JP5708277B2 - ニッケルマンガン複合水酸化物粒子とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、ならびに非水系電解質二次電池 - Google Patents
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Description
一般式:NixMnyCozMt(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物であって、平均粒径が3〜11μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下であり、該ニッケルマンガン複合水酸化物は球状の二次粒子であって、二次粒子内部と外周部の組成が異なる多層構造となっており、前記外周部は、二次粒子の内部の組成よりMn/Ni比が高く、一般式:Ni x Mn y Co z M t (OH) 2+α (0≦x≦0.4、0.3≦y≦1.0、0≦z≦0.4、0≦t≦0.2、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物で構成され、該外周部の厚みが二次粒子径の5〜25%であることを特徴とする。
少なくともニッケルを含有する金属化合物およびマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃基準で、pH値が12.0〜14.0となるように制御して核生成を行う核生成工程と、
該核生成工程において形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃基準で、pH値が10.5〜12.0、かつ、核生成工程におけるpH値よりも低いpH値となるように制御して、前記核を成長させる粒子成長工程と、
を備えるとともに、晶析中の外周部形成期における水溶液の液体部に含まれる金属イオンの組成比を下記一般式における組成比として、その水溶液の液体部のMn/Ni比を、内部形成期における水溶液の液体部より高くし、水溶液の液体部のMn/Ni比の変更を、晶析中に供給される全金属元素量に対して10〜90mol%の金属元素量を供給した時に行うことを特徴とする。
一般式:Ni x Mn y Co z M t (OH) 2+α
(0≦x≦0.4、0.3≦y≦1.0、0≦z≦0.4、0≦t≦0.2、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)
本発明のニッケルマンガン複合水酸化物粒子(以下、単に本発明の複合水酸化物粒子という)は、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体であって、一般式:NixMnyCozMt(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物であって、平均粒径が3〜11μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下であり、該ニッケルマンガン複合水酸化物は球状の二次粒子であって、二次粒子内部と外周部の組成が異なる多層構造となっており、二次粒子の内部の組成より外周部の組成のMn/Ni比が高いことを特徴とするものである。
本発明の複合水酸化物粒子は、その組成が、上記一般式で表されるように調整される。このような組成を有するニッケルマンガン複合水酸化物を前駆体として、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を製造すれば、このリチウムニッケルマンガン複合酸化物を正極活物質とする電極を電池に用いた場合に、測定される正極抵抗の値を低くできるとともに、電池性能を良好なものとすることができる。
電池としたときの放電容量は、Mn/Ni比を低くするほど高容量となり性能が良くなる。一方、活物質のアルカリ度はMn/Ni比と関係があり、Mn/Ni比が高いとアルカリ度は低く、逆にMn/Ni比が低いとアルカリ度は高くなる。すなわち、電池の特性を上げつつ、アルカリ度を低減させるには、この背反する両者を成立させる必要がある。
本発明の複合水酸化物粒子は、その平均粒径が、3〜11μmであり、好ましくは3〜8μmに調整されている。平均粒径を3〜11μmとすることで、本発明の複合水酸化物粒子を原料として得られる正極活物質を所定の平均粒径(3〜12μm)に調整することができる。このように、複合水酸化物粒子の粒径は、得られる正極活物質の粒径と相関するため、この正極活物質を正極材料に用いた電池の特性に影響するものである。
本発明の複合水酸化物粒子は、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.55以下、好ましくは0.52以下となるように調整されている。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、二次粒子の内部と外周部の組成を変えることができればいかなる方法であっても良く、1)バッチ式の晶析による製法、2)連続式晶析法や噴霧乾燥法、噴霧熱分解法などで作製した二次粒子に晶析する方法、3)バッチ式の晶析による製法、連続式晶析法、噴霧乾燥法、噴霧熱分解法などで作製した二次粒子に機械的にコートする方法などがある。しかしながら、本発明の複合水酸化物粒子の粒径均一性を得るためには、バッチ方式の種晶法を用いることが最適であり、バッチ方式の種晶法による製造方法を以下で説明する。
図1に示すように、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、まず、ニッケルおよびマンガンを含有する複数の金属化合物を所定の割合で水に溶解させ、混合水溶液を作製する。本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、得られる複合水酸化物粒子における上記各金属の組成比は、混合水溶液における各金属の組成比と同様となる。
核生成工程の終了後、前記核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で、10.5〜12.0、好ましくは11.0〜12.0、かつ、核生成工程におけるpH値よりも低いpH値となるように調整して、粒子成長工程における反応水溶液である粒子成長用水溶液を得る。具体的には、この調整時のpHの制御は、アルカリ水溶液の供給量を調節することにより行う。
上述のように、核生成工程においては、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で12.0〜14.0、好ましくは12.3〜13.4の範囲となるように制御する必要がある。pH値が14.0を超える場合、生成する核が微細になり過ぎ、反応水溶液がゲル化する問題がある。また、pH値が12.0未満では、核形成とともに核の成長反応が生じるので、形成される核の粒度分布の範囲が広くなり不均質なものとなってしまう。すなわち、核生成工程において、上述の範囲に反応水溶液のpH値を制御することで、核の成長を抑制してほぼ核生成のみを起こすことができ、形成される核も均質かつ粒度分布の範囲が狭いものとすることができる。
核生成工程において生成する核の量は、特に限定されるものではないが、粒度分布の良好な複合水酸化物粒子を得るためには、全体量、つまり、複合水酸化物粒子を得るために供給する全金属塩の0.1%から2%とすることが好ましく、1.5%以下とすることがより好ましい。
上記複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程の時間により制御できるので、所望の粒径に成長するまで粒子成長工程を継続すれば、所望の粒径を有する複合水酸化物粒子を得ることができる。
複合水酸化物粒子の組成は、反応水溶液の液体部の組成比、すなわち混合水溶液中における各金属の組成比と同じになる。したがって、二次粒子の内部の組成より外周部の組成のMn/Ni比が高い多層構造を得るためには、晶析中の外周部形成期における水溶液の液体部のMn/Ni比を、内部形成期における水溶液の液体部より高くすればよい。すなわち、供給する混合水溶液中における各金属の組成比を、核生成から成長工程において金属元素を所定の合計量を供給するまでをMn/Ni比の比較的低い複合水酸化物粒の内部の組成比とし、所定の金属元素合計量の供給後は晶析終了までは比較的Mn/Ni比が高い外周部の組成比に変更することで上記多層構造が得られる。二次粒子の内部と外周部の体積比は、供給する金属元素の合計量に比例することから、容易に制御することができる。
上記水溶液の液体部のMn/Ni比の変更を、晶析中に供給される全金属元素量に対して10〜90mol%の金属元素量を供給した時に行うことが好ましい。これにより、前記外周部の厚みを、好ましい範囲である二次粒子径の1.5〜25%に制御することができる。
核生成工程においては、コバルト、マンガンの酸化を抑制して粒子を安定して生成させる観点から、反応槽内空間の酸素濃度を好ましくは10容量%以下、より好ましくは5容量%以下、さらに好ましくは1容量%以下に制御する必要がある。粒子成長工程でも酸化制御が重要であり、反応槽内空間の酸素濃度を同様に制御する必要がある。雰囲気中の酸素濃度は、たとえば、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いて調整することができる。雰囲気中の酸素濃度が所定の濃度となるように調節するための手段としては、たとえば、当該雰囲気中に常に一定量の雰囲気ガスを流通させることが挙げられる。
金属化合物としては、目的とする金属を含有する化合物を用いる。使用する化合物は、水溶性の化合物を用いることが好ましく、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などがあげられる。たとえば、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルトが好ましく用いられる。
添加元素(Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の元素)は、水溶性の化合物を用いることが好ましく、たとえば、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどを用いることができる。
混合水溶液の濃度は、金属化合物の合計で1〜2.6mol/L、好ましくは1.5〜2.2mol/Lとすることが好ましい。混合水溶液の濃度が1mol/L未満では、反応槽当たりの晶析物量が少なくなるために生産性が低下して好ましくない。
反応水溶液中のアンモニア濃度は、好ましくは3〜25g/L、好ましくは3〜20g/Lの範囲内で一定値に保持する。
反応槽内において、反応液の温度は、好ましくは20〜60℃以上、特に好ましくは35〜60℃に設定する。反応液の温度が20℃未満の場合、金属イオンの溶解度が低いため核発生が起こりやすく制御が難しくなる。一方、60℃を超えると、アンモニアの揮発が促進されるため、所定のアンモニア濃度を保つために、過剰のアンモニウムイオン供給体を添加しなければならならず、コスト高となる。
反応水溶液中のpHを調整するアルカリ水溶液については、特に限定されるものではなく、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。かかるアルカリ金属水酸化物の場合、直接、反応水溶液中に供給してもよいが、反応槽内における反応水溶液のpH制御の容易さから、水溶液として反応槽内の反応水溶液に添加することが好ましい。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、反応が完了するまで生成物を回収しない方式の装置を用いる。たとえば、撹拌機が設置された通常に用いられるバッチ反応槽などである。かかる装置を採用すると、一般的なオーバーフローによって生成物を回収する連続晶析装置のように、成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されるという問題が生じないため、粒度分布が狭く粒径の揃った粒子を得ることができる。
本発明の正極活物質は、一般式:Li1+uNixMnyCozMtO2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは添加元素であり、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子であって、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有するものである。
本発明の正極活物質は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子であるが、その組成
が、以下の一般式で表されるように調整されるものである。一般式:Li1+uNixMnyCozMtO2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、MはAl、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)
本発明の正極活物質においては、リチウムの過剰量を示すuが、−0.05から0.50までの範囲である。リチウムの過剰量uが−0.05未満の場合、得られた正極活物質を用いた非水系電解質二次電池における正極の反応抵抗が大きくなるため、電池の出力が低くなってしまう。また、アルカリ度が本発明の下限未満となってしまう。一方、リチウムの過剰量uが0.50を超える場合、上記正極活物質を電池の正極に用いた場合の初期放電容量が低下するとともに、正極の反応抵抗も増加してしまう。リチウムの過剰量uは、該反応抵抗をより低減させるためには0.05以上とすることが好ましく、0.20以下とすることが好ましい。
本発明の正極活物質は、平均粒径が3〜12μmであり、好ましくは3〜10μmである。平均粒径が3μm未満の場合には、タップ密度が低下して、正極を形成したときに粒子の充填密度が低下して、正極の容積あたりの電池容量が低下する。一方、平均粒径が12μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下して、電池の電解液との界面が減少することにより、正極の抵抗が上昇して電池の出力特性が低下する。
本発明の正極活物質は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、きわめて均質性が高いリチウムニッケルマンガン複合酸化物の二次粒子により構成される。
本発明の正極活物質は、アルカリ度を示すpHが10.6〜11.5である。アルカリ度は、正極活物質2gを25℃の水100ccに入れてスラリー化し、1分間撹拌した後、5分間静置したスラリーのpH値と定義される。
本発明の正極活物質の製造方法は、上記平均粒径、粒度分布、粒子構造および組成となるように正極活物質を製造できるのであれば、特に限定されないが、以下の方法を採用すれば、該正極活物質をより確実に製造できるので、好ましい。
熱処理工程は、上記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法で得たニッケルマンガン複合水酸化物粒子(以下、単に「複合水酸化物粒子」という)を105〜750℃、好ましくは105〜400℃の温度に加熱して熱処理する工程であり、複合水酸化物粒子に含有されている水分を除去している。この熱処理工程を行うことによって、粒子中に焼成工程まで残留している水分を一定量まで減少させることができる。これにより、得られる製造される正極活物質中の金属の原子数やリチウムの原子数の割合がばらつくことを防ぐことができる。
b)混合工程
混合工程は、上記熱処理工程において熱処理された複合水酸化物粒子(以下、「熱処理粒子」という)などと、リチウムを含有する物質、たとえば、リチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を得る工程である。
焼成工程は、上記混合工程で得られたリチウム混合物を焼成して、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を形成する工程である。焼成工程においてリチウム混合物を焼成すると、熱処理粒子に、リチウムを含有する物質中のリチウムが拡散するので、上記リチウムニッケルマンガン複合酸化物が形成される。
リチウム混合物の焼成は、800〜1000℃で、好ましくは820〜960℃、より好ましくは850〜940℃で行われる。
焼成温度が800℃未満であると、ニッケルマンガン複合酸化物粒子中へのリチウムの拡散が十分でなく、余剰のリチウムと未反応のニッケルマンガン複合酸化物が残ったり、あるいは結晶構造が十分整わなくなったりして、電池に用いられた場合に十分な電池特性が得られない。
(焼成時間)焼成時間のうち、所定温度での保持時間は、少なくとも1時間以上とすることが好ましく、より好ましくは、5〜15時間である。1時間未満では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の生成が十分に行われないことがある。
焼成工程では、特に、リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用した場合には、焼成する前に、焼成温度より低く、かつ、350〜800℃の温度に1〜10時間程度、好ましくは3〜6時間保持して仮焼し、引き続いて800〜1000℃で焼成することが好ましい。すなわち、水酸化リチウムや炭酸リチウムと熱処理粒子の反応温度において仮焼することが好ましい。この場合、水酸化リチウムや炭酸リチウムの上記反応温度付近で保持すれば、熱処理粒子へのリチウムの拡散が十分に行われ、均一なリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得ることができる。
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とするが、酸素濃度が18〜100容量%の雰囲気とすることが好ましく、上記酸素濃度の酸素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが特に好ましい。すなわち、大気〜酸素気流中で行なうことが好ましい。酸素濃度が18容量%未満であると、酸化が十分でなく、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の結晶性が十分でない場合がある。
焼成によって得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子は、凝集もしくは軽度の焼結が生じている場合がある。この場合には、解砕してもよく、これにより、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、つまり、本発明の正極活物質を得ることができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく二次粒子を分離させて、凝集体をほぐす操作のことである。
本発明の非水系電解質二次電池は、図4に示すように、(2)の非水系電解質二次電池用正極活物質を用いた正極を採用したものである。
本発明の非水系電解質二次電池(以下、単に本発明の二次電池という)は、正極の材料に本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、単に本発明の正極活物質という)を用いた以外は、一般的な非水系電解質二次電池と実質同等の構造を有している。
(正極)
前述のように得られた非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。
負極には、金属リチウムやリチウム合金など、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
本発明の二次電池は、上記のごとき構成であり、上述したような正極を使用しているので、150mAh/g以上の高い初期放電容量、低い正極抵抗が得られ、高容量で高出力となる。しかも、従来のリチウムコバルト系酸化物あるいはリチウムニッケル系酸化物の正極活物質との比較においても熱安定性が高く、安全性においても優れているといえる。
本発明の非水系電解質二次電池は、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。
また、本発明の方法によって製造した正極活物質を用いて製造した正極を有する二次電池について、その性能(初期放電容量、サイクル容量維持率、正極抵抗比)を確認した。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
複合水酸化物、正極活物質の平均粒径および粒度分布(〔(d90−d10)/平均粒径〕値)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した体積積算値から算出している。
また、X線回折測定(パナリティカル社製、X‘Pert PRO)により結晶構造も確認した。
また、得られた複合水酸化物および正極活物質の組成は、試料を溶解した後、ICP発光分光法により確認した。
得られた正極活物質2gを25℃の水100ccに入れ1分間撹拌後、5分間静置したときのpH値を測定し、アルカリ度を評価した。
得られた非水系電解質二次電池用正極活物質の評価は、以下のように電池を作製し、充放電容量を測定することで行なった。非水系電解質二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形し、図8に示す正極(評価用電極)(1)を作製した。作製した正極(1)を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。そして、この正極(1)を用いて2032型コイン電池(B)を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。負極(2)には、直径17mm、厚さ1mmのLi金属を用い、電解液には、1MのLiClO4を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータ(3)には膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン電池(B)は、ガスケット(4)を有し、正極缶(5)と負極缶(6)とでコイン状の電池に組み立てられている。
[複合水酸化物粒子製造工程]
複合水酸化物粒子は、本発明の方法を用いて、以下のように作成した。
まず、反応槽(34L)内に水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定し、反応槽に窒素ガスを流通させて非酸化性雰囲気とした。このときの反応槽内空間の酸素濃度は2.0%であった。
次に、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、タングステン酸ナトリウムを水に溶かして1.9mol/Lの混合水溶液を形成した。この混合水溶液では、各金属の元素モル比が、Ni:Mn:W=0.50:0.50:0.005となるように調整した。
上記混合水溶液を、反応槽内の反応液に88ml/分で加えた。同時に、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液も反応槽内の反応液に一定速度で加えていき、反応液中のアンモニア濃度を上記値に保持した状態で、液温25℃基準でpH値を12.6(核生成pH値)に制御しながら2分30秒間晶析を行って、核生成を行った。
その後、反応液のpH値が液温25℃基準で11.6(粒子成長pH値)になるまで、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給のみを一時停止した。
液温25℃を基準として測定するpH値として、反応液のpH値が液温25℃基準で11.6に到達した後、再度、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給を再開し、pH値を11.6に制御したまま、2時間晶析を継続し粒子成長を行った。
前記複合水酸化物粒子を大気雰囲気中700℃で12時間の熱処理をした後、Li/M=1.35となるように炭酸リチウムを秤量し、熱処理した複合水酸化物粒子と混合して混合物を形成した。混合は、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて行った。
得られたこの混合物を空気(酸素:21容量%)気流中にて760℃で4時間仮焼した後、900℃で10時間焼成し、さらに解砕して正極活物質を得た。
また、複合水酸化物粒子と同様の方法で正極活物質のSEM観察したところ、得られた正極活物質は、略球状であり、粒径がほぼ均一に揃っていることが確認された。
前記正極活物質を使用して形成された正極を有する二次電池について、充放電試験を行ったところ、表2に示すように、二次電池の初期放電容量は168.5mAh/gであった。また、正極抵抗比は、0.62であった。
混合水溶液の組成をNi:Co:Mn:Zr:W=0.55:0.22:0.22:0.005:0.005からNi:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005に変更したこと、焼成温度を850℃としたこと以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。晶析により得られた粒子は、Ni0.496 Mn 0.247 Co 0.247 Zr0.005W0.005(OH)2+α(0≦α≦0.5)で表される複合水酸化物粒子であった。また、得られた正極活物質は、化学分析によりLiが7.63重量%、Niが28.8重量%、Coが14.5重量%、Mnが13.5重量%、Zrが0.42重量%、Wが0.84重量%の組成でありLi1.1Ni0.50 Mn 0.25 Co 0.25 Zr0.005W0.005O2であることが確認された。
Li/M=1.05となるように混合したこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
Li/M=1.15となるように混合したこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
焼成条件を925℃で10時間としたこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
仮焼条件を400℃で10時間としたこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
仮焼をせず850℃、10時間で焼成したこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.66:0.165:0.165:0.005:0.005とした混合溶液で2時間晶析し、反応槽内が満液になったところで晶析を停止するとともに撹拌を止めて静置させ、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、供給する混合水溶液を各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005となるように調整した混合水溶液に切り替え、2時間晶析を継続した後(計4時間)、晶析を終了させたこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
混合水溶液中の金属元素のモル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.685:0.1525:0.1525:0.005:0.005となるように調整して2時間晶析を継続し粒子成長を行ったあと、反応槽内が満液になったところで晶析を停止するとともに撹拌を止めて静置させ、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、晶析を再開し、1.5時間晶析を行ったところで供給する混合水溶液を各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005となるように調整した混合水溶液に切り替え、0.5時間晶析を継続して複合水酸化物を得たこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
複合水酸化物製造工程において、金属元素がモル比でNi:Co:Mn:Zr:W=0.496:0.247:0.247:0.005:0.005となるように混合水溶液を調製して晶析終了まで供給し、組成を変更しなかった以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.518:0.236:0.236:0.005:0.005とした混合溶液で2時間晶析し、反応槽内が満液になったところで晶析を停止するとともに撹拌を止めて静置させ、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、晶析を再開し、1.75時間(全金属元素供給量に対する供給量:93.8mol%)晶析を行ったところで供給する混合水溶液を各金属の元素モル比が、Ni:Co:Mn:Zr:W=0.33:0.33:0.33:0.005:0.005となるように調整した混合水溶液に切り替え、0.25時間晶析して混合水酸化物を得た以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
複合水酸化物製造工程において、金属元素がモル比でNi:Co:Mn:Zr:W=0.594:0.198:0.198:0.005:0.005となるように混合水溶液を調製して晶析終了まで供給し、組成を変更しなかった以外は実施例9と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに評価した。
焼成条件を1050℃で10時間としたこと以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得とともに評価した。
Li/M=0.90とした以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得とともに評価した。
実施例1〜8の複合水酸化物粒子および正極活物質は、本発明に従った二次粒子内部の組成が傾斜した材料となっているため、アルカリ度が低く抑えられている。また、これらの正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、初期放電容量が高く、サイクル特性に優れ、正極抵抗も低いものとなっており、優れた特性を有した電池となっている。
比較例4および5は、正極活物質の製造工程が本発明に従わなかったため、良好な特性の正極活物質が得られず、これらの正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、正極抵抗が大きくなっており、初期放電容量が悪化している。
また、本発明の非水系電解質二次電池は、優れた安全性を有し、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける輸送用機器の電源として好適である。
Claims (7)
- 非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体であって、
一般式:NixMnyCozMt(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物であって、
平均粒径が3〜11μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.55以下であり、該ニッケルマンガン複合水酸化物は複数の一次粒子が凝集して形成された球状の二次粒子であって、二次粒子内部と外周部の組成が異なる多層構造となっており、
前記外周部は、二次粒子の内部の組成よりMn/Ni比が高く、一般式:Ni x Mn y Co z M t (OH) 2+α (0≦x≦0.4、0.3≦y≦1.0、0≦z≦0.4、0≦t≦0.2、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルマンガン複合水酸化物で構成され、該外周部の厚みが二次粒子径の5〜25%であることを特徴とするニッケルマンガン複合水酸化物粒子。 - 前記二次粒子は、前記添加元素が均一に分布、またはその表面を前記添加元素が均一に被覆していることを特徴とする請求項1に記載のニッケルマンガン複合水酸化物粒子。
- 晶析反応によって一般式:NixMnyCozMt(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体であるニッケルマンガン複合水酸化物粒子を製造する製造方法であって、
少なくともニッケルを含有する金属化合物およびマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃基準で、pH値が12.0〜14.0となるように制御して核生成を行う核生成工程と、
該核生成工程において形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃基準で、pH値が10.5〜12.0、かつ、核生成工程におけるpH値よりも低いpH値となるように制御して、前記核を成長させる粒子成長工程と、
を備えるとともに、晶析中の外周部形成期における水溶液の液体部に含まれる金属イオンの組成比を下記一般式における組成比として、その水溶液の液体部のMn/Ni比を、内部形成期における水溶液の液体部より高くし、水溶液の液体部のMn/Ni比の変更を、晶析中に供給される全金属元素量に対して10〜90mol%の金属元素量を供給した時に行うことを特徴とするニッケルマンガン複合水酸化物粒子の製造方法。
一般式:Ni x Mn y Co z M t (OH) 2+α
(0≦x≦0.4、0.3≦y≦1.0、0≦z≦0.4、0≦t≦0.2、x+y+z+t=1、0≦α≦0.5、Mは、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素) - 一般式:Li1+uNixMnyCozMtO2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、MはAl、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、かつ、層状構造を有する六方晶系リチウム含有複合酸化物により構成されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる正極活物質であって、平均粒径が3〜12μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、粒子の表層部のMn/Ni比(SMN)と内部のMn/Ni比(IMN)との比(SMN/IMN)が1.3〜50であり、アルカリ度を示すpHが10.6〜11.5であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 一般式:Li1+uNixMnyCozMtO2(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.7、0.1≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、MはAl、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、かつ、層状構造を有する六方晶系リチウム含有複合酸化物により構成されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる正極活物質の製造方法であって、請求項3に記載の製造方法によって前記ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を得る複合水酸化物粒子製造工程と、該ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を熱処理する熱処理工程と、前記熱処理後の粒子に対してリチウム化合物を混合してリチウム混合物を形成する混合工程と、該混合工程で形成された前記混合物を、酸化性雰囲気中800℃〜1000℃の温度で焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記焼成工程に際して、予め350℃〜800℃の温度で仮焼を行うことを特徴とする請求項5に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 正極が、請求項4の非水系電解質二次電池用正極活物質によって形成されていることを特徴とする非水系電解質二次電池。
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