JP5695229B2 - 生分解性潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、潤滑油組成物に関し、より詳しくは、特に風力発電用の増速機に使用される生分解性潤滑油組成物に関する。
近年、環境問題や化石燃料の枯渇の観点より、自然のエネルギーを活用した風力発電が脚光を浴びている。風力発電では、ロータの回転速度が遅いため発電効率を上げることが重要であり、発電装置内部には増速機が設けられている。増速機に用いられる歯車機構の潤滑にはいわゆるギヤ油が使用されるが、極めて高い潤滑性が必要とされる。
従来、増速機油として、PAO(ポリアルファオレフィン)を基油とした潤滑油が使用されてきた。一方、風力発電装置は洋上や自然環境下で使用されることが多いため、増速機油には高い生分解性が必要である。これに対して、従来のPAO系潤滑油では生分解性がほとんどないため、代替品の探索が続けられてきた。
生分解性が求められる風力発電装置の増速機用としては、エステルを基油とした潤滑油の適用が考えられる(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1、2では、多価アルコールと多価カルボン酸とから得られる複合エステルを基油とした生分解性潤滑油が提案されている。
特表2003−522204号公報 特表2005−520038号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の生分解性潤滑油では酸化安定性が十分ではなく、風力発電装置の増速機用として用いた場合、潤滑油としての性能を長期間に渡って維持することは困難である。
そこで、本発明は、潤滑性、酸化安定性および生分解性に優れ、風力発電装置に用いられる増速機用としても好適な生分解性潤滑油組成物を提供することにある。
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような生分解性潤滑油組成物を提供するものである。
(1)(A)下記式(1)で示されるエステルと、(B)直鎖飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られ、酸価が0.5mgKOH/g以下であるエステルと、(C)酸性リン酸エステルとアルキルアミンとを反応させて得られるリン酸エステルアミン塩とを配合してなることを特徴とする生分解性潤滑油組成物。

(式中、Raは炭素数が4以上、20以下のヒドロカルビル基であり、Rbは炭素数が4以上、18以下のヒドロカルビル基であり、Rcは水素または炭素数が1以上、10以下のアシル基である。nは3以上、15以下である。)
(2)上述の(1)に記載の生分解性潤滑油組成物において、前記(A)成分におけるRaが炭素数が4以上、20以下のアルキル基であり、Rbが炭素数が4以上、18以下のアルキル基であることを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
(3)上述の(1)または(2)に記載の生分解性潤滑油組成物において、前記(B)成分のエステルを形成する直鎖飽和脂肪族カルボン酸の炭素数が6以上、12以下であることを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
(4)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載の生分解性潤滑油組成物において、前記(B)成分のエステルを形成する多価アルコールがペンタエリスリトールおよびトリメチロールプロパンのうち少なくともいずれかであることを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
(5)上述の(1)から(4)までのいずれか1つに記載の生分解性潤滑油組成物において、前記(B)成分の配合量が該組成物全量基準で10質量%以上であることを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
(6)上述の(1)から(5)までのいずれか1つに記載の生分解性潤滑油組成物において、前記(C)成分を形成する酸性リン酸エステルの炭素数が8以上、13以下であることを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
(7)上述の(1)から(6)までのいずれか1つに記載の生分解性潤滑油組成物において、前記(C)成分におけるリン酸エステルアミン塩の配合量が0.2質量%以上、1質量%以下であることを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
(8)上述の(1)から(7)までのいずれか1つに記載の生分解性潤滑油組成物がギヤ油であることを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
本発明の生分解性潤滑油組成物によれば、潤滑性、酸化安定性および生分解性に優れており、風力発電装置に用いられる増速機用としても好適である。
実施例1で製造したエステルのH−NMRスペクトルである。 実施例2で製造したエステルのH−NMRスペクトルである。
本発明の生分解性潤滑油組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、(A)所定の2−ヒドロキシ(ヒドロカルビル)カルボン酸エステルと、(B)直鎖飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるエステルと、(C)酸性リン酸エステルとアルキルアミンとを反応させて得られるリン酸エステルアミン塩とを配合してなることを特徴とする。以下、詳細に本発明を説明する。
〔(A)成分〕
本発明における(A)成分は、下記式(1)で示されるように、一価のアルコールと2−ヒドロキシ(ヒドロカルビル)カルボン酸からなるエステルである。
式(1)において、Raは炭素数4以上、20以下のヒドロカルビル基であり、好ましくはアルキル基である。Raの炭素数が3以下であると、エステルの合成に使用するアル
コールの沸点が低いため、脱水縮合させにくく、エステルの合成が困難になる。特に好ましくは、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デカニル基、ドデカニル基、テトラデカニル基、ヘキサデカニル基、オクタデカニル基である。なお、これらの基は直鎖構造でも分岐構造でもよい。一方、Raの炭素数が21以上であると低温流動性が低下するため好ま
しくない。
Rbは炭素数が4以上、18以下のヒドロカルビル基であり、好ましくはアルキル基で
ある。Rbの炭素数が5以下の場合、得られるエステルが常温(25℃程度)で液状にな
らないことがあり、潤滑油として適さない。炭素数が19以上の場合、エステルの結晶化により流動点が上昇するため実用的ではない。好ましくは、炭素数6以上、12以下のアルキル基であり、特に好ましくは、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデカニル基である。なお、これらの基は直鎖構造でも分岐構造でもよい。
Rcは水素または炭素数が1以上、10以下のアシル基であり、水素以外の場合は、ア
シル基の末端となる基は、水素(ホルミル基)、メチル基(アセチル基)、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、およびノニル基が好ましく挙げられる。なお、直鎖構造に限らず分岐構造のものでもよい。また、Rcとしては、
炭素数が2以上4以下のアシル基であることが未反応物を蒸留で除去できる点で好ましい。
nは2−ヒドロキシカルボン酸単位の連鎖数を示し、3以上、15以下であるが、7以上10以下が好ましい。nが2以下であると潤滑油としての粘度が低すぎて好ましくない。一方、nが16以上であると、生分解性が低下する。
(A)成分のエステルのうち、Rcが水素であるものは、上記式(1)のRaを有するアルコールと、下記式(2)で示される2−ヒドロキシカルボン酸を混合し、硫酸等の酸存在下にて加熱し、理論量の反応生成水を蒸留除去することにより合成することができる。なお、アルコールと2−ヒドロキシカルボン酸を反応させる場合、理論量の反応生成水は加えた2−ヒドロキシカルボン酸の2倍のモル数に等しい。また、得られるエステルの酸価は、0.5mgKOH/g以下であることが酸化安定性の点で好ましい。
なお、(A)成分のエステルにおいて、Rcをアシル基としたい場合には、例えば上述
したエステル(Rcが水素)に対し、所定のカルボン酸を用いてエステル化反応を行えば
よい。
上記式(2)において、Rbは炭素数4以上、18以下のヒドロカルビル基であり、好
ましくはアルキル基である。Rbの具体例は、式(1)の具体例と同様である。
(A)成分のエステルは、(1)の2−ヒドロキシカルボン酸単位の連鎖数nを調整することにより、エステル化合物の生分解性を制御できる。2−ヒドロキシ(ヒドロカルビル)カルボン酸の連鎖数は、出発原料であるアルコールと2−ヒドロキシカルボン酸さらには2−ヒドロカルビルカルボン酸の仕込み比で制御できる。例えば、アルコールと2−ヒドロキシカルボン酸を反応させる場合、アルコールの仕込み量をAL(mol)、2−ヒドロキシカルボン酸の仕込み量をH(mol)とした場合、連鎖数nは下記の計算により求められる。
n=H/AL
エステル化合物の実際の2−ヒドロキシカルボン酸の連鎖数は、プロトンNMRで測定する。実際の連鎖数は上記計算値とほぼ等しくなる。
式(1)のエステルの粘度は、連鎖数nの他、RaおよびRbの鎖長で制御できるが、40℃における動粘度としては、300mm/s以上、1000mm/s以下であることが好ましい。40℃における動粘度が300mm/s未満であると、潤滑油組成物としたときに潤滑性を保つために必要な粘度が得られないおそれがある。一方、40℃における動粘度が1000mm/sを超えると、生分解性が低下するおそれがある。
なお、式(1)のエステルを製造する際の原料であるアルコールと2−ヒドロキシカルボン酸には、特に限定はなく、一般に市販されているものが使用できる。なお、式(2)の2−ヒドロキシカルボン酸は、例えば、カルボン酸のHell−Volhard−Zelinskii反応(Org.Synth.,Coll.Vol.4,848(1965))とそれに続く加水分解によって合成することができる。
式(1)のエステルの製造方法においては、反応時間は6時間以上、20時間以下程度であり、反応温度は、100℃以上、130℃以下程度とすればよい。溶媒を使用する場合、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等が好ましい。
〔(B)成分〕
本発明における(B)成分は、直鎖飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるエステルである。
ここで、直鎖飽和脂肪族カルボン酸としては、生分解性と低温流動性を兼ね備える観点より炭素数6以上、12以下のカルボン酸が好ましい。具体的には、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、およびラウリン酸のようなモノカルボン酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、いわゆるヒンダードポリオールが好適に用いられる。具体的には、ネオペンチルグリコール;2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール;2,2−ジエチル−1,3−プロパンジール;トリメチロールエタン;トリメチロールプロパン;トリメチロールブタン;トリメチロールペンタン;トリメチロールヘキサン;トリメチロールヘプタン;ペンタエリスリトール;2,2,6,6−テトラメチル−4−オキサ−1,7−ヘプタンジオール;2,2,6,6,10,10−ヘキサメチル−4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカジオール;2,2,6,6,10,10,14,14−オクタメチル−4,8,12−トリオキサ−1,15−ペンタデカジオール;2,6−ジヒドロキシメチル−2,6−ジメチル−4−オキサ−1,7−ヘプタンジオール;2,6,10−トリヒドロキシメチル−2,6,10−トリメチル−4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカジオール;2,6,10,14−テトラヒドロキシメチル−2,6,10,14−テトラメチル−4,8,12−トリオキサ−1,15−ペンタデカジオール;ジ(ペンタエリスリトール);トリ(ペンタエリスリトール);テトラ(ペンタエリスリトール);ペンタ(ペンタエリスリトール)などが挙げられる。ヒンダードポリオールとしては、ペンタエリスリトールやトリメチロールプロパンが特に好ましい。
これらのヒンダードポリオールは、エステル化の際、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
(B)成分の40℃における動粘度は、20mm/s以上、40mm/s以下であることが好ましい。この動粘度が20mm/s未満であると、潤滑油組成物としたときに潤滑性が低下するため好ましくない。一方、この動粘度が40mm/sを超えると、潤滑油組成物としたときに低温流動性が悪化するおそれがある。
また、(B)成分としては、酸価が0.5mgKOH/g以下である必要がある。酸価が0.5mgKOH/gを超えると、酸化安定性が悪化するおそれがある。
なお、(B)成分としてのエステルは、一般的には上述した所定のカルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるものである。ただし、結果として上述したカルボン酸残基と多価アルコール残基からなるエステル構造を有していればよいのである。出発物質(反応原料)自体が上記したカルボン酸や多価アルコールである必要はなく、またそれらからの脱水反応によって(B)成分を合成する必要性は必ずしもない。他の原料から別の方法によって合成してもよい。例えば、エステル交換法によって製造してもよい。
また、本発明における(B)成分の配合割合は、組成物基準で10質量%以上であることが生分解性の観点より好ましい。
〔(C)成分〕
本発明における(C)成分は、酸性リン酸エステルとアルキルアミンとを反応させて得られるリン酸エステルアミン塩である。
(C)成分を形成するための酸性リン酸エステルとしては、例えば、下記式(3)で示される構造のものが挙げられる。
前記式(3)におけるXは、水素原子または炭素数6以上、20以下のアルキル基、Xは炭素数6以上、20以下のアルキル基を示す。上記した炭素数6以上、20以下のアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、各種のへキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基などが挙げられる。これらの中では、炭素数が8以上、18以下のアルキル基が好ましく、炭素数が8以上、13以下のアルキル基がより好ましい。
前記式(3)で示される酸性リン酸アルキルエステル類としては、例えばモノオクチルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、モノラウリルアシッドホスフェート、モノ(トリデシル)アシッドホスフェート、モノミリスチルアシッドホスフェート、モノパルミチルアシッドホスフェート、モノステアリルアシッドホスフェートなどの酸性リン酸モノエステル、ジオクチルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジ(トリデシル)アシッドホスフェール、ジパルミチルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェートなどの酸性リン酸ジエステルを挙げることができる。
(C)成分を形成するには、前記酸性リン酸エステルを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、最終的に本組成物としたときには、組成物全量基準でリン(P)の含有量が150質量ppm以上、500ppm以下とすることが好ましい。このPの含有量が150質量ppm未満では、ギヤ油として使用したときに耐焼付性が不十分となるおそれがあり、一方、Pの含有量が500質量ppmを超えると耐疲労性(耐FZGマイクロピッチング性)が低下するおそれがある。より好ましいPの含有量は250質量ppm以上、450質量ppmであり、さらに好ましくは350質量ppm以上、400質量ppm以下である。
(C)成分を形成するためのアルキルアミンとしては、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンのいずれでもよいが耐焼付性向上の点でジアルキルアミンあるいはトリアルキルアミンが好ましい。また、アルキル基の炭素数は、リン酸エステルアミン塩が液状である点で、6以上、20以下のものが好ましい。
ジアルキルアミン類の例としてはジへキシルアミン、ジシクロへキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミンなどを挙げることができ、トリアルキルアミン類の例としては、トリへキシルアミン、トリシクロへキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミンなどを挙げることができる。
これらのアルキルアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、耐焼付性の点ではトリアルキルアミンから選択することが好適である。
(C)成分の配合量は、組成物全量基準で、0.2質量%以上、1質量%以下であることが好ましい。配合量が0.2質量%未満では、摩擦低減効果に乏しい。一方、配合量が1質量%を超えると耐疲労性(耐FZGマイクロピッチング性)が低下するおそれがある。
ここで、(C)成分は、酸性リン酸エステルアミン塩とした後に、本組成物を調製するために、他の成分と混合してもよいし、酸性リン酸エステルとアルキルアミンを各々個別に配合して本組成物を調製してもよい。
なお、(C)成分の配合量は、酸性リン酸エステルとアルキルアミンを個別に配合して本組成物とする場合は、双方の合計値である。
本組成物には、より潤滑性を高めるため、(D)成分として、所定の硫黄化合物をさらに配合してもよい。例えば、(D−1)分子内に−S−S−S−以上の多硫縮合を含まず、かつ分子内の硫黄原子(S)含有量が15質量%以上である硫黄化合物が好適である。さらに、(D−1)成分に付加的に配合される硫黄化合物として(D−2)下記式(4)で示されるチオリン酸トリヒドロカルビルエステルも好適である。
(RO−)P=S (4)
上記式(4)中、Rは炭素数6以上、20以下のヒドロカルビル基である。
前記(D−1)成分の硫黄化合物が、分子内に−S−S−S一以上の多硫縮合を有する化合物である場合、後述する酸化安定度試験において、スラッジの生成が多くなるおそれがある上に、耐FZGマイクロピッチング性が低下するおそれもある。また、分子内のS含有量が15質量%未満では、硫黄化合物の添加効果が十分に発揮されず、耐焼付性が不足する場合がある。
このような性状を有する(D−1)成分の硫黄化合物としては、例えば、下記の化合物
を挙げることができる。
(1)モノまたはジ硫化オレフィン
(2)ジヒドロカルビルモノまたはジスルフィド
(3)チアジアゾール化合物
(4)ジチオカーバメイト化合物
(5)ジスルフィド構造を有するエステル化合物
(6)その他硫黄化合物
[モノまたはジ硫化オレフィン]
硫化オレフィンとしては、例えば、下記式(5)で示される化合物を挙げることができる。
−Sa−R (5)
上記式(5)において、Rは炭素数2以上、15以下のアルケニル基、Rは炭素数2以上、15以下のアルキル基またはアルケニル基を示し、aは1または2を示す。この化合物は、炭素数2以上、15以下のオレフィンまたはその二〜四量体を、硫黄、塩化硫黄等の硫化剤と反応させることによって得られ、該オレフィンとしては、プロピレン、イソブテン、ジイソブテンなどが好ましく挙げられる。
[ジヒドロカルビルモノまたはジスルフィド]
ジヒドロカルビルモノまたはジスルフィドとしては、下記式(6)で示される化合物を挙げることができる。
−Sb−R (6)
上記式(6)において、RおよびRは、それぞれ炭素数1以上、20以下のアルキル基または環状アルキル基、炭素数6以上、20以下のアリール基、炭素数7以上、20以下のアルキルアリール基または炭素数7以上、20以下のアリールアルキル基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、bは1または2を示す。なお、RおよびRがアルキル基の場合、硫化アルキルと称される。
上記式(6)で示されるジヒドロカルビルモノまたはジスルフィドとしては、例えば、ジベンジルモノまたはジスルフィド、各種ジノニルモノまたはジスルフィド、各種ジドデシルモノまたはジスルフィド、各種ジブチルモノまたはジスルフィド、各種ジオクチルモノまたはジスルフィド、ジフェニルモノまたはジスルフィド、ジシクロへキシルモノまたはジスルフィドなどを好ましく挙げることができる。
[チアジアゾール化合物]
チアジアゾール化合物としては、例えば、2,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,6−ビス(n−オクチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルプチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、4,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾールなどを好ましく挙げることができる。
[ジチオカーバメイト化合物]
ジチオカーバメイト化合物としては、アルキレンビスジアルキルジチオカーバメイトが挙げられ、中でも炭素数1から3までのアルキレン基、炭素数3以上、20以下の直鎖状若しくは分岐状の飽和または不飽和のアルキル基、あるいは炭素数6以上、20以下の環状アルキル基である化合物が好ましく挙げられる。そのようなジチオカーバメイト化合物の具体例としては、例えば、メチレンビスジブチルジチオカーバメイト、メチレンビスジオクチルジチオカーバメイト、メチレンビストリデシルジチオカーバメイトなどを挙げることができる。
[ジスルフィド構造を有するエステル化合物]
ジスルフィド構造を有するエステル化合物としては、下記式(7)で示されるジスルフィド化合物、および下記式(8)で示される化合物が挙げられる。
OOC−A−S−S−A−COOR (7)
11OOC−CR1314−CR15(COOR12)−S−S−CR20(COOR17)−CR1819−COOR16 (8)
上記式(7)において、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1以上、30以下のヒドロカルビル基であり、好ましくは炭素数1以上、20以下、さらには炭素数2以上、18以下、特には炭素数3以上、18以下のヒドロカルビル基が好ましい。該ヒドロカルビル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含んでいてもよい。このRおよびRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造上の理由から、同一であることが好ましい。
次に、AおよびAは、それぞれ独立にCRまたはCR−CR10で示される基であって、RからR10まではそれぞれ独立に水素原子または炭素数1以上、20以下のヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基としては炭素数が1以上、12以下のもの、さらには炭素数1以上、8以下のものが好ましい。また、AおよびAは互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造上の理由から、同一であることが好ましい。
一方、上記式(8)において、R11、R12、R16およびR17はそれぞれ独立に炭素数1以上、30以下のヒドロカルビル基であり、好ましくは炭素数1以上、20以下、さらには炭素数2以上、18以下、特には炭素数3以上、18以下のヒドロカルビル基が好ましい。該ヒドロカルビル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を含んでいてもよい。このR11、R12、R16およびR17は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいが、製造上の理由から、同一であることが好ましい。
次に、R13からR15まで、R18からR20まではそれぞれ独立に水素原子または炭素数1以上、5以下のヒドロカルビル基である。原料の入手が容易なことから、水素原子が好ましい。
上記式(7)で表されるジスルフィド化合物の具体例としては、ビス(メトキシカルボニル−メチル)ジスルフィド、ビス(エトキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(n−プロポキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(イソプロポキシカルボニルメチル)ジスルフィド、ビス(シクロプロポキシカルボニルメチル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニル−n−プロピル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニル−n−プチル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニル−n−ヘキシル)ジスルフィド、1,1−ビス(1−メトキシカルボニル−n−オクチル)ジスルフィド、2,2−ビス(2−メトキシカルボニル−n−プロピル)ジスルフィド、α,α−ビス(α−メトキシカルボニルベンジル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−エトキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−n−プロポキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−イソプロポキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−シクロプロポキシカルボニルエチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−n−プロピル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−n−プチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−n−ヘキシル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−n−プロピル)ジスルフィド、2,2−ビス(3−メトキシカルボニル−n−ペンチル)ジスルフィド、1,1−ビス(2−メトキシカルボニル−1−フェニルエチル)ジスルフィドなどを挙げることができる。
上記式(8)で表されるジスルフィド化合物の具体例としては、ジチオリンゴ酸テトラメチル、ジチオリンゴ酸テトラエチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−プロピル、ジチオリンゴ酸テトラ−2−プロピル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−ブチル、ジチオリンゴ酸テトラ−2−プチル、ジチオリンゴ酸テトライソブチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−ヘキシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−オクチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−エチル)ヘキシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(3,5,5−トリメチル)ヘキシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−デシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−ドデシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−ヘキサデシル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−オクタデシル、ジチオリンゴ酸テトラベンジル、ジチオリンゴ酸テトラ−α−(メチル)ベンジル、ジチオリンゴ酸テトラα,α−ジメチルベンジル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−メトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−エトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−ブトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−エトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−ブトキシープトキシ)エチル、ジチオリンゴ酸テトラ−1−(2−フェノキン)エチルなどを挙げることができる。
[その他の硫黄化合物]
その他の硫黄化合物としては、例えば硫化ラード、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化大豆油、硫化米ぬか油などの硫化油脂、チオグリコール酸、硫化オレイン酸などの硫化脂肪酸、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネート化合物、五硫化リンとピネンを反応して得られるチオテルペン化合物などを挙げることができる。
上記した(D−1)成分は、上述の硫黄化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この(D−1)成分の配合量は、組成物全量基準における硫黄量換算で0.2質量%以上、0.6質量%以下が好ましい。この配合量が0.2質量%未満では耐焼付性が充分に発揮できないおそれがあり、一方、配合量が0.6質量%を超えると耐FZGマイクロピッチング性等の耐疲労性に劣ると共に、酸化安定度試験(ASTM D 2893準拠)においてスラッジの発生が多くなるおそれがある。好ましい配合量は0.3質量%以上、0.5質量%以下である。
上述の(D−1)成分を配合する際には、所望により(D−2)成分として、上記式(4)で示されるチオリン酸トリヒドロカルビルエステルも配合することが好ましい。
式(4)におけるRは、炭素数6以上、20以下のヒドロカルビル基を示す。このヒドロカルビル基としては、直鎖状、分岐状、環状の炭素数6以上、20以下のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数6以上、20以下のアリール基または炭素数7以上、20以下のアラルキル基を示す。前記アリール基およびアラルキル基においては、芳香環上に1つ以上のアルキル基が導入されていてもよい。また、3つのRO基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
炭素数6以上、20以下のアルキル基およびアルケニル基の例としては、各種へキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロへキシル基、各種へキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロへキセニル基などが挙げられる。
炭素数6以上、20以下のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、デシルフェニル基、2,4−ジデシルフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数7以上、20以下のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、メチルベンジル基、メチルフェネチル基、メチルナフチルメチル基などが挙げられる。
上記式(4)で示されるチオリン酸トリヒドロカルビルエステルの具体例としては、トリへキシルチオホスフェート、トリ2−エチルへキシルチオホスフェート、トリス(デシル)チオホスフェート、トリラウリルチオホスフェート、トリミリスチルチオホスフェート、トリパルミチルチオホスフェート、トリステアリルチオホスフェート、トリオレイルチオホスフェート、トリクしジルチオホスフェート、トリキンリルチオホスフェート、トリス(デシルフェニル)チオホスフェート、トリス[2,4−イソアルキル(C9、C10)フェニル]チオホスフェートなどが挙げられる。これらのチオリン酸トリヒドロカルビルホスフェートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D−2)成分のチオリン酸トリヒドロカルビルエステルは、上記(D−1)成分の硫
黄化合物の添加効果をさらに高めるために、所望により配合されるものであり、その配合量は、組成物の全量に基づき、硫黄量換算で0.1質量%以上、1質量%未満が好ましく、より好ましくは0.2質量%以上、0.5質量%の範囲である。
本組成物においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ各種添加剤、例えば無灰系清浄分散剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤および消泡剤などの中から選ばれる少なくとも1種を配合することができる。
ここで、無灰系清浄分散剤としては、例えばコハク酸イミド類、ホウ素含有コハク酸イミド類、ベンジルアミン類、ホウ素含有ベンジルアミン類、コハク酸エステル類、脂肪酸あるいはコハク酸で代表される一価または二価カルボン酸アミド類などが挙げられる。無灰系清浄分散剤の配合量は、効果および経済性のバランスなどの面から、組成物全量基準で、0.01質量%以上、5質量%以下程度である。
酸化防止剤としては、従来潤滑油に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤を使用することができる。これらの酸化防止剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジベンジルジフェニルアミン、4,4’−ジへキシルジフェニルアミン、4,4’−ジへプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラへキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ベンジルフェニル−α−ナフチルアミン、へキシルフェニル−α−ナフチルアミン、へプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフ
ェニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル、オクタデシル3−(3,5−
ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−トなどのモノフェノール系化
合物、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などのジフェノール系化合物が
挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス
(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンと
ピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジスチアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
酸化防止剤の配合量は、効果および経済性のバランスなどの面から、組成物全量基準で、0.3質量%以上、2質量%以下程度である。
防錆剤としては、金属系スルホネート、アルケニルコハク酸エステル等が挙げられる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.01質量%以上、0.5質量%以下程度である。
金属不活性化剤(銅腐食防止剤)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系およびピリミジン系化合物等が挙げられる。この中でベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。これら金属不活性化剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.01質量%以上、0.1質量%以下程度である。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体など)などが挙げられる。これら粘度指数向上剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、0.5質量%以上、15質量%以下程度である。
流動点降下剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、例えば、質量平均分子量が5万以上、15万以下程度のポリメタクリレートが好ましく用いられる。流動点降下剤の配合量としては、組成物全量基準で、0.1質量%以上、5質量%以下程度である。
消泡剤としては、高分子シリコーン系消泡剤、ポリアクリレート系消泡剤が好ましく、この高分子シリコーン系消泡剤等を配合することにより、消泡性が効果的に発揮される。このような高分子シリコーン系消泡剤としては、例えばオルガノポリシロキサンを挙げることができ、特にトリフルオロプロピルメチルシリコーン油などの含フッ素オルガノポリシロキサンが好適である。消泡剤の配合量は、消泡効果および経済性のバランスなどの点から、組成物全量に基づき、0.005質量%以上、0.1質量%以下程度である。
本発明の生分解性潤滑油組成物は、潤滑性、酸化安定性および生分解性に優れているので、例えば歯車油、軸受油などの各種潤滑油として好適に使用できる。特に風力発電機は屋外で長期間に渡って連続的に使用されるため、その内部に載置される遊星歯車式動力伝達装置(増速機)に用いる潤滑油として本組成物は好適である。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
〔実施例1〜2、比較例1〜4〕
各種エステルを基油として種々の添加剤を配合し、得られた潤滑油組成物(供試油)について、種々の評価を行った。
以下に、基油として用いた各エステルおよび添加剤の詳細を示す。なお、基油として用いた各エステルの性状を表1に示す。
(1)エステルA(A成分)
以下のようにして製造した。
(2−ヒドロキシドデカン酸/1−ドデカノール:仕込みモル比=3/1、H/AL=3)
2−ヒドロキシドデカン酸100g、1−ドデカノール11.42g、酸触媒として硫酸2.0gを300mlのヘプタンと共に容量が500mlの3つ口フラスコに入れた。フラスコにディーンスタークを取り付け、加熱してヘプタンを還流させた。6時間の還流により約8.0mlの水が留出した。溶媒を留去し、さらに120℃で6時間加熱した。その後、室温まで放冷し、100mlの5質量%NaCl水で3回抽出し酸触媒を除去した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで溶媒であるヘプタンを除去して、無色透明又は薄い黄色の粘調な油状物質を回収した(収量112.81g)。この油状物質の1H−NMRスペクトルを図1に示す。このスペクトルから下記の構造を有する液状エステル化合物が生成したことを確認した。1H−NMRスペクトルのピークの帰属を表2に示す。
(2)エステルB(A成分)
(2−ヒドロキシドデカン酸/1−ブタノール:仕込みモル比=6/1、H/AL=6)
1−ドデカノールの代わりに1−ブタノールを5.71g使用した他は、実施例1と同様にしてエステルBを製造した(収量93.49g)。この液状エステル化合物の1H−NMRスペクトルを図2に示す。液状エステル化合物の構造と1H−NMRスペクトルのピークの帰属を表3に示す。
(3)エステルC
ペンタエリスリトール、セバシン酸およびイソステアリン酸からなる複合エステル(uniqema社製 プライオルブ1851)を用いた。
(4)エステルD
ペンタエリスリトール、アジピン酸および炭素数7から10程度の混合モノカルボン酸からなる複合エステル(日清オイリオ社製 PAF−450)を用いた。
(5)エステルE
ジ(ペンタエリスリトール)オレエート(日本油脂製 TOE−500)を用いた。
(6)エステルF(B成分)
ペンタエリスリトールと飽和脂肪酸からなるエステル(花王製 カオルーブ262)を用いた。
(7)エステルG
トリメチロールプロパンジイソステアレートを用いた。
(8)リン酸エステルアミン塩(C成分)
トリデシルアシッドフォスフェートとトリオクチルアミンを用いた。
(9)硫黄化合物(D成分)
メチレンビスジブチルジチオカーバメイトとトリス(2,4−C9−C10イソアルキルフェノール)チオホスフェートを用いた。
(10)酸化防止剤
フェノール系としてチバスペシャルティケミカルズ社製イルガノックスL107を用いた。アミン系としてチバスペシャルティケミカルズ社製イルガノックスL57を用いた。(11)金属不活性化剤 チバジャパン社製IRGAMET39(ベンゾトリアゾール誘導体)を用いた。
(12)防錆剤
ポリブテニルコハク酸イミドを用いた。
(13)消泡剤
シリコーン系消泡剤(信越化学製KF96H12500CS)を用いた。
(14)抗乳化剤
ルブリゾール社製ルブリゾール5957(PAG系)を用いた。
基油と供試油の性状測定方法および各種評価方法は以下の通りである。表4に、供試油の評価結果(生分解性、酸化安定性、潤滑性)を示す。
(1)動粘度
JIS K 2283に準拠して測定した。
(2)酸価
JIS K 2501に準拠して測定した。
(3)ケン化価
JIS K 2503に準拠して測定した。
(4)生分解性
修正MITI試験法(OECD301C)に準拠して生分解率を測定した。なお、1998年7月に改訂されたエコマーク認定基準では、この生分解率は60%以上であることが要求される。
(5)摩擦係数(LFW−1試験)
ASTM D2174に記載されたブロックオンリング試験機(LFW−1)を用いて、金属間摩擦係数を測定し、試料油の潤滑性を評価した。具体的な試験条件を以下に示す。
・試験治具:
リング:Falex S-10 Test Ring(SAE4620 Steel)
ブロック:Falex H-60 Test Block(SAE01 Steel)
・運転条件:
油温:60℃
荷重:177.9N(40lbs)
回転数:500rpm
(6)酸化安定度試験
ASTM D 2893に準拠し、供試油を所定の条件で空気酸化(121℃、312時間)させ、100℃動粘度増加率、酸価増加量およびミリポアフィルターで濾過した際のスラッジ量を測定した。
(7)FZG焼付試験
ASTM D 5182−91に準拠し、90℃、1450rpm、15分間の条件で試験を行い、スカッフィング発生荷重ステージで表示した。
〔評価結果〕
表4に示すように、(A)成分、(B)成分および(C)成分を配合してなる実施例1、2の供試油は、潤滑性、酸化安定性および生分解性のいずれにも優れており、例えば、風力発電装置に用いられる増速機用として優れた性能を発揮することが理解できる。特に、(A)成分単独では、あまり生分解性が高くないにもかかわらず(表1参照)、上述した他の成分と混合してなる供試油が優れた生分解性を発揮することは特筆すべきである。
一方、比較例1から比較例3までの供試油は、基油として用いたエステルC、DおよびDが、エステルAと異なる構造であるため、酸化安定性に劣っている。また、比較例4の供試油は、基油としてPAOを用い、さらにエステルG(分岐脂肪族カルボン酸多価アルコールエステル)を10質量%配合してなるものであるが、生分解性に劣るだけでなく、潤滑性にも劣っている。

Claims (14)

  1. (A)下記式(1)で示されるエステルと、

    (式中、Raは炭素数が4以上、20以下のヒドロカルビル基であり、Rbは炭素数が4以上、18以下のヒドロカルビル基であり、Rcは水素または炭素数が1以上、10以下のアシル基である。nは3以上、15以下である。)
    (B)直鎖飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られ、酸価が0.5mgKOH/g以下であるエステルと、
    (C)酸性リン酸エステルとアルキルアミンとを反応させて得られるリン酸エステルアミン塩と
    (D−1)分子内に−S−S−S−以上の多硫縮合を含まず、かつ分子内の硫黄原子(S)含有量が15質量%以上である硫黄化合物であって、下記(1)から(6)までの少なくともいずれかの硫黄化合物とを配合してなる
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
    (1)モノまたはジ硫化オレフィン
    (2)ジヒドロカルビルモノまたはジスルフィド
    (3)チアジアゾール化合物
    (4)ジチオカーバメイト化合物
    (5)ジスルフィド構造を有するエステル化合物
    (6)硫化油脂、硫化脂肪酸、ジアルキルチオジプロピオネート化合物、およびチオテルペン化合物のうち少なくともいずれか
  2. 請求項1に記載の生分解性潤滑油組成物において、
    さらに、下記(D−2)成分を配合してなる
    (D−2)下記式(4)で示されるチオリン酸トリヒドロカルビルエステル
    (RO−) P=S (4)
    (上記式中、Rは炭素数6以上、20以下のヒドロカルビル基である。)
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  3. (A)下記式(1)で示されるエステルと、

    (式中、Raは炭素数が4以上、20以下のヒドロカルビル基であり、Rbは炭素数が4以上、18以下のヒドロカルビル基であり、Rcは水素または炭素数が1以上、10以下のアシル基である。nは3以上、15以下である。)
    (B)直鎖飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られ、酸価が0.5mgKOH/g以下であるエステルと、
    (C)酸性リン酸エステルとアルキルアミンとを反応させて得られるリン酸エステルアミン塩とを配合してなり、
    さらに、無灰系清浄分散剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤および消泡剤のうち少なくともいずれかを配合してなる
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物において、
    前記(A)成分におけるRaが炭素数4以上、20以下のアルキル基であり、Rbが炭素数4以上、18以下のアルキル基である
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  5. 請求項4に記載の生分解性潤滑油組成物において、
    前記(A)成分におけるRaがブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デカニル基、ドデカニル基、テトラデカニル基、ヘキサデカニル基、およびオクタデカニル基のうちいずれかであり、
    前記(A)成分におけるRbがヘキシル基、オクチル基、デシル基、およびドデカニル基のいずれかであり、
    前記(A)成分におけるRcが水素、メチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、およびノニル基のいずれかである
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物において、
    前記(B)成分のエステルを形成する直鎖飽和脂肪族カルボン酸の炭素数が6以上、12以下である
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  7. 請求項6に記載の生分解性潤滑油組成物において、
    前記(B)成分のエステルを形成する直鎖飽和脂肪族カルボン酸がカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、およびラウリン酸のいずれかである
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物において、
    前記(B)成分のエステルを形成する多価アルコールがペンタエリスリトールおよびトリメチロールプロパンのうち少なくともいずれかである
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物において、
    前記(B)成分の配合量が該組成物全量基準で10質量%以上である
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  10. 請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物において、
    前記(C)成分を形成する酸性リン酸エステルの炭素数が8以上、13以下である
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  11. 請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物において、
    前記(C)成分におけるリン酸エステルアミン塩の配合量が0.2質量%以上、1質量%以下である
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  12. 請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の酸性リン酸エステルがモノエステルであり、モノオクチルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、モノラウリルアシッドホスフェート、モノ(トリデシル)アシッドホスフェート、モノミリスチルアシッドホスフェート、モノパルミチルアシッドホスフェート、およびモノステアリルアシッドホスフェートのいずれかである
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  13. 請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の酸性リン酸エステルがジエステルであり、ジオクチルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジ(トリデシル)アシッドホスフェート、ジパルミチルアシッドホスフェート、およびジステアリルアシッドホスフェートのいずれかである
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
  14. 請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物がギヤ油である
    ことを特徴とする生分解性潤滑油組成物。
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