JP5828586B2 - 撥水化木質材の製造方法 - Google Patents
撥水化木質材の製造方法Info
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Description
木材の表面に撥水性を付与する他の方法として、撥水性を持つ楽剤を、木材の内部に浸透させ、該木材中に固定する方法も知られている。
例えば、特許文献1には、単板の状態で撥水剤を浸透させ再度貼り合わせて撥水集成材を得る集成木材の製造方法が記載され、特許文献2には、蒸気状態の撥水剤を木材に接触させることにより撥水性木材を製造することが記載されている。
撥水性を持つ薬剤で木材の表面に塗膜を形成する方法は、前述のように、木材を屋外や屋外に面する部位に使用した場合には、長期間、撥水性を保持し続けることは難しい。
例えば、木口方向を表裏面とし、パネルの状態にして利用するバルサ材のエンドグレインパネル(End Grain Panel)や、スギ、ヒノキなどの植林木の間伐材で、辺材を多く含む材で製造した、合板、LVL等の木質パネルは、表面の吸水性が高く、表面に撥水処理を施しても、1時間程度の短時間の降雨による雨濡れでも、表面撥水状態を保つことが難しい。そのため、例えば屋外や屋外に面する部位に使用した場合には、木材表面の含水率が上昇・低下を繰り返すこととなり、表面割れが発生する。そして、表面割れが発生すると、割れ部分から水分が容易に侵入し、更に表面割れが、内部深くまで進行することとなる。
一方で、屋外や屋外に面する部位に用いる建材等にも、植林木の中でも吸水性の高い樹種を利用可能とすることは、現在使用されている耐久性の高い天然木等の伐採を抑制する観点等から好ましい。
本発明の撥水化木質材は、木質材を180℃以上の高温で加熱処理して得た中間木質材を撥水剤で処理してなる。
本発明に用いる木質材としては、(1)集成材、(2)LVL、(3)合板、(4)パーティクルボード、(5)ファイバーボード、(6)OSB、(7)OSL(Oriented Strand Lumber)、(8)LSL(Laminated Strand Lumber)等が挙げられる。木質材は、構成要素どうしを結合して得られるもので、製材品、無垢材は含まれない。
集成材は、ひき板又は小角材などを、繊維方向を互いに平行にして、長さ、幅及び厚さ方向に集成接着してなる狭義の集成材の他、ひき板又は小角材などを、直交する2方向(長さ及び幅の2方向、長さ及び厚みの2方向等)に集成接着したものも含まれる。但し、本発明における集成材には、LVL及び合板は含まれない。
エンドグレインパネルは、低比重材からなることが好ましい。即ち、エンドグレインパネルは、その構成要素である小片が、低比重の樹種から得られた低比重材からなることが好ましい。エンドグレインパネルを低比重材の小片から構成すると、後の高温加熱処理の際に、ブロック状の小片どうし間に隙間が生じにくくなる。そのため、小片間の密着度の高い断熱性に優れた改質エンドグレインパネルを得ることができる。
低比重材の原木の樹種としては、ファルカタ、バルサ、キリ、スギ等が挙げられるが、特にバルサであることが好ましい。高温加熱処理後のエンドグレインパネル(集成材)の比重は、0.08〜0.25、特に0.10〜0.20であることが好ましい。
(2)LVL
LVL(Laminated Veneer Lumber,単板積層材)は、ロータリーレースやスライサーなどにより木材を切削して得た単板(veneer)を、繊維方向を平行にして複数枚重ね、それらを熱圧接着して得られる木質材である。LVLは、軸材として用いる撥水化木質材を得る観点等からは、図2に示すLVL(単板積層材)3のように、一方向(X方向、繊維配向方向)に長い形状を有していることが好ましい。
LVLの単板を得る木材の樹種としては、従来、LVLの製造に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、杉、檜、カラマツ等の国産材の他、ラジアータパイン、ロシアカラマツ、ダグラスファー等の外国産材が挙げられる。
合板は、ロータリーレースやスライサーなどにより木材を切削して得た単板を、繊維方向が互い違いとなるように複数枚重ねて熱圧接着して得られる木質材である。
パーティクルボードは、木材の切削や破砕等により得た小片(エレメント)を接着剤と共に混合してマット状としたものを熱圧締して得られる木質ボードである。
(5)ファイバーボード(繊維板)
ファイバーボードは、木材の蒸射・解繊等により得た木材繊維(エレメント)を接着剤と混合してマット状としたものを熱圧締して得られる木質ボードである。ファイバーボードとしては、MDF(中比重繊維板)、やハードボード(HB)、インシュレーションボードが挙げられる。
(6)OSB
OSB(Oriented Strand Board,配向性ストランドボード)は、薄い削片状にした原料のエレメントを配向させて積層、接着したものである。エレメントは、パーティクルボードに用いられるものより面積が大きく薄い形状をしており木材の異方性をより多く残している。
本発明の好ましい実施態様においては、上述した各木質材を、それぞれに記載した構成要素どうしを結合させて製造する。木質材の製造方法としては、木質材の種類に応じてその木質材を製造する従来公知の方法を特に制限なく用い得るが、構成要素どうしの結合に用いる接着剤としては、後述する高温加熱処理の際に、接着剤が熱劣化する観点から、メラミン樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤等の熱硬化型の接着剤を用いることが好ましく、特に、フェノール樹脂接着剤を用いることがより好ましい。
高温加熱処理は、180℃以上の高温下に木質材を所定時間置くことにより行う。高温加熱処理の温度は250℃以下であることが好ましい。木質材を、180〜250℃の範囲(より好ましくは180〜230℃の範囲)の高温で処理する時間は、60分以上であることが好ましく、より好ましくは1〜5時間であり、更に好ましくは2〜4時間である。
この高温加熱処理により中間木質材が得られる。中間木質材は、撥水化木質材の製造中間体であり、180℃以上の高温で加熱処理した後の木質材で、且つ撥水剤処理前のものをいう。
高温加熱処理により木質材は、吸湿性が低下し、吸湿や吸水による寸法の変化や腐朽が生じにくいものに改質される。
図3のグラフに示されるように、高温加熱処理は、好ましくは、昇温工程、高温維持工程及び降温工程を経て行う。
昇温工程では、木質材を収容した加熱室内の温度を、蒸気を併用した加熱により100℃付近まで一気に上昇させ、次いで、電熱器で加熱された蒸気を送り込むことにより、加熱室内の温度を、高温維持工程の180℃以上の設定温度(図示例では215℃)まで徐々に上昇させる。
そして、高温維持工程では、加熱室内の温度を前記の設定温度(図示例では215℃)に所定時間維持し、降温工程では、熱交換器での冷却や無酸素の気体を導入することが好ましい。
高温加熱処理は、190〜240℃の範囲の温度を1〜5時間維持して行うことがより好ましく、200〜230℃の範囲の温度を2〜4時間維持して行うことが更に好ましい。また、高温加熱処理は、木質材の材中心部の温度が180℃以上に達するまで行うことが好ましく、材中心部の温度が190℃以上に達するまで行うことがより好ましい。また、高温加熱処理は、材中心部の温度が、高温維持工程の設定温度に達するまで行うことが更に好ましい。図3のグラフ中、「室温」は、加熱室内の温度、「材温」は、木質材の材中心部の温度である。材中心部の温度は、木質材が軸材の場合、長手方向中央部における断面の中心部の温度である。
上述した加熱装置の構成や温度の変化のさせ方は、あくまでも一例であり、温度の昇温速度、高温維持工程の温度や時間、降温工程の降温速度等は、適宜に変更して実施することができる。
撥水剤の塗工は、中間木質材における撥水性を付与したい面に、その面に均一に撥水剤が塗布されるように行うことが、撥水剤の無駄防止の点等から好ましい。また、撥水剤の塗工量は、1m2当たり、50〜300g、特に100〜200gとすることが、塗工後の乾燥時間の短縮及び充分な撥水性の付与の観点等から好ましい。ここでいう、撥水剤の塗工量とは、中間木質材の表面に撥水剤を水で1〜20倍に希釈して塗工した際の量である。
また、撥水剤の塗工は、高温加熱処理後の木質材(中間木質材)における撥水性を付与する面に対して、必要に応じてプレーナー等による平滑化処理を施した後に行う。
浸透型の水系撥水剤は、有機溶剤系のものではなく、また塗装面(中間木質材の表面)より深くに浸透して、木質材の内部に撥水性の層(例えば、フッ素樹脂やシリコーンゴムからなる層)を形成するものである。
そのため、有機溶剤系のものに比して環境や人に優しく、また、塗装面の表面に造膜する造膜型のものに比して、木質材の吸放湿機能が残せる上に、質感が維持されやすい。
シリコーン系の水系撥水剤は、有機溶剤系の撥水剤に比して環境や人に優しく、また塗装面より深くに浸透し易いため、木質材の質感が維持されやすいことや、撥水性の耐久性に一層優れた撥水化木質材が得られる点、メンテナンス時の再塗布が容易である点等から好ましい。
但し、高温状態の木質材に塗布することには、さまざまな障害があるため、高温加熱処理後の木質材の温度(特に木材内部の温度、例えば図3中の材温)が、100〜40℃の段階で行うことが好ましく、70〜50℃の状態で行うことがより好ましい。
このようにして、本発明の撥水化木質材が得られる。本発明の撥水化木質材は、撥水剤で処理する前に、木質材を高温加熱処理しておくことによって、撥水性が長時間安定して発揮される。
また、撥水化木質材には、意匠性の向上の観点から、樹脂フィルムや化粧紙等の化粧用のシートを貼着しても良く、意匠性の向上や耐水性や耐候性の向上の観点から有色又は無色の塗装を施しても良い。
また、エンドグレインパネルやLVL等の木質材は、原木から製材品や無垢材を得る場合に比して、原木を有効利用できるため、構成要素の段階や後処理の段階でのプレーナーやサンダーによる無駄を低減可能なこととも相俟って、撥水性の耐久性に優れた撥水化木質材を歩留り良く効率的に製造することができる。
図4(a)に示すように、バルサ材からなる複数本の小角材20を、隣り合う小角材20間にメラミン樹脂系接着剤を介在させ横一列に配置し、これらを横方向から加圧して接着一体化させた。次いで、この複合材を、小角材20の木口面が位置する一端から所定の幅で順次切断して、図4(b)に示すように、ブロック状の小片21が複数繋がった棒状中間体22を複数本得た。そして、それらの棒状中間体22を、小片21の木口面21a,21bがパネルの上下面を形成するように向きを代えた後、図4(c)に示すように、その棒状中間体22の側面どうしを、メラミン樹脂系接着剤を介して接合させ、厚み25mm、幅920mm、長さ1830mmのEGPを得た。
そのEGPを切断して、厚み25mm、縦320mm、横320mmのEGP試験片を多数製造した。
EGP試験片を、高温加熱処理を行う群と、高温加熱処理を行わない群とに分け、高温加熱処理を行う群については、加熱室内の温度を図3に示すグラフのように変化させて、上記と同様の高温加熱処理(215℃で3時間熱処理)を行った。高温加熱処理を行わない群については、高温加熱処理を行わず、低温での加熱処理も行わなかった。
高温加熱処理を行った試験片の片面(320mm×320mmの面)に、信越化学株式会社製の撥水剤(商品名ウッドエイド)を水で7.5倍に希釈して塗布し、自然乾燥させて撥水化木質材を得た。撥水剤は塗布量が100g/m2となるように1回塗布した。
(実施例2)
実施例1において、撥水剤を100g/m2で2回塗布し、撥水剤の合計塗布量を200g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、撥水化木質材を得た。
高温加熱処理を行わなかった試験片を用いた以外は、実施例1と同様にして、撥水化木質材を得た。
(比較例2)
高温加熱処理を行わなかった試験片を用いた以外は、実施例2と同様にして、撥水化木質材を得た。
高温加熱処理を行った試験片について、撥水剤を塗布することなく評価した。
高温加熱処理を行わなかった試験片について、撥水剤を塗布することなく評価した。
得られた撥水化木質材について、JIS P8137:1976に規定される「紙及び板紙のはっ水度試験方法」に従い撥水度(はっ水度)試験を行い撥水性の評価を行った。
即ち、試験片を45°に傾けた状態に固定し、その試験片に対して1滴を約0.1mLになるように調整したビュレットから20℃の蒸留水を1滴落下させ、試験片の上を300mm流下させる。流下の跡を観察し、JIS P8137:1976に記載の表に記載の下記評価基準に従って、撥水度(はっ水度)を決定する。この試験を、各試験片の各々の方向(縦方向及び横方向)について5回行い、その最大値(評価R0〜R10のうち最もR10に近いもの)、最小値(評価R0〜R10のうち最もR0に近いもの)及び平均値を表1に示した。
R0:連続した跡であって一様な幅を示すもの
R2:連続した跡であって水滴よりわずかに狭い幅を示すもの
R4:連続した跡であるがところどころ切れていて、明らかに水滴より狭い幅を示すもの。
R6:跡の半分がぬれているもの
R7:跡の1/4は、長く伸びた水滴によってぬれているもの
R8:跡の1/4以上は、球形の小滴が散在しているもの
R9:ところどころに、球形の小水滴が散らばるもの
R10:完全に転がり落ちるもの
上記の試験において、個々の試験片に水を1滴落下させるのに代えて、個々の試験片の同じ場所に、ビュレットから水滴を30秒間隔で合計20回落下させ、20滴、落下させた時点で流下の跡を観察した以外は、上記の試験と同様にして、撥水性の耐久性を評価した。結果を表2に示した。
また、比較例1と比較例2の結果を対比すると、撥水剤の塗布量を半分にすると撥水度が低下して撥水性の耐久性が低下したことが判る。これに対して、実施例1と実施例2の結果を見ると、撥水剤の塗布量を半分にしても、撥水度の差は僅かである。このことから、本発明によれば、撥水剤の量が少なくても、優れた耐久性が得られ、木質材表面の撥水性が長期間維持されることが判る。
21 ブロック状の小片(構成要素)
21a,21b 木口面
22 棒状中間体
3 LVL(木質材)
Claims (6)
- 木質材を180℃以上の高温で加熱処理して得た中間木質材の表面を撥水剤で処理することを特徴とする、撥水化木質材の製造方法。
- 前記撥水剤が、浸透型の水系撥水剤であることを特徴とする、請求項1に記載の撥水化木質材の製造方法。
- 前記木質材の構成要素どうしを結合する前に、前記構成要素を、含水率が12%以下となるまで乾燥させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の撥水化木質材の製造方法。
- 前記木質材が、集成材であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の撥水化木質材の製造方法。
- 前記集成材が、低比重材からなるエンドグレインパネルであることを特徴とする請求項4に記載の撥水化木質材の製造方法。
- 前記木質材が、LVLであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の撥水化木質材の製造方法。
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