JP5339048B2 - 光カチオン重合性を有する光重合増感剤 - Google Patents
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本発明の光重合開始剤組成物は、光重合増感剤として前記一般式(1)で示されるアントラセン−9,10−ジエーテル化合物と光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、オニウム塩を用いることができる。オニウム塩としては通常スルホニウム塩またはヨードニウム塩が使用される。スルホニウム塩としてはS,S,S’,S’−テトラフェニル−S,S’−(4、4’−チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサメトキシフォスフェート、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサメトキシフォスフェートが挙げられ、例えばダウ・ケミカル製UVI6992を用いることが出来る。一方、ヨードニウム塩としては4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサメトキシフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサメトキシアンチモネート、4−イソプロピルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタメトキシフェニルボレートが挙げられ、例えばチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製イルガキュア250(イルガキュアはチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社の登録商標)、ローディア社製2074を用いることが出来る。
本発明の光重合性組成物は、前述のアントラセン−9,10−ジエーテル化合物と光重合開始剤を含有する光重合開始剤組成物と、光カチオン重合性化合物とを含有する。
当該重合性組成物の硬化はフィルム状で行うことも出来るし、塊状に硬化させることも可能である。フィルム状に硬化させる場合は、液状の当該重合性組成物をたとえばポリエステルフィルムなどの基材に、たとえばバーコーターなどを用いて膜厚5〜300ミクロンになるように塗布する。スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布してもよい。このようにして調製した膜に、250〜500nmの波長範囲を含む紫外線を1〜1000mW/cm2程度の強さで光照射すればよい。用いる光源としてはメタルハライドランプ、キセノンランプ、紫外線LED、青色LED,白色LED、フュージョン社製のDランプ、Vランプ等が挙げられる。太陽光の使用も可能である。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(3)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spectorometer
(4)Massスペクトル:島津製作所社製、質量分析計、型式GCMS−QP5000
(5)紫外(UV)分光光度計:島津製作所社製、型式UV−2200
(第一反応)反応式(1)
300mlオートクレーブに、9,10−アントラキノン20.8g(0.10モル)とアントラキノン換算で20重量%の1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム水溶液104g(0.10モル)を仕込み、窒素雰囲気下、110℃のオイルバスに浸漬し1時間加熱した。反応後室温まで冷却し、9,10−ジヒドロキシアントラセン41.6g(0.20モル)を含有する水溶液124.8gを得た。この9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩水溶液を全量300mlオートクレーブ中に仕込み、酸化エチレン35g(0.8モル)を温度50℃以下、かつ圧力を0.3MPa以下に保ちつつ60分要して加えた。更に、反応温度を40℃に保持しながら反応を3時間続けた。反応終了後、得られた結晶を濾別して水洗浄した。得られた結晶を乾燥させ、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシエチル)エーテルの黄色粉末42gを得た。
(1)融点: 226−227℃。
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1): 3495,2980,2880,1395,1350,1090,1062,1020,890,880,760.
(3)1H−NMR(CDCl3,ppm):δ=4.15−4.23(m,4H),4.30−4.35(m、4H),7.48−7.55(m,4H),8.31−8.37(m、4H).
300mlの四口フラスコに、上記第1反応で得られたアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシエチル)エーテル2.0g(6.7ミリモル)、N−メチルピロリドン40ml、水素化ナトリウム0.64g(26.8ミリモル)を窒素雰囲気下で仕込み、60℃で、フラスコの内容物を攪拌・混合した後、エピクロロヒドリン3.1g(33.5ミリモル)をN−メチルピロリドン10mlに溶解した溶液を添加し、60℃で1.5時間攪拌を継続した。このフラスコにメタノール20mlを加え、水素化ナトリウムを分解した後、純水40ml、トルエン40ml加えた。得られた反応生成物に純水20mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、淡黄色結晶のアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテル0.82g(2.0ミリモル)を得た。生成物のアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシエチル)エーテルに対する収率は、30mol%であった。
(1)融点:99〜102℃。
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1):600、670、760、900、1060、1090、1350、1380、1400、1440、1620、などの波長に吸収が認められた。
(3)1H−NMR(CDCl3,ppm):δ=2.71−2.74(m,2H)、2.87(t,J=5Hz,2H)、3.28−3.33(m,2H)、3.59−3.65(m,2H)、3.96−4.06(m,6H)、4.36(t,J=5Hz,4H)、7.41−7.52(m,4H)、8.34−8.40(m,4H)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=410(M+)。
(第一反応)反応式(1)
攪拌機、温度計を装備した容量が500mlの三口フラスコに、実施例1と同様にして合成した9,10−ジヒドロアントラセンのジナトリウム塩水溶液100g(9,10−ジヒドロアントラセンとして0.16モル)に酸化プロピレンを46g(0.78モル)窒素雰囲気下に加えた。反応の進行に伴い、反応液は弱く発熱する。10分以内で内温40℃に達し、ついで液温は次第に下がってくるが、それと共に結晶が析出する。3時間後、メタノール100ml加え、リスラリーした後、沈殿生成物を濾過してアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシプロピル)エーテルの黄色粉末35.6gを得た。
(1)融点: 178−180℃
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1): 3300,2960,2900,2850,1400,1370,1320,1060,760,670.
(3)1H−NMR(CDCl3,ppm):δ=1.28−1.45(bs,6H),2.74−2.94(bs,2H),3.96−4.16(bs,4H),4.43−4.60(bs,2H),7.43−7.50(bs,4H),8.19−8.40(bs,4H).
300mlの四口フラスコに、第1反応で得られたアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシプロピル)エーテル2.0g(6.1ミリモル)、N−メチルピロリドン40ml、水素化ナトリウム0.59g(24.5ミリモル)を窒素雰囲気下で仕込み、60℃で、フラスコの内容物を攪拌・混合した後、エピクロロヒドリン2.8g(30.6ミリモル)をN−メチルピロリドン10mlに溶解した溶液を添加し、室温で2時間攪拌を継続した。このフラスコにメタノール20mlを加え、水素化ナトリウムを処理した後、純水40ml、トルエン40ml加えた。得られた反応生成物に純水20mlを加えて洗浄し、この洗浄操作を3回繰り返した。純水によって洗浄した後の液から有機層を分離した。分離した有機層を濃縮して得られた油状物質を、ヘキサン、酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製し、淡黄色結晶のアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシプロピル)エーテル0.94g(2.1ミリモル)を得た。生成物のアントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシプロピル)エーテルに対する収率は、35mol%であった。
(1)融点:73〜76℃。
(2)IRスペクトル(KBr,cm−1):600、650、670、760、830、850、920、960、1060、1120、1250、1350、1440、1460、1620などの波長に吸収が認められた。
(3)1H−NMR(CDCl3,ppm):δ=1.34−1.57(m,6H)、2.61−2.88(m,4H)、3.17−3.21(m,1H)、3.27−3.31(m,1H)、3.31−3.59(m,1H),3.71−3.90(m,4H)、3.99−4.20(m、4H)、4.59−4.70(m、1H)、7.26−7.51(m,4H)、8.33−8.42(m,4H)。
(4)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=438(M+)。
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ化合物(ダウ・ケミカル社製UVR6105)100部に対し、光重合開始剤としてヨードニウム塩(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製イルガキュア250)2.5部、光重合増感剤として実施例1で合成したアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテル1.0部を混合し、光重合性組成物を調製した。この調製は脂環式エポキシ化合物にヨードニウム塩とアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテルを添加することにより行った。調製操作は室温でゆるやかにかくはんすることにより実施したが、添加したアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテルが脂環式エポキシ化合物に速やかに溶解する様子が確認された。このようにして調製した当該組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)の上にバーコーターを用いて膜厚が12ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からサンダー社製紫外線LEDを用いて光照射した。照射光の中心波長は395nmで照射強度は10mW/cm2である。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は15秒であった。
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ化合物(ダウ・ケミカル社製UVR6105)100部に対し、開始剤としてヨードニウム塩(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製イルガキュア250)2.5部、増感剤として実施例2で合成したアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシプロピル)エーテル1.0部を混合し、光重合性組成物を調製した。この調製の際、評価例1と同様にアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシプロピル)エーテルが脂環式エポキシ化合物に速やかに溶解する様子が確認された。このようにして調製した当該組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が12ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からサンダー社製紫外線LEDを用いて光照射した。照射光の中心波長は395nmで照射強度は10mW/cm2である。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は15秒であった。
アントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテルを添加しない以外は評価例1と全く同様に光重合性組成物を調製し、紫外線LED(395nm、照射強度10mW/cm2)を照射して硬化時間を求めたが、組成物は30分照射後も硬化しなかった。
アントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテルの代わりに公知の光重合増感剤である9,10−ジブトキシ−アントラセン(特開2003−2855の実施例2の化合物)2.5部を添加した以外は評価例1と全く同様に光重合性組成物を調製し、紫外線LED(395nm、照射強度10mW/cm2)を照射して硬化時間を求めた。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は15秒であった。
評価例1において調製し、光硬化したフィルムをオーブン中で180℃に加熱した。一定時間ごとにフィルムをオーブンから出して、UVスペクトルを測定し、アントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテルに起因する405nmの吸収強度の変化を昇華の指標として測定した。その結果、30分間加熱した後でも、当該吸収強度に変化は認められず、添加したアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテルは、ほとんど昇華していないことが判明した。その結果を表1に示す。
比較例2において調製し、光硬化したフィルムをオーブン中で180℃に加熱した。一定時間ごとにフィルムをオーブンから出して、UVスペクトルを測定し、9,10−ジブトキシ−アントラセンに起因する405nmの吸収強度の変化を昇華の指標として測定した。その結果、30分間加熱した後、当該吸収強度は34%減少しており、添加した9,10−ジブトキシ−アントラセンは30分後に約3割昇華していることが判明した。その結果を表1に示す。
評価例1と同様にサンプルを調製し、光硬化したフィルムを2cm角に切り、メチルエチルケトン20ml中に25℃15時間浸漬したのち、乾燥し、UVスペクトルを測定し、アントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテルに起因する405nmのUV吸収強度を求めて、溶出の程度を調べた。その結果、添加したアントラセン−9,10−ジ(2−グリシジルオキシエチル)エーテルの溶出率は0%、つまり、溶出していないことが判明した。
比較例1と同様にサンプルを調製し、光硬化したフィルム2cm角に切り、メチルエチルケトン20ml中に25℃15時間浸漬したのち、乾燥し、UVスペクトルを測定し、9,10−ジブトキシ−アントラセンに起因する405nmのUV吸収強度を求めて、溶出の程度を調べた。その結果、添加した9,10−ジブトキシ−アントラセンの溶出率は75%であることが判明した。
Claims (5)
- 下記一般式(1)で示される光カチオン重合性を有する光重合増感剤。
(一般式(1)において、m、nは同一であっても異なっていてもよく、1以上10以下の整数を表し、R1,R2は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、メチル基又はエチル基のうちいずれか一つを表し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基のいずれかを示す。) - 下記一般式(2)で示される、アントラセン−9,10−ジ(2−ヒドロキシアルキル)エーテル化合物とエピハロヒドリン化合物とを反応させることを特徴とする請求項1に記載の光カチオン重合性を有する光重合増感剤の製造方法。
(一般式(2)において、m、nは同一であっても異なっていてもよく、1以上10以下の整数を表し、R1,R2は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、メチル基又はエチル基のうちいずれか一つを表し、X及びYは同一であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基のいずれかを示す。) - 請求項1に記載の光カチオン重合性を有する光重合増感剤と光重合開始剤としてオニウム塩を含有する光重合開始剤組成物。
- 請求項3に記載の光重合開始剤組成物と光カチオン重合性化合物を含有する光重合性組成物。
- 請求項4に記載の光重合性組成物を硬化してなる硬化物。
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