203%となるように、表6の配合量で4段仕込みを行った。表6(A)および(B)において、酒母は、仕込み開始時の条件であり(留2の9日前)、初添えが1回目の添加条件(留2の5日前)、仲添が2回目の添加条件(留2の2日前)、留1が3回目の添加条件(留2の1日前)、留2が4回目の添加条件である。そして、前記留2を発酵処理の1日目とカウントして、発酵を行った。
なお、仕込み工程後の発酵工程において、表6(B)で仕込んだ汲水歩合158%の系については、さらに、アルコール度数が18%前後となるように、水(追水)を適宜添加した。追水を添加した系は、発酵工程の終了時において、追水の合計が1110mlであり、総米100%(重量)に対して添加した水、すなわち、汲水および追水の合計割合が、185%(重量)であった。
酵素剤は、グルコアミラーゼ600mg、α−グルコシダーゼ(商品名α―グルコシダーゼ「アマノ」、天野エンザイム社)240mg使用した。そして、仕込みと発酵は、特に示さない限り、前記実施例A1の(1)と同様にして行った。
Figure 0005851957
(2)上槽酒の分析
留2を1日目として27日間の発酵により得られたもろみに、アルコール添加率210L/tとなるように、醸造アルコールと追水を添加し、アルコール度数20%に調整した。そして、アルコールを添加したもろみから酒粕を除去し、清澄画分を上槽酒として回収した。
前記上槽酒について、酒質および糖の分析を行った。これらの結果を、表7に示す。表7に示すように、仕込み工程における汲水歩合を増加させることで、良好な酒化率で、α−EGを効率良く低下し、同一のアルコール度数に調整した場合でも、結果的に、糖質を低減できることがわかった。また、汲水歩合203%の系では、アルコール度数13.2%に換算した際、上槽酒の算定糖質が100mlあたり0.5g未満、つまり糖質ゼロとなった。本実施例における、汲水歩合203%の系の結果は、非常に低いアルコール添加率といえる。
また、仕込み工程における汲水歩合が158%の系は、発酵工程の追水によって、発酵工程終了時の水の添加割合は、汲水歩合203%の系に近い185%であった。しかしながら、発酵工程における追水では、仕込み工程で汲水歩合を203%とした場合の効果は、得られなかった。つまり、仕込み時に汲水歩合を総米比約200%とした場合と、仕込み時の汲水歩合を総米比約150%として、追水の添加により発酵工程終了時の最終の水の添加割合を約200%とした場合を比較すると、前者の場合、すなわち、仕込み工程において、汲水歩合を総米に対して200%とした場合に、糖質は、著しく減少し、特に、α−EGは、顕著に減少した。これらの結果から、仕込み工程において汲水歩合を高く設定することが重要といえる。
また、下記表7に示すように、仕込み時の汲水歩合を203%とした系は、仕込み時の汲水歩合を158%とした系よりも高い酒化率を示した。このように、前者は、十分な酒化率を示したことから、生産性にも優れることがわかった。
また、前記上槽酒のエキス分の組成比について、アルコール度数13.2%に調整した場合の換算値のグラフを図5に示す。また、図5に示すように、汲水の添加割合を増加させることによって、エキス分の組成比における糖合計が低減していることから、糖質の低下は、これに起因すると言える。さらに、α−EGについては、仕込み工程において汲水歩合を203%に増加させることによって、汲水歩合が158%の系と比較して、1/3未満に減少できた。
Figure 0005851957
[実施例B3]
前記実施例B2における表6の(B)について、配合量を表8(B)に変更した以外は、前記実施例B2と同様にして、仕込みと発酵を行い、上槽酒の分析を行った。表8(A)の配合量は、表6(A)の配合量と同じとした。
Figure 0005851957
前記上槽酒について、酒質および糖の分析結果を、表9に示す。前記実施例B2と同様の結果が得られた。具体的には、表9に示すように、汲水の添加割合を増加させることによって、α−EGを効率良く低下でき、結果的に、糖質も低減することがわかった。また、表9に示すように、仕込み時の汲水歩合を200%とした系は、仕込み時の汲水歩合を158%とした系よりも高い酒化率を示した。このように、前者は、十分な酒化率を示したことから、生産性にも優れることがわかった。
Figure 0005851957
[実施例B4]
前記実施例B2において、留2を1日目として27日間の発酵の間、発酵液からサンプルを採取し、エキス分を測定した。そして、前記サンプルのアルコール度数を13.2%に調整した場合におけるエキス分の換算値を求めた。この結果を図6に示す。図6に示すように、アルコール度数を13.2%に設定した場合、同じ発酵日数において、汲水の添加割合が203%のサンプルは、汲水の添加割合が158%のサンプルよりも低いエキス分を示した。この結果から、同じ発酵日数のサンプルを、アルコール添加によって同じエキス分に調整する場合、例えば、前者のサンプル(203%)は、後者のサンプル(158%)よりも、アルコール添加量を低減できることがわかる。また、同程度のアルコール添加率によって同じエキス分に調整する場合、前者のサンプル(203%)は、後者のサンプル(158%)よりも、発酵時間の短いものを使用できる。したがって、汲水の添加割合の増加によって、アルコール添加率の低減または発酵日数の低減が可能となる。
[実施例C1]
本例では、発酵工程において各種酵素を使用し、清酒における成分の変動を確認した。
(1)液化仕込み
表10の20分の1の配合量で4段仕込みを行い、仕込み後の発酵工程において、16日目に、酵素剤として、α−グルコシダーゼ(商品名α−グルコシダーゼ「アマノ」、天野エンザイム社)20mgと、以下のいずれか1種類の酵素20mgとを添加した以外は、前記実施例B2と同様にして、仕込みと発酵を行った。比較例は、α−グルコシダーゼのみを使用した。
酵素No.1
5’−ホスホジエステラーゼおよびホスファターゼ
Penicillium citrinum由来
商品名ヌクレアーゼ「アマノ」G(天野エンザイム社)
至適pH4.5
至適温度50℃
酵素No.2
ポリフェノールオキシダーゼ
白色腐朽菌(Trametes sp.)由来
商品名ラッカーゼダイワ Y120(天野エンザイム社)
至適pH4.0−4.5
至適温度40℃
酵素No.3
リパーゼ
Aspergillus niger由来
商品名リパーゼA「アマノ」6(天野エンザイム社)
至適pH5.0−6.0
至適温度40℃
酵素No.4
リパーゼ
Penicillium camembertii由来
商品名リパーゼG「アマノ」50(天野エンザイム社)
至適pH5.0
至適温度40℃
酵素No.5
酸性エンドプロテアーゼおよびリパーゼ
Rhizopus niveus由来
商品名ニューラーゼF3G(天野エンザイム社)
酸性エンドプロテアーゼの至適pH4.5
酸性エンドプロテアーゼの至適温度50℃
リパーゼの至適pH7.0
リパーゼの至適温度40℃
Figure 0005851957
(2)上槽酒の分析
前記23日間の発酵により得られたもろみから、酒粕を除去し、清澄画分を上槽酒として回収した。
前記上槽酒について、酒質および糖の分析を行った。これらの結果を、表11に示す。表11に示すように、実施例において前記酵素サンプルNo.1〜5をα−グルコシダーゼと併用することによって、α−グルコシダーゼのみを使用した比較例よりも、各種成分を低減でき、これに伴い糖質を低減できた。
Figure 0005851957
以上のように、本発明によれば、従来の製造方法では実現できなかった糖質のさらなる低減が可能となる。このため、例えば、製品化工程において、醸造用アルコールの添加割合を抑制でき、醸造用アルコールを添加しない純米酒、醸造用アルコールの添加割合が低い本醸造および銀醸造等、「糖質ゼロ表記」の規定を満たす付加価値の高い清酒を提供できる。

Claims (6)

  1. 下記の(A)〜(C)工程を含み、且つ、
    下記の条件1および条件両方の条件を満たすことを特徴とする、清酒におけるエチル−α−(D)−グルコシド、グリセロールおよびα−D-グルコシルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つの含量を低減する方法。
    (A)掛米および麹米を準備する工程
    (B)前記(A)工程の掛米および麹米に汲水を添加する仕込み工程
    (C)前記(B)工程の混合物を、酵素剤の存在下、酵母により発酵させる発酵工程
    条件1:前記(A)工程において、78%以上の精米歩合の掛米を使用する
    条件2:前記(B)工程において、汲水の添加量を、掛米と麹米との合計重量に対して汲水の合計重量が、1.7倍以上となるように設定す
  2. 条件1において、前記掛米の精米歩合が、80%以上である、請求項1記載の低減方法。
  3. さらに、下記条件3を満たす、請求項1または2記載の低減方法。
    条件3:前記(C)工程において、前記酵素剤として、5’−ホスホジエステラーゼ、ホスファターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リパーゼおよび酸性エンドプロテアーゼからなる群から選択された少なくとも一つの酵素を使用する
  4. 前記(C)工程において、前記酵素剤として、前記条件3に示す酵素と、グルコアミラーゼおよび/またはα−グルコシダーゼとを併用する、請求項記載の低減方法。
  5. 請求項1からのいずれか一項に記載の低減方法により、清酒の糖質を低減することを特徴とする糖質低減方法。
  6. 請求項1からのいずれか一項に記載の低減方法により、清酒を製造することを特徴とする清酒の製造方法。
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