JP5839204B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、具体的には、鉄損が低くかつコイル内の鉄損のばらつきが小さい方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
電磁鋼板は、変圧器やモータの鉄心材料として広く用いられている軟磁性材料であり、中でも、方向性電磁鋼板は、結晶方位がGoss方位と呼ばれる{110}<001>方位に高度に集積し、磁気特性に優れているため、主として大型の変圧器の鉄心等に使用されている。変圧器における無負荷損(エネルギーロス)を低減するためには、鉄損が低いことが必要である。
方向性電磁鋼板における鉄損低減方法としては、Si含有量の増加や、板厚の低減、結晶方位の配向性向上、鋼板表面への張力付与、鋼板表面の平滑化、二次再結晶組織の細粒化などが有効であることが知られている。
これらの方法のうち、二次再結晶粒を細粒化する技術としては、脱炭焼鈍時に急速加熱したり、脱炭焼鈍直前に急速加熱する熱処理を施したりすることで、一次再結晶集合組織を改善する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、最終板厚まで圧延した冷延板を脱炭焼鈍する際、PH2O/PH2が0.2以下の非酸化性雰囲気中で、100℃/s以上で700℃以上の温度に急速加熱することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。また、特許文献2には、雰囲気中の酸素濃度を500ppm以下とし、かつ、加熱速度100℃/s以上で800〜950℃に急速加熱し、続いて急速加熱後の温度より低い775〜840℃の温度に保定し、さらに、815〜875℃の温度に保定することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。また、特許文献3には、600℃以上の温度域を95℃/s以上の昇温速度で800℃以上に加熱し、かつ、この温度域の雰囲気を適正に制御することによって、被膜特性と磁気特性に優れる電磁鋼板を得る技術が開示されている。さらに、特許文献4には、熱延板中のAlNとしてのN量を25ppm以下に制限し、かつ脱炭焼鈍時に加熱速度80℃/s以上で700℃以上まで加熱することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。
急速加熱することで一次再結晶集合組織を改善するこれらの技術は、急速加熱する温度範囲を室温から700℃以上とし、昇温速度を一義的に規定するものである。この技術思想は、再結晶温度近傍までを短時間で昇温することで、通常の加熱速度であれば優先的に形成されるγファイバー(<111>//ND方位)の発達を抑制し、二次再結晶の核となる{110}<001>組織の発生を促進することで、一次再結晶集合組織を改善しようとするものである。そして、この技術の適用により、二次再結晶後の結晶粒(Goss方位粒)が細粒化し、鉄損特性が改善される。
特開平07−062436号公報 特開平10−298653号公報 特開2003−027194号公報 特開平10−130729号公報
しかしながら、発明者らの知見によれば、昇温速度を高くした場合には、昇温時の鋼板内部の温度ムラに起因すると思われる鉄損特性のばらつきが大きくなるという問題がある。製品出荷時の鉄損評価には、一般に、鋼板の全幅の鉄損を平均した値が用いられているため、ばらつきが大きいと、鋼板全体の鉄損が低く評価されることとなり、所期した急速加熱の効果が得られなくなる。
また、上記特許文献に代表される従来技術では、磁気特性を向上させるため、最終冷間圧延においては、圧延途中において100℃以上の温度で1分以上保持する時効処理を少なくとも1回以上付与することを基本思想としている。上記時効処理を実操業において実施するためには、リバースミルで圧延するのが好ましい。しかし、リバース圧延では、鋼板をコイルに巻き取り中にマンドレルに接触する内巻部からの抜熱や、巻き取り後のコイル外周面からの放熱により冷却してしまう。そのため、コイル長手方向両端部では所望の時効効果を得ることができず、鉄損特性が劣化してしまう。また、タンデム圧延に比べて生産性が劣るという問題がある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術に比べて低鉄損でかつコイル内の鉄損のばらつきが小さく、しかも生産性が高い方向性電磁鋼板の製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、一次再結晶焼鈍の加熱過程において急速加熱する際、回復が起こる温度領域で所定時間保持する保定処理を施すことで、鋼板内部の温度が均一化され、急速加熱の効果を鋼板の全幅にわたって得られるとともに、<111>//ND方位が優先的に回復を起こして一次再結晶後の<111>//ND方位が減少し、代わりにGoss核が増加し、二次再結晶後の再結晶がより細粒化される結果、低鉄損でかつコイル内の鉄損のばらつきが小さい方向性電磁鋼板を得ることができることを見出した。また、上記熱処理を施すことで、従来、必須とされていた最終冷間圧延途中での時効処理を付与しなくても、コイル長手方向全長にわたって良好な鉄損特性が得られることを知見し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有し、さらに、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.003〜0.030mass%および/またはS:0.002〜0.03mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、最終冷間圧延をタンデム圧延で行い、かつ、前記一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜700℃間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、前記加熱過程の250℃以上550℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を1〜4回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。 また、本発明は、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有し、さらに、Se:0.003〜0.030mass%およびS:0.002〜0.03mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、最終冷間圧延をタンデム圧延で行い、かつ、前記一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜700℃間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、前記加熱過程の250℃以上550℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を1〜4回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。 また、本発明は、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有し、さらに、Al:0.01mass%未満、N:0.0050mass%未満、Se:0.0030mass%未満およびS:0.0050mass%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、最終冷間圧延をタンデム圧延で行い、かつ、前記一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜700℃間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、前記加熱過程の250℃以上550℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を1〜4回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
本発明の上記方向性電磁鋼板の製造方法は、上記加熱過程の250℃以上550℃未満の間での保定処理を施した後、さらに、記加熱過程の550℃以上700℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜3秒間保持する保定処理を1または2回施すことを特徴とする
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.10mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.010mass%、Nb:0.0010〜0.010mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
本発明によれば、最終冷間圧延をタンデム圧延で行った後、一次再結晶焼鈍において急速加熱する際、回復が起こる温度領域で所定時間保定してやることで、低鉄損でかつ鉄損値のばらつきが小さい方向性電磁鋼板を生産性よく製造することが可能となる。
本発明の一次再結晶焼鈍における昇温パターンを説明する図である。 一次再結晶焼鈍の加熱途中における保定処理時間が鉄損W17/50に及ぼす影響を示すグラフである。 一次再結晶焼鈍の加熱途中における保定処理温度が鉄損W17/50に及ぼす影響を示すグラフである。
まず、本発明を開発する契機となった実験について説明する。
<実験1>
C:0.060mass%、Si:3.32mass%、Mn:0.066mass%を含有する鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、1400℃の温度に再加熱し、熱間圧延して板厚2.2mmの熱延板とし、1050℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後、一次冷間圧延して中間板厚1.8mmとし、1120℃×80秒の中間焼鈍を施した後、タンデム圧延もしくはリバース圧延して最終板厚0.23mmの冷延板とした。この際、タンデム圧延およびリバース圧延ともに、圧延時の加工発熱による鋼板最高温度は200℃に制御した。
次いで、上記冷延板を、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下で840℃×80秒の脱炭焼鈍を伴う一次再結晶焼鈍を施した。なお、上記一次再結晶焼鈍は、840℃までの加熱過程における200〜700℃間の昇温速度を100℃/sとし、さらにその加熱途中の450℃の温度において0〜30秒間保持する保定処理を施した。ここで、上記100℃/sの昇温速度とは、図1に示したように、200℃から700℃まで到達する時間から保定時間t、t除いたt1、およびtにおける平均昇温速度((700−200)/(t+t+t))のことをいう(以降、同様)。
その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、二次再結晶させた後、水素雰囲気下で1200℃×7時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施し、製品板(コイル)とした。
斯くして得た製品コイルの長手方向中央部および両端部の各部位から、板幅方向に幅100mm×長さ520mmの試験片を各10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定し、各々の位置の平均値(両端部は先端と後端の平均値)を求めた。この鉄損測定方法によれば、鉄損のばらつきが板幅方向にある場合には、測定値が悪化するので、ばらつきを含めて鉄損を評価できると考えられるからである。その結果を、図2に、450℃における保定処理時間と鉄損W17/50との関係として示した。この図から、保定時間が0.5〜10秒の範囲で鉄損が低減していること、また、上記範囲においては、タンデム圧延のコイル尾端部での鉄損劣化が抑制されていることがわかる。
<実験2>
実験1で得られた最終板厚0.27mmの冷延板に、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下で840℃×80秒の脱炭焼鈍を伴う一次再結晶焼鈍を施した。なお、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程における昇温速度は100℃/sとし、その加熱過程の200〜700℃の温度範囲の任意の温度で1回、2秒間保持する保定処理を施した。 その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布・乾燥した後、二次再結晶させた後、水素雰囲気下で1200℃×7時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施した。
斯くして得た製品板から実験1と同様にして試験片を採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定した。その結果を、図3に、保定処理温度と鉄損W17/50との関係として示した。この図から、タンデム圧延を行い、かつ、一次再結晶焼鈍の加熱過程における保定処理温度を250〜550℃の範囲とすることで、コイル両端部の鉄損が改善されて、コイル中央部との鉄損差がほぼ解消されることがわかる。
上記<実験1>および<実験2>のように、一次再結晶焼鈍の急速加熱過程の適正温度で適正時間保持する保定処理を施すことで、鉄損が低減する理由については、まだ十分に明らかとなっていないが、発明者らは、次のように考えている。
急速加熱処理は、前述したように、再結晶集合組織における<111>//ND方位の発達を抑制し、二次再結晶の核となるGoss方位粒({110}<001>)の発生を促進する効果がある。というのは、一般に、冷間圧延では、<111>//ND方位は、他の方位に比較して多くの歪が導入されるため、蓄積される歪エネルギーが高い状態にある。そのため、通常の昇温速度で加熱する一次再結晶焼鈍では、蓄積された歪エネルギーが高い<111>//ND方位の圧延組織から優先的に再結晶を起こす。再結晶では、通常、<111>//ND方位の圧延組織からは<111>//ND方位粒が出現するため、再結晶後の組織は<111>//ND方位が主方位となる。
しかし、急速加熱を行うと、再結晶によって放出されるエネルギーよりも多くの熱エネルギーが付与されることから、比較的蓄積された歪エネルギーの低いGoss方位でも再結晶が起こるようになり、相対的に再結晶後の<111>//ND方位が減少し、Goss方位({110}<001>)が増加する。Goss方位が多くなると、二次再結晶においても多くのGoss方位粒が出現するため、二次再結晶粒が細粒化し、鉄損が低減する。これが、従来技術における急速加熱を行う理由である。
ここで、急速加熱の途中で、回復が起こる温度に所定時間保持する保定処理を施した場合には、歪エネルギーが高い<111>//ND方位が優先的に回復を起こす。そのため、<111>//ND方位の圧延組織から生じる<111>//ND方位の再結晶を起こす駆動力が選択的に低下し、それ以外の方位が再結晶を起こすようになる。その結果、再結晶後の<111>//ND方位が相対的にさらに減少する。ただし、保定処理の保持温度が高過ぎたり、保持時間が10秒を超えたりすると、広い範囲で回復が起こってしまうため、回復組織がそのまま残り、上記の一次再結晶組織とは異なる組織となってしまう。その結果、二次再結晶に大きな悪影響を与え、鉄損特性が劣化してしまう。
なお、上記考えによれば、加熱途中の回復が起こる温度で短時間の保定処理を施すことによる磁気特性向上効果が得られるのは、従来のラジアントチューブ等を用いた昇温速度(10〜20℃/s)よりも速い昇温速度、具体的には50℃/s以上の昇温速度の場合に限られると考えられる。そこで、本発明においては、一次再結晶焼鈍の200〜700℃の温度範囲における昇温速度を50℃/s以上と規定する。
一方、一次再結晶焼鈍時に急速加熱を行うことのデメリットとしては、昇温中の初期酸化に費やされる時間が短くなるため、一次再結晶焼鈍後のサブスケール構造が変化して、仕上焼鈍中に被膜不良が生じて二次再結晶不良を起こし、磁気特性が劣化することがある。しかし、本発明では、昇温中に250℃以上550℃未満の間の温度で保定するので、多少なりとも急速加熱時に適正な初期酸化が行われ、被膜の劣化を軽減し、磁気特性の低下をある程度は抑制することができる。
しかし、被膜改善による磁気特性改善効果をより確実に得るためには、上記考えからすれば、昇温途中の回復が起こる温度域(250℃以上550℃未満)と、初期酸化が活発となる温度域(550℃以上700℃未満)のそれぞれの温度域において保定処理を施すことが好ましいといえる。
回復が起こる温度域(250℃以上550℃未満)での保定処理は、回復を起こさせるため、少なくとも0.5秒の保持が必要である。しかし、回復し過ぎると、その後、再結晶しなくなるおそれがあるため、長くても10秒以内に抑えるのが好ましい。また、この温度域での保定処理は複数回行ってもよいが、回数が多くなると、回復が進行し過ぎて再結晶が生じなくなるおそれがあるので4回以内に収めるのが好ましい。また、複数回の保定処理を行った場合は、合計の保定時間は10秒以内とするのがより好ましい。
また、初期酸化が活発となる温度域(550℃以上700℃未満)における保定処理は、被膜改善効果を得るためには、0.5秒以上保持するのが好ましい。しかし、この温度域は再結晶が起こる温度域となるため、再結晶を回避する観点から、保定時間は3秒以内とするのが好ましい。同様に、この温度域での保定処理回数は、2回までとするのが好ましい。
また、上記一次再結晶焼鈍の前工程である最終冷間圧延をタンデム圧延することで、従来のリバース圧延で鉄損が劣化していたコイル長手方向両端部においても鉄損が改善される理由については、まだ十分に明らかとなっていないが、発明者らは、次のように考えている。
リバース圧延では、冷間圧延中の動的歪時効と、圧延パス間でコイルに巻かれた状態で高温に保持されることによる転位への固溶元素(C,N等)の固着(コットレルロッキング)が起こる。このコットレルロッキングによって、次の圧延パスでの動的歪時効がさらに促進され、製品板の低鉄損化に有利な{110}<001>の一次再結晶方位粒の起源が形成されると考えられる。しかし、コイル内径のマンドレルとの接触部やコイル外周部のコイル長手方向両端部では、巻き取り中の抜熱や放熱によって温度が低下するため、固溶元素の拡散速度が低下する。加えて、次の圧延パスまでの待機時間が長いため、転位密度が低下し、コットレル雰囲気の形成が不十分となる。その結果、コイル長手方向両端部では、動的歪時効が十分に起こらず、鉄損特性の劣化を引き起こすものと考えられる。
一方、タンデム圧延では、コットレルロッキングは起こらないが、リバース圧延よりも次パスまでの時間が極めて短いため、前パスで導入された転位密度を十分保持したまま次のパスが行われるので、リバース圧延よりも圧延前の転位密度が高い状態となる。その結果、冷間圧延中の動的歪時効の効果が十分に発現するものと考えられる。さらに、タンデム圧延は、原理的に、コイル同士の溶接接合部まで含めてコイルを連続的に圧延できるため、リバース圧延よりもコイル長手方向で均一な組織を造り込むことができるので、リバース圧延で問題となっているコイル長手方向両端部での鉄損劣化も抑制される。
本発明は、上記実験結果に基き開発したものである。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の素材に用いる鋼素材(スラブ)の成分組成について説明する。
C:0.002〜0.10mass%
Cは、0.002mass%に満たないと、Cによる粒界強化効果が失われ、スラブに割れが生じるなどして、製造に支障を来たすようになる。一方、0.10mass%を超えると、脱炭焼鈍で、Cを磁気時効の起こらない0.005mass%以下に低減することが困難となる。よって、Cは0.002〜0.10mass%の範囲とする。好ましくは0.010〜0.080mass%の範囲である。
Si:2.0〜8.0mass%
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を低減するのに必要な元素である。上記効果は、2.0mass%未満では十分ではなく、一方、8.0mass%を超えると、加工性が低下し、圧延して製造することが困難となる。よって、Siは2.0〜8.0mass%の範囲とする。好ましくは2.5〜4.5mass%の範囲である。
Mn:0.005〜1.0mass%
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するために必要な元素である。上記効果は、0.005mass%未満では十分ではなく、一方、1.0mass%を超えると、製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005〜1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.20mass%の範囲である。
上記C,SiおよびMn以外の成分については、二次再結晶を生じさせるために、インヒビターを利用する場合と、しない場合とに分けられる。
まず、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用する場合で、例えば、AlN系インヒビターを利用するときには、AlおよびNを、それぞれAl:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%の範囲で含有させるのが好ましい。また、MnS・MnSe系インヒビターを利用するときには、前述した量のMnと、S:0.002〜0.030mass%および/またはSe:0.003〜0.030mass%を含有させることが好ましい。それぞれ添加量が、上記下限値より少ないと、インヒビター効果が十分に得られず、一方、上限値を超えると、インヒビター成分がスラブ加熱時に未固溶で残存し、インヒビター効果が低減し、十分な磁気特性が得られなくなる。なお、AlN系とMnS・MnSe系のインヒビターを併用してもよいことは勿論である。
一方、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用しない場合には、上述したインヒビター形成成分であるAl,N,SおよびSeの含有量を極力低減し、Al:0.01mass%未満、N:0.0050mass%未満、S:0.0050mass%未満およびSe:0.0030mass%未満に低減した鋼素材を用いるのが好ましい。
本発明の方向性電磁鋼板に用いる鋼素材は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
ただし、磁気特性の改善を目的として、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.10mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.010mass%、Nb:0.0010〜0.010mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を適宜含有していてもよい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
前述した成分組成を有する鋼を常法の精錬プロセスで溶製した後、常法の造塊−分塊圧延法または連続鋳造法で鋼素材(スラブ)を製造してもよいし、あるいは、直接鋳造法で100mm以下の厚さの薄鋳片を製造してもよい。上記スラブは、常法に従い、例えば、インヒビター成分を含有する場合には、1400℃程度の温度に再加熱し、一方、インヒビター成分を含まない場合には、1250℃以下の温度に再加熱した後、熱間圧延に供する。なお、インヒビター成分を含有しない場合には、鋳造後、スラブを再加熱することなく直ちに熱間圧延に供してもよい。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進めてもよい。
次いで、熱間圧延して得た熱延板は、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。この熱延板焼鈍の温度は、良好な磁気特性を得るためには、800〜1150℃の範囲とするのが好ましい。800℃未満では、熱間圧延で形成されたバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなり、二次再結晶粒の成長が阻害される。一方、1150℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化し過ぎて、やはり、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなるからである。
熱延後あるいは熱延板焼鈍後の鋼板は、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。上記中間焼鈍の焼鈍温度は、900〜1200℃の範囲とするのが好ましい。900℃未満では、中間焼鈍後の再結晶粒が細かくなり、さらに、一次再結晶組織におけるGoss核が減少して製品板の磁気特性が低下する。一方、1200℃を超えると、熱延板焼鈍と同様、結晶粒が粗大化し過ぎて、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなるからである。
また、最終板厚とする冷間圧延(最終冷間圧延)は、前述したように、本発明の効果を得るためには、タンデム圧延(一方向圧延)で行う必要がある。なお、一次再結晶集合組織を改善し、磁気特性をより向上させるためには、鋼板温度を100℃〜300℃に上昇して圧延する温間圧延を採用することが好ましい。
最終板厚とした冷延板は、その後、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施す。
この一次再結晶焼鈍における焼鈍温度は、脱炭焼鈍を伴う場合は、脱炭反応を速やかに進行させる観点から、800〜900℃の範囲とするのが好ましく、また、雰囲気は湿潤雰囲気とするのが好ましい。ただし、脱炭が不要なC:0.005mass%以下の鋼素材を用いる場合は、この限りではない。また、一次再結晶焼鈍と脱炭焼鈍を別々に行ってもよい。
ここで、本発明において重要なことは、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程において、200〜700℃間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、250℃以上550℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を1〜4回施す必要があることである。ここで、上記200〜700℃の区間における昇温速度(50℃/s以上)は、前述したように、保定する時間を除いた時間における昇温速度である。また、上記保定処理は、250℃以上550℃未満の間のいずれかの温度で行えばよいが、上記温度は必ずしも一定でなくてもよく、±10℃/s以下の温度変化であれば、保定と同様の効果を得ることができるので、±10℃/sの範囲内で昇温もしくは降温してもよい。
また、本発明において重要なことは、上記一次再結晶焼鈍における急速加熱による弊害を抑制し、被膜特性と磁気特性に優れた製品を得るためには、一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜700℃間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、上記加熱過程の250℃以上550℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を1〜4回施した後、さらに、上記加熱過程の550℃以上700℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜3秒間保持する保定処理を1または2回施すことが好ましい。
ここで、上記200〜700℃間における昇温速度は、先述したように、200〜700℃間の加熱時間から保定処理時間を差し引いた時間における昇温速度である。また、上記昇温速度は、50℃/s以上とする必要があるが、100〜400℃/sの範囲が好ましい。また、保定時間内における温度は、厳密に一定とする必要はなく、10℃/s以下の温度変化であれば、一定と見做すことができる。
一次再結晶焼鈍を施した鋼板は、鉄損特性やトランスの騒音を重視する場合には、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥した後、仕上焼鈍を施し、Goss方位に高度に集積させた二次再結晶組織を発達させるとともに、フォルステライト被膜を形成させるのが好ましい。一方、打抜加工性を重視し、フォルステライト被膜を形成させない場合には、焼鈍分離剤を適用しないか、あるいは、シリカやアルミナ等を主体とした焼鈍分離剤を用いて仕上焼鈍を施すのが好ましい。なお、フォルステライト被膜を形成しない場合、焼鈍分離剤の塗布に水分を持ち込まない静電塗布を行うことも有効である。また、焼鈍分離剤に代えて、耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を用いてもよい。
仕上焼鈍の条件としては、フォルステライト被膜を形成させる場合には、800〜1050℃付近に20時間以上保持して二次再結晶を発現・完了させた後、1100℃以上の温度まで昇温することが好ましく、鉄損特性を重視し、純化処理を施す場合には、さらに1200℃程度の温度まで昇温するのがより好ましい。一方、フォルステライト被膜を形成させない場合には、二次再結晶が完了すればよいので、800〜1050℃までの昇温で焼鈍を終了することができる。
仕上焼鈍後の鋼板は、その後、水洗やブラッシング、酸洗等で、鋼板表面に付着した未反応の焼鈍分離剤を除去した後、平坦化焼鈍を施して形状矯正することが、鉄損の低減には有効である。これは、仕上焼鈍は、通常、コイル状態で行うため、コイルの巻き癖が付き、これが原因で、鉄損測定時に特性が劣化することがあるためである。
さらに、鋼板を積層して使用する場合には、上記平坦化焼鈍において、あるいは、その前後において、鋼板表面に絶縁被膜を被成することが有効である。特に、鉄損の低減を図るためには、絶縁被膜として、鋼板に張力を付与する張力付与被膜を適用するのが好ましい。張力付与被膜の形成には、バインダーを介して張力被膜を塗布する方法や、物理蒸着法や化学蒸着法により無機物を鋼板表層に蒸着させる方法を採用することが、被膜密着性に優れかつ著しく鉄損低減効果が大きい絶縁被膜を形成することができるので、より好ましい。
また、鉄損をより低減するためには、磁区細分化処理を施すことが好ましい。処理方法としては、一般的に実施されている、最終製品板に溝を形成したり、電子ビーム照射やレーザ照射、プラズマ照射等によって線状または点状に熱歪や衝撃歪を導入する方法、最終板厚に冷間圧延した鋼板や中間工程の鋼板表面にエッチング加工を施して溝を形成したりする方法等を用いることができる。
C:0.070mass%、Si:3.30mass%、Mn:0.06mass%、Al:0.025mass%、Se:0.025mass%およびN:0.010mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、1400℃の温度に再加熱し、熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とし、1000℃×50秒の熱延板焼鈍を施し、一次冷間圧延により1.8mmの中間板厚とし、1100℃×20秒の中間焼鈍を施した後、タンデムミルまたはリバースミルで二次冷間圧延(最終冷間圧延)して最終板厚0.27mmの冷延板に仕上げた。
その後、上記冷延板に、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下で、840℃×100秒の脱炭焼鈍を伴う一次再結晶焼鈍を施した。この際、850℃までの加熱過程における200〜700℃間の昇温速度を、表1に記載のごとく変化させるとともに、その加熱途中において、同じく表1に記載の温度と時間の保定処理を施した。
次いで、MgOを主体とした焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布・乾燥した後、二次再結晶させた後、1200℃×10時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施し、製品コイルとした。なお、仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1200℃保定時はH、昇温時および降温時はNとした。
Figure 0005839204
斯くして得た仕上焼鈍後の製品コイルの長手方向両端部および中央部から、コイル幅方向に幅100mm×長さ520mmの試験片を各々の位置から10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定し、それぞれの位置の平均値(コイル両端部は、先端部と後端部の平均値)を求めるとともに、コイル両端部と中央部の鉄損差を求め、その結果を表1に併記した。同表から、本発明を適用することで、タンデム圧延におけるコイル長手方向両端部の鉄損が改善され、コイル中央部の鉄損値とほぼ同レベルとなっており、コイル全長全幅に亘って低鉄損の方向性電磁鋼板が得られていることがわかる。
C:0.027mass%、Si:3.12mass%、Mn:0.09mass%、Al:0.005mass%、N:0.0037mass%、S:0.0018mass%、Sb:0.041mass%、P:0.042mass%およびMo:0.013mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、1200℃の温度に再加熱し、熱間圧延して板厚2.2mmの熱延板とし、1000℃×50秒の熱延板焼鈍を施し、一次冷間圧延により1.8mmの中間板厚とし、1100℃×20秒の中間焼鈍を施した後、タンデムミルまたはリバースミルで二次冷間圧延(最終冷間圧延)して最終板厚0.23mmの冷延板に仕上げた。
その後、上記冷延板に、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下で820℃×100秒の脱炭焼鈍を伴う一次再結晶焼鈍を施した。この際、820℃までの加熱過程における200〜700℃間の昇温速度を150℃/sとし、さらに、その加熱途中で、表2に記載した条件で0〜4回の保定処理を施した。
次いで、MgOを主体とした焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布・乾燥した後、二次再結晶させた後、1200℃×10時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施し、製品コイルとした。なお、仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1200℃保定時はH、昇温時および降温時はNとした。
Figure 0005839204
斯くして得た仕上焼鈍後の製品コイルの長手方向両端部および中央部から、コイル幅方向に幅100mm×長さ520mmの試験片を各々の位置から10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定し、それぞれの位置の平均値(コイル両端部は、先端部と後端部の平均値)を求めるとともに、コイル両端部と中央部の鉄損差を求め、その結果を表2に併記した。同表から、本発明を適用することで、タンデム圧延におけるコイル長手方向両端部の鉄損が改善され、コイル中央部の鉄損値とほぼ同レベルとなっており、コイル全長全幅に亘って低鉄損の方向性電磁鋼板が得られていることがわかる。
表3に記載の成分組成を有する符号A〜Lの鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとし、1380℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とし、1030℃×40秒の熱延板焼鈍を施した後、タンデムミルまたはリバースミルで最終冷間圧延して最終板厚0.23mmの冷延板に仕上げた。
Figure 0005839204
その後、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下で840℃×60秒の脱炭焼鈍を伴う一次再結晶焼鈍を施した。この際、840℃までの加熱過程における200〜700℃間の昇温速度を80℃/sとし、さらに、その加熱途中の450℃の温度で5秒間保持する保定処理を施した。
次いで、MgOを主体とした焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布・乾燥した後、さらに、二次再結晶させた後、1180℃×5時間の純化処理を行う仕上焼鈍を施し、製品コイルとした。なお、仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1180℃保定時はH、昇温時および降温時はArとした。
斯くして得た仕上焼鈍後の製品コイルの長手方向両端部および中央部から、コイル幅方向に幅100mm×長さ520mmの試験片を各々の位置から10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定し、それぞれの位置の平均値(コイル両端部は、先端部と後端部の平均値)を求めるとともに、コイル両端部と中央部の鉄損差を求めた。その結果を表3に併記した。同表から、本発明を適用することで、タンデム圧延におけるコイル長手方向両端部の鉄損が改善され、コイル中央部の鉄損値とほぼ同レベルとなっており、コイル全長かつ全幅に亘って低鉄損の方向性電磁鋼板が得られていることがわかる。
本発明の技術は、冷延鋼板の集合組織の制御に適しているので、加工性が要求される自動車用鋼板等の製造方法にも適用することができる。

Claims (5)

  1. C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有し、さらに、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.003〜0.030mass%および/またはS:0.002〜0.03mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、最終冷間圧延をタンデム圧延で行い、かつ、前記一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜700℃間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、前記加熱過程の250℃以上550℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を1〜4回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有し、さらに、Se:0.003〜0.030mass%およびS:0.002〜0.03mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、最終冷間圧延をタンデム圧延で行い、かつ、前記一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜700℃間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、前記加熱過程の250℃以上550℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を1〜4回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有し、さらに、Al:0.01mass%未満、N:0.0050mass%未満、Se:0.0030mass%未満およびS:0.0050mass%未満を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延して最終板厚の冷延板とし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、最終冷間圧延をタンデム圧延で行い、かつ、前記一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜700℃間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、前記加熱過程の250℃以上550℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を1〜4回施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記加熱過程の250℃以上550℃未満の間での保定処理を施した後、さらに、前記加熱過程の550℃以上700℃未満の間のいずれかの温度で0.5〜3秒間保持する保定処理を1または2回施すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼素材は、前記成分組成に加えてさらに、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.10mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.010mass%、Nb:0.0010〜0.010mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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