以下、本発明に係るガス式漏洩検査装置につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態では、ミッション部品として組み立てられる前のケース部材につき漏洩検査を行うものとする。
図1は、本実施の形態に係るガス式漏洩検査装置10を模式的に示した全体概略正面図である。このガス式漏洩検査装置10は、載置台12と隔壁部材14とで形成されるチャンバ16を有し、該チャンバ16内にワークとしてのケース部材18を収容する。
ここで、ミッション部品は、周知の通り、複数個のケース部材同士が連結されることによって構成されるものであり、トランスミッション及び潤滑油を収容するための内部空間を有する。ケース部材18の底壁には、例えば、別のケース部材を連結する開口20が形成される。また、該底壁や側壁、天井壁には、特開2005−181207号公報に記載されるように、潤滑油圧検出孔、ドリブンプーリ油圧検出孔、後進用ブレーキ油圧検出孔、前進用クラッチ油圧検出孔、ドライブプーリ油圧検出孔等が貫通形成される。以下、これらの孔を特に区別せず、底壁に形成された貫通孔、側壁に形成された貫通孔、天井壁に形成された貫通孔を、それぞれ、「底壁貫通孔」、「側壁貫通孔」、「天井壁貫通孔」と指称するとともに、側壁貫通孔、天井壁貫通孔の各参照符号を21、22とする。なお、底壁貫通孔は図示していない。
ケース部材18には、ミッション部品として組み立てられた際に前記内部空間を形成するための中空室24が存在する。ガス式漏洩検査装置10は、ケース部材18の中空室24から底壁、側壁、又は天井壁を介して検査ガスが漏洩した場合、これを検知するものである。
ガス式漏洩検査装置10は、図2に示すように、作業ステーションの床上に設置される基台26を有する。この基台26は、第1支持台28、第2支持台30及び第3支持台32(図1参照)を有し、この中の第1支持台28には、載置台変位手段としての第1シリンダ34(図2参照)が支持される。この第1シリンダ34を構成する第1ロッド36は、第2支持台30に変位自在に設けられた載置台12の下端面に対し、連結ブラケット38を介して連結される。
図2に概略を示すように、第2支持台30の上端面には、2本の案内レール40a、40bが互いに平行に延在して設けられる。案内レール40a、40bの各々にはスライダ42が摺動自在に係合されるとともに、このスライダ42に前記載置台12が橋架される。従って、載置台12は、第1ロッド36が前進又は後退することに伴って、スライダ42とともに案内レール40a、40bの延在方向に沿って変位する。
載置台12の上端面には、その概略平面図である図3に示すように、ケース部材18の底壁に形成された開口20の形状に対応する形状の第1環状溝44が形成される。この第1環状溝44には、中空室24に導入された検査ガスが開口20から漏洩することを防止するための第1シール部材46が収容される。また、載置台12の上端面には、底壁貫通孔を閉塞するためのプラグ48が複数個設けられるとともに、ケース部材18を堰止して位置決め固定するための複数個のストッパ50が取り外し可能に設けられる。従って、ケース部材18は、その側壁がストッパ50に堰止されることで位置決め固定される。
図1の要部概略図である図4に示すように、載置台12には、その厚み方向に沿って、排気用孔52、検査ガス導入孔54及び検査ガス回収孔55が貫通形成される(図1参照)。載置台12上にケース部材18が位置決め固定された際、ケース部材18の中空室24は、これら排気用孔52、検査ガス導入孔54及び検査ガス回収孔55に連通する位置となる。
中空室24には、中子56が収容される。この中子56が存在することにより、中空室24の空間容積が低減する。従って、中空室24から排気すべきガス、及び中空室24に導入する検査ガスの量を低減することができる。
中子56は、中空室24に収容することが可能な寸法であり、且つ検査ガスを吸着ないし吸収しない物体であればよく、特に限定されるものではないが、鉄塊等のバルク体が好適な例として挙げられる。
排気用孔52には、第1クリーンポンプ58が接続された第1排気用配管60が挿入される。また、検査ガス導入孔54及び検査ガス回収孔55には、それぞれ、図示しない検査ガス供給手段に個別に接続された検査ガス導入用配管62、検査ガス回収用配管63が挿入される。
なお、検査ガスとしては、ガス式漏洩検査で一般的に用いられるヘリウムや水素、アルゴン等を採用すればよいが、極少量の漏洩を検出することが求められるような場合、換言すれば、高精度に検出を行うような場合には、ヘリウムが好適である。アルゴンは直径が大きく、微細な割れからは漏洩することが容易でない(すなわち、微細な割れが存在することを検出することが容易ではない)のに対し、ヘリウムは直径が小さいために微細な割れからも漏洩するので、該割れが存在することを検出することが可能であるからである。しかも、後述するように、検査に使用したヘリウムを回収して再利用することも可能である。なお、ヘリウムを供給し得る手段としては、ボンベが挙げられる。
載置台12には、基準ガス導入孔64も厚み方向に沿って貫通形成される。この基準ガス導入孔64は、ケース部材18の中空室24に連通せず、チャンバ16内に連通する位置に形成されている。また、基準ガス導入孔64に挿入された基準ガス導入用配管66の一端には図示しない基準ガス供給手段が接続され、中空室24に臨む残余の一端にはリークマスタ68が接続される。リークマスタ68は、載置台12の上方に配置され、ケース部材18とともにチャンバ16に収容される。
このリークマスタ68は、基準ガスを、予め決定された所定のリーク量でチャンバ16に排出するように調整されている。
基準ガス供給手段は、基準ガス導入用配管66及びチャンバ16を介して基準ガスをモニタスペース69(後述)に供給するためのものであり、その具体例としてはボンベが挙げられる。なお、基準ガスには、検査ガスと同一のガスを用いる。すなわち、検査ガスとしてヘリウムを用いる場合、基準ガスもヘリウムである。
基準ガス導入用配管66からは、第2排気用配管70が分岐して設けられる。この第2排気用配管70は、第1排気用配管60と合流して前記第1クリーンポンプ58に接続される。この接続ラインには、圧力センサ71が設けられる。
以上の構成において、第1排気用配管60、検査ガス導入用配管62、基準ガス導入用配管66及び第2排気用配管70には、第1バルブ72、第2バルブ74、第3バルブ76及び第4バルブ78がそれぞれ介装される。同様に、検査ガス回収用配管63には、第5バルブ79が設けられる。
載置台12の上端面には、さらに、ケース部材18を囲繞するようにして4本の支柱80a〜80d(支持部材)が立設される。
これら支柱80a〜80dとしては、高さ方向寸法が種々相違するものが予め用意されており、その中から、漏洩検査を行うケース部材18の高さ方向寸法と同一寸法のものが載置台12に取り付けられる。すなわち、任意のケース部材18に対して漏洩検査を行った後、このケース部材18と高さ方向寸法が相違する別のケース部材に対して漏洩検査を行うときには、支柱80a〜80dが載置台12から取り外された後、該別のケース部材の高さ方向寸法と同一寸法の支柱80a〜80dが載置台12に取り付けられる。
ケース部材18は、チャンバ16内において、上記したように構成される載置台12と、挟持盤82とで挟持される。この挟持盤82は、ケース部材18に当接するシール用部材84と、下端面に該シール用部材84が取り付けられ、且つ該シール用部材84に比して幅広な支持盤86とを有する。
この中、シール用部材84におけるケース部材18に臨む下端面には、図5に示すように、ケース部材18の天井壁に形成された比較的大径の天井壁貫通孔22の形状に対応する形状の第2環状溝88が形成される。この第2環状溝88には、検査ガスが前記天井壁貫通孔22から漏洩することを防止するための第2シール部材90が収容される。また、この端面には、小径な天井壁貫通孔22を閉塞するためのプラグ92が複数個設けられる。
一方の支持盤86の幅方向隅部には、図1に示すように、第1ファン94(撹拌手段)がそれぞれ設けられる。これらの第1ファン94は、チャンバ16内、特にモニタスペース69内のガスを撹拌するためのものである。各第1ファン94は鉛直方向に臨んでおり、従って、第1ファン94は、モニタスペース69内のガスに対し、鉛直方向に沿う対流を起こさせる。すなわち、モニタスペース69内のガスは、第1ファン94の作用下に、該モニタスペース69内で上昇と下降を繰り返す。
支持盤86には、第1ファン94と別の位置に複数個のブラケット96が設けられる。各ブラケット96には、第2シリンダ98(閉塞部材変位手段)がそれぞれ支持される。
第2シリンダ98を構成する第2ロッド100の先端には、ケース部材18の側壁貫通孔21の位置に対応する位置に閉塞部材102が設けられる。勿論、閉塞部材102は、第2ロッド100が前進したときに側壁貫通孔21に進入して該側壁貫通孔21を閉塞し、後退したときに側壁貫通孔21から離脱する。
支持盤86の上端面には、第3シリンダ104(挟持盤変位機構)を構成する第3ロッド106が連結される。この第3ロッド106が前進(下降)又は後退(上昇)することに追従し、挟持盤82がケース部材18に対して接近又は離間する方向に変位する。
チャンバ16を構成する隔壁部材14の底面には、第3シール部材108が貼付される。この第3シール部材108は、載置台12と隔壁部材14との間をシールする。
支持盤86と隔壁部材14の天井壁との間に画成される空間に存在するガスは、サンプリングガスとしてチャンバ16外に導出される。前記モニタスペース69は、サンプリングガスが得られる当該空間を指称しており、以下においても同様である。
また、隔壁部材14の左側面上方及び右側面下方には、撹拌手段である第2ファン110がそれぞれ設けられる。各第2ファン110は水平方向に臨んでおり、このため、第2ファン110は、モニタスペース69内のガスに対し、水平方向に沿う対流を起こさせる。換言すれば、モニタスペース69内には、第1ファン94の作用下に上昇と下降を繰り返す流れが生じる一方、第2ファン110の作用下に左方から右方又はその逆方向に移動する流れが生じる。
隔壁部材14の左側面上方には、第1循環用孔112及び第2循環用孔114が形成され、これら第1循環用孔112及び第2循環用孔114の各々には、図1に示すように、循環用配管116(循環流通路)を構成する往路配管118及び復路配管120が挿入される。なお、本実施の形態では、第1循環用孔112からサンプリングライン121に至るまでを往路配管118とするとともに、サンプリングライン121から第2循環用孔114に至るまでを復路配管120とする。ここで、サンプリングライン121は、循環用配管116から分岐するようにして設けられている。
サンプリングライン121は、漏洩検査ガス検出手段としてのディテクタ122の入口接続継手に接続される。なお、往路配管118には吸気ポンプ123及び第1電磁弁124が介装されており、この中の第1電磁弁124が切り替えられることに伴い、往路配管118又はプローブ用配管126のいずれかが選択的に開放ないし閉塞される。これにより、往路配管118内のガス、又はプローブ用配管126内のガスのいずれか一方が、選択的にディテクタ122に導かれる。
また、ディテクタ122の出口接続継手には、サンプリングガス排出管129が接続される。
一方、復路配管120には第2電磁弁130が介装されている。この第2電磁弁130が切り替えられることに伴い、復路配管120又はラインクリーニング用配管132のいずれかが選択的に開放ないし閉塞される。これにより、復路配管120内のガスがモニタスペース69、又は前記ラインクリーニング用配管132に接続された第2クリーンポンプ134のいずれかに選択的に導かれる。
また、隔壁部材14の右側面上方には、クリーニング用孔136が貫通形成される。このクリーニング用孔136には、二方バルブ138が介装されたチャンバクリーニング用配管140が接続される。このチャンバクリーニング用配管140と、前記第1クリーンポンプ58に接続された出口配管142は、前記第2クリーンポンプ134に接続される。すなわち、第2クリーンポンプ134には、ラインクリーニング用配管132、チャンバクリーニング用配管140及び出口配管142が接続されている。
隔壁部材14の側壁と天井壁の境界には、湾曲部144が形成される。換言すれば、隔壁部材14の内方の隅部は湾曲されている。
さらに、隔壁部材14の天井壁には、挿通孔146が貫通形成される。前記第3ロッド106は、この挿通孔146に通されて支持盤86の上端面に連結されている。勿論、挿通孔146の内壁と第3ロッド106の側壁との間は、シール部材(図示せず)によってシールされる。
前記天井壁の外方上端面には、第4シリンダ148(隔壁部材変位機構)を構成する第4ロッド150が連結される。隔壁部材14は、これら第4ロッド150が前進(下降)又は後退(上昇)することに追従し、載置台12に対して接近又は離間する方向に変位する。勿論、第4ロッド150は、互いに同期して下降又は上昇する。
以上の構成において、第3シリンダ104及び第4シリンダ148は、基台26の前記第3支持台32に支持される(図2参照)。また、圧力センサ71及びディテクタ122は、それぞれ、信号線152、154を介して制御回路156に電気的に接続される。
本実施の形態に係るガス式漏洩検査装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、校正方法及び漏洩検査方法との関係で説明する。
はじめに、予め校正されたリークマスタ68を取り付ける。すなわち、リークマスタ68は、例えば、0.5cc/分で検査ガスを導出するように設定された場合、略正確に0.5cc/分で検査ガスを導出することが可能である。
また、ディテクタ122に対しても校正を行う。このために、例えば、基準ガス導入用配管66から分岐してディテクタ122に接続される配管(図示せず)を設け、ディテクタ122に基準ガスを導入するようにしてもよい。
そして、第1シリンダ34を付勢し、第1ロッド36を前進させる。これに追従し、連結ブラケット38を介して第1ロッド36に連結された載置台12が、案内レール40a、40bに案内されながら第2支持台30から引き出されて突出する。勿論、この際には、案内レール40a、40b上をスライダ42が摺動する。
次に、載置台12に対し、中子56を載置する。中子56は特に位置決め固定する必要はないが、位置決め固定するようにしてもよいことは勿論である。
その後、漏洩が起こらないことが予め確認されたケース部材18を載置台12に載置する。この載置に伴い、載置台12上に予め載置された中子56がケース部材18の中空室24に収容される。
載置台12が第2支持台30の前方に引き出されているため、ケース部材18が隔壁部材14や基台26等に干渉することが回避されるので、ケース部材18を載置台12に容易に載置することができる。特に、ケース部材18をロボットによって載置台12に載置するときには、ロボットのアームも隔壁部材14や基台26等に干渉することが回避される。このため、ロボットに対するティーチングが容易となる。
ケース部材18が載置台12に載置される際、ケース部材18に形成された開口20近傍の底壁に第1シール部材46(図3参照)が当接するとともに、ケース部材18の底壁貫通孔にプラグ48が進入する。底壁貫通孔は、最終的に、プラグ48によって閉塞される。このことと、ケース部材18の側壁がストッパ50によって堰止されることとが相俟って、ケース部材18が載置台12に位置決め固定される。
次に、第1シリンダ34(図2参照)を再付勢し、第1ロッド36を後退させる。その結果、載置台12が案内レール40a、40bに案内されながら第2支持台30に戻り、基台26に収納される。これにより、ケース部材18が隔壁部材14に対向する位置となる。
次に、第3シリンダ104を付勢し、第3ロッド106を下降させる。これに伴って下降した挟持盤82のシール用部材84は、ケース部材18の天井壁、及び4本の支柱80a〜80dの上端面に着座する。支柱80a〜80dの高さ方向寸法がケース部材18の高さ方向寸法と同一であるため、シール用部材84は、ケース部材18の天井壁と、4本の支柱80a〜80dの上端面とに対して同時に当接する。
この当接により、挟持盤82を構成する支持部材が支柱80a〜80dから支持される。このため、挟持盤82に作用する反力が分散されるので、該挟持盤82が反ることが回避される。その結果、ケース部材18の天井壁とシール用部材84との間に間隙が形成されることが回避され、両部材間のシールが保たれる。
シール用部材84がケース部材18に着座すると、ケース部材18に形成された大径な天井壁貫通孔22近傍の天井壁に第2シール部材90(図5参照)が当接するとともに、ケース部材18の小径な天井壁貫通孔22にプラグ92が進入する。すなわち、小径な天井壁貫通孔22がプラグ92によって閉塞される。
次に、支持盤86に支持された第2シリンダ98を付勢し、第2ロッド100をケース部材18に指向して前進動作させる。これにより、第2ロッド100の先端に設けられた閉塞部材102がケース部材18の側壁貫通孔21に進入して該側壁貫通孔21を閉塞する。
以上によりケース部材18の全ての開口20・貫通孔がシールされ、中空室24が大気に対して遮断されて気密状態となる。
次に、第4シリンダ148を同期して付勢し、第4ロッド150を同時に下降させる。これに追従して隔壁部材14が下降し、最終的に、その底壁が載置台12の上端面に着座する。これにより、チャンバ16が形成される。隔壁部材14の底壁と載置台12の上端面の間は、第3シール部材108によってシールされる。
次に、ガス式漏洩検査装置10の校正を行う。具体的には、第1ファン94及び第2ファン110を付勢し、モニタスペース69内のガスに、左方から右方又はその逆方向に移動する流れと、上方から下方又はその逆方向に移動する流れとを生じさせる。この状態で、第3バルブ76を開状態とするとともに、前記基準ガス供給手段(ボンベ等)から基準ガスを供給する。基準ガスは、その後、基準ガス導入用配管66を通過し、リークマスタ68からチャンバ16内に導出され、さらに、該チャンバ16内を上昇してモニタスペース69に到達する。
リークマスタ68からチャンバ16、ひいてはモニタスペース69への基準ガスの導出流量は、予め設定された所定流量で一定である。なお、基準ガスのチャンバ16内への導出量ないし導出流量は、好ましくは、後述する漏洩検査時における検査ガスの中空室24内への導出量ないし導出流量と同一値に設定される。
そして、基準ガスは、モニタスペース69内に存在していたガス、すなわち、大気と混ざる。
基準ガスがヘリウムである場合、ヘリウムが空気に比して軽量であるためにモニタスペース69内の天井壁近傍に滞留し易い。特に、モニタスペース69の隅部が角張っているときには、ヘリウム等の軽量なガスは、隅部に容易に滞留して局在化する。このため、基準ガスを、往路配管118及びサンプリングライン121を経由してディテクタ122に到達させることが容易ではない。従って、モニタスペース69内の基準ガスの正確な量を評価することも容易ではない。
しかしながら、本実施の形態では、第1ファン94及び第2ファン110の作用下にモニタスペース69内のガスを撹拌するようにしている。しかも、隔壁部材14の隅部には湾曲部144が形成されているので、ガスが湾曲部144に沿って容易に流動する。以上のような理由から、基準ガスとしてヘリウムのような軽量なガスを用いた場合であっても、該基準ガスがモニタスペース69内で局在化することが防止される。
リークマスタ68から基準ガスを導出している間、支持盤86と隔壁部材14の天井壁との間に画成されるモニタスペース69中のガスが、吸気ポンプ123の作用下に吸気され、往路配管118及びサンプリングライン121を経てディテクタ122に送られる。すなわち、モニタスペース69に存在するガスは、ディテクタ122によって検査を行うために抽出されるサンプリングガスである。
本実施の形態では、上記したような理由から、基準ガスがモニタスペース69内で局在化することが防止されている。従って、サンプリングガスには、基準ガスが略一定量で含まれる。
往路配管118に導かれたサンプリングガスの一部は、該往路配管118及びサンプリングライン121を経てディテクタ122に送られる。しかも、サンプリングガスの残部を、復路配管120を介してモニタスペース69に戻すようにしているので、校正を行う間、安定した量の基準ガスを含むサンプリングガスがディテクタ122に導入される。このため、ガス式漏洩検査装置10を、モニタスペース69内への基準ガスの導入量に対応して高精度に校正することが可能となる。
ディテクタ122は、リークマスタ68から導出された基準ガスを検知する。ここで、基準ガスがヘリウムである場合には、ディテクタ122は、モニタスペース69内のガス(すなわち、大気)に含まれるヘリウムの量と、基準ガスとしてのヘリウムの量との総和としての値を示すとともに、この値を、信号線152を介して制御回路156に情報として送信する。制御回路156は、このときの検出量を「基準値」として認識する。なお、大気中には、一般的に5ppm程度のヘリウムが含まれている。
以上説明したように、ガス式漏洩検査装置10の校正を行う際には、漏洩検査を行う際と同様に、載置台12に対してケース部材18及び中子56をセットするとともに、挟持盤82によってケース部材18を押圧することが好ましい。これにより、校正時の条件と漏洩検査時の条件とが同一となるからである。
また、ケース部材18として漏洩が起こらないものを使用することは勿論である。ケース部材18から漏洩が起こる場合、ケース部材18から漏洩したガスがモニタスペース69内のガスに混入することになるので、正確な校正を行うことができなくなる。これを回避するためである。
このようにして校正を行った後、漏洩検査を実施するべく下準備を行う。
すなわち、モニタスペース69をはじめとし、チャンバ16内には基準ガスが導入されている。この状態のままで隔壁部材14及び挟持盤82を上昇させると、載置台12の近傍に基準ガスが残留する懸念がある。この場合、漏洩検査においてディテクタ122に示される値が基準値を超えたとき、中空室24からチャンバ16に漏洩してモニタスペース69に到達した検査ガスに起因するのか、又は、残留した基準ガスに起因するのかを判断することが困難である。そこで、モニタスペース69に存在するガスを排気する。なお、具体的な排気方法は、後述する漏洩検査時と同一であるため、ここでは割愛する。
排気が終了した後、隔壁部材14及び挟持盤82を上昇させる。さらに、第1シリンダ34を付勢して第1ロッド36を前進させ、これにより載置台12を第2支持台30の前方に引き出した後、ケース部材18を、漏洩検査を実施するものに交換する。
以降は上記と同様にして、第1シリンダ34を再付勢することで第1ロッド36を後退させた後、第3シリンダ104を付勢して第3ロッド106を下降させる。さらに、第2シリンダ98を付勢して第2ロッド100を前進させる。その結果、既に詳述した通り、ケース部材18の全ての開口20・貫通孔がシールされ、中空室24が大気に対して遮断されて気密状態となる。これと同時に、第4シリンダ148の第4ロッド150を下降させ、隔壁部材14の底壁を載置台12の上端面に着座させてチャンバ16を形成する。
以上の下準備を行った後、漏洩検査を実施する。
はじめに、第1ファン94及び第2ファン110を付勢し、モニタスペース69内のガスに、左方から右方又はその逆方向に移動する流れと、上方から下方又はその逆方向に移動する流れとを生じさせる。
次に、第1クリーンポンプ58及び第2クリーンポンプ134を付勢し、第1バルブ72を開状態とする。これにより、ケース部材18の中空室24からガスが排気される。中空室24には中子56が収容されているので、排気すべきガスの量が比較的少ない。このため、中空室24を排気するまでに要する時間が短くなる。
この際には、前記圧力センサ71によって中空室24の内圧が測定される。その測定結果は、信号線154を介して制御回路156に送られる。
内圧の実降下速度は、合格品であるケース部材18を用いての測定結果に基づいて制御回路156に予め設定された設定降下速度と対比される。なお、所定時間の経過によって略一定となった内圧(実最終内圧)と、合格品であるケース部材18を用いての測定結果に基づいて制御回路156に予め設定された設定最終内圧とを対比するようにしてもよい。
実降下速度が設定降下速度未満であるときには、ケース部材18に漏洩箇所があるか、又は、ケース部材18と載置台12ないし挟持盤82との間のシールが不十分であることが一因である可能性がある。そこで、この場合、隔壁部材14を上昇させてケース部材18を露呈させ、さらに、該ケース部材18を載置台12から一旦取り外す。
次に、第1シール部材46や第2シール部材90、第3シール部材108、プラグ48、92、閉塞部材102等に、傷が存在するか否かや、位置ズレをおこしていないか否か、いわゆるめくれがあるか否か等を調査する。このようなシール機能を低下させる原因がある場合には、これらを交換したり、正規位置に正規姿勢で装着し直したりすればよい。
シール機能を低下させる原因がないと判断された場合、ケース部材18の漏洩箇所を特定し、補修が可能なものは補修ステーションで補修を行う。その後、上記した各工程が再度実施される。
なお、ケース部材18を載置台12から取り外すことなく、後述するように検査ガスを中空室24に導入するとともに、プローブ128によって漏洩箇所を特定するようにしてもよい。
一方、実降下速度が設定降下速度以上であるとき、又は実最終内圧が設定最終内圧以下であるときには、ケース部材18に漏洩箇所がある可能性が低く、ケース部材18と載置台12ないし挟持盤82との間のシールが十分である、と判断することができる。この場合のケース部材18は予備合格品であると判定され、次工程以降が実施される。
すなわち、次に、第1バルブ72を閉止した後に第2バルブ74を開放し、検査ガス供給手段(ボンベ等)から検査ガス導入用配管62を介して中空室24に検査ガスを供給する。検査ガスは、予め設定された所定の圧力となるまで、一定流量で中空室24に導入される。中空室24には中子56が収容されているので、導入すべき検査ガスの量が比較的少なくなる。このため、中空室24が検査ガスで満たされるまでに要する時間が短くなる。
このように、中空室24に中子56を収容することにより、該中空室24内のガスを排気するまでに要する時間、及び該中空室24内を検査ガスで満たすまでに要する時間を短くすることが可能となる。従って、漏洩検査開始から終了までのタクトタイムを短縮することができる。
中空室24が検査ガスで満たされた後も、モニタスペース69内のガスは、上記と同様に第1ファン94及び第2ファン110の作用下に撹拌され、隔壁部材14の隅部の湾曲部144に沿って容易に流動する。最終的に、モニタスペース69に存在するガスが、サンプリングガスとして往路配管118に導出され、その一部が、サンプリングライン121を経てディテクタ122に導かれる。ディテクタ122に導かれなかった残部は、上記と同様に、復路配管120を通過してモニタスペース69に戻る。すなわち、本実施の形態では、モニタスペース69のガス(大気)を排気することなく、ケース部材18に漏洩箇所が存在するか否かの検査を行う。
ディテクタ122は、サンプリングガス中に含まれる検査ガスの量を求めた後、信号線152を介して、その値を情報として制御回路156に送る。制御回路156は、この情報と、前記基準値とを対比する。
ケース部材18に漏洩箇所が存在しないときには、中空室24の検査ガスがチャンバ16に漏洩することはない。モニタスペース69内のガス(すなわち、大気)に自然に含まれる基準ガス(例えば、ヘリウム)と同一種のガスがディテクタ122によって検出されはするものの、基準値は、モニタスペース69内のガスに自然に存在する基準ガスと同一種のガスの量と、リークマスタ68から意図的に供給された基準ガス(例えば、ヘリウム)の量との総和としての値であるので、中空室24の検査ガスがチャンバ16に漏洩しないときには、ディテクタ122によって測定された値が前記基準値を大きく超えることはない。
この場合、制御回路156は、ケース部材18を「合格品である」と判定する。合格品であると判定されたケース部材18は、ガス式漏洩検査装置10から取り出されて次工程を営むステーションに送られる。
ここで、ケース部材18の中空室24には、上記の漏洩検査を行うための検査ガスが導入されている。この状態のままで隔壁部材14及び挟持盤82を上昇させると、載置台12の近傍に、漏洩検査時の検査ガスが残留する懸念がある。この場合、次回の漏洩検査においてディテクタ122に示される値が基準値を超えたとき、中空室24からモニタスペース69に漏洩した検査ガスに起因するのか、又は、残留した検査ガスに起因するのかを判断することが困難である。
このような不都合が惹起されることを回避するべく、中空室24内及びモニタスペース69内に存在するガスを排気する。すなわち、第2バルブ74及び/又は第3バルブ76を閉止し、第1バルブ72、第4バルブ78及び/又は二方バルブ138を開放する。これにより、中空室24内及び基準ガス導入用配管66内の検査ガス、基準ガスが第1排気用配管60、第2排気用配管70を介して第1クリーンポンプ58に吸引され、さらに、第2クリーンポンプ134の作用下に出口配管142を経て排気される。また、モニタスペース69内のガスが、第2クリーンポンプ134の作用下に、チャンバクリーニング用配管140を経て排気される。
この排気に先んじて、第2電磁弁130が切り替えられる。その結果、復路配管120が閉塞されるとともにラインクリーニング用配管132が開放される。これにより、循環用配管116のガスがラインクリーニング用配管132を介して第2クリーンポンプ134に吸引される。すなわち、循環用配管116のガスが排気され、クリーニングが行われる。
中空室24内に存在する検査ガスは、回収用ポンプ158の作用下に検査ガス回収用配管63を介して回収し、さらに、クリーニング処理を施して純度を高めた後、検査ガス供給源に戻すようにしてもよい。この際には、第5バルブ79を開放すればよい。
その後、第2シリンダ98を付勢して第2ロッド100を後退させ、閉塞部材102をケース部材18の側壁貫通孔21から離脱させる。
次に、第4シリンダ148及び第3シリンダ104を付勢して第4ロッド150、第3ロッド106を上昇させることで、隔壁部材14及び挟持盤82を上昇させる。必要に応じ、この上昇に先んじてモニタスペース69内、中空室24内に空気を供給するようにしてもよい。このためには、空気を導入するための空気導入管をモニタスペース69内、中空室24内にそれぞれ配設するとともに、空気供給源から前記空気導入管に空気を供給するようにすればよい。
隔壁部材14及び挟持盤82を上昇させることにより、挟持から解放されたケース部材18が露呈する。次に、第1シリンダ34を付勢して第1ロッド36を前進させ、これにより載置台12を第2支持台30の前方に引き出す。その後、ケース部材18が作業者ないしロボットによって載置台12から取り外され、別のステーションに搬送される。これにより一連の漏洩検査が終了する。
その後、次にガス式漏洩検査装置10に搬送されてきたケース部材18に対し、上記と同様にして漏洩検査が実施される。このときには、前回の漏洩検査のときに用いられた検査ガスが除去されているので、前回の漏洩検査時の検査ガスに起因して検出精度が低下することが回避される。
一方、ケース部材18に漏洩箇所が存在するときには、中空室24に導入された検査ガスが漏洩箇所を通過してチャンバ16に漏洩する。検査ガスがヘリウム等の空気に比して軽量なガスである場合、漏洩した検査ガス(以下、単に漏洩ガスともいう)は、モニタスペース69まで上昇して該モニタスペース69内のガス(大気)と混ざり合う。
本実施の形態では、第1ファン94及び第2ファン110の作用下にモニタスペース69内のガスを撹拌するようにしている。しかも、隔壁部材14の隅部に湾曲部144が形成されているので、漏洩ガスが湾曲部144に沿って容易に流動する。以上のような理由から、検査ガスとしてヘリウムのような軽量なガスを用いた場合であっても、該検査ガスがモニタスペース69内で局在化することが防止される。すなわち、この場合、大気に漏洩ガスが加わったものがサンプリングガスとして往路配管118に導かれる。
以降も上記と同様に、サンプリングガスの一部が往路配管118及びサンプリングライン121を経由した後にディテクタ122に至るとともに、残部が復路配管120を通過してモニタスペース69に戻る。
この過程で、ディテクタ122が、校正によって求められた前記基準値を超える値を示す。ディテクタ122に導かれたサンプリングガスには漏洩ガスが含まれており、このため、ディテクタ122には、漏洩ガスの総和として検出量を示すからである。検査ガスと同一種のガス(例えば、ヘリウム)が大気に含まれている場合は、ディテクタ122が、この大気中の検査ガス成分も併せた検出量を示すことは勿論である。
ディテクタ122は、前記の値を、信号線152を介して情報として制御回路156に送信する。この情報を受けた制御回路156は、ケース部材18は「不合格品である」と判定する。
ここで、漏洩ガスのモニタスペース69内での拡散が一様でないときには、サンプリング箇所によって、ガス中の漏洩ガスの濃度(量)が相違することになる。従って、漏洩ガスの正確な量、ひいては漏洩箇所の規模を正確に評価し得なくなる懸念がある。
また、モニタスペース69内のガスを排気しながら中空室24から漏洩が起こるか否かを検査する場合、中空室24からチャンバ16に漏洩してモニタスペース69に到達したガスが比較的短時間で排気されてしまう。従って、漏洩ガスの量が僅かであるときには、漏洩ガスの全量が排気される懸念がある。一部が排気されるとともに残部がディテクタ122に到達し得たと仮定しても、漏洩ガスが如何なる程度排気されたのかが不明であるため、漏洩ガスの量を正確に評価することが困難である。
従って、検査ガスの導入を開始してからある程度の時間を置き、漏洩ガスが十分な量となったときに漏洩検査を行う必要があるが、このために漏洩検査に長時間を要する。
さらに、チャンバ16内を大気圧とする場合であっても、例えば、排気ラインに流通するガスをサンプリングガスとすると、漏洩ガスの量が僅かであるときにはサンプリングガス中の漏洩ガスの濃度が小さいため、ディテクタ122に表示される漏洩ガス量が若干大きくなったとしても、漏洩ガスによって値が大きくなったのか、測定誤差の範囲内で大きくなったのかを判断することが困難である。
加えて、チャンバ16ないしモニタスペース69からサンプリングガスを採取して測定を行った後、該サンプリングガスをそのまま排気してしまう場合には、ケース部材18の中空室24からの漏洩よりも、サンプリングガスの排気量が多いために漏洩を検知できない懸念もある。
これに対し、本実施の形態では、モニタスペース69内にガスの流れを生じさせ、漏洩ガスの滞留が起こることを回避するようにしている。このため、漏洩ガスが極めて僅かである場合であっても、漏洩ガスは、モニタスペース69内に局在化することなく略均等に拡散する。従って、往路配管118を設ける箇所、換言すれば、サンプリング箇所を如何なる部位に設定しようとも、漏洩ガスの濃度が略同等であるため、漏洩量を高精度に評価することが可能となる。
また、モニタスペース69内のガスを取り出して一部をディテクタ122に送気する一方で、ディテクタ122に送気されなかった残部をモニタスペース69に戻す(すなわち、ガスを循環させる)ようにしているので、モニタスペース69内の漏洩ガスが順次蓄積され、高濃度となってディテクタ122に送気される。このため、漏洩量、ひいては漏洩の規模をリアルタイムに、しかも、高精度に評価することができる。
すなわち、本実施の形態によれば、漏洩の程度に関わらず、計測を行う間は連続して漏洩の有無を確認することが可能であり、一定時間待機する必要がない。さらに、ケース部材18の中空室24の容量が大きいながら漏洩量が微小である場合であっても、その漏洩を容易に検知することができる。
なお、検査ガスの中空室24内への導出量ないし導出流量を、基準ガスのチャンバ16内への導出量ないし導出流量に合致させておくと、中空室24からの検査ガスの漏洩量を一層高精度に評価することができる。
さらに、チャンバ16内のガスを排気しながら漏洩検査を行う場合には、ポンプ等の排気手段が故障する頻度が大きい。故障した場合、排気手段の修繕が終了するまで漏洩検査を行うことができないので時間の損失となるが、本実施の形態では、そのような不都合が惹起されることもない。
本実施の形態では、基準ガスを用いたときのディテクタ122の表示値を基準値として校正しているので、基準値は、大気中に自然に存在する基準ガスと同一種のガス(例えば、ヘリウム)を含んだものとして設定されている。従って、このガスと同一種のガスを基準ガス及び検査ガスとして用いる場合であっても、ディテクタ122は、漏洩ガスの量に基づいた値を表示する。すなわち、大気中に存在する基準ガスと同一種のガスによって漏洩ガスの検出精度が低下することが回避される。
以上のようにして漏洩ガスがディテクタ122によって検出され、制御回路156によって漏洩箇所が存在すると判断されたケース部材18に対しては、次に、漏洩箇所が何処に存在するのかの調査がなされる。この調査を行うべく、チャンバ16内のガスを第2クリーンポンプ134の作用下に排気した後、第4ロッド150を上昇させて隔壁部材14を上昇させる。これにより、載置台12と挟持盤82で挟持され、且つ検査ガスが中空室24に導入された状態のケース部材18が露呈する。なお、隔壁部材14の上昇に先んじてチャンバ16内に空気を供給するようにしてもよい。
次に、第1電磁弁124が切り替えられる。これに伴い、往路配管118が閉塞される一方、プローブ用配管126が開放される。従って、ディテクタ122には、プローブ128に吸引されたガスが導かれる。
作業者は、プローブ128を把持してその先端をケース部材18に近接させ、さらに、ケース部材18に沿ってプローブ128を走査する。漏洩箇所でない部位では漏洩ガスが漏洩していないため、プローブ128に漏洩ガスが吸引されることはない。従って、ディテクタ122の表示値が漏洩ガスに基づいて上昇することもない。
一方、漏洩箇所では、プローブ128によって漏洩ガスが吸引される。漏洩箇所近傍では漏洩ガスの濃度が高いため、ディテクタ122の表示値が比較的短時間で上昇する。これにより、漏洩箇所が何処に存在するかをおおよそ判断することができる。
隔壁部材14に第2シリンダ98を設けた場合、第2ロッド100を後退させて閉塞部材102をケース部材18の側壁貫通孔21から離脱させた後でなければ、隔壁部材14を上昇させることができない。従って、この場合、隔壁部材14を上昇させると、ケース部材18は、中空室24が大気に連通した状態で露呈する。すなわち、中空室24の検査ガスが側壁貫通孔21から導出されるので、上記したようにして漏洩箇所が何処であるかを判断することができない。
これに対し、本実施の形態では、第2シリンダ98を挟持盤82に設けるようにしているので、隔壁部材14が第2シリンダ98に干渉することがない。このため、第2ロッド100を後退させることなく、換言すれば、ケース部材18の側壁貫通孔21に閉塞部材102を挿入したままの状態で、第4ロッド150及び隔壁部材14を上昇させることができる。すなわち、中空室24内に検査ガスが封入された状態のケース部材18を露呈することができるので、プローブ128によって漏洩箇所のおおよその位置を判断することができる。
おおよその漏洩箇所を特定した後は、第1クリーンポンプ58の作用下に、中空室24内に存在する検査ガスを排気する。検査ガスは、出口配管142を経た後、第2クリーンポンプ134の作用下に排気される。
この際、漏洩箇所(鋳造欠陥等)の規模が小さいときには、排気速度が比較的大きく、真空到達度も比較的大きい。このように漏洩の規模が著しく小さく、実用上の差し支えがないときには、ケース部材18は「合格品である」と判定される。
その後、第2シリンダ98を付勢して第2ロッド100を後退させ、これにより、閉塞部材102をケース部材18の側壁貫通孔21から離脱させる。さらに、第3シリンダ104を付勢して第3ロッド106を上昇させ、挟持盤82を上昇させる。その結果、ケース部材18が挟持から解放される。必要に応じ、側壁貫通孔21からの閉塞部材102の離脱、挟持盤82の上昇に先んじて、中空室24内に空気を供給するようにしてもよい。
次に、第1シリンダ34を付勢して第1ロッド36を前進させ、これにより載置台12を第2支持台30の前方に引き出す。その後、ケース部材18が作業者ないしロボットによって載置台12から取り外され、次工程を実施すべきステーションに搬送される。
一方、漏洩箇所の規模が大きいときには、排気速度が小さい。また、真空到達度も小さい。漏洩箇所から中空室24に大気が吸引されるからである。
この場合、漏洩箇所からは無視できない程度の漏洩が起こる。このようなケース部材18は「不合格品である」と判定される。
形状や高さ方向寸法が相違するケース部材18に対して上記した漏洩試験を行う場合には、載置台12、支柱80a〜80d、ストッパ50及びシール用部材84を、該ケース部材18に対応する形状ないし寸法のものに交換すればよい。このことから諒解されるように、本実施の形態に係るガス式漏洩検査装置10は、多種多様なケース部材18に対応し得る汎用性を有する。
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、ケース部材18以外の物体をワークとして漏洩検査を行うようにしてもよい。
また、検査ガスはヘリウムに限定されるものではなく、水素等であってもよい。勿論、基準ガスと検査ガスは同一種のガスを用いる。水素を用いる場合、防爆構造を採用することが好ましい。