JP2012158790A - マイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄鉱石、ペレット等のヘマタイトを主成分とする酸化鉄含有物質を効率良く金属鉄レベルにまで還元し、製鉄所等における原料として利用することが可能な処理方法を提供する。
【解決手段】 ヘマタイト又はゲーサイトの少なくともいずれかを含有する製鉄原料6を、マイクロ波による加熱を除く加熱方法により150℃以上に予熱する第1工程7と、予熱された前記製鉄原料を還元性ガスの雰囲気下で周波数2.45GHzのマイクロ波を照射して加熱、還元する第2工程8を有することを特徴とするマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
【選択図】図7

Description

本発明は、マイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法に関する。
近年、電磁波の一種であるマイクロ波を照射することによる加熱現象(すなわち電子レンジの技術)を各種工業プロセスに応用しようという試みが各方面で検討されている。マイクロ波加熱は、従来の加熱プロセスと比較した場合、(1)マイクロ波を吸収する物質自身を内部から迅速に加熱することが可能である、(2)マイクロ波を吸収する物質のみを選択して加熱することが可能である、(3)通常の電気炉等による加熱では生じ得ない非熱的効果(マイクロ波による温度上昇以外によると考えられる効果)が発生する等、様々な特徴がある。
従来から検討されていた乾燥分野のみならず、近年では、鉄鉱石を始めとする各種金属酸化物の還元反応へマイクロ波加熱を適用することによって、従来よりも高効率な還元プロセスを確立しようとする検討が盛んに行われている。
特許文献1には、粉状の鉄酸化物原料に還元剤たる炭剤と炭酸塩を配合してマイクロ波を照射することによって鉄酸化物を還元して鉄粉を製造する方法が提案されている。また、特許文献2には、金属含有材料と還元剤を混合して充填したコンテナへマイクロ波照射し、加えて電気アーク等のエネルギーを付加することによって金属を製造する方法が提案されている。更に、非特許文献1にはマイクロ波吸収性に優れたマグネタイトや磁鉄鉱を原料としたマイクロ波加熱による銑鉄製造法が提案されている。
特開平6−279824号公報 特表2004−526864号公報 特願2010−048805
永田和宏、林幸「エレクトロヒート」(社)日本エレクトロヒートセンター、2007年、No.154、p13
ところで、マイクロ波による加熱を実施する場合、当然被加熱物質(物質そのものが内部から加熱される物質)はマイクロ波を吸収する物質でなくてはならない。そして、対象物がマイクロ波を照射することによってどの程度加熱できるかを示す式として下記の式(1)が定義されている。
P= (1/2)・σ・|E|2 + π・f・ε0・ε”・|E|2 + π・f・μ0・μ”・|H|2 …(1)
P:物質に吸収されるマイクロ波エネルギー[W/m]
E:電場[V/m]
H:磁場[A/m]
σ:導電率[S/m]
f:周波数[Hz]
ε0:真空の誘電率[F/m]
ε”:誘電損失
μ0:真空の透磁率[H/m]
μ”:磁気損失
この式(1)に基づけば、ある一定のマイクロ波電磁場において、導電率、誘電損失、磁気損失等の物性定数の大きな物質は、マイクロ波を良好に吸収してマイクロ波加熱し易い物質であると定義される。例えば、酸化鉄にはヘマタイト(酸化第二鉄/Fe)、マグネタイト(四三酸化鉄/Fe)、ウスタイト(酸化第一鉄/FeO)といった形態が存在するが、電子レンジで一般的に用いられている周波数(2.45GHz)のマイクロ波の使用を前提とした場合、ヘマタイトに関してはマイクロ波の吸収性が悪いため、それ単独ではマイクロ波による加熱を行うことが難しいことが知られている。
従って、製鉄業における主要原料である鉄鉱石の場合、非特許文献1に述べられている通りマグネタイトを主成分とする磁鉄鉱であれば何ら問題なくマイクロ波による加熱を行うことが可能であるが、埋蔵量が多く、現在の主流となっているヘマタイトあるいはヘマタイトと同様の3価鉄ベースの水酸化鉄(ゲーサイト/Fe・3HO)を主成分とする鉄鉱石(赤鉄鉱、褐鉄鉱)に関しては、基本的にはそれ単独ではマイクロ波による加熱を効果的に行うことはできない。また最近、製鉄所において発生する副産物(高炉ダスト、転炉ダスト、中和スラッジ等)を製鉄原料として再利用することも見受けられるが、これらの主要成分もヘマタイトあるいはゲーサイトであるため、やはりこれらの副産物についても単独ではマイクロ波によって効果的に加熱することはできない場合が多い。
そのため、特許文献1においては、ヘマタイト主体の原料を使用する場合には、マイクロ波の吸収性の高い物質(炭素あるいはマグネタイト等)を別途混合する必要があると述べられている。
ここで、酸化鉄を還元するためには、いずれにしても還元剤としての炭素を添加する必要があるのは当然であるが、特許文献1によれば、ヘマタイトを良好にマイクロ波加熱するためには、酸化鉄の還元のために必要な当量に対して2倍以上の余分な炭素を加える必要があるものと述べられており、還元剤に関わるコストを浪費する観点から問題があった。また、還元反応に何ら寄与しない余分な炭素を酸化鉄と同等以上の温度にまで昇温させることになるため、その分マイクロ波の出力を高める必要があり、結果としてマイクロ波の発生に必要な電力を多量に消費するという問題もあった。更に、還元剤としてCO、H等の還元ガスを用いようとする場合には、そもそも炭素を添加すること自体必要ないため、特許文献1で述べられた方法ではヘマタイトを主体とした原料を使用することは適切とはいえない。
また、特許文献2においては、マイクロ波加熱単独ではなく、誘導加熱、アーク加熱等の他の電気による加熱方式と組み合わせることによって、マイクロ波加熱に付随する欠点を補う必要があると述べられている。しかし、マイクロ波と他の電気による加熱方式を組み合わせたのでは、設備費が高額になるばかりではなく、効率の良い加熱方式であるマイクロ波におけるメリットを他の電気による加熱方式の効率の低さ(消費電力が大きい)で相殺してしまう恐れがあるため現実的ではない。
更に本発明者らは特許文献3において、同じマイクロ波領域の電磁波であっても、2.45GHzのマイクロ波よりも更に短波長側(高周波数側)のマイクロ波(20GHz〜30GHz)を用いることによって、赤鉄鉱等のヘマタイトやゲーサイトを主成分とする酸化鉄含有物質を、マイクロ波照射によって、より効率良く加熱処理して、酸化鉄含有物質を還元する方法を提案している。
この方法においては、20GHz〜30GHzの周波数を持つマイクロ波を発生させるための高価な発振機(ジャイロトロン)が必要になる。また、マイクロ波の浸透深さ(侵入深さ)は高周波側のマイクロ波を用いることによって浅くなるため、大きな周波数のマイクロ波を用いた場合、2.45GHzのマイクロ波と比較して、比較的大きな粒状、小塊状の被加熱物質全体を均一に加熱できなくなる恐れがある。
そこで、本発明者らは、電子レンジ等の用途で世の中に広く普及しており安価なマグネトロンによって発生する2.45GHzのマイクロ波照射によりヘマタイトやゲーサイトを主成分とする酸化鉄含有物質を効率良く加熱処理し、酸化鉄含有物質を還元する方法について、以下のような考えの下に検討を行った。
すなわち、後述の試験例で示すように、ヘマタイトおよびゲーサイトのマイクロ波吸収性を検討した結果、両者は常温ではマイクロ波の吸収が悪いが、温度の上昇に伴ってマイクロ波吸収性が改善されることを見出した。すなわち、現在汎用されている2.45GHzではほとんど温度が上昇しないといわれているヘマタイトやゲーサイトを主体とする酸化鉄含有物質に対しても、150℃から300℃までに存在する臨界的な温度にまでひとたび加熱を行いさえすれば、その後は極めて短時間で1000℃以上の高温にまで加熱できることを見出した。
本発明の目的は、上記知見に基づいて、ヘマタイト又はゲーサイトの少なくともいずれかを含有する製鉄原料を、2.45GHzのマイクロ波照射により効率良く加熱処理するマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法を提供することである。
上記目的を達成するための本発明の要旨は次の通りである。
(1)ヘマタイト又はゲーサイトの少なくともいずれかを含有する製鉄原料を、マイクロ波による加熱を除く加熱方法により150℃以上に予熱する第1工程と、予熱された前記製鉄原料を還元性ガスの雰囲気下で周波数2.45GHzのマイクロ波を照射して加熱、還元する第2工程を有することを特徴とするマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
(2)前記マイクロ波による加熱を除く加熱方法が、前記第2工程で排出される還元後ガスの顕熱により製鉄原料を加熱することを特徴とする、前記(1)に記載のマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
(3)前記第2工程で還元された還元鉄を原料還元ガスで冷却し成品還元鉄とする第3工程を有し、第3工程から排出される還元性ガスによって第2工程の還元ガス雰囲気を形成し、第2工程で生じた還元後ガスにより第1工程において製鉄原料の予熱を行うことを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載のマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
(4)前記第1工程から排出される冷却後の還元後ガスに含まれる水分を脱水する第4工程と、第4工程から排出されるリサイクルガスを前記原料還元ガスとし、さらに、第3工程後に新たに導入する水素又はメタンの少なくともいずれかを含有するガスとともに第2工程の還元性ガスとすることを特徴とする、前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
(5)前記原料還元ガスが水素又はメタンの少なくともいずれかを含有するガスであることを特徴とする、前記(1)乃至(4)のいずれかに記載のマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
鉄鉱石等のヘマタイト、ゲーサイトの少なくともいずれかを含有する酸化鉄含有物質を2.45GHzのマイクロ波を利用して効率良く金属鉄レベルにまで還元し、製鉄所等における原料として利用することが可能になる。
マイクロ波加熱処理装置を示す図である。 ヘマタイトのマイクロ波加熱特性を示した図である。 ゲーサイトのマイクロ波加熱特性を示した図である。 ローブリバー鉄鉱石のマイクロ波加熱特性を示した図である。 中和スラジのマイクロ波加熱特性を示した図である。 マグネタイトのマイクロ波加熱特性を示した図である。 実施例1で使用したフローならびに物質収支を示した図である。 実施例2で使用したフローならびに物質収支を示した図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
図1に、本発明に係るマイクロ波加熱処理装置を示す。ここで、本装置は、本発明に係る2.45GHzのマイクロ波の照射を可能としている。すなわち、アプリケーター1(反応器)内に設置された被加熱物質2に対して、マイクロ波発振機であるマグネトロン3から発生させた2.45GHzのマイクロ波(発振機の特性上、±500MHz程度の誤差は生じ得る。以下同様)を照射し、マイクロ波が特定の位置に集束することなく、ランダムかつ非定常にアプリケーター1内を飛び回っている状態(マルチモード)とし、被加熱物質2全体をなるべく均一に加熱できるようになっている。また、アプリケーター1内の雰囲気は、外部から雰囲気ガス4を添加することによって任意に調節することが可能であり、更に、被加熱物質2の温度に関しては、外径8mmの金属管シースで保護された熱電対5を粉体である試料中へ挿入し、この粉体内部の平均温度を測定できるようになっている。
本装置を用いて、各種のサンプル(被加熱物質)に2.45GHzのマイクロ波を照射してその加熱特性を確認する試験を行った。以下にこれら試験の結果を示す。
なお、以下において、鉄(Fe)還元率とは、ヘマタイトを金属鉄(M−Fe)まで還元する際に除去される理論酸素量に対して、実際にどの程度の割合の酸素が除去されたかを表す指標であり、マイクロ波照射後の酸化鉄含有物質の全てがヘマタイトの場合は還元率=0%、全てがマグネタイトの場合は還元率=11.1%、全てがウスタイト(FeO)の場合還元率=33.3%、全てが金属鉄の場合は還元率=100%となる。すなわち、還元率11.1%というのは全てのヘマタイトがマグネタイトまで還元された状態であり、還元率5%とはヘマタイトとマグネタイトが混合(ウスタイト以降の還元が起きていないと想定した場合)している状態である。
また、以下において、鉄の形態の定量分析(T−Fe(トータルFe=全鉄含有量)、M−Fe、FeO、Fe)に関しては、蛍光X線分析法、容量法(JIS−M8213)等の分析手法によって実施した。これら分析手法では、ヘマタイト(Fe、ゲーサイトFe・3HOも同様)の含有量を直接定量することができないため、T−FeからM−FeおよびFeOの含有量を差し引いた残りのFeがヘマタイト(Fe)であるものと推定した。
[試験例1]
最初に、被加熱物質としてヘマタイト試薬(特級/純度99.0%以上、50g)を用い、アプリケーター1内の雰囲気をアルゴンとして、マグネトロン3によって発生させた2.45GHzのマイクロ波を400Wの出力で照射した。図2にヘマタイトのマイクロ波加熱特性を示す。
270℃に達するまでの約10時間の間は、ヘマタイト試薬の温度上昇は極めて遅かったが、その後急激に昇温し、その後の約90分で1500℃を越える温度にまで加熱できることが判明した。
[試験例2]
次に、被加熱物質としてゲーサイト試薬(純度/95%以上、50g)を用い、アプリケーター1内の雰囲気をアルゴンとして、マグネトロン3によって発生させた2.45GHzのマイクロ波を800Wの出力で照射した。図3にゲーサイトのマイクロ波加熱特性を示す。
230℃に達するまでの約2時間の間は、ゲーサイト試薬の温度上昇は極めて遅かったが、その後急激に昇温し、その後の約20分で1000℃を越える温度にまで加熱できることが判明した。
[試験例3]
次に、被加熱物質として表1に示す組成のローブリバー鉱石(粒度/0.25mm以下、150g)を用い、アプリケーター1内の雰囲気をアルゴンとして、マグネトロン3によって発生させた2.45GHzのマイクロ波を400Wの出力で照射した。図4にローブリバー鉄鉱石のマイクロ波加熱特性を示す。220℃に達するまでの約1時間の間は、ローブリバー鉱石の温度上昇は極めて遅かったが、その後急激に昇温し、その後の約40分で1000℃を越える温度にまで加熱できることが判明した。
Figure 2012158790
[試験例4]
次に、被加熱物質として表2に示す組成の中和スラッジ(製鉄所副産物であって乾燥機によって乾燥した後のサンプル:平均粒径30μm、50g)を用い、アプリケーター1内の雰囲気をアルゴンとして、マグネトロン3によって発生させた2.45GHzのマイクロ波を200Wの出力で照射した。図5に中和スラッジのマイクロ波加熱特性を示す。
150℃に達するまでの約1時間40分の間は、スラッジの温度上昇は極めて遅かったが、その後急激に昇温し、その後の約90分で800℃を越える温度にまで加熱できることが判明した。
Figure 2012158790
[試験例5]
次に、被加熱物質としてマグネタイト試薬(純度/95%以上、50g)を用い、アプリケーター1内の雰囲気をアルゴンとして、マグネトロン3によって発生させた2.45GHzのマイクロ波を400Wの出力で照射した。図6にマグネタイトのマイクロ波加熱特性を示す。マイクロ波照射開始当初から、マグネタイト試薬は急激に昇温し、約10分で1000℃を越える温度にまで加熱された。
上記試験例において明らかであるように、ヘマタイトあるいはゲーサイトを主成分とするこれらの被加熱物質は、マグネタイトと比較してマイクロ波照射当初から急速に加熱することはできないが、2.45GHzのマイクロ波を全く吸収せずに加熱できないという訳ではなく、150℃〜300℃の間に存在するいわゆる変曲点となる温度までは極めて昇温速度が遅いものの、その温度以降は極めて急速にマイクロ波加熱の特徴である急速加熱を実現できることが判明した。
この変曲点温度が、ヘマタイトまたはゲーサイトの2.45GHzのマイクロ波の吸収特性が急激に増大する温度であるため、この温度にまで何らか別の加熱方法にて加熱した後に直ちに2.45GHzのマイクロ波を照射するようにすれば、例えヘマタイトまたはゲーサイト主体の酸化鉄含有物質であっても容易に急速加熱が可能となる。
なお、上記の試験例において、試薬のヘマタイトやゲーサイトの場合と比較して、ローブリバー鉱石や中和スラッジを使用した場合の方が変曲点温度に到達する時間が短時間であるが、これは、ローブリバー鉱石や中和スラッジ中に含有されるヘマタイトやゲーサイト以外の成分の中にはマイクロ波吸収性に優れたものが存在しており、その温度上昇の影響を受けているためである。
また、各試験例において変曲点温度が微妙に異なっているのは、(1)ヘマタイトやゲーサイト以外の成分のマイクロ波吸収性の温度変化の影響、(2)試料毎に粒子形状や嵩密度等の物理的性状が異なるため、粉体の層の中の挿入した熱電対では、正確な粒子温度を計測できないという計測上の誤差、に起因しているものと考えられる。
マイクロ波加熱を行う前段として、これら酸化鉄含有物質を変曲点温度にまで加熱する手段としては、電気による加熱(誘導加熱炉、抵抗加熱炉等)、ガスによる加熱(キルン、流動層、移動層(シャフト炉)等)等、どのような方式を用いても構わない。勿論、マイクロ波加熱炉において使用する還元ガスの排熱を活用することができればプロセス全体の効率向上のためには望ましい。
マイクロ波加熱炉で使用する還元ガスとしては、水素、一酸化炭素、メタン、コークス炉ガス(COG)、高炉ガス(BFG)、石炭ガス化ガス、メタン改質ガス、コークス炉ガス改質ガス、高炉ガス改質ガス等、何を使用しても構わない。これら還元ガスは、マイクロ波加熱炉(アプリケーター)内を流通させることによって酸化鉄含有物質と接触させる。なお、一般的に、ガス状の還元材を使用する場合の方が、固体状の炭素を還元材として用いる場合よりも低温かつ迅速に酸化鉄の還元を行うことが可能である。
また、メタンを含有する還元性ガスをマイクロ波加熱炉内へ導入した場合した場合、マイクロ波によって直接加熱されている酸化鉄含有物質が触媒となって下記の式(2)で表されるメタン分解反応が効率良く進行するため、別途メタンの改質器、部分酸化器等の水素への転換設備を用意することなく、メタンから水素を直接生成させることが可能となる。

CH → C + 2H … (2)

本発明において、製鉄原料とは、酸化鉄を主体とする原料を言う。酸化鉄の形態には、ヘマタイト、マグネタイト、ゲーサイトがある。実用的な製鉄原料には、ヘマタイト鉱石、ゲーサイト鉱石(具体的な銘柄としてたとえばローブリバー鉱石)、各種ダストやスラッジ類があるが、本発明が対象とする製鉄原料とは、ヘマタイトやゲーサイトを含む酸化鉄を含有するものであれば、何を用いても構わない。しかし、ヘマタイトあるいはゲーサイトの含有量が少ない酸化鉄含有物質に関しては、それ以外に含有される2.45GHzのマイクロ波吸収性に優れた物質(たとえばマグネタイト)の影響で、マイクロ波照射当初から比較的急速に加熱することが可能であるため、ヘマタイトあるいはゲーサイトとして30%以上含有する酸化鉄含有物質に適用することが望ましい。なお、ここで意味するところのヘマタイトあるいはゲーサイト含有量とは、前述の鉄形態の定量分析結果から定義される値である。
本発明の方法により酸化鉄含有物質をマイクロ波加熱処理して得られた処理物は、製鉄所原料として使用可能である。金属鉄(M−Fe)の含有割合が大きく、Feの還元率も大きな本発明の処理物に関しては、ブリケットに成型した後に高炉原料として用いることが望ましい。
また、ブリケットに成型せずに粉体のまま高炉の羽口から吹き込むことによって高炉原料として用いることも可能である。これら還元後の試料を原料として用いることによって、高炉での還元材(コークス、微粉炭等)の使用量を削減することが可能となる。また、M−Feがほとんど含有されず、ウスタイト又はマグネタイト程度までの還元しか生じていない試料に関しては、粉体のままの状態で焼結機原料として用いることが望ましい。これら還元後の本発明の処理物を原料として用いることによって、焼結機での燃料(粉コークス、無煙炭等)の使用量を削減することが可能となる。
(実施例1)
前記段落「0018」の(1)及び(2)に記載した発明を実施するに際して検討したフローならびに物質収支を図7に示す。図7に従って説明する。
酸化鉄含有物質としてヘマタイトを93質量%含有する鉄鉱石ペレットを使用した。なお、使用したペレットの組成は表3の通りであり、ペレットの平均粒径は10mmであった。
Figure 2012158790
最初に製鉄原料6としてペレット(1000kg)を第1工程7の移動層型予熱炉により予熱した。予熱用のガスとしては、第2工程8の移動層型マイクロ波加熱炉から排出された800℃の還元後ガス9を用いた。第1工程7の移動層型予熱炉において350℃に予熱された製鉄原料10(ペレット)は直ちに同じく第2工程8の移動層型マイクロ波加熱炉へ投入した。マイクロ波加熱炉内においては周囲に設置されたマイクロ波発振機(マグネトロン)11から周波数2.45GHzのマイクロ波を照射することによって予熱された製鉄原料10(ペレット)を効率良く急速に加熱し、マイクロ波加熱炉内の温度を800℃に維持した。
ここで使用する原料還元ガス15としては水素を用い、第3工程12の冷却器においてペレットと熱交換を行った後の410℃の還元性ガス13(700Nm)を第2工程8のマイクロ波加熱炉の下部から導入した。マイクロ波加熱炉において還元された還元鉄14(ペレット)は引き続き第3工程12の冷却器へ投入され、常温(25℃)の原料還元ガス15と熱交換することによって150℃にまで冷却された。 第2工程8の移動層型マイクロ波加熱炉において還元された成品還元鉄16(ペレット)中Feの還元率は90%であり、このペレットは高炉原料として使用することによって、高炉におけるコークス比を削減できた。
(実施例2)
前記段落「0018」の(3)に記載した発明を実施するに際して検討したフローならびに物質収支を図8に示す。図8に従って説明する。
製鉄原料6としてはヘマタイトを93質量%含有する鉄鉱石ペレットを使用した。なお、使用したペレットの組成は表4の通りであり、ペレットの平均粒径は10mmであった。
Figure 2012158790
最初に製鉄原料6(ペレット1000kg)を第1工程7の移動層型の予熱炉において予熱した。予熱用のガスとしては、第2工程8のマイクロ波加熱炉から排出された800℃の還元後ガス9を用いた。第1工程7の予熱炉において350℃に予熱された製鉄原料10(ペレット)は直ちに同じく第2工程8の移動層型のマイクロ波加熱炉へ投入した。
マイクロ波加熱炉内においては周囲に設置されたマイクロ波発振機(マグネトロン)11から周波数2.45GHzのマイクロ波を照射することによって予熱されたペレットを効率良く急速に加熱し、マイクロ波加熱炉内の温度を800℃に維持した。
予熱炉から排出された冷却後の還元後ガス17中の水分を第4工程18の凝縮器において除去した後のリサイクルガス19(384Nm)を第3工程12の冷却器において還元鉄14(ペレット)と熱交換を行い、第3工程12から排出されるガスに、更に、メタン20(177Nm)を添加したガスを還元ガスとして第2工程8のマイクロ波加熱炉の下部から導入した。
マイクロ波加熱炉内において、還元ガス中のメタンの大半が水素と炭素に分解したため、水素はペレットの還元剤として利用され、炭素はペレットに付着した状態で炉外へ排出された。マイクロ波加熱炉において還元された還元鉄14(ペレット)は付着した炭素と共に第3工程12の冷却器へ投入され、第4工程18の凝縮器で処理されたリサイクルガス19によって150℃にまで冷却された。
第2工程8のマイクロ波加熱炉において還元され、第3工程12の冷却器から排出された成品還元鉄16(ペレット)は、Feの還元率は90%であり、付着した炭素と共に高炉原料として使用することによって、高炉におけるコークス比を削減できた。
ヘマタイト又はゲーサイトの少なくともいずれかを含有する製鉄原料を2.45GHzのマイクロ波を利用して効率良く金属鉄レベルにまで還元し、製鉄所等における原料として利用することができる。
1…アプリケーター
2…被加熱物質
3…マグネトロン
4…雰囲気ガス
5…熱電対
6…製鉄原料
7…第1工程
8…第2工程
9…還元後ガス
10…予熱された製鉄原料
11…マイクロ波発振機(マグネトロン)
12…第3工程
13…還元性ガス
14…還元鉄
15…原料還元ガス
16…成品還元鉄
17…冷却後の還元後ガス
18…第4工程
19…リサイクルガス
20…メタン

Claims (5)

  1. ヘマタイト又はゲーサイトの少なくともいずれかを含有する製鉄原料を、マイクロ波による加熱を除く加熱方法により150℃以上に予熱する第1工程と、予熱された前記製鉄原料を還元性ガスの雰囲気下で周波数2.45GHzのマイクロ波を照射して加熱、還元する第2工程を有することを特徴とするマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
  2. 前記マイクロ波による加熱を除く加熱方法が、前記第2工程で排出される還元後ガスの顕熱により製鉄原料を加熱することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
  3. 前記第2工程で還元された還元鉄を原料還元ガスで冷却し成品還元鉄とする第3工程を有し、第3工程から排出される還元性ガスによって第2工程の還元ガス雰囲気を形成し、第2工程で生じた還元後ガスにより第1工程において製鉄原料の予熱を行うことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
  4. 前記第1工程から排出される冷却後の還元後ガスに含まれる水分を脱水する第4工程と、第4工程から排出されるリサイクルガスを前記原料還元ガスとし、さらに、第3工程後に新たに導入する水素又はメタンの少なくともいずれかを含有するガスとともに第2工程の還元性ガスとすることを特徴とする、請求項3に記載のマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
  5. 前記原料還元ガスが水素又はメタンの少なくともいずれかを含有するガスであることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のマイクロ波を利用した製鉄原料の還元方法。
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