JP5673196B2 - 静電潜像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
具体的に、ガラス転移点の低下によっては、例えばトナーの保存中または画像形成工程における現像装置のトナーボックス中において、トナーが凝集するブロッキングが発生する、また得られる可視画像にドキュメントオフセット現象が生じる、などの問題が生じることとなる。
結着樹脂微粒子の水系分散液と、着色剤微粒子の水系分散液とを混合し、当該結着樹脂微粒子および着色剤微粒子を凝集・熱融着させて着色粒子を形成する凝集・熱融着工程を有し、前記結着樹脂微粒子が、結晶性ポリエステル樹脂微粒子を核粒子とし、当該核粒子上に、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体よりなるラジカル重合性モノマーユニットをシード重合して非晶性樹脂を被覆してなるコア・シェル構造を有するものであり、
得られるトナーが、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、当該結着樹脂が、前記スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体よりなるラジカル重合性モノマーユニットから得られる非晶性樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを有し、
示差走査熱量計により測定される、0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程における結晶性ポリエステル樹脂に由来の吸熱ピークに基づく吸熱量Q1と、0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程における結晶性ポリエステル樹脂に由来の吸熱ピークに基づく吸熱量Q2との比(Q2/Q1)が0.85以上であることを特徴とする。
この比(Q2/Q1)が上記の範囲にあることにより、トナーが熱履歴を受けることによる非晶性樹脂の結晶性樹脂への相溶が抑制されることから、非晶性樹脂に結晶性樹脂が相溶することに起因してトナーのガラス転移点が大きく低下することがなくなるため、十分な耐熱保管性(耐ブロッキング性)および耐ドキュメントオフセット性が得られる。
測定手順としては、トナー1.0mg〜3.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットする。またリファレンスとしては空のアルミニウム製パンを使用する。
このような示差走査熱量計(DSC)を用いた測定によって得られるDSC曲線において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークに基づく吸熱量(ΔH〔J/g〕)とは、離型剤に由来の吸熱ピークを除いた結晶性樹脂のみに由来する吸熱ピークによるものであり、吸熱ピークとベースラインで区切られた吸熱波形の面積により算出されたエネルギー量ΔH〔J/g〕として示されるものである。結晶性樹脂に由来する吸熱ピークに基づく吸熱量の算出に際して、結晶性樹脂に由来の吸熱ピークが単独で存在して明確である場合には問題はないが、図1に示すように、結晶性樹脂に由来の吸熱ピークと離型剤に由来の吸熱ピークが重なり合うような場合には、2つの吸熱ピーク(吸熱波形)が重なり合う谷部分の極小値よりベースラインに垂線を下ろした直線により、吸熱波形、すなわち、吸熱量を切り分けるものとする。
本発明のトナーを構成する結着樹脂は、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含有するラジカル重合性モノマーユニットから得られる非晶性樹脂と、結晶性樹脂とを含有するものである。
本発明のトナーに係る結晶性樹脂は、示差走査熱量計(DSC)によって測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピークを有するものである。
一方、結晶性樹脂の融点が過大である場合には、十分な低温定着性が得られなくなるおそがある。
具体的には、例えば測定装置として「HLC−8120GPC」(東ソー社製)を用い、また検量線として標準ポリスチレン検量線を用いることによって測定される。
具体的には、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸;ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;およびこれらカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
具体的には、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等の脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」のいずれをも含むことを意味するものである。
本発明のトナーに係る非晶性樹脂は、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含有するラジカル重合性モノマーユニットから得られる重合体、すなわちスチレン系単量体に由来の構造単位と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体に由来の構造単位とを有する共重合体である。
これらは、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
これらは、単独または2種以上を組合せて用いることができる。
アミン系化合物の具体例としては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、およびこれらの第4級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド;ビニルピリジン、ビニルピロリドン;ビニルN−メチルピリジニウムクロリド、ビニルN−エチルピリジニウムクロリド、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
非晶性樹脂のガラス転移点が過小である場合には、トナーの耐熱性(熱的強度)が低下し、これにより十分な耐熱保管性および耐ドキュメントオフセット性が得られなくなるおそれがある。
一方、非晶性樹脂のガラス転移点が過大である場合には、十分な低温定着性が得られなくなるおそがある。
本発明に係るトナーを構成する着色剤としては、公知の無機または有機着色剤を使用することができる。以下に、具体的な着色剤を示す。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックや、マグネタイト、フェライトなどの磁性粉が挙げられる。
また、マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
また、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
これらの着色剤は、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
磁性粉としては、例えばマグネタイト、γ−ヘマタイト、または各種フェライトなどを用いることができる。
磁性粉の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜200質量部である。
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤および負帯電制御剤を用いることができる。
具体的には、正帯電制御剤としては、例えば「ニグロシンベースEX」(オリエント化学工業社製)などのニグロシン系染料、「第4級アンモニウム塩P−51」(オリエント化学工業社製)、「コピーチャージPX VP435」(ヘキストジャパン社製)等の第4級アンモニウム塩、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料、および「PLZ1001」(四国化成工業社製)等のイミダゾール化合物などが挙げられる。
また、負帯電制御剤としては、例えば、「ボントロンS−22」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンS−34」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンE−81」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンE−84」(オリエント化学工業社製)、「スピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等の金属錯体、チオインジゴ系顔料、「コピーチャージNX VP434」(ヘキストジャパン社製)等の第4級アンモニウム塩、「ボントロンE−89」(オリエント化学工業社製)等のカリックスアレーン化合物、「LR147」(日本カーリット社製)等のホウ素化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カーボン等のフッ素化合物などが挙げられる。負帯電制御剤として用いられる金属錯体としては、上記に示したもの以外にもオキシカルボン酸金属錯体、ジカルボン酸金属錯体、アミノ酸金属錯体、ジケトン金属錯体、ジアミン金属錯体、アゾ基含有ベンゼン−ベンゼン誘導体骨格金属体、アゾ基含有ベンゼン−ナフタレン誘導体骨格金属錯体などの各種の構造を有するものが挙げられる。
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
ワックスとしては、特に低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型のポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックス、およびベヘン酸ベヘネート等のエステル系ワックスを好適に用いることができる。
ワックスの具体的としては、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックス等の分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等のエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等のアミド系ワックスなどが挙げられる。
これらのうちでは、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの(具体的には、融点が40〜90℃のもの)が好ましい。
本発明のトナーは、流動性、帯電性およびクリーニング性などを改良するために、流動化剤およびクリーニング助剤などの外添剤が添加されたものであってもよい。
これら無機微粒子は、耐熱保管性および環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
本発明のトナーにおいては、前述のように、トナーを構成する非晶性樹脂のガラス転移点がトナーのガラス転移点であり、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定されるものである。
本発明のトナーを構成するトナー粒子の粒径は、例えば体積基準のメディアン径で3〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜8μmとされる。
体積基準のメディアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散処理を1分間行い、トナー粒子の分散液を調製し、このトナー粒子の分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメディアン径とする。
本発明のトナーを構成するトナー粒子は、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950〜0.995である。
具体的には、市販の専用シース液に界面活性剤を溶解させたものに試料(トナー)を添加して馴染ませた後、超音波分散処理を1分間行って分散液を調製し、この分散液について、「FPIA−2100」を用い、測定条件をHPF(高倍率撮像)モードとし、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度にて測定を行う。ここで、この範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、この測定によって得られた測定値に基づいて下記式(T)で示される円形度を算出する。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、平均円形度は、上記の円形度の測定対象である各トナー粒子の円形度の平均値、すなわち各トナー粒子の円形度を足し合わせ、全トナー粒子数で割り算することによって算出される。
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
本発明のトナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄等の強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛等の合金、フェライトおよびマグネタイト等の強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散したバインダー型キャリアなどを用いることもできる。コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
キャリアの体積基準のメディアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
本発明のトナーは、比(Q2/Q1)が0.85以上であることが必要とされていることから明らかなように、結着樹脂を構成するスチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含有するラジカル重合性モノマーユニットから得られる非晶性樹脂と結晶性樹脂が、非相溶の状態、すなわち、結晶性樹脂が非晶性樹脂に溶け込まずに、分散状態で存在している構造(トナー内部構造)を有するものである。好ましい具体例としては、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含有するラジカル重合性モノマーユニットから得られる非晶性樹脂中に、結晶性樹脂がサブミクロンオーダーにて微細に分散している状態である。
ここに、「コア・シェル構造」とは、シェルがコア粒子を完全に被覆している形態のみならず、コア粒子の一部を被覆しているものであってもよい。また、シェルを構成するシェル用非晶性樹脂の一部がコア粒子中にドメインなどを形成しているものであってもよい。さらに、シェルが組成の異なる樹脂(非晶性樹脂)よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよい。
ここに、シェル用非晶性樹脂としては、そのガラス転移点が45℃以上であって60℃以下であることが好ましい。また、その重量平均分子量が8,000以上であって50,000以下であることが好ましい。
ここに、本発明のトナーにおいては、非晶性樹脂および結晶性樹脂の存在状態によって結着樹脂の構成を制御すること、具体的には結晶性樹脂が非晶性樹脂中にサブミクロンオーダーにて分散された状態とし、非晶性樹脂と結晶性樹脂を分子同士が絡んだ状態ではなく、互いに分離した状態で存在させることにより、結晶性樹脂の非晶性樹脂への相溶の抑制が達成されたものと推測する。
本発明のトナーの製造方法は、特に限定されるものではなく、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法などを用いることができるが、結晶性樹脂の分散均一性の観点から、乳化凝集法が好ましい。
乳化凝集法による本発明のトナーの製造方法は、結着樹脂微粒子の水系分散液と、着色剤微粒子の水系分散液とを混合し、当該結着樹脂微粒子および着色剤微粒子を凝集・熱融着させて着色粒子を形成する凝集・熱融着工程を経ることを特徴とするものである。
このような工程によって構成される製造方法によれば、少なくとも結晶性樹脂および非晶性樹脂よりなる結着樹脂と着色剤とを含有するコア粒子と、その外周面を被覆するシェル用非晶性樹脂よりなるシェルとからなるコア・シェル構造を有するトナー粒子よりなり、かつ外添剤が添加されてなる構成のトナーを得ることができる。
(2)水系媒体中において、結晶性樹脂微粒子を基礎粒子とし、この基礎粒子にラジカル重合性モノマーユニットをシード重合して非晶性樹脂よりなるシェルを形成し、これにより結着樹脂微粒子を形成する結着樹脂微粒子分散液の調製工程
(3)着色剤微粒子の水系分散液を調製する着色剤微粒子分散液調製工程
(4)結着樹脂微粒子および着色剤微粒子を水系媒体中で塩析、凝集、融着させて着色粒子を形成する凝集・熱融着工程
(5)着色粒子の表面を非晶性樹脂よりなるシェルによって被覆してトナー粒子を形成するシェル化工程
(6)トナー粒子の分散液から当該トナー粒子を固液分離し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過・洗浄工程
(7)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
(8)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
この工程は、結晶性樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
具体的には、例えば結晶性樹脂を酢酸エチルなどの溶剤に溶解し、それを分散機を用いて水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶剤処理を行う手法、あるいは溶剤を用いることなく、水系媒体中において120℃以上の温度条件下で分散処理を行う手法などが挙げられる。
また、結晶性樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を用いる場合においては、ドデシルベンゼンスルフォン酸などの長鎖の炭化水素基および酸性基を有する化合物よりなる界面活性剤が含有された水系媒体中に、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物とを含有する組成物よりなる油滴を形成させ、当該油滴において多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物とを重縮合させて結晶性ポリエステル樹脂を得、これにより、結晶性樹脂微粒子の分散液を調製することもできる(例えば特開2006−337995号公報参照)。
この工程は、結晶性樹脂微粒子と、非晶性樹脂を得るためのラジカル重合性モノマーユニットとから結着樹脂微粒子を形成し、当該結着樹脂微粒子の水系分散液を調製する工程である。
水溶性重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。
連鎖移動剤としては、2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン、およびスチレンダイマーなどを用いることができる。
ここに、上記結晶性樹脂微粒子の粒径および結着樹脂微粒子の粒径は、「マイクロトラックUPA−150(日機装社製)」を用いて動的光散乱法によって測定される。
この工程は、着色剤微粒子の水系分散液を調製する工程である。
着色剤微粒子の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態におい行われる。
着色剤微粒子の分散処理に使用する分散機としては、特に限定されず、例えば高速回転するローターを備えた攪拌装置、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、キャビトロン、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザーなどを用いることができる。
この着色剤微粒子の粒径は、例えば、上述の機械的エネルギーの大きさを調整することにより制御することができる。
イオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
この工程は、結着樹脂微粒子と、着色剤微粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)の粒子を得、さらにその粒子の形状を調整して着色粒子を得る工程である。
この凝集・熱融着工程においては、結着樹脂微粒子および着色剤微粒子と共に、必要に応じて離型剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。
ここに、結着樹脂微粒子と着色剤微粒子と共に離型剤を塩析/融着させる場合においては、塩析/融着系への離型剤微粒子の添加は、適宜の手法によって調製された離型剤微粒子の分散液を、凝集・熱融着工程にて塩析/融着系に添加してもよく、また結着樹脂微粒子分散液の調製工程において得られる結着樹脂微粒子分散液に予め添加しておいてもよい。
また、融着を効果的に行なわせるために、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
塩析剤を構成するアルカリ金属としては、例えばリチウム、カリウム、ナトリウムなどが挙げられ、塩析剤を構成するアルカリ土類金属としては、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。これらのうちでは、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。
また、これらのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の対イオン(塩を構成する陰イオン)としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
この工程は、凝集・熱融着工程において得られた着色粒子の表面を非晶性樹脂よりなるシェルによって被覆し、これにより、着色粒子よりなるコア粒子の表面を覆うようにシェルが形成されてなる構成のトナー粒子を得る工程である。
この工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、多価カルボン酸化合物としてのセバシン酸(分子量202.25)220質量部と、多価アルコール化合物としての1,4−ブタンジオール(分子量144.21)157質量部とを仕込み、この系を撹拌しながら1時間かけて内温を190℃にまで昇温させ、均一に撹拌された状態であることを確認した後、触媒としてTi(OBu)4 を、多価カルボン酸化合物の仕込み量に対して0.003質量%の量で投入した。その後、生成する水を留去しながら、6時間かけて内温を190℃から240℃まで昇温させ、さらに温度240℃の条件で6時間かけて脱水縮合反応を継続することによって重合を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂(以下、「結晶性ポリエステル樹脂(1)」ともいう。)を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)について、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用い、昇温速度10℃/minの条件でDSC曲線を得、吸熱ピークトップ温度を測定する手法によって融点(Tm)を測定したところ、64℃であった。
また、GPC(「HLC−8120GPC」(東ソー社製))によって分子量を測定したところ、標準スチレン換算の数平均分子量が3,600であった。
結晶性ポリエステル樹脂の合成例1において、多価アルコール化合物としてエチレングリコール(分子量62.07)68質量部を用いたこと以外は当該結晶性ポリエステル樹脂の合成例1と同様にして結晶性ポリエステル樹脂(以下、「結晶性ポリエステル樹脂(2)」ともいう。)を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂(2)について、結晶性ポリエステル樹脂の合成例1と同様の手法により、融点(Tm)を測定したところ75℃であり、また分子量を測定したところ、標準スチレン換算の数平均分子量が2,800であった。
結晶性ポリエステル樹脂(1)30質量部を溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂(1)の移送と同時に、当該乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転することにより、体積基準のメディアン径が200nm、固形分量が30質量部の結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(以下、「結晶性樹脂粒子分散液(1)」ともいう。)を調製した。
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製例1において、結晶性ポリエステル樹脂(1)に代えて結晶性ポリエステル樹脂(2)を用いたこと以外は当該結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製例1と同様の手法により、体積基準のメディアン径が250nm、固形分量が30質量部の結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(以下、「結晶性樹脂粒子分散液(2)」ともいう。)を調製した。
離型剤としてのベヘン酸ベヘネート(融点71℃)60質量部と、イオン性界面活性剤「ネオゲン RK」(第一工業製薬社製)5質量部と、イオン交換水240質量部とを混合した溶液を95℃に加熱し、ホモジナイザー「ウルトラタックスT50」(IKA社製)を用いて十分に分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて分散処理することにより、体積平均径が240nm、固形分量が20質量部の離型剤微粒子の分散液(以下、「離型剤粒子分散液(1)」ともいう。)を調製した。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、結晶性樹脂粒子分散液(1)1450質量部と、離型剤粒子分散液(1)650質量部と、イオン交換水1250質量部とを仕込み、更に過硫酸カリウム10.3質量部をイオン交換水210質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下において、スチレン274.1質量部、n−ブチルアクリレート139.2質量部およびメタクリル酸21.8質量部よりなるラジカル重合性モノマーユニットとn−オクチルメルカプタン8.2質量部とからなる重合性単量体混合液を2時間かけて滴下後、80℃で2時間にわたって加熱撹拌することによってシード重合を行い、重合が終了した後、28℃まで冷却することにより、結晶性ポリエステル樹脂(1)よりなるコア粒子に非晶性樹脂が被覆してなる構成のコア・シェル構造を有する結着樹脂微粒子の水系分散液(以下、「結着樹脂粒子分散液(1)」ともいう。)を調製した。
得られた結着樹脂粒子分散液(1)について、結着樹脂微粒子の粒径を「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定したところ、平均粒径が220nmであり、当該結着樹脂微粒子を構成する結着樹脂の分子量をGPC測定によって測定したところ、重量平均分子量が19,500であった。また、結着樹脂粒子分散液(1)に係る結着樹脂微粒子のガラス転移点、すなわち当該結着樹脂微粒子を構成する非晶性樹脂のガラス転移点をDSC測定によって測定したところ35℃であった。
結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1において、結晶性樹脂粒子分散液(1)に代えて結晶性樹脂粒子分散液(2)を用いたこと以外は当該結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様にしてコア・シェル構造を有する結着樹脂微粒子の水系分散液(以下、「結着樹脂粒子分散液(2)」ともいう。)を調製した。
得られた結着樹脂粒子分散液(2)について、結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様の手法により、結着樹脂微粒子の粒径を測定したところ平均粒径が265nmであり、当該結着樹脂微粒子を構成する結着樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が19,800であり、また、結着樹脂微粒子のガラス転移点(結着樹脂微粒子を構成する非晶性樹脂のガラス転移点)を測定したところ35℃であった。
結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1において、重合性単量体混合液として、スチレン319.8質量部、n−ブチルアクリレート93.5質量部およびメタクリル酸21.8質量部よりなるラジカル重合性モノマーユニットとn−オクチルメルカプタン8.2質量部とからなる混合液を用いたこと以外は当該結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様にしてコア・シェル構造を有する結着樹脂微粒子の水系分散液(以下、「結着樹脂粒子分散液(3)」ともいう。)を調製した。
得られた結着樹脂粒子分散液(3)について、結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様の手法により、結着樹脂微粒子の粒径を測定したところ平均粒径が230nmであり、当該結着樹脂微粒子を構成する結着樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が19,600であり、また、結着樹脂微粒子のガラス転移点(結着樹脂微粒子を構成する非晶性樹脂のガラス転移点)を測定したところ55℃であった。
結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1において、重合性単量体混合液として、スチレン304.6質量部、n−ブチルアクリレート108.8質量部およびメタクリル酸21.8質量部よりなるラジカル重合性モノマーユニットとn−オクチルメルカプタン8.2質量部とからなる混合液を用いたこと以外は当該結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様にしてコア・シェル構造を有する結着樹脂微粒子の水系分散液(以下、「結着樹脂粒子分散液(4)」ともいう。)を調製した。
得られた結着樹脂粒子分散液(4)について、結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様の手法により、結着樹脂微粒子の粒径を測定したところ平均粒径が235nmであり、当該結着樹脂微粒子を構成する結着樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が19,400であり、また、結着樹脂微粒子のガラス転移点(結着樹脂微粒子を構成する非晶性樹脂のガラス転移点)を測定したところ48℃であった。
結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1において、重合性単量体混合液として、スチレン254.5質量部、n−ブチルアクリレート158.8質量部およびメタクリル酸21.8質量部よりなるラジカル重合性モノマーユニットとn−オクチルメルカプタン8.2質量部とからなる混合液を用いたこと以外は当該結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様にしてコア・シェル構造を有する結着樹脂微粒子の水系分散液(以下、「結着樹脂粒子分散液(5)」ともいう。)を調製した。
得られた結着樹脂粒子分散液(5)について、結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様の手法により、結着樹脂微粒子の粒径を測定したところ平均粒径が225nmであり、当該結着樹脂微粒子を構成する結着樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が18,900であり、また結着樹脂微粒子のガラス転移点(結着樹脂微粒子を構成する非晶性樹脂のガラス転移点)を測定したところ27℃であった。
結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1において、重合性単量体混合液として、スチレン237.1質量部、n−ブチルアクリレート176.2質量部およびメタクリル酸21.8質量部よりなるラジカル重合性モノマーユニットとn−オクチルメルカプタン8.2質量部とからなる混合液を用いたこと以外は当該結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様にしてコア・シェル構造を有する結着樹脂微粒子の水系分散液(以下、「結着樹脂粒子分散液(6)」ともいう。)を調製した。
得られた結着樹脂粒子分散液(6)について、結着樹脂微粒子の水系分散液の調製例1と同様の手法により、結着樹脂微粒子の粒径を測定したところ平均粒径が215nmであり、当該結着樹脂微粒子を構成する結着樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量が18,800であり、また、結着樹脂微粒子のガラス転移点(結着樹脂微粒子を構成する非晶性樹脂のガラス転移点)を測定したところ20℃であった。
(1)核粒子の調製(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、アニオン系界面活性剤(ドデシルスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gをイオン交換水3010gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を60℃に昇温させた。
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n−ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、核粒子分散液(以下、「ラテックス(H)」ともいう。)を調製した。
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン89.5g、n−ブチルアクリレート46.2g、メタクリル酸6.4g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に、ベヘン酸ベヘネート56.0g、および結晶性ポリエステル樹脂(1)72gを添加し、60℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
一方、アニオン系界面活性剤(SDS)1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を60℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記ラテックス(H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム−テクニック社製)により、単量体溶液の乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750mlとを添加し、この系を60℃にて3時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行った。
上記のようにして得られた樹脂粒子分散液に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、60℃の温度条件下に、スチレン262.6g、n−ブチルアクリレート132.5g、メタクリル酸15.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し複合樹脂粒子の分散液(以下、「複合樹脂粒子分散液(1)」ともいう。)を得た。
得られた複合樹脂粒子分散液(1)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および13,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は180nm、ガラス転移点は34℃であった。
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、着色剤として25質量部のC.I.Pigment Blue 15:3を徐々に添加した後、撹拌手段「クレアミックスWモーションCLM−0.8」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、体積基準のメディアン径が158nmである着色剤微粒子の水系分散液(以下、「着色剤粒子分散液(1)」ともいう。)を調製した。
なお、着色剤微粒子の体積基準のメディアン径は、「MICROTRAC UPA 150」(HONEYWELL社製)を用い、サンプル屈折率1.59、サンプル比重1.05(球状粒子換算)、溶媒屈折率1.33、溶媒粘度0.797(30℃)、1.002(20℃)、および測定セルにイオン交換水を投入することによって0点調整を行う測定条件によって測定したものである。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、水600質量部を仕込み、窒素気流下において撹拌速度230rpmの条件で撹拌しながら内温を70℃に上昇させた後、スチレン119質量部、n−ブチルアクリレート33質量部、メタクリル酸8質量部、n−オクチルメルカプタン4.5質量部とを添加し、更に重合開始剤(過硫酸カリウム)3質量部をイオン交換水40質量部に溶解させた水溶液を添加し、この系を70℃にて10時間にわたって加熱、撹拌することにより、シェル用の樹脂微粒子(以下、「シェル用樹脂粒子(1)」ともいう。)を調製した。
得られたシェル用樹脂粒子(1)の重量平均分子量(Mw)は13,200であり、また個数平均粒径は221nmであり、ガラス転移点は55.4℃であった。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けたゼブラフラスコに、結着樹脂粒子分散液(1)400質量部(固形分換算)と、イオン交換水1500質量部と、着色剤粒子分散液(1)165質量部とを仕込み、液温を30℃に調整した後、濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物54.3質量部をイオン交換水54.3質量部に溶解させた水溶液を添加し、その後、系の温度を60℃にまで昇温することによって結着樹脂微粒子と着色剤微粒子との凝集反応を開始した。
この凝集反応開始後、定期的にサンプリングを行い、粒度分布測定装置「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて着色粒子の体積基準のメディアン径を測定し、体積基準のメディアン径が5.8μmになった時点で、シェル用樹脂粒子(1)200質量部を添加し、更に塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水2質量部に溶解させた水溶液を10分間かけて添加し、体積基準のメディアン径が6.0μmになるまで撹拌を継続することによって着色粒子の表面にシェルを形成した。このシェルの形成された着色粒子について、フロー式粒子像解析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて円形度を測定したところ、0.951であった。その後、系の温度を65℃にまで昇温して4時間撹拌を継続し、フロー式粒子像解析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)による測定で円形度が0.976に達した時点で、6℃/分の条件で30℃にまで冷却して反応を停止させることにより、コア・シェル構造を有する着色粒子の分散液を得た。
得られたトナー(1)について、DSC測定によってガラス転移点を測定したところ37℃であった。
なお、トナー(1)において、疎水性シリカ粒子の添加によっては、トナー粒子の形状および粒径は変化しなかった。
トナーの作製例1において、結着樹脂粒子分散液(1)に代えて結着樹脂粒子分散液(4)を用いたこと以外は当該トナーの作製例1と同様にしてトナー(以下、「トナー(2)」ともいう。)を得た。
得られたトナー(2)について、DSC測定によってガラス転移点を測定したところ49℃であった。
トナーの作製例1において、結着樹脂粒子分散液(1)に代えて結着樹脂粒子分散液(5)を用いたこと以外は当該トナーの作製例1と同様にしてトナー(以下、「トナー(3)」ともいう。)を得た。
得られたトナー(3)について、DSC測定によってガラス転移点を測定したところ29℃であった。
トナーの作製例1において、結着樹脂粒子分散液(1)に代えて結着樹脂粒子分散液(2)を用いたこと以外は当該トナーの作製例1と同様にしてトナー(以下、「トナー(4)」ともいう。)を得た。
得られたトナー(4)について、DSC測定によってガラス転移点を測定したところ36℃であった。
トナーの作製例1において、結着樹脂粒子分散液(1)に代えて結着樹脂粒子分散液(3)を用いたこと以外は当該トナーの作製例1と同様にしてトナー(以下、「トナー(5)」ともいう。)を得た。
得られたトナー(5)について、DSC測定によってガラス転移点を測定したところ57℃であった。
トナーの作製例1において、結着樹脂粒子分散液(1)に代えて結着樹脂粒子分散液(6)を用いたこと以外は当該トナーの作製例1と同様にして比較用のトナー(以下、「比較用トナー(1)」ともいう。)を得た。
得られた比較用トナー(1)について、DSC測定によってガラス転移点を測定したところ22℃であった。
トナーの作製例1において、結着樹脂粒子分散液(1)に代えて結着樹脂粒子分散液(7)を用いたこと以外は当該トナーの作製例1と同様にして比較用のトナー(以下、「比較用トナー(2)」ともいう。)を得た。
得られた比較用トナー(2)について、DSC測定によってガラス転移点を測定したところ35℃であった。
得られたトナー(1)〜トナー(5)並びに比較用トナー(1)および比較用トナー(2)について、各々、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用い、前述の手法により、比(Q2/Q1)を算出した。結果を表1に示す。
得られたトナー(1)〜トナー(5)並びに比較用トナー(1)および比較用トナー(2)の各々と、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメジアン径60μmのフェライトキャリアを、トナーの濃度が6質量%になるようにV型混合機を用いて混合することにより、現像剤(1)〜現像剤(5)並びに比較用現像剤(1)および比較用現像剤(2)を製造した。
得られた現像剤(1)〜現像剤(5)並びに比較用現像剤(1)および比較用現像剤(2)を構成するトナー(1)〜トナー(5)並びに比較用トナー(1)および比較用トナー(2)について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
画像形成装置として、市販の複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、この装置に現像剤として、それぞれ現像剤(1)〜現像剤(5)並びに比較用現像剤(1)および比較用現像剤(2)を搭載し、熱ローラ定着方式の定着手段における定着加熱部材の表面温度を、80〜150℃の範囲において5℃刻みで変更し、各温度について、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、画像記録シートとして秤量350gの紙を用いて画像形成を行い、画像濃度が0.8のベタ画像を可視画像として得た。
得られたベタ画像(可視画像)の各々について、折り機を用いて折り、この折った状態のベタ画像に圧力0.35MPaの空気を吹きつけた後、その折り目の状態を、限度見本を参照しながら下記に示す基準によって5段階で評価し、ランク3の評価が得られたベタ画像に係る定着加熱部材の表面温度を下限定着温度とした。
ランク2:折り目に従い太い線状の剥離がある。
ランク3:折り目に従い細い線状の剥離がある。
ランク4:折り目の一部にその折り目に従った剥離がある。
ランク5:折れ目に全く剥離がない。
容積10ミリリットル、内径21mmのガラス瓶内に、それぞれ現像剤(1)〜現像剤(5)並びに比較用現像剤(1)および比較用現像剤(2)を構成するトナー0.5gを入れて蓋を閉め、振とう機「タップデンサーKYT−2000」(セイシン企業製)を用い、600回振とうした後、蓋を開けた状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下において2時間放置した。その後、ガラス瓶からトナーを取り出し、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながら48メッシュ(目開き350μm)の篩上にのせ、その篩を「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバーおよびノブナットによって固定した後、送り幅が1mmとなる振動強度によって10秒間にわたって振動を加えた後、篩上に残存したトナーの量(残存トナー質量)を測定し、下記の数式(2)により、トナーの凝集率を算出した。得られたトナーの凝集率に基づいて、トナーの凝集率が15%未満である場合を、耐熱保管性が極めて良好であるとして「◎」、トナーの凝集率が15%以上であって20%以下である場合を、耐熱保管性が良好であるとして「○」、トナーの凝集率が20%を超える場合を、耐熱保管性が悪く、実用上問題があるとして「×」と評価した。この評価においては、トナーの凝集率が20%以下である場合が合格レベルである。
トナーの凝集率=(篩上の残存トナー質量(g)/0.5 )×100
画像形成装置として、「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に対して専用フィニッシャー「FS−608」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を装填したものを用い、中綴じ印刷20部(1部5枚)の自動製品作成テストを50回繰り返して行った。この自動製品作成テストにおいては、1ページ当りの画素率を50%に設定し、また画像記録シート(転写紙)としては、坪量64g紙を用いた。
作成した中綴じ印刷物を室温となるまで自然冷却した後、当該中綴じ印刷物の全ページを目視して確認し、最も可視画像の画像欠損度の大きいページをもって、以下に示す基準によって評価を行った。この評価基準においては、ランク3およびランク4が合格レベルである。
画像部においては白抜けなどの画像欠損が生じ、また非画像部においても明らかな画像移行が生じており、耐ドキュメントオフセット性が極めて不良である。
ランク2:
紙揃えに乱れが生じて一部のページに画像が傾いた状態で小口が裁断されている、あるいは例えば画像部の所々に画像接着の痕跡としての光沢むらの発生があるなどの実用上問題となる画像欠損および画像移行が生じており、耐ドキュメントオフセット性が不良である。
ランク3:
互いに画像部が重なりあったページをめくる際にパリッと音がするものの、画像部および非画像部に通常の使用において、実用上の問題となるような画像欠損および画像移行がなく、耐ドキュメントオフセット性が良好である。
ランク4:
画像部および非画像部ともに全く画像欠損および画像移行がなく、耐ドキュメントオフセット性が極めて良好である。
Claims (4)
- 静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
結着樹脂微粒子の水系分散液と、着色剤微粒子の水系分散液とを混合し、当該結着樹脂微粒子および着色剤微粒子を凝集・熱融着させて着色粒子を形成する凝集・熱融着工程を有し、前記結着樹脂微粒子が、結晶性ポリエステル樹脂微粒子を核粒子とし、当該核粒子上に、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体よりなるラジカル重合性モノマーユニットをシード重合して非晶性樹脂を被覆してなるコア・シェル構造を有するものであり、
得られるトナーが、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、当該結着樹脂が、前記スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体よりなるラジカル重合性モノマーユニットから得られる非晶性樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを有し、
示差走査熱量計により測定される、0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程における結晶性ポリエステル樹脂に由来の吸熱ピークに基づく吸熱量Q1と、0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程における結晶性ポリエステル樹脂に由来の吸熱ピークに基づく吸熱量Q2との比(Q2/Q1)が0.85以上であることを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法。 - 前記結晶性ポリエステル樹脂の融点が40〜95℃であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
- 前記非晶性樹脂のガラス転移点が25〜50℃であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
- 前記凝集・熱融着工程において得られる着色粒子の表面を非晶性樹脂よりなるシェルによって被覆してコア・シェル構造を形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
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