以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図1に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶素子110は、メモリ部25と、検出部30と、を備える。また、実施形態に係る不揮発性記憶装置210は、実施形態に係る不揮発性記憶素子110と、制御部40と、を備える。
例えば、不揮発性記憶素子110は、基板5をさらに備える。基板5の上にメモリ部25が設けられる。検出部30は、例えば、基板5の上に、または、基板5とは別に設けられる。制御部40は、例えば、基板5の上に、または、基板5とは別に設けられる。この例では、検出部30に接続されたバッファ部32がさらに設けられている。バッファ部32は、検出部30で検出するデータ(情報)を記憶する。
不揮発性記憶素子110は、複数のメモリ部25(例えば、第1メモリ部25a及び第2メモリ部25bなど)を含むことができる。メモリ部25の数は、任意である。以下では、第1メモリ部25aを例にしてメモリ部25の構成について説明する。第2メモリ部25bなどの他のメモリ部の構成も、第1メモリ部25aの構成と同様とすることができる。
メモリ部25(第1メモリ部25a)は、導電層20と、複数の供給部10と、を含む。この例では、複数の供給部10は、例えば、第1〜第3供給部10a〜10cを含む。供給部10の数は、任意である。以下では、供給部10の数が3である例(第1〜第3供給部10a〜10c)について説明する。1つのメモリ部25が、例えば、1つのメモリセルに対応する。
供給部10には、書き込み信号Swが供給される。例えば、第1〜第3供給部10a〜10cのそれぞれに、第1〜第3書き込み信号Swa〜Swcが供給される。書き込み信号Sw(第1〜第3書き込み信号Swa〜Swc)は、例えば制御部40から供給される。
供給部10は、供給される書き込み信号Swに応じて、導電層20上に分子15を供給する。書き込み信号Swは、記憶させたい情報を含む信号である。導電層20上において、供給された分子15の、書き込み信号Swに応じた配列パターンが形成される。例えば、配列パターンは、導電層20上における分子15のセルオートマトン機構により形成される。すなわち、供給部10は、導電層20上における分子15の、書き込み信号に応じた配列パターンを形成させる。配列パターンは、例えば第1記憶状態ST1、第2記憶状態ST2等の多値の記憶情報に、一対一で対応した配列パターン状態である。配列パターンの詳細な例については、後述する。
導電層20は、不揮発性記憶素子110の記憶本体部分となる。導電層20の例については後述する。以下では、導電層20として、Cu(銅)を用いる例について説明する。
分子15の例については後述する。以下では、分子15としてCO(一酸化炭素)を用いる例について説明する。
導電層20には、磁場Hexを印加することが可能である。導電層20に印加された磁場Hexを変化させたときの、導電層20の電気的特性(例えば導電率や抵抗など)の変化は、配列パターンに依存する。
検出部30は、導電層20に印加される磁場Hexを変化させたときに生じる、配列パターンに応じた、導電層20に流れる電流の変化を検出する。検出部30による電流の変化の検出結果である読み出し信号Srは、制御部40に供給される。すなわち、記憶させた情報を含む書き込み信号Swに応じて分子15の配列パターンが形成される。分子15の配列パターンは、第1記憶状態ST1、第2記憶状態ST2等の多値記憶情報に一対一で対応した配列パターン状態である。その配列パターンに応じた電流の変化(電気的特性の変化)が検出される。この電気的特性の変化は、例えば、導電層20に分子15が接触していることによるユニバーサルコンダクタンスフラクチュエーションに基づく。電気的特性の例については、後述する。
この例では、検出部30により検出されたデータがバッファ部32に格納され、バッファ部32に格納されたデータが制御部40に供給される。
制御部40は、検出部30により検出した電気的特性の変化を、予め記憶されたデータと比較することにより、書き込み信号Swにより書き込まれた情報を読み出す。例えば、予め記憶されたデータは、データ格納部45に格納される。データ格納部45は、不揮発性記憶装置210内に設けても良く、不揮発性記憶装置210とは別に設けても良い。制御部40は、有線または無線の任意の方法により、データ格納部45から、データを受け取る。
これにより、超多値の記憶が可能で、微細なリソグラフィ加工を用いない不揮発性記憶素子及び不揮発性記憶装置が提供できる。すなわち、大記憶容量の不揮発性記憶素子及び不揮発性記憶装置が提供できる。また、隣接セル間が互いに近接することによる干渉を抑制し、高密度の記憶が可能になる。
以下、不揮発性記憶素子110及び不揮発性記憶装置210の動作の例について説明する。
図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示する模式図である。
これらの図は、書き込み動作を例示している。図2(a)及び図2(b)は、それぞれ第1及び第2記憶状態ST1及びST2における導電層20上の分子15の配列パターンを例示している。
例えば、図2(a)及び図2(b)に示した例では、導電層20上の分子がトラップされるサイトにおける、分子の有無によって情報を記憶する。したがって、1つのメモリ部25で、縦方向トラップサイト×横方向トラップサイト=10×10=100ビットの多値情報を記憶することが可能である。現時点での多値NANDの1つの素子の8値すなわち3ビットなどといった多値記憶量の例と比較して、大幅に多値化された情報を記憶することが可能である。
図2(a)に表したように、第1記憶状態ST1用の第1〜第3書き込み信号Swa1〜Swc1が、供給部10(第1〜第3供給部10a〜10c)にそれぞれ供給される。第1〜第3書き込み信号Swa1〜Swc1は、記憶させたい第1の記憶情報に基づく信号である。これにより、第1〜第3供給部10a〜10cから、分子15(この例ではCO分子)が導電層20上に供給される。
導電層20(この例ではCu層)の表面には、Cuの格子20lが存在している。供給された分子15は、例えば、格子20lのサイトに吸着される。第1〜第3供給部10a〜10cのそれぞれから、第1〜第3書き込み信号Swa1〜Swc1に基づいて分子15が供給されることにより、導電層20の上において、分子15は、第1〜第3書き込み信号Swa1〜Swc1に特有の配列パターンで吸着する。すなわち、セルオートマトン機構により、分子15の配列パターンが形成される。この配列パターンは、第1〜第3書き込み信号Swa1〜Swc1に特有のパターンである。
図2(b)に表したように、第2記憶状態ST2用の第1〜第3書き込み信号Swa2〜Swc2が、供給部10(第1〜第3供給部10a〜10c)にそれぞれ供給される。第1〜第3書き込み信号Swa2〜Swc2は、記憶させたい第2の記憶情報に基づく信号である。第1〜第3書き込み信号Swa2〜Swc2は、第1〜第3書き込み信号Swa1〜Swc1とは異なる信号である。第1〜第3書き込み信号Swa2〜Swc2に基づいて分子15が供給されることにより、導電層20の上において、分子15は、第1〜第3書き込み信号Swa2〜Swc2に特有の配列パターンで吸着する。セルオートマトン機構により形成された分子15の配列パターンは、第1〜第3書き込み信号Swa2〜Swc2に特有のものである。すなわち、第2記憶状態ST2における分子15の配列パターンは、第1記憶状態ST1における分子15の配列パターンとは異なる。
分子15の配列パターンの種類の数は、導電層20の表面積に依存する。導電層20の表面積を大きくすることで、分子15の配列パターンの種類の数は大きくなる。本実施形態においては、1つのメモリセルに、超多値を記憶することが可能である。また、形成された、分子15の配列パターンは、例えば導電層20に新たに分子15が供給されるまで保持される。すなわち、記憶した情報を長時間保持することができる。
例えば、第1の記憶情報を37F03051CC9ADC296371B4A95(16進数表記)なる100ビットの情報とする。例えば、第1〜第3書き込み信号Swa1〜Swc1は、それぞれパルスおよびウェイトを時系列方向に組み合わせたものとする。なお、書き込み信号は、パルスおよびウェイト以外の信号を含んでも良い。パルスおよびウェイトは、それぞれ複数でも良い。パルスによって分子が供給部10a〜10cを搬送されてメモリ部25に供給され、ウェイトによってメモリ部25のセルオートマトン動作が完了する。
時刻t=t1において供給部10aのみに書き込み信号を与える場合、t1においてSwa(t1)としてパルスおよびウェイトを与える。t1において供給部10b、10cには書き込み信号を与えない場合、Swb(t1)、Swc(t1)としてウェイトのみを与えればよい。この場合を(Swa(t1)、Swb(t1)、Swc(t1))=(1,0,0)と書くことにする。t=t1、t2、・・・、tn(ただし100ビットの例の場合、nは100以上)において、(Swa(t)、Swb(t)、Swc(t))=(1,0,0)、(0、0、1)、(1、1、1)、(1、0、1)、(0、0、0)、・・・(1、0、1)などの時系列の書き込み信号を与える。この第1の記憶情報に対応する書き込み信号において、供給部10aの時系列信号をSwa1とし、供給部10bの時系列信号をSwb1とし、供給部10cの時系列信号をSwc1とする。上記第1の記憶情報と、上記第1〜第3書き込み信号Swa1〜Swc1との対応関係は、任意の単純な規則で割り当てても良い。それらに対応して生じる第1の配列パターンとの対応関係は、セルオートマトンルールによるため複雑である。本記憶装置において、上記第1の配列パターンにおいて、実際に分子がどのサイトに置かれているかを知る必要は無い。その理由は後述する。
図3(a)及び図3(b)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示するグラフ図である。
図3(a)及び図3(b)は、それぞれ第1及び第2記憶状態ST1及びST2における読み出し信号Srの特性を例示している。これらの図は、導電層20に印加する磁場Hexの強度(磁場Bex)を変化させたときの導電率の変化δG(例えば導電率の微分)の例を示している。導電率の変化δGは、電気的特性の変化を示す指標の1つである。これらの図の横軸は、磁場Bex(テスラ:T)である。縦軸は、導電率の変化δG(任意目盛)である。磁場Hexを時系列でスキャンする場合、磁場Hexに対する導電率の微分は、時間に対する導電率の微分に磁場スキャン速度の逆数を乗じることで得ることができる。上記δGの値に対して、A/D変換を実施した上で読み出し信号Srとしても良いし、A/D変換をしなくても良い。
図3(a)及び図3(b)に表したように、第1記憶状態ST1における読み出し信号Sr1は、第2記憶状態ST2における読み出し信号Sr2とは異なる。読み出し信号Sr(例えば導電率の変化δG)は、例えば、導電層20のユニバーサルコンダクタンスフラクチュエーションに基づいており、読み出し信号Srは、分子15のそれぞれの位置の状態(情報)に対応する。
記憶した情報に対応する分子15の配列パターンに基づく読み出し信号Srが、検出部30により検出される。記憶する情報(多値情報)に対応する電気的特性(読み出し信号Sr)のパターンが、例えばデータ格納部45に格納されている。
検出部30で検出した読み出し信号Srが制御部40に供給され、制御部40において、検出部30で検出した読み出し信号Srが、データ格納部45に格納した電気的特性のパターンと比較される。そして、検出部30で検出した読み出し信号Srと一致する電気的特性を有する情報が、読み出された(書き込まれた)情報として認識される。
このような復号方式を採用することによって、実際の分子が導電層20におけるどのサイトに存在しているかの記憶状態STとは無関係に、上記記憶情報と上記読み出し信号Srとの対応を得ることができ、記憶された情報を復元することが可能となる。
上記データ格納部45に含まれる情報は、記憶させたい情報と読み出し信号Srとの関係を対応づける変換テーブルとすることもできる。この変換テーブルが収められているデータ格納部45の記憶容量は、上記個々のメモリ部25の記憶容量と同じかそれよりも大きい。上記データ格納部45には、例えば半導体記憶装置や、磁気記憶装置などの記憶装置を用いることができる。上記データ格納部45に含まれる情報は、上記導電層20における電子波動関数を計算するロジックでもよい。この場合、データ格納部45の容量は、上記個々のメモリ部25よりも小さくすることが可能である。前者の構成の場合、変換時間が短く、高速読み出しが可能になる。後者の構成の場合、データ格納部45の容量が小さくて済む。
例えば、第1の記憶情報を記憶させる場合、第1の記憶情報を、上記のように任意に設計した簡単な変換テーブルまたは関数などのアルゴリズムにより、第1〜第3の書き込み信号Swa1〜Swc1へ変換する。上記第1〜第3の書き込み信号Swa1〜Swc1によって、注入部10a〜注入部10cからメモリ部25へ分子が注入されることにより、メモリ部25では第1の分子配列パターンすなわち第1の記憶状態が成立する。第1の記憶情報を復元させる場合は、外部磁場Hexをタイムスキャンさせながら導電層20における導電率δGをA/D変換することで得た第1の読み出し信号Sr1を逐次データ格納部45に転送する。上記データ格納部45では、第1の読み出し信号Sr1と、変換テーブルまたは電子波動関数計算ロジックの出力と、を対応させることで第1の記憶情報を復元することができる。
例えば、第2の記憶情報を記憶させる場合、第2の記憶情報を、上記のように任意に設計した簡単な変換テーブルまたは関数などのアルゴリズムにより、第1〜第3の書き込み信号Swa2〜Swc2へ変換する。上記第1〜第3の書き込み信号Swa2〜Swc2によって、注入部10a〜注入部10cからメモリ部25へ分子が注入されることにより、メモリ部25では第2の分子配列パターンすなわち第2の記憶状態が成立する。第2の記憶情報を復元させる場合、外部磁場Hexをタイムスキャンさせながら導電層20における導電率δGをA/D変換することで得た第2の読み出し信号Sr2を逐次データ格納部45に転送する。上記データ格納部45では、第2の読み出し信号Sr2と、変換テーブルまたは電子波動関数計算ロジックの出力と、を対応させることで第2の記憶情報を復元することができる。
第3の記憶情報、第4の記憶情報、・・・等でも同様である。
なお、不揮発性記憶素子110においては、複数のメモリ部25に対して1つのデータ格納部45を設けることができる。すなわち、1つのデータ格納部45を複数のメモリ部25の読み出し動作において共有することができる。変換テーブル方式にて高速に復号する場合、データ格納部45はメモリ部25と同じかそれよりも大きい記憶容量を必要とする。このため、メモリ部25が1個のシステムの場合では、本実施形態に係る装置の特長は十分に発揮されない。しかしながら、1個のデータ格納部45に対して複数のメモリ部25が設けられるシステムにおいては、メモリ部25の大容量が大変有意義となる。
なお、書き込み動作において、第1記憶状態ST1に対応する第1の記憶情報から、第1記憶状態ST1用の第1〜第3書き込み信号Swa1〜Swc1を生成する動作、及び、第2記憶状態ST2に対応する第2の記憶情報から、第2記憶状態ST2用の第1〜第3書き込み信号Swa2〜Swc2を生成する動作は、例えば、制御部40で行われる。例えば、データ格納部45に、記憶させたい情報と書き込み信号Swとの関係に関する情報(例えば変換テーブル、または、関数などのアルゴリズム)が記憶される。上記記憶させたい情報と書き込み信号Swとを対応付ける変換テーブルを用いる場合、この変換テーブルを極めて小さくすることができる。記憶されたその変換テーブルや関数などの情報に基づいて、制御部40で書き込み信号Swを生成し、供給部10に供給する。ただし、実施形態はこれに限らず、制御部40とは別の部分で書き込み信号Swが生成されても良い。
不揮発性記憶素子110においては、微細なリソグラフィ加工などのトップダウン手法を不要とすることができる。例えば、比較的微細な供給部10の形成には、例えばカーボンナノチューブ(CNTCarbone Nano Tube)などの、自己形成またはボトムアップ手法による構造を用いることができる。メモリ部25も、旧世代のリソグラフィによる大サイズの加工で十分である。このため、コストの高いトップダウン手法である微細なリソグラフィ加工を多用せずに、不揮発性記憶素子110が形成できる。
図4(a)〜図4(c)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示する模式的平面図である。
導電層20は、例えば、金属的表面を有する。金属的表面としてCu膜の(111)面を用いる。この場合、Cu膜の最表面では、Cu原子が六方最密充填状態に規則正しく並んでいる。Cu原子の位置が格子20lとなる。分子15として、CO分子を用いる。CO分子は、Cu膜の表面に吸着する。具体的には、CO分子は、Cu膜上の、Cu原子が存在する位置(格子20l)に吸着される。この際、CO分子は電気双極子を持つため、CO分子は、C原子側をCu原子側に向けるように吸着される。
図4(a)に表したように、この例では、Cu膜上に2つのCO分子(第1CO分子15A及び第2CO分子15B)が吸着されている。これらのCO分子は、互いに隣接する吸着サイトに吸着されている。この状態において、新たなCO分子(第3CO分子15C)を導入する。第3CO分子15Cと第1CO分子15Aとを結ぶベクトルACと、第2CO分子15Bと第1CO分子15Aとを結ぶベクトルABと、の角度は、120度である。
図4(b)に表したように、第3CO分子15Cは、第1CO分子15Aの隣接位置に吸着される。この隣接位置は、ベクトルACとベクトルABとの角度が120度となる位置である。
図4(c)に表したように、既に吸着されていた第1CO分子15Aは、ベクトルAB及びベクトルACに対して120°の角度をなすような方向へ移動する。
このような規則に基づいて、複数のCO分子の位置が定まる。
この規則においては、隣接するサイトの情報によって分子の動きが定まる。例えば、第2近接サイト以遠の情報は特定のケースを除いて遮蔽される。この規則においては、分子15の移動規則は、単純である。少数のサイトにおける分子の制御により導電層20上のサイト上の個々の分子の動きを制御することが、容易に可能となる。このため、分子15の供給パターン(書き込み信号Swのパターンに対応する)に対して、導電層20上における分子15の配列パターンが定まる。吸着される分子15の移動方式により、数学的なセルオートマトンが実現される。本実施形態においては、書き込み信号Swに応じて分子15が導入される状態により形成される、分子15の配列パターンが定まる。
セルオートマトンにおいては、少数のサイトにおける分子の入力タイミングの変化によって複雑なパターンを形成できる。実際に複雑なパターンを形成するためには、書き込み時間が長くなる。本実施形態においては、複数の供給部10を設ける。これにより、書き込み手段を多様化することで、書き込み時間が短縮できる。1つの導電層20に対する供給機構の数を増やすことで、書き込み時間を短縮できる。
図5(a)〜図5(n)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示する模式的平面図である。
これらの図は、導電層20における分子15の配列パターンを例示している。導電層20の格子20l上に、分子15が吸着される。分子15は、種々の配列パターンにより、導電層20の上に吸着される。これらの配列パターンは、分子15の導入の状態により定まる。
図6(a)及び図6(b)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
これらの図は、本実施形態に係る不揮発性記憶装置の具体例の構成を示す。図6(a)は平面図である。図6(b)は、図6(a)のA1−A2線断面図である。これらの図は、メモリ部25の構成を例示している。
図6(a)及び図6(b)に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶素子111及び不揮発性記憶装置211においては、基板5が設けられる。また、不揮発性記憶装置211においては、磁場印加部50がさらに設けられる。磁場印加部50は、磁場Hexを導電層20に印加する。磁場印加部50には、例えば、電磁石を用いることができる。電磁石には、例えば、超伝導コイルを用いることができる。また、磁場印加部50には、強磁性体を用いても良い。
この例では、基板5は、冷却部4の上に設けられる。冷却部4は、不揮発性記憶素子130の少なくとも一部を冷却する。冷却部4は、不揮発性記憶素子130の全体を格納する筐体でも良い。
基板5には、例えば、Si(シリコン)基板が用いられる。基板5の下に、例えば絶縁膜5aが設けられる。絶縁膜5aには、例えば、SiO2などが用いられる。
絶縁膜5aの下に、温度制御部6が設けられる。温度制御部6は、基板5の主面に対して平行な面内で熱勾配を形成する。温度制御部6は、導電層20の温度を、供給部10の温度とは異なる温度に制御する。温度制御部6には、例えば、微小流路を用いる微小ヒートポンプが用いられる。また、温度制御部6には、例えば、ペルチエ素子を用いても良い。
基板5の一部の上に絶縁層7が設けられる。絶縁層7には例えば、SiO2層などが用いられる。基板5の別の一部の上に、吸着層8が設けられる。吸着層8には例えば、SiO2層などが用いられる。絶縁層7と吸着層8とは、互いに同じ組成の膜でも良く、互いに連続する一体の膜でも良い。吸着層8は、例えば、コールドトラップとして用いられる。吸着層8は、例えば、受動的に熱伝導を調整する機能を有しても良い。または、吸着層8には、能動的に熱伝導を調整するペルチエ素子が用いられる。ただし、この場合において、ペルチエ素子のみでは電気的な絶縁が得られないため、基板5と導電層20との間に、電気的な絶縁を得られるように図面には描かれていない絶縁膜などを設ける。導電層20から基板5まで、書き込み7eが接続される。書き込み電極7eは、例えば、吸着層8を貫通して基板5に接続されるような電極(例えばプラグやビアなど)でも良い。吸着層8がペルチエ素子である場合、ビアホール壁面は他の部材と絶縁される。
吸着層8の上に、導電層20が設けられる。導電層20の電気的特性を検出するための検出電極20e(第1電極21及び第2電極22)が設けられる。検出電極22eは、例えば、絶縁層7を貫通して基板5に接続されるような電極(例えばプラグやビアなど)でも良い。
一方、温度制御部6の上に、複数の供給部10(例えば、第1〜第3供給部10a〜10c)が設けられる。供給部10は、例えば、細線部11(例えば第1〜第3細線部11a〜11c)と、供給源12(第1〜第3供給源12a〜12c)と、を含む。例えば、供給源12は、温度制御部6の上に設けられる。細線部11は、例えば、供給源12から導電層20に向けて延びる。供給部10の細線部11は、供給源12と導電層20との間に延在する。
例えば、供給源12(第1〜第3供給源12a〜12c)に接続された書き込み電極13(第1〜第3書き込み電極13a〜13c)が設けられる。書き込み動作において、書き込み電極13に書き込み信号Swを供給し、例えば、書き込み信号Swに応じた電流によるマイグレーションにより、細線部11から分子15が導電層20に供給される。細線部11は、情報書き込み機構の少なくとも一部となる。
この例では、封止部5hが設けられる。封止部5hは、例えば、基板5と接続される。封止部5hと基板5とで形成される空間5sの内部に、導電層20及び供給部10が配置される。分子15は、空間5s内に封止される。複数のメモリ部25が設けられる場合において、複数のメモリ部25のそれぞれが、独立した空間5s内に密閉されても良い。また、複数のメモリ部25が、1つの空間5s内に密閉されても良い。
以下、不揮発性記憶素子111及び不揮発性記憶装置211の動作の例について説明する。
書き込み動作においては、制御部40(図6(a)及び図6(b)では図示しない)に書き込みデータ及び書き込み命令を与える。制御部40は、温度制御部6に、導電層20を低温に設定させ、供給部10を高温に設定させる。導電層20に吸着された分子15の移動が容易になる。このとき、複数の供給部10のうちでデータ書き込みに使用するものだけを高温にしても良い。
導電層20と供給部10との間に書き込みパルス(書き込み信号Sw)を加えることで、供給部10から分子15を導電層20上に供給する。供給する分子15の数は、1または複数である。この供給においては、例えば、電流マイグレーション、電界マイグレーション、熱拡散、凹断面弾性表面波、中空断面弾性表面波、カンチレバー、または、フォノンによる射出機構などが用いられる。供給のタイミング、及び、複数の供給部10から供給する供給部10の選び方などは、上記書き込みデータに応じて、制御部40が定める。分子15の供給において、電流や電界によるマイグレーションを利用する場合、例えば、導電層20の電位に対して、供給部10の電位を低くする。例えば、導電層20の電位をプラスまたは接地電位に設定し、供給部10の電位をマイナス電位に設定する。
供給部10から供給された分子15は、導電層20の金属的表面に吸着される。分子15は、導電層20の原子配置によって定まる特定の位置に吸着される。
吸着されている分子15と隣接する部位に、新たな分子15が吸着された場合、物理的な要因によって定まる特定の規則によって、吸着されていた分子15が元の位置から隣接する別の位置などへ移動する。新たな分子15の導入状態と、先に吸着されていた分子15の配置と、により、吸着されていた分子15の移動後の状態が定まる。新たな分子15の供給パターンに対して、導電層20上における分子15の吸着パターンが定まる。
読み出し動作においては、制御部40に読み出し命令を与える。制御部40は、磁場印加部50に、磁場Hexを発生させる。例えば、制御部40が読み出し開始トリガを磁場印加部50に加えると、磁場印加部50は、磁場Hexの強さを時間的に変動させる。磁場Hexの方向は、記憶本体部分(導電層20)の金属的な表面に対して実質的に垂直である。磁場Hexの極性は、任意である。磁場Hexの方向は、導電層20の主面に対して垂直な成分を有する。例えば、磁場Hexの方向は、導電層20の主面に対して実質的に垂直である。
磁場Hexの強さを変化させている状態で、検出部30で、導電層20の電気的特性の変化(時間変動)を検出する。電気的特性の変化は、抵抗値、電流値、電圧値、抵抗値の微分値、電流値の微分値、及び、電圧値の微分値の少なくともいずれかの変動を含む。電気的特性の変化は、時間的な変動を含む。
検出された電気的特性の変化を、例えば、AD変換回路により逐次AD変換して、バッファ部32に逐次送る。
導電層20の電気的特性の変化は、例えば、ゼロ磁場時から正方向の磁場、及び、ゼロ磁場から負方向の磁場への、一方または両方において取得される。または、正方向の磁場からゼロ磁場、及び、負方向の磁場からゼロ磁場への、一方または両方において取得される。または、正方向の磁場からゼロ磁場を経由して負方向の磁場への変化において、取得される。
例えば、正方向と負方向のデータにおける磁場Hexの絶対値が等しくなるような2つの時間に対して得られた値を、平均しても良い。平均することで、読み出しエラーを低減することができる。
上記データを、読み出しデータと書き込みパターンとを互いに対応させる回路を通すことによって、書き込まれた情報を復元することでき、読み出し動作が実施できる。
以下、実施形態に係る不揮発性記憶素子及び不揮発性記憶装置における書き込み動作及び読み出し動作の具体例について説明する。
例えば、書き込み動作、すなわち、導電層20の上における分子15の配列は以下のようにして行われる。
例えば、導電層20として、Cuを用いる。例えば、Cuの(111)表面に対して、[1/2 −1/2 0]方向の最近接原子間距離を単位長さとする単位ベクトルをuとおく。[0 1/2 −1/2]方向の最近接原子間距離を単位長さとする単位ベクトルをvとおく。単位ベクトルuとvとの角度は、120度である。単位ベクトルu及びvを用いて、各格子点の座標(u,v)が、uの整数m倍、及び、vの整数n倍によって(m,n)と表されるような斜交座標を設定する。
本実施形態において、例えば二進法で「10110100」の情報を書き込む場合、以下の書き込みプロトコルを実施する。
例えば(u,v)が(0,0)、(1,1)、(2,1)に対応する書き込み電極13に、分子15(例えばCO分子)を供給するパルスを印加する。
1単位時間の時間の経過をさせる。これにより、分子セルオートマトンの動作が実行される。単位時間は、例えば、導電層20の種類、分子15の種類、及び、温度などの条件に基づいて適切な値が用いられる。
次のステップにおいて、(1,0)、(3,1)に、分子15を供給するパルスを加える。
この後、再び1単位時間の時間を経過させる。これにより、分子セルオートマトンの動作が実施される。
次のステップにおいて、導電層20の上の(1,0)、(0,1)には既に分子15が存在しているため、これら分子15を導電層20からプローブ15または供給源10へ移動させるパルスを加える。このようなパルスは、例えばマイグレーションの向きが逆になるような、前述の供給パルスとは逆向きの電流パルスや、逆向きの電圧パルスによって実現される。
次のステップにおいて(−1,0)、(0,1)、(1,1)、(4,1)に、分子15を供給するパルスを加える。
この後のステップにおいて、2単位時間の時間の経過をさせる。これにより分子セルオートマトンの動作が実行される。
次のステップにおいて、(0,1)に分子15を供給するパルスを加える。
この後のステップにおいて、2単位時間の時間の経過をさせる。分子セルオートマトンの動作が実施される。
以降、適切なプロトコルに従い、書き込み動作を実施する。書き込み情報が異なれば、上記プロトコルの手順を変更する。
一方、読み出し動作においては、例えば、A/D変換読み出し回路を用いる。例えば、読み出し動作において、磁場Hexのスキャンのトリガを加える。ここで、磁場Hexのスキャンが完了する時間をスキャン時間Tsとする。不揮発性記憶素子の、書き込まれる情報の量を、情報量Sとする。情報量Sは、不揮発性記憶素子の仕様に基づいて定められる。NをTs/Sとすると、A/D変換読み出し回路の時間分解能は、N以上である。A/D変換読み出し回路は、2N以上の時間分解能を持つことがより好ましい。このようなA/D変換読み出し回路を用い、磁場Hexの正負方向を両方の特性を読み出して両者を平均することで、読み出しエラーリカバーをおこなう。
例えば、スキャン開始時間tをt0とし(t=t0)、t1、t2、・・・t2Nまでの時間において、導電層20の電気的特性を検出する。この検出においては、例えば、抵抗値の磁場微分値∂R/∂Bex、または、D=C∂R/∂t(ただしC=Ts/Bex)などの値を読み出す。この値をA/D変換する。これにより、t=t0のときDの値D0、t=t1のときの値D1、・・・、t=t2Nのときの値D2Nが得られ、これらの値をバッファ部32に格納する。このとき、0≦n≦2Nであるnに対して、Dn m =(Dn+D2N−n)/2の平均化を、n=Nの場合を除いて行う。これにより、エラーリカバリーが実施できる。
上記のDn m の値を変換テーブルによって変換することで、例えば、「10110100」である元の情報に復元することができる。これにより、読み出し動作が実施できる。
導電層20に、上記の書き込み動作と同様の動作によって追加書き込みすることもできる。また、導電層20に形成された分子15の配列パターンを一度除去し、すなわち、記記憶本体部に書かれた情報を全て消去した後、再度書き込み動作を実施しても良い。
消去動作においては、例えば、制御部40に消去命令を与える。制御部40は、例えば、温度制御部6に、導電層20を高温に設定させ、供給部10を低温に設定させる。すなわち、書き込み動作時の温度勾配とは逆の温度勾配を生成させる。
この温度勾配により、導電層20及びその周囲に吸着されていた分子15が脱離し、低温である供給部10に再吸着される。その後温度勾配を解消することで、消去動作が完了する。消去動作を完了すると、書き込み動作の実施の前の状態に戻る。
また、消去動作において、書き込み動作において印加した電圧とは極性が異なる電圧を導電層20と供給部10との間に印加してもよい。これにより、導電層20に吸着された分子15が導電層20から、供給部10に向けて移動する。
このように、不揮発性記憶素子111及び不揮発性記憶装置211において、書き込み動作、読み出し動作、及び、消去動作が実施可能である。
書き込み動作及び読み出し動作において、導電層20の温度は低く維持される。一方、供給部10の温度は、導電層20の温度よりも高く設定される。この温度の設定は、温度制御部6により実施される。例えば、温度制御部6のうちの供給部10に対向する第1部分6aの温度は、温度制御部6のうちの導電層20に対向する第2部分6bの温度よりも高い。第1部分6aの温度と第2部分6bの温度との差の絶対値は、例えば10度以上である。例えば、分子15としてCOを用いる場合は、導電層20の温度は77K(ケルビン)以下に設定される。一方、供給部10の温度は、例えば、210K以上に設定される。導電層20としてバルクのCu板を用いた場合には、導電層20の温度は、例えば、40K以下とする。例えば、導電層20として、Pt層の上に設けられたCu層を用いる場合には、導電層20の温度は、60K以下とする。
実施形態に係る不揮発性記憶装置211においては、電気伝導性層(導電層20)と、電気伝導性層上に分子または原子を供給する部分(供給部10)と、を含むメモリ部25が設けられる。不揮発性記憶装置211においては、電気伝導性層に電流を流すための複数の電極がさらに設けられる。この電極は、例えば、書き込み電極13(例えば、第1〜第3書き込み電極13a〜13c)、及び、検出電極20e(第1電極21及び第2電極22)を含む。不揮発性記憶装置211においては、電気伝導性層に磁場を加える部分(磁場印加部50)がさらに設けられる。不揮発性記憶装置211は、2ビット以上の情報を記憶することができる。
例えば、書き込み動作において、電流によるマイグレーションにより分子15を供給する。また、書き込み動作において、電界によるマイグレーション、または、熱拡散などにより分子15を供給する。書き込み電極は、導電層20と供給源12の少なくともいずれかに設けられる。ただし、実施形態はこれに限らず、書き込み電極13は必要に応じて設けられ、省略しても良い。
以下、不揮発性記憶素子111及び不揮発性記憶装置211に含まれる要素の例について説明する。
基板5には、例えば、Siなどの半導体基板が用いられる。基板5に用いられる半導体基板は、例えば、Si、SiGe、GaAs、InP、化合物半導体、または、有機機半導体などを含む。基板5として、例えばSOI(Silicon On Insulator)などの半導体層を含む基板を用いることができる。基板5には、例えば、各種素子や配線や回路などが設けられても良い、基板5には、例えばガラス基板を用いても良い。ガラス基板などの基板5の上に、例えば、多結晶Siや有機半導体などを成膜することで薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)などが形成されても良い。
基板5には、絶縁体基板を用いることができる。絶縁体基板として、ガラス基板、Al2O3、SiO2、MgO、無機アモルファス体、無機結晶体、または、有機絶縁体などを用いることができる。
基板5として、金属基板を用いることができる。この金属基板としては、例えば、Cu、Ag、Fe、FeB、または、NdFeBなどを用いることができる。
基板5の最上層に絶縁膜5aを設けることができる。絶縁膜5aには、例えば、SiO2などが用いられる。絶縁膜5aは、例えば、熱酸化法により形成される。または、絶縁膜5aは、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの堆積法により形成される。絶縁膜5aには、例えば、Al2O3のような無機絶縁膜、または、有機絶縁膜などを用いても良い。
温度制御部6として用いられる微小流路として、SiO2、ZrO2、無機材料、または、有機材料などを用いることができる。
温度制御部6として用いられるペルチエ素子は、例えば、Bi2Te3系(Sb、Se、In、Tl等が添加されていても良い)を含む。ペルチエ素子には、100℃以下でZT(無次元性能指数Zと絶対温度Tとの積)の極大を有する材料を用いることが好ましい。例えば、熱電材料として、100℃以下においてZTが1に近い、または、1よりも大きくなる材料を用いることもできる。
温度制御部6としてヒータを用いることができる。ヒータの電気抵抗は、周辺絶縁体よりは低く、接続配線よりは高い。
導電層20の少なくとも表面は、単結晶であることが好ましい。導電層20には、例えば、Cu、Au、Ag、Ni、Pt、Nd、Sm、3d金属、4f金属、4d金属、5d金属、または、典型元素金属などの、金属を用いることができる。導電層20には、例えば、TiN、ZrN、CuAu、FeB、NdFeB、RuO、ReO、または、SrRuOなどの、複数の元素を含む材料を用いることができる。導電層20には、有機金属を用いることができる。例えば、導電層20には、TTF−TCNQ(テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン)を用いることができる。
供給部10の細線部11には、導電層20と同じ材料を用いることができる。例えば、導電層20としてCuを用い、細線部11にCuを用いることができる。また、細線部11には、導電層20とは異なる材料を用いても良い。細線部11には、例えば、導電体(例えば金属)、半導体、または、絶縁体を用いることができる。
細線部11には、ナノワイヤを用いることができる。ナノワイヤとして、例えば、CNT、Si、ZnO、Zn、GaAs、GaN、WO、MoO、または、MoSを用いることができる。また、細線部11には、ウィスカ等を用いることができる。細線部11には、例えば、AgGeTe、AgTe、ZnTe、ZnGeTe、CuS、CuGeS、CuSe、または、CuGeSeを用いることができる。
分子15の導入機構としては、電流マイグレーション、電界マイグレーション、熱拡散、凹断面弾性表面波、中空断面弾性表面波、カンチレバー、または、フォノンなどを用いることができる。
分子15には、CO、NO、SO2、NF3、CF2Cl2、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)などを用いることができる。これらは、極性分子である。
分子15には、電気双極子モーメントを持つ分子を用いることが好ましい。分子15には、水素の含有量が少ない分子を用いることが好ましい。これにより、安定性が向上する。
分子15には、例えば、電気四重極子を持つ分子を用いることができる。なお、電気四重極子を持つ分子は、電気双極子を持たない。分子15には、電気双極子または電気四重極子のどちらも持たない分子を用いることもできる。例えば、希ガスは、電気双極子または電気四重極子のどちらも持たないが、電気双極子や電気四重極子による力に匹敵するような分散効果(ロンドン力)を持つ。
分子15として、例えば希ガスの分子を用いることができる。分子15として、Ar、Kr、または、Xeを用いることができる。このように、分子15には、単原子の分子を用いることもできる。分子15として、CO2またはN2を用いることができる。これらは、非極性分子である。
分子15には、例えば、H2、D2、O2、HCl、HBr、CO2、CS2、H2O、N2O、H2S、SO2、CH4、CCl4、C2H4、C2H6、n−C4H10、i−C4H10、C6H6、NH3、H2CO、CH3OH及び(CH3)2COの少なくともいずれかを用いることができる。また、実施形態はこれに限らず、分子15には、任意の物質を用いることができる。
例えば、供給された分子15が導電層20外に出る場合がある。温度制御部6により温度勾配を調節することで、導電層20における分子15の吸着力が強くなり、そのような分子15が導電層20に戻らないようにすることができる。また、導電層20を、分子15の吸着力が強い材料で取り囲んでも良い。この機構として、例えば絶縁層7(コールドトラップ)を用いることができる。これにより、そのような分子15が導電層20に戻らないようにすることができる。
温度制御部6の構成及びその形成方法の例について説明する。
例えば、微小流路を用いるヒートポンプを形成する場合には、例えば、基板5の上に絶縁膜5aとなるSi酸化膜を形成した後、微小流路を作製する部分にリソグラフィなどにより溝を形成する。溝の内部に犠牲Siを埋め込む。犠牲Siと溝の周囲のSi酸化膜の上に、Si酸化膜を形成する。上記Si酸化膜を形成後、例えば、犠牲Siへ貫通する貫通孔を形成する。貫通孔は、外部のポンプと接続する部分に設けることが効率的である。ただし、貫通孔は、必ずしも外部ポンプと接続する部分に設けなくても良い。貫通孔を形成後、ドライエッチングまたはウェットエッチングなどにより上記犠牲Siを除去する。このような工程により、ヒートポンプに接続される微小流路が形成される。上記微小流路の上に、金属薄膜を成膜する。金属薄膜として、例えばCu薄膜を成膜する。
温度制御部6としてペルチエ素子を形成する場合には、絶縁膜5aの上に、例えば、Bi2Te3系の熱電材料を含む膜を形成する。熱電材料は、例えば、Sb、Se、In、Pb及びTlなどを含有しても良い。実施形態において、p形またはn形の熱電材料を用いることができる。例えば、第1導電形(例えばn形)の熱電材料を形成後、リソグラフィ及びエッチングによりこの熱電材料を加工する。加工された熱電材料及び表面が露呈した絶縁膜5aの上に、第2導電形(例えばp形)の熱電材料を形成する。この後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により、平坦化する。CMP後、リソグラフィ及びエッチングにより、熱電材料の不要部分を除去する。上記の熱電材料のパターン上に、Si酸化膜などの絶縁膜を成膜する。この絶縁膜の上に、金属薄膜(例えばCu薄膜)を成膜する。
温度制御部6の形成におけるリソグラフィのパターンサイズは、シリコン半導体メモリにおけるリソグラフィのパターンのサイズよりも大きい。このため、パターン合わせに係る工程が簡略化できる。特に、熱的構成に関する部分については、パターンずれの許容度は広い。このため、実施形態においては、コストは低くできる。
例えば、温度制御部6の上のCu薄膜にリソグラフィとエッチング処理を施すことで、Cu薄膜の導電層20と、Cu薄膜の供給源12と、を形成する。供給源12(供給部10)の数が多いと、不揮発性記憶素子111における書き込み速度が向上する。製造時の歩留まりと、書き込み速度などの特性と、を考慮して、供給源12(供給部10)の数が適切に定められる。
導電層20の電気的特性を検出するための検出電極20e(第1電極21及び第2電極22)の形成は、以下のように実施する。例えば、基板5に予め配線パターンを形成しておき、その配線に接触するように導電層20に電気的に接続されている部分から縦穴を形成した後に、金属またはCNTなどを埋め込むことで、配線へのコンタクトが得られる。または、導電層20の外周に設けられた配線と、導電層20と、を例えば金属線で接続する。第1電極21及び第2電極22の構成及び形成方法は任意である。
細線部11の形成方法の例について説明する。
細線部11を導電層20と同じ材料で形成する場合は、例えば、導電層20及び供給源12の形成のためのリソグラフィにより、導電層20と供給源12とを結ぶような、幅の狭いブリッジ構造を作製する。その後このブリッジ構造をエッチングすることにより、ブリッジ構造の幅を狭めることで細線部11が得られる。例えば、導電層20と供給源12との間に電流を流しつつエッチングし、量子コンダクタンスが観測されるタイミングでエッチングを終了することで、高い精度の加工を行うことができる。なお、細線部11は、一原子によるナノワイヤでも良く、複数の原子の幅を有していても良い。細線部11は、分子15を個別に輸送できるように作製される。細線部11に関する上記の形成方法は、導電層20としてCuを用いる場合の他、Au、Ag、Ni、Fe、Co、Pt、Nd及びSmなどの単体金属、FeB、NdFeB、TiN、ZrN、RuO、SrRuO、ReOなどの複数元素による金属、並びに、BEDT−TTF及び導電性ポリアセチレンなどの有機金属などにおいても適用できる。
例えば、細線部11の形成において、細線部11となる上記のブリッジ構造を形成した後に、ブリッジ構造に電流を流すことによるエレクトロマイグレーションによってブリッジ構造をスリミングする方法を用いることもできる。この方法も、上記と同様の各種金属の場合に採用できる。
導電層20として、AuやAgなどの比較的融点が低い材料(例えば1200℃以下の材料)を用いる場合、電流を流して融点近くまでナノワイヤを昇温することにより、誘導磁場によるピンチ効果によってナノワイヤが細くなる現象を利用して、細線部11を形成することができる。細線部11は、任意の方法で形成できる。
細線部11に導電層20とは異なる材料を用いる場合、導電層20と供給源12との間に、ナノワイヤ発生源を形成することで、細線部11を形成することができる。例えば、導電層20としてCuを用いる場合、細線部11となる位置にS(硫黄)膜を堆積後、アニールなどによりCuSを形成する方法を用いることができる。または、例えば、Sをイオンインプランテーション法により注入することでCuSを形成する方法が用いられる。CuSにおいては、電界により微小フィラメントを伸張させる。導電層20と供給源12との間に電界を加えることで、CuSの微小フィラメントを導電層20と供給源12との間に架橋させる手法により細線部11が形成できる。この手法は、導電層20としてCu金属膜を用いる場合の他に、導電層20として任意のイオン伝導体材料を用いることができる。例えば、AgS、AuS、AgI、CuI、AgCuSeなどのフィラメントを形成することができる。
細線部11を形成する方法として、導電層20からナノワイヤを成長させる手法を用いても良い。例えば、導電層20上に、成長核または触媒の、微粒子17を形成する。なお、微粒子17は、供給源12の上に形成しても良い。以下では、微粒子17を導電層20の上に形成する例について説明する。
例えば、細線部11としてCNTを用いる場合、導電層20の上に、Feなどの微粒子(微粒子17)を形成する。例えば、細線部11としてSiナノワイヤを用いる場合は、Auなどの微粒子(微粒子17)を形成する。細線部11として、α−Fe2O3のナノワイヤを用いる場合は、GaやSnの微粒子(微粒子17)を形成する。ナノワイヤは、金属でも絶縁体でも半導体でも良い。ナノワイヤの幅は狭い。例えば、ナノワイヤの延在方向に直交する方向(幅方向)において、ナノワイヤ上に複数の分子15が存在しないことが好ましい。また、ナノワイヤの幅方向に2つ以上の分子15が近接して存在しないことが好ましい。
1つの細線部11(供給源12)に対して設けられる微粒子17の数は1以上であることが好ましい。ただし、微粒子17の数は任意である。微粒子17の数は、供給源12の数と同じであることがより好ましい。成長核または触媒の、微粒子17は、例えば、リソグラフィによって形成できる。また、FIB(Focused Ion Beam)による蒸着により形成できる。
例えば、成長核(微粒子17)を基点として、例えばCVD法などによりナノワイヤを配向成長させる。ナノワイヤの配向成長条件は、それぞれの材料ごとに適切な条件が用いられる。ナノワイヤの配向成長において、成長核または触媒の、微粒子17が置かれた面(導電層20の主面)に対して垂直な方向にナノワイヤが成長する。この状態から、導電層20の主面に対して垂直方向にナノワイヤをさらに成長させる。これにより、導電層20と供給源12との間に、ナノワイヤからなるブリッジが形成される。この後、例えば、適切な液体に浸すことでナノワイヤを倒伏させ、その後乾燥させる。これにより、細線部11が形成できる。
倒伏法を用いる場合、導電層20と供給源12との間のギャップ部分に、熱伝導度が低くかつ化学的に活性な表面を持つ材料をあらかじめ埋め込んだ後に、成長核または触媒の、微粒子17を形成し、ナノワイヤを成長させた後に倒伏させても良い。この方法においては、先に挙げた方法と比べ、ナノワイヤ倒伏時にワイヤがたわむような不良を生じにくい液浸条件を得やすい。
導電層20からナノワイヤを成長させる方法として、導電層20から直接的にナノワイヤを成長させる方法がある。例えば、導電層20及び供給源12をリソグラフィにて作製する際に、リソグラフィ用のマスクとして、特定の条件下で容易に分解されるマスク材を用いる。その後、エッチングによる加工によって導電層20及び供給源12を形成する際に、マスク材によって保護されていない側面から除去されるようなエッチングを行う。すなわち、導電層20上のマスク材と、供給源12上のマスク材と、が、ひさしのように突出して残っているような状態にする。その後、導電層20の側面上、及び、供給源12の側面上に、成長核または触媒の、微粒子17を付着させる。その後、ナノワイヤの生成密度が低いような成長条件にてナノワイヤを成長させる。これにより、導電層20と供給源12とをつなぐ単一のナノワイヤのブリッジを形成することができる。この後、例えば、熱処理を行うことで、マスク材を除去する。例えば、例えばCNTやSiのナノワイヤは、800℃以下の温度では安定である。このとき、800℃未満の温度で分解して昇華するマスク材を用いる。そして、ナノワイヤを形成した後に、例えば、800℃に昇温することで、マスク材を除去する。
細線部11は、細線部11の断面が凸の形状でも良いし、断面が凹である部分が存在しても良いし、内部に中空部分が存在しても良い。細線部11として、例えばCNTなどを用いる場合、細線部11の断面に凹となる部分、または、内部に中空部分が存在する状態となる。このような場合において、弾性表面波、音響フォノン、光学フォノン、及び、それらのソリトンによって書き込み動作を実施しても良い。細線部11の断面が凸の場合、または、内部に中空部分が存在する場合において、電流や電界によるマイグレーションによる書き込み動作、または、熱拡散による書き込み動作を用いることができる。
細線部11の形状は、例えば、エアギャップをブリッジするような形状を有する。但し、実施形態において、細線部11の形状は任意である。細線部11として、例えば、導電層20と供給源12との間に、導電層20及び供給源12とは化学反応性の異なる材料を充填し、その化学反応性の異なる材料の表面部を通過する微小な線部を用いることができる。このような線部は、例えば、導電層20と供給源12との間に高い電圧を加えることで絶縁破壊を生じさせ、金属的なフィラメントを形成するような手法により形成できる。上記のフィラメントの材質は、導電層20及び供給源12と同じでも良い。フィラメントは、導電層20及び供給源12に含まれる元素を含有しても良い。フィラメントは、導電層20及び供給源12に含まれない元素を含有しても良い。
細線部11は、例えば、固定的であり、細線部11の形状及び配置が実質的に変化しない。また、実施形態において、細線部11は動的であり、細線部11の形状及び配置の少なくともいずれかが変化可能でも良い。例えば、細線部11には、圧電体などにより駆動可能な微小なカンチレバーを用いても良い。例えば、圧電体に加える電圧により、カンチレバーの先端部と、導電層20と、の間の距離が変化可能でも良い。カンチレバーの先端部と、供給源12と、の間の距離が変化可能でも良い。
また、実施形態において、細線部11は必要に応じて設けられ、省略可能である。例えば、供給部10において、分子15を射出可能な機構が設けられる。導電層20に、分子15を捕獲可能な機構を設けても良い。供給部10に、分子15を射出可能な機構が設けられ場合において、導電層20に分子15を捕獲可能な機構を設けなくても良い。
図7は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図7に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶素子112及び不揮発性記憶装置212においては、検出部30に、切り替え部31と、バッファ部32と、が設けられる。バッファ部32には、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、フラッシュメモリ、及び、HDD(Hard Disk Drive)の少なくともいずれかを用いることができる。バッファ部32は、情報を一時的または不揮発に記憶する機能を有する。バッファ部32の記憶方式及び構成は任意である。切り替え部31は、複数のメモリ部25(例えば第1〜第4メモリ部25a〜25dなど)と、バッファ部32と、の間の接続を切り替える。バッファ部32は、検出部30とは別に設けても良い。
例えば、メモリ部25の電気的特性の変化に関するデータが、バッファ部32に記憶される。バッファ部32に記憶されたデータが、制御部40に供給される。例えば、切り替え部31により、複数のメモリ部25のうちの1つが選択され、その1つが、バッファ部32に接続される。選択されたメモリ部25の電気的特性(例えば導電率の変化δG)が、バッファ部32に格納される。メモリ部25を順次切り替えて、電気的特性(例えば導電率の変化δG)が時系列的に、バッファ部32に格納される。バッファ部32に格納された電気的特性(例えば導電率の変化δG)が、制御部40により、データ格納部45に格納されたデータと比較される。例えば、データの変換のテーブルが用いられる。これにより、記憶されたデータ(情報)が再生される。データの変換のテーブルは、複数のメモリ部25において共通して用いることができる。
このように、実施形態において、不揮発性の超多値のメモリ部25に加えて、メモリ部25に接続されたバッファ部32を用いても良い。切り替え部31及びバッファ部32の少なくともいずれかは、基板5の上に設けることができる。または、切り替え部31及びバッファ部32の少なくともいずれかは、基板5とは別に作製されても良い。
なお、例えば、電子機器におけるサンプリング速度(レート)は、例えば、2GS/s(ギガサンプリング/秒)である。このとき、メモリ部25からバッファ部32への格納は、例えば、0.5ns/bitで実施される。一方、例えば、バッファ部32に格納したデータを変換テーブルにしたがって実メモリデータに変換する処理の速度は、例えば、ビットあたり約100nsとすることができる。
バッファ部32は、不揮発性記憶素子の超多値記憶部(導電層20)の1個の記憶容量と同程度以上の容量を有することが好ましい。不良に対するリカバリ機構を付与することができる。この場合には、バッファ部32の容量は、1つの超多値記憶部の容量よりも若干大きくするのが適正である。リカバリ機構を付与しない場合は、バッファ部32の容量は超多値記憶部の容量と同じ容量であることが適正である。
バッファ部32は、複数のメモリ部25で共用できる。1つのバッファ部32に対するメモリ部25の数が多いとコストが低減できる。1つのバッファ部32の数に対するメモリ部25の数が少ないと、読み出し速度が向上する。
制御部40には、例えば、超多値記憶部から読み出される抵抗値または電流値または電圧値の微分値または差分値を得るような回路を設けることができる。制御部40は、例えば、超多値記憶部から読み出される抵抗値または電流値または電圧値の微分値または差分値を、AD変換するような回路を有することができる。制御部40は、例えば、超多値記憶部から読み出される抵抗値または電流値または電圧値の微分値または差分値からAD変換された値を、バッファ部32に記憶させる回路を有することができる。
制御部40には、例えば、要求されたデータが実際に書き込まれている超多値記憶部を選択し、バッファ部32に接続するような、切り替え回路を設けることができる。切り替えを頻繁に行うことで読み出し速度が低下する。このため、シーケンシャルな読み出しの速度と比べて、ランダムアクセスによる読み出し速度が低下する。実施形態に係る不揮発性記憶装置を、例えば、情報量が大きい、例えばアーカイブデータなどを記憶する用途に応用する場合には、読み出し速度の低下は問題にならない。
制御部40には、書き込み電圧パターンまたは電流パターンに対する、バッファ部32に記憶されている読み出しパターンを対応させる回路を設けることができる。このような回路として、超多値記憶部における動作に基づく変換関数の専用計算回路を用いることができる。または、一部または全部のパターンマッチによるテーブル式の変換回路を用いることができる。
実施形態に係る不揮発性記憶装置においては、書き込まれたパターンに対して読み出しパターンを得る関数が複雑である。このため、書き込まれた情報に対する不正アクセスへのセキュリティに優れる。
制御部40には、書き込み情報に対して書き込み電圧パターンまたは電流パターンを対応させる回路を設けることができる。書き込み情報のそのままの書き込み電圧パターンを採用することも可能である。書き込み情報に対して書き込み電圧パターンまたは電流パターンを対応させる回路を設けることにより、書き込みを適正化することで書き込み速度を向上できる。
制御部40には、複数のメモリ部25のうちで、書き込み情報を記憶するに適切なメモリ部25を選択するような回路を設けることができる。
本実施形態に係る不揮発性記憶素子及び不揮発性記憶装置においては、例えば、電気伝導性基板(導電層20)が設けられる。その電気伝導性基板(例えば金属層)の上に分子15(原子を含む)が吸着し、吸着された分子15(原子を含む)同士の相互作用により、互いの吸着位置を変動させる機構(セルオートマトン機構)が設けられる。この機構の少なくとも一部として供給部10が用いられる。さらに、磁場発生機構(磁場印加部50)が設けられる。磁場発生機構の発生する磁場Hexに対する、電気伝導性基板の電気抵抗変化を一時記憶する機構(例えばバッファ部32)がさらに設けられる。所期パターンと照合することで記憶されたデータ値に変換する機構(例えば制御部40)がさらに設けられる。
本実施形態においては、導電層20上における分子15の配置(配列パターン)により、情報を記憶する。1つのメモリセルにおいて、多値の情報が記憶可能である。本実施形態においては、大規模な記憶容量を高精細なリソグラフィを用いないで実現する。例えば、セルオートマトン機構により書き込み動作を実施し、例えば、ユニバーサルコンダクタンスフラクチュエーションに基づいて記憶した情報を読み出す。実施形態においては、例えば、20pbit/inch2(ペタビット/平方インチ)の記憶密度が得られる。
本実施形態に係る不揮発性記憶素子及び不揮発性記憶装置は、例えば、クラウド向け超大規模アーカイブメモリに用いることができる。この用途においては、書き込まれた(記憶された)データの多くは書き換えないため、本実施形態の適用が適している。なお、高速書き換えが必要な部分に、キャッシュを用いることで対応できる。
図8(a)〜図8(d)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図8(a)に表したように、基板5の上に、温度制御部6(例えばペルチエ素子)を形成し、その上に、絶縁層7及び吸着層8を形成し、その上に、導電層20を形成する。一方、温度制御部6の上に、供給源12を形成する。このとき、各種の電極も形成する。導電層20及び供給源12におけるパターン加工は、粗いリソグラフィが用いられる。
図8(b)に表したように、導電層20の上に、成長核または触媒の、微粒子17を形成する。微粒子17は、例えば、鉄触媒ドットパターンである。
図8(c)に表したように、微粒子17から、細線部11となるナノワイヤを成長させる。
図8(d)に表したように、導電層20、供給源12及び細線部11を覆うように、封止部5hを設ける。封止部5hには、例えば、封止部5hと同じ材料が用いられる。ただし、封止部5hの材料は任意である。封止部5hで囲まれた空間5sに、分子15を導入する。封入後、配線を作製しても良い。または、予め配線が形成された基板5を用いても良い。
これにより、実施形態に係る不揮発性記憶素子が作製される。この不揮発性記憶素子を磁場印加部50の磁場印加領域に配置する。これにより、実施形態に係る不揮発性記憶装置が作製される。
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図9に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶素子120は、メモリ部25と、検出部30と、を備える。また、実施形態に係る不揮発性記憶装置220は、実施形態に係る不揮発性記憶素子120と、制御部40と、を備える。
不揮発性記憶素子120は、メモリ部25と、検出部30と、を含む。この例では、複数のメモリ部25(例えば、第1メモリ部25a及び第2メモリ部25bなど)が設けられている。
メモリ部25は、導電層20と、分子層26と、電圧印加部18と、を含む。分子層26は、導電層20の上に設けられ、少なくとも複数の分子27を含む。電圧印加部18は、供給される書き込み信号Swに応じて、分子層26に電圧を印加する。分子27は、印加された電圧により、複数の電気的状態をとり得る。電気的状態は、例えば分子内の電荷の分布状態である。分子内の電荷の分布状態は、例えば、分子内の電荷の偏りの状態に相当する。印加された電圧によって、導電層20上の分子27の電気的状態(分子内の電荷の分布状態)の面内方向への配列パターンが形成される。すなわち、電圧印加部18は、導電層20上における分子27の、書き込み信号Swに応じた、分子内の電荷の分布状態の面内方向への配列パターンを形成させる。
図10は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示する模式図である。
図10は、分子27としてDDQが用いられる例を示している。図10に表したように、第1状態”ST01”では、上下の酸素サイトにおいて電子が不足している。第2状態”ST02”においては、上側の酸素サイトにおいて電子が飽和しており、下側の酸素サイトにおいて電子が充足している。第3状態”ST03”においては、上下の酸素サイトにおいて電子が充足しており、ベンゼン環において電子が不足している。第4状態”ST04”においては、上下の酸素サイトにおいて電子が飽和している。このように、分子27は、例えば4つの電荷の分布を有することができる。
分子においては複数の原子と複数の原子間結合を有するため、分子内の電荷の偏り方によって分子は複数の電気的状態(電荷の分布状態)、例えば上記の第1〜第4状態”ST01”〜”ST04”を取りうる。このような複数の状態の面内配列を、分子内の電荷の分布状態(電気的状態)の面内方向への配列と呼ぶ。上記分子外から加えられた書き込み電圧により、例えば、分子内の電荷の分布状態の面内方向への配列パターンが形成される。
または、例えば、書き込み信号Swに応じた、分子の配向状態の面内方向への配列パターンが形成される。この配列パターンは、分子層26における分子27を単位セルとするセルオートマトン機構により形成される。
例えば、書き込み前において全ての分子を例えば上記の第1状態”ST01”としておく。書き込み電圧によって、例えば、第2状態”ST02”の分子を生成する。第2状態”ST02”の分子の隣の分子が第3状態”ST03”となるように、書き込み電圧を加える。すると、第2状態”ST02”の分子に隣接している第3状態”ST03”の分子とは反対側の、第1状態”ST01”であった分子が第2状態”ST02”へと遷移し、元の第2状態”ST02”の分子は第3状態”ST03”へと遷移する。このようにして隣接分子へ次々に電気的配列状態が伝播し、その伝播はセルオートマトン機構により制御できる。
この例では、複数の電圧印加部18(第1〜第3電圧印加部18a〜18c)が設けられる。電圧印加部18には、第1の実施形態に関して説明した細線部11のいずれかを用いることができる。
検出部30は、導電層20に印加される磁場Hexを変化させたときの、上記の配列パターン(例えば電荷の状態の配列パターン)に応じた導電層20の電気的特性の変化を検出する。
この場合も、制御部40は、検出部30により検出した上記の変化を、予め記憶されたデータと比較することにより、書き込み信号Swにより書き込まれた情報を読み出す。本実施形態においては、基板5、バッファ部32及びデータ格納部45などが設けられる。これらの構成及びその機能については、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
図11(a)及び図11(b)は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的図である。
図11(a)は平面図である。図11(b)は、図11(a)のA1−A2線断面図である。
図11(a)及び図11(b)に表したように、第2の実施形態に係る不揮発性記憶素子121及び不揮発性記憶装置221においても、例えば、冷却部4、基板5、絶縁膜5a、温度制御部6、絶縁膜7h、書き込み電極7e、導電層20及び検出電極20eが設けられる。この例では、メモリ部25の導電層20として、例えば、Au薄膜が用いられる。
導電層20の上に分子層26が設けられる。この例では、分子層26の分子27として、例えば、DDQの分子が用いられる。分子層26(例えばDDQの2分子層)の形成には、例えば、塗布法、熱蒸着やCVDなどの任意の方法を用いることができる。
一方、温度制御部6の上に、複数の書き込み電極13(第1〜第3書き込み電極13a〜13c)が設けられる。第1〜第3書き込み電極13a〜13cのそれぞれの上に、第1〜第3電圧印加部18a〜18c(電圧印加部18)が設けられる。電圧印加部18は、書き込み電極13と分子層26との間に延在する。
例えば、書き込み電極13の上に、成長核または触媒の、微粒子17が設けられる。電圧印加部18は、微粒子17から分子層26に向けて延びる。但し実施形態はこれに限らず、電圧印加部18は、第1の実施形態に関して説明した細線部11と同様の任意の構成を有することができる。
例えば、書き込み動作において、書き込み電極13に書き込み信号Swが供給され、電圧印加部18により、書き込み信号に応じた電圧が分子層26に印加される。電圧印加部18は、情報書き込み機構となる。
導電層20、分子層26及び電圧印加部18は、基板5と封止部5hとで形成される空間5s内に格納される。封止部5hは、分子層26の形成前に形成しても良い。封止部5hは、分子層26の形成後に形成しても良い。空間5s内に、分子27となるDDQ分子を注入後、分子27を空間5s内に封止する。
図12は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的平面図である。
図12は、分子層26の上面図である。分子層26は、例えば、DDQの2分子層であり、図12は、分子層26の最表面の部分を例示している。
図12に表したように、分子層26において、上層のDDQ分子は4つの状態、すなわち、第1状態ST”1”、第2状態ST”2”、第3状態ST”3”、及び、第4状態ST”0”を取り得る。図12は、4つの状態の配置の例を模式的に示すものである。図12における4つの状態は、図10に関して説明した第1状態ST01〜第4状態ST04のそれぞれと一致しても良く、一致しなくても良い。図12に例示した4つの状態においては、電荷の分布状態が互いに異なる。書き込み動作においては、分子27の電荷の状態が異なる配列パターンを形成する。
以下、書き込み動作の例として、例えば、二進法で「00101011」の値を書き込む場合の1つの例について説明する。
時間単位を「t」とする。1本の書き込み電極13に、例えば1Vの電圧を時間10×tの間印加する。時間10tは、比較的長い時間である。分子27(DDQ)の1つの状態として、上層のDDQの比較的大きな塊を形成する。その後、他の書き込み電極13に、例えば1Vまたは1.6Vの電圧を、例えば、時間単位t(最小の時間)の間印加する。これにより、上層のDDQの別の状態の塊を形成する。上記電圧は、例えば情報「0」に対して1V、情報「1」に対して1.6Vといった単純な対応でも良い。その後、−1.6Vの状態を、例えば単位時間tの間印加し、また次の書き込み情報にしたがって、1Vまたは1.6Vを単位時間tの間印加する。書き込みが終了したら、少なくとも1×104×tの時間の間、その状態を保持する。
読み出し動作においては、第1の実施形態に関して説明した動作を実施する。例えば、ユニバーサルコンダクタンスフラクチュエーションに基づく動作を実施する。消去動作においては、例えば、分子層26を加熱することで、分子27の電荷の状態を均一化する。
本実施形態においても、超多値の記憶が可能で、微細なリソグラフィ加工を用いない不揮発性記憶素子及び不揮発性記憶装置が提供できる。すなわち、大記憶容量の不揮発性記憶素子及び不揮発性記憶装置が提供できる。
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図14は、第3の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式的断面図である。
図14は、図13のA1−A2線断面図である。
図13に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶素子130は、磁性細線70と、積層体80と、電極90と、供給部75と、検出部30と、を備える。本実施形態に係る不揮発性記憶装置230は、不揮発性記憶素子130と、制御部40と、を、備える。
例えば、不揮発性記憶素子130において、基板5が設けられる。基板5の上に、バッファ層83が設けられ、バッファ層83の上に、積層体80が設けられる。基板5の上に、電極90が設けられる。積層体80及び電極90の上に、磁性細線70が設けられる。磁性細線70には、例えば、強磁性または反強磁性またはフェリ磁性などの磁性を示す材料が用いられる。磁性細線70は、導電性である。
上記基板5を覆い、電極90、バッファ層83及び積層体90を覆うように、保護膜92が形成される。図13においては、電極90、バッファ層83及び積層体90などの構造が分かり易いように、保護膜92は透明にしている。実際には、電極90、バッファ層83及び積層体90は、保護膜92に埋め込まれている。また、磁性細線70は、空中に張られた梁のように描かれているが、実際には保護膜92に支持されている。磁性細線70は、保護膜92に形成された溝内に設置しても良い。また、磁性細線70の上面の少なくとも一部が、保護膜92の上面よりも上に配置されても良い。磁性細線70は、保護膜92の支えによって、力学的に強化されている。
基板5は、例えば冷却部4の上に設けられる。冷却部4は、少なくとも磁性細線70を冷却する。磁性細線70の温度は、例えば、77K以下に設定されることが可能である。
この例では、封止部5hがさらに設けられる。封止部5hは、基板5と接続される。封止部5hと基板5とで形成される空間5sの内部に、磁性細線70、積層体80、電極90及び供給部75が配置され、空間5s内に封止される。封止部5hの内部は、例えば減圧される。
磁性細線70の磁化方向は可変である。磁性細線70は、第1部分70aと、第2部分70bと、第3部分70cと、を有する第2部分70bは、第1部分70aと離間している。第3部分70cは、磁性細線70の延在方向に沿って、第1部分70aと第2部分70bとの間に設けられる。第1部分70aは、例えば、磁性細線70の一方の端の部分を含む。第2部分70bは、例えば、磁性細線70の他方の端の部分を含む。磁性細線70は、少なくとも第1部分70aと第2部分70bとの間で、1本の線状であり、枝分かれしていない。第1部分70aと第2部分70aとを繋ぐ形状は、直線状、曲線状、折れ曲がり状など、任意である。
磁性細線70の長さは任意である。後述するように、磁性細線70の上に分子が供給される。磁性細線70において、分子が供給される上面と、上面とは反対側の下面と、の距離が、磁性細線70の厚さである。磁性細線70の延在方向に対して垂直で、厚さ方向に対して垂直な方向が幅方向である。
磁性細線70の厚さは、磁性細線70の材料の4原子層(3原子層以上5原子層以下)の厚さである。磁性細線70の幅は、磁性細線70の材料の3原子層(2原子層以上4原子層以下)の厚さである。磁性細線70の幅は、3原子層以下である。磁性細線70には、例えばFeが用いられる。
磁性細線70の厚さは、0.4ナノメートル(nm)以上0.6nm以下である。磁性細線70の幅は、0.3nm以上1.0nm以下である。磁性細線70の厚さ及び幅に関する情報は、例えば透過型電子顕微鏡などにより得られる。
図13及び図14に表したように、積層体80は、磁性細線70の第3部分70cに対向する。なお、本願明細書において、対向する状態が、直接向かい合う状態に加え、間に別の要素が挿入されている状態で向かい合う状態も含む。積層体80は、磁化固定層81と、中間層82と、を含む。中間層82は、磁性細線70と磁化固定層81との間に設けられる。中間層82は、例えば、磁化固定層81と磁性細線70とに接する。
磁化固定層81の磁化方向は、固定されている。磁化固定層81には、例えば、FeCoBが用いられる。中間層82は、非磁性である。中間層82には、例えば、MgOが用いられる。
磁性細線70、中間層82及び磁化固定層81により、磁気抵抗(MR:MgnetoResistance)変化素子が形成される。磁性細線70は、例えば、フリー層として機能し、磁化固定層81は、例えば、ピン層または参照層として機能する。
電極90は、磁性細線70に電気的に接続される。電極90は、例えば、積層体80の近傍において、磁性細線70に接続される。
図13に表したように、供給部75は、第1分子供給部71sと、第2分子供給部72sと、を含む。記憶情報を記憶する動作(書き込み動作)において、第1分子供給部71sには、第1書き込み信号Swa(書き込み信号Swの一部)が供給される。第2分子供給部72sには、第2書き込み信号Swa(書き込み信号Swの一部)が供給される。供給部75には、第1の実施形態に関して説明した細線部11のいずれかを用いることができる。
制御部40は、上記の書き込み信号Swを供給部75に供給する。具体的には、制御部40は、第1書き込み信号Swaを第1分子供給部71sに供給し、第2書き込み信号Swbを第2分子供給部72sに供給する。
第1分子供給部71sは、書き込み信号Sw(第1書き込み信号Swa)に応じて、磁性細線70の第1部分70aの上に第1分子71を供給する。第2分子供給部72sは、書き込み信号Sw(第2書き込み信号Swb)に応じて、磁性細線70の第1部分70aの上に第2分子72を供給する。
供給部75は、磁性細線70の第1部分70aから、磁性細線70の第2部分70bに向けて、第1分子71及び第2分子72を順次移動させる。これにより、供給部75は、第1分子71及び第2分子72の配列パターンを記憶情報として形成する。
第2分子72は、第1分子71とは種類が異なる分子である。例えば、第1分子71はCOであり、第2分子72はNOである。第1分子71がNOであり、第2分子72がCOでも良い。
書き込み信号Swに応じて、磁性細線70に供給される第1分子71及び第2分子72の順番及び数は異なる。先に供給された分子は、後から供給される分子に押されるような状態で、第1部分70aから第2部分70bに向けて、順次跳び跳びに移動する。このとき、磁性細線70の幅が、例えば実質的に3原子層に制限されているため、第1分子71と第2分子72との互いの順序が変わることなく、順序を維持したまま、移動する。磁性細線70の幅は3原子層に限らず、4原子層以上7原子層以下でも良い。例えば7原子層幅の場合、保護層として反発力の大きい材料とすることで、第1分子71、第2分子72などを磁性細線70の中心に寄せる効果が働く。
この例では、回収部70eがさらに設けられる。回収部70eは、磁性細線70の第2部分70bの側の端に設けられる。回収部70eは、磁性細線70の上を順次移動した第1分子71及び第2分子72を受け入れる。
記憶情報を読み出す動作においては、供給部75は、第1部分70a上に分子を供給することで、記憶した記憶情報に対応する分子の配列パターンを第3部分70c上を通過させる。この読み出し動作において供給する分子は、第1分子71でも良く第2分子72でも良い。例えば、読み出し動作における配列パターンの移動は、第1分子供給部71s及び第2分子供給部72sの少なくともいずれかにより行うことができる。読み出し動作における配列パターンの移動の際に、新たな記憶情報に対応する分子の配列パターンを形成しても良い。また、読み出し動作における配列パターンの移動は、第1分子71及び第2分子72とは種類が異なる第3分子を供給することで行っても良い。このとき、第1分子供給部71s及び第2分子供給部72sとは異なる分子供給部(例えば図13に例示した第3分子供給部)をさらに設けても良い。
検出部30は、電極90及び積層体80に電気的に接続される。検出部30は、読み出し動作において、電極90、磁性細線70及び積層体80を流れる電流の変化を検出する。電流の変化は、第3部分70c上を通過する、第1分子71及び第2分子72の配列パターンにより生ずる変化である。
例えば、制御部40は、検出部30に電流の変化を検出させる。検出部30で検出した電流の変化は、例えば、制御部40に供給される。
供給部75、回収部70e、検出部30及び制御部40の少なくともいずれかは、基板5の上に形成される。実施形態はこれに限らず、これらの少なくとも一部は、基板5とは別に設けられても良い。
なお、供給部75は、3つ以上の分子供給部を含むことができる。
例えば、図13に例示したように、供給部75は、第3分子供給部73sをさらに含んでも良い。例えば、書き込み動作において、第1分子供給部71s及び第2分子供給部72sに加えて、第3分子供給部73sを用いて第3分子を第1部分70aに供給して配列パターンを形成しても良い。分子供給部の数が多いと、より多い情報量の供給パターンが得られる。
このとき、例えば、第1分子供給部71sと第2分子供給部72sを用いて上記のような書き込み動作を行い、読み出し動作においては、第3分子供給部73sを用いて、第3分子を第1部分70aに供給して、記憶した記憶情報に対応する分子の配列パターンを第3部分70c上を通過させても良い。
以下では、分子供給部が2つである場合について説明する。
不揮発性記憶素子130及び不揮発性記憶装置230における書き込み動作の例について説明する。
書き込み動作において、制御部40に書き込みデータを与える。制御部40は、第1分子供給部71sに接続された書き込み電極に、書き込みデータに対応する電流(第1書き込み信号Swa)を供給する。制御部40は、第2分子供給部72sに接続された書き込み電極に、書き込みデータに対応する電流(第2書き込み信号Swb)を供給する。この電流に応じて、供給部75から分子が供給される。分子の供給は、例えば、電流マイグレーションに基づく。
書き込みデータに応じた分子の供給パターンに従い、磁性細線70上に、複数の種類の分子が供給パターンに応じた配置で一列に並ぶ。書き込みデータをシーケンシャルに与えることで、この分子配列パターンは、回収部70eに届く位置まで並べることが可能である。
このように、書き込み動作においては、供給部75から、書き込み信号Swに応じた第1分子71及び第2分子72を磁性細線70の上に供給する。磁性細線70上における第1分子71及び第2分子72の配列は、記憶状態(記憶データ)に対応している。
第1分子71及び第2分子72は、磁性細線70上を順次移動し、磁性細線70のうちの積層体80に対向する部分70pの上に位置する状態になる。このときの磁性細線70及び積層体80を流れる電流の変化を検出することで、記憶状態(第1分子71及び第2分子72の配列)を検出することができる。この検出が読み出し動作に対応する。
以下、読み出し動作の例について説明する。
図15(a)及び図15(b)は、第3の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示する模式図である。
図15(a)及び図15(b)は、読み出し動作の例を示している。図15(a)は、磁性細線70のうちの積層体80に対向する部分70pの上を第1分子71(例えばCO分子)が通過する状態(第1状態STa1)を例示している。図15(b)は、その部分70pの上を第2分子72(例えばNO分子)が通過する状態(第2状態STa2)を例示している。
図15(a)及び図15(b)に表したように、第1分子71(CO分子)のO元素と磁性細線70との間にC元素が配置される状態で、第1分子71は磁性細線70上を移動する。第2分子71(NO分子)のO元素と磁性細線70との間にN元素が配置される状態で、第2分子72は磁性細線70上を移動する。
図15(a)に表したように、部分70pの上を第1分子71(CO分子)が通過する第1状態STa1においては、第1分子71直下の磁性細線70(Fe)の2原子層において、スピンが消滅する。
図15(b)に表したように、部分70pの上を第2分子72(NO分子)が通過する第2状態STa2においては、第2分子72直下の磁性細線70(Fe)の2原子層において、反強磁性秩序が生じる。
このように、磁性細線70のうちの積層体80に対向する部分70pの上に存在している分子(第1分子71または第2分子72)の種類によって、磁性細線70のその部分70pの磁気的な状態が変化する。
この状態の変化により、磁性細線70及び積層体80(磁化固定層81及び中間層82)で形成される磁気抵抗変化素子の抵抗が変化する。この抵抗の変化は、MR効果に基づく。この抵抗の変化は、電極90、磁性細線70、積層体80(磁化固定層81及び中間層82)を流れる電流を検出することで検出可能である。これにより、分子配列パターンとして記憶した情報を読み出すことができる。
読み出し動作において、例えば、制御部40に読み出し命令を与える。これにより、制御部40は検出部30に電流を検出させる。検出部30は、電極90、磁性細線70、積層体80(磁化固定層81及び中間層82)を流れる電流を供給する。制御部40は、第1部分70aから分子(第1分子71及び第2分子72のいずれか)を供給させ、分子配列パターンが、磁性細線70のうちの積層体80に対向する部分70pの上を通過するようにする。このとき、上記のように、通過する分子の種類の違いにより磁性細線70に誘起されるスピンが変わるため、磁性細線70及び積層体80(磁化固定層81及び中間層82)で形成される磁気抵抗変化素子の抵抗を電流の変化として読み出すことができる。
実施形態においては、供給部75は、記憶情報を記憶する動作及び記憶情報を読み出す動作において、第1部分70a上に複数の種類の分子を供給する。供給部70aは、記憶する動作においては、書き込み信号に応じて複数の種類の分子のうちで少なくとも2種類以上の分子を第1部分70a上に供給し、第1部分70aから第2部分70bに向けて、前記少なくとも2種類以上の分子を順次移動させて、前記少なくとも2種類以上の分子の配列パターンを記憶情報として形成する。供給部75は、読み出す動作においては、複数の種類の分子のうちで少なくとも1種類以上の分子を第1部分70aに供給することで配列パターンを第3部分70c上を通過させる。
例えば、供給部75は、記憶動作において、書き込み信号Swに応じて第1部分70a上に複数の分子として第1分子71と第2分子72とを供給して第1部分70aから第2部分70bに向けて第1分子71及び第2分子72を順次移動させて第1分子71及び第2分子72の配列パターンを記憶情報として形成する。
例えば、供給部75は、読み出す動作において、第1部分70a上に、第1分子71及び第2分子72の少なくともいずれかを供給することで配列パターンを第3部分上を通過させる。または、供給部75は、読み出す動作において、第1部分上70aに、第1分子71とは異なり第2分子72とも異なる分子を供給することで配列パターンを第3部分73c上を通過させる。そして、第3部分83cを通過した配列パターンを検出部30が検出する。
消去動作においては、記憶データに依存しない分子配列を形成する。例えば、第1分子71または第2分子72だけを供給する。または、消去動作において、磁性細線70を加熱しても良い。これにより、一括消去が可能である。
電極90は、積層体80と近接していることが好ましい。これにより、磁気抵抗変化の検出の精度が高まる。MR電極90と積層体80との間の距離は、例えば100nm以下である。あまり近接しすぎると積層体の各層との電気的カップリングなどが問題になるため、MR電極90と積層体80との間の距離は、例えば1nm以上であることが好ましい。
積層体80は、供給部75から遠く、回収部70eに近いことが好ましい。これにより、1つの磁性細線70に記憶できる記憶容量が増大する。積層体80と第1部分70aとの間の距離は、積層体80と第2部分70bとの間の距離よりも長い。
なお、磁性細線70の一方の端部を分岐させても良い。そして分岐した端部に、複数の供給部と、1個以上の回収部と、を設けても良い。磁性細線70の両方の端部を分岐させ、分岐した両方の端部に、複数の供給部と、1個以上の回収部と、を設けても良い。
なお、磁壁が移動するレーストラック素子がある。これに対して、本実施形態においては、分子が移動するため、書き込み及び読み出し動作の安定性が高い。例えば磁壁移動の場合は、先行する磁壁に後追いする磁壁が追いついてしまうことでビットの消滅が生じたり、磁壁を適切な場所に留めることが困難だったりするような問題が知られている。本実施形態では、そのようなビットの消滅は、原理的に発生しない。
また、スピン軌道相互作用によりスピンの磁気異方性が発現する常磁性体を用いるスピン記録方法がある。この場合には、SPM(Scanning Probe Microscope)などで読み出す。これに対して、本実施形態においては、例えば、磁性体におけるMR効果が用いられる。このため、例えば、検出の信頼性を高くすることが容易である。
以下、不揮発性記憶素子130及び不揮発性記憶装置230の製造方法の例について説明する。
基板5の上に、保護膜92を形成する。保護膜92は、磁性体ではないことが好ましく、また金属的な伝導を示す膜ではないことが好ましい。基板5には、第1の実施形態に関して説明した基板5を用いることができる。基板5には、Siなどの半導体基板を用いることができる。基板5には、あらかじめ配線や、各種回路を形成しておくことができる。
保護膜92に、微小な貫通孔を形成する。貫通孔の形成には、例えばリソグラフィやFIBを用いることができる。貫通孔は、例えば、基板5の配線や回路と繋がる。
貫通孔の内部に、バッファ層83、磁化固定層81及び中間層82となる膜をこの順で形成する。その後、例えばCMPなどによって平坦化する。バッファ層83として、例えばTiNを用いる。磁化固定層81として、例えばFeCoBなどを用いる。中間層82として、例えばMgOなどを用いることができる。これにより、積層体80が形成される。
バッファ層83、磁化固定層81及び中間層82で埋め込まれた貫通孔の上を通る溝を形成する。この溝は、連続した細長い線状構造を有する。溝の形成には、例えばリソグラフィを用いる。溝の本体部分は枝分かれせず、連続している。溝の内部に磁性材料を埋め込み、上部を平坦化することで磁性細線70が形成される。溝に埋め込む磁性材料として、例えば、Feを用いる。溝の深さは、例えば、Feの4原子層の深さである。溝の幅は、例えば、Feの3原子層の幅である。これにより、積層体80と、磁性細線70と、を含む、MR素子部が作製される。
上記の貫通孔の形成の際に、別の孔を設けておき、その内部に導電材料を埋め込むことで、電極90を形成することができる。または、上記の磁性細線70の形成の後に、電極90を形成しても良い。
磁性細線70の一方の端に、供給部75(第1分子供給部71s及び第2分子供給部72sなど)を形成する。供給部75の形成には、例えば、第1の実施形態に関して説明した細線部11の形成方法のいずれかを用いることができる。磁性細線70の他方の端に回収部を形成する。
この後、封止部5hを形成し、供給部75に異なる種類の分子を導入する。その後、基板5と封止部5hで形成される空間5sを封止する。
不揮発性記憶素子130及び不揮発性記憶装置230においては、基板5の上にMR素子構造が形成される。MR素子は、磁性細線70を有し、磁性細線70の上部は、Feの4原子層からなる。磁性細線70は、3原子幅で4原子厚の一次元の線状構造を有する。磁性細線70の上において、CO分子及びNO分子を、磁性細線70の一方向にシフトさせる。磁性細線70のうちの、積層体80に対向する部分70pの上を順次通過することにより、磁性細線70におけるFeのスピンの向きの変化が電気抵抗により検出する機構が設けられる。
以下、本実施形態に係る不揮発性記憶素子130及び不揮発性記憶装置230に含まれる要素の構成及び材料の例について説明する。
基板5には、SiまたはSiGeの半導体基板を用いることができる。基板5には、ガラス基板またはAl2O3の絶縁性基板を用いても良い。基板5は、金属基板と、その上に設けられた絶縁膜と、を有していても良い。金属基板には、例えば、CuまたはAgを用いることができる。
バッファ層83には、例えば、TiNまたはSrRuOを用いることができる。バッファ層83は、例えば、基板5に設けられる回路または配線を磁化固定層81と電気的に接続する。バッファ層83が薄く、リーク電流により導電性が得られる場合には、バッファ層83には、絶縁性の材料を用いても良い。
磁化固定層81には、例えば、FeCoBの他に、FeB、NdFeBまたはSmCoを用いても良い。この他、磁化固定層81には、任意のハード磁性体を用いることができる。中間層82には、例えば、MgOまたは酸化アルミニウムなどを用いることができる。
磁性細線70には、例えば、Fe、Co、Ni、Sm、Dy、Tb、Pd及びPtよりなる群から選択された少なくとも1つを用いることができる。磁性細線70には、3d元素、4d元素、5d元素または4f元素のいずれかを含むことができる。磁性細線70には、例えば、フリーラジカルを誘起可能な材料を用いることができる。
供給部75(例えば第1分子供給部71s及び第2分子供給部72s)には、種々のナノワイヤを用いることができる。供給部75には、例えば、CNTまたはSiを用いることができる。また、供給部75には、AgGeTe、AgTe、ZnTe、ZnGeTe、CuS、CuGeS、CuSeまたはCuGeSを用いることができる。供給部75には、電気絶縁性のフィラメントを用いても良い。
供給部75のナノワイヤの成長方法には、例えば、エッチングスリミング法、マイグレーションスリミング法、または、直接成長フォーミング法などの種々の方法を用いることができる。ナノワイヤの成長において、成長核を用いることができる。例えば、ナノワイヤの形成において、リソグラフィ法またはFIB法を用いることができる。CNTを形成する際の成長核には、例えば、FeまたはNiを用いることができる。Siのナノワイヤを形成する際の成長核には、例えば、SnまたはAuを用いることができる。ZnOのナノワイヤを用いる際の成長核には、例えば、ZnまたはZnOを用いることができる。Znのナノワイヤを形成する際の成長核には、例えば、Znを用いることができる。αFe2O3のナノワイヤを形成する際の成長核には、例えば、GaまたはSnを用いることができる。GaAsのナノワイヤを形成する際の成長核には、例えば、Auを用いることができる。供給部75には、ナノワイヤまたはウィスカ等を形成し得る種々の材料を用いることができる。
基板5と磁性細線70との間には、例えば絶縁体(例えば保護膜92)が設けられる。この絶縁体の分子(第1分子71及び第2分子72)に対する吸着力は、磁性細線70の分子に対する吸着力とは異なる。
基板5と磁性細線70との間には、間隙を設けても良い。間隙にはSF6などの絶縁性ガスで充満されていても良い。
分子(第1分子71及び第2分子72)には、CO、NO、SO2、NF3、CF2Cl2、DDQなどの極性分子を用いることができる。分子には、Ar、Kr、Xe、CO2、または、N2などの非極性分子を用いることができる。分子には、例えば、水素原子が少ない、または、水素原子を含まない分子を用いることができる。水素原子が少ない、または、水素原子を含まない分子を用いることで、例えば、分子から放出されやすいプロトンすなわちH+が無いことにより、分子がイオン化などせずにより安定に存在できるようになる。
本実施形態においては、磁性細線70に沿って分子が順次移動し、分子の配列パターンが維持される。このため、比較的高い温度で動作することができる。
第1〜第3の実施形態によれば、1つの不揮発性記憶素子に多値の情報を記憶することができ、かつ蓄積した電荷を長時間保持することができる。
実施形態によれば、大記憶容量の不揮発性記憶装置が提供できる。
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、不揮発性記憶素子または不揮発性記憶装置に含まれる、メモリ部、検出部、導電層、供給部、冷却部、基板、絶縁膜、封止部、温度制御部、ベース層、電極、細線部、供給源、微粒子、電圧印加部、分子層、切り替え部、バッファ部、制御部、磁場印加部、磁性細線、分子供給部、磁化固定層、中間層、バッファ層及び保護膜などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した不揮発性記憶装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての不揮発性記憶装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。