JP5769364B2 - 感熱消色性インキ組成物 - Google Patents
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Description
例えば、溶剤又は加熱により消色可能な水性インキに用いる着色剤であって、少なくともロイコ染料、顕色剤、消色剤及び樹脂からなる微粉体を着色剤とし、前記樹脂がガラス転移温度又はビカット軟化温度のうち温度の低い方が50℃より高温であり、かつ融点又は成形可能温度が230℃以下である樹脂からなる水性インキ用着色剤(例えば、特許文献1参照)や、樹脂製球状微粒子をロイコ染料から選択される呈色性物質で着色してなる着色剤を含有することを特徴とする消色又は変色可能な水性インキ(例えば、特許文献2参照)が知られている。
擦過等による加熱が止まると、トナーが室温に冷却され、結晶性物質が結晶化し再度ロイコ染料と顕色剤が析出、相互作用し、再顕色状態となる。これを防ぐために、熱的ヒステリシスを生じさせる物質を結晶性物質に混合し、室温での再結晶化を阻害している。感熱トナー内の結晶性物質の融点は室温以上(例えば、60℃)であるが、溶融後の再結晶化の凝固点は室温以下(例えば、−10℃)とすることで、室温への冷却による再発色を防止している。
また、熱的ヒステリシスの幅を広げることで、再発色を抑制することはできるが、有効な物質が見つかっていない現状と、結晶性物質はいずれ結晶化するため、更なる低温状態での再発色を防止することができないという課題がある。
(1) 少なくともロイコ染料、顕色剤、結晶性物質からなる顕色粒子を着色剤として含有する感熱インキ組成物であって、更に、塩基性物質からなる消色剤を含有してなることを特徴とする感熱消色性インキ組成物。
(2) 塩基性物質は、結晶性物質であり、その融点が30〜150℃である上記(1)記載の感熱消色性インキ組成物。
(3) 塩基性物質は、炭素数13〜20の鎖状分子であり、アミノ基を少なくとも1つ以上有する上記(1)又は(2)記載の感熱消色性インキ組成物。
(4) 消色剤は、融点が30〜150℃である結晶性物質と、この結晶物質に相溶できる塩基性物質とからなる上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の感熱消色性インキ組成物。
(5) 消色剤は、平均粒子径10〜2000nmの微粒子からなる上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の感熱消色性インキ組成物。
(6) 消色剤は、結晶状態でインキ中に含有され、その融点は、40〜150℃であることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の感熱消色性インキ組成物。
(7) 消色剤は、結晶状態でインキ中に配合され、その熱容量は、10J/g以上であることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の感熱消色性インキ組成物。
(8) 消色剤の含有量が、インキ組成物全量に対して、5〜40質量%であることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか一つ記載の感熱消色性インキ組成物。
(9) 顕色粒子は、結晶状態でインキ中に含有され、その融点は、40〜150℃であることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか一つ記載の感熱消色性インキ組成物。
(10) 顕色粒子は、結晶状態でインキ中に含有され、その熱容量は、10J/g以上であることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか一つ記載の感熱消色性インキ組成物。
(11) 上記(1)〜(7)の何れ一つに記載の感熱消色性インキ組成物が筆記具に搭載される感熱消色性インキ組成物。
(12) 筆記具がボールペン又はマーキングペンであることを特徴とする上記(8)に記載の筆記具。
本発明の感熱消色性インキ組成物は、少なくともロイコ染料、顕色剤、結晶性物質からなる顕色粒子を着色剤として含有する感熱インキ組成物であって、更に、塩基性物質からなる消色剤を含有してなることを特徴とするものである。
本発明に用いるロイコ染料としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインキを得る点から、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N-−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリンなどが挙げられ、これらは、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
更に、黄色〜赤色の発色を発現させるピリジン系化合物、キナゾリン系化合物、ビスキナゾリン系化合物等も用いることができる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
用いることができる顕色粒子の結晶性物質は、上記機能を有するものであれば、特に限定されず、例えば、水酸基、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などの極性基を少なくとも1つ以上有する化合物、具体的には、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラドコサン酸、ヘキサドコサン酸、オクタドコサン酸などの飽和脂肪酸、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、パルミトレイルアルコール、などの高級アルコール、上記脂肪酸とアミンのアミド類、上記脂肪酸とアルコールのエステル類、上記高級アルコールと、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールとのエーテル類などが挙げられ、また、ジフェニルプロパンジオン、ジベンジオキシベンゼン、ジフェノキシベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、ベンジルビフェニル、ベンジルナフチルエーテル、ジベンジルスルホキシド、ジメチルテレフタレート、ジフェニルカルボネート、ジフェニルスルホン、フルオランテン、フルオレン、メチルヒドロキシナフタレート、フェニルヒドロキシナフタレート、ステラニリド、などの芳香族化合物などが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
好ましい顕色粒子の結晶性物質としては、例えば、ステアリン酸(融点約70℃)、パルミチン酸(融点63℃)、ステアリン酸アミド(融点104℃)、ベヘニルアルコール(融点60℃)、ステアリン酸亜鉛(融点130℃)の使用が望ましい。
これらロイコ染料、顕色剤、結晶性物質の含有量は、ロイコ染料1に対して、質量比で顕色剤0.8〜3、結晶性物質1〜5である。
本発明の着色剤では、上記ロイコ染料、顕色剤及び結晶性物質の種類、量などを好適に組み合わせることにより、任意の発色温度、消色温度とすることができる。
なお、本発明(実施例等含む)で規定する「平均粒子径」は、粒度分布測定装置〔Unimodal測定(平均粒子径測定)〕にて、平均粒子径を測定した値である。
また、上記ロイコ染料、顕色剤、結晶性物質からなる顕色粒子は、インキでの熱的安定性及び易消色性の点から、好ましくは、その融点は、40〜150℃であることが好ましく、更に、60〜130℃であることが望ましい。
更に、この顕色粒子の熱容量は、10J/g以上であることが好ましく、特に好ましくは、10J/g以上〜500J/g以下であるものが望ましい。この顕色粒子の熱容量が10J/gより低いと、環境の僅かな温度変化で消色作用が発現することがあり、一方、500J/gより高いと、消色に必要なエネルギー量が多すぎて、擦過を長時間繰り返さないと消色できなくなるという課題を生じることがある。
なお、本発明(実施例等含む)で規定する上記ロイコ染料、顕色剤、結晶性物質からなる顕色粒子、後述する消色粒子などの「融点」は、顕色トナー(乳化液)、消色液の乾燥残分を、それぞれ示差走査熱量計(理学電機社製:DSC8230L)を用いて10℃/minの速度で昇温する条件で測定し、吸熱ピークのトップ温度を「融点」とし、吸熱ピーク面積を「熱容量」として測定した値である。
この着色剤(顕色粒子)の含有量が5質量%未満であると、着色力、発色性が不十分となり、一方、30質量%を超えると、それに対応する消色剤の必要量が増え、インキの粘度が増大し、筆記性が低下することとなり、好ましくない。
具体的には、上記特性を有するラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン(オクタデシルアミン)などの一級アミン類の他、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基などを有する2級アミン類、3級アミン類から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
用いることができる消色剤用の結晶性物質としては、上述した顕色粒子の結晶性物質の他に、融点が30〜150℃である結晶性物質を用いることができるものであり、例えば、ステアリン酸(融点約70℃)、パルミチン酸(融点63℃)、ステアリン酸アミド(融点104℃)、ベヘニルアルコール(融点60℃)、ステアリン酸亜鉛(融点130℃)などの極性基を有する結晶性物質だけでなく、更に、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス〔融点は、それぞれ分子量に依存し、使用可能な(消色剤用の)結晶性物質としては、融点30〜150℃である〕なども使用することができる。
また、消色剤の沈降を防止することができ、経時保管時の安定性を更に高めることができる点から、消色剤の平均粒子径は10〜2000nm、特に好ましくは、80〜300nmとなるものを使用することが望ましい。
また、この消色粒子(消色剤)の熱容量は、10J/g以上であることが好ましく、特に好ましくは、10J/g以上〜500J/g以下であるものが望ましい。この消色粒子の熱容量が10J/gより低いと、環境の僅かな温度変化で消色作用が発現することがあり、一方、500J/gより高いと、消色に必要なエネルギー量が多すぎて、擦過を長時間繰り返さないと消色できなくなるという課題を生じることがある。
この消色剤の含有量が5質量%未満であると、消色性が不十分となり、一方、40質量%を超えると、インキの粘度が増大し、筆記性が低下することなり、好ましくない。
本発明の感熱消色性インキ組成物は、上記着色剤、消色剤、上記任意成分などを混練機等で撹拌することにより調製することができる。
本発明の感熱消色性インキ組成物では、消色状態を維持させるために必須となる成分が、消色剤である。本発明の消色剤の作用は、顕色剤を中和することで、ロイコ染料との相互作用を阻害することである。擦過による加熱で、顕色粒子の結晶性物質及び、消色剤又は消色剤を内包している結晶性物質を融解させ、混合させる。融解した結晶性物質内で、ロイコ染料と相互作用していた顕色剤と消色剤とが中和反応するため、ロイコ染料が顕色剤との相互作用を失い、消色状態となる。本発明における消色剤は、結晶性の塩基性物質、例えば、上述の長い炭素鎖を有するアミン等が結晶性の消色剤として用いるものである。
本発明の消色機構は、顕色粒子における結晶性物質の熱的ヒステリシスに頼るものでなく、顕色剤を塩基性物質により中和することで、消色するものである。ロイコ染料、顕色剤を含む顕色粒子、消色剤粒子もしくは消色剤を含む結晶性粒子ともに、インキ状態、描線状態で結晶化しているため、擦過による加熱を加えるまでは、安定に分離しておくことができる。
また、本発明の消色機構では、ロイコ染料に消色すべき顕色剤が中和されているため、消色描線を極低温下に冷却し結晶化しても、ロイコ染料の再発色を防止することができる。
更に、本発明では、顕色粒子、消色剤微粒子ともに(マイクロカプセルにて保護する必要がないため)、微粒子化が可能であり、より色相濃度が高く、必要とする消色エネルギーが少ない感熱消色性インキ組成物が調製可能となるものである。
従って、本発明では、マイクロカプセルを用いずに、擦過等による簡単な加熱で容易に消色でき、極低温化(−50℃以下)に保存しても、再発色せず、しかも、経時安定性に優れ、鮮やかな色相濃度を有する感熱消色性インキ組成物が得られるものとなる。
本発明の筆記具は、上記感熱消色性インキ組成物を搭載したものであり、水性ボールペン、ゲルインキボールペン、マーキングペン、筆ペンなどとして好適使用することができるものである。
<実施例1>
以下の方法で、着色剤液1を調製した。
CVL(クリスタルバイオレットラクトン、ロイコ染料、山田化学社製) 1質量部
ヘキサフルオロビスフェノールA(顕色剤、融点約130℃、熱容量60J/g、東京化成社製) 1質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、融点60℃、日光ケミカル社製) 8質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 1質量部
イオン交換水 89質量部
以上の配合の着色剤液を80℃で2時間加熱した。
この着色剤液1における顕色粒子は、融点70℃、熱容量31J/gであった。
オクタデシルアミン(塩基性物質、関東化学社製) 4質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、日光ケミカル社製) 16質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 2質量部
イオン交換水 78質量部
以上の配合の消色液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、消色液1(平均粒子径140nm)を調製した。
この消色液1における消色粒子は、融点70℃、熱容量100J/gであった。
着色剤液1 50質量部
消色液1 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
以下の方法で、着色剤液2を調製した。
RED−500(ロイコ染料、山田化学社製) 1質量部
ヘキサフルオロビスフェノールA(顕色剤、東京化成社製) 1質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、日光ケミカル社製) 8質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 1質量部
イオン交換水 89質量部
以上の配合の着色剤液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、着色剤液2(平均粒子径 140nm)を調製した。
この着色剤液2における顕色粒子は、融点70℃、熱容量33J/gであった。
着色剤液2 50質量部
消色液1 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
以下の方法で、着色剤液3を調製した。
BLACK−202(ロイコ染料、山田化学社製) 1質量部
ヘキサフルオロビスフェノールA(顕色剤、東京化成社製) 1質量部
ベヘニルアルコール80(結晶性物質、日光ケミカル社製) 8質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 1質量部
イオン交換水 89質量部
以上の配合の着色剤液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、着色剤液3(平均粒子径140nm)を作製した。
この着色剤液2における顕色粒子は、融点70℃、熱容量30J/gであった。
着色剤液3 50質量部
消色液1 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
実施例1の着色剤液1と以下の方法で調製した消色液2を用いて感熱消色性インキ4を調製した。
以下の方法で、消色液2(結晶性物質を含有しない組成)を調製した。
オクタデシルアミン(塩基性物質、関東化学社製) 4質量部
ドデシル硫酸ナトリウム(乳化剤、和光純薬工業社製) 2質量部
イオン交換水 94質量部
以上の配合の消色液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、消色液2(平均粒子径180nm)を調製した。
この消色液1における消色粒子は、融点70℃、熱容量200J/gであった。
着色剤液1 50質量部
消色液2 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
実施例2の着色剤液2と以下の方法で調製した消色液3を用いて感熱消色性インキ4を調製した。
以下の方法で、消色液3(結晶性物質を含有しない組成)を調製した。
オクタデシルアミン(塩基性物質、関東化学社製) 4質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
イオン交換水 86質量部
以上の配合の消色液を80℃で2時間加熱した。
次いで、80℃条件下で高速ホモジナイザーにて、15,000rpmにて、10分間高速撹拌した後、直ちに氷冷し、消色液2(平均粒子径190nm)を調製した。
この消色液1における消色粒子は、融点70℃、熱容量200J/gであった。
着色剤液2 50質量部
消色液3 40質量部
ジョンクリル61J(固着剤、BASFジャパン社製) 10質量部
上記実施例1〜3の着色剤液1〜3のみを単独でインキとして用い、感熱消色性インキ6〜8とした。
以下の方法で、感熱消色性インキ9を得た。
パイロット社製の「フリクションボール黒」のリフィールからインキを取り出し、精製水にて50%に希釈することで低粘度化し、感熱消色性インキ9とした。
以下の方法で、感熱消色性インキ10を得た。
パイロット社製の「フリクションラインブルー」の中綿からインキを取り出し、感熱消色性インキ10とした。
これらの結果を下記表1に示す。
前記筆記具で、普通紙に手書き筆記し、その筆記描線の色相を目視にて下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:かすれなく筆記可能。色相濃度も高い。
△:カスレあり。一部消色している部分がある。
×:筆記不可。
前記筆記描線を、40℃条件下に一週間保存し、その筆記描線の色相を目視にて下記評価基準で比較評価した。
評価基準:
○:色相変化なし
△:一部消色。もしくは全体的に色相低下。
×:消色。描線を認識できない。
筆記描線を下記製法で作製した消し具にて筆記描線を擦過し、下記の評価基準で評価した。また、この消し具で消去した箇所を含む紙面を−50℃の冷凍庫の中に3時間保存して後の再復元性を下記評価基準で評価した。
(消し具の作製法)
ポリプロピレン樹脂(J−728、三井化学社製)25質量部と、熱可塑性エラストマー(アクティマー、LQA9770N、リケンテクノス社製)75質量部とを加熱溶融してニーダーで十分混練した後、冷却、粉砕したものを押し出し成形機により溶融押し出しして冷却したものを切断して消し具(大きさ12×5×20mm)を得た。
○:消色でき、描線が認識されない。
△:一部消色しない。もしくは全体的に薄く色相が残る。
×:消色不可。描線に変化無し。
−50℃下での消色描線の耐復元性の評価基準:
○:消色描線は、変化無し。復元しない。
△:一部復元部分がある。もしくは全体的に薄く色相が復元する。
×:描線が復元する。筆記描線が認識できる。
−:加熱によって消色しなかったため、消色描線の耐復元性は未評価。
これに対して、比較例1〜3のインキの筆記描線は、上記消し具による擦過で、ほんの一瞬は消色するが、擦過を止めると直ちに再発色することがわかった。
また、比較例4及び5は、発色性、経時安定性、消色性は、問題がなかったが、−50℃の冷蔵庫の中に3時間保存することで、消色させた描線の色相が復元することがわかったので、消色描線の安定性に課題があるものとなった。
以上のことより、本発明による感熱消色性インキは、筆記描線を擦過の熱により消色することができ、さらに極低温に保存しても再発色せず、発色性、経時安定性にも優れていることがわかった。
Claims (9)
- 少なくともロイコ染料、顕色剤、熱溶融性水不溶樹脂を含まない40〜90℃の融点を有する結晶性物質からなる顕色粒子を着色剤として含有する感熱インキ組成物であって、更に、結晶性物質であり、その融点が30〜150℃である塩基性物質から少なくともなる消色剤を含有すると共に、該消色剤は、平均粒子径10〜2000nmの微粒子からなり、かつ、前記顕色粒子は、結晶状態でインキ中に含有され、その融点は、40〜150℃であることを特徴とする感熱消色性インキ組成物。
- 塩基性物質は、炭素数13〜20の鎖状分子であり、アミノ基を少なくとも1つ以上有する請求項1記載の感熱消色性インキ組成物。
- 消色剤は、少なくとも融点が30〜150℃である結晶性物質(但し、上記塩基性物質を除く)と、この結晶物質に相溶できる上記塩基性物質とからなる請求項1又は2に記載の感熱消色性インキ組成物。
- 消色剤は、結晶状態でインキ中に含有され、その融点は、40〜150℃であることを
特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の感熱消色性インキ組成物。 - 消色剤は、結晶状態でインキ中に含有され、その熱容量は、10J/g以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の感熱消色性インキ組成物。
- 消色剤の含有量が、インキ組成物全量に対して、5〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の感熱消色性インキ組成物。
- 顕色粒子は、結晶状態でインキ中に含有され、その熱容量は、10J/g以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の感熱消色性インキ組成物。
- 請求項1〜7の何れ一つに記載の感熱消色性インキ組成物が筆記具に搭載されたことを特徴とする筆記具。
- 筆記具がボールペン又はマーキングペンであることを特徴とする請求項8に記載の筆記具。
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