以下に、本発明に係る運転支援装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る運転支援装置を備える車両の概略図である。実施形態に係る運転支援装置2を備える車両1は、内燃機関であるエンジン5が動力源として搭載され、エンジン5で発生する動力が変速装置6等の駆動装置を経由して車輪3に伝達されることにより、走行可能になっている。また、車両1には、車輪3を制動することにより走行中の車両1を制動する制動手段であるブレーキ装置が備えられており、ブレーキ装置を作動させる際における油圧を制御するブレーキ油圧制御装置10が設けられている。また、駆動装置には、駆動装置の出力軸の回転速度を検出することを介して車速を検出する車速検出手段である車速センサ21が設けられている。
また、車両1には、ドライバが運転操作をする際に用いるアクセルペダル15及びブレーキペダル16が備えられており、このうち、アクセルペダル15の近傍には、アクセルペダル15の操作量を検出するアクセルセンサ22が設けられている。また、ブレーキ油圧制御装置10には、ブレーキペダル16の操作時における油圧であるブレーキ圧を検出することによりブレーキペダル16の操作量を検出するブレーキ圧センサ23が設けられている。
さらに、車両1には、ドライバが操舵輪を操舵する際に用いるステアリングホイール17が備えられており、ステアリングホイール17は、電動パワーステアリング装置であるEPS(Electric Power Steering)装置12に接続されている。これにより、ステアリングホイール17は、EPS装置12を介して、操舵輪である前輪を操舵可能に設けられている。また、このように設けられるEPS装置12には、ステアリングホイール17の回転角度である舵角を検出する舵角検出手段である舵角センサ24が設けられている。
また、ステアリングホイール17の近傍には、ウィンカーランプ(図示省略)の点滅状態を切り替える操作を行うウィンカーレバー18が設けられている。このウィンカーレバー18に対する操作は、ウィンカーレバー18の根元付近に配設されるウィンカースイッチ25によって検出可能になっている。
また、車両1には、自車両1の周辺の環境情報を取得する環境情報取得手段として、カメラ31と、走行音センサ32と、レーダーセンサ33と、後側方センサ34と、が備えられている。このうち、カメラ31は、車両1の前方等の車両1の周囲を撮像することにより、車両1の周囲の画像情報を取得する撮像手段として設けられている。このカメラ31は、例えば、車内に配設されて、フロントウィンドウ越しに前方を撮影することにより、他の車両や、車両1が走行する道路の環境等を撮影することが可能になっている。また、カメラ31は、検知対象物からの光が届く範囲で検知対象物の検知が可能な、直接型センサになっている。
また、走行音センサ32は、車両1の前端付近に配設されており、車両1の周囲の音情報を検出し、音情報を取得する集音手段として設けられている。この走行音センサ32は、例えば、車両1の前側のバンパ等に複数が配設されており、複数の走行音センサ32によって音の方向も含めて周囲の音情報を検出することが可能になっている。これにより走行音センサ32は、車両1の周囲から伝達される音情報や、車両1から発せられた音の反響音に基づいて、車両1の周囲の遮蔽物の存在や、車両1の前方に位置する交差点で交差している道路における、死角領域を移動する接近車両等の移動体の存在及び接近方向を検知することが可能になっている。
また、レーダーセンサ33は、検出波を用いることにより、車両1の周囲の物体の3次元情報を取得する3次元情報取得手段として設けられている。このレーダーセンサ33は、車両1の前側のバンパの前面に配設されており、電磁波や赤外線、レーザー、超音波等の検出波を送信する送信部と、検出波の反射波を受信する受信部とを有している。このように構成されるレーダーセンサ33は、送信部から検出波を送信することにより、車両1の前端から車両1の前方や両側方に検出波を送信し、検知対象物で反射した検出波の反射波を受信部で受信することにより、検知対象物を検知することができる。即ち、レーダーセンサ33は、検出波が届く領域で検知対象物の検知が可能な、直接型センサになっている。
また、後側方センサ34は、車両1の後側バンパの後面の両側端付近、或いは、後側バンパの側面の後端付近に配設されており、レーダーセンサ33と同様に、電磁波や赤外線、レーザー、超音波等の検出波を送信する送信部と、検出波の反射波を受信する受信部とを有している。これにより、後側方センサ34は、車両1の後側方に位置する検知対象物を、検出波を用いて検知することができる。
また、車両1には、地球上における自車両1の位置を測定するGPS(Global Positioning System)36と、このGPS36での測定結果と、予め記憶されている地図情報とを重ね合わせることにより、地図上における自車両1の位置を検出することが可能なカーナビゲーションシステム37と、が搭載されている。さらに、車両1には、走行中に車両1に作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ38が備えられている。
図2は、図1に示す車両の車内の概略図である。図3は、図2のA−A矢視図である。図4は、図3のB部詳細図である。車内には、ダッシュボード45上に、所定の情報を音声や表示によってドライバに対して報知する報知手段である警報装置50が設置されており、詳しくは、ダッシュボード45上におけるフロントウィンドウ46の下端付近に配設されている。この警報装置50は、ドライバに対して視覚的に情報を報知する表示部51と、音によって情報を報知するスピーカ52とを有している。警報装置50は、これらのように表示部51やスピーカ52を備えることにより、音と光とを用いた報知による運転支援が可能になっている。
また、車内には、本実施形態に係る運転支援装置2の作動モードを切り替える作動モード切替スイッチ55が設けられている。運転支援装置2は、作動モードを、自動的に作動するオートモードと、ドライバが作動のONとOFFとを切り替えるマニュアルモードとに切り替え可能になっており、作動モード切替スイッチ55は、このオートモードとマニュアルモードとを切り替えるスイッチになっている。また、ステアリングホイール17には、作動モード切替スイッチ55をマニュアルモードに切り替えた際に、ONとOFFとを切り替えることができるステアリングスイッチ56が配設されている。さらに、車内には、ステアリングホイール17の近傍に、ドライバの顔を撮影することにより、ドライバの目の位置やドライバの視線の方向を検出するドライバカメラ40が配設されている。また、カーナビゲーションシステム37は、車内に配設されており、ドライバが視認することが可能になっている。
これらのエンジン5や変速装置6、ブレーキ油圧制御装置10、EPS装置12、車速センサ21、アクセルセンサ22、ブレーキ圧センサ23、舵角センサ24、ウィンカースイッチ25、カメラ31、走行音センサ32、レーダーセンサ33、後側方センサ34、GPS36、カーナビゲーションシステム37、ヨーレートセンサ38、ドライバカメラ40、警報装置50、作動モード切替スイッチ55、ステアリングスイッチ56は、車両1に搭載されると共に車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)に接続されている。
このECUとしては、車両1の走行制御を行う走行制御ECU70と、車両1の周囲の環境情報を認識して取得する環境情報認識ECU80と、現在の車両1の状態を示す情報を認識して取得する車両情報認識ECU90と、ドライバの状態を認識して取得するドライバ状態認識ECU100(図5参照)と、車両1の走行中にドライバの運転支援をする制御である運転支援制御を行う運転支援ECU110(図5参照)と、車両1の走行制御時における各種の判定処理を行う判定処理ECU120(図5参照)と、が設けられている。
図5は、図1に示す運転支援装置の要部構成図である。ECUに接続される各装置や機器類のうち、エンジン5や変速装置6、ブレーキ油圧制御装置10、EPS装置12等の車両1の走行時に作動させる装置は、走行制御ECU70に接続されている。また、カメラ31や走行音センサ32、レーダーセンサ33、後側方センサ34、GPS36、カーナビゲーションシステム37等の車両1の周囲の環境を認識する際に用いる機器は、環境情報認識ECU80に接続されている。また、車速センサ21やアクセルセンサ22、ブレーキ圧センサ23、舵角センサ24、ウィンカースイッチ25、ヨーレートセンサ38、作動モード切替スイッチ55、ステアリングスイッチ56等の車両1の現在の状態を認識する際に用いる機器は、車両情報認識ECU90に接続されている。また、ドライバカメラ40等のドライバの現在の状態を認識する際に用いる機器はドライバ状態認識ECU100に接続されている。また、警報装置50等の運転支援制御を行う際に用いる機器は、運転支援ECU110に接続されている。
また、これらの走行制御ECU70、環境情報認識ECU80、車両情報認識ECU90、ドライバ状態認識ECU100、運転支援ECU110は、全て判定処理ECU120に接続されており、情報や信号のやり取りが可能になっている。これにより、車両1の走行時には、判定処理ECU120で各種の判定を行いながら走行制御を行うことが可能になっている。なお、これらの走行制御ECU70、環境情報認識ECU80、車両情報認識ECU90、ドライバ状態認識ECU100、運転支援ECU110、判定処理ECU120のハード構成は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部等を備えた公知の構成であるため、説明は省略する。
これらのECUのうち、走行制御ECU70は、エンジン5の運転制御を行うエンジン制御部71と、ブレーキ油圧制御装置10を制御することにより制動力の制御を行うブレーキ制御部72と、EPS装置12を制御することにより操舵制御を行う操舵制御部73と、を有している。
また、環境情報認識ECU80は、カメラ31の制御を行うカメラ制御部81と、走行音センサ32の制御を行う走行音センサ制御部82と、レーダーセンサ33の制御を行うレーダー制御部83と、後側方センサ34の制御を行う後側方センサ制御部84と、GPS36とカーナビゲーションシステム37とを制御するナビゲーションシステム制御部85と、現在車両1が走行している道路に対して交差する交差道路を移動する他の車両等の移動体の情報を取得する移動体情報取得部86と、を有している。
また、車両情報認識ECU90は、車速センサ21での検出結果より車速を取得する車速取得部91と、ヨーレートセンサ38での検出結果より車両1の走行時に車両1に発生するヨーレートを取得するヨーレート取得部92と、作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56の状態に基づいて運転支援制御の動作状態を制御する動作状態制御部93と、アクセルセンサ22での検出結果よりアクセルペダル15の操作の状態を取得するアクセル開度取得部94と、ブレーキ圧センサ23での検出結果よりブレーキペダル16の操作の状態を取得するブレーキ操作取得部95と、舵角センサ24での検出結果よりステアリングホイール17の操舵の状態を取得する舵角取得部96と、ウィンカースイッチ25の状態に基づいてウィンカーレバー18の操作の状態を取得するウィンカー操作取得部97と、を有している。
また、ドライバ状態認識ECU100は、ドライバカメラ40での検出結果より取得されるドライバの動作に基づいて、ドライバの注意の方向や注意の範囲等の注意状態を推定する注意状態推定手段である注意状態推定部101を有している。
また、運転支援ECU110は、車両1を運転するドライバに対する運転支援として、交差点への車両1の進入手前から交差点を通過するまでの間におけるドライバに対する運転支援である予防安全支援を実行する制御手段である支援制御部111を有している。
また、判定処理ECU120は、環境情報認識ECU80で取得した車両1の周囲の環境情報に基づいて運転支援を行う状態にあるか否かの判定を行う環境判定手段である環境判定部121と、車両1が一時停止すべき箇所で一時停止したか否かを判定する一時停止判定手段である一時停止判定部122と、環境情報認識ECU80で取得した車両1の周辺情報に基づいて車両1の衝突危険度が高いか否かを判定する衝突危険度判定手段である衝突危険度判定部123と、車両情報認識ECU90で取得した車両1の情報、またはドライバ状態認識ECU100で取得したドライバの情報のうち、少なくとも一方に基づいて、ドライバが身構えているか否かを判定するドライバ状態判定手段であるドライバ状態判定部124と、環境判定部121、一時停止判定部122、衝突危険度判定部123、ドライバ状態判定部124での判定結果に基づいて運転支援の内容を決定する支援内容決定手段である支援内容決定部125と、を有している。
本実施形態に係る運転支援装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の通常の走行時は、ドライバがアクセルペダル15やブレーキペダル16を操作することにより、エンジン5やブレーキ油圧制御装置10等の各アクチュエータが作動し、車両1はドライバの運転操作に応じて走行する。例えば、走行制御ECU70が有するエンジン制御部71は、アクセルセンサ22での検出結果に基づいて車両情報認識ECU90が有するアクセル開度取得部94で取得したアクセル操作量に応じて、エンジン5を制御することにより、ドライバの要求に沿った駆動力を発生させる。
また、ブレーキペダル16を操作することにより、ブレーキ装置を作動させる際における油圧がブレーキ油圧制御装置10で発生し、この油圧によってブレーキ装置が作動し、制動力が発生する。このように、ブレーキペダル16の操作時にブレーキ油圧制御装置10で発生する油圧であるブレーキ油圧は、ブレーキ圧センサ23で検出し、車両情報認識ECU90が有するブレーキ操作取得部95で取得する。ブレーキ操作取得部95は、このブレーキ油圧を、ドライバのブレーキ操作量として取得する。
また、車両1の走行時には、車両1の各部に設けられるセンサ類によって車両1の走行状態が検出され、車両1の走行制御に用いられる。例えば、車速センサ21で検出した車速情報は、車両情報認識ECU90が有する車速取得部91で取得し、車速情報を用いて走行制御を行う際に使用される。また、ヨーレートセンサ38で検出したヨーレートは、車両情報認識ECU90が有するヨーレート取得部92で取得し、ヨーレートの情報を用いて走行制御を行う際に使用される。
また、本実施形態に係る運転支援装置2は、車両1の走行時にドライバに対して注意喚起を行うことにより運転支援を行うことが可能になっている。具体的には、自車両1が走行する道路に交差する道路を移動する他の車両等の移動体に対して、出会い頭に衝突することを防ぐために、通常の走行時よりも注意を払いながら走行する必要がある交差点に自車両1が進入する際に、運転支援を行うことが可能になっている。また、この運転支援では、ドライバに対して単に注意喚起を行うのみでなく、車両1が交差点を通過する際に、一時停止すべき箇所で確実に一時停止をすることを、ドライバに対して意識させる支援も行う。この運転支援としては、警報装置50を作動させることによる注意喚起や、EPS装置12を作動させることによる操作制御等によって行う。
図6は、交差点進入時の運転支援についての説明図である。運転支援装置2での運転支援について説明すると、車両1が、自車両1が走行中の道路である走行道路151を走行している際において、車両1の進行方向に、一時停止線154がある交差点153など注意が必要な交差点153が存在する場合に、運転支援を実行する。車両1の進行方向に、より注意が必要で、運転支援が必要な交差点153が存在するか否かの判断は、環境情報認識ECU80が有するナビゲーションシステム制御部85により、カーナビゲーションシステム37を用いて取得する自車両1の周囲の道路情報に基づいて、判定処理ECU120が有する環境判定部121で判定する。
つまり、カーナビゲーションシステム37の記憶部に記憶されている地図情報には、道路の交差点153に関する情報も含まれており、自車両1が走行している走行道路151から、自車両1の前方に位置する交差点153に進入する際に、一時停止が必要であるか否かの情報も含まれている。このため、環境判定部121は、ナビゲーションシステム制御部85で取得した、自車両1の前方に位置する交差点153の情報が、自車両1が走行している走行道路151から交差点153内に進入する際に一時停止が必要な交差点153であることを示している場合には、運転支援が必要な交差点153に自車両1は向っていると判定する。
運転支援装置2は、このような交差点153に進入すると環境判定部121で判定した場合において、作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56によって、運転支援を作動させる状態に切り替えられているときに、運転支援を実行する。この運転支援としては、例えば、運転支援ECU110が有する支援制御部111で警報装置50を作動させることにより、必要に応じてドライバに対する警報を実行する。
運転支援の実行の可否を切り替える作動モード切替スイッチ55とステアリングスイッチ56とについて説明すると、運転支援装置2による運転支援は、作動モード切替スイッチ55を切り替えることにより、交差点153への進入時に自動的に実行するか、ドライバの任意で実行するかを切り替えることが可能になっている。作動モード切替スイッチ55は、車両1が交差点153に進入する際に、自車両1の状態と周囲の環境とに応じて自動的に運転支援を実行するオートモードと、交差点153への進入時に運転支援を実行するか否かをドライバが選択することができるマニュアルモードとに切り替えることが可能になっている。
また、作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードの場合は、ステアリングホイール17に配設されるステアリングスイッチ56のONとOFFとを切り替えることにより、交差点153への進入時における運転支援のONとOFFとを切り替えることが可能になっている。これらの作動モード切替スイッチ55やステアリングスイッチ56の状態は、車両情報認識ECU90が有する動作状態制御部93で取得し、支援制御部111は、動作状態制御部93で取得したスイッチの状態に応じて、運転支援制御を行う。
つまり、動作状態制御部93は、作動モード切替スイッチ55がオートモードの場合、及び作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードで、ステアリングスイッチ56がONの場合に、支援制御部111に対して交差点153進入時の運転支援を実行させる。これに対し、動作状態制御部93は、作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードで、ステアリングスイッチ56がOFFの場合には、支援制御部111で運転支援を実行させないようにする。
このため、作動モード切替スイッチ55をオートモードに切り替えた場合には、運転支援装置2は、車両1の走行状態とドライバの運転状態とに基づいて、運転支援が必要な交差点153に車両1が進入すると判断する度に、運転支援制御を行う。
これに対し、作動モード切替スイッチ55をマニュアルモードに切り替えた場合には、運転支援装置2は、ステアリングスイッチ56がONの状態で、運転支援が必要であると判断された交差点153内に自車両1が進入する際に、運転支援制御を行う。また、作動モード切替スイッチ55をマニュアルモードに切り替え、ステアリングスイッチ56をOFFにした状態では、運転支援が必要であると判断された交差点153に車両1が進入する場合でも、運転支援装置2は運転支援制御を行わない。
次に、本実施形態に係る運転支援装置2で運転支援を行う場合における処理手順の概略について説明する。図7は、実施形態に係る運転支援装置によって運転支援を行う際におけるフロー図である。なお、以下の処理は、作動モード切替スイッチ55がオートモードの場合、または作動モード切替スイッチ55がマニュアルモードで、且つ、ステアリングスイッチ56がONの場合に、所定の時間ごとに呼び出されて実行する。
運転支援のフローが呼び出された場合には、まず、運転支援が必要な交差点153があるとの信号を検出したか否かを判定する(ステップST101)。この判定は、環境情報認識ECU80が有するナビゲーションシステム制御部85でカーナビゲーションシステム37を用いて取得した自車両1の周囲の道路情報に基づいて、判定処理ECU120が有する環境判定部121で行う。環境判定部121は、車両1が現在走行中の走行道路151における自車両1の前方に、一時停止が必要な交差点153が存在するか否かを、ナビゲーションシステム制御部85で取得した道路情報に基づいて判定する。
詳しくは、ナビゲーションシステム制御部85で取得することが可能な道路情報は、交差点153の手前に一時停止線154が設けられているか否か、交差道路152は優先道路であるか否か等の情報に基づく交差点153の分類が交差点153ごとに予め記憶されている。環境判定部121は、ナビゲーションシステム制御部85で取得した道路情報より、自車両1の前方に交差点153が存在するか否かを判定し、交差点153が存在する場合には、一時停止が必要な交差点であるか否かを、交差点153の分類より判定する。即ち、環境判定部121は、自車両1の前方に、一時停止が必要な交差点153が存在する場合は、運転支援が必要な交差点153があると判定し、自車両1の前方に、一時停止が必要な交差点153が存在しない場合は、運転支援が必要な交差点153はないと判定する。
また、運転支援が必要な交差点153があるとの信号を検出したか否かの判定は、単に運転支援が必要な交差点153があるか否かの判定のみでなく、このような交差点153の有無の情報を取得することができたか否かも含んで判定する。つまり、ナビゲーションシステム制御部85で自車両1の位置情報を適切に検出することが出来たか否か等の、ECU等の信頼度も含めて判定する。このため、ECU等の信頼度、即ち、検出結果の信頼度が低い場合は、検出結果に関わらず、運転支援が必要な交差点153があるとの信号を検出していないとの判定をする。
環境判定部121での判定により、運転支援が必要な交差点153があるとの信号を検出したと判定された場合(ステップST101、Yes判定)には、次に、一時停止をした信号を検出したか否かを判定する(ステップST102)。この判定は、車両情報認識ECU90で取得する車両1の情報等に基づいて判定処理ECU120が有する一時停止判定部122で行う。
図8は、一時停止したか否かの判定を行う際の説明図である。まず、一時停止したか否かの判定を行う際における手法の一例について説明すると、一時停止判定部122は、車速Vや交差点153からの距離L、時間tに基づいて判定を行う。このうち、交差点153からの距離Lは、ナビゲーションシステム制御部85で取得した道路情報や、カメラ31で撮影し、環境情報認識ECU80が有するカメラ制御部81で取得した画像情報より、一時停止判定部122で推定する。一時停止判定部122は、車両1の交差点153からの距離Lが所定の停止範囲Lm内における車速Vが所定の最低車速Vm以下の状態で、時間tが所定時間Tm以上経過した場合は、車両1は一時停止したと判定する。
なお、この判定に用いる停止範囲Lmは、車両1が一時停止すべき箇所を示す範囲として予め設定され、判定処理ECU120の記憶部に記憶されている。また、最低車速Vmは、車両1が一時停止を行ったと認めることができる車速V、またはすぐに止まれる車速Vとして予め設定され、判定処理ECU120の記憶部に記憶されている。また、所定時間Tmは、車速V以下の状態が継続することにより、車両1が一時停止を行ったと認めることができる時間tとして予め設定され、判定処理ECU120の記憶部に記憶されている。一時停止判定部122は、これらのように、交差点153の手前における車両1の走行状態に基づいて、車両1が一時停止すべき箇所で一時停止したか否かを判定する。
また、一時停止をした信号を検出したか否かの判定は、単に車両1が一時停止したか否かの判定のみでなく、一時停止をしたことの情報を取得することができたか否かも含んで判定する。つまり、車速Vを検出する車速センサ21で車速Vを適切に検出することが出来たか否か等の、各種センサ類の信頼度や、演算処理を行うECUの信頼度も含めて判定する。このため、例えばセンサでの検出時におけるS/N比より、ノイズが大きく、センサの信頼度が低い場合は、センサでの検出結果に関わらず、一時停止をした信号を検出していないとの判定をする。
一時停止判定部122での判定により、一時停止した信号を検出したと判定された場合(ステップST102、Yes判定)には、予防安全支援を開始する(ステップST103)。この予防安全支援は、運転支援ECU110が有する支援制御部111によって行う。予防安全支援としては、例えば、支援制御部111で警報装置50を制御し、警報装置50を作動させることにより、交差道路152を走行する交差車両162や自転車165等の移動体160に関する情報を、ドライバに報知する。
これらの移動体160の情報は、カメラ31で撮影した画像情報や、走行音センサ32で検出した音情報、レーダーセンサ33で検出した3次元情報に基づいて、環境情報認識ECU80が有する移動体情報取得部86で取得する。例えば、環境情報認識ECU80が有するカメラ制御部81でカメラ31を制御し、自車両1の周囲の画像情報をカメラ31で検出する。この画像情報に基づいて、自車両1の前方の交差点153付近で、交差道路152を走行する交差車両162や自転車165等の移動体160の情報を、移動体情報取得部86によって取得する。
また、音情報に基づいて移動体160の情報を取得する場合は、環境情報認識ECU80が有する走行音センサ制御部82で走行音センサ32を制御し、自車両1の周囲の音情報を走行音センサ32で検出する。この音情報に基づいて、自車両1の前方の交差点153付近で、交差道路152を走行する交差車両162の情報を、移動体情報取得部86で取得する。詳しくは、走行音センサ32で検出する音の大きさの変化や、複数の走行音センサ32で検出する音の時間差等に基づいて、自車両1の周囲の環境騒音と、交差車両162で発する音とを分離することにより、交差車両162の情報を取得する。
また、3次元情報に基づいて移動体160の情報を取得する場合は、環境情報認識ECU80が有するレーダー制御部83でレーダーセンサ33を制御し、自車両1の周囲の物体の3次元情報を検出する。この3次元情報に基づいて、交差道路152を走行する交差車両162や自転車165等の移動体160の情報を、移動体情報取得部86で取得する。
支援制御部111は、警報装置50を制御することにより、移動体情報取得部86で取得した移動体160の有無や移動体160の移動方向、自車両1と移動体160との距離等の移動体160に関する情報を、警報装置50を用いてドライバに報知する。詳しくは、移動体160に関する情報を、警報装置50の表示部51で表示したり、警報装置50のスピーカ52で音声や警報音を発したりすることによって、ドライバに報知する。このように、支援制御部111は、予防安全支援として、警報装置50を用いて移動体160の情報を報知することにより、衝突回避のための注意喚起を行う。
なお、このように車両1が一時停止したと一時停止判定部122で判定された場合に、移動体160に関する情報をドライバに報知する際には、予防安全支援を開始する旨を警報装置50によってドライバに報知するのが好ましい。
これらに対し、環境判定部121での判定により、運転支援が必要な交差点153があるとの信号を検出していないと判定された場合(ステップST101、No判定)や、一時停止判定部122での判定により、一時停止した信号を検出していないと判定された場合(ステップST102、No判定)には、接近車両はあるか否かを判定する(ステップST104)。この判定は、判定処理ECU120が有する環境判定部121で行う。環境判定部121は、環境情報認識ECU80の移動体情報取得部86で取得した移動体160の情報に基づいて、交差道路152には自車両1に接近する交差車両162である接近車両があるか否かを判定する。
環境判定部121での判定により、接近車両があると判定された場合(ステップST104、Yes判定)には、予防安全支援を開始する(ステップST103)。即ち、運転支援ECU110の支援制御部111で警報装置50を制御して警報装置50を作動させることにより、接近車両が存在する旨をドライバに報知する。例えば、センサの信頼度が低いことにより、一時停止した信号を検出していないと判定された場合において、接近車両が存在することを検知した場合には、通常のタイミングよりも速いタイミングで、接近車両の存在をドライバに報知する。
図9は、作動履歴と交差車両との距離とに対する運転支援の作動タイミングを示す説明図である。例えば、一時停止判定部122で、適切に信号を受信することができないことにより、一時停止判定部122の作動履歴201が、一時停止判定部122は作動していないことを示している場合には、交差車両162の接近をドライバに報知する際における交差車両162の距離の閾値を長くする。
つまり、交差車両162が自車両1に接近したことを警報装置50で報知する際には、自車両1に対する交差車両162の距離である交差車両距離204が、所定の閾値以下の場合に警報装置50を作動させる。このため、通常の走行時は、交差車両距離204が、通常時における閾値である通常時接近閾値Pjn以下になったら、警報装置50を作動させるため、警報装置50は、通常時に作動タイミングである通常時作動タイミング203で作動する。
これに対し、一時停止判定部122で適切に信号を受信することができない場合は、警報装置50を作動させる際における基準となる交差車両距離204の閾値として、通常時接近閾値Pjnよりも大きいロスト時接近閾値Pjlを用いる。これにより、交差車両162が自車両1に接近している場合における警報装置50は、通常時作動タイミング203よりも速い作動タイミングであるロスト時作動タイミング202で作動する。このため、警報装置50は、一時停止判定部122が適切に信号を受信することができるタイミングよりも速いタイミングで作動することができ、交差車両162が接近しているとの情報を、前だししてドライバに報知する。
これに対し、接近車両はないと判定された場合(ステップST104、No判定)には、衝突危険度が高いか否かを判定する(ステップST105)。この判定は、車両1の周辺情報に基づいて、判定処理ECU120が有する衝突危険度判定部123によって行う。この衝突危険度判定部123は、移動体情報取得部86で取得した移動体160の情報に基づいて、交差車両162等の距離が車両1に近いことにより、移動体160が自車両1に衝突する危険性が高いか否かを判定する。例えば、自車両1の前端部分が交差点153内に入り、交差車両162や自転車165等の移動体160が自車両1に接近していることを、車両1の前端部分に配設されるレーダーセンサ33によって検出した場合には、衝突危険度判定部123は、移動体160が自車両1に衝突する危険性が高いと判定する。
衝突危険度判定部123での判定により、衝突危険度は高くないと判定された場合(ステップST105、No判定)には、この処理手順から抜け出る。つまり、運転支援が必要な交差点153があるとの信号や一時停止した信号を検出することができず(ステップST101、ST102、共にNo判定)、接近車両はなく(ステップST104、No判定)、衝突危険度は高くないと判定された場合(ステップST105、No判定)には、予防安全支援は行わずに、この処理手順から抜け出る。
これに対し、衝突危険度判定部123での判定により、衝突危険度は高いと判定された場合(ステップST105、Yes判定)には、ドライバは身構えているか否かを判定する(ステップST106)。この判定は、ドライバ状態認識ECU100で取得したドライバの状態に基づいて、判定処理ECU120が有するドライバ状態判定部124で行う。ここでいう「ドライバは身構えている」状態とは、自車両1に衝突する危険性がある移動体160をドライバが注視している、または、衝突を回避する運転操作を行おうとしている、または、自車両1の走行制御に介入することによる自車両1の挙動の急変に対して、極力姿勢が乱れないようにドライバが即座に対応することが可能な状態をいう。このため、ドライバは身構えているか否かを判定する際には、例えば、ドライバカメラ40で撮影したドライバの視線の方向や、車両情報認識ECU90が有するブレーキ操作取得部95で取得したブレーキ操作の状態に基づいて、ドライバ状態認識ECU100が有する注意状態推定部101によって、ドライバの注意状態を推定する。
つまり、注意状態推定部101は、ドライバカメラ40で撮影したドライバの視線の方向に基づいて、接近車両を注視しているか否かを推定したり、ブレーキペダル16を軽く踏む等のブレーキ操作を開始しているか否かに基づいて、接近車両に対して注意しているか否かを推定したりする。ドライバ状態判定部124は、注意状態推定部101で推定したドライバの視線の方向が接近車両の方向であったり、ブレーキ操作に基づいて、接近車両に対して注意していることを推定できたりする場合には、ドライバは、接近車両に対して身構えていると判定する。
ドライバ状態判定部124での判定により、ドライバは身構えていると判定された場合(ステップST106、Yes判定)には、身構えフラグをONにする(ステップST107)。この身構えフラグは、接近車両に対してドライバが身構えているか否かを示すフラグとして予め設定され、運転支援ECU110の記憶部に記憶されている。ドライバは身構えているとドライバ状態判定部124によって判定される場合には、この身構えフラグを、運転支援ECU110の支援制御部111でONにする。
これに対し、ドライバ状態判定部124での判定により、ドライバは身構えていないと判定された場合(ステップST106、No判定)には、支援制御部111により、身構えフラグをOFFにする(ステップST108)。支援制御部111によって身構えフラグをONまたはOFFに切り替えたら、予防安全支援を開始する(ステップST103)。つまり、支援制御部111は、車両1が一時停止したと一時停止判定部122で判定されない場合であっても、車両1の衝突危険度が高いと衝突危険度判定部123によって判定された場合は、予防安全支援を開始する。
このように、車両1の衝突危険度が高いと衝突危険度判定部123によって判定された場合に予防安全支援を行う際には、支援制御部111は、予防安全支援の開始タイミングが、車両1が一時停止したと一時停止判定部122によって判定された場合における予防安全支援の開始タイミングよりも早くなるようにする。つまり、車両1の衝突危険度が高いと判定された場合には、警報装置50を早めに作動させることにより、接近車両が近付いていることのドライバに対する報知を、一時停止した場合における報知よりも前だしする。
図10は、ブレーキ踏力に対する運転支援の作動タイミングの説明図である。なお、車両1の衝突危険度が高いと衝突危険度判定部123によって判定された場合であっても、ドライバが身構えているとドライバ状態判定部124によって判定された場合には、支援制御部111は、報知の前だしは行わない。例えば、車両1の衝突危険度が高いと判定された場合でも、ブレーキ踏力210が、ドライバが身構えていると判断をすることができる所定の閾値である踏力閾値Fjである場合には、警報装置50を作動させる作動タイミングを早める制御は行わない。
具体的には、車両1の衝突危険度が高いと判定された場合には、警報装置50の作動タイミングを、通常時作動タイミング203よりも早めたタイミングである前だし作動タイミング211にして作動させるが、衝突危険度が高いと判定された場合でも、ブレーキ踏力210が踏力閾値Fj以上の場合は、通常時作動タイミング203で警報装置50を作動させる。なお、この踏力閾値Fjは、ドライバが身構えているか否かをブレーキ踏力に基づいて判定する際における判定値になっており、支援制御部111は、ブレーキ踏力が踏力閾値Fj以上の場合は、身構えフラグをONにする。
つまり、支援制御部111は、身構えフラグがONの場合には、支援制御部111は、予防安全支援の開始タイミングが、車両1が一時停止したと一時停止判定部122によって判定された場合における予防安全支援の開始タイミングよりも早くなるようにしないで、予防安全支援の開始制御を行う。換言すると、車両1の衝突危険度が高いと衝突危険度判定部123で判定された場合には、支援制御部111は、身構えフラグがOFFの場合は予防安全支援の開始タイミングを早め、身構えフラグがONの場合は予防安全支援の開始タイミングを早めずに、予防安全支援を開始する。
さらに、車両1の衝突危険度が高いと衝突危険度判定部123で判定された場合には、支援制御部111は、車両1の衝突危険度が高くなるに従って、予防安全支援の開始タイミングが早くなるように予防安全支援の開始制御を行う。即ち、支援制御部111は、移動体情報取得部86で取得した移動体160の情報に基づき、移動体160と自車両1との距離が近くなるに従って、または、移動体160が自車両1に近付く速度が速くなるに従って、警報装置50の作動タイミングが早くなるようにする。
これらのように、予防安全支援を開始したら、次に、移動体160の挙動の急変があるか否かを判定する(ステップST109)。この判定は、環境情報認識ECU80が有する移動体情報取得部86で取得した移動体160の情報に基づいて、判定処理ECU120が有する環境判定部121で行う。
図11は、交差車両の距離の変化に対する姿勢角の説明図である。例えば、交差車両162が急に加速をした場合には、移動体情報取得部86で取得した、自車両1に対する交差車両162の距離の変化の度合いが急変し、自車両1に接近する度合いが急激に大きくなる。このような情報を移動体情報取得部86で取得した場合、環境判定部121は、交差車両162の挙動の急変があったと判定する。
具体的には、自車両1に対する交差車両162の距離を、自車両1からの交差車両162の方向で判断する場合、即ち、角度によって判断する場合は、所定の判定時間Tjにおける相対角度215の変化量である角度変化量Δθに基づいて判定し、角度変化量デΔθが所定の閾値以上の場合は、挙動の急変があったと判定する。
環境判定部121での判定により、移動体160の挙動の急変があると判定された場合(ステップST109、Yes判定)には、支援制御を変更する(ステップST110)。この変更は、判定処理ECU120が有する支援内容決定部125によって行う。移動体160の挙動の急変があると判定された場合には、支援内容決定部125は、予防安全支援を、衝突回避のための車両制御支援にする、または衝突回避のための車両制御支援を追加するように変更する。例えば、支援内容決定部125は、自車両1の姿勢角を変更するように車両1の走行制御に対して介入し、EPS装置12を制御する。
図12は、交差車両の挙動の急変時の動作説明図である。つまり、EPS装置12を制御し、交差車両162の挙動の急変量に応じてEPS装置12に対する要求トルク216(図11参照)を大きくする。これにより、自車両1の姿勢角を変更し、自車両1の向きを、交差車両162の進行方向に近くなる方向に変更する。
このように、支援制御を変更した場合(ステップST110)、または、環境判定部121での判定により、移動体160の挙動の急変はないと判定された場合(ステップST109、No判定)には、交差点153を通過したか否かを判定する(ステップST111)。この判定は、判定処理ECU120が有する環境判定部121で行う。
図13は、交差点を通過したか否かの判断基準についての説明図である。交差点153を通過したか否かの判定は、ナビゲーションシステム制御部85等の環境情報認識ECU80で取得した自車両1と交差点153との位置関係に基づいて、自車両1が通過した交差点153と自車両1との距離である通過交差点距離220が、所定の判定距離Lj以上になったら、交差点153を通過したとの判定をする。
環境判定部121での判定により、交差点153は通過していないと判定した場合(ステップST111、No判定)には、ステップST109に戻り、予防安全支援を継続する。
これに対し、環境判定部121での判定により、交差点153は通過したと判定した場合(ステップST111、Yes判定)には、次の交差点153が近いか否かを判定する(ステップST112)。この判定も、判定処理ECU120が有する環境判定部121で行う。
図14は、交差点が連続する場合における説明図である。環境判定部121は、予防安全支援を行った交差点153を通過したら、ナビゲーションシステム制御部85等の環境情報認識ECU80で取得した自車両1の周囲の道路状況に基づき、自車両1の進行方向における近い位置に、他の交差点153が存在するか否かを判定する。即ち、自車両1の進行方向に位置する交差点153までの距離である未到達交差点距離225が、所定の距離よりも小さい場合は、環境判定部121は、次の交差点が近いと判定する。
環境判定部121での判定により、次の交差点153が近いと判定された場合(ステップST112、Yes判定)は、ステップST102に戻り、一時停止した信号を検出したか否かの判定から繰り返す。
これに対し、環境判定部121での判定により、次の交差点153は近くないと判定された場合(ステップST112、No判定)には、予防安全支援を終了する(ステップST113)。つまり、警報装置50を用いて移動体160に関する情報をドライバに報知する制御を終了する。車両1が一時停止したと一時停止判定部122で判定された場合には、運転支援ECU110の支援制御部111は、これらのように一時停止後から、車両1の進行方向に位置する交差点153を通過するまでの間、予防安全支援を実行する。
また、予防安全支援を終了し、且つ、環境判定部121での判定により交差点153を通過したと判定された場合は、支援制御部111でさらに警報装置50を制御することにより、予防安全支援を終了した旨を音声、または表示のうちの少なくともいずれか一方を含んでドライバに報知する。つまり、警報装置50を作動させることにより、予防安全支援を終了した旨を表示部51で表示したり、スピーカ52から音声を発したりすることにより、ドライバに対して報知する。
以上の運転支援装置2は、一時停止すべき箇所で車両1が一時停止したと判定された場合は予防安全支援を行うため、交差点153を通過する際における車両1のドライバに対して、リアルタイムに運転支援を行うことができ、適切な支援を行うことができる。一方、一時停止したと判定されない場合は予防安全支援を開始しないため、ドライバが車両1を運転する際に、運転支援に頼り過ぎることを抑制することができる。この結果、支援の過信を防ぎつつ運転支援を行うことができる。
また、一時停止した場合は予防安全支援を行い、一時停止しない場合は予防安全支援を開始しないため、ドライバの運転に対して、一時停止を行わせるように教育することができる。この結果、ドライバに対して、より安全運転を行わせることができる。
また、一時停止すべき箇所で車両1が一時停止したとの信号を検出できない場合でも、接近車両が存在する場合には予防安全支援を開始し、通常の作動タイミングよりも前だしして支援を実行するため、ドライバに、接近車両に対して身構えさせることができる。この結果、ドライバに対して、より適切に運転支援を行うことができる。
また、予防安全支援の開始時には、予防安全支援を開始する旨を警報装置50によってドライバに報知するため、ドライバに、より速やかに正しく一時停止できたことを認識させることができる。この結果、より確実に、支援の過信を防ぎつつ運転支援を行うことができる。
また、車両1が一時停止したと判定されない場合でも、車両1の衝突危険度が高いと衝突危険度判定部123で判定された場合は、予防安全支援を開始するため、車両1が交差点153に進入する際に、自車両1と交差車両162との接触等の出会い頭の接触を防ぐことができる。この結果、支援の過信を防ぎつつ、適切に運転支援を行うことができる。
また、車両1の衝突危険度が高いと判定された場合における予防安全支援の開始タイミングを、車両1が一時停止したと判定された場合における予防安全支援の開始タイミングよりも早くしているため、ドライバに対して、衝突回避のための操作を行わせる緊急性が高い状況の場合に、より早く運転支援を行うことができる。この結果、より適切に運転支援を行うことができる。
また、支援制御部111は、車両1の衝突危険度が高くなるに従って、予防安全支援の開始タイミングが早くなるように予防安全支援の開始制御を行うため、ドライバに対して、衝突回避のための操作を行わせる緊急度に応じて、より適切に運転支援を行うことができる。この結果、より適切に運転支援を行うことができる。
また、支援制御部111は、車両1の衝突危険度が高いと判定された場合であっても、ドライバが身構えていると判定された場合には、車両1が一時停止したと判定された場合における開始タイミングよりも早くすることなく予防安全支援の開始制御を行うため、必要以上に早いタイミングで予防安全支援を開始することを抑制することができる。これにより、ドライバが煩わしさを感じることなく、運転支援を行うことができ、この結果、より適切に運転支援を行うことができる。
また、予防安全支援は、衝突回避のための注意喚起、または衝突回避のための車両制御支援のうちの少なくともいずれか一方を含むため、ドライバの運転操作によって、または車両1の走行制御に介入することによって、自車両1と他の移動体160との衝突を回避することができる。この結果、より適切に運転支援を行うことができる。
また、予防安全支援を終了し、且つ、交差点153を通過したと判定された場合は、警報装置50により、予防安全支援を終了した旨を音声、または表示のうちの少なくともいずれか一方を含んでドライバに報知するため、支援が終了したことを、ドライバが確実に認識することができる。これにより、支援が続くかもしれない、とのドライバの予期を解消し、ドライバに対して適切な運転判断を促すことができる。この結果、より適切に運転支援を行うことができる。
また、予防安全支援を行った交差点153を通過しても、次の交差点153が近いと判定された場合は、支援を終了しないため、支援の終了と開始とが短時間で繰り返されることに伴う煩わしさを抑えることができる。この結果、煩わしさを発生させることなく、より適切に運転支援を行うことができる。
〔変形例〕
なお、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、予防安全支援を終了し、且つ、交差点153を通過したと判定された場合に、予防安全支援の終了を報知しているが、交差点153を通過したか否かに関わらず、予防安全支援を終了した場合は、ドライバに報知してもよい。例えば、車両1の前端部分が交差点153内に進入し、自車両1と他の移動体160とが接触する危険性がないことを、レーダーセンサ33での検出結果によって判断することができた場合は、交差点153を通過していなくても、その時点で予防安全支援を終了し、ドライバに報知してもよい。予防安全支援を終了した際に、その旨を適切にドライバに報知することができれば、そのタイミングは問わない。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、自車両1と他の移動体160との接触を避けるための走行制御介入の一例として、EPS装置12を制御して姿勢角を変更することについて説明しているが、走行制御への介入は、EPS装置12の制御以外により行ってもよい。例えば、ブレーキ油圧制御装置10を制御して減速制御を行なうことにより、走行制御への介入を行い、自車両1と他の移動体160との接触を避けるようにしてもよい。衝突を回避するために行う車両1の走行制御への介入は、早急に作動させることができ、より確実に衝突を回避させるものであれば、その種類は問わない。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、衝突危険度が高いと判定された場合(ステップST105、Yes判定)に、ドライバは身構えているか否かを判定(ステップST106)しているが、接近車両があると判定された場合(ステップST104、Yes判定)も、ドライバは身構えているか否かを判定してもよい。接近車両があると判定された場合には、この接近車両との衝突を避けるために、必要に応じて車両1の走行制御に対して介入を行うが、ドライバが身構えているか否かを判定し、身構えていない場合は、警報装置50での報知を前だしすることにより、走行制御への介入によって自車両1の挙動が急変することに対する身構えを取らせることができる。この結果、より安全に運転支援を行うことができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、衝突危険度が高い場合は、ドライバが身構えているか否かを判断するのみであるが、ドライバに対して、強制的に身構えさせてもよい。例えば、衝突危険度が高い場合には、シートベルトを巻き上げたり、シートバックを起こしたり、警報装置50の表示部51に「ブレーキ」と表示して足をブレーキペダル16で踏ん張らせるようにしてもよい。これにより、走行制御への介入によって自車両1の挙動が急変する場合でも、ドライバに対して衝撃に適した姿勢等の構えを取らせることができ、ドライバに付与される衝撃を低減することができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、次の交差点153が近い場合には、単に予防安全支援を終了させないだけだが、交差点153が連続する場合には、交差点153が連続する旨をドライバに報知してもよい。これにより、ドライバが予防安全支援の状態をより適切に認識することができ、より確実に支援の煩わしさを低減することができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、運転支援が必要な交差点153の有無の判定は、カーナビゲーションシステム37を用いて取得した自車両1の周囲の道路情報に基づいて行っているが、この判定は、カーナビゲーションシステム37以外を用いて行ってもよい。例えば、車両1が走行した道路の状態を記憶するドライブレコーダを車両1に搭載し、このドライブレコーダに、運転支援が必要な交差点153を記憶させ、ドライブレコーダで記憶した情報に基づいて、運転支援を行ってもよい。運転支援を行うか否かの判断の基準になる情報は、この判断を適切に行うことができるものであれば、カーナビゲーションシステム37以外を用いて取得してもよい。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、警報装置50は、移動体160に関する情報をドライバに報知しているが、衝突危険度に応じて、報知のレベルを変化させてもよい。即ち、衝突危険度に応じて、ドライバの視覚や聴覚に対する刺激強度の度合いによって変化するように、報知の形態を変化させてもよい。
例えば、警報装置50の表示部51で所定の光を発光させることにより、移動体160に関する情報をドライバに報知する場合には、衝突危険度に応じて発光時における光量や色を変化させたり、点滅させたりすることにより刺激強度を変化させ、衝突危険度に応じて報知のレベルを変化させる。より詳細には、報知のレベルを高くする場合には、例えば、発光部分を点滅させる、発光時における光量を大きくする、輝度を明るくする、色を赤など目立つ色にすることにより、ドライバの視覚に対する刺激強度を強くする。これに対し、報知のレベルを低くする場合には、発光部分を点灯させる、発光時における光量を小さくする、輝度を低くする、色を淡い色にすることにより、ドライバの視覚に対する刺激強度を弱くする。
また、警報装置50のスピーカ52から警報音を発生させることにより、移動体160に関する情報をドライバに報知する場合には、衝突危険度に応じて、スピーカ52から発生する警報音の音量や周波数を変化させることにより、報知のレベルを変化させる。より詳細には、報知のレベルを高くする場合には、例えば、警報音を継続的に鳴らす、警報音の音量を大きくする、音を高くすることにより、ドライバの聴覚に対する刺激強度を強くする。これに対し、報知のレベルを低くする場合には、警報音を一回だけ鳴らす、警報音の音量を小さくする、音を低くすることにより、ドライバの聴覚に対する刺激強度を弱くする。これらのように、衝突危険度に応じて報知のレベルを変化させることにより、ドライバに対して、予防安全支援を行うことができる。
また、上述した実施形態に係る運転支援装置2では、作動モード切替スイッチ55とステアリングスイッチ56とを設けているが、これらのスイッチは、いずれか一方のみでもよく、または、両方共設けなくてもよい。スイッチの設置状態に関わらず、運転支援を許可する状態の場合に、上述した処理を行うことにより、適切な運転支援を実行することができる。
また、運転支援装置2は、上述した実施形態、及び変形例で用いられている構成や制御等を適宜組み合わせてもよく、または、上述した構成や制御以外を用いてもよい。運転支援装置2の構成や制御方法に関わらず、一時停止を行ったか否かに応じて運転支援を実行するか否かを切り替えることにより、支援の過信を防ぎつつ運転支援を行うことができる。