JP5767458B2 - ポリオキシエチレン付加カリックスアレーン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
係るカリックスアレーン類は、疎水性の空洞部分を有することから包摂材料として;カチオン捕捉能を有することから金属類の除去剤として;熱的安定性が高いことから耐熱性を利用した材料などとしての利用が期待されている。
係るカリックスアレーンの耐熱性を利用した用途として、カリックスアレーンのフェノール性水酸基にスペーサーを介して重合性官能基(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、プロペニル基など)を結合させた化合物からなる熱及び/又は光硬化性樹脂組成物が検討されている。係る硬化性樹脂組成物は加熱及び/又は光照射により耐熱性・硬度に優れた硬化塗膜が形成されることから、各種レジスト膜、塗料、印刷インキなどとしての利用が研究されている(例えば特許文献1〜3参照)。
上述したカリックスアレーンのフェノール性水酸基にスペーサーを介して重合性官能基を結合させた化合物において、スペーサーとしては種々の基が検討されているが、硬化膜の性状や操作性・簡便性の点から、オキシエチレン基(-CH2-CH2-O-)を含めてポリオキシエチレン基(即ち-(CH2-CH2-O-)p-、pは整数)が好ましいとされており、係るポリオキシエチレン基をスペーサーとして有する上記化合物の製造には、その中間体としてカリックスアレーンのポリオキシエチレン付加物、即ちカリックスアレーンのフェノール性水酸基にポリオキシエチレン-(CH2-CH2-O-)p-H(pは整数)を付加させた化合物を調製する必要がある。
そこで、本願発明者らは、ポリオキシエチレン付加剤として炭酸エチレンを使用することを想起した。炭酸エチレンは、低毒性(経口LD50:ラットで>5000mg/kg)であり、無臭であり、引火性が低く(引火点:150℃)、環境負荷が少ないという特長を有し、工業的な生産に好適である。
炭酸エチレンを使用したフェノール性水酸基のヒドロキシエチル化としては、特許文献4に記載の方法が知られている。この文献に記載の方法は、ビスフェノール化合物に過剰の炭酸エチレンをエステル交換触媒(例えば炭酸カリウム)の存在下に高温(例えば200℃)で溶融反応させるものである。この方法を、カリックスアレーンのフェノール性水酸基のポリオキシエチレン付加に適用したが反応はほとんど進行せず、目的物を得ることはできなかった。
本発明は係る知見に基づくものであり、カリックスアレーンのポリオキシエチレン付加物を工業的に製造することのできる方法を提供するものである。
で表わされるカリックスアレーンを、第3級アミンの存在下に、炭酸エチレンと反応させ、一般式(1)
で表わされるカリックスアレーン誘導体を得ることからなるカリックスアレーン誘導体の製造方法である。
一般式(1)で表わされる化合物において、Rがtert-ブチル基であり、nが4、6又は8であるカリックスアレーン誘導体が好ましい。また、第3級アミンとしてはトリプロピルアミン又はトリエチルアミンを使用するのが好ましい。
一般式(1)で表されるカリックスアレーン誘導体において、nは4〜10の整数であり、nが4、6又は8、特にnが4又は6が好適である。
また、Rのアルキル基は炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状アルキル基を意味する。炭素数が12を超えると、カリックスアレーン誘導体の耐熱性が劣るので好ましくない。係るアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、オクチル、tert-オクチル、デシル、ドデシルなどが例示される。工業的な生産を考慮すると、アルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、tert-オクチル、特にエチル、イソプロピル、tert-ブチルが好ましい。
mは1〜5の整数であり、1〜3が好ましい。前述の硬化性樹脂組成物として利用する場合、カリックスアレーン誘導体は液状の方がコーティング操作での取り扱いが容易であるが、mが1未満であるとカリックスアレーン誘導体が粉末状となり易く、操作性に問題がでてくる。
この方法において、前記非特許文献1に記載されるように一般式(2)で表されるカリックスアレーンは既に公知である。また、炭酸エチレンも公知化合物である。
当該脂肪族第3級アミンとしては、同一又は異なったアルキル基で置換されたトリアルキルアミンが挙げられる。当該アルキル基としては炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状アルキル基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、オクチル、tert-オクチル、デシル、ドデシルなどが例示される。
トリアルキルアミンの具体的な例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジブチルオクチルアミン、ジオクチルメチルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジエチルドデシルアミンなどが例示される。工業的生産を考慮すると、トリプロピルアミン、トリエチルアミンを使用するのが好ましい。
例えば、一般式(1)において、mが1(平均)のカリックスアレーン誘導体を製造する場合には、一般式(2)で表わされるカリックスアレーンに対して、炭酸エチレンを1.5〜2当量程度、第3級アミンを1.2〜1.8当量程度を使用するのが好ましい。同様に、mが2(平均)のカリックスアレーン誘導体を製造する場合には、一般式(2)で表わされるカリックスアレーンに対して、炭酸エチレンを2〜4当量程度、第3級アミンを1.5〜2.5当量程度を使用するのが好ましい。
分離・精製に際して、必要に応じて、活性炭処理などの工程を付加してもよい。
p-tert-ブチルカリックス[6]アレーンヘキサヒドロキシルエチルエーテル(一般式(1)で表される化合物において、nが6、mが1、Rがtert-ブチルの化合物)の製造
o-キシレン1541.5gの中にトリプロピルアミン318.1g(2.2モル、1.2当量(一般式(2)で表わされる化合物に対して、以下同様))を仕込み、室温下でp-tert-ブチルカリックス[6]アレーン300g(0.3モル)を投入し、室温下で1時間撹拌した。炭酸エチレン285.2g(3.25モル、1.8当量)を加え、室温下で1時間撹拌した後、還流温度まで昇温し17時間反応した。冷却後、水洗、溶媒留去してp-tert-ブチルカリックス[6]アレーンヘキサヒドロキシルエチルエーテルを主成分とする生成物353g(収率95%)得た。
p-tert-ブチルカリックス[6]アレーンドデカヒドロキシルエチルエーテル(一般式(1)で表される化合物において、nが6、mが2、Rがtert-ブチルの化合物)の製造
実施例1において、トリプロピルアミン2.0当量、炭酸エチレン2.7当量を用いたこと以外は、全く同様の操作でp-tert-ブチルカリックス[6]アレーンドデカヒドロキシルエチルエーテルを主成分とする生成物428g(収率95%)得た。
p-tert-ブチルカリックス[4]アレーンテトラヒドロキシルエチルエーテル(一般式(1)で表される化合物において、nが4、mが1、Rがtert-ブチルの化合物)の製造
実施例1においてp-tert-ブチルカリックス[6]アレーンの代わりにp-tert-ブチルカリックス[4]アレーンを用いたこととトリプロピルアミン1.5当量、炭酸エチレン2.0当量を用いたこと以外は、全く同様の操作でp-tert-ブチルカリックス[4]アレーンテトラヒドロキシルエチルエーテルを主成分とする生成物を収率93%で得た。
また、実施例3と同様な方法で、炭酸エチレンの使用量及びトリプロピルアミンの使用量を変化させて、p-tert-ブチルカリックス[4]アレーンポリヒドロキシルエチルエーテルを製造した。その結果を、実施例3を含めて表2に示した。
表1及び2に示されるように、炭酸エチレンの使用量並びに第3級アミンの種類及び使用量を調整することにより、mの数をコントロールできることが判明した。
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