原稿を読み取る装置として、スキャナ装置といった画像読取装置が使用されている。この画像読取装置は、原稿に光を照射し、その原稿を透過またはその原稿から反射される光を光電変換し、得られた電気信号としてのアナログデータをA/D(アナログ/デジタル)変換回路によりデジタルデータへ変換し、そのデジタルデータを原稿の画像データとして出力する。一般に、この画像読取装置では、イメージセンサと呼ばれる主走査方向に複数の光電変換素子を一定間隔で1列に配列してなる光電変換素子アレイが用いられ、このイメージセンサを原稿の副走査方向へ移動させるか、原稿を副走査方向へ搬送させることにより、原稿を読み取り、画像データを出力することができるようにされている。
このような複数の光電変換素子を1列に配列してなるイメージセンサでは、個々の光電変換素子で個体感度差が生じる。また、光源においても、光源ごとに個体差があり、温度依存性や経時変化が異なることから、照度にばらつきを生じる。これでは、一定品質の画像読み取りを行うことはできない。
そこで、これらのばらつきや感度差等を吸収して最も効率良く、大きなダイナミックレンジで光電変換素子の出力をA/D変換するため、基準白板を読み取って出力されたデジタルデータである出力値を、所定の目標値に合わせるべく、AFE(Analog Front End)内部のゲイン調整や光量調整を行うことにより白レベル調整を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この技術において、白レベル調整は、A/D変換回路がオーバーフローしない範囲、すなわちA/D変換後のデジタルデータの出力が飽和状態にならないように極力ダイナミックレンジを広く使用し、分解能を高めることが目的とされている。ここで、画像読取装置において白レベル調整を行う方法について簡単に説明する。
白レベル調整は、読み取り対象の原稿を読み取る前に行われる。画像読取装置は、電源が投入されると、光源を点灯させ、基準白板の下部にキャリッジを移動させて基準白板を読み取り、出力値を得る。出力値は、256階調における0〜255の180といった値である。イメージセンサにより主走査方向の全画素についてその出力値を得、得られた出力値の中から最も大きい出力値であるピーク値を検出し、そのピーク値を使用してA/D変換回路前段の増幅器のゲイン(増幅度)を調整したり、光源の光量の調整を行っている。
図1は、主走査方向の画素位置と出力値との関係を例示した図で、この図1を参照して、画像読取装置が行う光源の光量調整による白レベル調整について具体的に説明する。まず、光源の光量を所定の値に設定して光を照射させ、基準白板を読み取る。この読み取りは、主走査方向の全有効画素につき行い、得られた出力値から最も大きい出力値であるピーク値を検出する。図1では、主走査方向に並ぶ画素のうち、中央にある画素の出力値が最も大きい出力値であるから、この出力値をピーク値として検出している。
次に、検出したピーク値が所定の目標値になるようにするための光量調整値を決定する。以下、具体例を用いて説明する。最初に光量調整値を1とし、基準白板を読み取った際のピーク値が150で、調整目標値を200とし、光源を消灯して、光が入射しない状態にした暗時の出力値(黒レベル)が10であったとする。この場合、最初に設定した光量調整値に対し、何倍にすれば調整目標値と同じピーク値を得ることができるかを示す光量増幅率は、調整目標値と黒レベルの差と、ピーク値と黒レベルの差との比で表すことができ、(200−10)/(150−10)=1.36と求めることができる。このことから、調整目標値の200という値を得るためには、光量調整値を1とした場合の光量を1.36倍にすればよいことがわかる。このため、光量調整値を1.36に再設定して白レベル調整を終了する。
この調整目標値は、光源光量の変動等、想定し得る変動要因を考慮し、どのような状況下においても、基準白板を読み取り得られた出力値が、図1に示す最大の255を超えない目標値に定められるのが一般的である。なお、この出力値は、黒レベルも含まれるものである。
上記の方法では、黒レベルが一定の値で、黒レベルが変化しないものと仮定しているため、基準白板を読み取った際の主走査方向の全有効画素中のピーク値が所定の目標値になるようにするための光量増幅率を求めることは非常に容易である。
しかしながら、等倍光学系のCIS(Contact Image Sensor)では、主走査方向の画素位置によって黒レベルが異なってしまうため、縮小光学系のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサと同様の、上述したような方法を採用して、光量増幅率を正確に算出することはできない。
ここで、黒レベル調整について、従来から実施されている方法を説明する。この方法では、イメージセンサとして縮小光学系のCCDイメージセンサが用いられている。CCDイメージセンサは、1個のセンサチップで有効読取幅を確保可能な画素数を有していることから、光が入射しない状態におけるセンサチップ内の各画素に出力される黒レベルは、すべて同じ値となる。図2は、従来の画像読取装置において、黒レベルを調整するために用いられる回路構成を示した図である。
CCDイメージセンサ100は、駆動タイミング信号生成回路105により生成された駆動パルスに同期して画像信号をサンプルホールド回路101へ出力する。サンプルホールド回路101は、駆動タイミング信号生成回路105により生成された画像信号サンプルパルスによりサンプリングを行い、サンプリングした画像信号を保持する。そして、サンプルホールド回路101は、サンプリングした画像信号を連続したアナログデータに変換し、黒レベル補正回路102へ入力する。
黒レベル補正回路102は、CCDイメージセンサ100が出力した黒レベルのばらつきを補正し、補正されたアナログデータを増幅回路103に入力する。増幅回路103は、入力されたアナログデータをA/D変換の基準電圧レベルに増幅し、A/D変換回路104へ送り、A/D変換回路104が、8ビットのデジタルデータに変換する。なお、駆動タイミング信号生成回路105は、そのほか、黒レベル補正回路102やA/D変換回路104に必要とされる信号を生成し、これらの回路へ入力する。
黒オフセットレベル検出回路106は、A/D変換回路104からA/D変換後の出力値の入力を受け付け、オフセットレベルを主走査方向に並ぶ画素の1列ごとに調整する。すなわち、黒オフセットレベル検出回路106は、黒レベル補正回路102において一定の黒レベルになるように、入力された出力値と黒レベルの目標値との差分をとり、その差分を黒レベル補正回路102へ送る。
具体的には、黒オフセットレベル検出回路106は、CCDイメージセンサ100がもつ遮光画素(OPB画素)のA/D変換回路104から出力された出力値を、例えば、255階調(8ビット)において10となるように、オフセットレベルを主走査方向に並ぶ画素の1列ごとに調整する。この調整において、黒オフセットレベル検出回路106は、A/D変換回路104からの出力値が20であれば、調整目標値の10との差分10を黒レベル補正回路102へ送り、黒レベル補正回路102は、黒レベルを10ほど減じる補正を行う。このように、黒オフセットレベル検出回路106を介してフィードバックをかけることで、黒レベルを調整することができるため、黒レベルを常に一定の既知(固定)の値とすることができる。
図6は、本実施形態の画像形成装置の概略構成を示した図である。図6に示す画像形成装置は、画像読取装置としての機能を有する自動原稿搬送装置(ADF)200と、給紙部210と、画像形成部220とを含んで構成されている。
ADF200について簡単に説明すると、ADF200は、原稿を積載する原稿台、原稿台の両側に設けられる原稿ガイド、原稿を読み取り位置へ搬送する呼び出しコロ、給紙ベルト、その給紙ベルトにより回転する搬送コロおよび分離コロを備える。また、ADFは、読み取り位置を経て原稿を搬送するための搬送ローラ、原稿を排出するための排紙ローラ、原稿の読み取り位置への搬送タイミングを検知するレジストセンサを備える。
また、ADF200は、画像読取装置としての機能を提供するために画像読取部を備える。画像読取部は、原稿を載せる原稿台ガラス、原稿台ガラスを介して原稿へ光を照射する光源、原稿からの反射光を所定方向へ反射させるミラー、ミラーからの光を集束させるレンズ、レンズにより集束した光が入射されるCISといったイメージセンサを備えている。このイメージセンサは、画像読取手段として機能し、入射された光を電気信号(アナログデータ)へ光電変換し、A/D変換回路によりデジタル信号(デジタルデータ)へ変換し、画像処理後、画像処理されたデジタルデータを画像形成部220へ入力する。
また、画像読取部は、原稿台ガラスの所定位置に、光源に対向して反射率100%の白色の板から構成される基準白板を備えている。この基準白板は、基準反射率の校正(キャリブレーション)、すなわち後述する白レベル調整を行うために使用される。
給紙部210は、用紙サイズが異なる記録紙を収納する給紙カセット211、212と、給紙カセット211、212に収納された記録紙を画像形成部220の画像形成位置へ搬送する各種ローラからなる給紙手段213とを含んで構成されている。
画像形成部220は、ADF200内の画像読取部により読み取られた原稿の画像データに基づき、画像形成処理を実行する。画像形成部220は、露光装置221、感光体ドラム222、現像装置223、転写ベルト224、定着装置225を含んで構成される。露光装置221は、画像データを基にレーザ等を照射し、感光体ドラム222の表面に静電潜像を形成する。このため、感光体ドラム222は、予め耐電装置により電圧が印加される。感光体ドラム222の表面に形成された静電潜像は、現像装置223によりトナーが付着されて顕像化される。
現像装置223により感光体ドラム222の表面には、トナー像が形成され、トナー像は、感光体ドラム222が回転することにより転写ベルト224へ転写される。転写ベルト224は、複数のローラにより移動され、給紙部210により供給された記録紙にトナー像を転写する。トナー像が転写された記録紙は、定着装置225へ搬送され、定着装置225は、加熱によりトナーを溶融し、加圧により記録紙へトナーを定着させる。その後、記録紙は、排紙トレイへ搬送され、排紙される。
図7は、図6に示すADF200が備える画像読取部の回路構成を示した図である。画像読取部300は、LED(Light-Emitting Diode)アレイ、蛍光灯、冷陰極管等から構成される光源301を備えている。また、画像読取部300は、主走査方向(原稿の幅方向に対応する方向)に一定間隔で1列に配列する複数のセンサチップ302と、各センサチップ302に個別に接続された複数のアンプ回路303と、各アンプ回路303に個別に接続された複数のA/D変換回路304とを備えている。
画像読取部300は、光源301を消灯して複数のセンサチップ302で基準白板を読み取り、A/D変換回路304によりA/D変換された暗時の出力値である黒レベルを補正する黒レベル補正部、色ムラを補正するシェーディング補正部等を含み、各種画像処理を行う画像処理部305と、フレームメモリ306と、出力制御回路307と、I/F回路308とを備えている。
センサチップ302は、等倍密着イメージセンサと称される光電変換素子と集光レンズとを含んで構成される。ADF200の読み取り位置へ原稿が搬送されるのに先立ち、コントローラ310から光源301へ点灯信号が送られる。これに伴い、光源301は、点灯し、その光を図示しない原稿へ向けて照射する。原稿から反射した光は、上述したミラーに反射され、レンズで集束され、複数のセンサチップ302へ入射される。各センサチップ302は、入射された光を電気信号へ変換し、アナログ画像情報として読み取る。その際、各センサチップ302は、コントローラ310からのタイミング信号に同期して画像情報を読み取る。各センサチップ302により読み取られたアナログ画像情報は、アナログデータとして、それぞれに接続されるアンプ回路303へ送られ、増幅された後、A/D変換回路304でデジタルデータへ変換される。
デジタルデータは、画像処理部305へ入力され、黒レベル補正でオフセット成分を除去した後、シェーディング補正等が行われ、フレームメモリ306に一時記憶される。出力制御回路307は、コントローラ310からのタイミング信号に同期してフレームメモリ306に一時記憶したデジタルデータをI/F回路308へ出力する。I/F回路308は、本体制御部320へその出力されたデジタルデータを送る。
本体制御部320は、画像形成部220に実装され、そのデジタルデータをデジタル画像情報として受け取り、そのデジタル画像情報を基に、画像形成部220に対して画像形成処理を指示し、また、その画像形成処理の制御を行う。また、本体制御部320は、図示しないインタフェースを介してコントローラ310との間で各種情報の送受信を行う。例えば、本体制御部320は、図示しない操作パネルからの画像読み取り要求の入力を受け付け、読み取り開始信号をコントローラ310に送信する。そのほか、本体制御部320は、原稿給紙信号やレジスト停止信号等をコントローラ310に対して送信する。
コントローラ310は、各センサからの検知信号や、本体制御部320から読み取り開始信号等を受信する。そして、コントローラ310は、各モータを起動させ、各モータの作動を制御し、画像読取部300に対しては、光源301へ点灯信号を送り、センサチップ302や出力制御回路307へタイミング信号を送り、電源も供給する。
画像読取部300は、コントローラ310から点灯信号を受け付けて光源301を点灯し、原稿読み取りを実施するが、この読み取りには、光源301の光量を調整し、適切な光量の光を照射することが重要とされる。読み取って得られる画像の品質に影響を与えるからである。
光源301としてLEDを用いる場合の光源の光量調整について図8を参照して説明する。図8は、光源の点灯タイミングを示した図である。図8中、XLSYNCは、1ラインの同期信号でラインの先頭で数画素相当期間「L」となる信号である。LED_ONは、XLSYNC期間の立ち上がりに同期して、点灯期間「H」となる信号である。
光量調整は、LED_ON信号のアサート期間を調整することにより実現することができる。LED_ON信号は、コントローラ310内部の基準クロックを基に生成される信号で、アサート期間の調整は、例えば、コントローラ310内部に基準クロック数を設定するレジスタを設け、そのレジスタに設定されている基準クロック数をカウントして信号出力する構成を採用し、設定する基準クロック数を変えることにより実現することができる。
この光量調整は、画像形成装置の工場出荷時に、所定の目標値に一致する出力値が得られるような光量になるように光量調整値を設定することにより行われる。上記LEDの例で言えば、光量調整値として基準クロック数をレジスタに設定することにより行われる。実際には、光量調整は、基準白板を読み取り得られる出力値が目標値に一致するような光量になるように光量調整値を設定することにより行われることから、白レベル調整と呼ばれる。
そこで、画像読取部300において行われる白レベル調整について説明する。工場出荷時にのみ白レベル調整を行い、光源光量を決定した場合、光源光量の経時低下により、A/D変換回路304の有効階調数が小さくなってしまい、画像データのSN性能が悪化してしまう。そこで、電源ON時に毎回白レベル調整を行うことで、経時の光源光量の低下に伴う画質低下を防止することができる。
この白レベル調整を行うための画像読取部300の機能ブロック図を、図9に示す。図9では、白レベル調整を行うための構成として、白レベルデータ取得部330と、ピーク値検出部331と、ピーク位置検出部332と、黒レベルデータ取得部333と、黒レベル対応値検出部334と、光量調整値算出部335とを含んで構成される。画像読取部300は、画像処理部305において画像処理を行うことから、その画像処理を実行するためのソフトウェアを記憶するメモリ、そのメモリからそのソフトウェアを読み出し実行するプロセッサを備える。このため、上記白レベル調整を行うためのプログラムをメモリに記憶しておき、プロセッサがそのプログラムを読み出し実行することにより、当該プロセッサを上記各部として機能させることができる。また、上記各部の機能をコントローラ310や本体制御部320により実現することも可能である。
コントローラ310は、光源301へ点灯信号を送り、一定の光量、例えば光量Aとなるように設定された光量設定値に基づき光源301を点灯する。また、コントローラ310は、複数のセンサチップ302へタイミング信号を送り、複数のセンサチップ302が基準白板を読み取り、A/D変換回路304がデジタルデータを出力する。白レベルデータ取得部330は、A/D変換回路304から出力された主走査方向の全画素位置における出力値を取得する。白レベルデータ取得部330は、取得したそれら出力値をピーク値検出部331およびピーク位置検出部332へ送る。ピーク値検出部331は、出力値が最も大きいものをピーク値として検出し、そのピーク値を保持し、ピーク位置検出部332は、そのピーク値を示す画素の主走査方向の位置をピーク位置として検出し、そのピーク位置を保持する。
コントローラ310は、光源301に対して点灯を停止する指示を送り、光源301を消灯し、複数のセンサチップ302は、入射光が0の状態で基準白板を読み取り、アナログデータを出力する。A/D変換回路304は、そのアナログデータをデジタルデータに変換し、黒レベルデータ取得部333が、その変換されたデジタルデータ、すなわち主走査方向の全画素位置における出力値を取得する。黒レベルデータ取得部333は、取得したそれら出力値を黒レベル対応値検出部334へ送る。黒レベル対応値検出部334は、光源301を消灯して読み取り、得られた出力値の中から、上記ピーク位置にある出力値を黒レベル対応値として検出する。
光量調整値算出部335は、ピーク値検出部331で検出したピーク値と、黒レベル対応値検出部334で検出した黒レベル対応値と、予め設定された光量調整のための目標値とを用い、光量増幅率Gを算出する。ここで、光量増幅率Gとは、光量Aで基準白板を読み取ったときの主走査方向の全画素中のピーク値を、目標値にするような光量Bへの増幅率であり、B=G×Aで表される関係を有するものである。
具体的には、ピーク値から黒レベルを除いた、基準白板の読み取り時の出力値(白レベル、すなわち光信号成分)が光量に比例することから、光量増幅率Gは、上述した目標値と黒レベルの差と、ピーク値と黒レベルの差との比で表され、目標値をT、黒レベルをb(x)、ピーク値をa(x)とすると、次式で表すことができる。
目標値Tは、反射率が100%の原稿を飽和することなく読み取れるような値とすれば、いかなる反射率の原稿であっても、原稿読取値が飽和することがないので、忠実に画像データを出力することができる。
光量調整値算出部335は、目標値Tとするような光量Bを得るために、光量AがG倍となるように光源の光量調整値を設定する。LED光源であれば、光量が光源点灯期間に比例し、その光源点灯期間が基準クロック数により設定することができるため、光量Aのときの基準クロック数をG倍することにより、光量Bにする基準クロック数を求めることができる。このため、光量調整値算出部335は、このようにG倍して基準クロック数を求め、その基準クロック数をコントローラ310が有するレジスタに設定することで、光量Bを得るための光量調整を行うことができる。
図10は、画像読取装置が行う白レベル調整の流れを示したフローチャート図である。この白レベル調整は、装置電源をONにした時等に行うことができる。電源ON時に実行される場合、電源ONにされたことに応答して、ステップ1000から処理を開始し、ステップ1005で、前回設定された光量調整値に基づき、光源301を点灯する。上記の例で言えば、光量調整値は、光量Aとなるように設定された値である。
装置電源がONにされたことに応答して、コントローラ310は、レジスタに設定されている光量調整値を参照して点灯信号(LED_ON信号)を生成し、その点灯信号を光源301へ送る。光源301は、点灯信号を受け付け、点灯を開始する。
次に、ステップ1010で、複数のセンサチップ302により基準白板を読み取り、光電変換されて得られた各アナログデータを各A/D変換回路304へ送り、各A/D変換回路304が各デジタルデータへ変換し、白レベルデータ取得部330がすべてのデジタルデータを出力値として取得する。
ステップ1015では、白レベルデータ取得部330が取得した主走査方向の全画素の出力値から、ピーク値検出部331が最も大きい出力値であるピーク値を検出し、それを保持し、また、ピーク位置検出部332がそのピーク値を示す画素の主走査方向の位置をピーク位置として検出し、それを保持する。
その後、ステップ1020において、光源301を消灯し、ステップ1025において、複数のセンサチップ302により基準白板を読み取り、光電変換されて得られたアナログデータをA/D変換回路304へ送り、A/D変換回路304がデジタルデータへ変換する。この場合は、黒レベルデータ取得部333がそのデジタルデータを出力値として取得する。
ステップ1030では、黒レベル対応値検出部334が、ステップ1015においてピーク位置検出部332が保持する、光量Aとして基準白板を読み取った際に得られたピーク値を示す画素のピーク位置を参照し、そのピーク位置の出力値を黒レベル対応値として検出する。
ステップ1035では、光量調整値算出部335が、ステップ1015で検出したピーク値、ステップ1030で検出した黒レベル対応値、目標値を上記式1に代入し、光量調整するためのパラメータとして光量増幅率Gを算出する。
そして、ステップ1040で、光量調整値算出部335が、目標値となる光量Bを得るために、設定されている光量調整値をG倍して新たな光量調整値を求め、その新たな光量調整値に設定変更する。光源がLEDである場合は、基準クロック数を光量調整値として用いることができるため、光量Aとなるように設定されている基準クロック数をG倍して、光量Bとなる基準クロック数を求め、それをコントローラ310のレジスタに設定変更することにより、新たな光量調整値を設定することができる。
この設定変更が終了したところで、ステップ1045へ進み、白レベル調整を終了する。
これまで白レベル調整を行う構成およびその処理の流れについて詳細に説明してきたが、次に、その効果について説明する。図11(a)、(b)は、白レベル調整を行う前と後に基準白板を読み取って得られた出力値を示した図である。読み取りは、主走査方向の全画素について行うが、図11では、その中の4つを例示している。
図11(a)は、白レベル調整前に基準白板を読み取って得られた出力値を、その画素位置とともに示した図である。図11(a)は、棒グラフとされ、下側の塗り潰された部分が黒レベルで、上側の白色部分が白レベルで、最も高い出力値がピーク値とされている。また、ピーク値を示す画素の位置がピーク位置で、そのピーク位置において得られた光源消灯時の出力値が黒レベル対応値である。
例えば、ピーク値として100が検出され、ピーク位置における黒レベル対応値として30が検出されたものとする。目標値は、破線で示す200に設定されているものとする。この場合、上記式1にこれらを代入し、光量増幅率Gを算出すると、Gは約2.4という値が得られる。このため、設定されている光量調整値を2.4倍して新たな光量調整値を求め、その新たな光量調整値に設定変更することで、ピーク値が目標値となるような光量Bを得ることができる。
その光量Bにして基準白板を読み取って得られた出力値を、その画素位置とともに示した図が、図11(b)である。この図11(b)は、白レベル調整後の出力値を示した図である。白レベル調整を行い、ピーク値が目標値となるように光量調整を行っているため、得られた結果は、図11(b)に示すように、ピーク値が目標値に一致する200となっている。
この白レベル調整では、ピーク値を目標値に合わせるので、調整後に出力値がその目標値を超えることはなく、その結果、出力飽和を回避することができる。また、黒レベル対応値を除いた、白レベルのみをG倍して目標値に合わせているので、調整前後で黒レベルは変化せず、白レベルのみが増幅される結果、A/D変換回路304のダイナミックレンジを有効に活用することができる。
画像読み取るイメージセンサには、カラー画像を読み取るために使用される、赤(R)、緑(G)、青(B)といった3色をもつ3ラインセンサがある。この3ラインセンサは、各色のイメージセンサにより光電変換を行い、各色のイメージセンサに接続されるA/D変換回路304でデジタルデータへ変換して、各色のデジタルデータを取得するものである。
この3ラインセンサをイメージセンサとして用いる場合、図12に示すように、一定の光量にて白色光を照射し、基準白板を読み取ると、各色の出力値は不均一となることが知られている。また、個体ごとにその不均一性が異なることも知られている。このことから、RGB全てが出力飽和することなく、A/D変換回路304のダイナミックレンジを極力有効活用するためには、調整が必要である。
そこで、このような3ラインセンサを用いる場合、以下に説明する調整を行うことができる。上述した白レベル調整と同様に、光源を点灯させ、各色のイメージセンサにより基準白板を読み取り、主走査方向の全画素の出力値を各色につき取得する。そして、各色につき、その出力値の中から最も大きい出力値であるピーク値およびピーク位置を検出する。また、光源301を消灯して主走査方向の全画素の出力値を各色につき取得し、各色につき、その出力値の中からピーク位置における出力値を黒レベル対応値として検出する。その後、上記式1にピーク値、目標値、黒レベル対応値を代入し、光量増幅率Gを各色につき求める。
ここからが上述した白レベル調整とは異なる部分で、各色につき求めた光量増幅率Gの中で最も小さいものを選択する。この選択は、光量調整値算出部335により実行することができる。このように最も小さいものを選択する理由は、ピーク値を目標値にするために、設定されている光量調整値をG倍し、そのG倍して得られた新たな光量調整値を設定し直すことになるが、最も小さいもの以外の増幅率を採用すると、色によっては目標値を超えるものが出てきて、出力飽和が生じてしまうからである。
具体的には、反射率が高い原稿が読み取られた場合において、目標値を超えると、A/D変換回路304へのアナログデータの入力時点で飽和してしまい、反射率に忠実な出力を得ることができないという弊害を生じるからである。
最も小さい光量増幅率Gを選択した後の処理は、上述した白レベル調整と同様で、光量調整値をG倍し、そのG倍して得られた新たな光量調整値を設定変更し、白レベル調整を終了する。
通常、ピーク値を検出し、そのピーク値を目標値にするように光量を調整すれば、出力飽和を生じることはないと考えられる。しかしながら、センサチップの個体感度差や出力バッファの個体差等があることから、出力値が主走査方向の全画素に対して均一にならず、画素位置によって白レベルも、黒レベルも異なるため、そのピーク値を目標値にするように光量調整を行っても、出力飽和を生じる場合がある。
例えば、図13(a)では、白レベル調整前に基準白板を読み取り、主走査方向の画素位置m、nの出力値として100、110が得られ、画素位置nの出力値110がピーク値として検出されている。また、光源301を消灯して基準白板を読み取り、画素位置mの出力値として20、画素位置nの出力値として50が得られている。この結果、画素位置mの白レベルは、100−20=80であり、画素位置nの白レベルは、110−50=60となっている。
この例では、ピーク値110を目標値200にするために、上記式1を使用して光量増幅率Gが2.5と算出される。このため、光量調整値は、2.5倍された値に設定変更される。その結果を、図13(b)に示す。図13(b)では、ピーク値を示す画素の画素位置nの出力値は、この白レベル調整により目標値と同じ200となるが、画素位置mの出力値は220で、目標値を大きく超えている。これでは、出力飽和を生じる可能性がある。
これを防止するために、白レベル調整後にさらに基準白板を読み取って得られた出力値の中からピーク値を検出し、そのピーク値が目標値に一致するかどうかを判定する出力値判定部を設けることができる。なお、一度白レベル調整を行っているので、その調整後に検出されるピーク値は目標値に一致するか、上記のように目標値を超えるかのどちらかである。
この出力値判定部を備える画像読取装置が行う白レベル調整について、図14に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。この白レベル調整は、電源ON時等に行われる。ステップ1400からその処理を開始し、ステップ1405で、設定されている光量調整値に基づき、光源301を点灯する。例えば、光量調整値は、光量が光量Aとなるように設定されている値である。
次に、ステップ1410で、複数のセンサチップ302により基準白板を読み取り、光電変換されて得られたアナログデータをA/D変換回路304へ送り、A/D変換回路304がデジタルデータへ変換し、白レベルデータ取得部330がそのデジタルデータを出力値(白レベル)として取得する。
ステップ1415では、白レベルデータ取得部330が取得した主走査方向の全画素の出力値から、ピーク値検出部331が最も大きい出力値であるピーク値を検出し、それを保持し、また、ピーク位置検出部332がそのピーク値を示す画素の主走査方向の位置をピーク位置として検出し、それを保持する。
ピーク値およびピーク位置の検出が完了したところで、ステップ1420において、出力値判定部が、検出されたピーク値が目標値に一致するかどうかを判定する。ピーク値が目標値に一致すると判定された場合は、ステップ1450へ進み、白レベル調整を終了する。一方、一致しないと判定された場合は、ステップ1425へ進み、調整を行う。
ステップ1425では、光源301を消灯し、ステップ1430では、複数のチップセンサ302により基準白板を読み取り、光電変換されて得られたアナログデータをA/D変換回路304へ送り、A/D変換回路304がデジタルデータへ変換する。この場合は、黒レベルデータ取得部333がそのデジタルデータを出力値として取得する。
ステップ1435では、ステップ1415においてピーク位置検出部332が保持する、光量Aとして基準白板を読み取った際に得られたピーク値を示す画素のピーク位置を参照し、そのピーク位置の出力値を黒レベル対応値として検出する。
ステップ1440では、光量調整値算出部335が、ステップ1415で検出したピーク値、ステップ1435で検出した黒レベル対応値、目標値を上記式1に代入して、光量増幅率Gを算出する。
そして、ステップ1445で、光量調整値算出部335が、目標値となる光量Bを得るために、設定されている光量調整値をG倍して新たな光量調整値を求め、その新しい光量調整値に設定変更する。光源がLEDである場合は、クロック数を光量調整値として用いることができるため、光量Aとなるように設定されているクロック数をG倍して、光量Bとなるクロック数を求め、それをコントローラ310のレジスタに設定変更することにより、新しい光量調整値を設定することができる。
この設定が終了したところで、ステップ1405へ戻り、再び光源301を点灯して基準白板の読み取りを行う。その結果、ステップ1420で、ピーク値が目標値に一致すれば、白レベル調整を終了し、一致しなければ、再度調整が行われる。このようにして調整を繰り返すことで、目標値以下となるようにピーク値を合わせることができ、その結果、出力飽和を回避することが可能となる。
図9に示す白レベルデータ取得部330は、内部に平均化回路を備えることができ、画素ごと、またはセンサチップごとに複数ラインのデータの平均をとり、その平均値を使用してピーク値の検出等を行うことができる。イメージセンサで主走査方向の全画素、すなわち1ライン分を読み取った後、イメージセンサを1画素分だけ副走査方向へ移動させ、次のラインを読み取り、さらに1画素分だけ副走査方向へ移動させて、さらに次のラインを読み取るといったことを繰り返して、複数ラインを読み取ることができる。このようにして複数ラインを読み取った後、主走査方向の画素位置が同じ、副走査方向の複数画素につき読み取り得られた出力値を平均して平均値を算出し、各画素位置につき算出された平均値の中から最も大きい平均値をピーク値として検出することができる。
このように、複数ラインを読み取り、それを平均した値を用いることにより、各画素に有するランダムノイズ成分を除去し、より高精度にピーク値の検出を行うことができる。その結果、より精度の高い光量調整を実現することができる。
上記では白レベルデータ取得部330が平均化回路を備えていたが、黒レベルデータ取得部333も平均化回路を備えることができる。これにより、光源を消灯して読み取りを行う場合においても、複数ラインを読み取り、平均化した値を採用することができ、ランダムノイズ成分を除去した黒レベルを取得することができ、より高い精度の黒レベルデータを取得することができる。その結果、より精度の高い光量調整を実現することができる。
一般に用いられる白色LEDやキセノンランプといった光源は、経時劣化することが知られている。製品の出荷時に1度白レベル調整が行われるが、それ以降、白レベル調整を行わないと、経時劣化に伴い、A/D変換回路304のダイナミックレンジの活用範囲が狭くなっていき、徐々に画質が劣化していく。そこで、適宜白レベル調整を行い、画質の劣化を防止することができるが、その調整を行う時期を、システム電源投入時とすることができる。このように適宜白レベル調整を行うことで、いかなる光源光量の状態であっても、A/D変換回路304のダイナミックレンジを有効活用することができる状態に維持することができ、その結果、高品質な画像データの提供を維持することができる。
近年、環境保護や省エネルギー化の流れから、スキャナ装置やデジタル複合機の設計においても、エナジースターやZESM(Zero Energy Stand by Mode)等の省エネルギーを目標として提唱されている規格に適合させるための努力が続けられている。これらの規格は省エネルギーを目的とし、待機状態にあるとき、消費エネルギーに制限を設けたものである。待機状態は、主電源がONにされた後、使用されない状態が一定の期間存在する場合に、その期間の経過後、一部の電源供給を停止し、復帰指令を待つ状態である。
現在、デジタル複合機の待機時の省エネルギーモードでは、消費電力が大きい定着ヒータや操作パネル等を電源OFFにするか、または低電圧運転に切り替えている。これは、画像読取装置においても同様で、操作パネル等を電源OFFにするか、または低電力運転に切り替えている。
その一方で、待機状態にあるデジタル複合機を使用する場合は、電源をON状態に戻し、または低電力運転から通常運転状態に戻し、使用可能な状態(スタンバイ状態)になるまでユーザを待たせていた。この待ち時間は、ユーザにとって実際以上に長く感じられ、ストレスを与える結果につながっている。
これを解消するために、白レベル調整を行う時期を省エネルギーモードへ移行する直前に実施することができる。これにより、省エネルギーモードからの復帰時に白レベル調整を省略することができるので、ユーザの待ち時間を短縮することができ、ユーザに与えるストレスを軽減させることができる。なお、白レベル調整を行う時期としては、省エネルギーモードへ移行する前の、例えば、省エネルギーモードへ移行する設定された時間から白レベル調整を行う時間を差し引くことにより得られる期間を求め、画像読取装置が使用されない状態がその求めた期間に達した時期とすることができる。これは一例であるので、これに限定されるものではなく、省エネルギーモードへ移行する前であれば、使用されない状態が任意に設定された時間を経過した段階で実行することも可能である。
これまで本発明を、画像読取装置およびその画像読取装置が行う白レベル調整について上述した実施の形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
したがって、本発明では、この画像読取装置を備える画像形成装置や、白レベル調整を実施するための処理を実現するコンピュータ可読なプログラムを提供することもでき、当該プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD、SDカード等の記録媒体に格納し、記録媒体を提供することも可能である。また、このプログラムは、ネットワークに接続されたサーバ装置等に格納しておき、ダウンロードすることにより、汎用のスキャナ装置やデジタル複合機等を、白レベル調整を行う画像読取装置として機能させることも可能である。