JP5811017B2 - 還元鉄の製造方法 - Google Patents

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本発明は、還元鉄の製造方法に関する。
電気炉による鋼材の製造が盛んになるにつれ、その主原料であるスクラップの需要は逼迫し、電気炉での高級鋼製造に対する要請から還元鉄の需要が増大しつつある。
還元鉄を製造するプロセスの一つとして、粉状の鉄鉱石と、粉状の石炭やコークス等の炭材とを混合して、例えばペレットやブリケットのような塊成化物とし、この塊成化物を回転炉床炉に装入して高温に加熱することで、鉄鉱石中の酸化鉄を還元して固体状金属鉄を得る方法がある(例えば、以下の特許文献1〜4を参照。)。
上述のような方法において、回転炉床の加熱には一般的にバーナーが用いられ、還元鉄の原料である塊成化物は、バーナー及び回転炉床炉の炉壁からの輻射熱によって加熱される。輻射による加熱は赤外線付近の短い波長の光による加熱であり、ブリケットのごく表層が加熱され、その熱が内部に伝熱することでブリケット内部までが加熱される、外部から内部への熱伝導的な加熱である。そのため、炉床上で原料が重なった部位では、裏面側の加熱が不足することとなって、塊成化物全体として不均一な還元となり、平均還元率が低下することとなる。
ここで、鉄酸化物と炭素質物質からなる原料の還元反応等に必要な熱は、まず、炉床上部に位置する空間部でのバーナー燃焼による輻射加熱によって原料層上面に供給された後、原料層内の伝導伝熱によって原料層の下部へと供給されることとなる。従って、生産性を増大させるために原料層の厚みを厚くすると、原料層の下部への伝熱が遅れることとなって層下部の還元速度が低下し、滞留時間が長くなるにもかかわらず、生産性が低下する結果となる。
また、近年では、塊成化物の加熱を、バーナーではなく、マイクロ波の照射により行う技術も提案されるようになってきている(以下の特許文献5を参照。)。
特開平11−248359号公報 特開平11−310832号公報 特開2004−315852号公報 特開2011−112340号公報 特開2008−214715号公報
村瀬陽一、高島宏、中野英樹、越地耕二、周英明、窪田哲男、「電子レンジキャビティ内における電磁界分布」、信学技報、社団法人 電子情報通信学会、1996年2月、MW95−201、67−72ページ
しかしながら、上記特許文献5に記載の方法では、同文献に記載されているように、照射すべきマイクロ波の電力量は、塊成塊1トンあたり100〜200kWhとする必要がある。しかしながら、マイクロ波発振装置の出力は、一般的に100kW/台程度が工業的に使用可能な上限であって、マイクロ波単独で、1日に数十トンもの大量の生産量を要求される塊成化物の加熱・還元処理を行うことは、極めて困難である。
そのため、本発明者らは、操業コストの増加を抑制しながら、輻射加熱が直接届かない塊成化物の裏面側の還元不良の発生を抑制可能な方法について鋭意検討を行った結果、バーナーによる加熱と、物体の内部まで到達して物体を内部から直接加熱する事が可能なマイクロ波による加熱と、を併用することに想到した。
ここで、固体還元炉の全域にわたってマイクロ波を照射することで、もれなく塊成化物裏面側の加熱不良の発生を抑制することが可能となると考えられるが、その一方で、マイクロ波を照射するために要するコストの増加が懸念される。従って、バーナーによる加熱とマイクロ波による加熱とを併用する場合には、操業コストの増加を抑制しつつ、マイクロ波の照射による塊成化物の金属化促進効率が高い条件下においてマイクロ波を照射することが重要であることに想到した。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、塊成化物に対してマイクロ波を効率良く吸収させることができ、マイクロ波の照射による金属化を更に促進することが可能な、還元鉄の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、固体還元炉に設けられたバーナー及び当該固体還元炉の炉壁からの輻射熱を熱源として、酸化鉄原料と還元材とを混合して成形した塊成化物を加熱することで還元鉄を製造する還元鉄の製造方法において、前記熱源として、前記塊成化物に対して照射されるマイクロ波を更に利用し、前記固体還元炉中において、前記塊成化物の内部温度が600℃〜1150℃の温度範囲にあるときに、前記塊成化物に対して前記マイクロ波の照射を開始する還元鉄の製造方法が提供される。
記塊成化物の内部温度が900℃〜1000℃の温度範囲であるときに、前記塊成化物に対して前記マイクロ波の照射を開始してもよい。
前記固体還元炉における、前記塊成化物の内部温度が前記温度範囲である領域全体に対して、前記マイクロ波を照射するためのマイクロ波照射部材を設置してマイクロ波照射可能領域とし、前記塊成化物に対して、前記マイクロ波照射可能領域の少なくとも一部の領域において前記マイクロ波を照射してもよい。
前記固体還元炉における、前記塊成化物の内部温度が前記温度範囲である領域の少なくとも一部の領域に対して、前記マイクロ波を照射するためのマイクロ波照射部材を設置してマイクロ波照射領域とし、前記塊成化物に対して、前記マイクロ波照射領域において前記マイクロ波を照射してもよい。
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、塊成化物の内部温度が600℃〜1150℃の温度範囲のどこかにあるときに塊成化物に対してマイクロ波を照射するため、塊成化物に対してマイクロ波を効率良く照射することができ、塊成化物に対して効率良くマイクロ波を吸収させることができ、マイクロ波の照射による金属化を更に促進することが可能となる。
一般的な還元鉄の製造方法の流れについて示した説明図である。 固体還元炉の一例である回転炉床炉を説明するための説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る還元鉄の製造方法で利用可能なマイクロ波照射装置の構成を示した説明図である。 マイクロ波の照射タイミングの検討に用いた加熱装置について示した説明図である。 マイクロ波の照射タイミングの検討に用いた加熱装置について示した説明図である。 マイクロ波照射開始時の塊成化物温度と金属化率との関係を示したグラフ図である。 塊成化物の示差走査熱量測定結果を示したグラフ図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(還元鉄の製造工程について)
本発明の実施形態に係る還元鉄の製造方法について説明するに先立ち、まず、図1を参照しながら、一般的な還元鉄の製造工程について、詳細に説明する。図1は、一般的な還元鉄の製造工程を説明するための説明図である。
まず、製鉄ダスト(酸化鉄粉)及び鉄鉱石、粉鉱石などの酸化鉄原料と、石炭、コークス、微粒カーボン等の還元材とは、予めホッパー1等に格納されている。酸化鉄原料及び還元材は、予め設定された配合比となるように配合されて、粉砕機2に装入される。
ボールミル等の振動ミルに代表される粉砕機2は、装入された酸化鉄原料及び還元材を、混合しながら所定の粒径まで粉砕する。粉砕後の酸化鉄原料及び還元材の粒径は、還元鉄の製造に用いられる回転炉床炉、流動床炉、シャフト炉等の固体還元炉に適した値とすることができる。粉砕後の酸化鉄原料及び還元材からなる混合物は、混練機3に運搬される。
混練機3は、粉砕機2により所定の粒径に粉砕された混合物を混練する。また、混練機3は、混合物の混練に際して、還元鉄の製造に用いる固体還元炉に適した水分量となるまで混合物に加水を行う調湿処理を施してもよい。混練機3の一例として、例えば、ミックスマーラー等を挙げることができる。混練機3によって混練された混合物は、成型機4に搬送される。
パンペレタイザー(皿型造粒機)、ダブルロール圧縮機(ブリケット製造機)、押し出し成型機等の成型機4は、酸化鉄原料及び還元材を含む混合物を成型し、例えばペレットのような塊成化物とする。ここで、塊成化物とは、ペレット、ブリケット、押し出し成型して裁断した成型品、粒度調整された塊状物等の粒状物・塊状物をいう。成型機4は、後述する乾燥・加熱還元後、例えば熱間にて溶解炉7に装入する際、炉内上昇ガス流で飛散しない程度の粒径以上の大きさとなるように、上記混合物を塊成化する。生成された塊成化物は、乾燥炉5へと装入される。
乾燥炉5は、塊成化物を乾燥して、後述する加熱還元工程に適した水分含有率(換言すれば、還元鉄の製造に用いる固体還元炉ごとに適した水分含有率:例えば、1%以下)となるようにする。所定の水分含有率となった塊成化物は、後述する固体還元炉6へと搬送される。
例えば回転炉床炉(Rotary Hearth Furnace:RHF)、流動床炉、シャフト炉等のような固体還元炉6は、装入された塊成化物を、LNGバーナーやCOGバーナー等の加熱雰囲気で加熱及び還元し、還元鉄とする。固体還元炉は、塊成化物を例えば1000〜1300℃程度まで加熱して塊成化物の還元処理を行い、還元鉄を製造する。製造された還元鉄は、溶解炉7に搬送される。溶解炉7では、固体還元炉6で製造された還元鉄を溶解し、溶銑を生成する。生成された溶銑は、脱硫/脱炭工程、二次精錬工程、連続鋳造工程、圧延工程等を経て、各種鉄鋼製品へと加工されることとなる。
以下では、固体還元炉の一例として回転炉床炉を例にとって、説明を行うものとする。しかしながら、本発明の実施形態に係る還元鉄の製造方法に用いられる固体還元炉が、回転炉床炉に限定されるわけではない。
(回転炉床炉について)
続いて、図2を参照しながら、還元鉄の製造方法で用いられる固体還元炉の一例である回転炉床炉について、詳細に説明する。図2は、固体還元炉の一例である回転炉床炉を説明するための説明図である。
回転炉床炉21は、例えば図2上段に示したように略円柱状の形状を有しており、例えば回転炉床炉21の上面等に設けられた装入口から塊成化物が装入される。装入された塊成化物は、炉内を周方向に沿って移動しながら加熱・還元されて還元鉄となり、炉内から取り出される。
回転炉床炉21を周方向に沿って展開した場合の模式図を、図2下段に示す。
回転炉床炉21の内部には、回転炉床炉21内を周方向に沿って移動可能な回転炉床25が設けられている。装入口27から装入されたブリケットBは、回転炉床25上に展開される。ブリケットBは、熱間レベラー29によって平坦にならされ、炉内を回転炉床25の移動に伴って移動していく。ブリケットBは、移動の過程で、炉壁又は炉上のバーナー31によって生じた高温燃焼ガスの輻射熱により加熱され、ブリケットB中の還元材により酸化鉄原料が還元される。還元された酸化鉄原料である還元鉄は、ディスチャージャー33により回転炉床炉21の内部から払い出されることとなる。
回転炉床炉21内を移動するブリケットBは、高温燃焼ガスの輻射熱によりブリケットBの外側から内部に向かって温度が上昇していき、ブリケットの還元反応は、ブリケットの外周から中心部に向かって進行する。この際、ブリケットBの内部では、ブリケット中に含まれる酸化鉄成分(FeOやFe等)がブリケット中に含まれる還元材(炭素C)により還元され、還元鉄(Fe)となっていく。
ここで、回転炉床炉21の内部は、図2下段に示したように、仕切り壁(又は、たれ壁)35と呼ばれる、炉の天井から突出形成された壁により、複数のゾーンに区分されていることが多い。回転炉床炉21では、ゾーン毎に、バーナーの熱量や、気体雰囲気や、空気比や、2次空気量等の制御が行われ、還元鉄が製造される。仕切り壁35の高さ(回転炉床炉21の天井位置から仕切り壁35の下端までの高さ)は、回転炉床炉21の大きさ等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、回転炉床炉21の高さに対して2/3程度となるくらいまで、炉天井から突出形成される。従って、仕切り壁35の底面(炉床と対向する底面)と炉床との間の離隔距離は、回転炉床炉21の高さに対して、1/3程度となる。
ブリケットの装入口27の近傍に位置する第1のゾーン及び第1のゾーンに隣接するゾーンである第2のゾーンは、回転炉床炉21に装入されたブリケットBの昇温を主目的とするゾーンである。また、第2のゾーンに連続する第3のゾーン以降は、ブリケットBの還元を主目的とするゾーンである。ここで、第1のゾーン及び第2のゾーンを総称して、加熱・還元の最初期と称することとし、第3のゾーン以降を還元期と称することとする。
バーナー31によって生じた高温燃焼ガスにより、加熱・還元の最初期における塊成化物の温度は、1200℃程度まで昇温し、還元期以降は、1200〜1300℃程度を保持することとなる。
(バーナー加熱とマイクロ波加熱との併用について)
そのため、本発明者らは、操業コストの増加を抑制しながら、輻射加熱が直接届かない塊成化物の裏面側の還元不良の発生を抑制可能な方法について鋭意検討を行った結果、バーナーによる加熱と、物体の内部まで到達して物体を内部から直接加熱することが可能なマイクロ波による加熱と、を併用することに想到した。
本発明者らは、バーナーによる加熱とマイクロ波による加熱とを併用するために鋭意検討を行った結果、固体還元炉に装入される塊成化物の主たる原料は、マイクロ波を効率良く吸収可能であることが明らかとなった。以下、この点について、式を参照しながら詳細に説明する。
物質に吸収される単位体積あたりのマイクロ波のエネルギーPabsは、以下の式11のように表される。以下の式11を参照するとわかるように、加熱される物質(被加熱物質)に吸収される単位体積あたりのマイクロ波のエネルギーPabsは、被加熱物質の導電率、誘電率及び透磁率に依存していることがわかる。従って、下記式11で表されるPabsは、被加熱物質のマイクロ波の吸収効率に関係する量であるともいえる。
Figure 0005811017
ここで、上記式11において、
σ :被加熱物質の導電率 [S/m]
f :マイクロ波の周波数 [Hz]
ε:真空中の誘電率 [F/m]
ε”:被加熱物質の比誘電率の虚数部
μ:真空中の透磁率 [H/m]
μ”:被加熱物質の比透磁率の虚数部
E :マイクロ波により形成される電界強度 [V/m]
H :マイクロ波により形成される磁界強度 [A/m]
π :円周率
である。
以下に、塊成化物の原料となる酸化鉄及び炭素材(還元材)と、一般的に使用される耐火炉材とについて、比誘電率の虚数部ε”の値をまとめて示す。
比誘電率の虚数部ε”
・代表的な耐火炉材であるアルミナ:0.004〜0.01
・粉状の炭素粉:10〜50
・酸化鉄:0.1〜10
上記より明らかなように、塊成化物の原料となる酸化鉄及び炭素材は、乾燥炉等において一般的に使用される耐火炉材に対して比誘電率の虚数部ε”の値が大きく、酸化物及び炭素材(還元材)にマイクロ波のエネルギーをより多く吸収させることが可能である。また、酸化鉄及び炭素粉の値に比べ、代表的な耐火炉材であるアルミナの値は、1000分の1程度の小さな値となっており、耐火炉材は、マイクロ波のエネルギーを多く吸収しないことがわかる。従って、塊成化物が挿入された炉内でマイクロ波を照射した場合、耐火炉材で被覆されている炉壁等へのエネルギー供給は少なく、炉内温度の上昇を抑制したまま原料である塊成化物の温度のみを、効率よく上昇させることが可能となる。
(使用するマイクロ波について)
続いて、本発明の実施形態に係る還元鉄の製造方法で用いられるマイクロ波について、簡単に説明する。
マイクロ波は、一般的には、波長1mm〜1m、周波数300MHz〜300GHzの電磁波をいう。しかしながら、本実施形態に係る塊成化物の加熱方法で着目しているように、マイクロ波を加熱手段として用いる(いわゆるマイクロ波加熱を行う)場合には、マイクロ波とは、いわゆるISM(Industry−Science−Medical)バンドに属する周波数帯域の電磁波を指す。
以下で説明する本発明の実施形態では、IMSバンドに属する周波数を有する電磁波であれば特に限定されず、例えば、2.45GHz帯(2.40GHz〜2.50GHz)、5.8GHz帯(5.725GHz〜5.875GHz)、及び、24GHz帯(24.0GHz〜24.25GHz)に属する周波数等を適宜選択することが可能である。しかしながら、マイクロ波の被加熱物内部への浸透はマイクロ波の波長に比例するため、上記ISMバンドのマイクロ波では、2.45GHz帯の浸透深さが一番大きくなり、ブリケットの内部、あるいは、重なった下層のブリケットまで到達することができる。また、2.45GHzは電子レンジやその他のマイクロ波加熱に広く用いられており装置が安価である点や、発振機1台で数十kWまでの大出力の放射が可能である点などから、kWクラスの大出力が求められる本発明の設備コストとしても、他の2種の周波数の装置よりも安価に導入することができる。このため、本発明に用いるISMバンドのマイクロ波装置としては、2.45GHzのマイクロ波を発振可能なものが好ましい。
(マイクロ波照射装置の構成について)
次に、図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る還元鉄の製造方法で利用可能なマイクロ波照射装置の構成について、詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態に係る還元鉄の製造方法で利用可能なマイクロ波照射装置の構成を説明するための説明図である。
本発明の実施形態に係るマイクロ波照射装置100は、酸化鉄原料と還元材とを混合して成形した塊成化物を、バーナー及び炉壁からの輻射熱により加熱して還元鉄を製造する固体還元炉に対して利用されるものである。
本発明の実施形態に係るマイクロ波照射装置100は、図3に示したように、マイクロ波発振機101と、サーキュレータ103と、自動整合器107と、マイクロ波照射部材109と、を主に備え、これらの機器が導波管111により接続されている。なお、図3では、マイクロ波照射部材109や導波管111等といった各部材を支持する支持機構は、図示していない。
マイクロ波発振機101は、例えばISMバンドに属する周波数を有するマイクロ波を発振する機器である。このマイクロ波発振機101は、kWクラスの出力を有するマイクロ波を発振可能な機器であることが好ましい。このマイクロ波発振機101により、例えば2.45GHz帯に属する周波数のマイクロ波が、後述するサーキュレータ103へと出力されることとなる。このマイクロ波発振機101は、公知のものを適宜選択して使用することが可能である。
サーキュレータ103は、例えば磁石を利用したマイクロ波の進行制御を行うことで、サーキュレータ103に入力されるマイクロ波を、マイクロ波発振機101から出力された入射波と、後述する自動整合器107側から戻ってきた反射波とに分離する。サーキュレータ103は、分離した入射マイクロ波を後述する自動整合器107側へと導波するとともに、反射マイクロ波を、アイソレータ105の側へと導波する。これにより、反射マイクロ波は、アイソレータ105内に設けられたダミー負荷(例えば、水など)に吸収され、マイクロ波発振機101側に戻らないようにすることができる。このようなサーキュレータ103を設けることにより、本発明の実施形態に係るマイクロ波照射装置100では、安定したマイクロ波の出力を行うことができる。このサーキュレータ103は、公知のものを適宜選択して使用することが可能である。
自動整合器107は、入射側のインピーダンスと、負荷側(すなわち、塊成化物からなる原料層側)のインピーダンスとの整合を取ることで負荷側からの反射波を低減し、反射波をほぼゼロとする機器である。この自動整合器107は、反射電界の位相及び強度を測定し、インピーダンス整合を自動で行うことで、上記のような反射波の低減を実現する。自動整合器107を設けて負荷側のインピーダンスにあわせた自動整合処理を実現することで、後述するマイクロ波照射部材109から、マイクロ波エネルギーを、安定して効率良く塊成化物に照射することが可能となる。
マイクロ波照射部材109は、固体還元炉6に装入された塊成化物に対して、マイクロ波を照射する部材である。このマイクロ波照射部材109には、マイクロ波照射部材109の先端から固体還元炉6内に存在する粉塵等が逆流してこないように、窒素、アルゴン等の不活性ガスが所定の流量・流速となるように供給されていてもよい。この場合、マイクロ波照射部材109内に供給される不活性ガスは、固体還元炉6の内部の温度低下を防止するために、加熱されたガスとすることが好ましい。また、マイクロ波照射部材109と自動整合器107とを連結する導波管111には、固体還元炉内に存在する粉塵等が自動整合器107に流入しないように、防塵ガラスが設けられる。このようなマイクロ波照射部材109としては、各種のアンテナや導波管や同軸ケーブルなど公知のあらゆるものを利用することが可能である。
導波管111は、マイクロ波を導波して所望の箇所へと導く管である。この導波管111の形状については、マイクロ波の導波特性等を考慮して適宜決定すればよく、導波管111自体についても、使用するマイクロ波の周波数や出力強度等に応じて、公知のものを適宜選択することができる。
(第1の実施形態)
<還元鉄の製造方法について>
以上説明したように、還元鉄の原料となる塊成化物に含まれる酸化鉄原料や還元材は、マイクロ波を良く吸収する物質であり、バーナーによる加熱とマイクロ波による加熱とを併用することで、効率良く塊成化物を加熱することが可能であると考えられる。ここで、バーナーによる加熱とマイクロ波による加熱の併用を考えた場合、固体還元炉の全域にわたってマイクロ波を照射することで、もれなく塊成化物裏面側の加熱不良の発生を抑制することが可能となると考えられるが、その一方で、マイクロ波を照射するために要するコストの増加が懸念される。
このため、本発明者らは、塊成化物に対してマイクロ波を照射する適切なタイミングが存在するのであれば、そのタイミングにおいて塊成化物に対しマイクロ波を照射することで、操業コストの増加を抑制しつつ塊成化物に対して効率良くマイクロ波を吸収させることができるのではないかと考え、以下に示すように鋭意検討を行った。
[マイクロ波の照射タイミングの検討]
以下では、図4A〜図6を参照しながら、塊成化物に対するマイクロ波の照射タイミングの検討結果について、詳細に説明する。図4A及び図4Bは、マイクロ波の照射タイミングの検討に用いた加熱装置について示した説明図である。図5は、マイクロ波照射開始時の塊成化物温度と金属化率との関係を示したグラフ図である。図6は、塊成化物の示差走査熱量測定結果を示したグラフ図である。
本発明者らは、マイクロ波の照射タイミングについて検討を行うために、実際の固体還元炉6を模した図4A及び図4Bに示したような加熱装置を利用し、以下に示す各種実験を実施した。
図4A及び図4Bに示したように、マイクロ波の照射タイミングの検討に利用した加熱装置は、電気炉と図3に示したマイクロ波照射装置とを組み合わせたものであり、加熱室(電気炉)と、加熱室の前段に設けられた前室と、加熱室の後段に設けられ、冷却室として利用される後室と、から構成されている。以下に示す実験では、前室、加熱室及び後室のそれぞれの雰囲気を不活性ガスである窒素雰囲気に保持し、加熱室の上方に設置したマイクロ波照射装置から加熱室内にマイクロ波を照射するようにした。
前室と加熱室との間、及び、加熱室と後室との間には、断熱材及び金属板からなる仕切り扉を設置して、加熱室中の熱及び加熱室中に放射されるマイクロ波が、前室及び後室に侵入しないようにした。
また、加熱室には排気管を設け、塊成化物原料の加熱により発生するヒューム及びCOガス等の反応ガスを加熱室の外部へ排気するようにした。
ここで、塊成化物原料は、マイクロ波を吸収しない耐火材により形成されたトレーに載置されており、前室→加熱室→後室へと外気に触れることなく移動させることが可能なようになっている。
以下の実験では、実際の固体還元炉6における操業で使用される塊成化物を利用し、予め高温状態とした加熱室に塊成化物原料を移動させた後、時間t1(分)の経過後に、マイクロ波を時間t2(分)照射した。その後、更に時間t3(分)経過後に、塊成化物原料を後室へと移動させ、窒素雰囲気中で急冷して、還元状態を固定した。
すなわち、以下の実験では、塊成化物原料は、総加熱時間T=t1+t2+t3(分)だけ加熱され、そのうちt2時間は、マイクロ波が照射されていることとなる。以下では、時間t1、t2、t3を適宜変更することで、マイクロ波照射による還元促進効果の違いについて試験を行った。
なお、各塊成化物原料の中心部に1.6φのKタイプシース熱電対を埋め込んだうえで原料を加熱し、塊成化物原料の内部温度として、塊成化物の中心近傍温度を測定した。
○使用した塊成化物(ブリケット)の製造
以下に示す組成の製鉄ダスト79質量%と、還元材である石炭20質量%とに加え、更にバインダーとしてベントナイト1質量%を混合し、適量の水分を添加した混合物を製造した。その後、この混合物を混練した後にブリケットマシンに装入し、平均径50mm×厚み20mmの生ブリケットを製造した。製造した生ブリケットは、乾燥機を用いて水分を除去し、水分含有率が0.5質量%の乾燥ブリケットとした。
上記生ブリケットの大きさは、還元鉄を製造する際に用いられる塊成化物の一般的な大きさである、外径10mm〜60mmφ×厚み10mm〜30mm程度の大きさの範囲内のものとした。
Figure 0005811017
[実施例1]
○実験条件及び得られた結果
以下の表2に、実施した実験の条件及び得られた結果を併せて示した。
なお、この実験では、上記の塊成化物(ブリケット)を、図4Aに示した複合加熱装置の加熱室中に計20分載置して、塊成化物原料を加熱・還元した。途中3分間、マイクロ波照射装置から2.45GHzのマイクロ波を500W照射した。なお、電気炉は、温度制御運転により温度1200℃に維持されるように、ヒータ電力が自動で制御されるようにした。
また、塊成化物原料を一定温度の加熱炉に一定時間保持した後、後室において窒素雰囲気下で急冷し、塊成化物原料中の還元状態を固定した。その後、塊成化物中に含まれる各酸化鉄、金属鉄、トータル鉄成分の質量比を、蛍光X線検量線法及び容量法(JIS M8213)等にて同定するとともに、得られた還元鉄の金属化率を算出した。ここで、得られた還元鉄の金属化率(%)は、以下の式101により算出することができる。
金属化率(%)
={(塊成化物中の金属Feの質量%)÷(塊成化物中の全Feの質量%)}×100
・・・(式101)
なお、下記表2において、No.10のサンプルは、マイクロ波の照射を行うことなく、20分間加熱した結果を示しており、マイクロ波による加熱を行わない一般的な還元鉄の製造方法を模したものとなっている。
Figure 0005811017
図5は、上記実験により得られた金属化率と、マイクロ波照射開始時の塊成化物の中心近傍温度との関係を示したものである。
図5を参照すると、塊成化物原料の中心近傍の温度が600℃〜1150℃である際にマイクロ波の照射を開始すると、マイクロ波の照射が無い場合(No.10,金属化率85.1%)に比べて、塊成化物原料の金属化が促進されていることがわかった。
また、中心近傍温度が600℃未満の低温状態では、マイクロ波照射による金属化の促進効果は認められなかった。また、中心近傍温度が1000℃を超えると、マイクロ波照射による金属化促進効果は減少していき、中心近傍温度が1150℃を超えると、マイクロ波の照射による金属化促進効果が見られなくなった。
図5に示した結果から、加熱中の塊成化物に対してマイクロ波を照射する場合に、適切な照射開始温度条件が存在することが明らかとなり、その温度範囲は、塊成化物の内部温度が600℃〜1150℃となる範囲であることがわかる。また、図5に示した結果から、塊成化物の中心近傍の温度が約900℃である場合に、マイクロ波の照射による金属化率の促進効果が最も大きいことがわかる。
以上説明したような知見から、本発明においてマイクロ波の照射は、塊成化物の中心近傍の温度が600℃〜1150℃の範囲のいずれかにある条件下で開始することが好ましく、塊成化物の中心近傍の温度が少なくとも900℃である条件下で開始することが更に好ましいと考えられる。
[実施例2]
○実験条件
実施例1と同様に、図4Aに示した複合加熱装置を用いて、輻射加熱とマイクロ波の複合加熱による塊成化物の金属化試験を行った。実施例1と同様に、塊成化物は総加熱時間T=t1+t2+t3(分)だけ加熱され、そのうちt2時間は、マイクロ波が照射されている。実施例1ではマイクロ波の照射時間t2を3分間としていたが、実施例2においては、さまざまなt2の時間での塊成化物の金属化の促進についての評価を行った。試験に用いた塊成化物の成分組成は、実施例1と同じである。マイクロ波照射開始までの加熱時間t1を変更することで、マイクロ波照射開始時点での塊成化物の中心近傍温度を700℃、900℃、1000℃の3水準に変更した。マイクロ波の照射時間t2は、0.5分、1.0分、2.0分の3水準で変更した。合計の加熱時間t1+t2+t3は20分とし、実施例1の試験条件と同じとした。
○試験結果
得られた試験結果を、下記の表3に示した。実施例1と同様に、マイクロ波の照射時間が0.5分から2.0分と短い場合においても、塊成化物の金属化率は、マイクロ波照射なしで20分の加熱を行った実施例1のNo10(マイクロ波照射なしの条件)に比較して増加する結果となり、マイクロ波の照射が塊成化物の金属化を促進する効果が確認された。
Figure 0005811017
マイクロ波照射なし条件(実施例1のNo.10)を基準とした場合の、金属化率ηの促進量Δη(各々の条件での処理後の金属化率ηと、実施例1のNo.10条件の金属化率ηとの差)は、マイクロ波の照射時間にほぼ比例する結果が得られた。すなわち、塊成化物の中心近傍の温度が600℃から1150℃の範囲にある場合、マイクロ波の照射開始が同じタイミングの場合には、マイクロ波の照射時間に応じた金属化の促進を得ることができる。
このように、塊成化物原料の中心近傍の温度が600℃〜1150℃である際にマイクロ波を照射開始する試験において、マイクロ波照射の持続時間t2の値によらず、マイクロ波照射による金属化促進効果が得られた。この結果は、少なくとも塊成化物の内部温度が600℃〜1150℃となっている範囲のどこかで、マイクロ波を塊成化物に対して照射することにより、塊成化物の金属化促進効果が得られることを示すものである。
更に、塊成化物の中心近傍の温度が900℃を含む温度範囲にある条件下でマイクロ波の照射を実施することにより、塊成化物の金属化促進効果が大きくなる。ここで、マイクロ波の照射については、塊成化物の内部温度が600℃〜1150℃となっている範囲のどこかで、連続的な照射を1回だけ行う場合に限らず、例えば、当該範囲の中で、700℃〜800℃の範囲と、900℃〜1000℃の範囲との2回に分けて照射するなど、マイクロ波を複数回に亘って照射してもよい。
[実施例3]
○実験条件
実施例1と同様のマイクロ波加熱試験を、加熱する塊成化物を2層に積層した状態で実施した。すなわち、図4Bに示すように、耐火材トレーに塊成化物を上下2層に載置して、加熱炉による輻射加熱とマイクロ波の複合加熱処理を行い、加熱後の金属化率ηを評価した。塊成化原料を2層化した以外の試験手順は実施例1及び実施例2と同様であり、試験に用いた塊成化物についても、実施例1及び実施例2と同様のものを用いた。なお、試験に際し、上層に位置する塊成化物と下層に位置する塊成化物の双方に対して熱電対を設置し、各層に位置する塊成化物の内部温度を測定できるようにした。
○試験結果
得られた試験結果を、下記の表4に示した。塊成化物が2段に積層された状態でマイクロ波を上方から照射した場合でも、下段の塊成化物の金属化が促進される結果となり、マイクロ波が塊成果原料の表面から下層の塊成化物まで深く浸透して下層の塊成化物を加熱し、下層の塊成化物の金属化を促進する結果となった。また金属化の促進Δη(%)は、上層の塊成化物よりも下層の塊成化物の方が大きい結果となった。
Figure 0005811017
このことから、バーナー炉とマイクロ波の組み合わせによる加熱方式を利用することで、バーナーの輻射加熱が届きにくい塊成化物の裏面部分、あるいは重なっている下側の塊成化物で金属化の進行が遅れているものについて、表面にある塊成化物よりも効果的にマイクロ波加熱によって金属化の促進を行うことができることが明らかとなった。
なお、実施例1の試験において、加熱中の塊成化物へのマイクロ波照射について、適切な温度条件が存在することについては、以下のように考察することができる。
塊成化物の温度と塊成化物中の各成分の含有率及び金属化率との関係を、以下の方法で調べた。すなわち、塊成化物原料を5gの小さいペレット状に成形し、一定温度の加熱炉中に一定時間保持し、塊成化物の内部まで均一温度(=炉温度に等しい)になった状態の後、塊成化物を取り出して窒素雰囲気下で急冷して還元状態を固定した。その後分析を行い、塊成化物の金属化の進行、及び、FeとFeOの含有率の変化を調査した。
なお、上記加熱炉を一定時間保持する温度は、500℃から1300℃まで100℃刻みで変化させて、上記調査を実施した。
[塊成化物の金属化進行]
上記調査によると、塊成化物の温度が900℃を超えると塊成化物原料中のメタルFe(金属Fe)が急激に増加し始め、塊成化物の金属化率が急上昇した。その後、塊成化物の温度が1200℃に近づくと金属化率の上昇が飽和し、温度1200℃で塊成化物の還元反応がほぼ終息していることを示した。
[塊成化物中のFeの含有率の変化]
塊成化物原料中のFeの含有量は、塊成化物の温度が600℃になると減少を開始し、その後、塊成化物温度1100℃〜1200℃まで減少をつづけ、1100℃〜1200℃という温度帯で塊成化物原料中のFe成分の還元がほぼ終了していることがわかった。
[塊成化物中のFeOの含有率の変化]
塊成化物原料中のFeOの含有量は、塊成化物の温度が600℃になると増加を開始し、その後、塊成化物温度1000℃まで増加を続けた。塊成化物温度が1000℃を超えると、原料中のFeO含有量は減少し始め、塊成化物温度が1200℃になるまで減少を続け、塊成化物原料中のFeO成分についての還元も、1200℃付近で終了することがわかった。
すなわち、以上の知見から、加熱中の塊成化物原料に対してマイクロ波を照射する場合、塊成化物原料が1200℃以上になってからマイクロ波を照射したとしても、塊成化物の還元反応が終了していると考えられるため、マイクロ波照射の還元反応への寄与が期待できないということが推測される。
図6は、上記の塊成化物に対する示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)結果を示したものであり、図6に示した熱量は、900℃付近の吸熱ピークの値を−1に正規化して表示している。
DSC測定結果を示した図6から明らかなように、DSCの測定結果では、650℃近傍から1150℃近傍の範囲に、大きな吸熱反応ピークが認められる。このピーク吸熱反応熱は、主に、Fe、Fe、FeO等といった塊成化物原料中の酸化鉄成分が還元されていく一連の反応に伴う吸熱エネルギーを示していると考えられる。
従って、上記実験結果において、600℃〜1150℃の温度条件下でマイクロ波を照射することで金属化促進効果が得られたのは、酸化鉄の還元に使用されていると考えられるDSCの吸熱反応のエネルギーを、電気炉からの原料表面の輻射加熱及び表面から原料内部への熱伝導によるエネルギー供給以外に、マイクロ波の照射によって供給することができたためと考えられる。
ここで、上記600℃〜1150℃の温度条件下では、酸化鉄はその大部分がFe、あるいはFeOとして塊成化物中に存在していることが確認されている。また、単位質量当たりのFe、FeO、Fe粉末のマイクロ波による加熱のされやすさは、Fe>FeO>Fe粉末である。Feは、室温付近では誘電損失係数が小さくマイクロ波での加熱特性が悪いとされているが、200℃以上の高温状態ではマイクロ波の吸収特性が高い。また、FeOは、室温から高温の広い範囲にわたりマイクロ波の良い吸収体である。すなわち、輻射加熱によってマイクロ波の吸収が大きい高温状態となったFeが塊成化原料中に多く残存しているタイミングでマイクロ波を照射することで、マイクロ波が、塊成化原料中のFeや、FeO(更には、還元剤として混練されている、マイクロ波の良吸収体であるカーボン成分)などに効率良く吸収されると考えられる。従って、塊成化物が200℃以上の高温の状態でマイクロ波を照射することにより、Feが塊成化物中に多く残存している場合に効率的にマイクロ波が吸収されるというのが、本願発明が効果を生じる理由の1つであると言える。
以上説明したように、本発明は、マイクロ波の照射による塊成化物の金属化促進効率が高い条件下において塊成化物にマイクロ波を照射することで、塊成化物へのマイクロ波の吸収エネルギーを大きくすることができるだけでなく、塊成化物中で還元反応がさかんに進行している温度条件にあわせてマイクロ波を照射することで、塊成化物に吸収されたマイクロ波エネルギーを効率よく還元の促進に消費させることが可能となり、塊成化物原料の金属化を効率的に進行させることができる。すなわち、本発明の温度条件下にてマイクロ波を照射すれば、出力規模の比較的小さなマイクロ波装置でも、大きな金属化の促進効果を得ることが期待できる。
なお、塊成化物原料が600℃以下でも、Feが多く残存しているため塊成化物原料へのマイクロ波吸収効率は良いものの、DSC分析の結果から明らかなように温度が還元反応の開始する温度となっていないため、原料の昇温にエネルギーが消費され、還元の促進につながっていないと考えられる。
更に、実施例3においてマイクロ波の照射がある場合に、上層の塊成化物の金属化の促進効果Δη1(表4中のNo24の上層塊成化物の金属化率ηを基準とした場合の、マイクロ波を照射した場合の上層塊成化物の金属化率ηとの差分)に対し、下層の塊成化物の金属化促進効果Δη2(表4中のNo24の下層塊成化物の金属化率ηを基準とした場合の、マイクロ波を照射した場合の下層塊成化物の金属化率ηとの差分)が大きい理由は、以下のように考えられる。
下層に位置する塊成化物には加熱炉からの輻射熱が届きにくいため、下層の塊成化物の温度は上層に位置する塊成化物よりも低く、上層の塊成化物に対して金属化率が低くなる(表4中のNo.24)。すなわち、この状態においては、下層の塊成化物は、上層の塊成化物と比較して還元の途中状態にあり、塊成化物中にマイクロ波を吸収しやすいFeがや炭素分が多く残存しており、上層よりもマイクロ波の吸収効率が良く、より多くのマイクロ波のエネルギーを吸収するため、金属化の促進効果が大きいと考えられる。
また、本発明者らの試験によると、塊成化物の金属化は、金属化率20%程度から80%程度の範囲において、塊成化物原料の温度上昇により急激に進行する。すなわち、金属化率が20%から80%程度の状態の塊成化物においては、原料の温度1℃上昇あたりの金属化率の上昇割合が大きい。一方、金属化率が80%を超えると塊成化物の温度を上昇させても金属化の進行が緩やかになる。すなわち、金属化率80%超の塊成化物においては、原料温度上昇1℃あたりの金属化率の上昇割合が、金属化率80%未満の場合に比べて小さくなる。実施例3のNo.24条件では、上層の塊成化物の金属化率は80.2%であり温度上昇1℃あたりの金属化の上昇が小さくなる領域に到達している。一方、下層の塊成化物の金属化率は67.4%であり、温度上昇1℃あたりの金属化率の上昇率が大きな領域の状態である。そのため、実施例3のNo20〜No23では、マイクロ波が上方から照射され、塊成化物の温度がマイクロ波により上昇した際にも、下層の塊成化物の方が上層の塊成化物に比べて金属化が大きく進行した、と考えられる。
[得られた知見の還元鉄の製造方法への適用]
以上説明したように、バーナーや輻射熱等によって供給される熱エネルギーとマイクロ波によるエネルギーとを併用して塊成化物を加熱・還元する場合には、内部温度が600℃〜1150℃のどこかの状態の塊成化物(より好ましくは、少なくとも内部温度が900℃である状態の塊成化物)に対してマイクロ波を照射することが効果的であることが明らかとなった。このような内部温度にある塊成化物に対してマイクロ波を照射することで、マイクロ波のエネルギーは塊成化物中の酸化鉄の還元反応に有効に利用され、操業コストを抑えながら、より効率良く還元鉄を製造することが可能となる。
以上のような知見を、実際の還元鉄の製造方法に適用する場合には、例えば、以下のようなことを行えばよい。
まず、操業に用いられる固体還元炉6において実際の操業条件のもとで塊成化物の内部温度が600℃〜1150℃となる部分を特定する。また、実際の操業条件を模した実験炉を製造し、塊成化物の内部温度が600〜1150℃となるまでの時間(昇温に要する時間)を特定した上で、固体還元炉6において塊成化物の内部温度が600℃〜1150℃となる部分を特定してもよい。
その上で、塊成化物の内部温度が上記範囲となる領域全体に対してマイクロ波を照射するためのマイクロ波照射部材(例えば、各種のアンテナや導波管や同軸ケーブル等)を設置してマイクロ波照射可能領域とし、このマイクロ波照射可能領域の少なくとも一部において、通過する塊成化物に対してマイクロ波を照射すればよい。
また、塊成化物の内部温度が上記範囲となる領域の少なくとも一部に対して上記のマイクロ波照射部材を設置してマイクロ波照射領域とし、このマイクロ波照射領域において、通過する塊成化物に対してマイクロ波を照射してもよい。
また、固体還元炉6の炉床進行方向全域にわたってマイクロ波照射部材を設置した上で、塊成化物の内部温度を各種センサ等によって測定し、得られた測定結果をフィードバックすることで、マイクロ波の照射に利用するマイクロ波照射部材の位置を可変制御してもよい。
なお、以上のようなマイクロ波の照射方法はあくまでも一例であって、固体還元炉内において、少なくとも、その内部温度が600℃〜1150℃のどこかの状態にある塊成化物に対してマイクロ波を照射する方法については、特に限定されるわけではない。
以上説明したように、本実施形態に係る還元鉄の製造方法によれば、少なくとも、内部温度が600℃〜1150℃のどこかの状態にある塊成化物に対してマイクロ波を照射することで、照射されるマイクロ波のエネルギーを酸化鉄の還元反応に有効に利用させることができる。その結果、内部温度が600℃〜1150℃にある範囲のどこかという特定の部分でマイクロ波を照射するだけで効率良く塊成化物を加熱・還元することが可能となり、操業コストを抑えながら、効率良くマイクロ波を照射することが可能となる。その結果、マイクロ波の照射による塊成化物の金属化を更に促進することが可能となる。
以上、図4〜図6を参照しながら、本実施形態に係る還元鉄の製造方法について、詳細に説明した。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、鉄鉱石や製鉄ダスト等の酸化鉄粉と、炭材等の還元材を混合した塊成化物を加熱して、固体状金属鉄を得る固体還元の機能のみを有する固体還元炉のみならず、固体還元の機能と、金属鉄とスラグとの分離の機能と、を併せ持つ炉についても、本発明の技術的範囲に属するものである。
100 マイクロ波照射装置
101 マイクロ波発振機
103 サーキュレータ
105 アイソレータ
107 自動整合器
109 マイクロ波照射部材(導波管)

Claims (4)

  1. 固体還元炉に設けられたバーナー及び当該固体還元炉の炉壁からの輻射熱を熱源として、酸化鉄原料と還元材とを混合して成形した塊成化物を加熱することで還元鉄を製造する還元鉄の製造方法において、
    前記熱源として、前記塊成化物に対して照射されるマイクロ波を更に利用し、
    前記固体還元炉中において、前記塊成化物の内部温度が600℃〜1150℃の温度範囲にあるときに、前記塊成化物に対して前記マイクロ波の照射を開始する
    ことを特徴とする、還元鉄の製造方法。
  2. 記塊成化物の内部温度が900℃〜1000℃の温度範囲であるときに、前記塊成化物に対して前記マイクロ波の照射を開始する
    ことを特徴とする、請求項1に記載の還元鉄の製造方法。
  3. 前記固体還元炉における、前記塊成化物の内部温度が前記温度範囲である領域全体に対して、前記マイクロ波を照射するためのマイクロ波照射部材を設置してマイクロ波照射可能領域とし、
    前記塊成化物に対して、前記マイクロ波照射可能領域の少なくとも一部の領域において前記マイクロ波を照射する
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の還元鉄の製造方法。
  4. 前記固体還元炉における、前記塊成化物の内部温度が前記温度範囲である領域の少なくとも一部の領域に対して、前記マイクロ波を照射するためのマイクロ波照射部材を設置してマイクロ波照射領域とし、
    前記塊成化物に対して、前記マイクロ波照射領域において前記マイクロ波を照射する
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の還元鉄の製造方法。
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