以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張している箇所があり、その箇所においては実際の比率と異なっている。
(第1実施形態)
まず、本発明の前提となるリチウムイオン二次電池1について先に概説する。図1はリチウムイオン二次電池1の概略図である。このうち、図1(A)はリチウムイオン二次電池1の概略斜視図、図1(B)は図1(A)のB−B線断面図である。
図1(A)、(B)に示すように、リチウムイオン二次電池1は、実際に充放電反応が進行する略四角薄板状の発電要素2が、電池外装材であるラミネートフィルム3の内部に封止された構造を有する。詳しくは、矩形の高分子−金属複合ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、発電要素2の両面を被覆し、被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルム3の四つの周辺部(周縁部)を熱融着にて接合することにより、発電要素2を収納し密封した構成を有している。ここで高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、金属フィルムを高分子フィルム(樹脂フィルム)でサンドイッチした三層構造のものが一般的である。
こうした積層型の電池1は、缶型電池と区分けするために「ラミネート型電池」といわれる。缶型電池は、市販されている単1電池や単3電池のように堅い円筒状の金属製外枠の中に2つの各電極が巻き込んで収納されているものである。一方、ラミネート型電池とは、略四角薄板状の発電要素2の周辺部(周縁部)を熱融着にて接合することにより、発電要素を密封したものをいう。以下では、リチウムイオン二次電池1を、「ラミネート型電池」という。あるいは単に「電池」ともいう。
発電要素2は、四角薄板状の負極集電体4aの両面に負極活物質層4bを配置した負極4と、セパレータ5と、四角薄板状の正極集電体6aの両面に正極活物質層6bを配置した正極6とを積層した構成を有している。具体的には、1つの負極活物質層4bとこれに隣接する正極活物質層6bとが、セパレータ5を介して対向するようにして、負極4、セパレータ5、正極6をこの順に積層している。詳細には、セパレータ5は、電解液を保持することにより、セパレータ5と一体に電解質層が形成されている。従って、セパレータ5を負極4と正極6の間に配置することによって、実質的に電解質層も負極活物質層4bおよび正極活物質層6bの間に配置されることになる。セパレータ5は主に多孔質の熱可塑性樹脂から形成されている。
これにより、隣接する負極4、セパレータ5及び正極6は、一つの単電池層7(単電池)を構成する。従って、本実施形態のラミネート型電池1は、単電池層7を積層することで、電気的に並列接続された構成を有するともいえる。また、単電池層7の外周には、隣接する負極集電体4bと正極集電体6bとの間を絶縁するためのシール部(絶縁層)を設けてもよい。発電要素2の両最外層に位置する最外層負極集電体4aには、いずれも片面のみに負極活物質層4bを配置している。なお、図1(B)とは負極及び正極の配置を逆にすることで、発電要素2の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片側のみに正極活物質層を配置するようにしてもよい。
負極集電体4a及び正極集電体6aには、各電極(負極及び正極)と導通する強電タブ8、9を取り付け、ラミネートフィルム3の周縁部に挟まれるようにラミネートフィルム3の外部に導出させている。強電タブ8、9は、必要に応じて正極端子リード(図示せず)及び負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体4a及び正極集電体6bに超音波溶接や抵抗溶接により取り付けてもよい。
なお、リチウムイオン二次電池の他の形態としては、集電体の一方の面に正極活物質層を、他方の面に負極活物質層を形成している双極型電極を、セパレータを介して積層した双極型二次電池が挙げられる。上記の電池1とこの双極型二次電池とは、双方の電池内の電気的な接続状態(電極構造)が異なることを除いては、基本的には同様である。
このように構成されるラミネート型電池1を金属製の電池ケースの内部に積層して収納し、積層した複数のラミネート型電池1の各強電タブをバスバーを介して直列接続することで所定電圧を有する電池パック11が構成される。バスバーは強電タブから電気を取り出し取りまとめて強電ケーブルと接続するための部品である。さらに複数の電池パック11を強電ケーブルを介して電気的に組み合わせることで所定電圧を有する組電池が構成され、この組電池が電気自動車やハイブリッド車に搭載されることとなる。これで、本発明の前提となるラミネート型電池1の概説を終了する。
図2は本発明の第1実施形態のラミネート型電池1の平面図である。ここでは、電池1を水平に配置するものとして鉛直方向を定める。すなわち、図2において紙面手前が鉛直上方、紙面奥が鉛直下方とする。
このように鉛直方向を定めたとき、図3は図2のラミネート型電池1の水平面に沿った断面図、図4は図2のラミネート型電池1の一部X−X線断面図、図5は図2のラミネート型電池1のY−Y線断面図である。図4の一部X−X線断面図では図2のX−X線断面図のうち中央部分を主に示し、左右の端部は省略して示していない。図5のY−Y線断面図では発電要素2は省略して示していない。
ここで、図4(a)、図5(a)は折り畳む前のフィルタ21の状態を、図4(b)、図5(b)は折り畳んだ後のフィルタ21の状態を示している。なお、本発明の全ての実施形形態では、図2に示したように、2つの強電タブ8、9が図1と相違して第1熱融着部12から取り出しているものとして説明する。
ラミネートフィルム3の周縁部にほぼ同じ幅で設けられる熱融着部を次のように区別する。すなわち、図2で上方に位置する熱融着部を「第1熱融着部」12として、下方に位置する熱融着部を「第2熱融着部」13として、左方に位置する熱融着部を「第3熱融着部」14として、右方に位置するる熱融着部を「第4熱融着部」15として区分けする。
また、四つあるラミネートフィルム周縁部を次のように区別する。すなわち、図2で上方に位置するラミネートフィルム周縁部を「第1ラミネートフィルム周縁部」16として、下方に位置するラミネートフィルム周縁部を「第2ラミネートフィルム周縁部」17として、左方に位置するラミネートフィルム周縁部を「第3ラミネートフィルム周縁部」18として、右方に位置するラミネートフィルム周縁部を「第4ラミネートフィルム周縁部」19として区分けする。
電池1内部でガス膨張が生じたとき、電池1内部のガスを電池1外部に速やかに逃すため、第2ラミネートフィルム周縁部17に圧力開放弁を設けている。圧力開放弁は、具体的には第2ラミネートフィルム周縁部17のほぼ中央に設けた切り欠き部20である。第2熱融着部13では切り欠き部20のある位置での熱融着幅が切り欠き部20以外の位置での熱融着幅より狭くなる。第2ラミネートフィルム周縁部17のほぼ中央に切り欠き部20を設けることにより、切り欠き部20のある位置での熱融着強度が切り欠き部20以外の位置での熱融着強度より弱くなる。電池1内部でガス膨張が生じたとき、この切り欠き部20のある位置で2枚のラミネートフィルム3の融着が真っ先にはがれ、このはがれた部位(圧力開放弁)から電池1内部のガスが電池1外部に速やかに逃される。ここで、融着していた2枚のラミネートフィルム3がはがれることを「開裂する」ともいう。
以下、発電要素2の鉛直上方を覆う一方の矩形のラミネートフィルム3を「上方ラミネートフィルム」3A、発電要素2の鉛直下方を覆う他方の矩形のラミネートフィルム3を「下方ラミネートフィルム」3Bで区別する。上方ラミネートフィルム3Aに設けられる切り欠き部20を「上方切り欠き部」20A、下方ラミネートフィルム3Bに設けられる切り欠き部2018下方切り欠き部」20Bで区別する。
切り欠き部20は、図3にも示したように強電タブ8、9が取り出される第1ラミネート周縁部16とは反対側である第2ラミネートフィルム周縁部17に設けられるのが一般的である。ただし、切り欠き部20を設ける位置は、必ずしも第2ラミネートフィルム周縁部17に限定されるものでなく、第3ラミネートフィルム周縁部18や第4ラミネートフィルム周縁部19に設けることも考え得る。なお、強電タブ8、9を融着するために強固な熱融着材を使用すること、強電タブ8、9の放熱性が高いことから第1ラミネートフィルム周縁部16に切り欠き部20を設けることは適していない。
さて、ラミネート型電池1の異常時には、切り欠き部を有するラミネートフィルム周縁部が開裂し、電池1内部から発生する電解液由来の有機ガスが外部へと吹き出すほか、電池1内部から電池1外部へと電極やアルミの粉末が飛散することがわかってきた。
ここでいう「異常時」とは、ガス放出弁(切り欠き部20)を有するラミネートフィルム周縁部の一つ(第2ラミネートフィルム周縁部17)の全体が開裂して電池内部から粉末が飛散する温度異常時のことである。ガス放出弁を有するラミネートフィルム周縁部の一つの全体が開裂して電池内部から粉末が飛散する温度異常時(以下単に「温度異常時」ともいう。)は、例えば組電池を備える自動車が火災に遭ったような場合に生じる。正極6と負極4の間に介装されるセパレータ5には、正極6と負極4とが直接接触して短絡しないように絶縁するという機能と、電解液の往来を許すという機能とが要求される。このため、ポリエチレンやポリプロピレンといった多孔質の熱可塑性樹脂でセパレータ5が形成されている。こうした熱可塑性樹脂から形成されるセパレータ5は、電池1の雰囲気温度が上昇して100℃付近になると、容易に収縮する。電極面積よりセパレータ面積を若干大きめに取って正極6と負極4とが直接接触するのを防いでいるのであるが、電池1の雰囲気温度が温度異常によって高温になるとセパレータ5が収縮し初期面積より小さくなる。主としてセパレータ5の周縁部が収縮したときには、正極6の周縁部と負極4の周縁部とを隔てるものがなくなり、短絡が生じて大電流が流れ、ジュール発熱による大きな温度上昇が生じる。すると、電池1内に封止されている電解液が気化して電池1の急激な体積増加(つまり電池1の膨れ)が生じ、第2ラミネートフィルム周縁部17全体の開裂へと至るのである。
電池蓋の内側に安全弁を有する缶型電池においては、こうした温度異常時の内部からの粉末飛散を防止するため電池蓋と安全弁との間にガスを吸着する材料を保持した層を設けたものがある。この従来の缶型電池では、温度異常により内圧が上昇したときには安全弁が作動(開裂)し、内圧を開放する。このとき、有害な有機物を含んだガスや、固形物が噴出するが、ガス吸着剤が一種のフィルタ的役割を果たし、前記のガス中の有機物や固形物を捕捉するようにしている。
缶型電池においては、外枠がラミネート型電池1よりも堅固に形成されているために、ガスの逃げ道に開裂の容易な部分(つまり安全弁)を意図的に作っておき、安全弁の周囲にのみガス吸着剤を設けておけば、ガス中の有機物や固形物を全て捕捉することができる。この従来の缶型電池の技術をそのままラミネート型電池1に適用するなら、切り欠き部18の周囲にだけ電池内部から電池外部へと飛散する粉末を捕捉するフィルタ(粉末捕捉機構)を設けておけばよいことになる。
しかしながら、缶型電池よりも相対的に柔らかい電池外装材で被覆されているラミネート型電池1にあっては、温度異常によりラミネート型電池1の内圧が急上昇するとき、第2ラミネートフィルム周縁部17の中央に位置する上下の切り欠き部20A、20Bの付近だけで開裂するのではなく、第2ラミネートフィルム周縁部17の全体が開裂してしまう。
これを現状のラミネート型電池1で説明すると、図6は現状のラミネート型電池1の平面図、図7は図6のラミネート型電池1をZ矢視でみた概略図である。ここで、図7(a)は温度異常が発生する前のラミネート型電池1の状態を示している。図7(a)のように、上下のラミネートフィルム3A、3Bは鉛直方向(図7で上下方向)に膨らんでいない。
温度異常時にはジュール発熱による大きな温度上昇に伴う電解液の気化によって急激な体積増加(つまり電池1の膨れ)が生じ上下のラミネートフィルム3A、3Bが外方に膨らむ。上下のラミネートフィルム3A、3Bが外方に向けて一杯に膨らんだ後には、電池1内部の圧力が上昇して高くなる。この高い圧力は、熱融着度の弱い部分、つまり切り欠き部20に向かい、図7(b)に示したように、上下の切り欠き部20A、20Bをまず開裂する。すると、内部から噴出する高圧のガスが激しく噴出しつつガス圧が作用するため、図7(c)に示したように開裂は第2ラミネートフィルム周縁部17の全体に及び、開裂した第2ラミネートフィルム周縁部17の全体から電池1内部のガス及び粉末が一方向(図6で下方)に飛び出す。
このように、上記従来の缶型電池の技術を現状のラミネート型電池1にそのまま適用して切り欠き部18の周囲にだけフィルタを設けるのでは、電池1内部から飛散する粉末を全て捕捉することができないのである。
そこで本発明の第1実施形態では、第2ラミネートフィルム周縁部17の全体が開裂して電池1内部から粉末が飛散する温度異常時に、この電池1内部から飛散する粉末を捕捉する粉末捕捉機構を、発電要素2と切り欠き部20との間に位置して、かつ第2ラミネートフィルム周縁部17(ガス放出弁を有するラミネートフィルム周縁部の一つ)に直交する2つのラミネートフィルム周縁部である第3ラミネートフィルム周縁部18、第4ラミネートフィルム周縁部19のそれぞれに達するまで設ける。
具体的には、第1実施形態の粉末捕捉機構は網材で形成したフィルタ21であり、このフィルタ21の周縁と、このフィルタ21の周縁に対向する上下のラミネートフィルム3A、3Bの内面とを溶着する。ここでは熱融着によって融着する。さらに、フィルタ21を平面状とし、この平面状のフィルタ21を1回以上折り畳んだ状態で電池1内部に収納する。なお、第1実施形態の平面状網材は面方向に収縮(変形)しない特質を有するものとする。
平面状の網材に限らず、平面状のパンチング材または平面状の多孔体で形成したフィルタでもかまわない。これら網材、パンチング材または多孔体の材質としては、金属、耐熱性樹脂、難燃性樹脂またはセラミックスを用いることができる。
例えば、平面状の網材には、金網、耐熱性樹脂網、難燃性樹脂網、セラミックス網がある。金網としては、ステンレスメッシュ、銅メッシュ、アルミメッシュなどを挙げることができる。耐熱性樹脂網としては、ポリイミドメッシュ、フェニレンサルファイトメッシュ、ナイロンメッシュなどを挙げることができる。セラミックス網としては、ガラスメッシュ、アルミナメッシュ、ジルコニアメッシュを挙げることができる。
平面状の網材の目開き(目の大きさ)は、電池1内部から飛散する粉末を捕捉し得る長さとする。例えば、網材の目開きは3mm以下とする。この場合、目開きはフィルタ21の全体にわたって同じである。
平面状のパンチング材には、パンチングメタルまたはパンチング高分子フィルムがある。パンチングメタルになり得る材質としては、ステンレス、銅、ニッケル、アルミ、チタンを挙げることができる。パンチング高分子フィルムになり得る材質としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなどを挙げることができる。
平面状の多孔体には、金属多孔体、樹脂多孔体がある。金属多孔体としては、アルミ多孔体、銅多孔体、ステンレス多孔体、ニッケル多孔体、チタン多孔体などを挙げることができる。樹脂多孔体としては、ポリイミド多孔体、フェニレンサルファイト多孔体、ナイロン多孔体、ポリプロピレン多孔体、ポリカーボネート多孔体などを挙げることができる。
なお、ここには一般的なパンチング材と多孔体を挙げている。第1実施形態では、収縮しない特質を有するパンチング材や収縮しない特質を有する多孔体を平面状に形成して用いる場合を対象としている。一方、後述するように、第2、第3の実施形態では、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な特質を有するパンチング材や少なくとも一方向に収縮(変形)可能な特質を有する多孔体で平面状のフィルタを形成して用いる場合を対象としている。従って、ここに挙げたパンチング材や多孔体の中から収縮しない特質を有するパンチング材や収縮しない特質を有する多孔体は第1実施形態のフィルタとして用いる。一方、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な特質を有するパンチング材や少なくとも一方向に収縮(変形)可能な特質を有する多孔体は第2、第3の実施形態のフィルタとして用いる。
収縮しない特質を有するパンチング材や収縮しない特質を有する多孔体を平面状に形成して用いる場合にパンチング材や多孔体の孔径は、電池1内部から飛散する粉末を捕捉できる径とする。例えば、孔径は3mm以下とする。この場合、孔径はフィルタ21の全体にわたって同じである。
一方、後述する第6実施形態のフィルタとして用いられるパンチング材としては、これらパンチング材の中から図24、図25(a)に示したように孔62を面内に等間隔で穿つとともに、一方向(図25(a)では上方)に突出するドーム部63を有するものだけが対象となる。
次に、切り離された2枚の矩形のラミネートフィルム3A、3Bで発電要素2を密封する場合に、電池1内部へのフィルタ21の設け方の一例を説明する。なお、発電要素2を矩形のラミネートフィルム3で発電要素2を密封する方法はこれに限られない。例えば、1枚の矩形のラミネートフィルムを中央で折り返し、その折り返したラミネートフィルムの間に発電要素2を収納して密封する第2の方法でもかまわない。この第2の方法では熱融着部が3つとなる点で、2枚の矩形のラミネートフィルム3A、3Bで発電要素2を密封する第1の方法と相違する。そして、いずれの方法でも切り欠き部20(ガス放出弁)は熱融着にて接合されるラミネートフィルム周縁部の一つに設けられる。
工程1:2枚の矩形のラミネートフィルム3A、3Bで発電要素2を密封するに際しては、まず下方ラミネートフィルム3Bを水平に敷き、敷いた下方ラミネートフィルム3Bの中央位置に発電要素2を配置する。
工程2:原材料としての平面状のフィルタから、第2ラミネートフィルム周縁部17の長さとほぼ同じ長さと所定の面積を有するフィルタ21を刳り貫いてまたは裁断して取り出す。フィルタ21の外形は長軸と短軸とを有する楕円とし(図8参照)、短軸方向が鉛直方向となるように刳り貫いてまたは裁断して取り出す。取り出したフィルタ21は、図5に示したように一回以上折り畳み、折り目をつけておく。
工程3:この折り目をつけたフィルタ21の周縁(例えば鉛直方向上端21aと鉛直方向下端21b)に熱融着材22を塗布する(図4(a)参照)。熱融着材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロンなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。
工程4:熱融着材22を塗布したフィルタ21を、図3で示したように、切り欠き部20と発電要素2との間に位置して設ける。かつ、フィルタ21の一方の水平方向端(図3で左端)が第3ラミネートフィルム周縁部18に届き、他方の水平方向端(図3で右端)が第4ラミネートフィルム周縁部19に届くように第2ラミネートフィルム周縁部17と平行に置く。
工程5:上方切り欠き部20Aが下方切り欠き部20Bと対向するように上方ラミネートフィルム3Aで発電要素2を鉛直上方から覆い、フィルタ21を折り目に従って鉛直下方に折り畳む。上方ラミネートフィルム3Aを覆った直後には、フィルタ21は図4(a)、図5(a)に示したように折り畳む前の状態にあるが、上方ラミネートフィルム3Aを折り目に従って鉛直下方に押しつけることにより、フィルタ21は図4(b)、図5(b)に示したように折り畳んだ状態となる。
工程6:フィルタ21を折り畳んだ状態で、2つのラミネートフィルム3A、3Bの四つのラミネートフィルム周縁部16〜19のうち、第3ラミネートフィルム周縁部18、第4ラミネートフィルム周縁部19のいずれか一方を選択する。例えば第3ラミネートフィルム周縁部18を選択するとすれば、選択しなかった残り3つのラミネートフィルム周縁部16、17、19の周縁である熱融着部12、13、15を熱融着によって接合する。
通常のラミネートフィルムはポリエチレンフィルム、アルミ金属フィルム、ナイロンフィルムがこの順に積層された3層構造になっており、下方ラミネートフィルム3Bはポリエチレンフィルムが鉛直上面になるように敷き、上方ラミネートフィルム3Aは、ポリエチレンフィルムが鉛直下面になるように覆う。これによって内面側のポリエチレンフィルムの層が熱で溶融し接着される。このとき、フィルタ21の鉛直方向上端21aと上方ラミネートフィルム3Aの鉛直下面3AA(ラミネートフィルム内面)とが、またフィルタ21の鉛直方向下端21bと下方ラミネートフィルム3Bの鉛直上面3BB(ラミネートフィルム内面)とが熱融着材22によって接合される。
工程7:熱融着を行わなかった第3ラミネートフィルム周縁部18を鉛直上方に向け、この第3ラミネートフィルム周縁部18を開口して電池外装材(3)の内部(電池1内部)に電解液を注入する。
工程8:電解液が電池1内部に十分浸透した後には、電池1内部から空気を抜きつつ熱融着を行わなかった第3ラミネートフィルム周縁部18の周縁である第3熱融着部14を熱融着によって接合する(つまり真空パックする)。これによって発電要素2及びフィルタ21が電池1内部に密封される。
工程9:このようにして形成した電池1の強電タブ8、9に充電器(図示しない)を接続して初回の充電を行う。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態によれば、正極6と負極4とをセパレータ5を介して積層した発電要素2を有し、矩形のラミネートフィルム3を電池外装材として用いて四つあるラミネートフィルム周縁部の全てまたは一部を熱融着にて接合することにより、発電要素2を密封する共に、第2ラミネートフィルム周縁部17(四つあるラミネートフィルム周縁部の一つ)に切り欠き部20(電池内部の圧力が上昇したとき開裂して電池内部のガスを放出するガス放出弁)を有する薄板状のラミネート電池1において、第2ラミネートフィルム周縁部17(ガス放出弁を有するラミネートフィルム周縁部の一つ)の全体が開裂して電池1内部から粉末が飛散する温度異常時に、この電池内部から飛散する粉末を捕捉するフィルタ21(粉末捕捉機構)を、発電要素2と切り欠き部20(ガス放出弁)との間に位置して、かつ第3ラミネートフィルム周縁部18、第4ラミネートフィルム周縁部19(ガス放出弁を有するラミネートフィルム周縁部の一つに直交する2つのラミネートフィルム周縁部)のそれぞれに達するまで設けている。温度異常時には、開裂した第2ラミネートフィルム周縁部17の全体によって生じる空間をフィルタ21(粉末捕捉機構)が被覆し、開裂した第2ラミネートフィルム周縁部17の全体から電池1外部へと飛散する粉末をこのフィルタ21が捕捉するので、缶型電池よりも相対的に柔らかい電池外装材(3)で被覆されているラミネート型電池1であっても、当該ラミネート型電池1内部から粉末が外部へと飛散することを防止できる。
本実施形態によれば、粉末捕捉機構は網材で形成したフィルタ21であり、このフィルタ21の周縁(鉛直方向上端21a及び鉛直方向下端21b)と、このフィルタ21の周縁に対向するラミネートフィルム内面3AA、3BBとを溶着するので(図8参照)、第2ラミネートフィルム周縁部17の全体に開裂が広がっても、フィルタ21が電池1内部から噴出するガスの勢いに負けて電池1外部へ飛び出すことがなく、電池1内部から電池1外部へと飛散する粉末を捕捉し続けることができる。
本実施形態によれば、フィルタ21を平面状とし、この平面状のフィルタ21を1回以上折り畳んだ状態で電池1内部に収納するので(図5(a)、(b)参照)、温度異常時に第2ラミネートフィルム周縁部17の全体へと開裂が広がる際には、この動きにフィルタ21の周縁(21a、21b)が図8に示したように追従して鉛直方向(図8で上下方向)に広がる。これによってフィルタ21の周縁(21a、21b)とラミネートフィルム内面3AA、3BBとの間に隙間が発生することを抑えることが可能となり、電池1内部から電池1外部へと飛散する粉末をフィルタ21によりもれなく捕捉することができる。ここで、図8は、図2のラミネート型電池1を温度異常時にZ矢視でみた概略図である。
温度異常時に、第2ラミネートフィルム周縁部17の全体が開裂したとき、開裂状態で第2ラミネートフィルム周縁部17に生じる空間形状はほ楕円となる。この空間形状に関係なく、例えばフィルタ21の外形を矩形状としたのでは、フィルタ21を電池1内部に収納する際にかさばる部分が生じ、かさばっても電池1内部に収納しようとすれば無駄な収納スペースが生じる。これによって電池1の容積効率が低下してしまう。これに対して本実施形態によれば、開裂によって第2ラミネートフィルム周縁部17の全体に生じる空間形状に合わせ、フィルタ21は、長軸方向の両端にゆくほど細くなる楕円形状としている。つまり、第3ラミネートフィルム周縁部18、第4ラミネートフィルム周縁部19(ガス放出弁を有するラミネートフィルム周縁部の一つに直交する2つの各ラミネートフィルム周縁部)に近づくほど相対的に細くなる形状であるので、かさばることなくフィルタ21を電池1内部に収納することができる。
(第2実施形態)
図9は第2実施形態のラミネート型電池1の平面図である。ここでも、電池1を水平に配置するものとして鉛直方向を定める。すなわち、図9において紙面手前が鉛直上方、紙面奥が鉛直下方とする。
このように鉛直方向を定めたとき、図10は図9のラミネート型電池1の水平面に沿った断面図、図11は図9のラミネート型電池1の一部X−X線断面図、図12は図9のラミネート型電池1のY−Y線断面図である。図11の一部X−X線断面図では図9のX−X線断面図のうち中央部分を主に示し、左右の端部は省略して示していない。図12のY−Y線断面図では発電要素2は省略して示していない。第1実施形態の図2、図3、図4、図5と同一部分については同一番号を付している。
ここで、図11(a)、図12(a)は収縮(変形)させる前のフィルタ31の状態を、図11(b)、図12(b)は収縮させた後のフィルタ31の状態を示している。
第1実施形態では、フィルタ21が収縮しない特性を有する平面状網材で形成されていたため、この平面状のフィルタ21を1回以上折り畳んだ状態で電池1内部に収納した。一方、第2実施形態ではフィルタ31(粉末捕捉機構)を少なくとも一方向に収縮(変形)可能な多孔体で形成し、このフィルタ31を収縮(変形)した状態で電池1内部に収納する。ここで、「収縮可能」とは元の形状より縮めることが可能であることをいうものとする。また、後述するように、収縮した状態から収縮する前の状態へと復帰するとき、元の状態より大きくなることはないものとする。
なお、第2実施形態のフィルタ31についても全体的には平面状とするのであるが、フィルタ31の厚さを第1実施形態のフィルタ21と比較すれば、第2実施形態のフィルタ31のほうが第1実施形態のフィルタ21よりも厚いものとなる(図5、図12参照)。ただし、第2実施形態のフィルタ31の厚さを第1実施形態のフィルタ21と同じにしても、一方向(鉛直方向)に収縮(変形)し得るのであれば、フィルタ31の厚さを薄くすることはかまわない。
一般的な平面状の多孔体の例を第1実施形態で挙げてあるので、第1実施形態で挙げた平面状多孔体の中から少なくとも一方向に収縮可能な特質を有する多孔体を選択し、その選択した多孔体を用いて第2実施形態のフィルタ31を形成する。
第2実施形態では、温度異常時にフィルタ31が収縮した状態から収縮する前の状態に復帰するとき、孔の径はフィルタ31が収縮した状態にあったときより大きくなる。フィルタ31は、温度異常時に収縮した状態から収縮する前の状態に復帰した状態で電池1内部から飛散する粉末を捕捉することになるので、収縮する前の状態に復帰したときの孔の径は、電池1内部から飛散する粉末を捕捉できる径とする。例えば、孔の径は3mm以下とする。この場合、孔径はフィルタ31の全体にわたって同じである。
なお、ここでは、平面状の網材、平面状のパンチング材であっても、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な特質を有するものであれば、少なくとも一方向に収縮可能な特質を有する多孔体に代えて用いてフィルタ31を形成することはかまわない。
次に、切り離された2枚の矩形のラミネートフィルム3で発電要素2を密封する場合に、電池1内部へのフィルタ31の設け方の一例を図13、図14をも参照して説明する。
ここで、図13は第2実施形態のフィルタ31の平面図である。このうち、図13(a)は収縮する前のフィルタ31の状態を、図13(a)はプレスによって収縮させた後のフィルタ31の状態を表している。図14は図9のX−X線断面図である。このうち、図14(a)は温度異常が発生する前のフィルタ31の状態を、図14(b)は温度異常が発生したときのフィルタ31の状態をモデルで表している。
工程1:2枚の矩形のラミネートフィルム3A、3Bで発電要素2を密封するに際しては、まず下方ラミネートフィルム3Bを水平に敷き、敷いた下方ラミネートフィルム3Bの中央位置に発電要素2を配置する。
工程2:原材料としての平面状のフィルタは、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な多孔体で形成されている。この原材料としての平面状のフィルタから、図13(a)に示したように第2ラミネートフィルム周縁部17の長さとほぼ同じ長軸長さと所定の面積を有する楕円状のフィルタ31を刳り貫いてまたは裁断して取り出す。ここで、楕円状に形成したフィルタ31は短軸方向に収縮させることになるので、原材料としてのフィルタの収縮可能な方向とフィルタ31の短軸方向とが一致するようにして刳り貫いたり裁断したりすることが必要である。
フィルタ31の外形を楕円状とするのは、温度異常時に第2ラミネートフィルム周縁部17の全体が開裂したとき、その開裂によって生じる第2ラミネートフィルム周縁部17の空間形状が楕円状になることがわかっているので、このときの第2ラミネートフィルム周縁部17の空間形状に合わせるものである。
このように収縮可能な方向と短軸方向とを一致させているフィルタ31を、楕円の短軸方向にプレスすれば、図13(b)に示したように塑性変形して縮まる(収縮する)。ここでは、フィルタ31が塑性変形して縮まる場合で説明したが、フィルタ31が弾性変形して縮まる場合でもかまわない。フィルタ31が弾性変形する場合にはプレスすることは不要である。なぜなら、真空パックする際に電池1外部から作用する圧力(つまり大気圧)でつぶれる(弾性変形する)と思われるためである。
工程3:このプレスによって収縮させたフィルタ31の周縁(例えば鉛直方向上端31aと鉛直方向下端31b)に熱融着材22を塗布する(図11(a)参照)。この熱融着材22を塗布したフィルタ31を、図10に示したように、切り欠き部20と発電要素2との間に位置して設ける。かつ、フィルタ31の一方の水平方向端(図10で左端)が第3ラミネートフィルム周縁部18に届き、他方の水平方向端(図10で右端)が第4ラミネートフィルム周縁部19に届くように第2ラミネートフィルム周縁部17と平行に置く。
工程4:上方切り欠き部20Aが下方切り欠き部20Bと対向するように上方ラミネートフィルム3Aで発電要素2を鉛直上方から覆う。上方ラミネートフィルム3Aを覆ったとき、フィルタ31は図11(b)、図12(b)、図14(a)に示したように鉛直方向に縮んだ状態となっている。
なお、図11、図12はイメージで記載したものであり、フィルタ31の実際の変形を示すものでない。すなわち、プレスによってフィルタ31を予め塑性変形してあれば、上方ラミネートフィルム3Aで発電要素2の上下の面を被覆したタイミングでフィルタ31は、図11(b)、図12(b)に示したように縮んだ状態となる。つまり、プレスによってフィルタ31を塑性変形してあれば図11(a)、図12(a)に示した状態(縮む前の状態)は取り得ない。
一方、フィルタ31が弾性変形する場合には、上方ラミネートフィルム3Aで発電要素2を被覆したタイミングでフィルタ31は、図11(a)、図12(a)に示したように縮む前の状態となる。そして、真空パックによってフィルタ31は図11(b)、図12(b)に示した状態(縮んだ状態)に移行する。なお、縮んだ状態でのフィルタ31の厚さは縮む前よりも大きくなっている(図12(a)、(b)参照)。
工程5:2つのラミネートフィルム3A、3Bの四つのラミネートフィルム周縁部16〜19のうち、第3ラミネートフィルム周縁部18、第4ラミネートフィルム周縁部19のいずれか一方を選択する。例えば第3ラミネートフィルム周縁部18を選択するとすれば、選択しなかった残り3つのラミネートフィルム周縁部16、17、19の周縁である熱融着部12、13、15を熱融着によって接合する。このとき、フィルタ31の鉛直方向上端31aと上方ラミネートフィルム3Aの鉛直下面3AA(ラミネートフィルム内面)とが、またフィルタ31の鉛直方向下端21bと下方ラミネートフィルム3Bの鉛直上面3BB(ラミネートフィルム内面)とが熱融着材22によって接合される。
工程6:熱融着を行わなかった第3ラミネートフィルム周縁部18を鉛直上方に向け、この第3ラミネートフィルム周縁部18を開口して電池外装材(3)の内部(電池1内部)に電解液をに注入する。
工程7:電解液が電池1内部に十分浸透した後には、電池1内内部から空気を抜きつつ熱融着を行わなかった第3ラミネートフィルム周縁部18の周縁である第3熱融着部14を熱融着によって接合する(つまり真空パックする)。これによって発電要素2及びフィルタ31が電池1内部に密封される。
工程8:このようにして形成した電池1の強電タブ8、9に充電器(図示しない)を接続して初回の充電を行う。
第2実施形態によっても、基本的には第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
ここでは、第1実施形態と多少異なる作用効果について説明すると、第2実施形態によれば、フィルタ31を少なくとも一方向に収縮(変形)可能な多孔体で形成し、このフィルタ31を収縮(変形)した状態で電池1内部に収納することとしている。このため、温度異常時に第2ラミネートフィルム周縁部17の全体へと開裂が広がる際には、この動きにフィルタ31の周縁(31a、31b)が図14(b)に示したように追従して塑性変形(あるいは弾性変形)し短軸方向(鉛直方向)に膨らむ。これによってフィルタ31の周縁(31a、31b)とラミネートフィルム内面3AA、3BBとの間に隙間が発生することを抑えることが可能となり、電池1内部から電池1外部へと飛散する粉末をもれなく捕捉することができる。
また、第2実施形態によれば、フィルタ31を収縮(変形)させる前後で必要となる水平方向の収納スペースが、第1実施形態においてフィルタ21を折り畳む前後で必要となる水平方向の収納スペースより小さくて済むので(図5、図12参照)、電池1の容積効率を第1実施形態より高めることができる。
(第3実施形態)
図15は第3実施形態のラミネート型電池1の平面図である。ここでも、電池1を水平に配置するものとして鉛直方向を定める。すなわち、図15において紙面手前が鉛直上方、紙面奥が鉛直下方とする。
このように鉛直方向を定めたとき、図16は図15のラミネート型電池1の水平面に沿った断面図、図17は第3実施形態のフィルタ32の平面図である。このうち、図17(a)は縮ませる前のフィルタ31の状態を、図17(a)はプレスによって縮ませた後のフィルタ31の状態を表している。図18は図15のX−X線断面である。このうち、図18(a)は温度異常が発生する前のフィルタ31の状態を、図18(b)は温度異常が発生したときのフィルタ31の状態をモデルで表している。第2施形態の図9、図10、図13、図14と同一部分には同一番号を付している。
第3実施形態はフィルタ32の外形のみが第2実施形態のフィルタ31と相違するものである。すなわち、第3実施形態においても、平面状のフィルタ32は、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な特質を有する多孔体で形成されている。原材料としての平面状のフィルタからは、図17(a)に示したように第2ラミネートフィルム周縁部17の長さとほぼ同じ底辺長さと所定の面積を有する二等辺三角形状のフィルタ32(粉末捕捉機構)を刳り貫いてまたは裁断して取り出す。ここで、二等辺三角形状に形成したフィルタ31は底辺に直交する方向に収縮(変形)させることになるので、原材料としてのフィルタの収縮可能な方向とフィルタ31の底辺に直交する方向とが一致するようにして刳り貫いたり裁断したりすることが必要である。
このように収縮可能な方向と底辺に直交する方向とを一致させているフィルタ32を、底辺に直交する方向にプレスすれば、図17(b)に示したように塑性変形して縮まる(収縮する)。ここでは、フィルタ32が塑性変形して縮まる場合で説明したが、フィルタ32が弾性変形して縮まる場合でもかまわない。フィルタ32が弾性変形する場合にはプレスすることは不要である。なぜなら、第2実施形態で前述したように真空パックする際に電池外部から作用する圧力(つまり大気圧)でつぶれる(弾性変形する)と思われるためである。
このプレスによって収縮させたフィルタ32の周縁(例えば鉛直方向上端32a、32bと鉛直方向下端32c)に熱融着材22を塗布する。この熱融着材22を塗布したフィルタ32を、図16に示したように、切り欠き部20と発電要素2との間に位置して設ける。かつ、フィルタ32の一方の水平方向端(図16で左端)が第3ラミネートフィルム周縁部18に届き、他方の水平方向端(図16で右端)が第4ラミネートフィルム周縁部19に届くように第2ラミネートフィルム周縁部18と平行に置く。
このようにフィルタ32を配置すれば、温度異常時に第2ラミネートフィルム周縁部17の全体へと開裂が広がる際には、この動きにフィルタ32の周縁(32a、32b)が図18(b)に示したように追従して塑性変形(あるいは弾性変形)し底辺に直交する方向(鉛直方向)に膨らむこととなる。
第3実施形態では、フィルタ32の外形を二等辺三角形状とする場合で説明したが、この外形に限られるものでない。例えば、等脚台形状や菱形状としてもかまわない。
第3実施形態においても第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
(第4実施形態)
図19は第4実施形態のラミネート型電池1の水平面に沿った断面図である。第1実施形態の図3と同一部分には同一番号を付している。
第1実施形態は目開きが均一な1種類の平面状網材でフィルタ21を形成したものであった。一方、第4実施形態は、目開きの異なる3種類の平面状網材でフィルタ21’(粉末捕捉機構)を形成するものである。なお、第4実施形態の3種類の平面状網材も面方向に収縮(変形)しない特質を有するものとする。
3種類の平面状網材について目開きの大きな順に、第1平面状網材、第2平面状網材、第3平面状網材とし、第1平面状網材で第1フィルタ41を、第2平面状網材で第2フィルタ42を、第3平面状網材で第3フィルタ43を形成するものとすると、図19下方の拡大図に示したように、目開きの大きな平面状網材からなるフィルタほど発電要素2側になるように並べる。なお、目開きの異なる平面状網材の数は3つに限定されるものでない。目開きの異なる平面状網材の数は少なくとも2つあればよい。
これは、電池1内部から電池1外部へと飛散する粉末の粒子径をほぼ3つに区分けし、粒子径によって捕捉するフィルタを相違させるものである。すなわち、粒子径をほぼ大、中、小の3つに区分けしたとすると、第1フィルタ41によってまず大径の粉末を捕捉し、次には第2フィルタ42によって中径の粉末を捕捉し、最後に第3フィルタ43によって小径の粉末を捕捉するのである。このように、目開きの異なるフィルタ41〜43を組み合わせて(重ねて)1つのフィルタ21’を形成することで、フィルタ21’全体の目詰まりを防ぐことができる。なお、1つのフィルタ21’の外形は楕円状や二等辺三角形状とする。
隣り合う2つのフィルタの間は、熱融着により接合するか接着剤45で貼り付ける。例えば、隣り合うフィルタの間に熱融着材としての熱可塑性樹脂を塗布した後に、融点近くの温度に上げることで隣り合うフィルタ同士を熱融着できる。接着剤45としてはエポキシ系などの接着剤を用いればよい。
第4実施形態のフィルタ21’に用いる材料は平面状網材に限られず、孔径の異なる3種類の平面状パンチング材や平面状多孔体を組み合わせて(重ねて)1つのフィルタ21’を形成するものであってもかまわない。この場合、平面状パンチング材や平面状多孔体は、収縮しない特質を有する平面状パンチング材や収縮しない特質を有する平面状多孔体である。
第4実施形態によれば、平面状網材で形成したフィルタ21’である場合に、このフィルタ21’が目の粗さの異なる複数のフィルタ41〜43からなり、相対的に目の粗いフィルタ41を発電要素2の側に、相対的に目の細かいフィルタ43を切り欠き部20(ガス放出弁)の側に配置する。これによって、相対的に大きな粒径の粉末をガス流れの上流側で捕捉し、相対的に小さな粒径の粉末をガス流れの下流で捕捉することが可能となり、フィルタ21’の目詰まりを防止することができる。
ここで、第4実施形態、後述する第5、第6の実施形態でいう「ガス流れ」とは、温度異常時に電池1内部より電池1外部へと噴出するガス流れをいう。これは、図6に示したように、第2ラミネートフィルム周縁部17に対して直交する方向の流れである。
(第5実施形態)
図20は第5実施形態のラミネート型電池1の水平面に沿った断面図である。第2実施形態の図10と同一部分には同一番号を付している。
第2実施形態は、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な平面状多孔体でフィルタ31(粉末捕捉機構)を形成したものであり、このフィルタ31に用いられる多孔体の孔径は、フィルタ31の全体にわたって均一であった。一方、第5実施形態は、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な平面状多孔体である点で第2実施形態と同じであるが、さらに孔径の異なる3種類の平面状多孔体を組み合わせて(重ねて)1つのフィルタ31’を形成するものである。なお、この場合も1つのフィルタ31’の外形は楕円状や二等辺三角形状とする。
3種類の平面状多孔体について孔径の大きな順に、第1平面状多孔体、第2平面状多孔体、第3平面状多孔体とし、第1平面状多孔体で第1フィルタ46を、第2平面状多孔体で第2フィルタ47を、第3平面状多孔体で第3フィルタ48を形成するものとすると、図20下方の拡大図に示したように、孔径の大きな平面状多孔体からなるフィルタほど発電要素2側になるように並べる。なお、孔径の異なる平面状多孔体の数は3つに限定されるものでない。孔径の異なる平面状多孔体の数は少なくとも2つあればよい。
これは、電池1内部から電池1外部へと飛散する粉末の粒子径をほぼ3つに区分けし、粒子径によって捕捉するフィルタを相違させるものである。すなわち、粒子径をほぼ大、中、小の3つに区分けしたとすると、第1フィルタ46によってまず大径の粉末を捕捉し、次には第2フィルタ47によって中径の粉末を捕捉し、最後に第3フィルタ48によって小径の粉末を捕捉する。このように、孔径の異なるフィルタ46〜48を組み合わせて(重ねて)1つのフィルタ31’を形成することで、フィルタ31’全体の目詰まりを防ぐことができる。
隣り合う2つのフィルタの間は、熱融着により接合するか接着剤45で貼り付ける。例えば、隣り合うフィルタの間に熱融着材としての熱可塑性樹脂を塗布した後に、融点近くの温度に上げることで隣り合うフィルタ同士を熱融着できる。接着剤45としてはエポキシ系などの接着剤を用いればよい。
第5実施形態のフィルタ31’に用いる材料は、平面状多孔体に限られず、孔径の異なる3種類の平面状パンチング材を組み合わせて(重ねて)1つのフィルタ31’を形成するものであってもかまわない。この場合、平面状パンチング材は、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な特質を有する平面状パンチング材である。
第5実施形態によっても、第4実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、第5実施形態によれば、平面状多孔体で形成したフィルタ31’である場合に、このフィルタ31’が孔径の異なる複数のフィルタ46〜48からなり、相対的に孔径の大きなフィルタ46を発電要素2の側に、相対的に孔径の小さなフィルタ48を切り欠き部20(ガス放出弁)の側に配置する。これによって、相対的に大きな粒径の粉末をガス流れの上流側で捕捉し、相対的に小さな粒径の粉末をガス流れの下流で捕捉することが可能となり、フィルタ31’の目詰まりを防止することができる。
(第6実施形態)
図21は第6実施形態のラミネート型電池1の水平面に沿った断面図である。第5実施形態の図20と同一部分には同一番号を付している。
第5実施形態は、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な平面状多孔体であって、孔径の異なる3種類の平面状多孔体を組み合わせて(重ねて)1つのフィルタ31’を形成するものであった。一方、第6実施形態は、少なくとも一方向に収縮(変形)可能な特質を有する平面状多孔体でフィルタ51(粉末捕捉機構)を形成する点で第5実施形態と同じであるが、孔径の異なる3種類の平面状多孔体を組み合わせない点で第5実施形態と異なる。すなわち、一体でありながら孔径が面に直交する方向(厚さ方向)に徐々に変化する平面状多孔体でフィルタ51を形成する。具体的には一方のフィルタ面51aから他方のフィルタ面51bに向かうほど孔径が徐々に小さくなる(変化する)ようにフィルタ51を形成する。
そして、図21下方の拡大図に示したように、孔径が相対的に大きい側のフィルタ面51aが発電要素2側に、孔径が相対的に小さい側のフィルタ面51bが切り欠き部20側にくるように設ける。なお、この場合も1つのフィルタ51の外形は楕円状や二等辺三角形状とする。
同じ材質の中でフィルタ51の面に直交する方向(厚さ方向)に徐々に孔径が変化するように形成するには、次のようにすればよい。例えば、発泡フォームで平面状多孔体を形成する際に重力により径の異なる泡が偏って固まることを利用して、一方の面から他方の面に向かうほど徐々に孔径が変化する平面状多孔体を形成し、この平面状多孔体でフィルタ51を形成する。
第6実施形態は、フィルタ51を少なくとも一方向に収縮(変形)可能な特質を有する平面状多孔体で形成する場合を前提としているが、収縮しない特質を有する平面状多孔体でフィルタ51を形成する場合にも適用がある。収縮しない特質を有する平面状多孔体で一方の面から他方の面に向かうほど徐々に孔径が変化するように形成するには、次のようにすればよい。すなわち、セラミックスを焼結する際に適度に不純物を混ぜておいて焼結することで、一方の面から他方の面に向かうほど徐々に孔径が変化する平面状多孔体を形成し、この平面状多孔体でフィルタ51を形成する。
なお、フィルタ51を少なくとも一方向に収縮可能な特質を有する平面状多孔体で形成する場合には、フィルタを収縮した状態で電池1内部に収納することになる。一方、収縮しない特質を有する平面状多孔体でフィルタを形成する場合にはフィルタを1回以上折り畳んだ状態で電池1内部に収納することになる。
第6実施形態によれば、フィルタ51に用いる平面状多孔体の孔径は、発電要素2の側から切り欠き部20(ガス放出弁)の側に向かうほど小さくなるので、相対的に大きな粒径の粉末をガス流れの上流側で捕捉し、相対的に小さな粒径の粉末をガス流れの下流で捕捉することが可能となり、フィルタ51の目詰まりを防止することができる。
(第7実施形態)
図22は第7実施形態のラミネート型電池1の平面図である。ここでも、電池1を水平に配置するものとして鉛直方向を定める。すなわち、図22において紙面手前が鉛直上方、紙面奥が鉛直下方とする。
このように鉛直方向を定めたとき、図23は図22のラミネート型電池1の水平面に沿った断面図である。図23において第1実施形態の図3と同一部分には同一番号を付している。図24は第7実施形態のフィルタ61の概略斜視図、図25(a)は図24のX−X線断面図(孔62の列を通る水平線で切った断面図)である。
第7実施形態は、収縮しない特質を有する平面状パンチング材(例えばパンチングメタル)61でフィルタ61(粉末捕捉機構)を形成し、このフィルタ61を1回以上折り畳んだ状態で電池1内部に収納する点で第1実施形態と同様であるが、フィルタ61の孔62周り形状が第1実施形態と相違する。なお、第7実施形態の平面状パンチング材も面方向に収縮(変形)しない特質を有するものとする。
孔62が面内に等間隔で穿たれている平面状パンチング材は、図25(a)に示したように、面に直交する方向のうちの一方向(図25(a)では上方)に突出するドーム部63を孔62の周囲に有している。
ここでは比較のため、図25(b)に一般的な平面状パンチング材でフィルタ65を形成した場合の断面図を示している。一般的な平面状パンチング材で形成したフィルタ65では、孔62の周囲は面に直交する方向に突出しておらず、平面部66となっている。
図24、図25(a)に示したような原材料としてのフィルタから、第2ラミネートフィルム周縁部18の長さとほぼ同じ長軸長さと所定の面積を有する楕円状のフィルタ61を刳り貫いてまたは裁断して取り出す。取り出したフィルタ61は、図5で前述したところと同様に一回以上折り畳み、折り目をつけておく。この折り目をつけたフィルタ61の周縁(例えば鉛直方向上端61aと鉛直方向下端61b)に熱融着材22を塗布する(図26参照)。
熱融着材22を塗布したフィルタ61を、図23で示したように、切り欠き部20と発電要素2との間に位置して設ける。かつ、フィルタ61の一方の水平方向端(図23で左端)が第3ラミネートフィルム周縁部18に届き、他方の水平方向端(図23で右端)が第4ラミネートフィルム周縁部19に届くように第2ラミネートフィルム周縁部17と平行に置く。フィルタ61は、図25(a)に示したようにドーム部63の頂点が発電要素2側となるように配置する。
このようにフィルタ61を配置すれば、温度異常時に第2ラミネートフィルム周縁部17の全体へと開裂が広がる際には、この動きにフィルタ61の周縁(61a、61b)が図26に示したように追従して鉛直方向に広がることとなる。
このとき、発電要素2側からフィルタ61をみれば、孔62周囲に先がすぼまる先すぼまり部64が形成されている(図25(a)参照)。図25(a)に示したフィルタ61の断面形状によればガスは一方向に限って移動が許されることから、フィルタ61の先すぼまり部64は逆止弁の働きをする。すなわち、図25(a)において、温度異常時に電池1内部から電池1外部へと噴出するガスは、孔62周囲の先すぼまり部64の形状にガイドされて孔62に侵入し、孔62から電池1外部に噴出する(図25(a)において下方に向かう矢印参照)。その一方で、電池1外部の空気(酸素)は孔62から電池1内部へと侵入することができない(図25(a)において上方に向かう矢印参照)。
これに対して一般的な平面状パンチングでフィルタ65を形成した場合では、図25(b)において上下どちらの面からフィルタ65をみても孔62周囲には先すぼまり部64が存在しないので、電池1内部からのガスの噴出がないところでは、電池1外部の空気(酸素)が孔62から電池1内部へと侵入することとなる。
なお、収縮しない特質を有するパンチング材に代えて、少なくとも一方向に収縮可能な特質を有するパンチング材でフィルタを形成すると共に、フィルタ61の孔62周りの形状を図24、図25(a)に示した形状とするものであってもかまわない。この場合には、フィルタ61を収縮した状態で電池1内部に収納する。
第7実施形態によれば、第2実施形態の作用効果に加えて、さらに次の作用効果を得ることができる。すなわち、第7実施形態によれば、平面状パンチング材で形成したフィルタ61である場合に、パンチング孔62に向かって先がすぼまる先すぼまり部64を片面に形成し、この先すぼまり部64が形成された面を発電要素2側に配置している(図25(a)参照)。先すぼまり部64は、電池1内部から電池1外部へと噴出するガスはパンチング孔62を通して電池1外部に排出するが、電池1外部にある空気(特に酸素)はパンチング孔62を通して電池1内部に侵入しないようにする逆止弁の機能を有する。これによって、空気の電池1内部への逆流を抑制し、電池1内部で発火するという現象を抑制できる。
(第8実施形態)
図27は第7実施形態のラミネート型電池1の水平面に沿った断面図である。第1実施形態の図2と同一部分には同一番号を付している。
図27において電池1が圧壊するなど、予期しない大きな力が作用して電池1が激しく変形する際には、フィルタ25が電気伝導性を有する場合に、フィルタ25が発電要素2と接触して、内部短絡を生じさせることが考えられる。
そこで、第8実施形態では、フィルタ25(粉末捕捉機構)が電気伝導性を有する場合に、フィルタ25の発電要素2側の面25cを絶縁材料71で被覆することで、電池1が激しく変形する際に電気伝導性を有するフィルタ25が発電要素2と接触したとしても、内部短絡を生じさせないようにする。
ここで、「フィルタが電気伝導性を有する」とは、フィルタの原材料である平面状網材、平面状パンチング材または平面状多孔体が電気伝導性を有することである。ここでの平面状網材、平面状パンチング材、平面状多孔体は収縮しない特質を有するもの、 一方向に収縮(変形)可能な特質を有するもの、いずれでもかまわない。
上記の絶縁材料にはポリマーやセラミックがある。ポリマーとしてポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、テフロン(登録商標)、ポリイミドを挙げることができる。セラミックとしてアルミナ、ジルコニアを挙げることができる。セラミックによる被膜は蒸着(アルミナ蒸着、ジルコニア蒸着)などにより行わせることができる。
第8実施形態によれば、フィルタ25が電気伝導性を有する場合に、このフィルタ25の発電要素2側の面25cを絶縁材料71で被覆するので、圧壊など電池1が激しく変形する際に、電気伝導性を有するフィルタ25と発電要素2の電極とが接触し短絡することを抑制できる。
実施形態では、変形可能な場合として収縮可能な場合で説明したが、これに限られるものでなく、伸縮可能な場合でもかまわない。ここで、「収縮可能」について、収縮した状態から収縮する前の状態へと復帰するとき、元の状態より大きくなることはないと前述した。一方、「伸縮可能」という場合には、収縮した状態から収縮する前の状態へと復帰するとき、元の状態より大きくなる場合を含む概念で使用するものとする。
実施形態では、ラミネート型電池が二次電池である場合で説明したが、ラミネート型電池が一次電池である場合にも本発明の適用がある。