図1には、本発明の第1実施形態の燃料タンクシステム12が示されている。燃料タンクシステム12の燃料タンク14は、本実施形態では樹脂製とされている。燃料タンク14は、全体として、内部に燃料を収容可能な形状(たとえば略直方体の箱状)に形成されている。
燃料タンク14の下方は、図示しないタンクバンドによって支持されている。このタンクバンドの両端は、フロアパネルの図示しないブラケットに固定されている。これにより、燃料タンク14がタンクバンドに支持された状態でフロアパネルに取り付けられている。
図1に示すように、燃料タンク14には、インレットパイプ32の下部が接続されている。インレットパイプ32の上端は給油口36とされている。この給油口36に給油ガンを差し入れて燃料を燃料タンク14に導き、給油することができる。なお、燃料タンク14内の燃料量によっては、インレットパイプ32にも、燃料の一部が収容される。
燃料タンク14の上壁14Tには、満タン液位の規制及び燃料の漏れ出し防止を行うバルブ38が設けられている。燃料タンク14への給油時に、燃料タンク14内の燃料が満タン液位に達するまではバルブ38は開弁されており、燃料タンク14内の気体が後述するキャニスタ40に排出されるので、給油を継続して行うことができる。燃料タンク14内の燃料が満タン液位に達すると、バルブ38が閉弁され、燃料タンク14内の気体がキャニスタ40に排出されなくなるので、給油された燃料はインレットパイプ32内を上昇し、給油ガンに達する。これにより、給油ガンのオートストップ機構が動作し、給油が停止される。
インレットパイプ32の上端の給油口36は、フューエルキャップ42によって開閉されるようになっている。車体のサイドパネル48には、フューエルキャップ42のさらに外側にフューエルリッド50が設けられている。
フューエルリッド50は、ECU30(図2参照)によって制御されて、ロックあるいはロック解除されようになっている。そして、図示しないフューエルリッドオープナーが操作されるとロック解除され、インレットパイプ32(給油経路)の上方を開放可能となる。
フューエルキャップ42は、給油口36に装着された状態で、インレットパイプ32をその上方で閉塞しており、インレットパイプ32への給油ガンのアクセスを制限している。これに対し、フューエルキャップ42が給油口36から外されると、インレットパイプ32の上方が開放され、インレットパイプ32へのアクセスが可能となる。
車体には、キャップ開閉センサ52が設けられており、フューエルキャップ42の開閉状態を検知してECU30にその情報を送るようになっている。同様に、車体には、リッド開閉センサ54が設けられており、フューエルリッド50の開閉状態を検知して、ECU30にその情報を送るようになっている。
燃料タンクシステム12は、キャニスタ40を有している。図示の例では、キャニスタ40は燃料タンク14の上方に配置されているが、キャニスタ40の位置は限定されず、燃料タンク14の下方でもよい。キャニスタ40内には、活性炭等により構成された吸着剤が収容されている。この吸着剤によって、蒸発燃料の吸着及び脱離が可能とされている。
さらに、燃料タンクシステム12は、気体分離機16を有している。図示の例では、気体分離機16は燃料タンク14の上方に配置されているが、気体分離機16の位置もキャニスタ40と同様に限定されず、燃料タンク14の下方でもよい。気体分離機16内には、分離膜16Fが備えられており、この分離膜16Fによって、気体分離機16内が、蒸発燃料導入室16Gと排気導入室16Cとに区画されている。分離膜16Fの両側に生じた空気成分の圧力(例えば、酸素分圧)の差で、蒸発燃料導入室16G内の蒸発燃料を含む気体から大気成分のみが分離膜16Fを通過して排気導入室16Cに移動する。このようにして、気体分離機16は、燃料タンク14から送られた気体(大気成分と蒸発燃料成分の双方を含んだ混合ガス)から大気成分、すなわち蒸発燃料を構成しない成分のみを分離可能である。
燃料タンク14のバルブ38には、第1連通配管20の一端側(共通通路20Aの一端側)が接続されている。第1連通配管20は、途中に設けられた分岐部20Dにより、キャニスタ側連通路20Cと、分離機側連通路20Bの2つに分岐されている。キャニスタ側連通路20Cはキャニスタ40に接続されている。分離機側連通路20Bは気体分離機16の蒸発燃料導入室16Gに接続されている。第1連通配管20は、燃料タンク14からの気体の排出路を構成している。
分岐部20Dには、三方弁22が設けられている。図2に示すように、三方弁22は、ECU30によって制御される。ECU30は、後述するタンク内圧センサ74によって検出された燃料タンク14の内圧に応じて、燃料タンク14から排出される気体の経路を、キャニスタ側連通路20Cと分離機側連通路20Bのいずれか一方へ選択的に切り替える。
図示しないエンジンからの排気管62と、気体分離機16の排気導入室16Cとの間は、2本の排気用配管76A、76Bで接続されている。排気管62における上流側の排気用配管76Aと、下流側の排気用配管76Bのそれぞれには、図2にも示すように、ECU30によって開閉制御される開閉弁24A、24Bが設けられている。以下において、排気用配管76A、76Bを特に区別する必要がない場合は排気用配管76として説明する。同様に、開閉弁24A、24Bを特に区別する必要がない場合は開閉弁24として説明する。本発明の連通手段は、排気用配管76を開閉弁24とを有する構成である。そして、排気用配管76は、本発明の「第2連通配管」の例である。
ECU30は、タンク内圧センサ74によって検出された燃料タンク14の内圧があらかじめ設定された所定の閾値(本実施形態では、後述する閾値P1)を超えると、開閉弁24を開弁する。あるいは、エンジンの駆動時には開閉弁24を開弁し、エンジンの停止時には開閉弁24を閉弁するように制御してもよい。開閉弁24が開弁されると、排気管62を流れる排気からの圧力が、排気導入室16Cに作用する。
そして、気体分離機16内において、分離膜16Fの両側(蒸発燃料導入室16Gと排気導入室16Cとの間)に、圧力差が生じる。この圧力差により、蒸発燃料導入室16Gに導入された気体(蒸発燃料を含む)から、大気成分が分離膜16Fを透過して排気導入室16Cに移動する。大気成分は、排気用配管76から排気管62に流れ、大気に放出可能となる。
特に、本実施形態では、2本の排気用配管76A、76Bが排気管62の長手方向に沿って並べて配置されている。排気用配管76A、76Bの間に排気による圧力差が生じるので、図3に矢印F6で示すように、排気管62を流れる排気の一部が、排気用配管76Aから排気導入室16Cを経由し、さらに排気用配管76Bを経て排気管62に戻るような流れが生じやすい。
これに対し、開閉弁24が閉弁されると、排気導入室16Cに排気が導入されなくなるので、気体分離機16内の圧力差が解消されると共に、気体分離機16内の気体の大気放出が阻止される。
なお、三方弁22及び開閉弁24としては、それぞれ、電気式の開閉弁や機械式の開閉弁の他、電気式と機械式を併用した開閉弁等を用いることが可能である。三方弁22は、燃料タンク14の高圧時に開弁することで過度の内圧上昇を抑制する安全弁として作用させることも可能である。
キャニスタ40にはさらに、大気開放管60が設けられている。大気開放管60の端部は大気開放されている。したがって、三方弁22がキャニスタ側連通路20Cを連通させると、燃料タンク14内の気体は、キャニスタ40を通過し(このときに蒸発燃料は吸着剤に吸着される)、その後、大気に排出される。
大気開放管60にはエアフィルタ64が設けられており、キャニスタ40に導入された外気中の異物を除去する。この異物には、空気中の塵や埃等の他、水や泥など、大気開放管60の流路の断面積を減少させてしまう物質を含む。
燃料タンク14内には、内部の燃料をエンジンに送出するための燃料ポンプモジュール66が設けられている。燃料ポンプモジュール66とエンジンとは燃料供給配管68で連通されており、燃料ポンプモジュール66を構成する燃料ポンプ70の駆動により燃料をエンジンに送出することができる。さらに、燃料ポンプモジュール66は、液面レベルセンサ72を備えており、燃料タンク14内の燃料液位が検知できるようになっている。検知された液位の情報は、ECU30に送られる。
燃料タンク14の上壁14Tには、タンク内圧センサ74が設けられている。タンク内圧センサ74は燃料タンク14の内圧を検知する。検知された燃料タンク14の内圧の情報はECU30に送られる。
次に、本実施形態の燃料タンクシステム12の作用を説明する。
燃料タンク14に給油を行う場合、乗員(給油者であってもよい)により、車両のイグニッションがオフにされる。この状態で、フューエルリッドオープナーの操作によりフューエルリッド50の開放動作が行われると、ECU30は、燃料タンク14への給油が行われる状態(給油時)であると判断する。そして、ECU30は、三方弁22を制御して、燃料タンク14とキャニスタ40とを連通させる。これにより、燃料タンク14内の気体がキャニスタ40に移動可能となる。また、ECU30は開閉弁24を閉弁し、気体分離機16から外気への気体の経路を閉塞する。なお、燃料タンク14が給油時となっているか否かの判断は、フューエルリッドオープナーの操作や、これに伴うフューエルリッド50の開放動作に代えて(あるいは併用して)、フューエルキャップ42が給油口36から取り外されたことを用いてもよい。
この状態で給油が行われると、給油中は、燃料タンク14内の気体がキャニスタ40に移動することで(図1に示す矢印F1参照)、燃料タンク14内の気体が燃料に置換される。燃料タンク14内の気体は蒸発燃料を含んでいるが、キャニスタ40では、気体中の蒸発燃料が吸着剤で吸着されて浄化される。浄化後の気体は大気開放管60から大気に排出される。
燃料タンク14内の燃料の液位が上昇してバルブ38に達すると、気体が燃料タンク14から排出されなくなるので、燃料がインレットパイプ32内を上昇する。そして、インレットパイプ32内の燃料が給油ガンに達すると、給油ガンのオートストップ機構が働き、給油が停止される。
給油が終了すると、フューエルキャップ42がインレットパイプ32に装着され、さらにフューエルリッド50が閉じられる。このようにフューエルリッド50が閉じられたことがリッド開閉センサ54で検知されると(さらに必要に応じて、フューエルキャップ42が装着されたことをキャップ開閉センサ52で検知してもよい)、ECU30は、燃料タンク14への給油が終了したと判断する。
次いで、ECU30は、三方弁22を制御して気体分離機16側へ切り換え、燃料タンク14内と気体分離機16とを連通させる(燃料タンク14内とキャニスタ40との気体の移動経路は閉塞される)。燃料タンク14では、フューエルキャップ42によってインレットパイプ32が閉じられ、さらに開閉弁24によって排気用配管76も閉じられているので、燃料タンク14内の蒸発燃料を外部に排出することなく燃料タンク14内に閉じ込める構造(いわゆる密閉タンク)を構成することができる。
給油時以外では、たとえば周囲の温度変化等に起因して燃料タンク14の内圧が変化する。ECU30は、燃料タンク14の内圧に応じて、以下に示すように三方弁22及び開閉弁24を制御する。なお、三方弁22及び開閉弁24を制御するにあたっては、図5にも示すように、燃料タンク14の内圧が正圧の場合として、大気圧よりも高い所定の閾値P1と、大気圧よりは高く閾値P1よりも低い閾値P2とが設定されている(この場合、大気圧<P2<P1の関係となる)。閾値P1を、以下では適宜「第二の所定値」ということがある。
同様に、燃料タンク14の内圧が負圧の場合として、大気圧よりも低い所定の閾値P3と、大気圧よりは低く閾値P3よりは高い閾値P4があらかじめ設定されている(この場合、P3<P4<大気圧の関係となる)。閾値P3を、以下では適宜「第一の所定値」ということがある。なお、図5において、実線は、燃料タンク14の内圧に応じた開閉弁24の状態の変化(開又は閉)を示している。また、破線は、同じく燃料タンク14の内圧に応じた三方弁22の状態の変化(燃料タンク14を気体分離機16とキャニスタ40のどちらと連通させるか)を示している。
まず、燃料タンク14内の温度が上昇すると、燃料タンク14の内圧が高くなる。燃料タンク14の内圧が正圧、すなわち大気圧よりも高くなっている状態では、ECU30は、三方弁22を気体分離機16側へ切り換え、燃料タンク14内の気体がキャニスタ40には流れないようにする。また、ECU30は、燃料タンク14の内圧が上記した閾値P1以上になるまでは、開閉弁24を閉弁しておく。
エンジンが駆動している状態で、燃料タンク14の内圧が閾値P1(第二の所定値)以上になると、ECU30は、図3に示すように、開閉弁24を開弁する。この状態を、以下では適宜「第2の状態」という。
気体分離機16では、分離膜16Fの両側で圧力差(ここでは、特に酸素の分圧差)が生じる。燃料タンク14内の気体が気体分離機16に流れ(図3の矢印F2参照)、気体分離機16でこの気体から大気成分が分離される。分離された大気成分(蒸発燃料成分は含まない)は、排気用配管76から排気管62を経て、外部に排出される(図3の矢印F3参照)。実質的に、燃料タンク14内の上部の気体層を構成している気体の量が減るので、燃料タンク14の内圧は低下する。
ECU30は、燃料タンク14の内圧が低下して閾値P2に達するまでは、開閉弁24の開弁状態を維持する。このため、燃料タンク14内に存在している大気成分を有する気体は、引き続き燃料タンクシステム12の外部に排出される。そして、燃料タンク14の内圧が低下して閾値P2以下になると、ECU30は開閉弁24を閉弁する。
このように、燃料タンク14の内圧が正圧の場合には、燃料タンク14内に存在する気体の大気成分を燃料タンクシステム12の外部に排出するので、燃料タンク14の内圧低減を図ることができる。
この状態で、燃料タンク14内の温度が低下すると、燃料タンク14内の気体(大気成分)は少なくなっているので、燃料タンク14の内圧がさらに低下して負圧になる。
燃料タンク14の内圧が上記した閾値P3(第一の所定値)以下になると、ECU30は、図4に示すように、三方弁22を制御してキャニスタ40側へ切り換え、燃料タンク14の内部とキャニスタ40とを連通させる。この状態を、以下では適宜「第1の状態」という。燃料タンク14の内部は負圧になっているので、この負圧がキャニスタ40に作用する。キャニスタ40では、給油時に吸着された蒸発燃料が吸着剤に吸着されているが、この蒸発燃料が吸着剤から脱離され、燃料タンク14内へ移動する(図4の矢印F4参照)。すなわち、キャニスタ40は、燃料タンク14の負圧によってパージされることになる。なお、キャニスタ40のパージ時には、大気開放管60を通って大気がキャニスタ40に導入される。
燃料タンク14の内圧が上昇して閾値P4に達すると、ECU30は、再び三方弁22を気体分離機16側に切り換え、燃料タンク14内の気体がキャニスタ40には流れないようにする。
以上の説明から分かるように、本実施形態の燃料タンクシステム12では、燃料タンク14への給油時には、短時間で大量に生じる蒸発燃料を含んだ気体をキャニスタ40に送ることで、キャニスタ40の吸着剤を用いて蒸発燃料を吸着している。また、燃料タンク14の正圧時には、気体分離機16を用いて、燃料タンク14内に存在している大気成分を外部に排出することで、実質的な燃料タンク14内の気体分子量を少なくしている。このように、キャニスタ40と気体分離機16とを、燃料タンクシステム12の状態に応じて適切に使い分けることで、蒸発燃料の効率的な処理を可能にしている。
そして、気体分離機16を用いることで燃料タンク14内に負圧を生じさせている。この負圧をキャニスタ40に作用させてキャニスタ40をパージすることで、エンジンから作用する負圧に依存することなく、キャニスタ40をパージできる。キャニスタ40のパージのためにエンジンを駆動する(あるいはエンジン回転数を上昇させる)必要がないので、エネルギー効率にも優れる。
特に、本実施形態では、このように燃料タンク14内の大気成分を少なくしていない構成と比較して、燃料タンク14の負圧時に、燃料タンク14内、すなわち燃料タンクシステム12に外部から導入可能な気体の量が多くなる。そして、より多くの大気を導入することで、キャニスタ40をパージする能力が向上する。
しかも、キャニスタ40のパージ時に燃料タンク14内には大気が導入されるが、燃料タンク14の内圧が閾値P1に達したときに、気体分離機16により大気成分が蒸発燃料成分から分離されて外部に排出される。このように、燃料タンク14内の大気成分を少なくすることで、燃料タンク14内に、再び負圧状態が生じやすくなる。そして、燃料タンク14内を再び負圧状態にすることで、キャニスタ40から蒸発燃料を繰り返し脱離しキャニスタ40をパージすることが可能となる。
加えて、本実施形態では、排気管62と気体分離機16とを排気用配管76で接続しており、開閉弁24を開弁することで、排気管62の排気を気体分離機16に導入し、気体分離機16内に所望の圧力差を生じさせることが可能である。換言すれば、気体分離機16内に圧力を導入するために、コンプレッサやポンプ等の部材が不要である。したがって、これらの部材を駆動するためのエネルギーが不要であり、車両の燃費向上に寄与できる。車両を構成する部品点数も少なくて済み、車両の軽量化を図ることも可能となる。
なお、開閉弁24を開弁するための燃料タンク14の内圧の条件としては、原理的には、燃料タンク14の内圧が負圧から上昇して大気圧になった状態を用いることも可能である。この場合、図5示すグラフでは、実質的にP1=大気圧となる。同様に、三方弁22を気体分離機16側からキャニスタ40側に切り替えるための燃料タンク14の内圧の条件としても、原理的には、燃料タンク14の内圧が正圧から下降して大気圧になった状態を用いることも可能である。この場合、図5に示すグラフでは、実質的にP3=大気圧となる。
しかし、実際には、大気圧は、周囲の温度や高度(海面からの高さ)等に依存して変化する。したがって、想定される最高の大気圧よりも閾値P1を高く設定することで、たとえば大気圧が高い状態でも、燃料タンク14の内圧が確実に大気圧よりも高い状態で開閉弁24を開弁できる。また、想定される最低の大気圧よりも閾値P3を低く設定することで、たとえ大気圧が低い状態でも、燃料タンク14の内圧が確実に大気圧よりも低い状態で三方弁22を気体分離機16側からキャニスタ40側へ切り替えることができる。
また開閉弁24を閉弁するための燃料タンク14の内圧の条件としては、燃料タンク14の内圧が閾値P1以上の状態から下降して閾値P1になった状態を用いることが可能である。この場合、実質的にP2=P1となる。
しかし、開閉弁24の開弁状態では燃料タンク14の内圧が低下する。したがって、P2=P1とすると、開閉弁24の開弁後の短時間で燃料タンク14の内圧が閾値P1に低下し、開閉弁24を閉弁することになる。これに対し、本実施形態のように、閾値P1よりも低い閾値P2を設定し、燃料タンク14の内圧が閾値P2に下降したときに開閉弁24を閉じるようにすれば、より長時間にわたって開閉弁24の開弁状態を維持し、気体分離機16によって大気成分を分離する時間を長く確保することができる。
同様に、三方弁22をキャニスタ40側から気体分離機16側へ切り替えるための燃料タンク14の内圧の条件としても、燃料タンク14の内圧が閾値P2以下の状態から上昇して閾値P2となった状態を用いることが可能である。この場合、実質的にP4=P3となる。
しかし、三方弁22をキャニスタ40側としている状態では、燃料タンク14の内圧が上昇する。したがって、P4=P3とすると、三方弁22をキャニスタ40側に切り替えた後の短時間で燃料タンク14の内圧が閾値P3に上昇し、三方弁22を気体分離機16側に切り替えることになる。これに対し、本実施形態のように、閾値P3よりも高い閾値P4を設定し、燃料タンク14の内圧が閾値P4に上昇したときに三方弁22をキャニスタ40側から気体分離機16側に切り替えるようにしたことで、より長時間にわたって燃料タンク14とキャニスタ40とが連通された状態を維持し、キャニスタ40をパージする時間を長く確保することができる。
図6には、本発明の第2実施形態の燃料タンクシステム92が示されている。第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については、第1実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
第2実施形態では、排気用配管76が1つのみ設けられている。開閉弁24も1つのみ1つの排気用配管76に対応して1つ)設けられている。第1実施形態と同様に、開閉弁24はECU30(図2参照)によって開閉制御される。
このような構成とされた第2実施形態においても、燃料タンクシステム92の実質的な作用は、第1実施形態の燃料タンクシステム12と同様である。
ただし、第2実施形態では、エンジンの駆動状態で開閉弁24が開弁されると、排気の圧力が1本の排気用配管76のみを通じて気体分離機16の排気導入室16Cに作用する。また、排気導入室16Cの大気成分は、排気用配管76内を拡散するようにして、排気管62に流れる。
第2実施形態の燃料タンクシステム92では、排気用配管76及び開閉弁24を1つのみ備えているので、これらを複数(2つずつ)備えた第1実施形態の燃料タンクシステム12と比較して、構造の簡素化や軽量化を図ることが可能である。
これに対し、第1実施形態の燃料タンクシステム12では、排気用配管76を2つ備えているので、一方の排気用配管(排気管62における上流側の排気用配管76A)から気体分離機16の排気導入室16Cを経て他方の排気用配管(排気管62における下流側の排気用配管76B)から排気管62に至る排気の一方向の流れを生成することが可能である。
また、第1実施形態の燃料タンクシステム12では、複数の排気用配管76の開閉弁24のうち、特定の開閉弁24のみを開弁する(他の開閉弁24は閉弁する)等により、排気導入室16Cに導入する排気の量や圧力を調整することも可能となる。さらに、開閉弁24の一方を、通常は使用しない予備とすることで、通常使用の開閉弁24に不具合が生じて開弁できなくなっても、予備の開閉弁24を開閉制御することで、排気導入室16Cに排気を導入することができ、燃料タンクシステム12の信頼性が高くなる。
なお、このように、排気導入室16Cに導入する排気の量や圧力を調整する(あるいは予備の開閉弁24を設定する)ためであれば、複数の開閉弁24を排気管62の長手方向に沿って配置する必要はない。たとえば、図11に示すように、排気管62の長手方向と直交する方向に並べて、複数の排気用配管76が配置される構成でもよい。なお、図11では、開閉弁24の図示を省略している)。
また、複数の排気用配管76を有する構成において、すべての排気用配管76に開閉弁24を設ける必要はない。たとえば、図1に示したように2本の排気用配管76を有する構成において、一方の排気用配管76にのみ開閉弁24を設け、他方の排気用配管76には絞りを設けることで、不用意な気体の移動を抑制する構成でもよい。
さらに、上記では、開閉弁24が排気用配管76に設けられている例を挙げているが、開閉弁24に加えて、燃料タンク14から共通通路20A、分離機側通路20Bを経て排気用配管76に至る配管に閉鎖弁(開閉弁)が設けられた構成を採用してもよい。
たとえば、図7に示す第3実施形態の燃料タンクシステム112のように、分岐部20Dから気体分離機16までの分離機側連通路20Bにも、閉鎖弁25が追加して設けられていてもよい。第3実施形態の構成において、閉鎖弁25の開閉制御は、開閉弁24と同様に行えばよい。
さらに、図8に示す第4実施形態の燃料タンクシステム122のように、バルブ38から分岐部20Dまでの共通流路20Aに、閉鎖弁27が追加して設けられていてもよい。この燃料タンクシステム122では、図5に示した開閉弁24及び三方弁22の状態変化に代えて、図9(A)に示す状態変化を適用できる。
すなわち、燃料タンク14内の温度が上昇し燃料タンク14の内圧が高くなると、ECU30は、遅くとも燃料タンク14の内圧が閾値P1(第二の所定値)に達する前に三方弁22を気体分離機16側へ切り替えると共に、閉鎖弁27を閉弁しておく。
燃料タンク14の内圧が閾値P1以上になると、ECU30は、閉鎖弁27及び開閉弁24を開弁する。これにより、燃料タンクシステム122は第2の状態となる。燃料タンク14内の気体が気体分離機16に流れ、分離された気体(大気成分)が燃料タンクシステム12に外部に排出されるため、燃料タンク14の内圧は低下する。
ECU30は、燃料タンク14の内圧が低下して閾値P2に達するまでは、閉鎖弁27及び開閉弁24の開弁状態を維持するため、燃料タンク14内の気体(大気成分)は、引き続き燃料タンクシステム12の外部に排出される。そして、燃料タンク14の内圧が低下して閾値P2以下になると、ECU30は閉鎖弁27及び開閉弁24を閉弁する。ここまでの開閉弁24及び三方弁22の状態変化は、図5に示したものと略同様である。
この状態で、燃料タンク14内の温度低下により、燃料タンク14の内圧がさらに低下して負圧になる。ECU30は、遅くとも、燃料タンク14の内圧が閾値P3(第一の所定値)になる前に、閉鎖弁27を開弁しておく。
燃料タンク14の内圧が閾値P3(第一の所定値)以下になると、ECU30は、三方弁22をキャニスタ40側へ切り換え、燃料タンク14の内部とキャニスタ40とを連通させる。これにより、燃料タンクシステム122は第1の状態となる。
燃料タンク14の内部の負圧がキャニスタ40に作用するので、キャニスタ40の吸着剤に吸着されていた蒸発燃料が吸着剤から脱離され、燃料タンク14内へ移動する(キャニスタ40が燃料タンク14の負圧によってパージされる)。なお、図9(C)に示すように、燃料タンク14内の圧力が閾値P3に達するより前の段階で三方弁22をキャニスタ40側へ切り替えておき(閉鎖弁27は閉弁状態を維持している)、燃料タンク14内の圧力が閾値P3に達した状態で閉鎖弁27を開弁してもよい。
燃料タンク14の内圧が上昇して閾値P4に達すると、ECU30は、閉鎖弁27を閉弁し、さらに三方弁22を気体分離機16側に切り換える。これにより、燃料タンク14内の気体がキャニスタ40には流れないようにする。なお、図9(B)に示すように、燃料タンク14の内圧が上昇した閾値P4に達すると、まず、閉鎖弁27を閉弁して、燃料タンク14内の気体がキャニスタ40に流れないようにした後、燃料タンク14の内圧が閾値P4よりも上昇した段階で三方弁22を気体分離機16側に切り替えてもよい。
なお、三方弁22が、気体分離機16側の第1連通配管20Bとキャニスタ側連通路20Cの双方を閉塞可能であれば、開閉弁24を省略してもよい。この場合、実質的に、三方弁22が開閉弁24を兼ねることになる。
さらに、上記では、一端側が燃料タンク14の内部(バルブ38)と接続され、分岐部20Dを経て他端側がキャニスタ40及び気体分離機16にそれぞれ接続された第1連通配管20を有する構造の燃料タンクシステム12を挙げている。このような第1連通配管20では、燃料タンク14とキャニスタ40との間の配管と、燃料タンク14と気体分離機16との間の配管が部分的に共通化されているので、部品点数が少なくなる。もちろん、燃料タンク14とキャニスタ40との間の配管と、燃料タンク14と気体分離機16との間の配管をそれぞれ別々に設けてもよい。この場合には、燃料タンク14と気体分離機16とを接続する配管に、ECU30で開閉制御される開閉弁を設ければよい。この構成では、実質的に三方弁が不要であり、三方弁よりも簡単な構造の開閉弁を用いることが可能である。
いずれの構成であっても、キャニスタ40をパージするために、エンジンの負圧をキャニスタ40に作用させる必要はない。たとえば、ハイブリッド車等では、エンジンの駆動時間が短くなることが想定されるが、このようにエンジンの駆動時間が短い自動車であっても、キャニスタ40から蒸発燃料をより確実に脱離する(パージする)ことが可能となる。
また、エンジンの負圧によりキャニスタ40から蒸発燃料を脱離すると、キャニスタ40で脱離された蒸発燃料がエンジンでの燃料に用いられるため、いわゆる空燃費(燃料に対する空気の比率)が変化するおそれがあるが、上記実施形態では、キャニスタ40で脱離された蒸発燃料はエンジンでの燃料には用いられないので、空燃費が変化しない。
もちろん、本発明では、エンジンの負圧を併用してキャニスタ40からの蒸発燃料の脱離(パージ)を行う構成の燃料タンクシステムを排除するものではない。すなわち、図10に示す第5実施形態の燃料タンクシステム132のように、エンジンの負圧を作用させる負圧配管82をキャニスタ40に接続すると共に、負圧配管に開閉弁84を設けた構成としてもよい。この構成では、たとえば、燃料タンク14の負圧が充分でない場合等や、より確実にパージを行う必要がある場合等に、開閉弁84を開弁し、エンジンの負圧をキャニスタ40に作用させるようにすればよい。
上記第3実施形態、第4実施形態及び第5実施形態では、排気用配管76を複数(2つ)有する構成を挙げているが、第2実施形態と同様に、排気用配管76を1つのみ有する構成であってもよい。