JP5708277B2 - ニッケルマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池 - Google Patents

ニッケルマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、非水系電解質二次電池用の正極活物質の前駆体であるニッケルマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、このニッケルマンガン複合水酸化物粒子を原料とする二次電池用正極活物質とその製造方法、および、この非水系電解質二次電池用正極活物質を正極材料として用いる非水系電解質二次電池に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が強く望まれている。また、モーター駆動用電源、特に輸送機器用電源の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解液等で構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
リチウムイオン二次電池については、現在研究開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
かかるリチウムイオン二次電池の正極材料として、現在、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などが提案されている。
これらの正極活物質の中でも、近年、埋蔵量の少ないコバルトを用いずに熱安定性に優れて高容量であるリチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.52)が注目されている。リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.52)は、リチウムコバルト複合酸化物やリチウムニッケル複合酸化物などと同じく層状化合物であり、遷移金属サイトにおいてニッケルとマンガンを基本的に組成比1:1の割合で含んでいる(非特許文献1参照)。
リチウムイオン二次電池が良好な性能(高サイクル特性、低抵抗、高出力)を得る条件として、正極中で均一で適度な粒径を有する正極活物質粒子が均一に分散していることが要求される。
これは、分散状態が不均一だと、電流の流れに偏りが生じ、電池容量が低下し反応抵抗が上昇するなどの不具合が生じるためである。なお、電池容量が低下するのは、電極内で粒子に印加される電圧が不均一となることで、充放電を繰り返すと高電圧のかかる粒子が選択的に劣化するからである。
したがって、正極材料の性能を向上させるためには、上述したリチウムニッケルマンガン複合酸化物についても、均一で適度な粒径を有する正極活物質粒子が電極内に均一に分散するように製造することが必要である。
電極内で分散性に偏りが生じる原因としては、例えば活物質のアルカリ度の影響が挙げられる。活物質のアルカリ度が高いと正極ペースト調製時に一般的に使用される結合材(PVDF)をアルカリが攻撃し、重合化させることでペーストがゲル化を生じてしまい、それにより活物質が均一に分散しない事態を生じることが知られている。かかる事態を防ぐ方法の一つとして、活物質のアルカリ度を低減させることが考えられる。
現在までに活物質のアルカリ度を低減することを目的とした提案は見当たらないが、最終製品であるリチウムイオン二次電池を高性能化するため、正極材料を形成するリチウムニッケルマンガン複合酸化物の原料となる複合水酸化物に関して、狭い粒度分布を有する粒子を得る試みとしては、様々な提案がなされている。
たとえば、特許文献1には、実質的にマンガン:ニッケルが1:1である複合水酸化物粒子であって、平均粒径が5〜15μm、タップ密度が0.6〜1.4g/ml、バルク密度が0.4〜1.0g/ml、比表面積が20〜55m2/g、含有硫酸根が0.25〜0.45質量%であり、かつ、X線回折において15≦2θ≦25にあるピークの最大強度(I0)と、30≦2θ≦40にあるピークの最大強度(I1)との比(I0/I1)が、1〜6であることを特徴とする、マンガンニッケル複合水酸化物粒子が提案されている。また、その二次粒子表面および内部の構造は、一次粒子によるひだ状壁により網状を形成し、そのひだ状壁で囲まれた空間が比較的大きいとされている。
さらに、その製造方法として、マンガンイオンの酸化の程度を一定の範囲に制御しつつ、pH値が9〜13の水溶液中で、錯化剤の存在下、マンガンとニッケルの原子比が実質的に1:1であるマンガン塩とニッケル塩の混合水溶液を、アルカリ溶液と適当な攪拌条件下で反応させて生じる粒子を共沈殿させることが開示されている。
しかしながら、特許文献1のリチウムマンガンニッケル複合酸化物とその製造方法においては、粒子の構造について検討されているものの、開示されている電子顕微鏡写真からも明らかなように、得られる粒子には粗大粒子と微粒子が混在しており、粒径の均一化についての検討はなされていない。
一方、リチウム複合酸化物の粒度分布に関して、たとえば、特許文献2には、粒度分布曲線において、その累積頻度が50%の粒径を意味する平均粒径D50が3〜15μm、最小粒径が0.5μm以上、最大粒径が50μm以下の粒度分布を有する粒子であり、かつ、その累積頻度が10%のD10と90%のD90との関係において、D10/D50が0.60〜0.90、D10/D90が0.30〜0.70であるリチウム複合酸化物が開示されている。そして、このリチウム複合酸化物は、高い充填性を有し、充放電容量特性および高出力特性に優れ、充放電負荷の大きい条件下であっても劣化しにくいので、このリチウム複合酸化物を用いれば、優れた出力特性を持ち、かつ、サイクル特性の劣化の少ないリチウムイオン非水電解液二次電池を得ることができるとの記載もある。
しかしながら、特許文献2に開示されているリチウム複合酸化物は、平均粒径3〜15μmに対して、最小粒径が0.5μm以上、最大粒径が50μm以下となっていることから微細粒子および粗大粒子が含まれている。そして、上記D10/D50およびD10/D90で規定される粒度分布では、粒径分布の範囲が狭いとはいえない。つまり、特許文献2のリチウム複合酸化物は、粒径均一性が十分に高い粒子であるとはいえず、かかるリチウム複合酸化物を採用しても、正極材料の性能向上は望めず、十分な性能を有するリチウムイオン非水電解液二次電池を得ることは難しい。
また、粒度分布を改善することを目的とした、複合酸化物の原料となる複合水酸化物の製造方法についても、提案がなされている。特許文献3では、非水電解質電池用正極活物質の製造方法において、2種以上の遷移金属塩を含む水溶液を、または異なる遷移金属塩の2種以上の水溶液とアルカリ溶液とを同時に反応槽に投入し、還元剤を共存させながら、または不活性ガスを通気しながら共沈させることにより、前駆体である水酸化物または酸化物を得る方法が提案されている。
しかし、特許文献3の技術は、生成した結晶を分級しながら回収するものであるため、均一な粒径の生成物を得るためには、製造条件を厳密に管理する必要があると考えられ、工業的規模の生産は難しい。しかも、大きな粒径の結晶粒子は得ることができても、小径の粒子を得ることは難しい。また、分級により粒径の均一化を図っているため、均一化の程度は分級の精度を上回るものではない。
以上のように、活物質のアルカリ度を低減する検討を報告した例はなく、現在のところ、工業的規模において、リチウムイオン二次電池の性能を十分に向上させ得る複合酸化物の原料となる複合水酸化物を製造することができる方法は開発されていない。つまり、活物質のアルカリ度を低減するとともに粒径均一性が高く、かつ、適度な粒径を有する正極活物質は開発されておらず、このような正極活物質とその工業的な製造方法の開発が求められている。
特開2004−210560号公報 特開2008−147068号公報 特開2003−86182号公報
Chemistry Letters, Vol.30(2001), No.8, p.744
本発明は掛かる問題点に鑑み、原料として用いると、活物質としてのアルカリ度が低減され、粒径均一性が高いリチウムニッケルマンガン複合酸化物が得られる、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を提供することを目的とする。
また、粒度分布が均一で充填性が良好であり、電池に用いた場合に測定される正極抵抗の値を低減することが可能な非水系二次電池用正極活物質とともに、該正極活物質を用いた電気特性に優れた非水系電解質二次電池を提供することを目的とする。
さらに、本発明においては、上記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子および正極活物質の工業的な製造方法を提供することも目的としている。
本発明者は、リチウムイオン二次電池の正極材料として用いた場合に、優れた電池特性を発揮できるリチウムニッケルマンガン複合酸化物について鋭意検討した結果、正極材料を構成するリチウムニッケルマンガン複合酸化物の原料となる複合水酸化物として、粒子内部と外周部とでMn/Ni比の異なる多層構造を有する複合水酸化物粒子を用いることで、電池特性とアルカリ度の低減を両者を成立させることができるとの知見を得た。また、原料となるニッケルマンガン複合水酸化物を、粒度分布が制御され、均一な粒度を有するものとすることで、上記粒径均一性が高いリチウムニッケルマンガン複合酸化物が得られるとの知見を得た。さらに、該ニッケルマンガン複合水酸化物は、晶析時のpHを制御して核生成工程と粒子成長工程に分離することで得られ、晶析時の途中で水溶液中のMn/Ni比を変更することで上記多層構造となるとの知見を得た。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明のニッケルマンガン複合水酸化物粒子は、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体であって、
一般式:NiMnCo(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物であって、平均粒径が3〜11μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下であり、該ニッケルマンガン複合水酸化物は球状の二次粒子であって、二次粒子内部と外周部の組成が異なる多層構造となっており、前記外周部は、二次粒子の内部の組成よりMn/Ni比が高く、一般式:Ni Mn Co (OH) 2+α (0≦x≦0.4、0.3≦y≦1.0、0≦z≦0.4、0≦t≦0.2、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物で構成され、該外周部の厚みが二次粒子径の5〜25%であることを特徴とする。
前記二次粒子は、前記添加元素が均一に分布またはその表面を前記添加元素が均一に被覆していることが好ましい。
本発明のニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法は、晶析反応によって一般式:NiMnCo(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体であるニッケルマンガン複合水酸化物粒子を製造する製造方法であって、
少なくともニッケルを含有する金属化合物およびマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃基準で、pH値が12.0〜14.0となるように制御して核生成を行う核生成工程と、
該核生成工程において形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃基準で、pH値が10.5〜12.0、かつ、核生成工程におけるpH値よりも低いpH値となるように制御して、前記核を成長させる粒子成長工程と、
を備えるとともに、晶析中の外周部形成期における水溶液の液体部に含まれる金属イオンの組成比を下記一般式における組成比として、その水溶液の液体部のMn/Ni比を、内部形成期における水溶液の液体部より高くし、水溶液の液体部のMn/Ni比の変更を、晶析中に供給される全金属元素量に対して10〜90mol%の金属元素量を供給した時に行うことを特徴とする。
一般式:Ni Mn Co (OH) 2+α
(0≦x≦0.4、0.3≦y≦1.0、0≦z≦0.4、0≦t≦0.2、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)
本発明の正極活物質は、一般式:Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、MはAl、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、かつ、層状構造を有する六方晶系リチウム含有複合酸化物により構成されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる正極活物質であって、平均粒径が3〜12μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、粒子の表層部のMn/Ni比(SMN)と内部のMn/Ni比(IMN)との比(SMN/IMN)が1.3〜50であり、アルカリ度を示すpHが10.6〜11.5であることを特徴とする。
また、上記正極活物質の製造方法は、上記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法によってニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得る複合水酸化物粒子製造工程と、該ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を熱処理する熱処理工程と、前記熱処理後の粒子に対してリチウム化合物を混合してリチウム混合物を形成する混合工程と、該混合工程で形成された前記混合物を、酸化性雰囲気中800℃〜1000℃の温度で焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする。
前記焼成工程に際して、予め350℃〜800℃の温度で仮焼を行うことが好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池は、正極が、上記非水系電解質二次電池用正極活物質によって形成されていることを特徴とするものである。
本発明により、粒径均一性が高く、原料として用いた場合に、活物質としてのアルカリ度が低減されるとともに、粒径均一性が高いリチウムニッケルマンガン複合酸化物が得られるニッケルマンガン複合水酸化物粒子が得られる。また、該リチウムニッケルマンガン複合酸化物からなる正極活物質は、非水系二次電池に用いた場合に高容量で、高出力を可能とするものであり、該正極活物質を含む正極で構成された非水系二次電池は、優れた電池特性を備えたものとなる。
本発明が提供する上記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子および正極活物質の製造方法は、いずれも容易で大規模生産に適したものであり、その工業的価値はきわめて大きい。
本発明のニッケルマンガン複合水酸化物を製造する工程の概略フローチャートである。 本発明のニッケルマンガン複合水酸化物を製造する他の工程の概略フローチャートである。 本発明のニッケルマンガン複合水酸化物からリチウムニッケルマンガン複合酸化物を製造する工程の概略フローチャートである。 本発明のニッケルマンガン複合水酸化物を製造してから、非水系電解質二次電池を製造するまでの概略フローチャートである。 本発明のニッケルマンガン複合水酸化物のSEM写真(観察倍率1,000倍、)である。 本発明におけるMn/Ni比の高い表面層の厚みの見積方法を示した図である。 本発明のリチウムニッケルマンガン複合酸化物のSEM写真(観察倍率1,000倍)である。 電池評価に使用したコイン電池の概略図である。 インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路である。
本発明は、(1)非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となるニッケルマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、(2)該ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を用いた非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、(3)該非水系電解質二次電池用正極活物質を正極に用いた非水系電解質二次電池に関するものである。
非水系電解質二次電池の性能を向上させるためには、正極に採用される非水系電解質二次電池用正極活物質の影響が大きい。かかる優れた電池特性が得られる非水系電解質二次電池用正極活物質を得るためには、その粒径と粒度分布が重要な要因であり、所望の粒径と粒度分布に調整された正極活物質が好ましい。かかる正極活物質を得るためには、その前駆体であるニッケルマンガン複合水酸化物粒子として、所望の粒径と粒度分布のものを使用する必要がある。
以下、上記(1)〜(3)の発明のそれぞれについて詳細に説明するが、最初に、本発明の最大の特徴である、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法について説明する。
(1−1)ニッケルマンガン複合水酸化物粒子
本発明のニッケルマンガン複合水酸化物粒子(以下、単に本発明の複合水酸化物粒子という)は、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体であって、一般式:NiMnCo(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物であって、平均粒径が3〜11μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下であり、該ニッケルマンガン複合水酸化物は球状の二次粒子であって、二次粒子内部と外周部の組成が異なる多層構造となっており、二次粒子の内部の組成より外周部の組成のMn/Ni比が高いことを特徴とするものである。
(粒子組成)
本発明の複合水酸化物粒子は、その組成が、上記一般式で表されるように調整される。このような組成を有するニッケルマンガン複合水酸化物を前駆体として、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を製造すれば、このリチウムニッケルマンガン複合酸化物を正極活物質とする電極を電池に用いた場合に、測定される正極抵抗の値を低くできるとともに、電池性能を良好なものとすることができる。
複合水酸化物粒子を原料として正極活物質を得た場合、この複合水酸化物粒子の組成比(Ni:Mn:Co:M)は、得られる正極活物質においても維持される。したがって、本発明の複合水酸化物粒子の組成比は、得ようとする正極活物質に要求される組成比と同様となるように調整される。
(粒子構造)。
電池としたときの放電容量は、Mn/Ni比を低くするほど高容量となり性能が良くなる。一方、活物質のアルカリ度はMn/Ni比と関係があり、Mn/Ni比が高いとアルカリ度は低く、逆にMn/Ni比が低いとアルカリ度は高くなる。すなわち、電池の特性を上げつつ、アルカリ度を低減させるには、この背反する両者を成立させる必要がある。
そこで、正極活物質全体のMn/Ni比は低くして、粒子表面のみのMn/Ni比を高くすることができれば、活物質表面のアルカリ度を低減することが期待できる。つまり、正極材料の性能を向上させて、最終製品である高性能のリチウムイオン二次電池を製造する上では、正極材料を形成するリチウムニッケルマンガン複合酸化物の原料となる複合水酸化物として、二次粒子内部より表面付近のMn/Ni比高くすることで、内部はMn/Ni比低く高容量で、表層部はMn/Ni比が高くアルカリ度の低い正極活物質が得られ、高容量とアルカリ度の低減を両立させることができる。
本発明の複合水酸化物粒子においては、二次粒子内部と外周部の組成が異なる多層構造を有するように調整されている。そして、二次粒子内部の組成よりも外周部の組成のMn/Ni比が高くなるように調整されているので、正極活物質のアルカリ度を下げ、電極作製工程においてペースト化する際にゲル化反応を抑制でき、活物質、集電材が均一に分布した電極を作製することができる。一方で、内部のMn/Ni比は低く保持できるので、十分な電池容量を確保することができる。
さらに、前記二次粒子の外周部は、一般式:NiMnCo (OH)2+α(0≦x≦0.4、0.3≦y≦1.0、0≦z≦0.4、0≦t≦0.2、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物で構成されることが好ましい。外周部を上記組成に調整することで、本発明の複合水酸化物粒子を原料として得られる正極活物質の表層部のMn/Ni比が十分に高くなり、正極活物質のアルカリ度を適正値まで下げることが可能となる。
また、Mn/Ni比が高い前記外周部の厚みが二次粒子径の5〜25%であることが好ましい。外周部の厚みが、5%未満では正極活物質としたときにアルカリ度の低減効果が十分に得られない場合があり、25%を超えると、正極活物質の内部と表層部のMn/Ni比が十分でなくなり、十分なアルカリ度の低減効果を得ようとすると、電池容量が低下することがある。
前記外周部の層数は、特に制限されるものでなく、複数の層によって構成された外周部としてもよい。
(平均粒径)
本発明の複合水酸化物粒子は、その平均粒径が、3〜11μmであり、好ましくは3〜8μmに調整されている。平均粒径を3〜11μmとすることで、本発明の複合水酸化物粒子を原料として得られる正極活物質を所定の平均粒径(3〜12μm)に調整することができる。このように、複合水酸化物粒子の粒径は、得られる正極活物質の粒径と相関するため、この正極活物質を正極材料に用いた電池の特性に影響するものである。
具体的には、この複合水酸化物粒子の平均粒径が3μm未満であると、得られる正極活物質の平均粒径も小さくなり、正極の充填密度が低下して、容積あたりの電池容量が低下する。逆に、上記複合水酸化物粒子の平均粒径が11μmを超えると、得られる正極活物質の比表面積が低下して、電解液との界面が減少することにより、正極の抵抗が上昇して電池の出力特性が低下する。
(粒度分布)
本発明の複合水酸化物粒子は、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.55以下、好ましくは0.52以下となるように調整されている。
正極活物質の粒度分布は、原料である複合水酸化物粒子の影響を強く受けるため、複合水酸化物粒子に微粒子あるいは粗大粒子が混入していると、正極活物質にも同様の粒子が存在するようになる。すなわち、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55を超え、粒度分布が広い状態であると、正極活物質にも微粒子あるいは粗大粒子が存在するようになる。
微粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合、微粒子の局所的な反応に起因して発熱する可能性があり、電池の安全性が低下するとともに、微粒子が選択的に劣化するため、電池のサイクル特性が悪化してしまう。一方、大径粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合、電解液と正極活物質との反応面積が十分に取れず、反応抵抗の増加により電池出力が低下する。
よって、本発明の複合水酸化物粒子において、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下となるように調整しておけば、これを前駆体として用いて得られる正極活物質も粒度分布の範囲が狭いものとなり、その粒子径を均一化することができる。すなわち、正極活物質の粒度分布について、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下となるようにすることができる。これにより、本発明の複合水酸化物粒子を前駆体として形成された正極活物質を正極材料として用いた電池において、良好な出力特性および高出力を達成することができる。
幅広い正規分布を有する複合水酸化物粒子を、分級して粒度分布の狭い複合水酸化物を得ることも考えられるが、篩いによる分級は精度が悪く困難である。また、湿式サイクロンのような装置を用いても十分に狭い粒度分布に分級することはできず、工業的な分級方法では、本発明の複合水酸化物粒子のような粒径が均一で粒度分布が狭い複合水酸化物を得ることは困難である。
具体的には、攪拌機とオーバーフローパイプを備えた円筒形反応槽を用いて、組成比の硫酸ニッケルと硫酸マンガンの混合水溶液とアンモニア水を反応槽に添加しながらpHを11.5〜12.0に制御し、反応槽内が定常状態になった後、オーバーフローパイプより複合水酸化物粒子を連続的に採取し、組成がNi0.50Mn0.50(OH)2+α(0≦α≦0.5)である複合水酸化物粒子を得た。得られた複合水酸化物粒子を湿式サイクロン(ハイドロサイクロン、日本化学機械製造(株)製、NHC−1)を用いて、供給圧力を上げて粗粉を除去した後、再度、供給圧力を下げて微粒を除去したが、平均粒径8.5、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.67の複合水酸化物粒子しか得られなかった。
なお、粒度分布の広がりを示す指標〔(d90−d10)/平均粒径〕において、d10は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を意味している。また、d90は、同様に粒子数を累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味している。
平均粒径や、d90、d10を求める方法は特に限定されないが、たとえば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。平均粒径としてはd50を用い、d90と同様に累積体積が全粒子体積の50%となる粒径を用いればよい。
(1−2)ニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、二次粒子の内部と外周部の組成を変えることができればいかなる方法であっても良く、1)バッチ式の晶析による製法、2)連続式晶析法や噴霧乾燥法、噴霧熱分解法などで作製した二次粒子に晶析する方法、3)バッチ式の晶析による製法、連続式晶析法、噴霧乾燥法、噴霧熱分解法などで作製した二次粒子に機械的にコートする方法などがある。しかしながら、本発明の複合水酸化物粒子の粒径均一性を得るためには、バッチ方式の種晶法を用いることが最適であり、バッチ方式の種晶法による製造方法を以下で説明する。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、晶析反応によってニッケルマンガン複合水酸化物粒子を製造する方法であって、a)核生成を行う核生成工程と、b)核生成工程において生成された核を成長させる粒子成長工程とから構成されている。
すなわち、従来の連続晶析法では、核生成反応と粒子成長反応とが同じ槽内において同時に進行するため、得られる複合水酸化物粒子の粒度分布が広範囲となってしまう。これに対して、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、主として核生成反応が生じる時間(核生成工程)と、主として粒子成長反応が生じる時間(粒子成長工程)とを明確に分離することにより、得られる複合水酸化物粒子において狭い粒度分布を達成している点に特徴がある。さらに、晶析反応時の雰囲気を制御することにより、得られる複合水酸化物粒子の粒子構造を、微粒一次粒子からなる中心部と、中心部より大きな一次粒子からなる外殻部で構成されたものとする点に特徴がある。
最初に、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法の概略を、図1に基づいて説明する。なお、図1および図2では、(A)が核生成工程に相当し、(B)が粒子成長工程に相当する。
(核生成工程)
図1に示すように、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、まず、ニッケルおよびマンガンを含有する複数の金属化合物を所定の割合で水に溶解させ、混合水溶液を作製する。本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、得られる複合水酸化物粒子における上記各金属の組成比は、混合水溶液における各金属の組成比と同様となる。
よって、混合水溶液中における各金属の組成比が、本発明の複合水酸化物粒子中における各金属の組成比と同じ組成比となるように、水に溶解させる金属化合物の割合を調節して、混合水溶液を作製する。
一方、反応槽には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液、アンモニウムイオン供給体を含むアンモニア水溶液、および水を供給して混合して水溶液を形成する。この水溶液(以下、「反応前水溶液」という)について、そのpH値を、アルカリ水溶液の供給量を調整することにより、液温25℃基準で12.0〜14.0、好ましくは12.3〜13.4の範囲となるように調節する。また、反応前水溶液中のアンモニウムイオンの濃度を、アンモニア水溶液の供給量を調整することにより、3〜25g/L、好ましくは3〜20g/Lとなるように調節する。なお、反応前水溶液の温度についても、好ましくは20〜60℃、より好ましくは35〜60℃となるように調節する。反応槽内の水溶液のpH値、アンモニウムイオンの濃度については、それぞれ一般的なpH計、イオンメータによって測定可能である。
反応槽内において反応前水溶液の温度およびpHが調整されると、反応前水溶液を攪拌しながら混合水溶液を反応槽内に供給する。これにより、反応槽内には、反応前水溶液と混合水溶液とが混合した、核生成工程における反応水溶液である核生成用水溶液が形成され、核生成用水溶液中において複合水酸化物の微細な核が生成されることになる。このとき、核生成用水溶液のpH値は上記範囲にあるので、生成した核はほとんど成長することなく、核の生成が優先的に生じる。
なお、混合水溶液の供給による核生成に伴って、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオンの濃度が変化するので、核生成用水溶液には、混合水溶液とともに、アルカリ水溶液、アンモニア水溶液を供給して、核生成用水溶液のpH値が液温25℃基準で12.0〜14.0の範囲、アンモニウムイオンの濃度が3〜25g/Lの範囲をそれぞれ維持するように制御する。
上記核生成用水溶液に対する混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液の供給により、核生成用水溶液中には、連続して新しい核の生成が継続される。そして、核生成用水溶液中に、所定の量の核が生成されると、核生成工程を終了する。所定量の核が生成したか否かは、核生成用水溶液に添加した金属塩の量によって判断する。
(粒子成長工程)
核生成工程の終了後、前記核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で、10.5〜12.0、好ましくは11.0〜12.0、かつ、核生成工程におけるpH値よりも低いpH値となるように調整して、粒子成長工程における反応水溶液である粒子成長用水溶液を得る。具体的には、この調整時のpHの制御は、アルカリ水溶液の供給量を調節することにより行う。
粒子成長用水溶液のpH値を上記範囲とすることにより、核の生成反応よりも核の成長反応の方が優先して生じるから、粒子成長工程において、粒子成長用水溶液には、新たな核はほとんど生成することなく、核が成長(粒子成長)して、所定の粒子径を有する複合水酸化物粒子が形成される。
同様に、混合水溶液の供給による粒子成長に伴って、粒子成長用水溶液のpH値およびアンモニウムイオンの濃度が変化するので、粒子成長用水溶液にも、混合水溶液とともに、アルカリ水溶液、アンモニア水溶液を供給して、粒子成長用水溶液のpH値が液温25℃基準で10.5〜12.0の範囲、アンモニウムイオンの濃度が3〜25g/L、の範囲を維持するように制御する。
その後、上記複合水酸化物粒子が所定の粒径まで成長した時点で、粒子成長工程を終了する。複合水酸化物粒子の粒径は、予備試験により核生成工程と粒子成長工程の各工程におけるそれぞれの反応水溶液への金属塩の添加量と得られる粒子の関係を求めておけば、各工程での金属塩の添加量から容易に判断できる。
以上のように、上記複合水酸化物粒子の製造方法の場合、核生成工程では核生成が優先して起こり、核の成長はほとんど生じず、逆に、粒子成長工程では核成長のみが生じ、ほとんど新しい核は生成されない。このため、核生成工程では、粒度分布の範囲が狭く均質な核を形成させることができ、また、粒子成長工程では、均質に核を成長させることができる。したがって、上記複合水酸化物粒子の製造方法では、粒度分布の範囲が狭く、均質なニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得ることができる。
なお、上記製造方法の場合、両工程において、金属イオンは、核または複合水酸化物粒子となって晶出するので、それぞれの反応水溶液中の金属成分に対する液体成分の割合が増加する。この場合、見かけ上、供給する混合水溶液の濃度が低下したようになり、特に粒子成長工程において、複合水酸化物粒子が十分に成長しない可能性がある。
したがって、上記液体成分の増加を抑制するため、核生成工程終了後から粒子成長工程の途中で、粒子成長用水溶液中の液体成分の一部を反応槽外に排出することが好ましい。具体的には、粒子成長用水溶液に対する混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液の供給および攪拌を停止して、核や複合水酸化物粒子を沈降させて、粒子成長用水溶液の上澄み液を排出する。これにより、粒子成長用水溶液における混合水溶液の相対的な濃度を高めることができる。そして、混合水溶液の相対的な濃度が高い状態で、複合水酸化物粒子を成長させることができるので、複合水酸化物粒子の粒度分布をより狭めることができ、複合水酸化物粒子の二次粒子全体としての密度も高めることができる。
また、図1に示す実施形態では、核生成工程が終了した核生成用水溶液のpHを調整して粒子成長用水溶液を形成して、核生成工程から引き続いて粒子成長工程を行っているので、粒子成長工程への移行を迅速に行うことができるという利点がある。さらに、核生成工程から粒子成長工程への移行は、反応水溶液のpHを調整するだけで移行でき、pHの調整も一時的にアルカリ水溶液の供給を停止することで容易に行うことができるという利点がある。なお、反応水溶液のpHは、金属化合物を構成する酸と同種の無機酸、たとえば、硫酸塩の場合、硫酸を反応水溶液に添加することでも調整することができる。
しかしながら、図2に示す別実施形態のように、核生成用水溶液とは別に、粒子成長工程に適したpH、アンモニウムイオン濃度に調整された成分調整水溶液を形成しておき、この成分調整水溶液に、別の反応槽で核生成工程を行って生成した核を含有する水溶液(核生成用水溶液、好ましくは核生成用水溶液から液体成分の一部を除去したもの)を添加して反応水溶液とし、この反応水溶液を粒子成長用水溶液として粒子成長工程を行ってもよい。
この場合、核生成工程と粒子成長工程の分離を、より確実に行うことができるので、各工程における反応水溶液の状態を、各工程に最適な条件とすることができる。特に、粒子成長工程の開始時点から、粒子成長用水溶液のpHを最適な条件とすることができる。粒子成長工程で形成されるニッケルマンガン複合水酸化物粒子を、より粒度分布の範囲が狭く、かつ、均質なものとすることができる。
次に、各工程における反応雰囲気の制御、各工程において使用する物質や溶液、反応条件について、詳細に説明する。
(pH制御)
上述のように、核生成工程においては、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で12.0〜14.0、好ましくは12.3〜13.4の範囲となるように制御する必要がある。pH値が14.0を超える場合、生成する核が微細になり過ぎ、反応水溶液がゲル化する問題がある。また、pH値が12.0未満では、核形成とともに核の成長反応が生じるので、形成される核の粒度分布の範囲が広くなり不均質なものとなってしまう。すなわち、核生成工程において、上述の範囲に反応水溶液のpH値を制御することで、核の成長を抑制してほぼ核生成のみを起こすことができ、形成される核も均質かつ粒度分布の範囲が狭いものとすることができる。
一方、粒子成長工程においては、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で10.5〜12.0、好ましくは11.0〜12.0の範囲となるように制御する必要がある。pH値が12.0を超える場合、あらたに生成される核が多くなり、微細2次粒子が生成するため、粒径分布が良好な水酸化物粒子が得られない。また、pH値が10.5未満では、アンモニアイオンによる溶解度が高く、析出せずに液中に残る金属イオンが増えるため、生産効率が悪化する。また、金属硫酸塩を原料として使用した場合に粒子中に残るS(イオウ)分が多くなるため好ましくない。すなわち、粒子成長工程において、上述の範囲に反応水溶液のpHを制御することで、核生成工程で生成した核の成長のみを優先的に起こさせ、新たな核形成を抑制することができ、得られるニッケルマンガン複合水酸化物粒子を均質かつ粒度分布の範囲が狭いものとすることができる。
核生成工程および粒子成長工程のいずれにおいても、pHの変動幅は、設定値の上下0.2以内とすることが好ましい。pHの変動幅が大きい場合、核生成と粒子成長が一定とならず、粒度分布の範囲の狭い均一なニッケルマンガン複合水酸化物粒子が得られない場合がある。
なお、pH値が12の場合は、核生成と核成長の境界条件であるため、反応水溶液中に存在する核の有無により、核生成工程もしくは粒子成長工程のいずれかの条件とすることができる。
すなわち、核生成工程のpH値を12より高くして多量に核生成させた後、粒子成長工程でpH値を12とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、核の成長が優先して起こり、粒径分布が狭く比較的大きな粒径の前記水酸化物粒子が得られる。
一方、反応水溶液中に核が存在しない状態、すなわち、核生成工程においてpH値を12とした場合、成長する核が存在しないため、核生成が優先して起こり、粒子成長工程のpH値を12より小さくすることで、生成した核が成長して良好な前記水酸化物粒子が得られる。
いずれの場合においても、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値より低い値で制御すればよく、核生成と粒子成長を明確に分離するためには、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値より0.5以上低くすることが好ましく、1.0以上低くすることがより好ましい。
(核生成量)
核生成工程において生成する核の量は、特に限定されるものではないが、粒度分布の良好な複合水酸化物粒子を得るためには、全体量、つまり、複合水酸化物粒子を得るために供給する全金属塩の0.1%から2%とすることが好ましく、1.5%以下とすることがより好ましい。
(複合水酸化物粒子の粒径制御)
上記複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程の時間により制御できるので、所望の粒径に成長するまで粒子成長工程を継続すれば、所望の粒径を有する複合水酸化物粒子を得ることができる。
また、複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程のみならず、核生成工程のpH値と核生成のために投入した原料量でも制御することができる。
すなわち、核生成時のpHを高pH値側とすることにより、あるいは核生成時間を長くすることにより投入する原料量を増やし、生成する核の数を多くする。これにより、粒子成長工程を同条件とした場合でも、複合水酸化物粒子の粒径を小さくできる。一方、核生成数が少なくするように制御すれば、得られる前記複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることができる。
(複合水酸化物粒子の粒子構造制御)
複合水酸化物粒の組成は、反応水溶液の液体部の組成比、すなわち混合水溶液中における各金属の組成比と同じになる。したがって、二次粒子の内部の組成より外周部の組成のMn/Ni比が高い多層構造を得るためには、晶析中の外周部形成期における水溶液の液体部のMn/Ni比を、内部形成期における水溶液の液体部より高くすればよい。すなわち、供給する混合水溶液中における各金属の組成比を、核生成から成長工程において金属元素を所定の合計量を供給するまでをMn/Ni比の比較的低い複合水酸化物粒の内部の組成比とし、所定の金属元素合計量の供給後は晶析終了までは比較的Mn/Ni比が高い外周部の組成比に変更することで上記多層構造が得られる。二次粒子の内部と外周部の体積比は、供給する金属元素の合計量に比例することから、容易に制御することができる。
また、混合水溶液の金属元素当たり供給速度から必要な時間を求めることができるため、上記外周部の厚みを混合水溶液を供給する時間で制御してもよく、一定速度で供給する場合には、外周部が所望の厚みとなるようにそれぞれの組成比で必要な時間晶析すればよい。
上記水溶液の液体部のMn/Ni比の変更を、晶析中に供給される全金属元素量に対して10〜90mol%の金属元素量を供給した時に行うことが好ましい。これにより、前記外周部の厚みを、好ましい範囲である二次粒子径の1.5〜25%に制御することができる。
以下、反応槽内の雰囲気、反応水溶液の撹拌、金属化合物、反応水溶液中アンモニア濃度、反応温度などの条件を説明するが、核生成工程と粒子成長工程との相違点は、反応水溶液のpHを制御する範囲のみであり、反応槽内の雰囲気、反応水溶液の撹拌、金属化合物、反応液中アンモニア濃度、反応温度などの条件は、両工程において実質的に同様である。
(反応雰囲気)
核生成工程においては、コバルト、マンガンの酸化を抑制して粒子を安定して生成させる観点から、反応槽内空間の酸素濃度を好ましくは10容量%以下、より好ましくは5容量%以下、さらに好ましくは1容量%以下に制御する必要がある。粒子成長工程でも酸化制御が重要であり、反応槽内空間の酸素濃度を同様に制御する必要がある。雰囲気中の酸素濃度は、たとえば、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いて調整することができる。雰囲気中の酸素濃度が所定の濃度となるように調節するための手段としては、たとえば、当該雰囲気中に常に一定量の雰囲気ガスを流通させることが挙げられる。
(金属化合物)
金属化合物としては、目的とする金属を含有する化合物を用いる。使用する化合物は、水溶性の化合物を用いることが好ましく、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などがあげられる。たとえば、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルトが好ましく用いられる。
(添加元素)
添加元素(Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)は、水溶性の化合物を用いることが好ましく、たとえば、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどを用いることができる。
かかる添加元素を複合水酸化物粒子の内部に均一に分散させる場合には、混合水溶液に、添加元素を含有する添加物を添加すればよく、複合水酸化物粒子の内部に添加元素を均一に分散させた状態で共沈させることできる。
また、上記複合水酸化物粒子の表面を添加元素で被覆する場合には、たとえば、添加元素を含んだ水溶液で該複合水酸化物粒子をスラリー化し、所定のpHとなるように制御しつつ、前記1種以上の添加元素を含む水溶液を添加して、晶析反応により添加元素を複合水酸化物粒子表面に析出させれば、その表面を添加元素で均一に被覆することができる。この場合、添加元素を含んだ水溶液に替えて、添加元素のアルコキシド溶液を用いてもよい。さらに、上記複合水酸化物粒子に対して、添加元素を含んだ水溶液あるいはスラリーを吹き付けて乾燥させることによっても、複合水酸化物粒子の表面を添加元素で被覆することができる。また、複合水酸化物粒子と前記1種以上の添加元素を含む塩が懸濁したスラリーを噴霧乾燥させる、あるいは複合水酸化物と前記1種以上の添加元素を含む塩を固相法で混合するなどの方法により被覆することができる。
なお、表面を添加元素で被覆する場合、混合水溶液中に存在する添加元素イオンの原子数比を被覆する量だけ少なくしておくことで、得られる複合水酸化物粒子の金属イオンの原子数比と一致させることができる。また、粒子の表面を添加元素で被覆する工程は、複合水酸化物粒子を熱処理した後の粒子に対して行ってもよい。
(混合水溶液の濃度)
混合水溶液の濃度は、金属化合物の合計で1〜2.6mol/L、好ましくは1.5〜2.2mol/Lとすることが好ましい。混合水溶液の濃度が1mol/L未満では、反応槽当たりの晶析物量が少なくなるために生産性が低下して好ましくない。
一方、混合水溶液の塩濃度が2.6mol/Lを超えると、常温での飽和濃度を超えるため、結晶が再析出して設備の配管を詰まらせるなどの危険がある。
また、金属化合物は、必ずしも混合水溶液として反応槽に供給しなくてもよく、たとえば、混合すると反応して化合物が生成される金属化合物を用いる場合、全金属化合物水溶液の合計の濃度が上記範囲となるように、個別に金属化合物水溶液を調製して、個々の金属化合物の水溶液として所定の割合で同時に反応槽内に供給してもよい。
さらに、混合水溶液などや個々の金属化合物の水溶液を反応槽に供給する量は、晶析反応を終えた時点での晶析物濃度が、概ね30〜200g/L、好ましくは80〜150g/Lになるようにすることが望ましい。晶析物濃度が30g/L未満の場合には、一次粒子の凝集が不十分になることがあり、200g/Lを超える場合には、添加する混合水溶液の反応槽内での拡散が十分でなく、粒子成長に偏りが生じることがあるからである。
(アンモニア濃度)
反応水溶液中のアンモニア濃度は、好ましくは3〜25g/L、好ましくは3〜20g/Lの範囲内で一定値に保持する。
アンモニアは錯化剤として作用するため、アンモニア濃度が3g/L未満であると、金属イオンの溶解度を一定に保持することができず、形状および粒径が整った板状の水酸化物一次粒子が形成されず、ゲル状の核が生成しやすいため粒度分布も広がりやすい。
一方、上記アンモニア濃度が25g/Lを超える濃度では、金属イオンの溶解度が大きく、水酸化物が緻密に形成されるため、最終的に得られる非水系電解質二次電池用正極活物質も緻密な構造になり、粒径が小さく、比表面積も低くなることがある。また、金属イオンの溶解度が大きくなり過ぎると、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増えて、組成のずれなどが起きる。
また、アンモニア濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一な水酸化物粒子が形成されないため、一定値に保持することが好ましい。たとえば、アンモニア濃度は、上限と下限の幅を5g/L程度として所望の濃度に保持することが好ましい。
アンモニウムイオン供給体については、特に限定されないが、たとえば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを使用することができる。
(反応液温度)
反応槽内において、反応液の温度は、好ましくは20〜60℃以上、特に好ましくは35〜60℃に設定する。反応液の温度が20℃未満の場合、金属イオンの溶解度が低いため核発生が起こりやすく制御が難しくなる。一方、60℃を超えると、アンモニアの揮発が促進されるため、所定のアンモニア濃度を保つために、過剰のアンモニウムイオン供給体を添加しなければならならず、コスト高となる。
(アルカリ水溶液)
反応水溶液中のpHを調整するアルカリ水溶液については、特に限定されるものではなく、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。かかるアルカリ金属水酸化物の場合、直接、反応水溶液中に供給してもよいが、反応槽内における反応水溶液のpH制御の容易さから、水溶液として反応槽内の反応水溶液に添加することが好ましい。
また、アルカリ水溶液を反応槽に添加する方法についても、特に限定されるものではなく、反応水溶液を十分に攪拌しながら、定量ポンプなど、流量制御が可能なポンプで、反応水溶液のpH値が所定の範囲に保持されるように、添加すればよい。
(製造設備)
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、反応が完了するまで生成物を回収しない方式の装置を用いる。たとえば、撹拌機が設置された通常に用いられるバッチ反応槽などである。かかる装置を採用すると、一般的なオーバーフローによって生成物を回収する連続晶析装置のように、成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されるという問題が生じないため、粒度分布が狭く粒径の揃った粒子を得ることができる。
また、反応雰囲気を制御する場合には、密閉式の装置などの雰囲気制御可能な装置を用いる。このような装置を用いることで、核生成反応や粒子成長反応をほぼ均一に進めることができるので、粒径分布の優れた粒子、すなわち粒度分布の範囲の狭い複合水酸化物粒子を得ることができる。
(2−1)非水系電解質二次電池用正極活物質
本発明の正極活物質は、一般式:Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは添加元素であり、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子であって、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有するものである。
(組成)
本発明の正極活物質は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子であるが、その組成
が、以下の一般式で表されるように調整されるものである。一般式:Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55≦z≦0.4、0≦t≦0.1、MはAl、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)
本発明の正極活物質においては、リチウムの過剰量を示すuが、−0.05から0.50までの範囲である。リチウムの過剰量uが−0.05未満の場合、得られた正極活物質を用いた非水系電解質二次電池における正極の反応抵抗が大きくなるため、電池の出力が低くなってしまう。また、アルカリ度が本発明の下限未満となってしまう。一方、リチウムの過剰量uが0.50を超える場合、上記正極活物質を電池の正極に用いた場合の初期放電容量が低下するとともに、正極の反応抵抗も増加してしまう。リチウムの過剰量uは、該反応抵抗をより低減させるためには0.05以上とすることが好ましく、0.20以下とすることが好ましい。
さらに、本発明の正極活物質においては、表層部のMn/Ni比が内部より高いことが好ましく、表層部のMn/Ni比(SMN)と内部のMn/Ni比(IMN)との比(SMN/IMN)が1.3〜50であることが好ましい。これにより、アルカリ度を本発明の範囲とすることができる。SMN比およびIMN比は、断面SEM観察におけるEDX分析等による分析で求めることができる。
また、上記一般式で表されるように、本発明の正極活物質は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子に添加元素を含有するように調整されていることが、より好ましい。上記添加元素を含有させることで、これを正極活物質として用いた電池の耐久特性や出力特性を向上させることができる。
特に、添加元素が粒子の表面または内部に均一に分布することで、粒子全体で上記効果を得ることができ、少量の添加で上記効果が得られるとともに容量の低下を抑制できる。
さらに、より少ない添加量で効果を得るためには、粒子内部より粒子表面における添加元素の濃度を高めることが好ましい。
添加元素Mの原子比tが0.1を超えると、Redox反応に貢献する金属元素が減少するため、電池容量が低下するため好ましくない。したがって、添加元素Mは、上記原子比tで上記範囲となるように調整する。
(平均粒径)
本発明の正極活物質は、平均粒径が3〜12μmであり、好ましくは3〜10μmである。平均粒径が3μm未満の場合には、タップ密度が低下して、正極を形成したときに粒子の充填密度が低下して、正極の容積あたりの電池容量が低下する。一方、平均粒径が12μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下して、電池の電解液との界面が減少することにより、正極の抵抗が上昇して電池の出力特性が低下する。
したがって、本発明の正極活物質を、平均粒径が3〜12μm、好ましくは3〜10μmとなるように調整すれば、この正極活物質を正極に用いた電池では、容積あたりの電池容量を大きくすることができるとともに、高安全性、高出力などに優れた電池特性が得られる。
(粒度分布)
本発明の正極活物質は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、きわめて均質性が高いリチウムニッケルマンガン複合酸化物の二次粒子により構成される。
本発明の正極活物質は、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.60以下、好ましくは0.55以下である。粒度分布が広範囲になっている場合、正極活物質に、平均粒径に対して粒径が非常に小さい微粒子や、平均粒径に対して非常に粒径の大きい粗大粒子が多く存在することになる。微粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合には、微粒子の局所的な反応に起因して発熱する可能性があり、安全性が低下するとともに、微粒子が選択的に劣化するのでサイクル特性が悪化してしまう。一方、粗大粒子が多く存在する正極活物質を用いて正極を形成した場合には、電解液と正極活物質との反応面積が十分に取れず、反応抵抗の増加による電池出力が低下する。
したがって、正極活物質の粒度分布を前記指標〔(d90−d10)/平均粒径〕で0.60以下とすることで、微粒子や粗大粒子の割合を少なくすることができ、この正極活物質を正極に用いた電池は、安全性に優れ、良好なサイクル特性および電池出力を有するものとなる。なお、上記平均粒径や、d90、d10は、上述した複合水酸化物粒子に用いられているものと同様のものであり、測定も同様にして行うことができる。
(アルカリ度)
本発明の正極活物質は、アルカリ度を示すpHが10.6〜11.5である。アルカリ度は、正極活物質2gを25℃の水100ccに入れてスラリー化し、1分間撹拌した後、5分間静置したスラリーのpH値と定義される。
アルカリ度を示すpHが10.6未満では、正極活物質粒子表面の余剰リチウムが少ないため、十分な容量が得られない。一方、pHが11.5を超えると、電池の正極ペースト調製時にペーストのゲル化を生じて、正極材中に活物質が均一に分散しなくなり、電池容量の低下や正極抵抗の上昇が生じる。
(2−2)非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法
本発明の正極活物質の製造方法は、上記平均粒径、粒度分布、粒子構造および組成となるように正極活物質を製造できるのであれば、特に限定されないが、以下の方法を採用すれば、該正極活物質をより確実に製造できるので、好ましい。
本発明の正極活物質の製造方法は、図3に示すように、a)本発明の正極活物質の原料となるニッケルマンガン複合水酸化物粒子を熱処理する工程と、b)熱処理後の粒子に対してリチウム化合物を混合してリチウム混合物を形成する混合工程、c)混合工程で形成された混合物を焼成する焼成工程を含むものである。以下、各工程を説明する。
a)熱処理工程
熱処理工程は、上記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法で得たニッケルマンガン複合水酸化物粒子(以下、単に「複合水酸化物粒子」という)を105〜750℃、好ましくは105〜400℃の温度に加熱して熱処理する工程であり、複合水酸化物粒子に含有されている水分を除去している。この熱処理工程を行うことによって、粒子中に焼成工程まで残留している水分を一定量まで減少させることができる。これにより、得られる製造される正極活物質中の金属の原子数やリチウムの原子数の割合がばらつくことを防ぐことができる。
なお、正極活物質中の金属の原子数やリチウムの原子数の割合にばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、必ずしもすべての複合水酸化物粒子をニッケルマンガン複合酸化物粒子(以下、単に「複合酸化物粒子」という)に転換する必要はなく、400℃以下の温度で熱処理すれば十分である。しかしながら、上記ばらつきをより少なくするためには、加熱温度を400℃以上として複合水酸化物粒子を複合酸化物粒子にすべて転換すればよい。
熱処理工程において、加熱温度が105℃未満の場合、複合水酸化物粒子中の余剰水分が除去できず、上記ばらつきを抑制することができない。一方、加熱温度が750℃を超えると、熱処理により粒子が焼結して均一な粒径の複合酸化物粒子が得られない。熱処理条件による複合水酸化物粒子中に含有される金属成分を分析によって予め求めておき、リチウム化合物との比を決めておくことで、上記ばらつきを抑制することができる。
熱処理を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、非還元性雰囲気であればよいが、簡易的に行える空気気流中において行うことが好ましい。
また、熱処理時間は、特に制限されないが、1時間未満では複合水酸化物粒子の余剰水分の除去が十分に行われない場合があるので、少なくとも1時間以上が好ましく、5〜15時間がより好ましい。
そして、熱処理に用いられる設備は、特に限定されるものではなく、複合水酸化物粒子を非還元性雰囲気中、好ましくは、空気気流中で加熱できるものであればよく、ガス発生がない電気炉などが好適に用いられる。
b)混合工程
混合工程は、上記熱処理工程において熱処理された複合水酸化物粒子(以下、「熱処理粒子」という)などと、リチウムを含有する物質、たとえば、リチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を得る工程である。
ここで、上記熱処理粒子には、熱処理工程において残留水分を除去された複合水酸化物粒子のみならず、熱処理工程で酸化物に転換された複合酸化物粒子、もしくはこれらの混合粒子も含まれる。
熱処理粒子とリチウム化合物とは、リチウム混合物中のリチウム以外の金属の原子数、すなわち、ニッケル、マンガン、コバルトおよび添加元素の原子数の和(Me)と、リチウムの原子数(Li)との比(Li/Me)が、0.95〜1.5、好ましくは1〜1.35、より好ましくは1.05〜1.20となるように、混合される。すなわち、焼成工程前後でLi/Meは変化しないので、この混合工程で混合するLi/Meが正極活物質におけるLi/Meとなるため、リチウム混合物におけるLi/Meが、得ようとする正極活物質におけるLi/Meと同じになるように混合される。
リチウム混合物を形成するために使用されるリチウム化合物は、特に限定されるものではないが、たとえば、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、もしくはこれらの混合物が、入手が容易であるという点で好ましい。特に、取り扱いの容易さ、品質の安定性を考慮すると、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムもしくはそれらの混合物を用いることがより好ましい。
なお、リチウム混合物は、焼成前に十分混合しておくことが好ましい。混合が十分でない場合には、個々の粒子間でLi/Meがばらつき、十分な電池特性が得られない間などの問題が生じる可能性がある。
また、混合には、一般的な混合機を使用することができ、たとえば、シェーカーミキサー、レーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いることができ、熱処理粒子などの形骸が破壊されない程度で、複合酸化物粒子とリチウムを含有する物質とが十分に混合されればよい。
c)焼成工程
焼成工程は、上記混合工程で得られたリチウム混合物を焼成して、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を形成する工程である。焼成工程においてリチウム混合物を焼成すると、熱処理粒子に、リチウムを含有する物質中のリチウムが拡散するので、上記リチウムニッケルマンガン複合酸化物が形成される。
(焼成温度)
リチウム混合物の焼成は、800〜1000℃で、好ましくは820〜960℃、より好ましくは850〜940℃で行われる。
焼成温度が800℃未満であると、ニッケルマンガン複合酸化物粒子中へのリチウムの拡散が十分でなく、余剰のリチウムと未反応のニッケルマンガン複合酸化物が残ったり、あるいは結晶構造が十分整わなくなったりして、電池に用いられた場合に十分な電池特性が得られない。
また、1000℃を超えるとリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子間で激しく焼結が生じるとともに、異常粒成長を生じることから粒子が粗大となり、球状二次粒子の形態を保持できなくなる。さらに、本発明の温度範囲以外のいずれの条件で焼成を行なった場合でも、電池容量が低下するばかりか、正極抵抗の値も高くなってしまう。
(焼成時間)焼成時間のうち、所定温度での保持時間は、少なくとも1時間以上とすることが好ましく、より好ましくは、5〜15時間である。1時間未満では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の生成が十分に行われないことがある。
(仮焼)
焼成工程では、特に、リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用した場合には、焼成する前に、焼成温度より低く、かつ、350〜800℃の温度に1〜10時間程度、好ましくは3〜6時間保持して仮焼し、引き続いて800〜1000℃で焼成することが好ましい。すなわち、水酸化リチウムや炭酸リチウムと熱処理粒子の反応温度において仮焼することが好ましい。この場合、水酸化リチウムや炭酸リチウムの上記反応温度付近で保持すれば、熱処理粒子へのリチウムの拡散が十分に行われ、均一なリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得ることができる。
(焼成雰囲気)
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とするが、酸素濃度が18〜100容量%の雰囲気とすることが好ましく、上記酸素濃度の酸素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが特に好ましい。すなわち、大気〜酸素気流中で行なうことが好ましい。酸素濃度が18容量%未満であると、酸化が十分でなく、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の結晶性が十分でない場合がある。
なお、焼成に用いられる炉は、特に限定されるものではなく、大気〜酸素気流中で加熱できるものであればよいが、ガス発生がない電気炉が好ましく、バッチ式あるいは連続式の炉が用いられる。
(解砕)
焼成によって得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子は、凝集もしくは軽度の焼結が生じている場合がある。この場合には、解砕してもよく、これにより、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、つまり、本発明の正極活物質を得ることができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく二次粒子を分離させて、凝集体をほぐす操作のことである。
(3)非水系電解質二次電池
本発明の非水系電解質二次電池は、図4に示すように、(2)の非水系電解質二次電池用正極活物質を用いた正極を採用したものである。
そして、かかる正極を採用したので、150mAh/g以上の高い初期放電容量、低い正極抵抗の電池となり、熱安定性および安全性も高くすることができるという効果が得られる。
まず、本発明の非水系電解質二次電池の構造を説明する。
本発明の非水系電解質二次電池(以下、単に本発明の二次電池という)は、正極の材料に本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、単に本発明の正極活物質という)を用いた以外は、一般的な非水系電解質二次電池と実質同等の構造を有している。
具体的には、本発明の二次電池は、ケースと、このケース内に収容された正極、負極、非水系電解液およびセパレータを備えた構造を有している。より具体的にいえば、セパレータを介して正極と負極とを積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させ、正極の正極集電体と外部に通ずる正極端子との間および、負極の負極集電体と外部に通ずる負極端子との間をそれぞれ集電用リードなどを用いて接続し、ケースに密閉することによって、本発明の二次電池は形成されているのである。
なお、本発明の二次電池の構造は、上記例に限定されないのはいうまでもなく、また、その外形も筒形や積層形など、種々の形状を採用することができる。つぎに、本発明の二次電池を構成する各部を説明する
(正極)
前述のように得られた非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。
まず、粉末状の正極活物質、導電材および結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。その際、正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、非水系電解質二次電池の性能を決定する重要な要素となる。溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜20質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが望ましい。
得られた正極合材ペーストを、たとえば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレスなどにより加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断などをして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、前記例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
正極の作製に当たって、導電材としては、たとえば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料を用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸を用いることができる。
必要に応じ、正極活物質、導電材および活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(3−b)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金など、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
(3−c)セパレータ
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(3−d)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22 、およびそれらの複合塩などを用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
(3−e)電池の形状、構成
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
(本発明の二次電池の特性)
本発明の二次電池は、上記のごとき構成であり、上述したような正極を使用しているので、150mAh/g以上の高い初期放電容量、低い正極抵抗が得られ、高容量で高出力となる。しかも、従来のリチウムコバルト系酸化物あるいはリチウムニッケル系酸化物の正極活物質との比較においても熱安定性が高く、安全性においても優れているといえる。
(本発明の二次電池の用途)
本発明の非水系電解質二次電池は、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。
また、本発明の二次電池は、高出力が要求されるモーター駆動用電源としての電池にも好適である。電池は大型化すると安全性の確保が困難になり高価な保護回路が必要不可欠である。これに対して、本発明の非水系電解質二次電池は、電池が大型化することなく優れた安全性を有しているため、安全性の確保が容易になるばかりでなく、高価な保護回路を簡略化し、より低コストにできる。さらに、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける輸送機器用の電源として好適である。
本発明の方法による複合水酸化物、また、この複合水酸化物を原料として本発明の方法によって製造した正極活物質について、平均粒径および粒度分布を確認した。
また、本発明の方法によって製造した正極活物質を用いて製造した正極を有する二次電池について、その性能(初期放電容量、サイクル容量維持率、正極抵抗比)を確認した。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(平均粒径および粒度分布の測定)
複合水酸化物、正極活物質の平均粒径および粒度分布(〔(d90−d10)/平均粒径〕値)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した体積積算値から算出している。
また、X線回折測定(パナリティカル社製、X‘Pert PRO)により結晶構造も確認した。
また、得られた複合水酸化物および正極活物質の組成は、試料を溶解した後、ICP発光分光法により確認した。
(アルカリ度評価)
得られた正極活物質2gを25℃の水100ccに入れ1分間撹拌後、5分間静置したときのpH値を測定し、アルカリ度を評価した。
(電池評価)
得られた非水系電解質二次電池用正極活物質の評価は、以下のように電池を作製し、充放電容量を測定することで行なった。非水系電解質二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形し、図8に示す正極(評価用電極)(1)を作製した。作製した正極(1)を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。そして、この正極(1)を用いて2032型コイン電池(B)を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。負極(2)には、直径17mm、厚さ1mmのLi金属を用い、電解液には、1MのLiClO4を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータ(3)には膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン電池(B)は、ガスケット(4)を有し、正極缶(5)と負極缶(6)とでコイン状の電池に組み立てられている。
作製したコイン電池(B)は、組立てから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2としてカットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電して、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行なった。充放電容量の測定には,マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製、R6741A)を用いた。
また、充電電位4.1Vで充電したコイン電池(B)を用いて、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製)を使用し、図9に示すナイキストプロットが得られる。プロットは、溶液抵抗、負極抵抗と容量、および、正極抵抗と容量を示す特性曲線の和として表れているため、等価回路を用いてフィッティング計算し、この正極抵抗の値と後述する比較例1における正極抵抗の値との比を、正極抵抗比とした。
(実施例1)
[複合水酸化物粒子製造工程]
複合水酸化物粒子は、本発明の方法を用いて、以下のように作成した。
まず、反応槽(34L)内に水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定し、反応槽に窒素ガスを流通させて非酸化性雰囲気とした。このときの反応槽内空間の酸素濃度は2.0%であった。
上記反応槽内の水に25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、液温25℃基準で槽内の反応液のpHが値12.6となるように調整した。また、反応液中アンモニア濃度は10g/Lに調節した。
(核生成工程)
次に、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、タングステン酸ナトリウムを水に溶かして1.9mol/Lの混合水溶液を形成した。この混合水溶液では、各金属の元素モル比が、Ni:Mn:W=0.50:0.50:0.005となるように調整した。
上記混合水溶液を、反応槽内の反応液に88ml/分で加えた。同時に、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液も反応槽内の反応液に一定速度で加えていき、反応液中のアンモニア濃度を上記値に保持した状態で、液温25℃基準でpH値を12.6(核生成pH値)に制御しながら2分30秒間晶析を行って、核生成を行った。
(粒子成長工程)
その後、反応液のpH値が液温25℃基準で11.6(粒子成長pH値)になるまで、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給のみを一時停止した。
液温25℃を基準として測定するpH値として、反応液のpH値が液温25℃基準で11.6に到達した後、再度、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給を再開し、pH値を11.6に制御したまま、2時間晶析を継続し粒子成長を行った。
反応槽内が満液になったところで晶析を停止するとともに撹拌を止めて静置することで、生成物の沈殿を促した。その後、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、晶析を再開し、1.5時間(全金属元素供給量に対する供給量:87.6mol%)晶析を行ったところで供給する混合水溶液を各金属の元素モル比が、Ni:Mn:W=0.30:0.70:0.005となるように調整した1.9mol/Lの混合水溶液に切り替え、88ml/分で加え0.5時間晶析を継続した後(計4時間)、晶析を終了させた。そして、生成物を水洗、濾過、乾燥させると粒子が得られた。
得られた粒子は、Ni0.449Mn0.5470.004(OH)2+α(0≦α≦0.5)で表される複合水酸化物粒子であった。
表1に示すように、この複合水酸化物粒子の粒度分布を測定したところ、平均粒径は4.0μmであり、(〔(d90−d10)/平均粒径〕値は0.47であった。
また、得られた複合水酸化物粒子のSEM(株式会社日立ハイテクノロジース製走査電子顕微鏡S−4700)観察結果であるSEM写真から、球状の二次粒子であることを確認した。また、STEM(株式会社日立ハイテクノロジース製走査透過電子顕微鏡HD2300A)により、二次粒子断面のEDX線分析を行ったところ、Mn/Ni比の高い外周部の厚みは二次粒子径の14.5%であった。
(正極活物質製造工程)
前記複合水酸化物粒子を大気雰囲気中700℃で12時間の熱処理をした後、Li/M=1.35となるように炭酸リチウムを秤量し、熱処理した複合水酸化物粒子と混合して混合物を形成した。混合は、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて行った。
得られたこの混合物を空気(酸素:21容量%)気流中にて760℃で4時間仮焼した後、900℃で10時間焼成し、さらに解砕して正極活物質を得た。
図5に示すように、得られた正極活物質の粒度分布を測定したところ、平均粒径は4.3μmであり、〔(d90−d10)/平均粒径〕値は0.56であった。
また、複合水酸化物粒子と同様の方法で正極活物質のSEM観察したところ、得られた正極活物質は、略球状であり、粒径がほぼ均一に揃っていることが確認された。
また、得られた正極活物質をCu−Kα線による粉末X線回折で分析したところ、六方晶の層状結晶リチウムニッケルマンガン複合酸化物単相であることが確認された。
そして、正極活物質は、化学分析によりLiが9.47質量%、Niが26.6質量%、Mnが30.4質量%、Wが0.74質量%の組成であり、Li1.35Ni0.449Mn0.5470.004であることが確認できた。
この正極活物質のpH値は10.9であった。また、表層部のMn/Ni比と内部のMn/Ni比との比(SMN/IMN)は、複合水酸化物粒子と同様にEDX分析を行ったところ、1.5であった。
(電池評価)
前記正極活物質を使用して形成された正極を有する二次電池について、充放電試験を行ったところ、表2に示すように、二次電池の初期放電容量は168.5mAh/gであった。また、正極抵抗比は、0.62であった。
以下、実施例2〜8および比較例1〜6については、上記実施例1と変更した物質、条件のみを示す。また、実施例2〜8および比較例1〜6の各評価の結果は、表1に示した。
(実施例2)
混合水溶液の組成をNi:Co:Mn:Zr:W=0.55:0.22:0.22:0.005:0.005からNi:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005に変更したこと、焼成温度を850℃としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。晶析により得られた粒子は、Ni0.496 Mn 0.247 Co 0.247 Zr0.0050.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)で表される複合水酸化物粒子であった。また、得られた正極活物質は、化学分析によりLiが7.63重量%、Niが28.8重量%、Coが14.5重量%、Mnが13.5重量%、Zrが0.42重量%、Wが0.84重量%の組成でありLi1.1Ni0.50 Mn 0.25 Co 0.25 Zr0.0050.005であることが確認された。
表層部のMn/Ni比と内部のMn/Ni比との比(SMN/IMN)は、複合水酸化物粒子と同様にEDX分析を行ったところ、1.7であった。得られた複合水酸化物粒子のSEM写真を図5に、得られた正極活物質のSEM写真を図6にそれぞれ示す。
(実施例3)
Li/M=1.05となるように混合したこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例4)
Li/M=1.15となるように混合したこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例5)
焼成条件を925℃で10時間としたこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例6)
仮焼条件を400℃で10時間としたこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例7)
仮焼をせず850℃、10時間で焼成したこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例8)
各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.66:0.165:0.165:0.005:0.005とした混合溶液で2時間晶析し、反応槽内が満液になったところで晶析を停止するとともに撹拌を止めて静置させ、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、供給する混合水溶液を各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005となるように調整した混合水溶液に切り替え、2時間晶析を継続した後(計4時間)、晶析を終了させたこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例9)
混合水溶液中の金属元素のモル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.685:0.1525:0.1525:0.005:0.005となるように調整して2時間晶析を継続し粒子成長を行ったあと、反応槽内が満液になったところで晶析を停止するとともに撹拌を止めて静置させ、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、晶析を再開し、1.5時間晶析を行ったところで供給する混合水溶液を各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005となるように調整した混合水溶液に切り替え、0.5時間晶析を継続して複合水酸化物を得たこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(比較例1)
複合水酸化物製造工程において、金属元素がモル比でNi:Co:Mn:Zr:W=0.496:0.247:0.247:0.005:0.005となるように混合水溶液を調製して晶析終了まで供給し、組成を変更しなかった以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(比較例2)
各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.518:0.236:0.236:0.005:0.005とした混合溶液で2時間晶析し、反応槽内が満液になったところで晶析を停止するとともに撹拌を止めて静置させ、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、晶析を再開し、1.75時間(全金属元素供給量に対する供給量:93.8mol%)晶析を行ったところで供給する混合水溶液を各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005となるように調整した混合水溶液に切り替え、0.25時間晶析して混合水酸化物を得た以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(比較例3)
複合水酸化物製造工程において、金属元素がモル比でNi:Co:Mn:Zr:W=0.594:0.198:0.198:0.005:0.005となるように混合水溶液を調製して晶析終了まで供給し、組成を変更しなかった以外は実施例9と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
(比較例4)
焼成条件を1050℃で10時間としたこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得とともに評価した。
(比較例5)
Li/M=0.90とした以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得とともに評価した。
(評価)
実施例1〜8の複合水酸化物粒子および正極活物質は、本発明に従った二次粒子内部の組成が傾斜した材料となっているため、アルカリ度が低く抑えられている。また、これらの正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、初期放電容量が高く、サイクル特性に優れ、正極抵抗も低いものとなっており、優れた特性を有した電池となっている。
比較例1および3では、高Mn/Ni比層がなく、比較例2では、外周部の厚みが二次粒子径の5%未満であるため、アルカリ度低減効果が発現していない。
比較例4および5は、正極活物質の製造工程が本発明に従わなかったため、良好な特性の正極活物質が得られず、これらの正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、正極抵抗が大きくなっており、初期放電容量が悪化している。
以上の結果より、本発明の製造方法を用いて、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子および正極活物質を製造すれば、この正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、初期放電容量が高く、サイクル特性に優れ、正極抵抗も低いものとなり、優れた特性を有した電池となることが確認できる。
本発明の非水系電解質二次電池は、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適でる。
また、本発明の非水系電解質二次電池は、優れた安全性を有し、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける輸送用機器の電源として好適である。

Claims (7)

  1. 非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体であって、
    一般式:NiMnCo(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物であって、
    平均粒径が3〜11μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下であり、該ニッケルマンガン複合水酸化物は複数の一次粒子が凝集して形成された球状の二次粒子であって、二次粒子内部と外周部の組成が異なる多層構造となっており、
    前記外周部は、二次粒子の内部の組成よりMn/Ni比が高く、一般式:Ni Mn Co (OH) 2+α (0≦x≦0.4、0.3≦y≦1.0、0≦z≦0.4、0≦t≦0.2、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物で構成され、該外周部の厚みが二次粒子径の5〜25%であることを特徴とするニッケルマンガン複合水酸化物粒子。
  2. 前記二次粒子は、前記添加元素が均一に分布またはその表面を前記添加元素が均一に被覆していることを特徴とする請求項に記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子。
  3. 晶析反応によって一般式:NiMnCo(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体であるニッケルマンガン複合水酸化物粒子を製造する製造方法であって、
    少なくともニッケルを含有する金属化合物およびマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃基準で、pH値が12.0〜14.0となるように制御して核生成を行う核生成工程と、
    該核生成工程において形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃基準で、pH値が10.5〜12.0、かつ、核生成工程におけるpH値よりも低いpH値となるように制御して、前記核を成長させる粒子成長工程と、
    を備えるとともに、晶析中の外周部形成期における水溶液の液体部に含まれる金属イオンの組成比を下記一般式における組成比として、その水溶液の液体部のMn/Ni比を、内部形成期における水溶液の液体部より高くし、水溶液の液体部のMn/Ni比の変更を、晶析中に供給される全金属元素量に対して10〜90mol%の金属元素量を供給した時に行うことを特徴とするニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
    一般式:Ni Mn Co (OH) 2+α
    (0≦x≦0.4、0.3≦y≦1.0、0≦z≦0.4、0≦t≦0.2、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)
  4. 一般式:Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、MはAl、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、かつ、層状構造を有する六方晶系リチウム含有複合酸化物により構成されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる正極活物質であって、平均粒径が3〜12μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、粒子の表層部のMn/Ni比(SMN)と内部のMn/Ni比(IMN)との比(SMN/IMN)が1.3〜50であり、アルカリ度を示すpHが10.6〜11.5であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。
  5. 一般式:Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、MはAl、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、かつ、層状構造を有する六方晶系リチウム含有複合酸化物により構成されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる正極活物質の製造方法であって、請求項に記載の製造方法によって前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得る複合水酸化物粒子製造工程と、該ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を熱処理する熱処理工程と、前記熱処理後の粒子に対してリチウム化合物を混合してリチウム混合物を形成する混合工程と、該混合工程で形成された前記混合物を、酸化性雰囲気中800℃〜1000℃の温度で焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 前記焼成工程に際して、予め350℃〜800℃の温度で仮焼を行うことを特徴とする請求項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 正極が、請求項の非水系電解質二次電池用正極活物質によって形成されていることを特徴とする非水系電解質二次電池。
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