(第1実施形態)
以下、第1実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。図1に示す車両用熱管理システム10は、車両が備える各種熱交換対象機器(冷却または加熱を要する機器)を適切な温度に冷却するために用いられる。
本実施形態では、熱管理システム10を、エンジン(内燃機関)および走行用モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド自動車に適用している。
本実施形態のハイブリッド自動車は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力を、車両に搭載された電池(車載バッテリ)に充電可能なプラグインハイブリッド自動車として構成されている。電池としては、例えばリチウムイオン電池を用いることができる。
エンジンから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機を作動させるためにも用いられる。そして、発電機にて発電された電力および外部電源から供給された電力を電池に蓄えることができ、電池に蓄えられた電力は、走行用モータのみならず、冷却システムを構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給される。
図1に示すように、熱管理システム10は、第1ポンプ11、第2ポンプ12、第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14を備えている。第1ポンプ11および第2ポンプ12は、冷却水を吸入して吐出する電動ポンプである。冷却水は、熱媒体としての流体である。本実施形態では、冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンまたはナノ粒子を含む液体が用いられている。
第1ポンプ11および第2ポンプ12は、同一の駆動力(作動)条件において、冷却水中の空気混入量が多くなった際に回転数が上昇する(いわゆる空回り)という特性を有している。この特性を利用することによって、冷却水の液量低下を検知することが可能である。
第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14は、冷却水が流れる冷却水流路であり、互いに並列に配置されている。第1ポンプ用流路13には第1ポンプ11が配置されている。第2ポンプ用流路14には第2ポンプ12が配置されている。
第1ポンプ用流路13にはラジエータ15が配置されている。ラジエータ15は、冷却水と車室外空気(以下、外気と言う。)とを熱交換することによって冷却水の熱を外気に放熱させる室外熱交換器(外気熱媒体熱交換器)である。
ラジエータ15は、内部を冷却水が流れる多数本のチューブと、多数本のチューブ同士の間に配置されて外気との熱交換を促進するフィンとを有している。ラジエータ15への外気の送風は室外送風機16によって行われる。ラジエータ15は車両の最前部に配置されているので、車両の走行時にはラジエータ15に走行風を当てることができる。
より具体的には、冷却性能確保のために、ラジエータ15は、車両前面開口部から視認できる位置に配置されている。そのため、車両の走行中に外部から飛来する石等がラジエータ15に直撃することがある。最悪の場合、ラジエータ15が損傷してラジエータ15から冷却水が漏れることがある。
第1ポンプ用流路13の下流側は第1切替弁17の第1入口17aに接続され、第1ポンプ用流路13の上流側は第2切替弁18の第1出口18aに接続されている。第2ポンプ用流路14の下流側は第1切替弁17の第2入口17bに接続され、第2ポンプ用流路14の上流側は第2切替弁18の第2出口18bに接続されている。
第1切替弁17は、冷却水が流出する4つの出口17c、17d、17e、17fを有している。第1切替弁17は、各出口17c、17d、17e、17fから流出する冷却水が、第1入口17aから流入した冷却水、および第2入口17bから流入した冷却水のいずれかとなるように冷却水の流れを切り替える機能を有している。
第2切替弁18は、冷却水が流入する4つの入口18c、18d、18e、18fを有している。第2切替弁18は、入口18c、18d、18e、18fから流入した冷却水が、第1出口18aおよび第2出口18bのいずれかから流出するように冷却水の流れを切り替える機能を有している。
第1切替弁17の4つの出口17c、17d、17e、17fと第2切替弁18の4つの入口18c、18d、18e、18fとの間には、4つの共通流路21、22、23、24が接続されている。
第1切替弁17の出口17cと第2切替弁18の入口18cとの間に接続された共通流路21には、熱交換対象機器であるインバータ26および走行用モータ27が配置されている。
第1切替弁17の出口17dと第2切替弁18の入口18dとの間に接続された共通流路22には、熱交換対象機器である冷却水冷却用熱交換器28および空気冷却用熱交換器29が配置されている。
第1切替弁17の出口17eと第2切替弁18の入口18eとの間に接続された共通流路23には、熱交換対象機器である冷却水加熱用熱交換器30およびヒータコア31が配置されている。
第1切替弁17の出口17fと第2切替弁18の入口18fとの間に接続された共通流路24(電池用共通流路)には、熱交換対象機器である電池32が配置されている。
インバータ26は、電池32から供給された直流電力を交流電力に変換して走行用モータに出力する電力変換装置であり、パワーコントロールユニットを構成している。パワーコントロールユニットは、走行用モータを駆動させるために電池32から供給される電力を制御する部品であり、インバータ26の他にも、電池32の電圧を上げる昇圧コンバータや、プラグインハイブリッド車においては商用電源を直流に変換しかつ電池32の電圧以上に昇圧させる充電器等を有している。
インバータ26には、冷却水が流れる流路が形成されている。したがって、インバータ26は、その流路を流れる冷却水と熱交換することによって冷却される。走行用モータ27にも、冷却水が流れる流路が形成されている。したがって走行用モータ27は、その流路を流れる冷却水と熱交換することによって冷却される。
冷却水冷却用熱交換器28は、冷凍サイクル33の低圧側熱交換器を構成している。冷却水冷却用熱交換器28は、冷凍サイクル33の低圧冷媒と冷却水とを熱交換させることによって冷却水を冷却する冷却手段(熱媒体冷却用熱交換器)である。
冷却水加熱用熱交換器30は、冷凍サイクル33の高圧側熱交換器を構成している。冷却水加熱用熱交換器30は、冷凍サイクル33の高圧冷媒と冷却水とを熱交換させることによって冷却水を加熱する加熱手段(熱媒体加熱用熱交換器)である。
冷凍サイクル33は、蒸気圧縮式冷凍機である。本例では、冷媒はフロン系冷媒であり、冷凍サイクル33は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
冷凍サイクル33は、低圧側熱交換器である冷却水冷却用熱交換器28および高圧側熱交換器である冷却水加熱用熱交換器30の他、圧縮機34および膨張弁35を有している。
圧縮機34は、電池から供給される電力によって駆動される電動圧縮機であり、気相冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機34は、プーリー、ベルト等を介してエンジンにより回転駆動されるようになっていてもよい。
圧縮機34から吐出された高温高圧の気相冷媒は、高圧側熱交換器である冷却水加熱用熱交換器30で冷却水と熱交換することによって吸熱されて凝縮する。
膨張弁35は、冷却水加熱用熱交換器30で凝縮された液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。膨張弁35で減圧膨張された低圧冷媒は、低圧側熱交換器である冷却水冷却用熱交換器28で冷却水と熱交換することによって冷却水から吸熱して蒸発する。冷却水冷却用熱交換器28で蒸発した気相冷媒は圧縮機34に吸入されて圧縮される。
ラジエータ15では外気によって冷却水を冷却するのに対し、冷却水冷却用熱交換器28では冷凍サイクル33の低圧冷媒によって冷却水を冷却する。このため、冷却水冷却用熱交換器28で冷却された冷却水の温度を、ラジエータ15で冷却された冷却水の温度に比べて低くすることが可能である。
具体的には、ラジエータ15では冷却水を外気の温度よりも低い温度まで冷却することはできないのに対し、冷却水冷却用熱交換器28では冷却水を外気の温度よりも低い温度まで冷却することが可能である。
本実施形態では、冷凍サイクル33の高圧側熱交換器として冷却水加熱用熱交換器30を有しているので、高圧冷媒と外気とを熱交換させる空冷式のコンデンサを廃止できる。その反面、ラジエータ15の外気流れ上流側に空冷式のコンデンサが配置されないこととなるので、ラジエータ15が車両前面開口部から視認できる位置に配置されることとなり、その結果、車両の走行中に外部から飛来する石等からラジエータ15を保護することができなくなる。
空気冷却用熱交換器29は、冷却水と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器であり、室内空調ユニットのケーシング36の内部に配置されている。ケーシング36は、室内送風機37によって送風された送風空気が流れる空気通路を形成している。
ヒータコア31は、冷却水加熱用熱交換器30で加熱された冷却水と車室内への送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器(空気熱媒体熱交換器)である。
ヒータコア31は、共通流路23において冷却水加熱用熱交換器30の下流側に配置されている。ヒータコア31は、室内空調ユニットのケーシング36の内部において、空気冷却用熱交換器29よりも空気流れ下流側に配置されている。
電池32には、冷却水が流れる流路が形成されており、その流路を流れる冷却水と熱交換することによって電池32が冷却される。電池32は、出力低下、充電効率低下および劣化防止等の理由から10〜40℃程度の温度に維持されるのが好ましい。
第1ポンプ用流路13には、冷却水を溜めることや、系統の圧力を適正範囲に保つことのできる密閉式のリザーブタンク38が配置されている。第2ポンプ用流路14にも、密閉式のリザーブタンク39が配置されている。
リザーブタンク38、39を密閉式とすることによって、系統内の圧力を設定値以内に保つ効果が得られ、第1ポンプ11、第2ポンプ12の揚程が大幅に異なるような作動状態においてもリザーブタンク38、39内の液面変動を最小限に留める作用が得られる。
リザーブタンク38、39は、冷却水中に混入した気泡を気液分離する機能を有している。リザーブタンク38、39は、冷却水の温度変化に伴う膨張収縮による圧力の異常上昇・低下に対して適切な圧力を保持する機能を有している。リザーブタンク38、39に余剰冷却水を溜めておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。
次に、第1切替弁17および第2切替弁18の詳細を図2〜図5に基づいて説明する。第1切替弁17および第2切替弁18は、基本構造は互いに同一であり、冷却水の入口と流体の出口とが互いに逆になっている点が相違している。したがって、図2〜図5に第1切替弁17の具体的構造を示し、図2〜図5の括弧内に第2切替弁18に対応する符号を付して第2切替弁18の具体的構造の図示を省略する。
第1切替弁17は、第1入口17a、第2入口17bおよび出口17c、17d、17e、17fが形成された本体部171を有している。本体部171の内部には、第1入口17aおよび第2入口17bから流入した冷却水が出口17c、17d、17e、17fへと流れる流路が形成されている。
具体的には、2つの入口側流路171a、171bと、4つの連通流路171c、171d、171e、171fと、4つの出口側流路171g、171h、171i、171jとが形成されている。
入口側流路171aは、第1入口17aと連通する流路である。入口側流路171bは、第2入口17bと連通する流路である。4つの連通流路171c、171d、171e、171fは、2つの入口側流路171a、171bと連通する流路である。
出口側流路171gは、連通流路171cおよび出口17cと連通する流路である。出口側流路171hは、連通流路171dおよび出口17dと連通する流路である。出口側流路171iは、連通流路171eおよび出口17eと連通する流路である。出口側流路171jは、連通流路171fおよび出口17fと連通する流路である。
図3は、第1切替弁17を連通流路171c、出口側流路171gおよび出口17cの部分で切断した断面図である。連通流路171cには、入口側流路171a、171bと出口側流路171gとの連通状態を切り替えるドア式の弁体172が配置されている。
弁体172が図3に示す位置に回転操作された場合、出口側流路171gは一方の入口側流路171aと連通し、他方の入口側流路171bとの連通が遮断される。したがって、第1入口17aから流入した冷却水は出口17cから流出し、第2入口17bから流入した冷却水は出口17cから流出しない。
弁体172が図4に示す位置に回転操作された場合、出口側流路171gは一方の入口側流路171aとの連通が遮断され、他方の入口側流路171bと連通する。したがって、第1入口17aから流入した冷却水は出口17cから流出せず、第2入口17bから流入した冷却水は出口17cから流出する。
弁体172が図5に示す位置に回転操作された場合、出口側流路171gは両方の入口側流路171a、171bと連通しない。したがって、第1入口17aから流入した冷却水および第2入口17bから流入した冷却水の両方が出口17cから流出しない。
図示を省略しているが、連通流路171cと同様に、他の3つの連通流路171c、171d、171e、171fにも、入口側流路171a、171bと出口側流路171h、171i、171jとの連通状態を切り替えるドア式の弁体が配置されている。
各弁体は、図2に示す電動アクチュエータ173および歯車機構174によって駆動される。図2の例では、電動アクチュエータ173を弁体と同数個配置しているが、電動アクチュエータ173の個数を弁体の個数よりも少なくしてもよい。この場合、電動アクチュエータ173と弁体とをリンク機構で連結して各弁体を連動駆動すればよい。
本体部171には空気導入口171kが形成されている。空気導入口171kは、出口側流路171jから分岐している。空気導入口171kには、開閉器175が設けられている。開閉器175は、空気導入口171kを開閉する。例えば開閉器175としては、ロータリバルブ式の弁、ポペット式の弁や火薬破壊式のものを用いることができる。
第1切替弁17と同様に、第2切替弁18は、第1出口18a、第2出口18bおよび入口18c、18d、18e、18fが形成された本体部181を有している。
本体部181の内部には、第1出口18aおよび第2出口18bから流入した冷却水が入口18c、18d、18e、18fへと流れる流路が形成されている。
具体的には、2つの出口側流路181a、181bと、4つの連通流路181c、181d、181e、181fと、4つの入口側流路181g、181h、181i、181jが形成されている。
出口側流路181aは、第1出口18aと連通する流路である。出口側流路181bは、第2出口18bと連通する流路である。4つの連通流路181c、181d、181e、181fは、2つの出口側流路181a、181bと連通する流路である。
入口側流路181gは、連通流路181cおよび入口18cと連通する流路である。入口側流路181hは、連通流路181dおよび入口18dと連通する流路である。入口側流路181iは、連通流路181eおよび入口18eと連通する流路である。入口側流路181jは、連通流路181fおよび入口18fと連通する流路である。
連通流路181cには、出口側流路181a、181bと入口側流路181gとの連通状態を切り替えるドア式の弁体182が配置されている。他の3つの連通流路181c、181d、181e、181fにも、出口側流路181a、181bと入口側流路181h、181i、181jとの連通状態を切り替えるドア式の弁体が配置されている。各弁体は、電動アクチュエータ183および歯車機構184によって駆動される。
本体部181には冷却水排出口181kが形成されている。冷却水排出口181kは、入口側流路181jから分岐している。冷却水排出口181kには、開閉器185が設けられている。開閉器185は、冷却水排出口181kを開閉する。例えば開閉器185としては、ロータリバルブ式の弁、ポペット式の弁や火薬破壊式のものを用いることができる。冷却水排出口181kおよび開閉器185は、電池32から冷却水を排出するための排出手段を構成している。
図6は、熱管理システム10の主要機器の上下方向における配置関係を示している。図6中の上下の矢印は、熱管理システム10の車両搭載状態における上下方向(重力方向)を示している。
第1ポンプ11および第2ポンプ12は、ラジエータ15の最上面よりも上方に配置されている。リザーブタンク38は、第1ポンプ用流路13の最上部に配置されている。リザーブタンク39は、第2ポンプ用流路14の最上部に配置されている。電池32は、冷却水排出口181kよりも上方側に配置されている。
冷却水排出口181kの下方側には、冷却水排出口181kから排出された冷却水を受ける冷却水受け40が配置されている。冷却水排出口181kの代わりに、図6の二点鎖線に示すように、共通流路24のうち電池32と第2切替弁18との間の部位、または電池32自体の下部に冷却水排出口41(排出手段)が設けられていてもよい。
次に、熱管理システム10の電気制御部を図7に基づいて説明する。制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された第1ポンプ11、第2ポンプ12、圧縮機34、室内送風機37、第1切替弁17の各電動アクチュエータ173、および第2切替弁18の各電動アクチュエータ183等の作動を制御する制御手段である。
制御装置50は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
本実施形態では、特に第1切替弁17の開閉弁172h〜172qおよび第2切替弁18の開閉弁182h〜182qの作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を切替弁制御手段50aとする。もちろん、切替弁制御手段50aを制御装置50に対して別体で構成してもよい。
制御装置50の出力側には、駆動系制御装置51が接続されている。駆動系制御装置51は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続されたエンジンおよび走行用モータ27を制御する駆動制御手段である。制御装置50および駆動系制御装置51を1つの制御装置として一体的に構成してもよい。
本実施形態では、特に駆動系制御装置51に対して駆動力制限要求信号(エンジンおよび走行用モータ27による駆動力を制限する要求信号)を出力する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を駆動力制限要求手段50bとする。もちろん、駆動力制限要求手段50bを制御装置50に対して別体で構成してもよい。
制御装置50の入力側には、内気センサ52、外気センサ53、日射センサ54、水位センサ55、56および冷却水検知センサ57等の各種センサの検出信号が入力される。
内気センサ52は、内気温(車室内温度)を検出する検出手段(内気温度検出手段)である。外気センサ53は、外気温を検出する検出手段(外気温度検出手段)である。日射センサ54は、車室内の日射量を検出する検出手段(日射量検出手段)である。
水位センサ55は、リザーブタンク38に配置され、リザーブタンク38内の冷却水の水位を検知する水位検知手段である。水位センサ56は、リザーブタンク39に配置され、リザーブタンク39内の冷却水の水位を検知する水位検知手段である。
冷却水検知センサ57は、各熱交換対象機器26〜32に冷却水が満たされているか否かを検知する検知手段(熱媒体検知手段)である。
制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル58に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル58に設けられた各種空調操作スイッチとしては、エアコンスイッチ、オートスイッチ、室内送風機37の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
エアコンスイッチは、空調(冷房または暖房)の作動・停止(オン・オフ)を切り替えるスイッチである。オートスイッチは、空調の自動制御を設定または解除するスイッチである。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内目標温度を設定する目標温度設定手段である。
冷却水検知センサ57は、各熱交換対象機器26〜32に対応して配置されている。図8は、インバータ26(熱交換対象機器)に対応する冷却水検知センサ57の配置例を示している。
図8中の上下の矢印は、熱管理システム10の車両搭載状態における上下方向(重力方向)を示している。冷却水検知センサ57は、インバータ26(熱交換対象機器)の内部に形成された冷却水流路26aの最上部よりも高い位置に配置されている。
インバータ26以外の熱交換対象機器27〜32に対応する冷却水検知センサ57の配置も図8と同様である。したがって、インバータ26以外の熱交換対象機器27〜32に対応する符号を図8の括弧内に付し、インバータ26以外の熱交換対象機器27〜32に対応する冷却水検知センサ57の配置の図示を省略する。
すなわち、図8の括弧内の符号に示すように、熱交換対象機器27〜32に対応する冷却水検知センサ57は、熱交換対象機器27〜32の内部に形成された冷却水流路27a〜32aの最上部よりも高い位置に配置されている。
次に、上記構成における作動を説明する。熱管理システム10が正常である場合(冷却水漏れや各構成機器の故障・損傷等の異常がない場合)、例えば図1に示す作動モードに切り替えられる。
この作動モードでは、共通流路21、23が第1ポンプ用流路13と連通し、共通流路22、24が第2ポンプ用流路14と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。
これにより、図1の太実線に示す第1冷却水回路と、図1の太一点鎖線に示す第2冷却水回路とが形成される。
すなわち、図1の太実線に示すように、第1ポンプ11から吐出された冷却水は、共通流路21、23に配置されたインバータ26、走行用モータ27、冷却水加熱用熱交換器30およびヒータコア31を流れて第1ポンプ11に吸入される。
一方、図1の太一点鎖線に示すように、第2ポンプ12から吐出された冷却水は、共通流路22、24に配置された冷却水冷却用熱交換器28、空気冷却用熱交換器29および電池32を流れて第2ポンプ12に吸入される。
熱管理システム10に異常が発生した場合、発生事象に応じた作動モードに切り替えられる。以下、発生事象に応じた作動モードを説明する。
発生事象がラジエータ15や第1ポンプ用流路13からの冷却水漏れである場合、図9に示す作動モードに切り替えられる。ラジエータ15から冷却水が漏れる原因としては、例えば車両の走行中に外部から飛来する石等が、車両の最前部に配置されたラジエータ15に直撃してラジエータ15が損傷することが挙げられる。
この作動モードでは、共通流路21〜24が第2ポンプ用流路14と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。これにより、図9の太実線に示す冷却水回路が形成される。
すなわち、図9の太実線に示すように、第2ポンプ12から吐出された冷却水は、共通流路21〜24に配置された熱交換対象機器26〜32を流れて第2ポンプ12に吸入される。
これにより、熱交換対象機器26〜30、32の廃熱をヒータコア31で放熱して車室内の空気へ伝熱することができるので、熱交換対象機器26〜30、32を可能な限り冷却することができる。また、電池32等の熱容量を利用して熱交換対象機器26〜30、32を可能な限り冷却することができる。
このように熱交換対象機器26〜30、32の廃熱をヒータコア31で放熱させると、例えば夏季においては乗員に対して温風を送ることになって快適性が低下しまうので、低負荷走行条件では冷凍サイクル33による冷房を最大限効かせることによって乗員の快適性を低下させないようにするのが好ましい。
ここで、ラジエータ15や第1ポンプ用流路13からの冷却水漏れの判定は、水位センサ55の検出信号に基づいて行うことができる。すなわち、ラジエータ15や第1ポンプ用流路13から冷却水漏れが発生すると、第1ポンプ用流路13の冷却水量は徐々に減少していく。すると、第1ポンプ用流路13の水位が徐々に下降していくため、第1ポンプ用流路13の最上部に位置するリザーブタンク38に配置された水位センサ55の検出信号に基づいて冷却水漏れを判定できる。
リザーブタンク38に水位センサ55を設置しない場合においては、第1ポンプ11の回転数を監視することによって冷却水漏れを検知できる。すなわち、第1ポンプ用流路13のうち比較的上方の部位に第1ポンプ11を配置しているので、冷却水漏れが発生した場合、比較的早い段階で第1ポンプ11の吸入口まで水位が下がり、第1ポンプ11が空気を吸う状態に陥る。
空気(気体)は冷却水(液体)に比べて圧倒的に密度が低く且つ粘性も低い等の物性の違いがあるため、空気を吸い込んだ第1ポンプ11は、内部の羽根車の回転数が上昇することとなる。この第1ポンプ11の回転数上昇を、制御装置50に搭載されているコンピュータや第1ポンプ11自体に搭載されているコンピュータ等で検知すれば、冷却水漏れを判定できる。
水位センサ55および第1ポンプ11は第1ポンプ用流路13の上部に配置されているので、冷却水漏れを比較的早い段階で検出して図9に示す作動モードに切り替えることができる。このため、冷却水漏れが発生しても、漏れる冷却水の量をリザーブタンク38の容量程度に抑えることができるので、冷却水回路の水位が大幅に減少することを回避できる。
発生事象が第2ポンプ用流路14からの冷却水漏れである場合、共通流路21〜24が第1ポンプ用流路13と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。これにより形成される冷却水回路では、第1ポンプ11から吐出された冷却水は、共通流路21〜24に配置された熱交換対象機器26〜32を流れて第1ポンプ11に吸入される。
このため、熱交換対象機器26〜30、32の廃熱をラジエータ15で放熱して車室外の空気へ伝熱することができるので、熱交換対象機器26〜30、32を可能な限り冷却することができる。また、電池32等の熱容量を利用して熱交換対象機器26〜30、32を可能な限り冷却することができる。
ここで、第2ポンプ用流路14からの冷却水漏れの判定は、水位センサ56の検出信号や、第2ポンプ12の回転数に基づいて行うことができる。その理由については、上述した第1ポンプ用流路13からの冷却水漏れの判定と同様であるので説明を省略する。
発生事象が熱交換対象機器26〜32からの冷却水漏れである場合、冷却水漏れを起こしている熱交換対象機器への冷却水の流通を遮断するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。具体的には、共通流路21〜24のうち、冷却水漏れを起こしている熱交換対象機器が配置されている共通流路を、第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断する。
これにより、冷却水漏れを起こしていない熱交換対象機器の廃熱をラジエータ15で放熱するなどして、冷却水漏れを起こしていない熱交換対象機器の冷却を継続することができる。
ここで、熱交換対象機器26〜32からの冷却水漏れの判定は、各熱交換対象機器26〜32に対応して配置された冷却水検知センサ57の検出信号に基づいて行うことができる。冷却水検知センサ57が配置されていない場合、熱交換対象機器26〜32からの冷却水漏れの判定は、冷却水の流量と、熱交換対象機器26〜32の負荷と、冷却水の温度の状態とに基づいて行うことができる。
また、第1ポンプ11および第2ポンプ12の双方が停止している際に、全ての共通流路21〜24が第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断されるように第1切替弁17および第2切替弁18の作動を制御することを定期的に実施することや、ある系統の冷却水減少を検知した後、1つの系統のみでの冷却モードに切り替えた後にも水位が減少し続ける場合において機器からの漏れを推定することが可能である。
ちなみに、上述のような冷却水漏れが車両駐車中に発生した場合、車両の使用者に異常警告がされることなく、次回車両使用時までに冷却水の大半が漏出してしまうことになり、修理工場までの自走すら不可能となってしまう。
このような事態を回避するため、車両が駐車されたときに全ての共通流路21〜24が第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断されるように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。ここで、車両が駐車されたことの判定は、例えば車両のシフトレバーがパーキングに入れられた場合に行うことでもできる。
これにより、車両駐車中に第1ポンプ用流路13、第2ポンプ用流路14および共通流路21〜24のどこかから冷却水の漏れが発生しても、冷却水の漏れが発生した流路にある冷却水が漏れるだけに留めることができ、他の流路にある冷却水までもが漏れることを回避できる。
そして、次回車両起動時、各共通流路21〜24において冷却水漏れが発生したか否かを判定し、冷却水漏れが発生したと判定された共通流路が第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断されたままとなるように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。
ここで、各共通流路21〜24において冷却水漏れが発生したか否かの判定は、各共通流路21〜24に配置された冷却水検知センサ57の検出信号に基づいて行うことができる。具体的には、冷却水検知センサ57が冷却水を検知しなかった場合、その共通流路で冷却水漏れが発生したと判定する。
これにより、共通流路21〜24のうち冷却水漏れが発生していない流路に対して冷却水を循環させることができるので、車両を最低限自走させることが可能になる。
発生事象が冷凍サイクル33の構成機器の故障である場合、図10に示す作動モードに切り替えられる。この作動モードでは、共通流路21〜24が第1ポンプ用流路13と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。これにより、図10の太実線に示す冷却水回路が形成される。
すなわち、図10の太実線に示すように、第1ポンプ11から吐出された冷却水は、共通流路21〜24に配置された熱交換対象機器26〜32を流れて第1ポンプ11に吸入される。
これにより、熱交換対象機器26〜30、32の廃熱をヒータコア31で車室内の空気へ伝熱して放熱することや、ラジエータ15で車室外空気へ伝熱して放熱することができるので、熱交換対象機器26〜30、32を可能な限り冷却することができる。
発生事象が第1ポンプ11の故障の場合、図9に示す作動モードに切り替えられる。すなわち、図9の太実線に示すように、第2ポンプ12から吐出された冷却水は、共通流路21〜24に配置された熱交換対象機器26〜32を流れて第2ポンプ12に吸入される。これにより、第2ポンプ12で熱交換対象機器26〜32に冷却水を循環させて、熱交換対象機器26〜32を可能な限り冷却を継続することができる。
ここで、第1ポンプ11の故障の判定は、第1ポンプ11自身が備える故障検知手段によって行うことができる。第1ポンプ11自身が故障検知手段を備えていない場合、ポンプ故障を検知できるロジックを制御装置50等が備えることによって、第1ポンプ11の故障を判定することができる。
発生事象が第2ポンプ12の故障の場合、図10に示す作動モードに切り替えられる。すなわち、図10の太実線に示すように、第1ポンプ11から吐出された冷却水は、共通流路21〜24に配置された熱交換対象機器26〜32を流れて第2ポンプ12に吸入される。
これにより、第1ポンプ11で熱交換対象機器26〜32に冷却水を循環させて、熱交換対象機器26〜32を可能な限り冷却を継続することができる。
ここで、第2ポンプ12の故障の判定は、第2ポンプ12自身が備える故障検知手段によって行うことができる。第2ポンプ12自身が故障検知手段を備えていない場合、ポンプ故障を検知できるロジックを制御装置50等が備えることによって、第2ポンプ12の故障を判定することができる。
発生事象が車両の軽衝突時(エアバッグ否作動)の場合、図9に示す作動モードに切り替えられる。ここで、軽衝突とは、エアバッグが作動しないような軽度の衝突のことである。
軽衝突の判定方法としては、車両衝突時にエアバッグを展開するか否かを判定する為に備えられた複数個の加速度センサと、その信号を処理するエアバッグコンピュータとを用いて、エアバッグは作動しないがラジエータ15が損傷する可能性の高い衝撃を検出した場合、軽衝突が発生したと判定する方法等がある。
この作動モードでは、図9の太実線に示すように、第2ポンプ12から吐出された冷却水は、共通流路21〜24に配置された熱交換対象機器26〜32を流れて第2ポンプ12に吸入される。
これにより、軽衝突によってラジエータ15が損傷した場合であっても、熱交換対象機器26〜30、32の廃熱をヒータコア31で放熱して車室内の空気へ伝熱することができるので、熱交換対象機器26〜30、32を可能な限り冷却することができる。そのため、車両が自走可能な状態を維持できる可能性が高くなる。
また、軽衝突によってラジエータ15が損傷した場合であっても、冷却水の流出により水位が減少したことを検知して切替作動を実施した場合と比較して、冷却水の流出を最小限に留めることができるので、2次災害や環境負荷への悪影響を抑制することができる。
発生事象が車両の大衝突時の場合、図11に示す作動モードに切り替えられる。ここで、大衝突とは、エアバッグが作動するような激しい衝突のことである。
エアバッグコンピュータによるエアバッグ作動判定以外にも、電池パック内に損傷センサ(筒体に断線を検知するセンサや歪センサ、筒帯の密閉性喪失を検知する為の圧力センサ、電池セル間の短絡を検知するセンサなど)を取り付け、筒体の変形や破損を電池監視コンピュータにて検出することによって電池の損傷を判定又は推定する方法がある。
この作動モードでは、共通流路21〜23が第2ポンプ用流路14と連通し、共通流路24が遮断されるように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。さらに、空気導入口171kおよび冷却水排出口181kが開かれるように開閉器175、185の作動が制御される。例えば、エアバッグ制御装置(図示せず)からの信号に基づいて空気導入口171kおよび冷却水排出口181kが開かれるようにすればよい。
これにより、図11の太実線に示す冷却水回路が形成されて電池32以外の熱交換対象機器が冷却されるとともに、電池32から冷却水が排出される。このため、大衝突によって電池32が損傷した場合に冷却水を介して漏電したり短絡したりする可能性を低減することができる。このとき、空気導入口171kを開くので、電池32近傍の流路に空気が入り込む余地が生まれ、ひいては電池32から冷却水を迅速に排出することができる。
なお、共通流路21〜23が遮断され、共通流路24が第1ポンプ用流路13と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動を制御してもよい。これにより、電池32とリザーブタンク38とを連通させて、電池32から冷却水が排出されやすくすることができる。
また、共通流路21〜23が遮断され、共通流路24が第2ポンプ用流路14と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動を制御してもよい。これにより、電池32とリザーブタンク39とを連通させて、電池32から冷却水が排出されやすくすることができるとともに、ラジエータ15からの冷却水漏出量も減らすことができる。
ちなみに、第1切替弁17および第2切替弁18が、各共通流路21〜24を遮断する機能を有していない場合、共通流路21〜23が第2ポンプ用流路14と連通し、共通流路24が第1ポンプ用流路13と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御され、さらに、空気導入口171kおよび冷却水排出口181kが開かれるように開閉器175、185の作動が制御されるようにすればよい。
これにより、電池32とリザーブタンク38とを連通させて、電池32から冷却水が排出されやすくすることができる。また、共通流路24および第1ポンプ用流路13の冷却水を排出すればよいので、全ての流路の冷却水を排出する場合と比較して冷却水を迅速に排出することができる。
また、共通流路21〜23が第1ポンプ用流路13と連通し、共通流路24が第2ポンプ用流路14と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御され、さらに、空気導入口171kおよび冷却水排出口181kが開かれるように開閉器175、185の作動が制御されるようにしてもよい。
これにより、電池32とリザーブタンク39とを連通させて、電池32から冷却水が排出されやすくすることができる。また、共通流路24および第2ポンプ用流路14の冷却水を排出すればよいので、全ての流路の冷却水を排出する場合と比較して冷却水を迅速に排出することができる。
ちなみに、電池32を搭載していない場合には、全ての共通流路21〜24が遮断されるように第1切替弁17および第2切替弁18の作動を制御して、ラジエータ15からの冷却水漏出量を減らすようにすればよい。
上述の発生事象のうち冷却水漏れおよびポンプ故障について、具体的な制御例を図12〜図14に基づいて説明する。
図12、図13に示すフローチャートは、第1ポンプ用流路13およびそれに連通する共通流路(以下、第1ポンプ側の回路と言う。)についての冷却水漏れ判定、ならびに第1ポンプ11についての故障判定を行うための制御処理を示している。
第2ポンプ用流路14およびそれに連通する共通流路(以下、第2ポンプ側の回路と言う。)についての冷却水漏れ判定、ならびに第2ポンプ12についての故障判定を行うための制御処理は図12、図13のフローチャートと同様であるので図示を省略する。
図12に示すステップS100では、ポンプの回転数が異常上昇しているか否かを判定する。ポンプの定常駆動時に、作動指令に対してポンプ回転数が所定の範囲以上上回っている場合、ポンプの回転数が異常上昇していると判定してステップS110に進む。
ステップS110では、本フローチャートによるポンプ故障判定が既にされているか否かを判定する。本フローチャートによるポンプ故障判定が既にされていると判定した場合、ステップS120へ進み、ポンプは故障しているが、冷却水漏れ(漏水)はないと判定する。
本フローチャートによるポンプ故障判定がまだされていないと判定した場合、ステップS130へ進み、整備モードであるか否かを判定する。整備モードとは、メンテナンスや故障部品交換に伴って冷却水を交換した場合、冷却水に混入した空気(気泡)を抜くためのポンプ制御を行う作動モードである。整備モードでは、冷却水に混入した空気(気泡)を抜くために第1ポンプ11および第2ポンプ12のオン・オフを短時間に繰り返したり、吐出能力を最大にしたりする。
整備モードであると判定した場合、ステップS140へ進み、漏水はないと判定する。整備モードでないと判定した場合、ステップS150へ進み、ポンプ駆動力が最大であるか否かを判定する。
ポンプ駆動力が最大であると判定した場合、ステップS160へ進み、ポンプ駆動力指令を低駆動にする。続くステップS170では、ポンプの回転数が下がったか否かを判定し、ポンプの回転数が下がったと判定した場合、ステップS180へ進み、漏水があると判定する(漏水判定)。
ポンプの回転数が下がらなかったと判定した場合、ステップS190へ進み、ポンプが故障していると判定する(ポンプ故障判定)。この場合、ポンプ駆動力制御回路の故障または信号線の断線によって、ポンプが作動指令とは無関係に独自に最高回転数で回っていると推定される。
ステップS150にてポンプ駆動力が最大でないと判定した場合、ステップS200へ進み、ポンプ駆動力指令を最高駆動(MAX駆動)にする。続くステップS210では、ポンプの回転数が上がったか否かを判定する。ポンプの回転数が上がったと判定した場合、ステップS220へ進み、漏水があると判定する(漏水判定)。ポンプの回転数が上がらなかったと判定した場合、ステップS230へ進み、ポンプが故障していると判定する(ポンプ故障判定)。
ステップS100にてポンプの回転数が異常上昇していないと判定した場合、図13に示すステップS240に進み、ポンプの回転数が異常低下しているか否かを判定する。
ポンプの回転数が異常低下していないと判定した場合、ステップS250に進み、ポンプは故障しておらず、漏水もないと判定する(正常判定)
ポンプの回転数が異常低下していると判定した場合、ステップS260に進み、整備モードであるか否かを判定する。整備モードであると判定した場合、ステップS270に進み、ポンプは故障しておらず、漏水もないと判定する(正常判定)。
整備モードでないと判定した場合、ステップS280に進み、ポンプ駆動力指令を最高駆動(MAX駆動)にする。続くステップS290では、ポンプの回転数が上がったか否かを判定する。ポンプの回転数が上がったと判定した場合、ステップS300に進み、ポンプは故障しておらず、漏水もないと判定する(正常判定)。ポンプの回転数が上がらなかったと判定した場合、ステップS310に進み、ポンプが故障していると判定する(ポンプ故障判定)。
ステップS180、S220にて漏水判定がなされた場合、図14に示すステップS400へ進み、第1ポンプ側の回路で漏水判定がなされたか否かを判定する。
第1ポンプ側の回路で漏水判定がなされたと判定された場合、ステップS410ヘ進み、異常発生警告(水漏れ発生警告)を行い、続くステップS420にて車両駆動出力の制限を要求する信号を駆動系制御装置51に出力する。
異常発生警告は、水漏れ発生を乗員に報知するために行う。具体的には、表示灯や警報音等によって行う。車両駆動出力制限は、冷却回路水温が高くなり過ぎることを防止するために行う。具体的には、加速力の低下を行う。なお、ステップS420では、エアコンの停止も行う。
続くステップS430では流路切り替えを行う。具体的には、図9に示す作動モードに切り替えて、全ての熱交換対象機器26〜32を第2ポンプ用流路14に連通させる。
続くステップS440では、第2ポンプ用流路14の水位が大幅に低下していないか否かを判定する。具体的には、水位センサ56からの検出信号に基づいて、第2ポンプ用流路14の水位が大幅に低下していないか否かを判定する。
第2ポンプ用流路14の水位が大幅に低下していないと判定した場合、ステップS440を繰り返す。第2ポンプ用流路14の水位が大幅に低下していると判定した場合、ステップS450へ進み、共通流路21〜24で冷却水漏れが発生していると判断して、共通流路21〜24が第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断されるように第1切替弁17および第2切替弁18の作動を制御する。
続くステップS460では、車両駆動出力の大幅な制限を要求する信号を駆動系制御装置51に出力する。具体的には、車両を最低限動かせる程度(30km/h以下の走行ができる程度)の駆動力に制限する。
続くステップS470では、共通流路21〜24のうちどの共通流路で冷却水漏れが発生しているかを特定する。具体的には、冷却水検知センサ57の検出信号に基づいて冷却水漏れが発生している共通流路を特定する。すなわち、ステップS450にて、共通流路21〜24を第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断しているので、冷却水漏れが発生している共通流路では冷却水がなくなってしまい、それを冷却水検知センサ57で検知することによって、冷却水漏れが発生している共通流路を特定することができる。
続くステップS480では流路の切り替えを行う。具体的には、冷却水漏れが発生していない共通流路を第1ポンプ用流路13または第2ポンプ用流路14と連通させて、冷却水漏れが発生していない共通流路に配置された熱交換対象機器に対して冷却を継続する。
続くステップS490では、車両駆動出力の大幅な制限の解除を要求する信号を駆動系制御装置51に出力する。
ステップS400にて、第1ポンプ側の回路で漏水判定がなされなかったと判定された場合、すなわち、第2ポンプ側の回路で漏水判定がなされたと判定された場合、ステップS500へ進み、異常発生警告(水漏れ発生警告)を行い、続くステップS510にて車両駆動出力の制限を要求する信号を駆動系制御装置51に出力する。
異常発生警告は、水漏れ発生を乗員に報知するために行う。具体的には、表示灯や警報音等によって行う。車両駆動出力制限は、冷却回路水温が高くなり過ぎることを防止するために行う。具体的には、車両を最低限動かせる程度(30km/h以下の走行ができる程度)の駆動力に制限する。
続くステップS520では、共通流路21〜24が第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断されるように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。
続くステップS530では、水漏れ発生系統の特定を行う。具体的には、各系統に設置した冷却水検知センサ57で、共通流路21〜24のうちどの共通流路で冷却水漏れが発生しているかを特定する。具体的には、冷却水検知センサ57の検出信号に基づいて冷却水漏れが発生している共通流路を特定する。すなわち、ステップS520にて、共通流路21〜24を第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断しているので、冷却水漏れが発生している共通流路では冷却水がなくなってしまい、それを冷却水検知センサ57で検知することによって、冷却水漏れが発生している共通流路を特定することができる。
続くステップS540では、車両駆動出力の大幅な制限の解除を要求する信号を駆動系制御装置51に出力する。冷却回路水温が高くなりすぎるようであれば、車両駆動出力のある程度の制限を要求する信号を駆動系制御装置51に出力する。
本実施形態によると、第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14のうち一方の流路における冷却水漏れを判定した場合、全ての熱交換対象機器を第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14のうち冷却水漏れを起こしていない流路と連通させるので、冷却水喪失によるオーバーヒートを阻止することができる。
また、第1ポンプ11または第2ポンプ12が故障した場合、全ての熱交換対象機器を、第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14のうち故障していないポンプ側の流路と連通させるので、熱交換対象機器に冷却水が循環されないことによるオーバーヒートや、局所沸騰により冷却系が圧力ダメージを受けることを阻止することができる。
このため、熱交換対象機器のオーバーヒートによって車両が走行不能になって路上で停止してしまう事態を避けることができるので、車両を最低限の駆動力で安全な場所へ待避させたり、修理工場等へ搬入させたりすることが可能となる。
また、車両前面に搭載されるラジエータ15が破壊される程度の軽衝突が発生した場合(エアバッグが作動しない程度の衝突)、全ての熱交換対象機器を、ラジエータ15が配置されていない第2ポンプ用流路14と連通させるので、ラジエータ15からの冷却水の流出を最小限に留めて2次災害や環境負荷への悪影響を抑制できるとともに、車両が自走可能な状態を維持できる可能性を高めることができる。
また、エアバッグが作動するような大きな衝突が発生した場合、冷却水排出口181kを開いて電池32から冷却水を排出するので、大衝突によって電池32が損傷した場合に漏電したり短絡したりする可能性を低減することができる。
また、第1ポンプ11および第2ポンプ12の両方が停止しているような状態、例えば車両駐車時や、アイドリングストップ時などに全ての共通流路21〜24を第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断し、車両駐車中に冷却水漏れが発生した共通流路を、次回ポンプ起動時(車両起動時)に第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に対して遮断したままにするので、車両駐車中に冷却水漏れが発生しても、次回車両使用時までに冷却水の大半が漏出してしまうことを回避できるとともに、次回車両使用時に車両を最低限自走させることが可能になる。
(第2実施形態)
本第2実施形態では、図15に示すように、熱交換対象機器としてエンジン60、エンジン系ラジエータ61およびエンジン系ヒータコア62が設けられている。
エンジン60、エンジン系ラジエータ61およびエンジン系ヒータコア62は、第1切替弁17の出口17gと第2切替弁18の入口18gとの間に接続された共通流路63に配置されている。図15の例では、共通流路63は、その中間部で、エンジン60が配置された流路63aと、エンジン系ラジエータ61が配置された流路63bと、エンジン系ヒータコア62が配置された流路63cとに分岐している。したがって、エンジン60、エンジン系ラジエータ61およびエンジン系ヒータコア62は共通流路63に互いに並列に配置されている。
エンジン60の内部には、冷却水が流れる流路が形成されている。エンジン60は、その内部を流れる冷却水によって冷却される。エンジン60が配置された流路63aには第3ポンプ64が配置されている。第3ポンプ64は、冷却水を吸入して吐出する電動ポンプである。
エンジン系ラジエータ61は、冷却水と車室外空気(以下、外気と言う。)とを熱交換することによって冷却水の熱を外気に放熱させる室外熱交換器(外気熱媒体熱交換器)である。エンジン系ラジエータ61は、ラジエータ15とともに車両の最前部に配置されており、ラジエータ15よりも外気流れ下流側に配置されている。したがって、エンジン系ラジエータ61への外気の送風は室外送風機16によって行われ、車両の走行時にはエンジン系ラジエータ61に走行風を当てることができる。
エンジン系ヒータコア62は、エンジン60で加熱された冷却水と車室内への送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器(空気熱媒体熱交換器)である。エンジン系ヒータコア62は、室内空調ユニットのケーシング36の内部において、ヒータコア31よりも空気流れ下流側に配置されている。
図15は、ラジエータ15から冷却水漏れが発生した場合の作動モードを示している。この作動モードでは、共通流路21〜24、63が第2ポンプ用流路14と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。これにより、図15の太実線に示す冷却水回路が形成される。
すなわち、図15の太実線に示すように、第2ポンプ12から吐出された冷却水は、共通流路21〜24、63に配置された熱交換対象機器26〜32、60〜62を流れて第2ポンプ12に吸入される。
これにより、熱交換対象機器26〜32、60〜62の廃熱をエンジン系ラジエータ61で外気に放熱することができるので、熱交換対象機器26〜32、60〜62を可能な限り冷却することができる。
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、エンジン60、エンジン系ラジエータ61およびエンジン系ヒータコア62が第1切替弁17および第2切替弁18に接続されているが、本第3実施形態では、図16に示すように、エンジン60、エンジン系ラジエータ61およびエンジン系ヒータコア62が第1切替弁17および第2切替弁18に接続されず、独立した冷却水回路を形成している。
この冷却水回路では、図16の太実線に示すように、第3ポンプ64から吐出された冷却水は、エンジン60を流れた後にエンジン系ラジエータ61およびエンジン系ヒータコア62を並列に流れて第3ポンプ64に吸入される。
図16は、ラジエータ15から冷却水漏れが発生した場合の作動モードを示している。この作動モードでは、共通流路21〜24が第2ポンプ用流路14と連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。これにより、図16の太実線に示す冷却水回路が形成される。
すなわち、図16の太実線に示すように、第2ポンプ12から吐出された冷却水は、共通流路21〜24に配置された熱交換対象機器26〜32を流れて第2ポンプ12に吸入される。
これにより、熱交換対象機器26〜30、32の廃熱をヒータコア31で放熱して車室内の空気へ伝熱し、その熱を空気流れ下流側のエンジン系ヒータコア62で受けて図16の太実線に示す冷却水回路の冷却水へ伝達し、エンジン系ラジエータ61で外気に放熱することができる。このため、熱交換対象機器26〜30、32を可能な限り冷却することができる。
(第4実施形態)
上記第2実施形態では、エンジン系ラジエータ61が第1切替弁17の出口17gと第2切替弁18の入口18gとの間に配置されているが、本第4実施形態では、図17に示すように、エンジン系ラジエータ61が第2切替弁18の第3出口18hと第1切替弁17の第3入口17hとの間に配置されている。
具体的には、第2切替弁18の第3出口18hと第1切替弁17の第3入口17hとの間に第3ポンプ用流路65が配置され、第3ポンプ用流路65にエンジン系ラジエータ61および第3ポンプ64が配置されている。
さらに、第2ポンプ用流路14にはラジエータ66が配置されている。ラジエータ66は、冷却水と車室外空気(以下、外気と言う。)とを熱交換することによって冷却水の熱を外気に放熱させる放熱器(室外熱交換器)である。
以下では、第1ポンプ用流路13のラジエータ15を第1ラジエータと言い、第2ポンプ用流路14のラジエータ66を第2ラジエータと言い、第3ポンプ用流路65のエンジン系ラジエータ61を第3ラジエータと言う。
第1ラジエータ15、第2ラジエータ66および第3ラジエータ61は車両の最前部に配置されており、室外送風機16によって外気の送風が行われる。車両の走行時には第1ラジエータ15、第2ラジエータ66および第3ラジエータ61に走行風を当てることができる。
第1ラジエータ15および第2ラジエータ66は、外気の流れに対して並列に配置されている。第3ラジエータ61は、第1ラジエータ15および第2ラジエータ66よりも外気流れ下流側に配置されている。
第1ポンプ用流路13には、第1ラジエータ15通過後の冷却水の温度を検出する水温センサ67が配置されている。第2ポンプ用流路14には、第2ラジエータ66通過後の冷却水の温度を検出する水温センサ68が配置されている。第3ポンプ用流路65には、第3ラジエータ61通過後の冷却水の温度を検出する水温センサ69が配置されている。
上記構成における作動を説明する。第1ポンプ用流路13、第2ポンプ用流路14および第3ポンプ用流路65のうち1つの流路で冷却水漏れが発生した場合、または第1ポンプ11、第2ポンプ12および第3ポンプ64のうち1つのポンプが故障停止した場合、全ての共通流路21〜24、63aが、第1ポンプ用流路13、第2ポンプ用流路14および第3ポンプ用流路65のうち残りの2つの流路(冷却水漏れが発生していない流路)のいずれかと連通するように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。
これにより、第1ポンプ用流路13、第2ポンプ用流路14および第3ポンプ用流路65のうち1つの流路で冷却水漏れが発生しても、冷却水漏れが発生していない流路のラジエータで熱交換対象機器26〜32、60の廃熱を外気に放熱することができるので、熱交換対象機器26〜32、60を可能な限り冷却することができる。
具体的には、熱交換対象機器26〜32、60のうち許容温度の高い熱交換対象機器が、冷却水漏れが発生していない2つの流路のうち外気流れ下流側のラジエータが配置された流路に接続され、許容温度が低い機器が、冷却水漏れが発生していない2つの流路のうち外気流れ上流側のラジエータが配置された流路に接続されるように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。これにより、各熱交換対象機器26〜32、60を許容温度に応じて冷却できる。
ここで、ヒータコア31については、冷却水漏れが発生していない2つの流路のうち、その流路に接続された熱交換対象機器の許容温度までの余裕度が少ない方の流路に適時接続されるように第1切替弁17および第2切替弁18の作動が制御される。
これにより、許容温度までの余裕度が少ない流路を流れる冷却水の熱をヒータコア31で放熱して車室内の空気へ伝熱することができるので、冷却水の温度が許容温度に達することを抑制できる。なお、許容温度までの余裕度は、水温センサ67〜69の検出信号に基づいて算出することができる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)熱交換対象機器として種々の機器を用いることができる。例えば、乗員が着座するシートに内蔵されて冷却水によりシートを冷却・加熱する熱交換器を熱交換対象機器として用いてもよい。熱交換対象機器の個数は、複数個(2個以上)であるならば何個でもよい。
また、熱交換対象機器の配置を様々に変更可能である。例えば、冷却水冷却用熱交換器28を第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14のうち一方のポンプ用流路に配置し、冷却水加熱用熱交換器30を第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14のうち他方のポンプ用流路に配置し、ラジエータ15を共通流路21、22、23、24のうちいずれかの共通流路に配置してもよい。
(2)上記各実施形態において、熱交換対象機器に冷却水を間欠的に循環させることによって熱交換対象機器に対する熱交換能力を制御するようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、冷却水を冷却する冷却手段として、冷凍サイクル33の低圧冷媒で冷却水を冷却する冷却水冷却用熱交換器28を用いているが、ペルチェ素子を冷却手段として用いてもよい。
(4)上記各実施形態では、熱媒体として冷却水を用いているが、油などの各種媒体を熱媒体として用いてもよい。
(5)冷却水(熱媒体)として、ナノ流体を用いてもよい。ナノ流体とは、粒子径がナノメートルオーダーのナノ粒子が混入された流体のことである。ナノ粒子を冷却水に混入させることで、エチレングリコールを用いた冷却水(いわゆる不凍液)のように凝固点を低下させる作用効果に加えて、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、特定の温度帯での熱伝導率を向上させる作用効果、冷却水の熱容量を増加させる作用効果、金属配管の防食効果やゴム配管の劣化を防止する作用効果、および極低温での冷却水の流動性を高める作用効果を得ることができる。
このような作用効果は、ナノ粒子の粒子構成、粒子形状、配合比率、付加物質によって様々に変化する。
これによると、熱伝導率を向上させることができるので、エチレングリコールを用いた冷却水と比較して少ない量の冷却水であっても同等の冷却効率を得ることが可能になる。
また、冷却水の熱容量を増加させることができるので、冷却水自体の蓄冷熱量(顕熱による蓄冷熱)を増加させることができる。
ナノ粒子のアスペクト比は50以上であるのが好ましい。十分な熱伝導率を得ることができるからである。なお、アスペクト比は、ナノ粒子の縦×横の比率表す形状指標である。
ナノ粒子としては、Au、Ag、CuおよびCのいずれかを含むものを用いることができる。具体的には、ナノ粒子の構成原子として、Auナノ粒子、Agナノワイヤー、CNT(カーボンナノチューブ)、グラフェン、グラファイトコアシェル型ナノ粒子(上記原子を囲むようにカーボンナノチューブ等の構造体があるような粒子体)、およびAuナノ
粒子含有CNTなどを用いることができる。
(6)上記各実施形態の冷凍サイクル33では、冷媒としてフロン系冷媒を用いているが、冷媒の種類はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を用いてもよい。
また、上記各実施形態の冷凍サイクル33は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成しているが、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
(7)上記各実施形態では、本発明の車両用熱管理システムをハイブリッド自動車に適用した例を示したが、エンジンを備えず走行用モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車や、燃料電池を走行用エネルギー発生手段とする燃料電池自動車等に本発明を適用してもよい。
(8)上記各実施形態では、共通流路24に電池32が配置されているが、電池32以外にも冷却水蓄冷タンクやその他の発熱機器が共通流路24に配置されていてもよい。
(9)上記第1実施形態では、第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14に別個のリザーブタンク38、39が配置されているが、第1ポンプ用流路13および第2ポンプ用流路14を連通する連通流路を設け、その連通流路に共通のリザーブタンクが配置されていてもよい。
(9)上記第1実施形態では、共通流路23にヒータコア31が配置されているが、第2ポンプ用流路14にヒータコア31が配置されていてもよい。これによると、第1ポンプ用流路13で冷却水漏れが発生した場合、または第1ポンプ11が故障停止した場合、熱交換対象機器26〜30、32を第2ポンプ用流路14と連通させれば、熱交換対象機器26〜30、32の廃熱をヒータコア31で放熱させて熱交換対象機器26〜30、32を可能な限り冷却することができる。