本発明の一実施の形態による半導体装置及びその製造方法について図1乃至図58を用いて説明する。図1は、本実施の形態による半導体装置の第1の基本構成を示している。図2(a)は図1のA−A線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図2(b)は図1のB−B線で切断した半導体装置の断面構成を示している。図3(a)は図1のC−C線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図3(b)は図1のD−D線で切断した半導体装置の断面構成を示している。ここで、図1の左右方向にX軸をとり、右方向を+X方向とする。また、図1の上下方向にY軸をとり、上方向を+Y方向とする。A−A線及びB−B線はX軸に平行であり、C−C線及びD−D線はY軸に平行である。すなわち図2(a)、(b)に示す断面はY軸に垂直であり、図3(a)、(b)に示す断面はX軸に垂直である。本例の配線構造は、同一パターンの配線が4層にわたり重なって配置された最も単純な多層配線構造とした。
図1乃至図3に示すように、半導体装置は、MOSトランジスタ等の半導体素子が形成されたシリコン基板10を有している。シリコン基板10上の全面には、下地絶縁膜としてシリコン酸化膜(SiO2膜)11が形成されている。SiO2膜11上には、例えば互いに並列してX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜(第2の補強層)22bが形成されている。補強用絶縁膜22bの形成材料としては、例えばSiO2、SiOxCy、SiCx、SiNx、又はこれらの組合せが用いられる。またSiO2膜11上であって補強用絶縁膜22bの形成領域以外の領域には、補強用絶縁膜22bの形成材料より比誘電率が低く弾性係数(ヤング率)の小さい材料を用いて低誘電率膜12が形成されている。例えば補強用絶縁膜22bの形成材料としてSiO2を用いる場合には、SiO2より比誘電率が低く弾性係数の小さいSiOC等が低誘電率膜12の形成材料として用いられる。補強用絶縁膜22b及び低誘電率膜12は、互いにほぼ等しい膜厚を有している。低誘電率膜12上及び補強用絶縁膜22b上には、ハードマスク膜14が例えばSiCを用いて形成されている。ハードマスク膜14、低誘電率膜12及び補強用絶縁膜22bには、例えば互いに並列してY軸に平行に延びる複数の配線溝16が形成されている。複数の配線溝16の内壁面には、例えばタンタル(Ta)を用いてバリアメタル層18がそれぞれ形成されている。内壁面にバリアメタル層18が形成された配線溝16内には、1層目の配線20となる例えばCu層が埋め込まれている。ハードマスク膜14上及び配線20上の基板全面には、例えばSiCを用いてCuの拡散防止膜(キャップ膜)24が形成されている。
キャップ膜24上には、基板面に垂直に見て複数の配線20にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜(第1の補強層)42aと、基板面に垂直に見て複数の補強用絶縁膜22bにそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜(第2の補強層)42bとが形成されている。補強用絶縁膜42a、42bは例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。補強用絶縁膜42bの下層部は、補強用絶縁膜42aと同層に形成されている。キャップ膜24上であって補強用絶縁膜42a、42bの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜32が形成されている。補強用絶縁膜42a、42bの形成材料は、低誘電率膜32の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜32上及び補強用絶縁膜42b上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜34が形成されている。補強用絶縁膜42aの直
上には、複数の補強用絶縁膜42aにそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝36が形成されている。複数の配線溝36の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層38がそれぞれ形成されている。バリアメタル層38が形成された配線溝36内には、2層目の配線40となる例えばCu層が埋め込まれている。配線40は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜42aに重なって配置され、補強用絶縁膜42aとほぼ同一の平面形状を有している。ハードマスク膜34上及び配線40上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜44が形成されている。
キャップ膜44上には、基板面に垂直に見て複数の配線40にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜62aと、基板面に垂直に見て複数の補強用絶縁膜42bにそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜62bとが形成されている。補強用絶縁膜62a、62bは、例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。補強用絶縁膜62bの下層部は、補強用絶縁膜62aと同層に形成されている。キャップ膜44上であって補強用絶縁膜62a、62bの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜52が形成されている。補強用絶縁膜62a、62bの形成材料は、低誘電率膜52の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜52上及び補強用絶縁膜62b上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜54が形成されている。補強用絶縁膜62aの直上には、補強用絶縁膜62aに重なってY軸にほぼ平行にそれぞれ延びる複数の配線溝56が形成されている。複数の配線溝56の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層58がそれぞれ形成されている。バリアメタル層58が形成された配線溝56内には、3層目の配線60となる例えばCu層が埋め込まれている。配線60は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜62aに重なって配置され、補強用絶縁膜62aとほぼ同一の平面形状を有している。ハードマスク膜54上及び配線60上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜64が形成されている。
キャップ膜64上には、基板面に垂直に見て複数の配線60にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜82aと、基板面に垂直に見て複数の補強用絶縁膜62bにそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜82bとが形成されている。補強用絶縁膜82a、82bは、例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。補強用絶縁膜82bの下層部は、補強用絶縁膜82aと同層に形成されている。キャップ膜64上であって補強用絶縁膜82a、82bの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜72が形成されている。補強用絶縁膜82a、82bの形成材料は、低誘電率膜72の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜72上及び補強用絶縁膜82b上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜74が形成されている。補強用絶縁膜82aの直上には、補強用絶縁膜82aに重なってY軸にほぼ平行にそれぞれ延びる複数の配線溝76が形成されている。複数の配線溝76の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層78がそれぞれ形成されている。バリアメタル層78が形成された配線溝76内には、4層目の配線80となる例えばCu層が埋め込まれている。配線80は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜82aに重なって配置され、補強用絶縁膜82aとほぼ同一の平面形状を有している。ハードマスク膜74上及び配線80上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜84が形成されている。
キャップ膜84上には、基板面に垂直に見て配線80にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜102aと、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜82bにそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜102bとが形成されている。補強用絶縁膜102a、102bは、例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。補強用絶縁膜102a、102bは、互いに同層に形成されている。キャップ膜84上であって補強用絶縁膜102a、102bの形成領域以外の領域には
、低誘電率膜92が形成されている。
本実施の形態の第1の基本構成は、絶縁層として機能する低誘電率膜12、32、52、72、92と、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料より比誘電率が高く弾性係数の大きいSiO2等の誘電体材料を用いて形成され、絶縁層として機能するとともに半導体装置の機械的強度を補強する補強部として機能する補強用絶縁膜22b、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bとが設けられている点に特徴を有している。配線20、40、60、80のそれぞれ直下又はほぼ直上には、基板面に垂直に見て配線20、40、60、80に重なって配置された補強用絶縁膜42a、62a、82a、102aが形成されている。補強用絶縁膜42a、62a、82a、102aにそれぞれ同一面内で交差して、基板面に垂直に見て配線20、40、60、80に重ならないように配置された補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bが形成されている。補強用絶縁膜22b、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bの形成領域以外の配線20、40、60、80周囲には、低誘電率膜12、32、52、72、92が形成されている。
互いに重なって積層される補強用絶縁膜42a、62a、82a、102a、及び配線20、40、60、80は、所定間隔で配置された複数の第1の壁として機能する(図3(b)は第1の壁の壁面に平行な断面を示している)。第1の壁は、下層配線と上層配線とを接続するビア部を含むこともある。また、配線20、40、60、80の配置によっては、第1の壁が配線20、40、60、80のいずれか又は全てを含まないこともあり得る。
一方、互いに重なって積層される補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bは、第1の壁にほぼ直交して所定間隔で配置された複数の第2の壁として機能する(図2(b)は第2の壁の壁面に平行な断面を示している)。なお、補強用絶縁膜22bに代えて、配線20と同層に形成されたダミーの配線を配置してもよいし、また補強用絶縁膜42b、62b、82b上には、配線40、60、80と同層に形成されたダミーの配線を配置してもよい。この場合ダミーの配線は、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bとともに第2の壁として機能する。
第1及び第2の壁は、低誘電率膜12、32、52、72、92を含んでいない。第1及び第2の壁を構成する補強用絶縁膜22b、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bの形成材料であるSiO2等や、配線20、40、60、80の形成材料であるCu等は、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料であるSiOC等と比較して弾性係数が大きい。このため、互いにほぼ直交する第1及び第2の壁を構造体として設けることによって、半導体装置の機械的強度が高まる。
半導体装置の機械的強度は補強用絶縁膜22b、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102b及び配線20、40、60、80により確保されるため、低誘電率膜12、32、52、72、92には高い機械的強度が必要とされない。したがって、低誘電率膜12、32、52、72、92にはさらに弾性係数が小さく比誘電率の低い材料を用いることができる。また、低誘電率膜12、32、52、72、92の代わりに比誘電率のさらに低い空気層(空隙)を絶縁層として用いたいわゆるエアギャップ構造の半導体装置であっても、高い機械的強度が得られる。
さらに、弾性係数の相対的に大きいSiO2等の材料は、一般に低誘電率膜よりも熱伝導率が高い。したがって、SiO2を用いて形成された補強用絶縁膜22b、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bを設けることによって、Cu配線からの熱が比較的外部に伝わり易くなり、高い放熱効果が得られる。
ここで、本実施の形態の効果をより明確にするため、第1の基本構成の配線構造と以下に示す2つの比較例の配線構造とを比較する。
図4は、第1の基本構成に対する比較例1として、従来の半導体装置の構成を示している。図5は図4のA−A線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図6は図4のC−C線で切断した半導体装置の断面構成を示している。本実施の形態との比較を容易にするために、比較例1の配線パターンは、図1乃至図3に示した第1の基本構成と同様とした。図4乃至図6に示すように、比較例1の半導体装置は、補強用絶縁膜22b、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bが設けられず、層間絶縁膜及び最上層の絶縁膜が低誘電率膜12、32、52、72、92のみからなる点で第1の基本構成と異なっている。
図7は、第1の基本構成に対する比較例2として、本願出願人による日本国特許出願(特願2003−47768号;以下「特許出願1」という)に提案されているような半導体装置の構成を示している。図8は、図7のA−A線で切断した半導体装置の断面構成を示している。比較例2の配線パターンも第1の基本構成と同様とした。ここで、特許出願1に提案された半導体装置は、低誘電率膜導入に伴う機械的強度の低下を抑制するために、例えばCuを用いて形成された補強用のダミースタックビアが配置された構造を有している。この構造において垂直応力に対する十分な機械的強度を持たせるためには、ダミースタックビアを例えば約15%以上の面積比で設置する必要がある。このため、設計の自由度は必ずしも高くない。
図7及び図8に示すように、比較例2では、比較例1と同様の構成に加えて、4層のビア部88が重ねられたダミースタックビア86が複数形成されている。各層のビア部88は、内壁面にバリアメタル層の形成されたビアホール内にCu層が埋め込まれて形成されている。ダミースタックビア86は、半導体装置の機械的強度を高めるために設けられている。複数のダミースタックビア86の断面積の総和は、第1の基本構成の第2の壁(補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102b)の断面積の総和とほぼ同じとした。
本実施の形態の第1の基本構成と比較例1及び2とについて、外力が加えられたときに生じる応力や変位量を検証した。応力や変位量は、有限要素法を用いた数値シミュレーションによって求めた。有限要素法では、モデルの境界を対称境界条件とすることにより計算サイズを小さくする手法がとられる。そのため、各構造の平面図(図1、図4、図7)において中央部の一点鎖線で囲まれた範囲だけをモデル化して計算すればよい。計算モデルのサイズを0.98μm□(角)とし、配線20、40、60、80及び補強用絶縁膜22b、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bの幅を最小配線幅に等しい0.14μmとし、ピッチを0.98μmとした。ここでピッチとは、隣り合う配線(又は補強用絶縁膜)の中心軸間の距離のことである。また配線20、40、60、80の高さを0.25μmとし、補強用絶縁膜42a、62a、82a、102a(ビア層)の高さを0.3μmとした。低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料の弾性係数は2.25GPaとし、ポアソン比は0.25とした。この弾性係数及びポアソン比の値は、一般に市販されている典型的な低誘電率膜材料の物性値である。補強用絶縁膜22b、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bの形成材料の弾性係数は70GPaとし、ポアソン比は0.17とした。この弾性係数及びポアソン比の値は、一般的なSiO2の物性値である。
配線構造に対し、基板面内方向である+X方向及び+Y方向のそれぞれに単位荷重を加えた場合と、垂直方向に単位荷重を加えた場合とにおける変位量を計算した。ここで基板
面内方向の荷重は、CMP法を用いた研磨工程を想定して配線構造の最上層部に対して加えられるものとした。図9乃至図11は、+X方向(図中太矢印で示す)に荷重を加えた場合の計算モデルの変形の様子を示している。図9は本実施の形態の第1の基本構成の計算モデルの変形の様子を示し、図10は比較例1の計算モデルの変形の様子を示し、図11は比較例2の計算モデルの変形の様子を示している。図9乃至図11では理解を容易にするために、変位量に対してそれぞれ同じ係数を乗じて変形を大きく見せている。図12は、荷重を加えていない状態での比較例2の計算モデルについて、ダミースタックビア86の配置が分かり易いように低誘電率膜を除いて示している。
+X方向に単位荷重を加えた場合の最上層部の変位量を比較すると、図9乃至図12に示すように、第1の基本構成の計算モデルの変位量は比較例1及び2の計算モデルの変位量より明らかに小さいことが分かる。
ここで、ICパッケージに接着されたチップ状のウエハが熱膨張や熱収縮によって反るような場合を想定すると、計算モデルの側面に対して基板面内方向の荷重(引張り荷重又は圧縮荷重)が加えられることになる。これに対し上記の計算では、単純化のために基板面内方向の荷重を配線構造の最上層部に対して加えているため、このようなウエハの熱変形について厳密に解析していることにはならない。しかしながら、荷重が加えられる方向は同じ基板面内方向であるので、熱変形に対する構造の影響も上記の計算結果と同様の傾向を示すと考えてよい。すなわち、本実施の形態の第1の基本構成では、比較例1及び2に比較して熱変形が生じ難いと考えられる。
図13は、各計算モデルに対して基板面内方向(+X方向及び+Y方向)と垂直方向とにそれぞれ単位荷重を加えた場合の変位量の計算結果を示すグラフである。グラフの縦軸は変位量の相対値を表し、比較例1の基板面内方向(+X方向)の変位量と垂直方向の変位量をそれぞれ1としている。図13に示すように、垂直方向に荷重を加えた場合における第1の基本構成の垂直方向の変位量は、比較例1に比べて著しく減少していることが分かる。また、比較例2の垂直方向の変位量も第1の基本構成と同程度に減少している。一方、基板面内方向に荷重を加えた場合には、第1の基本構成の基板面内方向の変位量が比較例1の2割程度にまで減少するのに対し、比較例2の基板面内方向の変位量は比較例1の7割程度である。このように比較例2の構成では、垂直方向の荷重に対する耐性が高いものの、基板面内方向の荷重に対する耐性はさほど高くない。これは、ダミースタックビア86が基板面内方向に広がった補強ではないので、基板面内方向の荷重に対してそれほど効果がないためである。これに対して本実施の形態の第1の基本構成では、それぞれ基板面内方向に延びて互いにほぼ垂直に交差する第1及び第2の壁が設けられていることによって、垂直方向の荷重に対する耐性が高いだけでなく基板面内方向の荷重に対する耐性も高い。以上のように、本実施の形態の第1の基本構成では、荷重の加えられる方向によらず高い機械的強度が得られることが分かった。
図14は、本実施の形態による半導体装置の第2の基本構成を示している。図15(a)は図14のA−A線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図15(b)は図14のB−B線で切断した半導体装置の断面構成を示している。図16(a)は図14のC−C線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図16(b)は図14のD−D線で切断した半導体装置の断面構成を示している。第2の基本構成は、互いにほぼ垂直に延びる配線同士が同一面内で交差する配線構造を有している。
図14乃至図16に示すように、シリコン基板10上の全面には、SiO2膜11が形成されている。SiO2膜11上には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜12が形成されている。低誘電率膜12上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜14が形成されている。ハードマスク膜14及び低誘電率膜12には、互いに並列してY軸にほぼ平行に
延びる複数の配線溝16、及び互いに並列してX軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝17が形成されている。複数の配線溝16、17の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層18、19がそれぞれ形成されている。バリアメタル層18が形成された配線溝16内には、1層目の配線20となる例えばCu層が埋め込まれている。同様に、バリアメタル層19が形成された配線溝17内には、配線21となる例えばCu層が埋め込まれている。配線20、21は、同一面内で互いに交差してメッシュ状の配線を構成する。ハードマスク膜14上及び配線20、21上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜24が形成されている。
キャップ膜24上には、基板面に垂直に見て配線20にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜42aと、基板面に垂直に見て配線21にそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜42bとが形成されている。補強用絶縁膜42a、42bは例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。キャップ膜24上であって補強用絶縁膜42a、42bの形成領域以外の領域には、低誘電率膜32が例えばSiOCを用いて形成されている。補強用絶縁膜42a、42bの形成材料は、低誘電率膜32の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜32上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜34が形成されている。補強用絶縁膜42aの直上には、補強用絶縁膜42aにそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝36が形成されている。また補強用絶縁膜42bの直上には、補強用絶縁膜42bにそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝37が形成されている。複数の配線溝36、37の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層38、39がそれぞれ形成されている。バリアメタル層38が形成された配線溝36内には、2層目の配線40となる例えばCu層が埋め込まれている。同様に、バリアメタル層39が形成された配線溝37内には、配線41となる例えばCu層が埋め込まれている。配線40は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜42a及び配線20に重なって配置され、補強用絶縁膜42a及び配線20とほぼ同一の平面形状を有している。また配線41は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜42b及び配線21に重なって配置され、補強用絶縁膜42b及び配線21とほぼ同一の平面形状を有している。配線40、41は、同一面内で互いに交差してメッシュ状の配線を構成する。ハードマスク膜34上及び配線40、41上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜44が形成されている。
キャップ膜44上には、基板面に垂直に見て配線40にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜62aと、基板面に垂直に見て配線41にそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜62bとが形成されている。補強用絶縁膜62a、62bは例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。キャップ膜44上であって補強用絶縁膜62a、62bの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜52が形成されている。補強用絶縁膜62a、62bの形成材料は、低誘電率膜52の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜52上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜54が形成されている。補強用絶縁膜62aの直上には、補強用絶縁膜62aにそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝56が形成されている。また補強用絶縁膜62bの直上には、補強用絶縁膜62bにそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝57が形成されている。複数の配線溝56、57の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層58、59がそれぞれ形成されている。バリアメタル層58が形成された配線溝56内には、3層目の配線60となる例えばCu層が埋め込まれている。同様に、バリアメタル層59が形成された配線溝57内には、配線61となる例えばCu層が埋め込まれている。配線60は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜62a及び配線40に重なって配置され、補強用絶縁膜62a及び配線40とほぼ同一の平面形状を有している。また配線61は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜62b及び配線41に重なって配置され、補強用絶縁膜62b及び配線41とほぼ同一の平面形状を有している。配線60、61は、同一面内で互いに交差してメ
ッシュ状の配線を構成する。ハードマスク膜54上及び配線60、61上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜64が形成されている。
キャップ膜64上には、基板面に垂直に見て配線60にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜82aと、基板面に垂直に見て配線61にそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜82bとが形成されている。補強用絶縁膜82a、82bは例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。キャップ膜64上であって補強用絶縁膜82a、82bの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜72が形成されている。補強用絶縁膜82a、82bの形成材料は、低誘電率膜72の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜72上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜74が形成されている。補強用絶縁膜82aの直上には、補強用絶縁膜82aにそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝76が形成されている。また補強用絶縁膜82bの直上には、補強用絶縁膜82bにそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝77が形成されている。複数の配線溝76、77の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層78、79がそれぞれ形成されている。バリアメタル層78が形成された配線溝76内には、4層目の配線80となる例えばCu層が埋め込まれている。同様に、バリアメタル層79が形成された配線溝77内には、配線81となる例えばCu層が埋め込まれている。配線80は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜82a及び配線60に重なって配置され、補強用絶縁膜82a及び配線60とほぼ同一の平面形状を有している。また配線81は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜82b及び配線61に重なって配置され、補強用絶縁膜82b及び配線61とほぼ同一の平面形状を有している。配線80、81は、同一面内で互いに交差してメッシュ状の配線を構成する。ハードマスク膜74上及び配線80、81上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜84が形成されている。
キャップ膜84上には、基板面に垂直に見て配線80にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜102aと、基板面に垂直に見て配線81にそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜102bとが形成されている。補強用絶縁膜102a、102bは、例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。キャップ膜84上であって補強用絶縁膜102a、102bの形成領域以外の領域には、低誘電率膜92が形成されている。
第2の基本構成では、各層の配線20、21、40、41、60、61、80、81のそれぞれ直下又はほぼ直上には、配線とほぼ同一幅の補強用絶縁膜42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bが形成されている。このうち補強用絶縁膜42a、62a、82a、102aは、配線20、40、60、80とともに、所定間隔で配置された複数の第1の壁として機能する(図16(b)は第1の壁の壁面に平行な断面を示している)。また補強用絶縁膜42b、62b、82b、102bは、配線21、41、61、81とともに、第1の壁にほぼ直交して所定間隔で配置された複数の第2の壁として機能する(図15(b)は第2の壁の壁面に平行な断面を示している)。第1及び第2の壁は、低誘電率膜12、32、52、72、92を含んでいない。補強用絶縁膜42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bの形成材料であるSiO2等、及び配線20、21、40、41、60、61、80、81の形成材料であるCu等は、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料であるSiOC等と比較して弾性係数が大きい。このため、互いにほぼ直交する第1及び第2の壁を構造体として設けることによって、半導体装置の機械的強度が高まる。
図17は、第2の基本構成に対する比較例3の半導体装置の構成を示している。図18(a)は図17のA−A線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図18(b)は図17のB−B線で切断した半導体装置の断面構成を示している。図19(a)は図17のC
−C線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図19(b)は図17のD−D線で切断した半導体装置の断面構成を示している。本実施の形態との比較を容易にするために、比較例3の配線パターンは、図14乃至図16に示した第2の基本構成と同様とした。図17乃至図19に示すように、比較例3の半導体装置は、補強用絶縁膜42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bが設けられず、層間絶縁膜及び最上層の絶縁膜が低誘電率膜12、32、52、72、92のみからなる点で第2の基本構成と異なっている。
図20は、第2の基本構成及び比較例3の計算モデルに対して基板面内方向及び垂直方向に荷重を加えた場合の変位量の計算結果を示すグラフである。グラフの縦軸は変位量の相対値を表し、上記の比較例1の基板面内方向(+X方向)の変位量と垂直方向の変位量をそれぞれ1としている(図13参照)。図20に示すように、第2の基本構成では、基板面内方向及び垂直方向のいずれに荷重が加えられても、比較例1や比較例3より変位量が大幅に低減されることが分かる。
図21は、本実施の形態による半導体装置の第3の基本構成を示している。図22(a)は図21のA−A線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図22(b)は図21のB−B線で切断した半導体装置の断面構成を示している。図23(a)は図21のC−C線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図23(b)は図21のD−D線で切断した半導体装置の断面構成を示している。第3の基本構成では、互いにほぼ垂直に延びる配線が層毎に交互に配置され、1層目及び3層目の配線はX軸にほぼ平行に延び、2層目及び4層目の配線はY軸にほぼ平行に延びている。互いにほぼ垂直に延びる配線同士は絶縁膜を介して交差している。また、各配線直下に配置された補強用絶縁膜と、同一面内で配線にほぼ直交する補強用絶縁膜とが格子状に形成されている。
図21乃至図23に示すように、シリコン基板10上の全面には、SiO2膜11が形成されている。SiO2膜11上には、互いに並列してY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜22aが形成されている。補強用絶縁膜22aは、例えばSiO2等を用いて形成される。SiO2膜11上であって補強用絶縁膜22aの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜12が形成されている。補強用絶縁膜22aの形成材料は、低誘電率膜12の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。補強用絶縁膜22a上及び低誘電率膜12上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜14が形成されている。ハードマスク膜14、低誘電率膜12及び補強用絶縁膜22aには、互いに並列してX軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝17が形成されている。複数の配線溝17の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層19がそれぞれ形成されている。バリアメタル層19が形成された配線溝17内には、1層目の配線21となる例えばCu層が埋め込まれている。ハードマスク膜14上及び配線21上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜24が形成されている。
キャップ膜24上には、基板面に垂直に見て複数の補強用絶縁膜22aにそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜42aと、基板面に垂直に見て複数の配線21にそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜42bとが形成されている。補強用絶縁膜42a、42bは、例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。キャップ膜24上であって補強用絶縁膜42a、42bの形成領域以外の領域には、低誘電率膜32が例えばSiOCを用いて形成されている。補強用絶縁膜42a、42bの形成材料は、低誘電率膜32の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜32上及び補強用絶縁膜42b上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜34が形成されている。補強用絶縁膜42aの直上には、補強用絶縁膜42aに重なってY軸にほぼ平行にそれぞれ延びる複数の配線溝36が形成されている。複数の配線溝36の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層38がそれぞれ形成さ
れている。バリアメタル層38が形成された配線溝36内には、2層目の配線40となる例えばCu層が埋め込まれている。配線40は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜42aに重なって配置され、補強用絶縁膜42aとほぼ同一の平面形状を有している。また配線40は、補強用絶縁膜42a及びキャップ膜24を介して1層目の配線21と交差している。ハードマスク膜34上及び配線40上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜44が形成されている。
キャップ膜44上には、基板面に垂直に見て複数の配線40にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜62aと、基板面に垂直に見て複数の補強用絶縁膜42bにそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜62bとが形成されている。補強用絶縁膜62a、62bは、例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。キャップ膜44上であって補強用絶縁膜62a、62bの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜52が形成されている。補強用絶縁膜62a、62bの形成材料は、低誘電率膜52の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜52上及び補強用絶縁膜62a上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜54が形成されている。補強用絶縁膜62bの直上には、補強用絶縁膜62bに重なってX軸にほぼ平行にそれぞれ延びる複数の配線溝57が形成されている。複数の配線溝57の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層59がそれぞれ形成されている。バリアメタル層59が形成された配線溝57内には、3層目の配線61となる例えばCu層が埋め込まれている。配線61は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜62bに重なって配置され、補強用絶縁膜62bとほぼ同一の平面形状を有している。また配線61は、補強用絶縁膜62b及びキャップ膜44を介して2層目の配線40と交差している。ハードマスク膜54上及び配線61上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜64が形成されている。
キャップ膜64上には、基板面に垂直に見て複数の補強用絶縁膜62aにそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜82aと、基板面に垂直に見て複数の配線61にそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜82bとが形成されている。補強用絶縁膜82a、82bは、例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。キャップ膜64上であって補強用絶縁膜82a、82bの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜72が形成されている。補強用絶縁膜82a、82bの形成材料は、低誘電率膜72の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜72上及び補強用絶縁膜82b上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜74が形成されている。補強用絶縁膜82aの直上には、補強用絶縁膜82aに重なってY軸にほぼ平行にそれぞれ延びる複数の配線溝76が形成されている。複数の配線溝76の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層78がそれぞれ形成されている。バリアメタル層78が形成された配線溝76内には、4層目の配線80となる例えばCu層が埋め込まれている。配線80は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜82aに重なって配置され、補強用絶縁膜82aとほぼ同一の平面形状を有している。また配線80は、補強用絶縁膜82a及びキャップ膜64を介して3層目の配線61と交差している。ハードマスク膜74上及び配線80上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜84が形成されている。
キャップ膜84上には、基板面に垂直に見て複数の配線80にそれぞれ重なってY軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜102aと、基板面に垂直に見て複数の補強用絶縁膜82bにそれぞれ重なってX軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜102bとが形成されている。補強用絶縁膜102a、102bは、例えばSiO2等を用いて形成され、同一面内で互いに交差している。キャップ膜84上であって補強用絶縁膜102a、102bの形成領域以外の領域には、低誘電率膜92が形成されている。
第3の基本構成では、配線40、61、80のそれぞれ直下又はほぼ直上には、配線とほぼ同一幅の補強用絶縁膜42a、62b、82a、102aが形成されている。また、配線21、40、61、80にそれぞれ同一面内でほぼ直交して補強用絶縁膜22a、42b、62a、82bが形成されている。配線21、61及び補強用絶縁膜42b、82b、102bは、所定間隔で配置された複数の第1の壁として機能する(図22(b)は第1の壁の壁面に平行な断面を示している)。また配線40、80及び補強用絶縁膜22a、62aは、第1の壁にほぼ直交して所定間隔で配置された複数の第2の壁として機能する(図23(b)は第2の壁の壁面に平行な断面を示している)。補強用絶縁膜22a、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102aの形成材料であるSiO2等、及び配線21、40、61、80の形成材料であるCu等は、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料であるSiOC等と比較して弾性係数が大きい。このため、互いにほぼ直交する第1及び第2の壁を構造体として設けることによって、半導体装置の機械的強度が高まる。
図24は、本実施の形態による半導体装置の第4の基本構成を示している。図25(a)は図24のA−A線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図25(b)は図24のB−B線で切断した半導体装置の断面構成を示している。図26(a)は図24のC−C線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図26(b)は図24のD−D線で切断した半導体装置の断面構成を示している。第4の基本構成は、第3の基本構成と同様に、互いにほぼ垂直に延びる配線同士が絶縁膜を介して交差する配線構造を有している。ただし第4の基本構成では、補強用絶縁膜が各配線直下にのみ形成されている。
図24乃至図26に示すように、シリコン基板10上の全面には、SiO2膜11が形成されている。SiO2膜11上には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜12が形成されている。低誘電率膜12上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜14が形成されている。ハードマスク膜14及び低誘電率膜12には、互いに並列してX軸にほぼ平行に延びる複数の配線溝17が形成されている。複数の配線溝17の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層19がそれぞれ形成されている。バリアメタル層19が形成された配線溝17内には、1層目の配線21となる例えばCu層が埋め込まれている。ハードマスク膜14上及び配線21上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜24が形成されている。
キャップ膜24上には、Y軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜42aが形成されている。補強用絶縁膜42aは、例えばSiO2等を用いて形成される。キャップ膜24上であって補強用絶縁膜42aの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜32が形成されている。補強用絶縁膜42aの形成材料は、低誘電率膜32の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜32上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜34が形成されている。補強用絶縁膜42a上には、補強用絶縁膜42aに重なってY軸にほぼ平行にそれぞれ延びる複数の配線溝36が形成されている。複数の配線溝36の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層38がそれぞれ形成されている。バリアメタル層38が形成された配線溝36内には、2層目の配線40となる例えばCu層が埋め込まれている。配線40は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜42aに重なって配置され、補強用絶縁膜42aとほぼ同一の平面形状を有している。また配線40は、補強用絶縁膜42a及びキャップ膜24を介して1層目の配線21と交差している。ハードマスク膜34上及び配線40上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜44が形成されている。
キャップ膜44上には、X軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜62bが形成されている。補強用絶縁膜62bは、例えばSiO2等を用いて形成される。キャップ膜44上であって補強用絶縁膜62bの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘
電率膜52が形成されている。補強用絶縁膜62bの形成材料は、低誘電率膜52の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜52上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜54が形成されている。補強用絶縁膜62b上には、補強用絶縁膜62bに重なってX軸にほぼ平行にそれぞれ延びる複数の配線溝57が形成されている。複数の配線溝57の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層59がそれぞれ形成されている。バリアメタル層59が形成された配線溝57内には、3層目の配線61となる例えばCu層が埋め込まれている。配線61は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜62bに重なって配置され、補強用絶縁膜62bとほぼ同一の平面形状を有している。また配線61は、補強用絶縁膜62b及びキャップ膜44を介して2層目の配線40と交差している。ハードマスク膜54上及び配線61上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜64が形成されている。
キャップ膜64上には、Y軸にほぼ平行に延びる複数の補強用絶縁膜82aが形成されている。補強用絶縁膜82aは、例えばSiO2等を用いて形成される。キャップ膜64上であって補強用絶縁膜82aの形成領域以外の領域には、例えばSiOCを用いて低誘電率膜72が形成されている。補強用絶縁膜82aの形成材料は、低誘電率膜72の形成材料より比誘電率が高く弾性係数が大きい。低誘電率膜72上には、例えばSiCを用いてハードマスク膜74が形成されている。補強用絶縁膜82a上には、補強用絶縁膜82aに重なってY軸にほぼ平行にそれぞれ延びる複数の配線溝76が形成されている。複数の配線溝76の内壁面には、例えばTaを用いてバリアメタル層78がそれぞれ形成されている。バリアメタル層78が形成された配線溝76内には、4層目の配線80となる例えばCu層が埋め込まれている。配線80は、基板面に垂直に見て補強用絶縁膜82aに重なって配置され、補強用絶縁膜82aとほぼ同一の平面形状を有している。また配線80は、補強用絶縁膜82a及びキャップ膜64を介して3層目の配線61と交差している。ハードマスク膜74上及び配線80上の基板全面には、例えばSiCを用いてキャップ膜84が形成されている。キャップ膜84上の全面には、低誘電率膜92が形成されている。
図27は、第3及び第4の基本構成に対する比較例4の半導体装置の構成を示している。図28(a)は図27のA−A線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図28(b)は図27のB−B線で切断した半導体装置の断面構成を示している。図29(a)は図27のC−C線で切断した半導体装置の断面構成を示し、図29(b)は図27のD−D線で切断した半導体装置の断面構成を示している。本実施の形態との比較を容易にするために、比較例4の配線パターンは第3及び第4の基本構成と同様とした。図27乃至図29に示すように、比較例4の半導体装置は、補強用絶縁膜22a、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bが設けられず、層間絶縁膜及び最上層の絶縁膜が低誘電率膜12、32、52、72、92のみからなる点で第3及び第4の基本構成と異なっている。
図30は、第3及び第4の基本構成並びに比較例4の計算モデルに対して基板面内方向及び垂直方向に荷重を加えた場合の変位量の計算結果を示すグラフである。グラフの縦軸は変位量の相対値を表し、上記の比較例1の基板面内方向(+X方向)の変位量と垂直方向の変位量をそれぞれ1としている(図13参照)。図30に示すように、第3の基本構成では、互いにほぼ直交する第1及び第2の壁が構造体として設けられているため、基板面内方向及び垂直方向のいずれに荷重が加えられても変位量が比較例4より大幅に低減されることが分かる。一方、第4の基本構成では、変位量が比較例4より低減されるものの、第3の基本構成と比較すると低減効果がやや小さいことが分かる。これは、第4の基本構成では各配線21、40、61、80に同一面内で直交する補強用絶縁膜が形成されず、配線40、61、80直下の補強用絶縁膜42a、62b、82aのみが形成されているため、構造体が完全な壁状にならないからである。ただし、第4の基本構成では、後述
するように配線40、61、80(配線溝36、57、76)と補強用絶縁膜42a、62b、82aとを同一のフォトマスクを用いて形成できるため、第3の基本構成よりも製造工程が簡略化する。
以上説明した本実施の形態の第1乃至第4の基本構成によれば、基板面内方向及び垂直方向のいずれに荷重が加えられても変位量が大幅に低減され、高い機械的強度が得られる。図7及び図8に示した比較例2の構成では、垂直方向の荷重に対する機械的強度を確保するために多数のダミースタックビア86(全領域に対する面積比約15%以上)を配置する必要があるため、設計の自由度が必ずしも高くない。これに対し、一般的な半導体装置では、第2の基本構成のように配線同士が同一面内で交差するか、あるいは第3及び第4の基本構成のように配線同士が絶縁膜を介して交差することが多い。このため配線密度の高い領域では、第1の基本構成のような配線に重ならない補強用絶縁膜22b、42b、62b、82bをあえて配置する必要はない。したがって本実施の形態では、設計の自由度が比較的高い。
本実施の形態の第1の基本構成を用い、配線20、40、60、80に同一面内で直交してX軸に平行に配置された補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの配置密度を変化させたときに、X方向の荷重に対する変位量がどのように変化するかを調べた。図31は、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bのピッチを0.5μmから3μmまで変化させたときのX方向の荷重に対する変位量の変化を示すグラフである。グラフの横軸は補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bのピッチ(μm)を表している。縦軸はX方向の変位量の相対値を表し、ピッチが0.98μmのとき(図13に示した計算結果の条件と同じ)の変位量を1としている。なお配線20、40、60、80のピッチは固定とした。図31に示すように、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bのピッチがおよそ1.5μm以下であれば変位量の低減効果が大きいが、ピッチが1.5μmを越えると低減効果は比較的小さくなる。この計算結果は、計算モデルのスケールには依存しない。すなわち、例えば全体のサイズが10倍になっても計算自体は同一であり、変位量も同一である。LSIの構造は世代が変わっても、垂直方向、基板面内方向ともに最小配線幅を基準にスケーリングされている。これは、ITRSが最小配線ピッチ及び最小配線幅で規定されていることからも分かる。そのため、上記の計算結果から補強用絶縁膜を配置する場合の目安として、補強用絶縁膜のピッチを最小配線幅(0.14μm)の概ね10倍以下にするのが効果的であるということが分かる。
図32は、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの幅を変化させたときのX方向の荷重に対する変位量の変化を示すグラフである。グラフの横軸は補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの幅(μm)を表している。縦軸はX方向の変位量の相対値を表し、間隔が0.14μmのとき(図13に示した計算結果の条件と同じ)の変位量を1としている。図32に示すように、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの幅が太いほど構造体として機械的に強固になるので、荷重に対する耐性が向上する。ただし、幅があまり太いと設計上の制約が増え、また配線間容量を増大させることになる。図32から分かるように、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの幅を0.14μmから0.2μmに太くしたときの変位量の低減効果はかなり大きいが、幅を0.2μmより太くしたときの変位量の低減効果はやや小さくなる。このため、補強用絶縁膜の幅を最小配線幅(0.14μm)の概ね1.5倍以上にするのが効果的であり、最小配線幅の1.5倍程度にするのがより好ましいことが分かる。
これらに基づき、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの配置位置を決定する際には、まず隣り合う配線20、40、60、80間(隣り合う補強用絶縁膜
22a、42a、62a、82a、102a間)のほぼ中央に、配線20、40、60、80にほぼ平行に並列するように挿入する。挿入した補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bと配線20、40、60、80との間のピッチが広い場合にはさらに挿入数を増やす。これを繰り返して上記のような規則に基づいて補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bを適度なピッチ及び幅で挿入する。同様に、配線20、40、60、80に直交する補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bも適度なピッチ及び幅で配置する。また、配線20、40、60、80やそれに重なる補強用絶縁膜42a、62a、82a、102aについては、各配線層に応じた規格に基づいて適度な幅で配置する。ボンデイングパッドやボールグリッドに重なる領域では、組立て工程において加えられる荷重が大きいため、荷重に応じた比較的高い配置密度で補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bを積層して配置するのが望ましい。
第1の基本構成では、配線20、40、60、80に重ならない第2の補強層として、SiO2を用いて形成された補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bが用いられている。ところが第2の補強層は、低誘電率膜12、32、52、72、92よりも機械的に強固であれば必ずしもSiO2膜が用いられる必要はない。そこで、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの形成材料の弾性係数を変えたときに、荷重に対する変位量がどのように変化するかを計算した。図33は、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの形成材料の弾性係数を変化させたときのX方向の荷重に対する変位量の変化を示すグラフである。グラフの横軸は補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの形成材料の弾性係数(GPa)を表している。縦軸はX方向の変位量の相対値を表し、SiO2膜(弾性係数70GPa)を用いたときの変位量を1としている。図33に示すように、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの形成材料の弾性係数が小さくなるほど荷重に対する歪みが大きくなり、変位量の低減効果が小さくなることが分かる。図13に示した比較例1の変位量の半分程度に変位量を抑えるものとすると、変位量の相対値をおよそ2以下にすればよいため、補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b、102bの形成材料の弾性係数は概ね30GPa以上である必要があると考えることができる。
さらに第1の基本構成では、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料の弾性係数を2.25GPaとした。そこで、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料の弾性係数を変えたときに、荷重に対する変位量がどのように変化するかを計算した。図34は、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料の弾性係数を変化させたときのX方向の荷重に対する変位量の変化を示すグラフである。グラフの横軸は低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料の弾性係数(GPa)を表している。縦軸はX方向の変位量の相対値を表し、典型的な低誘電率膜材料(弾性係数2.25GPa)を用いたときの変位量を1としている。ここで補強用絶縁膜としてはSiO2膜を用い、配線構造などは図1乃至図3に示した構成と同一である。
図34に示すように、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料の弾性係数が小さくなるほど変位量が大きくなる傾向にあるものの、その弾性係数に対する変位量の依存性はさほど大きくない。これは、外部からの荷重は主に配線20、40、60、80及び補強用絶縁膜22b、42a、42b、62a、62b、82a、82b、102a、102bにより支えられるためである。したがって、本実施の形態では、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料をその弾性係数に関わらず比較的自由に選択することができる。この点は本実施の形態の最も大きい長所の一つである。また、低誘電率膜12、32、52、72、92の形成材料の弾性係数が0GPaに近づいても、変位量は典型的な低誘電率膜を用いたときの1.2倍弱にしかならない。このため本実施の形態では、低誘電率膜12、32、52、72、92を除去した構成となるエアギャップ構造が用いられても、機械的強度に対する影響はかなり小さいことが分かる。
以下、本実施の形態による半導体装置及びその製造方法について具体的実施例を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本実施の形態の実施例1による半導体装置の製造方法について説明する。本実施例では、配線に重ならない補強用絶縁膜22b、42b、62b、82bを備えた例えば第1の基本構成の半導体装置を作製することはできないが、第4の基本構成の半導体装置を低コストで作製できるようになっている。
図35乃至図39は、本実施例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。なお、配線より下部のトランジスタ等の製造工程の図示及びその説明は省略する。まず、図35(a)に示すように、シリコン基板10上の全面に下地絶縁膜としてSiO2膜11を成膜する。次に、SiO2膜11上の全面に、例えば膜厚250nmのSiOC膜をCVD法により成膜し、低誘電率膜12を形成する。なお、低誘電率膜12にはSiOC以外の材料を用いることもでき、また低誘電率膜12を形成する際にはSOD法を用いることもできる。次に、例えば膜厚50nmのSiC膜を低誘電率膜12上の全面に成膜し、ハードマスク膜14を形成する。次に、フォトリソグラフィ法を用いてハードマスク膜14及び低誘電率膜12に配線溝16を形成する。次に、バリアメタル層18及びシードとなるCu膜をこの順に全面に成膜する。次に、めっき法を用いてCu膜をさらに堆積し、配線溝16内にCu膜を埋め込む。次に、CMP法を用いてハードマスク膜14が露出するまで研磨して表面を平坦化し、配線溝16の上端より上に余分に堆積されたCu膜及びバリアメタル層18を取り除く。これにより、1層目の配線20が配線溝16内に形成される。このように配線20は、Cu配線の一般的な形成方法であるダマシン法を用いて形成される。
次に、図35(b)に示すように、CVD法を用いて膜厚50nmのSiC膜を全面に成膜し、キャップ膜24を形成する。ここまでは一般的なCu/Low−k配線の製造工程と同様である。次に本実施例では、補強用絶縁膜となる例えば膜厚300nmのSiO2膜122をCVD法により成膜する。
次に、図36(a)に示すように、スピンコート法によりネガレジストをSiO2膜122上の全面に塗布し、ネガレジスト層124を形成する。
次に、図36(b)に示すように、所定のフォトマスクを用いて露光して現像し、2層目の配線の形成領域にレジスト層126を形成する。
次に、図37(a)に示すように、レジスト層126をエッチングマスクとして用いてドライエッチング又はウエットエッチングを行い、2層目の配線の形成領域以外のSiO2膜122を除去して補強用絶縁膜22aを形成する。本実施例では、フッ化ガスを用いたドライエッチングによりSiO2膜122を除去した。
次に、図37(b)に示すように、ウエット処理によりレジスト層126を除去する。
次に、図38(a)に示すように、CVD法を用いて、表面が平坦になるように低誘電率膜32を基板全面に成膜する。低誘電率膜32の厚さは、1層目の配線20の上端から約550nmとした。
次に、図38(b)に示すように、膜厚50nmのSiC膜を全面に成膜し、ハードマスク膜34を形成する。ここからは、デュアルダマシン法を用いて2層目の配線40及び
ビア部128を形成する。すなわち、フォトリソグラフィ法を用いて例えばまず配線20上の低誘電率膜32、補強用絶縁膜22a及びキャップ膜24を除去し、配線20に繋がるビアホール130を形成する。次に、ハードマスク膜34上の全面にポジレジストを塗布してポジレジスト層を形成する。次いで、補強用絶縁膜22aの形成に用いたフォトマスクと同一のフォトマスクを用いて露光し現像する。これにより配線40の形成領域以外にレジスト層が形成される。このレジスト層をエッチングマスクとして用いて補強用絶縁膜22a上のハードマスク膜34及び低誘電率膜32をエッチング除去し、補強用絶縁膜22aの直上に配線溝36を形成する。次に、バリアメタル層38及びシードとなるCu膜をこの順に全面に成膜する。次に、めっき法を用いてCu膜をさらに堆積し、配線溝36内及びビアホール130内にCu膜を埋め込む。次に、CMP法を用いてハードマスク膜34が露出するまで研磨して表面を平坦化し、配線溝36の上端より上に余分に堆積されたCu膜及びバリアメタル層38を取り除く。これにより、2層目の配線40が配線溝36内に形成され、配線20、40間を接続するビア部128がビアホール130内に形成される。
その後、図35(b)乃至図38(b)に示す工程を繰り返し、図39に示すような4層配線構造を有する半導体装置を作製した。本実施例により作製された半導体装置は、配線20、40、60、80のそれぞれ直下にSiO2膜を用いて形成された補強用絶縁膜22a、42a、62a、82aと、配線20、40、60、80の直下以外の周囲に形成された低誘電率膜12、32、52、72とを備える点に主な特徴を有している。
本実施例を適用することにより、半導体装置の製造歩留りが従来よりも約20%向上した。製造歩留りが向上した原因を調査したところ、CMP法を用いた研磨工程で発生するパターン不良が著しく減少したためと判明した。これは、補強用絶縁膜22a、42a、62a、82aを設けることにより半導体装置の機械的強度(特に基板面内方向の力に対する強度)が向上したことが主な原因と考えられる。また、本実施例により作製された半導体装置では、ボンディング工程での配線層の劣化も認められなかった。
また本実施例による半導体装置の製造方法では、ネガレジストとポジレジストとを使い分けることにより、配線40、60、80(配線溝36、56、76)とその直下の補強用絶縁膜42a、62a、82aとをそれぞれ同一のフォトマスクを用いて形成できる。すなわち本実施例では、マスク枚数を増やすことなく半導体装置の機械的強度を高めることができる。ただし本実施例による半導体装置の製造方法では、第1の基本構成の補強用絶縁膜22b、42b、62b、82bや、第3の基本構成の補強用絶縁膜22a、42b、62a、82b等の配線直下又は直上にない補強用絶縁膜をさらに形成することはできない。このため本実施例は、製造コストの増加を抑えつつ、ある程度の補強効果を得るのに好適である。
(実施例2)
次に、本実施の形態の実施例2による半導体装置の製造方法について説明する。本実施例では、フォトマスクを追加することにより、第1の基本構成の補強用絶縁膜22b、42b、62b、82bや、第3の基本構成の補強用絶縁膜22a、42b、62a、82b等の配線直下又は直上にない補強用絶縁膜を形成できるようになっている。
図40乃至図43は、本実施例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。まず、図40(a)に示すように、シリコン基板10上の全面に、膜厚150nmのSiO2膜11、膜厚50nmのシリコン窒化膜(SiN膜)132、補強用絶縁膜となる膜厚250nmのSiO2膜134、中間エッチストッパ(MES;Middle Etch Stopper)膜となる膜厚50nmのSiC膜136、及び膜厚250nmのSiO2膜138を例えばいずれもCVD法を用いてこの順に成膜する。
次に、配線及び補強用絶縁膜を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によって、配線形成領域及び補強用絶縁膜形成領域にレジスト層を形成する。このレジスト層をエッチングマスクとして用いてドライエッチングを行い、図40(b)に示すように、配線形成領域及び補強用絶縁膜形成領域にSiO2膜139、MES膜137及びSiO2膜135を形成する。これにより、SiO2膜、SiC膜及びSiO2膜の積層構造を有する補強用絶縁膜22bが形成される。
次に、図41(a)に示すように、SiO2膜139上の基板全面に低誘電率膜12を形成する。ここでは、低誘電率膜12としてスピンコート法により塗布されるポーラス膜を用いた。
次に、図41(b)に示すように、補強用絶縁膜22bの上端よりも上に余分に形成された低誘電率膜12をエッチバック法又はCMP法を用いて除去する。これにより、配線形成領域及び補強用絶縁膜形成領域以外の領域に、低誘電率膜12が形成される。次に、基板全面に膜厚50nmのSiC膜を成膜し、ハードマスク膜14を形成する。
次に、通常のデュアルダマシン法による工程と同様に、ビア部を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により、図42(a)に示すようにビアホール130を形成する。続いて、配線を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程によりハードマスク膜14及びSiO2膜139を除去し、配線溝16を形成する。これにより、配線溝16の直下には、SiO2膜135(及びSiC膜136)を用いた補強用絶縁膜22aが形成される。
次に、バリアメタル層18及びシードとなるCu膜をこの順に全面に成膜する。次に、めっき法を用いてCu膜をさらに堆積し、配線溝16内及びビアホール130内にCu膜を埋め込む。次に、CMP法を用いてハードマスク膜14が露出するまで研磨して表面を平坦化し、配線溝16の上端より上に余分に堆積されたCu膜及びバリアメタル層18を取り除く。これにより、図42(b)に示すように、配線20が配線溝16内に形成され、配線20とその下層の配線(本実施例では図示及び説明を省略している)との間を接続するビア部128がビアホール130内に形成される。
その後、図40(a)乃至図42(b)に示す工程を繰り返し、図43に示すような多層配線構造を有する半導体装置を作製した。本実施例により作製された半導体装置は、配線20、40、60、80のそれぞれ直下にSiO2膜(及びSiC膜)を用いて形成された補強用絶縁膜22a、42a、62a、82aと、SiO2膜、SiC膜及びSiO2膜の積層構造を有し、配線直下にない補強用絶縁膜22b、42b、62b、82bと、配線20、40、60、80の直下以外の周囲に形成された低誘電率膜12、32、52、72とを備える点に主な特徴を有している。
本実施例では、配線20、40、60、80を形成するフォトマスクとは別に、配線直下にない補強用絶縁膜22b、42b、62b、82bを形成するためのフォトマスクが必要になるため、実施例1と比較して製造コストが若干増加する。しかしながら本実施例では、上記第1及び第3の基本構成のように互いに直交する第1及び第2の壁を形成できるため、機械的強度の高い半導体装置が得られる。また本実施例によれば、配線直下にない補強用絶縁膜22b、42b、62b、82bを上記比較例2のビア部88のように配置することによって、SiO2膜(及びSiC膜)を用いた補強部として柱状構造物を形成することもできる。
(実施例3)
次に、本実施の形態の実施例3による半導体装置の製造方法について説明する。実施例2では低誘電率膜12を形成した後に配線20を形成しているのに対し、本実施例では配線20を形成した後に低誘電率膜12を形成する。
図44乃至図46は、本実施例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。まず、図44(a)に示すように、シリコン基板10上の全面に、膜厚500nmのSiO2膜11、膜厚50nmのSiN膜132、膜厚250nmのSiO2膜134、MES膜となる膜厚50nmのSiC膜136、膜厚250nmのSiO2膜138、及びハードマスク膜14となる膜厚50nmのSiC膜を例えばいずれもCVD法を用いてこの順に成膜する。
次に、通常のデュアルダマシン法による工程と同様に、ビア部を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により、図44(b)に示すようにビアホール130を形成する。続いて、配線を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程によりハードマスク膜14及びSiO2膜138を除去し、配線溝16を形成する。次に、スパッタ法を用いて、バリアメタル層18となる膜厚25nmのTa膜及びシードとなる膜厚50nmのCu膜をこの順に全面に成膜する。次に、めっき法を用いてCu膜をさらに堆積し、配線溝16内及びビアホール130内にCu膜を埋め込む。次に、CMP法を用いてハードマスク膜14が露出するまで研磨して平坦化し、配線溝16の上端より上に余分に堆積されたCu膜及びバリアメタル層18を取り除く。これにより、配線20が配線溝16内に形成され、配線20とその下層の配線(本実施例では図示及び説明を省略している)との間を接続するビア部128がビアホール130内に形成される。次に、膜厚50nmのSiC膜を全面に成膜し、Cuの拡散防止の役割を担うキャップ膜24を形成する。
次に、配線及び補強用絶縁膜を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によって配線形成領域及び補強用絶縁膜形成領域にレジスト層を形成する。このレジスト層をエッチングマスクとして用いてドライエッチングを行い、図45(a)に示すように、配線形成領域及び補強用絶縁膜形成領域以外のキャップ膜24、ハードマスク膜14、SiO2膜138、SiC膜136及びSiO2膜134を除去する。これにより、配線20の直下には、SiO2膜134(及びSiC膜136)を用いた補強用絶縁膜22aが形成される。また、SiO2膜134、SiC膜136及びSiO2膜138の積層構造を有する、配線直下にない補強用絶縁膜22bが形成される。
次に、図45(b)に示すように、実施例2と同様の低誘電率膜12を基板全面に形成する。その後、キャップ膜24の上端よりも上に余分に形成された低誘電率膜12をCMP法を用いた研磨により除去する。これにより、補強用絶縁膜22a、22bの形成領域以外の領域に、低誘電率膜12が形成される。
図44(a)乃至図45(b)に示す工程を繰り返し、図46に示すような多層配線構造を有する半導体装置を作製した。本実施例により作製された半導体装置は、実施例2により作製された半導体装置と同様に、配線20、40、60、80のそれぞれ直下にSiO2膜(及びSiC膜)を用いて形成された補強用絶縁膜22a、42a、62a、82aと、SiO2膜、SiC膜及びSiO2膜の積層構造を有する配線直下にない補強用絶縁膜22b、42b、62b、82bと、配線20、40、60、80の直下以外の周囲に形成された低誘電率膜12、32、52、72とを備えている。本実施例により作製された半導体装置は、ハードマスク膜14、34、54、74が補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b上にのみ形成されている点と、キャップ膜24、44、64、84が配線20、40、60、80上及び補強用絶縁膜22b、42b、62b、82b上にのみ形成されている点とにおいて実施例2により作製された半導体装置と異なる。
次に、本実施例による半導体装置の製造方法の変形例について説明する。図44乃至図46に示した半導体装置の製造方法では、配線及び補強用絶縁膜を形成した後に低誘電率膜を形成しているが、本変形例では低誘電率膜の形成を配線及び補強用絶縁膜の形成より先に行う。また、本変形例ではMES膜を形成しない場合を想定している。
図47乃至図50は、本実施例による半導体装置の製造方法の変形例を示す工程断面図である。まず、図47(a)に示すように、膜厚500nmのSiO2膜11、膜厚50nmのSiN膜132をシリコン基板10上の全面に成膜した後、低誘電率膜12及びハードマスク膜14をこの順に形成する。
次に、図47(b)に示すように、配線及び補強用絶縁膜を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程によって、配線形成領域及び補強用絶縁膜形成領域のハードマスク膜14及び低誘電率膜12を除去し、補強部溝140、141を形成する。
次に、補強用絶縁膜となるSiO2膜を基板全面に成膜し、補強部溝140、141内にSiO2膜を埋め込む。その後、補強部溝140、141の上端よりも上に余分に形成されたSiO2膜をCMP法を用いた研磨により除去し、図48(a)に示すように補強用絶縁膜22a’、22bを形成する。
次に、ビア部を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により、図48(b)に示すようにビアホール130を形成する。続いて、配線を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により補強用絶縁膜22a’の上層部を除去し、配線溝16を形成する。これにより、配線溝16直下には補強用絶縁膜22aが形成される。
次に、バリアメタル層18及びシードとなるCu膜をこの順に全面に成膜する。次に、めっき法を用いてCu膜をさらに堆積し、配線溝16内及びビアホール130内にCu膜を埋め込む。次に、CMP法を用いてハードマスク膜14が露出するまで研磨して平坦化し、配線溝16の上端より上に余分に堆積されたCu膜及びバリアメタル層18を取り除く。これにより、図49(a)に示すように、配線20が配線溝16内に形成され、配線20とその下層の配線(本例では図示及び説明を省略している)との間を接続するビア部128がビアホール130内に形成される。
次に、図49(b)に示すように、SiC膜を基板全面に成膜してキャップ膜24を形成する。
図47(a)乃至図49(b)に示す工程を繰り返し、図50に示すような多層配線構造を有する半導体装置を作製した。本変形例により作製された半導体装置は、配線20、40、60、80のそれぞれ直下にSiO2膜を用いて形成された補強用絶縁膜22a、42a、62a、82aと、単層のSiO2膜を用いて形成された配線直下にない補強用絶縁膜22b、42b、62b、82bと、配線20、40、60、80の直下以外の周囲に形成された低誘電率膜12、32、52、72とを備えている。本変形例により作製された半導体装置は、ハードマスク膜14、34、54、74が低誘電率膜12、32、52、72上にのみ形成されている点と、キャップ膜24、44、64、84が全面に形成されている点とにおいて図46に示した半導体装置と異なる。また本変形例ではMES膜を形成していないため、補強用絶縁膜22a、22b、42a、42b、62a、62b、82a、82bはそれぞれ単層のSiO2膜を用いて形成される。
(実施例4)
次に、本実施の形態の実施例4による半導体装置の製造方法について説明する。本実施例では、エアギャップ構造の半導体装置を作製する。本実施例の工程の多くは、低誘電率膜に代えてエアギャップ犠牲膜を絶縁層として用いることを除き、図47乃至図50に示した実施例3の変形例の工程と同様である。エアギャップ犠牲膜としては、酸化、溶解、分解等又はこれらの組合せにより除去可能な材料が用いられる。
図51乃至図58は、本実施例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。まず、図51(a)に示すように、膜厚500nmのSiO2膜11、膜厚50nmのSiN膜132をシリコン基板10上の全面に成膜した後、例えば易分解性樹脂を用いてエアギャップ犠牲膜142を全面に形成する。続いて、例えばCVD法を用いて膜厚50nmのSiC膜をエアギャップ犠牲膜142上の全面に成膜し、ハードマスク膜14を形成する。
エアギャップ犠牲膜142として用いることのできる易分解性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びエポキシ系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の平均分子量は10,000〜70,000程度とするのが好ましい。この理由の一つは配線工程でのプロセス温度を考慮すると樹脂の分解温度が約350℃よりも高い必要があるためであり、もう一つは分子量が大きくなると塗布性が悪くなるためである。本実施例ではこれらのうちポリスチレン樹脂を用いた。ポリスチレン樹脂を用いてエアギャップ犠牲膜142を形成する手順は次の通りである。まず、ポリスチレン樹脂を有機溶媒となるシクロヘキサンに溶解した。それぞれの割合は、ポリスチレン樹脂1重量に対し有機溶媒5重量とした。次に、有機溶媒に溶解したポリスチレン樹脂を基板面に塗布した。その後、窒素雰囲気中で120℃、10分間の加熱処理を行って有機溶媒を蒸発させ、エアギャップ犠牲膜142を形成した。なお、樹脂類を溶解する有機溶媒としては、ケトン類、エーテル類及びエステル類などを用いることもできる。
易分解性樹脂に代えて、加熱により分解してガス化する4級アンモニウム系界面活性剤や非イオン性界面活性剤などの有機テンプレート材、又は易分解性樹脂と有機テンプレート材との混合物を用いてもよい。この混合物を用いる場合の有機テンプレート材の混合量は、0.1〜30wt%程度であることが好ましい。有機テンプレート材としては、構造式[R1R2R3R4N]+Y−で表されるものが知られている(特許文献2参照)。ここで、Riは炭化水素基を表し、Yはハロゲン原子又はOH基を表す。
次に、図51(b)に示すように、配線及び補強用絶縁膜を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程によって、配線形成領域及び補強用絶縁膜形成領域のハードマスク膜14及びエアギャップ犠牲膜142を除去し、補強部溝140、141を形成する。
次に、CVD法を用いて、補強用絶縁膜となるSiO2膜を基板全面に成膜し、補強部溝140、141内にSiO2膜を埋め込む。その後、補強部溝140、141の上端よりも上に余分に形成されたSiO2膜をCMP法を用いた研磨により除去し、図52(a)に示すように補強用絶縁膜22a’、22bを形成する。
次に、ビア部を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により、図52(b)に示すようにビアホール130を形成する。続いて、配線を形成するためのフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により補強用絶縁膜22a’の上層部を除去し、配線溝16を形成する。これにより、配線溝16直下には補強用絶縁膜22aが形成される。
次に、バリアメタル層18となる膜厚25nmのTa膜及びシードとなる膜厚50nmのCu膜をこの順に全面に成膜する。次に、めっき法を用いてCu膜をさらに堆積し、配線溝16内及びビアホール130内にCu膜を埋め込む。次に、CMP法を用いてハードマスク膜14が露出するまで研磨して表面を平坦化し、配線溝16の上端より上に余分に堆積されたCu膜及びバリアメタル層18を取り除く。これにより、図53(a)に示すように、配線20が配線溝16内に形成され、配線20とその下層の配線(本例では図示及び説明を省略している)との間を接続するビア部128がビアホール130内に形成される。
次に、図53(b)に示すように、CVD法を用いて膜厚50nmのSiC膜を基板全面に成膜し、キャップ膜24を形成する。
次に、図54に示すように、エアギャップ犠牲膜144を基板全面に形成する。続いて、例えばCVD法を用いて膜厚50nmのSiC膜をエアギャップ犠牲膜144上の全面に成膜し、ハードマスク膜34を形成する。
その後、図51(b)乃至図54に示した工程を繰り返し、図55に示すような多層配線構造の半導体装置を作製した。
次に、図56に示すように、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程によって、キャップ膜84、64、44、24、ハードマスク膜74、54、34、14、及びエアギャップ犠牲膜148、146、144、142を開口し、例えば最下層の配線層まで貫通するような脱ガス用穴部150を形成する。
次に、酸素含有雰囲気中で400℃、30分の熱処理を行ってエアギャップ犠牲膜142、144、146、148の少なくとも一部をガス化除去し、図57に示すように空隙152、154、156、158を形成する。
次に、図58に示すように、キャップ膜84上の基板全面に保護層としてSiO2膜102を形成する。以上の工程を経て、エアギャップ構造の半導体装置が作製される。
本実施例では、ハードマスク膜14、34、54、74やキャップ膜24、44、64、84となるSiC膜は、CVD法を用いて成膜されている。CVD法によるSiC膜の成膜温度は通常400℃程度であるが、本実施例ではそれよりも低い300〜350℃とした。これは、本実施例でエアギャップ犠牲膜142、144、146、148として用いられる易分解性樹脂が広い分子量分布を有する高分子材料であり、低い温度から分解が始まるためである。これは、エアギャップ犠牲膜142、144、146、148に他の樹脂材を用いた場合でも同様である。
また、本実施例ではエアギャップ犠牲膜142、144、146、148として易分解性樹脂を用いているが、スパッタリング法により堆積した炭素薄膜をエアギャップ犠牲膜142、144、146、148として用いてもよい。この場合には、酸化性雰囲気中で450℃、60分間の熱処理を行うことによってエアギャップ犠牲膜142、144、146、148を酸化除去し、空隙152、154、156、158を形成することができる。エアギャップ犠牲膜142、144、146、148として用いることのできる他の材料としては、GeO2が知られている(特許文献3参照)。GeO2を用いた場合には、アルカリ水溶液で溶解することによりエアギャップ犠牲膜142、144、146、148を除去することができる。また、エアギャップ犠牲膜142、144、146、148を分解除去するための手法としては、本実施例のような熱処理以外にも、UV照射や酸素プラズマ処理等がある。これらの熱処理やUV照射、酸素プラズマ処理等は併用しても
よい。UV照射や酸素プラズマ処理等を用いると処理時間を短縮することができる。熱処理やUV照射は、いずれも酸化性雰囲気中で行われる。
さらに本実施例では、単一の材料を用いてエアギャップ犠牲膜142、144、146、148を形成している。しかし、デュアルダマシン法を用いて配線を形成する場合には、エアギャップ犠牲膜142、144、146、148を互いに異なる材料を用いた2層構造にすることも考えられる。エアギャップ犠牲膜142、144、146、148を2層構造にすることによって、配線溝及びビアホールの加工工程が容易になる。この場合には、エアギャップ犠牲膜142、144、146、148の各層の材料に応じて、除去するための方法(酸化除去、溶解除去、分解除去等)を使い分けてもよい。
以上説明したように、本実施の形態では、半導体装置の機械的強度を補強するために、SiO2等の弾性係数の大きい材料を用いて形成された機械的に強固な補強部が設けられている。補強部は、配線とともに構造体として機能する。これによって、低誘電率膜を用いた半導体装置やエアギャップ構造の半導体装置であっても、チップ全体の機械的強度を高めることができる。したがって、本実施の形態によれば、配線間容量の低減により配線遅延の少ない高性能の半導体装置が得られるとともに、変形や断線等が生じ難く信頼性や製造歩留りの高い半導体装置が得られる。
また、本実施の形態の補強部に用いられるような弾性係数の大きい材料は、低誘電率膜よりも一般に熱伝導率が高く、Cu配線からの熱が基板やチップ外に伝わり易くなる。このため、本実施の形態は放熱の観点からも有利である。
さらに、本実施の形態を適用するための設計的な制約は比較的小さいので、従来の配線設計をほとんど変更することなく本実施の形態を適用できる。
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、多層配線構造の半導体装置を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、単層配線構造の半導体装置にも適用できる。