JP5787433B2 - 電気絶縁部材とのろう付に供されるアルミニウム合金部材および電気絶縁部材 - Google Patents
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さらには、フラックスが電気絶縁部材に作用して素子冷却効率を下げてしまう場合がある。すなわち、前記電気絶縁部材が電気絶縁物を挟むようにして接合用のアルミニウム合金板や回路形成用のアルミニウム合金板が接着されている構造の場合、電気絶縁物とアルミニウム合金板との界面にフラックスが作用し、界面剥離を生じることがある。界面剥離が生じた箇所は、熱伝達効率が低下し、その結果、冷却・放熱器の素子冷却効率が低下する。
また、本発明の他の形態では、電気絶縁部材へのフラックス作用を殆どないものにするとともに、ろう付け接合精度を向上させることができるアルミニウム部材、および電気絶縁部材を提供することを目的とする。
前記ろう付に備えて表面にろう材とフラックスとを含むろう付用組成物が塗布されて前記電気絶縁部材の部分と前記アルミニウム部材とが接合される接合面内の接合面外周縁との距離が0.5mm以内になる外周輪郭縁を有する領域に未塗布部を除いて一様に塗膜を有しており、該ろう付用組成物における前記ろう材と前記フラックスの塗布質量比が、前記ろう材を1.0として、前記フラックスが1.6以上であり、
前記塗膜は、内側に、面方向内側から外周輪郭縁に亘って貫通する形状のみの前記未塗布部を設け、該未塗布部として、面方向中心部から外周輪郭縁に亘って貫通する形状の未塗布部を有することを特徴とする。
前記ろう付に備えて表面にろう材とフラックスとを含むろう付用組成物が塗布されて前記電気絶縁部材の部分と前記アルミニウム部材とが接合される接合面内の接合面外周縁との距離が0.5mm以内になる外周輪郭縁を有する領域に未塗布部を除いて一様に塗膜を有しており、該ろう付用組成物における前記ろう材と前記フラックスの塗布質量比が、前記ろう材を1.0として、前記フラックスが1.6以上であり、
前記塗膜は、内側に、面方向内側から外周輪郭縁に亘って貫通する形状のみの未塗布部を設け、該未塗布部として、面方向中心部から外周輪郭縁に亘って貫通する形状の未塗布部を有することを特徴とする。
ろう付を可能にするため、ろう付用組成物にはろう材とフラックスとを含んでいる。ただし、ろう材とフラックスの塗布質量比が、ろう材を1.0としてフラックスが1.6未満の場合、フラックスの作用量が不十分で、接合不良やろう材の未反応を生じる。したがって、フラックス塗布質量比は、ろう材を1.0として1.6以上に規定する。なお、同様の理由により、フラックス塗布質量比は、ろう材を1.0として2.7以上が望ましい。フラックス塗布質量比の上限については、本発明としては特に限定されるものではないが、上記フラックス塗布質量比が80を越えると、フラックスの作用が過度になり、電気絶縁部材に作用するおそれがある。したがって、上記フラックス塗布質量比は、80以下が望ましい。
アルミニウム部材および電気絶縁部材の一方または両方は、ろう付に備えて表面に前記ろう付用組成物が塗布されている。該塗布域は、表面全面に亘るものであってもよいが、表面の一部である接合面のみを対象にして塗布されているのが望ましい。これにより、電気絶縁部材へのフラックス作用が抑制され、電気絶縁部材の伝熱性能の低下を防止できる。また、ろうの溶解領域が限られるので全面液相による部材の移動が生じにくく、ろう付の際の接合位置の精度が向上する。なお、この場合、塗布域は、接合面全体に亘るものでもよく、また、接合面のうち選択された面のみに設けられるものであってもよい。なお、接合面のみを対象にしてろう付組成物が塗布される場合、ろう付をより確実に行うため、接合面の内側で、塗布域外周縁と接合面輪郭縁との間隔が0.5mm以内であることが望ましい。
アルミニウム部材または電気絶縁部材に塗布されたろう付用組成物の塗膜には、面方向内側から外周輪郭縁に亘って貫通する未塗布部を有するのが望ましい。該未塗布部は、塗膜中央部に至るのがさらに望ましい。未塗布部は、一つの塗膜に一つを有するものであってもよく、また複数有するものであってもよい。複数有する場合、互いに放射状に位置するようにしてもよい。塗膜に未塗布部を有することにより、接合熱処理過程で発生するアウトガスや接合熱処理前の溶接等による仮止め時に発生するアウトガスを、未塗布部を通して塗膜外側に逃がすことができる。上記した未塗布部を設けない場合、アウトガスにより接合界面にボイドが形成しやすくなり、ろう付接合率が低下する。また、仮止めにおいては、溶接不良の原因となる。
以下に、一参考形態を図1に基づいて説明する。
素子2などが接合される電気絶縁部材1は、両面にそれぞれ図示しないアルミニウム合金板が接着されており、素子が接合される面の裏面側にアルミニウム部材3が接合される。
アルミニウム部材3は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されており、その成分は本発明としては特に限定されるものではない。
アルミニウム部材3の表面には、前記電気絶縁部材1と部分的に接合される接合面4を有しており、該接合面4の内側に、接合面4の周縁と所定の距離を有してろう付用組成物が塗布されて塗膜5が形成されている。塗膜5の外周輪郭縁と接合面4の周縁との距離は0.5mm以内とされている。
接合面4は、他面側の素子2の位置に相応して設定されており、素子2の底面と同じか、これを囲む位置と大きさを有しているのが望ましい。
なお、ろう材とフラックスとは、ろう材質量を1.0とした場合にフラックス質量が1.6以上、望ましくは2.7以上となる質量比を有している。
ろう材としては、Si粉末やAl−Si合金粉末などを用いることができ、本発明としては特定のものに限定されない。
Si粉末を用いる場合には、平均粒径(D50:体積割合で小さい粒から累積し、全体の50%となる粒の粒径)が10μm以下であることが望ましい。粒径が10μm以下であると、ろう侵食の少ない、良好なろう付状態を得ることができる。ただし、粒径が小さすぎると粉塵として舞いやすく作業性が落ちる。また、あまり細かな微細粉を製造するにはコストがかかってしまう。一方、粒径が10μm超の場合には、アルミニウム合金部材の深さ方向へのろう侵食が大きくなり、最悪の場合には、ろうが部材厚み方向に貫通してしまう。また、接合界面に充填されるべき液相が減ってしまう。
ろう付における雰囲気は特に限定されるものではなく大気雰囲気、不活性雰囲気などを選択することができる。ろう付の際の加熱温度は、ろう材の種別などに従って適宜の温度に設定する。
上記参考形態1では、アルミニウム部材3の接合面4内の領域に一様にろう付用組成物を塗布して塗膜5を形成したが、該塗膜に未塗布部を設ける。この未塗布部を塗膜に設けた実施形態1を図2に基づいて以下に説明する。なお、前記参考形態1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
また、塗膜5aの形成に際しては、塗膜5aの中心から4方に伸張して塗膜5aの外周輪郭縁に貫通する未塗布部6を有している。該未塗布部6の形成方法は本発明としては特に限定されるものではないが、例えばろう付用組成物の塗布の際に、未塗布部6の位置に合わせてアルミニウム部材3の表面の一部をマスキングして、ろう付用組成物が一部で塗布されないようにして未塗布部6を設けることができる。
上記ろう付により接合されたアルミニウム部材3と電気絶縁部材とは、良好なろう付がなされるとともに、接合面内に発生するボイドが少なく、さらに電気絶縁部材へのフラックス作用が殆どなく、接合の位置精度も高いものとなる。
上記した実施形態ではアルミニウム部材にろう付用組成物を塗布して電気絶縁部材とのろう付接合を行うものとして説明を行ったが、電気絶縁部材にろう付用組成物を塗布してアルミニウム合金部材とろう付接合することも可能である。
以下、参考形態2について図3に基づいて説明する。なお、前記参考形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を簡略化する。
接合面14は、他面側の素子(図示しない)の位置に相応して設定されており、素子の底面と同じか、これを囲む位置と大きさを有しているのが望ましい。
すなわち、ろう材とフラックスとは、ろう材質量を1.0とした場合にフラックス質量が1.6以上、望ましくは2.7以上となる質量比を有している。
上記ろう付用組成物の塗布方法、塗布量も前記参考形態1と同様にすることができる。
良好なろう付がなされるとともに、接合面内に発生するボイドが少なく、さらに電気絶縁部材へのフラックス作用が殆どなく、接合の位置精度も高いものとなる。
上記参考形態2では、電気絶縁物1の接合面14内の領域に一様にろう付用組成物を塗布して塗膜15を形成したが、該塗膜に未塗布部を設ける。この未塗布部を塗膜に設けた実施形態2を図4に基づいて以下に説明する。なお、前記参考形態2と同様の構成については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
また、塗膜15aの形成に際しては、塗膜15aの中心から4方に伸張して塗膜15aの外周輪郭縁に貫通する未塗布部16を有している。該未塗布部16の形成方法は、本発明としては特に限定されるものではないが、例えばろう付用組成物の塗布の際に、未塗布部16の位置に合わせてアルミニウム合金板10の表面の一部をマスキングして、ろう付用組成物が一部で塗布されないようにして未塗布部16を設けることができる。
上記ろう付により接合されたアルミニウム部材と電気絶縁部材1とは、良好なろう付がなされるとともに、接合面内に発生するボイドが少なく、さらに電気絶縁部材へのフラックス作用が殆どなく、接合の位置精度も高いものとなる。
常法により製造したアルミニウム合金ベア材(JISA3003)の接合面に表1に示す組成からなるろう付用組成物を部分的に塗布して塗膜を形成した。なお、表1中の塗布量は、ろう材とフラックスの合計量を示す。ろう材にはSi粉末を用いた。フラックスにはKZnF3を用いた。各供試材における接合面と電気絶縁部材輪郭との間隔(塗布領域)、および、塗膜の中心部から該塗膜の輪郭縁の外まで貫通する未塗布部の有無に関しては表1に示した。
ろう付組成物を塗布した後、表面にアルミニウム合金板が接着されている電気絶縁部材と合わせて、窒素ガス雰囲気下、温度600℃、時間3分で加熱し、ろう付接合を行った。得られた供試材について下記に示す評価を行った。評価結果を表1に示す。
ろう付接合率は以下のようにして求めた。すなわち、電子スキャン式(フェイズドアレイ式)超音波映像装置により接合界面全面を走査し、接合部と不良部に2値化することで接合率をソフトウェア上で算出し、接合率を求めた。
接合率が90%以上であれば、実用に十分適している。
接合位置精度は以下のようにして求めた。すなわち、接触式3次元測定器を用いて、基準点から電気絶縁部材との距離を計測し、設置予定位置との乖離距離を求めた。
ずれが0.5mm以内であれば、実用に十分適している。
2 素子
3 アルミニウム部材
4 接合面
5 塗膜
5a 塗膜
6 未塗布部
10 アルミニウム合金板
14 接合面
15 塗膜
15a 塗膜
16 未塗布部
Claims (2)
- 電気絶縁部材とろう付接合されるアルミニウム部材であって、
前記ろう付に備えて表面にろう材とフラックスとを含むろう付用組成物が塗布されて前記電気絶縁部材の部分と前記アルミニウム部材とが接合される接合面内の接合面外周縁との距離が0.5mm以内になる外周輪郭縁を有する領域に未塗布部を除いて一様に塗膜を有しており、該ろう付用組成物における前記ろう材と前記フラックスの塗布質量比が、前記ろう材を1.0として、前記フラックスが1.6以上であり、
前記塗膜は、内側に、面方向内側から外周輪郭縁に亘って貫通する形状のみの前記未塗布部を設け、該未塗布部として、面方向中心部から外周輪郭縁に亘って貫通する形状の未塗布部を有することを特徴とする電気絶縁部材とのろう付に供されるアルミニウム部材。 - アルミニウム部材がろう付される電気絶縁部材であって、
前記ろう付に備えて表面にろう材とフラックスとを含むろう付用組成物が塗布されて前記電気絶縁部材の部分と前記アルミニウム部材とが接合される接合面内の接合面外周縁との距離が0.5mm以内になる外周輪郭縁を有する領域に未塗布部を除いて一様に塗膜を有しており、該ろう付用組成物における前記ろう材と前記フラックスの塗布質量比が、前記ろう材を1.0として、前記フラックスが1.6以上であり、
前記塗膜は、内側に、面方向内側から外周輪郭縁に亘って貫通する形状のみの未塗布部を設け、該未塗布部として、面方向中心部から外周輪郭縁に亘って貫通する形状の未塗布部を有することを特徴とする電気絶縁部材。
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