JP6083341B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
トナーの低温定着化を図る手段としては、トナーを構成する樹脂(結着樹脂)をガラス転移点の低いものとすることが一般的に行われている。しかしながら、ガラス転移点があまりにも低い結着樹脂を用いたトナーは、粉体状態において凝集が生じ易くなり、トナーの保管時や現像器内においてブロッキングが発生してしまう、という問題があった。また、トナー粒子に可塑剤を含有させることによってもトナーの低温定着化を図ることができるが、上述と同様にトナーのブロッキングが発生する、という問題があった。
このような定着画像の強度不足を解消するため、トナー粒子をコア−シェル構造のものとして、コア粒子にガラス転移点の低い樹脂を用い、シェル層にガラス転移点の高い樹脂を用いたトナーが知られている。しかしながら、このようなトナーにおいても、低温定着性と耐ブロッキング性の両立が十分に得られるとは言えない。また、シェル層にガラス転移点が高くシャープメルト性を有する結晶性ポリエステル樹脂を導入したトナー(特許文献1参照。)や、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントを結合させた変性結晶性ポリエステル樹脂を導入したトナー(特許文献2参照。)が知られている。
また、特許文献2に開示されたトナーにおいては、耐破砕性は若干得られるものの、結晶性ポリエステル重合セグメントの含有割合が多い変性結晶性ポリエステル樹脂を使用して低温定着性の大幅な改善を図る場合には、やはり十分な耐破砕性が得られない、という問題が発生する。
前記コア粒子がビニル樹脂(A)よりなり、
前記シェル層が、ビニル樹脂(B)からなるマトリクス相中に、ビニル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなる結晶性樹脂がドメイン相として分散されてなることを特徴とする。
前記コア粒子を構成するビニル樹脂(A)のカルボキシ基濃度が0.4mmol/g以上1.0mmol/g以下であり、
前記シェル層を構成するビニル樹脂(B)のカルボキシ基濃度が1.4mmol/g以上2.0mmol/g以下であることが好ましい。
TEMにて観察するトナー粒子の断面は、当該トナー粒子の最大面積の断面であることが好ましい。
四酸化ルテニウムなどの重金属酸化物によるトナー粒子の染色は公知の種々の方法により行うことができる。
この理由は、以下の通りであると考えられる。すなわち、コア粒子およびシェル層にビニル樹脂が含有されていることによって、基本的に耐破砕性が得られる。さらに、コア粒子よりも熱応答性の高いシェル層にビニル変性結晶性ポリエステル樹脂が含有されているために、優れた低温定着性が得られる。しかも、当該ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂がドメイン相として存在しているために、トナー粒子の表面に露出することが抑止され、従って、大量に含有されて極めて優れた低温定着性が得られる場合にも、耐破砕性が確保される。
本発明に係るトナー粒子を構成するコア粒子には、ビニル樹脂(A)が含有されている。
コア粒子を構成するビニル樹脂(A)は、ビニル基を有する単量体(以下、「ビニル単量体」という。)を用いて形成されるものであり、具体的には、ビニル樹脂(A)は、スチレン−アクリル共重合体、スチレン重合体、アクリル重合体などからなるものとすることができ、スチレン−アクリル共重合体からなることが好ましい。
以下に例示するビニル単量体は、1種単独で、または2種以上を組み合せて使用することができる。
一般式(A):H2 C=CR1 −COOR2
・ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
・ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
・ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
・N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
・その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体など。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。また、スルフォン酸基を有する単量体としては、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸などが挙げられる。さらに、リン酸基を有する単量体としてはアシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
ビニル樹脂(A)は、カルボキシ基濃度が0.4mmol/g以上1.0mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.6mmol/g以上0.8mmol/g以下とされる。
ここで、カルボキシ基濃度は、ビニル樹脂中のカルボキシ基の割合であり、水に対する親和性の程度を示し、値が大きい程、水に対する親和性が高いことを示す。
ビニル樹脂(A)のカルボキシ基濃度が過小である場合は、ビニル樹脂(B)とビニル樹脂(A)とに十分に高い親和性が得られないおそれがあり、水系媒体中でのトナー製造時において、均質なシェル層を形成することが困難となるおそれがある。また、ビニル樹脂(A)のカルボキシ基濃度が過大である場合は、ビニル樹脂(A)とビニル樹脂(B)との非相溶の状態を維持することができずに、トナー粒子をコア−シェル構造を有するものとすることができないおそれがある。
式(1):カルボキシ基濃度=[カルボキシ基のモル数/(ビニル樹脂(A)を形成するビニル単量体の分子量×モル分率)の総和]×1000
ビニル樹脂(A)のカルボキシ基濃度は、カルボキシ基を有する単量体の導入比率によって制御することができる。
なお、ビニル樹脂(A)として、カルボキシ基濃度の異なる2種以上のビニル樹脂を用いる場合においては、カルボキシ基濃度は、各々のビニル樹脂のカルボキシ基濃度に各々の含有比率(質量比)を乗じた値の総和をいう。
ビニル樹脂(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量分布から算出された重量平均分子量(Mw)が20,000〜60,000であることが好ましい。
ビニル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が20,000以上であることにより、十分な耐熱保管性が得られる。また、ビニル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が60,000以下であることにより、十分な低温定着性が得られる。
ビニル樹脂(A)のガラス転移点は20〜40℃であることが好ましい。
ビニル樹脂(A)のガラス転移点が20℃以上であることによって、十分な耐熱保管性が得られる。一方、ビニル樹脂(A)のガラス転移点が40℃以下であることによって、十分な低温定着性が得られる。
測定手順としては、測定試料(ビニル樹脂(A))3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点とする。
本発明に係るトナー粒子を構成するシェル層は、ビニル樹脂(B)、および、ビニル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなるビニル変性結晶性ポリエステル樹脂を含有する。具体的には、シェル層は、ビニル樹脂(B)からなるマトリクス相中に、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂がドメイン相として分散されてなる構成を有する。
このシェル層は、コア粒子を完全に被覆した構造を有することが好ましい。このような構造を有することによって、十分な耐熱保管性を得ることができる。
本発明に係るトナー粒子のシェル層においては、ドメイン相はビニル変性結晶性ポリエステル樹脂がマトリクス相中に分散されることによって形成され、ビニル重合セグメントおよび結晶性ポリエステル重合セグメントの両方による集合体がドメイン相として観察されることもあるが、実際上は、ビニル重合セグメントのカルボキシ基濃度によっては、結晶性ポリエステル重合セグメントの集合体がドメイン相として観察されることもあるものと推測される。
シェル層を構成するビニル樹脂(B)は、ビニル単量体を用いて形成されるものであり、具体的には、ビニル樹脂(B)は、スチレン−アクリル共重合体、スチレン重合体、アクリル重合体などからなるものとすることができ、スチレン−アクリル共重合体からなることが好ましい。
ビニル樹脂(B)は、トナーの保管時の温度範囲において、コア粒子を構成するビニル樹脂(A)およびシェル層のドメイン相を構成するビニル変性結晶性ポリエステル樹脂との相溶性が共に低いものである。
ビニル樹脂(B)を形成するためのビニル単量体は、1種単独で、または2種以上を組み合せて使用することができる。
特に、酸基を有する重合性単量体としては、水系媒体中におけるトナー製造時に表面に所期の極性を得る観点から、アクリル酸および/またはメタクリル酸を用いることが好ましい。
ビニル樹脂(B)における酸基を有する重合性単量体に由来の構造単位の含有割合、すなわち、当該ビニル重合セグメントを形成するために用いられるビニル単量体の全質量に対する、酸基を有する重合性単量体の質量の割合(以下、「酸基量」ともいう。)は、4〜10質量%であることが好ましい。
シェル層を構成するビニル樹脂(B)における酸基量が4質量%以上であることにより、当該ビニル樹脂(B)の微粒子の表面の極性が高いものとなり、コア粒子の表面に均一性の高いシェル層を形成することができる。ビニル樹脂(B)における酸基量が10質量%以下であることにより、酸基を有する重合性単量体に由来の部分は硬くなるが、ビニル樹脂(B)全体としては硬くなり過ぎず、低温定着性が阻害されることを抑止することができる。
ビニル樹脂(B)は、カルボキシ基濃度が1.4mmol/g以上2.0mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは1.2mmol/g以上1.8mmol/g以下とされる。
ビニル樹脂(B)のカルボキシ基濃度が過小である場合は、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂が、形成されるべきトナー粒子の表面に露出した状態となるおそれがあり、従って得られるトナーに十分な耐破砕性が得られないおそれがある。また、ビニル樹脂(B)のカルボキシ基濃度が過大である場合は、水系媒体中でのトナー製造時に形成されるべきトナー粒子の周囲の樹脂のカルボキシ基濃度が過大になり、トナー粒子の表面への水分の吸着量が増えることによって、トナーブリスターの発生や帯電量環境差の拡大が生じるおそれがある。
ビニル樹脂(B)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量分布から算出された重量平均分子量(Mw)が20,000〜60,000であることが好ましい。
ビニル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)が20,000以上であることにより、十分な耐破砕性が確実に得られる。また、ビニル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)が60,000以下であることにより、十分な低温定着性が得られる。
ビニル樹脂(B)による分子量分布測定は、測定試料としてビニル樹脂(B)を用いたことの他は上記と同様にして行われるものである。
ビニル樹脂(B)のガラス転移点は50〜75℃であることが好ましい。
ビニル樹脂(B)のガラス転移点が50℃以上であることによって、十分な耐熱保管性が確実に得られる。一方、ビニル樹脂(B)のガラス転移点が75℃以下であることによって、十分な低温定着性が確実に得られる。
ビニル樹脂(B)のガラス転移点は、測定試料としてビニル樹脂(B)を用いたことの他は上記と同様にして測定される値である。
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂は、ビニル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなる結晶性樹脂である。
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂は、トナーの保管時の温度範囲において、コア粒子を構成するビニル樹脂(A)およびシェル層を構成するビニル樹脂(B)との相溶性が共に低いものである。
ビニル変性ポリエステル樹脂の融点は、60〜90℃であることが好ましく、より好ましくは70〜80℃である。
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性および優れた耐熱保管性が確実に得られる。
ビニル重合セグメントは、ビニル単量体を用いて形成されるものであり、具体的には、ビニル重合セグメントは、スチレン−アクリル共重合体、スチレン重合体、アクリル重合体などからなるものとすることができ、スチレン−アクリル共重合体からなることが好ましい。
ビニル重合セグメントを形成するためのビニル単量体は、1種単独で、または2種以上を組み合せて使用することができる。
このような炭素数差の(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、ビニル重合セグメント内の極性のバラつきが小さくなり、ドメイン相を形成しやすくなる。
結晶性ポリエステル重合セグメントは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する多価カルボン酸および1分子中に水酸基を2個以上含有する多価アルコールにより形成される結晶性のものであって、具体的には示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものをいう。
多価カルボン酸としては、結晶性ポリエステル重合セグメントに優れた結晶性が得られるという観点から、好ましくはカルボキシ基を含めた主鎖の炭素数が4〜12、特に好ましくは主鎖の炭素数が6〜10である直鎖型の脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。
多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価アルコールとしては、結晶性ポリエステル重合セグメントに優れた結晶性が得られるという観点から、脂肪族ジオールの中でも、主鎖の炭素数が2〜15である直鎖型の脂肪族ジオールを用いることが好ましく、特に、主鎖の炭素数が2〜10である脂肪族ジオールを用いることが好ましい。
多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度は、0.1mmol/g以上7.5mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは1.0mmol/g以上6.0mmol/g以下とされる。
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度が過小である場合は、水系媒体中でのトナー製造時において、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の良好な分散性が得られず凝集してしまう。また、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度が過大である場合は、ドメイン相を形成すべきビニル変性結晶性ポリエステル樹脂が、形成されるべきトナー粒子の表面に露出した状態で粒子形成されるおそれがあり、得られるトナーにおいては十分な耐破砕性が得られないおそれがある。
本発明において、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度は下記式(2)により算出される値である。
式(2):エステル基濃度=[ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂を形成する多価カルボン酸および多価アルコールに含まれるエステル基となりうる部分のモル数の平均/((多価カルボン酸および多価アルコールの分子量の合計)−(脱水重縮合して分離した水の分子量×エステル基のモル数))]×1000
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度は、用いるモノマー種を選択することによって制御することができる。
下記式(a)で表わされる多価カルボン酸と下記式(b)で表わされる多価アルコールとにより得られるビニル変性結晶性ポリエステル樹脂は下記式(c)で表わされる。
式(a):HOOC−R1 −COOH
式(b):HO−R2 −OH
式(c):−(−OCO−R1 −COO−R2 −)n −
『ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂を形成する多価カルボン酸および多価アルコールに含まれるエステル基となりうる部分のモル数の平均』とは、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂を形成する多価カルボン酸のカルボキシ基のモル数および多価アルコールのヒドロキシル基のモル数の平均であり、具体的には、式(a)の多価カルボン酸のカルボキシ基のモル数「2」と、式(b)の多価アルコールのヒドロキシル基のモル数「2」との平均「2」である。
また、式(a)の多価カルボン酸の分子量をm1、式(b)の多価アルコールの分子量をm2、式(c)のビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の分子量をm3とすると、『(多価カルボン酸および多価アルコールの分子量の合計)−(脱水重縮合して分離した水の分子量×エステル基のモル数)』は、(m1+m2)−(18×エステル基のモル数の平均「2」)となり、従って、式(c)のビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の分子量「m3」となる。
以上より、式(c)で表わされるビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度は、「2/m3」となる。
また、多価カルボン酸を2種以上、または多価アルコールを2種以上併用する場合には、それぞれの多価カルボン酸のカルボキシ基と分子量の平均および多価アルコールのヒドロキシル基と分子量の平均からなる。
ビニル重合セグメントの含有割合は、具体的には、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、結晶性ポリエステル重合セグメントとなる多価カルボン酸および多価アルコールと、ビニル重合セグメントとなるビニル単量体と、これらを結合させるための両反応性モノマーとを合計した全質量に対する、ビニル単量体の質量の割合である。
ビニル重合セグメントの含有割合が5質量%以上であることによって、ビニル樹脂(B)との界面において高分子鎖の絡み合いが十分に得られて定着画像の画像強度を高くすることができる。一方、30質量%以下であることによって、良好なドメイン−マトリクス構造を形成し易くなる。
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量分布から算出された重量平均分子量(Mw)は20,000〜60,000であることが好ましい。
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が20,000以上であることによって、十分な耐破砕性が確実に得られる。一方、重量平均分子量(Mw)が60,000以下であることによって、十分な低温定着性が確実に得られる。
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のGPCによる分子量分布測定は、測定試料としてビニル変性結晶性ポリエステル樹脂を用いたことの他は上記と同様にして行われるものである。
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル重合セグメントとビニル重合セグメントとを両反応性モノマーを介して結合することにより製造することができる。詳細には、ビニル単量体を付加重合させる工程の前、中および後の少なくともいずれかの時点で、多価カルボン酸および多価アルコールを存在させて縮重合反応を行うことによって製造することができる。
具体的には、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、以下の3つが挙げられる。
(1)ビニル重合セグメントを形成するためのビニル単量体の付加重合反応を行った後、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールの縮重合反応を行い、必要に応じて架橋剤となる3価以上のビニル単量体を反応系に添加し、縮重合反応をさらに進行させる方法。
(2)結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールの縮重合反応を行った後、ビニル重合セグメントを形成するためのビニル単量体の付加重合反応を行い、その後、必要に応じて架橋剤となる3価以上のビニル単量体を反応系に添加し、縮重合反応に適した温度条件下で、縮重合反応をさらに進行させる方法。
(3)付加重合反応に適した温度条件下で、ビニル重合セグメントを形成するためのビニル単量体の付加重合反応、および、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールの縮重合反応を平行して行い、付加重合反応が終了した後、必要に応じて架橋剤となる3価以上のビニル単量体を反応系に添加し、縮重合反応に適した温度条件下で縮重合反応をさらに進行させる方法。
また、両反応性モノマーとして、多価のビニル系カルボン酸よりも、一価のビニル系カルボン酸を用いることが、トナーの耐久性の観点から好ましい。これは、一価のビニル系カルボン酸とビニル単量体との反応性が高いため、ハイブリッド化し易いためと考えられる。一方、フマル酸などのジカルボン酸を両反応性モノマーとして用いた場合、トナーの耐久性がやや劣るものとなる。これは、ジカルボン酸とビニル単量体との反応性が低く、均一にハイブリッド化しにくいため、ドメイン構造をとるためと考えられる。
本発明に係るトナー粒子におけるコア粒子およびシェル層の質量比率(コア粒子:シェル層)は、95:5〜85:15の範囲にあることが好ましい。
トナー粒子におけるコア粒子の質量比率が95質量%以下であることにより、コア粒子がシェル層によって完全に被覆された構造のトナー粒子を得ることができ、その結果、優れた耐破砕性が十分に得られる。一方、トナー粒子におけるコア粒子の質量比率が85質量%以上であることにより、十分な低温定着性を得ることができる。
ビニル樹脂(A)およびビニル樹脂(B)のカルボキシ基濃度は、トナー粒子から抽出したビニル樹脂(A)およびビニル樹脂(B)から、例えば重クロロホルムを用いた12C−NMR(核磁気共鳴)測定によって、各モノマー由来の炭素原子のピークから、モノマー種および組成比を特定し、上記に従って算出することができる。
各樹脂をトナー粒子から抽出する方法としては、適切な溶媒を用いて分離する方法を用いることができる。
具体的には、まず、トナーをメチルエチルケトン(MEK)に常温で浸漬させる。このとき、トナー粒子を構成するビニル樹脂(A)およびビニル樹脂(B)のみMEKに溶解されるので、溶解後、遠心分離により分離した上澄み液からビニル樹脂(A)およびビニル樹脂(B)が得られる。一方、遠心分離後の固形分を同様にMEKに浸漬させ、かつ、沸点近くまで加熱する。このとき、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂は一様に溶解される。その後、冷却することにより、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のみを析出させることができる。
次いで、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂が析出された溶液を遠心分離し、遠心分離後の固形分を65℃で60分間加熱してテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、これを60℃においてガラス濾過器で濾過することにより濾液からビニル変性結晶性ポリエステル樹脂が得られる。なお、当該操作でろ過中に温度が下がるとビニル変性結晶性ポリエステル樹脂が析出してしまうため、保温した状態で操作する。
本発明に係るトナー粒子中には、結着樹脂の他に、必要に応じて着色剤や、離型剤、荷電制御剤などの内添剤が含有されていてもよい。
着色剤や離型剤、荷電制御剤は、それぞれ、コア粒子に含有されていてもよく、シェル層に含有されていてもよく、両方に含有されていてもよいが、着色剤および離型剤はコア粒子に含有されていることが好ましい。
着色剤としては、一般に知られている染料および顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、マグネタイト、フェライトなどの磁性体、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に使用することができる。
カラーのトナーを得るための着色剤としては、染料、有機顔料などの公知のものを任意に使用することができ、具体的には、有機顔料としては例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントブルー15;3、同60、同76などを挙げることができ、染料としては例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同69、同70、同93、同95などを挙げることができる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量部である。
離型剤としては、特に限定されるものではなく公知の種々のワックスを用いることができ、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
離型剤の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して通常1〜30質量部とされ、より好ましくは5〜20質量部の範囲とされる。離型剤の含有割合が上記範囲内であることにより、十分な定着分離性が得られる。
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、結着樹脂100質量部に対して通常0.1〜5.0質量部とされる。
本発明のトナーの平均粒径は、例えば体積基準のメジアン径で3〜9μmであることが好ましく、更に好ましくは3〜8μmとされる。この粒径は、例えば後述する乳化重合凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
本発明のトナーは、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950〜0.995である。
具体的には、試料(トナー粒子)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
本発明のトナーは、混練・粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、乳化重合凝集法、その他の公知の種々の方法によって製造することができるが、コア粒子の表面に均一にシェル層を形成させることができること、および、シェル層におけるドメイン−マトリクス構造を容易に形成させることができることから、乳化凝集法を用いることが好ましい。
具体的には、水系媒体に分散されたビニル樹脂(A)の微粒子を凝集、融着させてコア粒子となる凝集粒子を形成し、当該コア粒子となる凝集粒子の表面にシェル層を形成すべきビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の微粒子の分散液、および、ビニル樹脂(B)の微粒子の分散液を添加して、これらの微粒子を凝集、融着させることによりトナー粒子を得る乳化凝集法によって製造することが好ましい。この乳化凝集法によるトナーの製造においては、凝集粒子の表面に、シェル層のドメイン相を形成すべきビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の微粒子を先行して凝集させ、次いで、シェル層のマトリクス相を形成すべきビニル樹脂(B)の微粒子を凝集させることが好ましい。このようにトナーを製造することにより、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の微粒子を形成されるべきシェル層の内方側に分散させることができる。その結果、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂が、形成されるべきトナー粒子の表面に露出しない、または、露出してもその量が極めて少ない状態で粒子形成させることができ、従って、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂を大量に導入して大幅な低温定着化を図ったトナー粒子においても、優れた耐破砕性が得られる。
また、乳化重合凝集法を用いてトナーを製造する場合においては、ビニル樹脂の微粒子を形成する際に、予め、ビニル樹脂を形成するための単量体溶液に溶解または分散させておくことによってトナー粒子中に導入することもできる。
上記のトナー粒子は、そのままで本発明のトナーを構成することができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、光沢処理が行われていることが好ましい。
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。
本発明のトナーは、一般的な電子写真方式の画像形成方法に用いることができ、このような画像形成方法が行われる画像形成装置としては、例えば静電潜像担持体である感光体と、トナーと同極性のコロナ放電によって当該感光体の表面に一様な電位を与える帯電手段と、一様に帯電された感光体の表面上に画像データに基づいて像露光を行うことにより静電潜像を形成させる露光手段と、トナーを感光体の表面に搬送して前記静電潜像を顕像化してトナー像を形成する現像手段と、当該トナー像を必要に応じて中間転写体を介して記録材に転写する転写手段と、記録材上のトナー像を加熱定着させる定着手段を有するものを用いることができる。
また、本発明のトナーは、定着温度(定着部材の表面温度)が100〜200℃とされる比較的低温のものにおいて好適に用いることができる。
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム17gおよびイオン交換水3000gを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を74℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム3gをイオン交換水60gに溶解させたものを添加し、再度液温を74℃とした後、
・スチレン(St) 450g
・n−ブチルアクリレート(BA) 130g
・メタクリル酸(MAA) 50g
からなる単量体混合液〔a〕を1時間かけて滴下し、滴下終了後、85℃において1時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い、これにより樹脂微粒子〔a〕の分散液を作製した。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム10gをイオン交換水1800gに溶解させた溶液を仕込み、73℃に加熱後、上記の樹脂微粒子〔a〕260gと、
・スチレン 245g
・n−ブチルアクリレート 115g
・メタクリル酸 25g
・n−オクチルメルカプタン(OM) 10g
・ワックス:ベヘン酸ベヘネート(融点73℃) 170g
からなる単量体混合液を90℃において溶解させた単量体溶液〔b〕とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合、分散させて、乳化粒子(油滴)を含有する分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム9gをイオン交換水180gに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を78℃において1時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第2段重合)を行い、これにより樹脂微粒子〔b〕の分散液を得た。
上記の樹脂微粒子〔b〕の分散液に、過硫酸カリウム9gをイオン交換水180gに溶解させた開始剤溶液を添加し、85℃の温度条件下において、
・スチレン 339g
・n−ブチルアクリレート 231g
・メタクリル酸 30g
・n−オクチルメルカプタン 8g
からなる単量体混合液〔c〕を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第3段重合)を行い、その後、28℃まで冷却することにより、水系媒体中にビニル樹脂〔A1〕の微粒子が分散されたビニル樹脂微粒子分散液〔A1〕を調製した。
得られたビニル樹脂微粒子分散液〔A1〕について、ビニル樹脂〔A1〕の微粒子の粒径を「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径が150nmであり、当該ビニル樹脂〔A1〕の分子量をGPCによって測定したところ、重量平均分子量(Mw)が65,000であった。
また、ビニル樹脂〔A1〕のカルボキシ基濃度を表1に示す。
コア用ビニル樹脂微粒子分散液の調製例1において、下記表1の単量体処方に従ったことの他は同様にして、水系媒体中にビニル樹脂〔A2〕の微粒子が分散されたビニル樹脂微粒子分散液〔A2〕を調製した。
この分散液を構成するビニル樹脂〔A2〕のカルボキシ基濃度を表1に示す。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム17gおよびイオン交換水3000gを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を74℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム3gをイオン交換水60gに溶解させたものを添加し、再度液温を74℃とした後、
・スチレン 395g
・n−ブチルアクリレート 145g
・メタクリル酸 90g
からなる単量体混合液〔d〕を1時間かけて滴下し、滴下終了後、85℃において1時間にわたって加熱、撹拌することによって重合を行い、これにより水系媒体中にビニル樹脂〔B1〕の微粒子が分散されたビニル樹脂微粒子分散液〔B1〕を調製した。
この分散液を構成するビニル樹脂〔B1〕のカルボキシ基濃度を表2に示す。
シェル用ビニル樹脂微粒子分散液の調製例1において、スチレン、n−ブチルアクリレートおよびメタクリル酸の合計が630gになるよう、下記表2の単量体処方に従ったことの他は同様にして、水系媒体中にビニル樹脂〔B2〕の微粒子が分散されたビニル樹脂微粒子分散液〔B2〕を調製した。
この分散液を構成するビニル樹脂〔B2〕のカルボキシ基濃度を表2に示す。
(1)ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の合成
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した容量10リットルの四つ口フラスコに、
・多価カルボン酸:セバシン酸 300g
・多価アルコール:1,12−ドデカンジオール 291g
を入れ、160℃に加熱し、溶解させた。これに、
・スチレン 46g
・アクリル酸n−ブチル 12g
・ジクミルパーオキサイド 4g
・アクリル酸(AA) 3g
を予め混合した単量体混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、170℃に保持して1時間撹拌を続けて、ビニル単量体を重合させた後、
・2−エチルヘキサン酸錫(II) 2.5g
・没食子酸 0.2g
を加えて210℃に昇温して8時間反応を行った。さらに8.3kPaにて1時間反応を行うことにより、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂〔C1〕を得た。
得られたビニル変性結晶性ポリエステル樹脂〔C1〕の融点(Tm)は83℃であり、重量平均分子量(Mw)は28,000であった。また、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂〔C1〕のエステル基濃度を表3に示す。
(2)ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子の作製
得られたビニル変性結晶性ポリエステル樹脂〔C1〕30gを溶融させ、溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100gの移送速度で移送した。また、この溶融状態のビニル変性結晶性ポリエステル樹脂〔C1〕の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70gをイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2 の条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が200nm、固形分量が30質量%のビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔C1〕を調製した。
シェル用ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製例1において、下記表3の単量体処方に従ったことの他は同様にして、水系媒体中にビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子〔C2〕、〔C3〕が分散されたビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔C2〕、〔C3〕を調製した。
各分散液を構成するビニル変性結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度を表3に示す。
(1)結晶性ポリエステル樹脂の合成
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した容量10リットルの四つ口フラスコに、
・多価カルボン酸:セバシン酸 300g
・多価アルコール:1,12−ドデカンジオール 291g
を入れ、160℃に加熱し、溶解させた。これに、
・2−エチルヘキサン酸錫(II) 2.5g
・没食子酸 0.2g
を加えて210℃に昇温して8時間反応を行った。さらに8.3kPaにて1時間反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂〔D〕を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂〔D〕の融点(Tm)は82.8℃であり、重量平均分子量(Mw)は20,000であった。
(2)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の作製
得られた結晶性ポリエステル樹脂〔D〕30質量部を溶融させ、溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂〔D〕の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2 の条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が200nm、固形分量が30質量%の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔D〕を調製した。
ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム90gをイオン交換水1510gに撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330」(キャボット社製)125gを徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子〔Bk〕が分散されてなる着色剤微粒子分散液〔Bk〕を調製した。着色剤微粒子分散液〔Bk〕における着色剤微粒子〔Bk〕の体積基準のメジアン径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、110nmであった。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ビニル樹脂微粒子分散液〔A1〕2000gと、イオン交換水800gと、着色剤微粒子分散液〔Bk〕350gとを仕込み、液温を30℃に調整した後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11に調整した。
次いで、塩化マグネシウム50gをイオン交換水50gに溶解させた水溶液を、30℃において10分間かけて添加し、3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて97℃まで昇温し、97℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。
その後、塩化ナトリウム50gをイオン交換水200gに溶解させた水溶液を添加し、系の温度を95℃とし、30分間保持した後、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔C1〕30gを10分間かけて滴下し、さらに30分間保持した後、ビニル樹脂微粒子分散液〔B1〕30gを10分間かけて滴下し、その後、塩化マグネシウム25gをイオン交換水25gに溶解させた水溶液を、10分間かけて添加し、フロー式粒子像解析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)による測定で円形度が0.940に達した時点で、6℃/分の条件で30℃まで冷却して反応を停止させることにより、トナー粒子の分散液を得た。トナー粒子の体積基準のメジアン径は6.1μm、平均円形度は0.946であった。
次いで、生成したトナー粒子の分散液をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型 型式番号60×40」(松本機械製作社製)で固液分離して、トナーのウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄し、その後、気流式乾燥機「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥することにより、トナー粒子〔1〕を得た。
このトナー粒子〔1〕に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合することにより、トナー〔1〕を作製した。
トナーの製造例1において、表4の処方に従ったことの他は同様にして、トナー〔2〕〜〔7〕を作製した。
(1)キャリアの作製
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成させることにより、体積基準のメジアン径が50μmであるキャリアを得た。
キャリアの体積基準のメジアン径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定した。
トナー〔1〕〜〔7〕の各々に対して、上記のキャリアをトナー濃度が6%となるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社製)によって回転速度45rpmで30分間混合することにより、現像剤〔1〕〜〔7〕を製造した。
複写機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)において、定着装置を、加熱ローラの表面温度(定着温度)を100〜160℃の範囲で変更することができるように改造したものを用い、秤量128g/m2 の光沢紙上にベタ画像を定着させる定着実験を、設定される定着温度を100℃から5℃刻みで増加させるように変更しながら160℃まで繰り返し行った。
各定着温度に係る定着実験で得られたベタ画像を、荷重(80sN/m2 )の重りを用いて10秒間折り曲げ、戻した後、折り曲げ部分の画像欠損部分の最大幅を測定した。そして、画像欠損部分の最大幅が0.2mm以下になる定着実験のうち、最低の定着温度に係る定着実験の当該定着温度を、最低定着温度として評価した。結果を表5に示す。本発明においては、最低定着温度が120℃以下であるものを合格と判断する。
複写機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)に搭載されている現像器に、上記の現像剤を投入し、単体駆動機にて600rpmの速度で3.5時間駆動させる撹拌テストを行った。撹拌テスト前後の現像器内の現像剤について、それぞれ「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にてトナーの粒度分布を測定し、個数平均粒径における2.5μm以下のトナー粒子の比率(破砕トナーの比率)の増加率を評価した。結果を表5に示す。なお、破砕トナーの比率の増加率が高いほど、現像器内でのトナー粒子の破砕が発生しやすいことを示す。本発明においては、当該破砕トナーの比率の増加率が10%以下であれば実用上問題なく、合格と判断される。
15 シェル層
15D ドメイン相
Claims (2)
- コア粒子と、当該コア粒子を被覆するシェル層とからなるコア−シェル構造のトナー粒子よりなり、
前記コア粒子がビニル樹脂(A)よりなり、
前記シェル層が、ビニル樹脂(B)からなるマトリクス相中に、ビニル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなる結晶性樹脂がドメイン相として分散されてなることを特徴とする静電荷像現像用トナー。 - 前記シェル層を構成する結晶性樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントのエステル基濃度が0.1mmol/g以上7.5mmol/g以下であり、
前記コア粒子を構成するビニル樹脂(A)のカルボキシ基濃度が0.4mmol/g以上1.0mmol/g以下であり、
前記シェル層を構成するビニル樹脂(B)のカルボキシ基濃度が1.4mmol/g以上2.0mmol/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
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