JP5640581B2 - 差動制限機構の制御装置 - Google Patents
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Description
このようなLSDには、トルク感応式、回転感応式、電子制御式の3つの種類がある。トルク感応式はエンジンからのトルクに応じてLSDが作動し、回転感応式は左右輪の回転速度差に応じてLSDが作動する。そして、電子制御式はLSDの制御器により任意のタイミングでLSDを作動させることができる。
また、車輪が空転していない状態でのLSDの作動においては、回転速度の速い旋回外輪から、回転速度の遅い旋回内輪へ駆動力が移動する、即ち、旋回を抑える方向に駆動力が移動するため、直進安定性の向上が期待できる。
特に、旋回内輪の空転時にLSDを強く作動させた場合、旋回外輪のトルクが増加して旋回方向へのトルクステアが発生するため、ドライバに要求される旋回方向への操舵トルクが大きく減少し、むしろ、旋回方向と逆向きの操舵トルクがドライバに要求される。つまり、旋回方向に勝手に回るステアリングホイールを、ドライバは抑える方向に操舵トルクを発生しなければならず、ドライバに対する違和感が大きくなってしまう。そのため、LSDの作動量を任意に制御できる電子制御式LSDにおいて、操舵性の悪化を防ぐために、電子制御式LSDの制御量を大きくすることができないのが現状である。
本発明は、かかる課題に鑑みて、電子制御式LSDの制御の観点から創案されたもので、要求されるLSD作動と、LSDの作動により生じる操舵反力変化に起因して発生する操舵違和感の抑制とをバランスさせることができるようにした、差動制限機構の制御装置を提供することを目的とする。
また、前記車両の各輪制動力に差を付ける制動力調整機構と、前記車両の各輪の空転を検出する各輪空転検出手段と、をさらに有し、前記制御手段は、前記差動制限機構の制御量を減少した際に、前記各輪空転検出手段により前記車両のいずれかの車輪の空転を検出すると、空転した車輪に対し前記制動力調整機構により制動力を付加させることが好ましい。
また、制御手段は、差動制限機構の制御量を減少した際に、車両のいずれかの車輪の空転を検出すると、空転した車輪に対し制動力調整機構により制動力を付加させることにより、差動制限の不足分を補うことができる。
〈第1実施形態〉
図1〜図4は、本発明の第1実施形態にかかる差動制限機構の制御装置を示すもので、図1はその車両の駆動系の構成図、図2はその差動制限機構の制限制御領域を説明する図、図3はその制御ブロック図、図4はその制御を説明するフローチャートである。これらの図を参照して説明する。
〔車両の駆動系の構成〕
図1に示すように、本実施形態にかかる車両は、車両の前部にエンジン(内燃機関)1を備えると共に、前輪4FR,4FLを駆動輪として構成された前輪駆動車(FF車)として構成されている。エンジン1の出力軸1aには、変速機(トランスミッション)2が接続され、変速機2の出力軸2aに差動制限制御付きの差動機構(Differential)3を介して前輪4FR,4FLが接続されている。
差動機構3に備えられる差動制限機構(LSD:Limited Slip Differential)5は、片輪(ここでは右前輪)4FRとデフケース31との間に介装され、本実施形態では電磁式の多板クラッチ51が用いられ、制御量(例えば制御電流)に応じて発生する磁力に応じて、多板クラッチ51を係合し、片輪(右前輪)4FRとデフケース31との間の差動を制限する。右前輪4FRとデフケース31との間の差動が制限されれば、当然ながら、左前輪4FLとデフケース31との間の差動も制限されることになる。
LSDコントローラ11では、この駆動輪の空転の判定は、各車輪の車輪速を検出する車輪速センサ21FR〜21RLの検出結果に基づいて、従動輪である4RR,4RLから基準の車輪速(車体速)を得て、駆動輪4FR,4FLの車輪速とこの基準の車輪速とを比較して行なう。つまり、後輪4RR,4RLの車輪速の平均値等を基準車輪速とし、駆動輪4FR,4FLの何れかの車輪速が基準の車輪速よりも予め設定された車輪速差以上に大きくなったら空転状態であると判定する。ただし、旋回時には、旋回半径に応じて、旋回内輪の車輪速は小さくなり、旋回外輪の車輪速は大きくなるので、この点は補正して判定する。
LSD5を作動させる条件としては、空転状態の場合に替えて、左右駆動輪に所定以上のトルク差が発生した場合や、左右輪の回転数差が所定値以上になった場合としてもよい。或いは、空転状態,所定以上のトルク差,所定値以上の回転数差の各条件の中の複数を設けて、これらのいずれかが成立したらLSD5を作動させるものと設定しても良い。
左右駆動輪の回転数差については、各車輪の車輪速を検出して差分を算出して得ることができる。この場合も、旋回時には、旋回半径に応じて、旋回内輪の車輪速は小さくなり、旋回外輪の車輪速は大きくなるので、この点は補正して判定する。
前輪4FR,4FL及び後輪4RR,4RLの各ブレーキ機構6FR,6FL,6RR,6RLは、それぞれ独立して作動を制御できるようになっている。つまり、各ブレーキ機構6FR〜6RLは車輪と共に回転するブレーキロータ6aとブレーキロータ6aを挟み込み係止するブレーキキャリパ6bとを有し、ブレーキキャリパ6bが各車輪のブレーキ機構毎に独立して作動を制御される。なお、ブレーキ機構6FR〜6RLを統合して制動力調整機構とも呼ぶ。
各ブレーキ機構6FR〜6RLを制御するために、ブレーキコントローラ12が装備され、ブレーキコントローラ12は、通常は、ドライバの操作するブレーキペダルの踏み込み量に応じて、各車輪4FR〜4RLをブレーキペダル操作に応じて各輪同時に制動するが、車両の旋回時等に車体のヨー方向制御(ステア制御)が必要な場合には、各車輪4FR〜4RLを個別に制動し、車体のヨー運動を制御する。
前輪4FR,4FLは、ステアリングホイール(図示略)のシャフト(図示略)先端に接続されたラックアンドピニオン等の機構を通じて、ステアリングホイールの操舵角θに応じて転舵される。
また、ステアリングホイールの操舵角θを検出する操舵角検出手段としての操舵角センサ22を備え、操舵角センサ22により検出された操舵角θは、車両ECU10に入力される。同様に、ステアリングホイールを通じたシャフトの操舵トルクτを検出する操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ23を備え、操舵トルクセンサ23により検出された操舵トルクτは、車両ECU10に入力される。
ところで、図2は、操舵角θに対して、取りうるドライバの操舵トルクτと、その際のLSDの動作の是非を示している。
なお、図2に実線で示す曲線は、操舵角θに対応した操舵トルクτの基準相関関係を示している。この基準相関関係は、ある操舵角θを保舵するのに必要な操舵トルクτ(以下、基準保舵トルクという)の一般的な対応関係を示したものである。ドライバは、ステアリングホイールを通じて、操舵角θに応じたこの基準保舵トルクを操舵トルクτとして加えると、通常、操舵系が中立復帰しようとする力が操舵反力となり、この操舵反力と基準保舵トルクとが釣り合って舵角が維持される。操舵角θを増大させる切り増し時には、ドライバは基準保舵トルクよりも大きなトルクを加える必要があり、操舵角θを減少させる切り戻し時には、ドライバは基準保舵トルクよりも小さなトルクを加えることになる。後者の切り戻し時には、操舵角θの方向に加えるトルクを減少させるが、通常は、負のトルク、つまり、操舵角θの方向と逆向きのトルクを加えて速やかに切り戻しを行なう。基準相関関係は、操舵角θの大きさが大きくなるほど操舵トルクτの大きさも増大し、操舵角θの大きさがある程度大きくなると操舵トルクτの大きさは頭打ちになる。また、この相関関係は車速に依存しても変化する。
0と比較して符号(正負)を判定し、操舵トルクセンサ23により検出された操舵トルクτを0と比較して符号(正負)を判定し、操舵角θの符号と操舵トルクτの符号とが不一致であるかを判定する。これとともに、操舵角θの絶対値が閾値(θth)以上かどうかを判定する(つまり、LSDトルク低減領域であるか否かを判定する)。操舵角θの符号と操舵トルクτの符号とが不一致であり、且つ、操舵角θの絶対値が閾値(θth)以上であれば、LSD低減領域であると判定する。LSDトルク低減判定時には、LSD5の制御量(差動制御量)に制御ゲイン(<1)を乗算し減少させるようにしている。
本発明の第1実施形態にかかる差動制限の制御装置は、上述のように構成されており、例えば、図4に示すような制御が車両ECU10により行なわれる。
まず、ドライバの入力する操舵角θ及び操舵トルクτを読み込む(ステップS10)。そして、操舵角θの符号と操舵トルクτの符号とが不一致かどうかを判定し(ステップS11)、且つ、操舵角θの絶対値が閾値(θth)よりも大きいかどうかを判定する(ステップS12)。操舵角θの符号と操舵トルクτの符号とが不一致であり、且つ、操舵角θの絶対値が閾値(θth)よりも大きい場合、LSD5を通常よりも制御量を低下させて動作させ(ステップS13)、操舵角θと操舵トルクτの符号が一致、または、操舵角θの絶対値が閾値(θth)よりも小さい場合、LSD5を通常の制御量で動作させる(ステップS14)。
車両ECU10は、操舵角センサ22により検出した操舵角θの方向と、操舵トルクセンサ23により検出した操舵トルクτの方向とが異なった際に、LSD5の制御量(差動制限量)を減少させるため、トルクステアによる極端な操舵反力変化を抑制することができ、操舵フィーリングを良好に維持することができる。
例えば、定常旋回中にLSD5の差動制限により、ドライバが操舵角θの方向と異なる方向に操舵トルクτを発生しなければならないトルクステアが発生した場合、ドライバに大きな違和感を与える。
もちろん、切り戻し操舵時にも、操舵角θの方向と操舵トルクτの方向とが同じ場合がある。つまり、操舵トルクτを基準保舵トルクよりも減少させて、ゆっくりと切り戻しを行なう低周波数領域の切り戻し操舵がある。この時は、LSD5の動作制限は行なわないので、LSD5による差動制限を十分に利用して、高速走行時の安定性及び加速性等を向上することができる。
また、車両ECU10は、LSD5の制御量を減少した際に、車両のいずれかの車輪の空転を検出すると、空転した車輪に対し制動力調整機構(ブレーキ機構)6FR〜6RLにより制動力を付加させることにより、差動制限の不足分を補うことができる。
また、空転車輪の空転状態に応じた大きさの制動力を付加させることにより、空転車輪の回転を適正に制御することができる。
次に、本発明の第2実施形態について、図面を用いて説明する。
図5〜図7は、本発明の第2実施形態にかかる差動制限機構の制御装置を示すもので、図5はその差動制限機構の制限制御領域を説明する図、図6はその制御ブロック図、図7はその制御を説明するフローチャートである。これらの図を参照して説明する。なお、駆動系の構成については図1を流用して説明する。
図1において、操舵角センサ22に替えて、ステアリングホイールの操舵角速度dθを検出する操舵角速度検出手段としての操舵角速度センサ24(二点鎖線で示す)を備え、操舵角速度センサ24により検出された操舵角速度dθは、車両ECU10に入力される。なお、この操舵角速度dθは、車両ECU10に入力される操舵角センサ22により検出された操舵角θを時間微分することで算出する構成としてもよい。
また、ステアリングホイールを通じたシャフトの操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ23を備え、操舵トルクセンサ23により検出された操舵トルクτは、車両ECU10に入力される。
ところで、図5は、操舵角速度dθに対して、取りうるドライバの操舵トルクτと、その際のLSDの動作の是非を示している。
なお、図5に実線で示す直線は、操舵角速度dθに対応した操舵トルクτの基準相関関係を示している。この基準相関関係は、ある操舵角速度dθで操舵するのに必要な操舵トルクτ(以下、基準トルクという)の対応関係の一例を示したものであり、ここでは簡略して直線で示すが、直線とは限らない。また、この基準相関関係は、中立(操舵角θ=0)を基準にした場合のものであり、所定の(0以外の)操舵角θを基準に考えた場合には、基準保舵トルク(図2参照)分だけ基準相関関係は(図5中の直線が上下に)シフトまたは変形する。基準相関関係は、操舵角速度dθの大きさが大きくなるほど操舵トルクτの大きさも増大する。また、この相関関係は車速に依存しても変化する。
これらの構成以外は、第1実施形態と同様の構成である。
本発明の第2実施形態にかかる差動制限機構の制御装置は、上述のように構成されるので、例えば、図7に示すような制御が車両ECU10により行なわれる。
まず、ドライバの入力する操舵角速度dθ及び操舵トルクτを読み込む(ステップS20)。そして、操舵角速度dθの符号と操舵トルクτの符号とが不一致かどうかを判定し(ステップS21)、且つ、操舵角速度dθの絶対値が閾値(dθth)よりも大きいかどうかを判定する(ステップS22)。操舵角速度dθと操舵トルクτの符号が不一致、且つ、操舵角速度dθの絶対値が閾値(dθth)よりも大きい場合、LSD5を通常よりも制御量を低下させて動作させ(ステップS23)、操舵角速度dθの符号と操舵トルクτの符号とが一致、または、操舵角速度dθの絶対値が閾値(dθth)よりも小さい場合、LSD5を通常の制御量で動作させる(ステップS24)。
また、LSD5を動作制限した場合には、いずれかの車輪が空転しているかを判定し(ステップS25)、空転車輪があれば空転した車輪に対して制動力調整機構(ブレーキ機構)6FR〜6RLによりブレーキを作動させ(ステップS26)、制御フローを終了する(END)。
車両ECU10は、操舵角速度センサ24により検出した操舵角速度dθの方向と、操舵トルクセンサ23により検出した操舵トルクτの方向とが異なった際に、LSD5の制御量(差動制限量)を減少させるため、トルクステアによる極端な操舵反力変化を抑制することができ、操舵フィーリングを良好に維持することができる。
例えば、LSD5が作動して操舵反力変化が発生し、ステアリングホイールの操舵角速度dθの方向に対し、ドライバにより入力される操舵トルクτの方向が異なった場合、ドライバに違和感を与える。
これに対して、操舵角速度dθの方向と操舵トルクτの方向とが異なる場合、LSD5の制御量(差動制限量)を減少させるので、上記の操舵反力変化を抑制することができ、操舵フィーリングを良好に維持することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、本実施形態では、FF車について説明したが、FR車(フロントエンジン・リヤドライブ車),RR車(リヤエンジン・リヤドライブ車)及び4WD車(4輪駆動)についても、LSDが装備されている車両であればいずれも本発明を適用することができる。
また、第1実施形態では、操舵角θの方向と操舵トルクτの方向とが異なった際に、LSD5の制御量を減少させ、第2実施形態では、操舵角速度dθの方向と操舵トルクτの方向とが異なった際に、LSD5の制御量を減少させるものを示したが、これらの制御を組み合わせて行なってもよい。
また、上記の実施形態では、LSD5の直接的な制御はLSDコントローラ11により、各車輪4FR〜4RLの直接的な制動制御はブレーキコントローラ12により、それぞれ行なっているが、車両ECU10にLSDコントローラ11の機能やブレーキコントローラ12の機能を持たせて何れの制御も車両ECU10により一括して行なうなど、制御装置(制御手段)の構成は種々考えられる。
2 トランスミッション
2b ベベルギア
3 差動機構(Differential)
4FR,4FL 前輪
5 LSD(差動制限機構)
6FR〜6RL ブレーキ機構(制動力調整機構)
10 車両ECU(制御手段)
11 LSDコントローラ
12 ブレーキコントローラ
21FR〜21RL 車輪速センサ
22 操舵角センサ(操舵角検出手段)
23 操舵トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
24 操舵角速度センサ(操舵角速度検出手段)
31 デフケース
51 多板クラッチ
Claims (5)
- 車両の左右輪の差動を制限する差動制限機構と、前記差動制限機構を制御する制御手段とを有する車両において、
ドライバが入力する前記車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
ドライバが入力する前記車両の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、を有し、
前記制御手段は、前記操舵角検出手段により検出した操舵角の方向と、前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクの方向とが異なった際に、前記差動制限機構の制御量を減少させる
ことを特徴とする、差動制限機構の制御装置。 - 車両の左右輪の差動を制限する差動制限機構と、前記差動制限機構を制御する制御手段とを有する車両において、
ドライバが入力する前記車両の操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、
ドライバが入力する前記車両の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、を有し、
前記制御手段は、前記操舵角速度検出手段により検出した操舵角速度の方向と、前記操舵トルク検出手段により検出した操舵トルクの方向とが異なった際に、前記差動制限機構の制御量を減少させる
ことを特徴とする、差動制限機構の制御装置。 - 前記操舵角の中立領域又は前記操舵角速度のゼロ近傍の領域に、前記制御量の減少を行なわない不感帯領域が設けられている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の差動制限機構の制御装置。 - 前記車両の各輪制動力に差を付ける制動力調整機構と、
前記車両の各輪の空転を検出する各輪空転検出手段と、をさらに有し、
前記制御手段は、前記差動制限機構の制御量を減少した際に、前記各輪空転検出手段により前記車両のいずれかの車輪の空転を検出すると、空転した車輪に対し前記制動力調整機構により制動力を付加させる
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の差動制限機構の制御装置。 - 前記制御手段は、前記空転した車輪に対し前記制動力調整機構により制動力を付加させる際に、前記空転車輪の空転状態に応じた大きさの制動力を付加させる
ことを特徴とする、請求項4記載の差動制限機構の制御装置。
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