この発明に係る油圧制御装置は、動力源から出力されたトルクを増大させて出力するトルクコンバータと、係合することによってトルクコンバータの入力側の回転部材から直接、トルクコンバータの出力側の回転部材にトルクを伝達するロックアップクラッチとを備えた車両を対象とすることができる。そのトルクコンバータとロックアップクラッチとは従来知られているものと同様の構成とすることができ、その構成の一例を模式的に示すと図1のとおりである。図1に示すトルクコンバータ1は、内燃機関や電動機などの図示しない動力源に連結されたポンプインペラー2と、ポンプインペラー2と対向して配置されかつ図示しない変速機などに連結されてトルクを出力するタービンランナー3と、ポンプインペラー2およびタービンランナー3の間に配置されかつケース4に連結されたワンウェイクラッチ5を介して回転方向を一方に制限されたステータ6とを備えている。そして、動力源から伝達されたトルクによってポンプインペラー2が回転することにより内部に供給されたオイルが流動して、そのオイルによってタービンランナー3を回転させることによってトルクを伝達するとともに、トルクを増幅することができるように構成されている。すなわち、トルクコンバータ1は、流体流によってトルクを伝達するように構成されている。
また、トルクを増大させて出力するコンバータ領域以外では、動力源から出力された動力をトルクコンバータ1の出力側に直接伝達することが望ましく、そのため、トルクコンバータ1と並列的にロックアップクラッチ7が設けられている。図1に示すロックアップクラッチ7は、タービンランナー3と一体となって回転するように連結された円板状の部材であって、ロックアップクラッチ7の表裏両面に供給された油圧差によって軸線方向に移動してポンプインペラー2と摩擦接触することで、動力源から出力されたトルクを直接トルクコンバータ1の出力側の部材、具体的にはタービンランナー3に伝達するように構成されている。したがって、図1に示す例では、ロックアップクラッチ7の動力源側(図1における左側)の第1油圧室8の油圧を低減させて、ロックアップクラッチ7のトルクコンバータ1側(図1における右側)の第2油圧室9の油圧より低くすることで、ロックアップクラッチ7が動力源側に移動してポンプインペラー2と一体となって回転するように係合する。それとは反対に、第1油圧室8の油圧を増大させて、第2油圧室9の油圧以上とすることで、ロックアップクラッチ7がトルクコンバータ1側に移動してポンプインペラー2とは一体となって回転しないように、言い換えるとトルクコンバータ1を介してトルクが伝達されるように開放する。なお、トルクコンバータ1とロックアップクラッチ7とは図示しない同一のケースによって囲われている。したがって、以下の説明では、ロックアップクラッチ7を含んでトルクコンバータ1と記す場合がある。
つぎに、図1に示すトルクコンバータ1に供給する油圧あるいはロックアップクラッチ7を係合および開放させるための油圧制御装置の構成について説明する。図1には、それらの油圧を制御するための油圧回路を模式的に示している。図1に示す油圧回路は、動力伝達装置の下方側に設けられ、各潤滑部や油圧回路から排出されたオイルを一時的に貯留するオイルパン10を備えている。そして、動力源から伝達されたトルクによって駆動するオイルポンプ11によってそのオイルパン10に貯留されたオイルが、汲み上げられて吐出される。なお、上述したようにオイルパン10に貯留されたオイルは、潤滑部などから排出されたオイルも含まれており、そのため、金属粉などの異物が混入している可能性がある。したがって、図1に示す例では、オイルポンプ11にオイルが汲み上げられる過程で異物を除去するためのストレーナ12が設けられている。
そして、オイルポンプ11から吐出されたオイルの油圧を調圧してライン圧PL とするプライマリレギュレータバルブ13が設けられている。このプライマリレギュレータバルブ13は、スプール14を軸線方向(図1における上下方向)に移動させることによって、入力ポート15と出力ポート16とを連通させたり遮断させたりするように構成されている。具体的には、スプール14の一方側からライン圧PL が供給されるフィードバックポート17と、ライン圧PL に基づく荷重をスプール14に作用させる方向と対向してバネ力を作用させるように、スプール14の他方側の端部を押圧するスプリング18と、後述するリニアソレノイドバルブSLT から出力された信号圧PSLT が供給されてスプリング18と同一方向にスプール14に荷重を作用させるように形成されたパイロットポート19とが形成されている。したがって、リニアソレノイドバルブSLT から出力される信号圧PSLT を制御することによってスプール14が上下方向に移動するように構成されている。そして、図1に示す例では、スプール14が上方側に移動すると、入力ポート15と出力ポート16とが遮断されるので、ライン圧PL が徐々に高くなる。それとは反対に、スプール14が下方側に移動すると、入力ポート15と出力ポート16とが連通して、オイルが排出されることによりライン圧PL が低くなる。すなわち、リニアソレノイドバルブSLT から出力される信号圧PSLT を高くすることでライン圧PL を高くし、その信号圧PSLT を低くすることでライン圧PL を低くすることができる。なお、リニアソレノイドバルブSLT から出力される信号圧PSLT は、駆動力要求量などの走行状態に応じて図示しない電子制御装置によって決定することができる。
さらに、ライン圧PL を基圧として一定圧に調圧して出力するためのモジュレータバルブ20が設けられている。このモジュレータバルブ20は、出力圧が入力される第1フィードバックポート21と、後述する切り替えバルブ27を介して出力圧が供給される第2フィードバックポート22とを備えており、それら各ポート21,22に供給される油圧に応じた荷重が図1に示す下方側に向けてスプール23に作用し、またそれらの荷重と対向する方向(図1における上方)にバネ力S1 が作用するようにスプリング24が設けられている。したがって、第1フィードバックポート21および第2フィードバックポート22に供給される油圧に応じた荷重がバネ力S1 より大きいときには、図1における左側に示すようにスプール23が下方側に移動し、それらの荷重がバネ力S1 より小さいときには、図1における右側に示すようにスプール23が上方側に移動する。そして、スプール23が下方側に移動したときには、入力ポート25と出力ポート26とが遮断されるように構成されており、それとは反対にスプール23が上方側に移動したときには、入力ポート25と出力ポート26とが連通するように構成されている。
そして、モジュレータバルブ20から出力されたモジュレータ圧PM が、各リニアソレノイドバルブSLT ,SLU ,SLS ,SLP や後述する切り替えバルブ27に供給される。これらのリニアソレノイドバルブSLT ,SLU ,SLS ,SLP は、上記プライマリレギュレータバルブ13や後述する切り替えバルブ27などの各バルブに信号圧を供給するためのもの、あるいは図示しない係合装置や無段変速機の伝達トルク容量などを制御するためのものであり、供給される電流に応じてポートが開閉するように構成されている。言い換えると、リニアソレノイドバルブSLT ,SLU ,SLS ,SLP に供給する電流を制御することにより、出力圧を制御することができ、また各バルブに供給される信号圧を制御することができる。なお、モジュレータバルブ20から出力されたモジュレータ圧PM が供給されるリニアソレノイドバルブSLT が、上記プライマリレギュレータバルブ13の信号圧PSLT を出力するように構成されている。また、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU は、後述する切り替えバルブ27と、ロックアップコントロールバルブ28とに信号圧PSLU を供給するように構成されている。
ついで、上記ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された油圧を信号圧PSLU として、連通させる油路を切り替える切り替えバルブ27が設けられている。この切り替えバルブ27は、モジュレータバルブ20と、セカンダリーレギュレータバルブ28とへ供給する油圧を選択的に切り替えるものである。具体的には、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された信号圧PSLU に基づく荷重とスプリング29のバネ力とが対向してスプール30に作用するように構成されている。また、切り替えバルブ27には、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された信号圧PSLU が供給されるパイロットポート31と、モジュレータ圧PM が供給される第1入力ポート32と、後述するセカンダリー圧Psec が入力される第2入力ポート33と、上記モジュレータバルブ20の第2フィードバックポート22および後述するセカンダリーレギュレータバルブ28の第2フィードバックポート34に連通した第1出力ポート35と、後述するセカンダリーレギュレータバルブ28の第3フィードバックポート36に連通した第2出力ポート37と、オイルパン10にオイルを排出するドレーンポート38とを備えている。なお、図1に示す例では、スプール30の下方側、すなわちスプリング29が設けられている部分にドレーンポート39が形成されており、スプール30から下方側に漏洩したオイルがオイルパン10に戻されるように構成されている。
そして、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された油圧に基づく荷重が、スプリング29のバネ力より大きい場合(図1における左側)には、モジュレータ圧PM が上記各バルブ20,28における第2フィードバックポート22,34に向けて出力され、かつセカンダリレギュレータバルブ28における第3フィードバックポート36の油圧がドレーンされる。なお、この状態では、第2入力ポート33が閉じられているので、セカンダリー圧Psec が入力されることがない。
それとは反対に、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された油圧に基づく荷重が、スプリング29のバネ力より小さい場合(図1における右側)には、第1出力ポート35とドレーンポート38とが連通して、上記各バルブ20,28における第2フィードバックポート22,34の油圧がドレーンされる。また、第2入力ポート33と第2出力ポート37とが連通するので、セカンダリー圧Psec が、後述するセカンダリーレギュレータバブル28における第3フィードバックポート36に供給される。
一方、プライマリレギュレータバルブ13から排出されたオイルの油圧を調圧するセカンダリーレギュレータバルブ28が設けられている。このセカンダリーレギュレータバルブ28は、主にトルクコンバータ1へ供給する油圧を調圧するものである。図1に示すセカンダリーレギュレータバルブ28は、セカンダリー圧Psec が供給される第1フィードバックポート40と、上記切り替えバルブ27から出力されたモジュレータ圧PM が供給される第2フィードバックポート34と、切り替えバルブ27を介してセカンダリー圧Psec が供給される第3フィードバックポート36と、セカンダリー圧Psec が供給される入力ポート41と、上記ストレーナ12とオイルポンプ11との間の油路42に連通した第1出力ポート43と、後述するオイルクーラ44を介して潤滑部に向けてオイルをドレーンしたりクーラーバイパスバルブ45を介してオイルパン10にオイルをドレーンする第2出力ポート46とが形成されている。そして、第1フィードバックポート40に供給された油圧に基づく荷重が下方側に作用し、かつ第2フィードバックポート34に供給された油圧に基づく荷重、第3フィードバックポート36に供給された油圧、およびスプリング47のバネ力が上方側に作用するようにスプール48が設けられている。より具体的には、第2フィードバックポート34に供給された油圧とスプール47に形成されたランド部49,50の受圧面積の差との積に基づく荷重がスプール48を上方側に押圧するように構成され、第3フィードバックポート36がスプリング47が設けられた最も下方側に供給されるように構成されている。なお、第2フィードバックポート34に供給された油圧および第3フィードバックポート36に供給された油圧が作用するランド部50の受圧面積が最も小さく形成されている。
このようにセカンダリーレギュレータバルブ28を形成することによって、第1フィードバックポート40に供給された油圧に基づく荷重が、第2フィードバックポート34に供給された油圧に基づく荷重、第3フィードバックポート36に供給された油圧、およびスプリング47のバネ力より大きい場合には、スプール48が下方側に移動して、入力ポート41と、第1および第2の出力ポート43,46とが連通してオイルが排出される。その結果、セカンダリー圧Psec が低下させられる。それとは反対に、第1フィードバックポート40に供給された油圧に基づく荷重が、第2フィードバックポート34に供給された油圧に基づく荷重、第3フィードバックポート36に供給された油圧、およびスプリング47のバネ力より小さい場合には、入力ポート41と第1および第2の出力ポート43,46とが遮断される。すなわち、セカンダリー圧Psec が一定に保たれあるいは増大させられる。なお、図1には入力ポート41と第1および第2の出力ポート43,46とが遮断された状態を示している。
そして、セカンダリーレギュレータバルブ28によって調圧された油圧を、トルクコンバータ1における第1油圧室8と第2油圧室9とのいずれか一方に供給するとともに、他方の油圧をドレーンするように切り替えて、ロックアップクラッチ7の係合および開放を制御するロックアップコントロールバルブ51が設けられている。図1に示す例では、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された信号圧PSLU によって連通させられるポートが切り替えられるように構成されている。具体的には、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された信号圧PSLU が入力されるパイロットポート52を備え、その信号圧PSLU に基づく荷重がスプール53に作用する方向と対向してバネ力が作用するようにスプリング54が設けられ、かつスプリング54が設けられている箇所にセカンダリー圧Psec を供給するようにフィードバックポート55が形成されている。また、ロックアップコントロールバルブ51には、セカンダリー圧Psec が供給される第1および第2の入力ポート56,57と、第1油圧室8に連通した第1出力ポート58と、第2油圧室9に連通した第2出力ポート59と、オイルパン10にオイルを排出する第1ドレーンポート60と、後述するオイルクーラ44あるいはオイルクーラバイパスバルブ45を介してオイルパン10にオイルを排出する第2ドレーンポート61とが形成されている。
上記のように構成されたロックアップコントロールバルブ51は、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された信号圧PSLU に応じてセカンダリー圧Psec を供給する油圧室8(9)を切り替えるように構成されている。具体的には、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された信号圧PSLU に基づく荷重が、セカンダリー圧Psec およびバネ力より大きい場合(図1に示す右側)には、第2入力ポート57と第2出力ポート59とが連通して第2油圧室9にセカンダリー圧Psec が供給される。また、第1出力ポート58と第1ドレーンポート60とが連通されて第1油圧室8に供給されているオイルがドレーンされて第1油圧室8の油圧が低下する。その結果、ロックアップクラッチ7の動力源側の油圧が低下するとともにトルクコンバータ1側の油圧が増大するので、ロックアップクラッチ7が動力源側に移動して、動力源とトルクコンバータ1の出力部材とを一体に回転させることができる。また、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を制御することによって、ロックアップクラッチ7の表裏両面の油圧差を制御することができる。言い換えると、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU によってロックアップクラッチ7における伝達トルク容量を制御することができる。
それとは反対に、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU から出力された信号圧PSLU に基づく荷重が、セカンダリー圧Psec およびバネ力より小さい場合(図1に示す左側)には、第1入力ポート56と第1出力ポート58とが連通して第1油圧室8にセカンダリー圧Psec が供給される。また、第2出力ポート59と第2ドレーンポート61とが連通されて第2油圧室9に供給されているオイルがドレーンされて第2油圧室9の油圧が低下する。その結果、ロックアップクラッチ7の動力源側の油圧が増大するとともにトルクコンバータ1側の油圧が低下するので、ロックアップクラッチ7がトルクコンバータ1側に移動する。すなわち、ロックアップクラッチ7が開放される。
図2は、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU と、切り替えバルブ27およびロックアップコントロールバルブ51のそれぞれにおけるスプール30,53の移動量との関係を示している。また、図2(a)における実線は第2油圧室9の油圧の変化を示しており、破線は第1油圧室8の油圧の変化を示している。図2に示すように、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が、切り替えバルブ27を切り替えるために出力する油圧より大きいときに、ロックアップコントロールバルブ51におけるスプール53が移動して、ロックアップクラッチ7を係合させるように連通させるポートを切り替えるように設定されている。したがって、図2に示すようにロックアップクラッチ7が開放されている状態であっても、切り替えバルブ27を切り替えることができるように構成されている。
上述したセカンダリーレギュレータバブル28における第2出力ポート46やロックアップコントロールバルブ51における第2ドレーンポート61から出力されたオイルは、それぞれオリフィス62,63を介してチェックバルブ64あるいはクーラーバイパスバルブ45に供給される。チェックバルブ64は、スプリング65によって入力ポート66側に押圧された弁体67が、入力ポート66から離隔することで開弁するリリーフ型の開閉弁である。したがって、上記第2出力ポート46や第2ドレーンポート61から出力された油圧が所定圧以上となると、チャックバルブ64が開弁する。そして、チャックバルブ64から出力されたオイルは、オイルクーラ44を介してギヤの噛み合い部や摺動部材の摺動面などの潤滑部68に供給される。
一方、オイルクーラ44の目詰まりなど何らかの理由によって第2出力ポート46や第2ドレーンポート61から排出されたオイルの油圧が増大すると、クーラーバイパスバルブ45が開弁するように構成されている。すなわち、クーラーバイパスバルブ45は、リリーフ弁として機能するように構成されている。このクーラーバイパスバルブ45は、上記チャックバルブ64と同様に弁体69をスプリング70に押圧することによって入力ポート71を閉じ、その弁体69が入力ポート71から離隔することによって開弁するように構成されている。なお、クーラーバイパスバルブ45は、上述したようにリリーフ弁として機能するものであるので、チャックバルブ64が開弁する油圧よりも高圧となったときに、クーラーバイパスバルブ45が開弁するようにスプリング70のバネ力が設定されている。そして、クーラーバイパスバルブ45が開弁すると、第2出力ポート46や第2ドレーンポート61から排出されたオイルがオイルパン10にドレーンされる。
上述したように構成された油圧回路では、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を制御することにより、モジュレータ圧PM やセカンダリー圧Psec を制御することができ、またロックアップクラッチ7の係合および開放を制御することができる。ここで、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU と、モジュレータ圧PM あるいはセカンダリー圧Psec との関係について説明する。まず、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU とモジュレータ圧PM との関係について説明する。ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を比較的低圧で出力した場合、具体的には、切り替えバルブ27のスプール30が上方側に位置する程度に、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合には、上述したように第1出力ポート35とドレーンポート38とが連通するため、モジュレータバルブ20におけるスプール23には、モジュレータ圧PM のフィードバック圧とスプリング24のバネ力S1 とが作用することとなる。そのため、フィードバック圧と、そのフィードバック圧が作用する受圧面積A1 との積がスプリング24のバネ力S1 より小さい場合、すなわちモジュレータ圧PM が低圧の場合には、入力ポート25と出力ポート26とが連通してライン圧PL が供給されるので、モジュレータ圧PM が上昇する。それとは反対に、フィードバック圧と、そのフィードバック圧が作用する受圧面積A1 との積がスプリング24のバネ力S1 より大きい場合、すなわちモジュレータ圧PM が高圧の場合には、入力ポート25と出力ポート26とが遮断されてモジュレータ圧PM が上昇することがない。言い換えると、モジュレータ圧PM は、スプリング24のバネ力S1 と受圧面積A1 とに応じた油圧に調圧される。すなわち、モジュレータ圧PM は、以下の式に示す油圧となるように調圧される。
PM =S1 /A1
また、切り替えバルブ27におけるスプール30が下方側に移動するようにロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合には、上述したように第1出力ポート35と第1入力ポート32とが連通するため、モジュレータバルブ20における第2フィードバックポート22にはモジュレータ圧PM が供給される。したがって、モジュレータバルブ20における第1フィードバックポート21から供給された油圧を受けるランド部72の上下両面が同一の受圧面積A1 であり、かつ同一の油圧が作用する。そのため、スプール23には、第2フィードバックポート22から供給されたモジュレータ圧PM と、そのモジュレータ圧PM に基づく荷重を下方側に受ける受圧面の面積A2 との積の荷重が下方側に作用し、スプリング24のバネ力S1 が上方側に作用することとなる。そのため、モジュレータ圧PM と受圧面積A2 との積で求めることができる荷重が、スプリング24のバネ力S1 より小さい場合には、入力ポート25と出力ポート26とが連通してライン圧PL が供給されるので、モジュレータ圧PM が上昇する。それとは反対に、モジュレータ圧PM と受圧面積A2 との積で求めることができる荷重が、スプリング24のバネ力S1 より大きい場合、すなわちモジュレータ圧PM が高圧の場合には、入力ポート25と出力ポート26とが遮断されてモジュレータ圧PM が上昇することがない。言い換えると、モジュレータ圧PM は、スプリング24と受圧面積A2 とに応じた油圧に調圧される。すなわち、モジュレータ圧PM は、以下の式に示す油圧となるように調圧される。
PM =S1 /A2
図3は、モジュレータ圧PM とロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU との関係を示すグラフであって、横軸にライン圧PL を調圧するための信号圧PSLT を示し、縦軸にモジュレータ圧PM を示している。モジュレータ圧PM は、ライン圧PL を基圧として調圧されるものであるため、信号圧PSLT が比較的低いときには、ライン圧PL に追従してモジュレータ圧PM が上昇する。そして、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU に応じた油圧までモジュレータ圧PM が増大した時点で、モジュレータ圧PM が一定に保たれる。また、図1に示すようにモジュレータバルブ20におけるスプール23の受圧面積A1 は、受圧面積A2 よりも面積が小さいため、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が比較的低圧であるときは、図3に示すようにロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が高圧であるときに比べて高く調圧される。
上述したように切り替えバルブ27のスプール30が上方側に位置する程度にロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合には、モジュレータ圧PM は受圧面積A1 とスプリング24のバネ力S1 とに応じて調圧される。一方、切り替えバルブ27のスプール30が下方側に位置する程度にロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合には、モジュレータ圧PM は受圧面積A2 とスプリング24のバネ力S1 とに応じて調圧される。そのため、切り替えバルブ27のスプール30が上方側に位置する程度にロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合におけるモジュレータ圧PM は、切り替えバルブ27のスプール30が下方側に位置する程度にロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合におけるモジュレータ圧PM よりも大きく調圧されることとなる。すなわち、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を増大させることで、モジュレータ圧PM を低圧に調圧することができる。言い換えると、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を制御することでモジュレータ圧PM を制御することができる。
つぎに、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU とセカンダリー圧Psec との関係について説明する。ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を比較的低圧で出力した場合、具体的には、切り替えバルブ27のスプール30が上方側に位置する程度に、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合には、上述したように第1出力ポート35とドレーンポート38とが連通するため、セカンダリーレギュレータバルブ28における第2フィードバックポート34に供給されているオイルがドレーンされる。また、第2入力ポート33と、第2出力ポート37とが連通し、その結果、セカンダリー圧Psec がセカンダリーレギュレータバルブ28の第3フィードバックポート36に供給される。したがって、セカンダリーレギュレータバルブ28におけるスプール48には、第1フィードバックポート40に供給された油圧に基づく荷重と、第3フィードバックポート36に供給された油圧に基づく荷重と、スプリング47のバネ力S2 とが作用する。一方、図1に示す構成では、セカンダリーレギュレータバルブ28における第3フィードバックポート36に供給された油圧が作用する受圧面積A3 が、第1フィードバップポート40に供給された油圧が作用する受圧面積A4 より小さく形成されている。そのため、切り替えバルブ27のスプール30が上方側に位置する程度に、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合には、セカンダリー圧Psec は、スプリング47のバネ力S2 を、第1フィードバックポート40に供給された油圧が作用する受圧面積A3 と第3フィードバックポート36に供給された油圧が作用する受圧面積A4 との差で除算した値となる。言い換えると、セカンダリー圧Psec は、一定値に調圧される。すなわち、セカンダリー圧Psec は、以下の式に示す油圧となるように調圧される。
Psec =S2 /(A3 −A4 )
また、切り替えバルブ27におけるスプール30が下方側に移動するようにロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合には、上述したように第1出力ポート35と第1入力ポート32とが連通するため、セカンダリーレギュレータバルブ28における第2フィードバックポート34にはモジュレータ圧PM が供給される。また、第2出力ポート37とドレーンポート38が連通するため、セカンダリーレギュレータバルブ28における第3フィードバックポート36に供給されたオイルがドレーンされる。したがって、セカンダリーレギュレータバルブ28におけるスプール48には、第1フィードバックポート40に供給された油圧に基づく荷重と、切り替えバルブ27を介して第2フィードバックポート34に供給されたモジュレータ圧PM と、スプリング47のバネ力S2 とが作用する。一方、図1に示すセカンダリーレギュレータバルブ28は、第2フィードバックポート34に供給された油圧を上方側に受ける受圧面積が、下方側に受ける受圧面積A4 より大きく形成され、かつ第1フィードバックポート40に供給された油圧を受ける受圧面積A3 と同一に形成されている。そのため、切り替えバルブ27のスプール30が上方側に位置する程度に、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU を制御した場合には、セカンダリー圧Psec は、以下に示すように求めることができる。
Psec =(PM (A3 −A4 )+S2 )/A3
上式に示すようにセカンダリー圧Psec は、モジュレータ圧PM に応じて変化する。言い換えると、モジュレータ圧PM を制御することによって、セカンダリー圧Psec を制御することができる。
図4は、セカンダリー圧Psec とロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU との関係を示すグラフであって、横軸にライン圧PL を調圧するための信号圧PSLT を示し、縦軸に油圧を示している。セカンダリー圧Psec は、ライン圧PL を基圧として調圧されるものであるため、信号圧PSLT が比較的低いときには、ライン圧PL に追従してセカンダリー圧Psec が上昇する。なお、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が比較的高圧である場合には、モジュレータ圧PM に応じてセカンダリー圧Psec が変化し、かつそのゲインが(A3 −A4 )/A3 と1より小さいため、ライン圧PL に遅れてかつ低い値でセカンダリー圧Psec が上昇する。そして、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU に応じた油圧までセカンダリー圧Psec が増大した時点で、セカンダリー圧Psec が一定に保たれる。すなわち、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が比較的低圧であるときは、セカンダリー圧Psec が、S2 /(A3 −A4 )となった時点で一定に調圧され、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が比較的高圧であるときは、セカンダリー圧Psec が、(PM (A3 −A4 )+S2 )/A3 となった時点、より具体的には、((S1 /A2 )×(A3 −A4 )+S2 )/A3 で一定に調圧される。
なお、ロックアップクラッチ7を係合させるために、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を更に増大させたときであっても、上記切り替えバルブ27のスプール30が下方側に移動した状態と同様に、モジュレータ圧PM とセカンダリー圧Psec とが調圧される。
上述したように構成することによって、図2に示すようにロックアップクラッチ7を開放している時に、モジュレータ圧PM を高圧と低圧とに切り替えることができるので、例えば、駆動力要求があって図示しない係合装置や無段変速機などに大きなトルクが入力される可能性があるときには、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を低圧にすることでモジュレータ圧PM を高圧とすることができ、それら係合装置や無段変速機での必要油圧を得ることができる。それとは反対に駆動力要求がなく係合装置や無段変速機などに大きなトルクが入力される可能性がないときには、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を高圧にすることでモジュレータ圧PM を低圧とすることができ、各ソレノイドバルブSLT ,SLU ,SLS ,SLP からオイルが漏洩してしまうことを抑制もしくは防止することができ、ひいては燃費を向上させることができる。
また、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が比較的低圧であって、ロックアップクラッチ7が開放しているときであっても、セカンダリーレギュレータバルブ28に第3フィードバックポート36を形成して、セカンダリー圧Psec のフィードバック圧をスプール48に作用させることができるので、セカンダリー圧Psec を高圧とすることができる。その結果、ロックアップクラッチ7を開放しているときに、セカンダリー圧Psec を比較的高くすることができる。そのため、動力源の回転数が低下してトルクコンバータの出力側の回転数が入力側の回転数より大きくなる、いわゆるストール時であっても、トルクコンバータ1の循環流量を確保することができる。
さらに、ロックアップクラッチ7を係合している状態、すなわちロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU を高圧に制御している状態から、急激にロックアップクラッチ7を開放するときに、セカンダリー圧Psec が低下してしまうことを抑制もしくは防止することができるので、ロックアップクラッチ7の開放性能が低下してしまうことを抑制もしくは防止することができる。
またさらに、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が比較的高圧である場合には、モジュレータ圧PM に応じてセカンダリー圧Psec が変化するように構成されているため、セカンダリー圧Psec が過剰に高圧となってしまうことを抑制もしくは防止することができ、その結果、セカンダリー圧Psec が過剰に増大することにより各バルブあるいはトルクコンバータ1からオイルが漏洩してしまうことを抑制もしくは防止することができ、ひいては燃費を向上させることができる。
なお、ロックアップクラッチ7が開放しているときには、ロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が比較的低圧であることで、モジュレータ圧PM が高圧に調圧されることとなる。そのため、モジュレータ圧PM が高圧であることによって燃費が悪化する可能性があるが、車速が低速であるときからロックアップクラッチ7を係合させることにより、その燃費の悪化を抑制もしくは防止することができる。
なお、上述した例では、切り替えバルブが切り替わる際のロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU より、ロックアップクラッチ7の係合および開放を制御するロックアップコントロールバルブ51が切り替わるロックアップ用ソレノイドバルブSLU の出力圧PSLU が大きくなるように設定されているが、制御を簡素化するために、それらの切り替え圧を同一としてもよい。