JP4730543B2 - 車両の駆動力分配制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は車両の前後輪間の駆動力分配を制御する駆動力分配制御装置に関するものである。
例えば電子制御式オンディマンド4輪駆動車では、エンジンからの駆動力を前輪または後輪の一方に伝達し、伝達した駆動力の一部を電子制御カップリングなどの駆動力分配装置を介して前輪または後輪の他方に分配し、駆動力分配の制御により適切な車両の走行特性を実現する技術が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
当該特許文献1に開示された技術は車両旋回時のアンダステアやオーバステアの抑制を目的としたものであり、FR車ベースの4輪駆動車に適用されている。車両の前後輪間には後輪の駆動力の一部を前輪側に分配する駆動力分配装置としてトランスファが設けられ、後輪の左右輪間には差動制限力を発生する差動制限装置が設けられ、旋回外輪の車輪速が旋回内輪の車輪速より高くて内輪がグリップしていると推測されるときには、トランスファによる前後輪間の駆動力分配を低めることで前輪に分配される駆動力を低下させると共に、差動制限装置による左右輪間の差動制限力を低下させ、これによりアンダステアの抑制を図っている。
特許第2527204号明細書
上記特許文献1の技術は左右輪間の差回転に着目してトランスファによる駆動力分配及び差動制限装置による差動制限力を制御しているが、左右輪間の差回転や前後輪間の差回転は車両の旋回状態を表す指標の一つに過ぎず、駆動力分配や差動制限力を適切に制御するには不十分であった。例えば左右輪間或いは前後輪間の差回転が同一条件であっても車両のステア特性がアンダステアであるかオーバステアであるかによって最適な駆動力分配や差動制限力が相違することから、結果として車両の旋回状態によってはトランスファの駆動力分配や差動制限装置の差動制限力が不適切に制御されて良好なステア特性を実現できないという問題が生じた。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車両の旋回状態を端的に表す指標に基づいて前後輪間の駆動力分配を適切に制御でき、もって車両の旋回状態に関わらず良好なステア特性を実現することができる車両の駆動力分配制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項の発明は、車両の前後輪間に設けられ、駆動源から前輪に伝達された駆動力の一部を後輪側に可変分配可能な駆動力分配手段と、車両の旋回状態に基づいて後輪側に分配させるべき駆動力分配に対する補正量として旋回対応制御量を算出する制御量算出手段と、車両の現在のステア特性を判定するステア特性判定手段と、前後輪の車輪速をそれぞれ検出する車輪速検出手段と、車輪速検出手段による検出結果に基づき前輪の車輪速が後輪の車輪速より高いと判定した場合、ステア特性判定手段により判定されたステア特性がアンダステアのときには前後輪間の駆動力分配を旋回対応制御量に基づき増加補正する一方、ステア特性がオーバステアのときには前後輪間の駆動力分配を旋回対応制御量に基づき減少補正し、前輪の車輪速が後輪の車輪速より低いと判定した場合、ステア特性判定手段により判定されたステア特性に関わらず前後輪間の駆動力分配を旋回対応制御量に基づき減少補正し、補正後の駆動力分配に基づいて駆動力分配手段を制御する駆動力分配制御手段とを備えたものである。
従って、車両の旋回状態に基づいて制御量算出手段により後輪側に分配させるべき駆動力分配に対する補正量として旋回対応制御量が算出されると共に、ステア特性判定手段により現在の車両のステア特性が判定され、前後輪の車輪速が車輪速検出手段により検出される。前後輪間の駆動力分配によるトルク移動は車輪速の高い側から低い側へと行われるため、前輪の車輪速が後輪の車輪速より高い場合には駆動力分配手段を介して前輪から後輪へとトルクが移動しており、アンダステアであるとして旋回対応制御量に基づき駆動力分配が増加補正されると、前輪の駆動力低下に伴って横力が増加してヨーモーメントの増加によりアンダステアが抑制され、オーバステアであるとして駆動力分配が減少補正されると、後輪の駆動力低下に伴って横力が増加してヨーモーメントの低下によりオーバステアが抑制される。
また、前輪の車輪速が後輪の車輪速より低い場合には駆動力分配手段を介して後輪から前輪へとトルクが移動し、前輪が後輪側から逆駆動されると共に、後輪が制動力(負の駆動力)を発生しており、アンダステアの場合に駆動力分配が減少補正されると、前輪の駆動力低下に伴って横力が増加してヨーモーメントの増加によりアンダステアが抑制され、オーバステアの場合に駆動力分配が減少補正されると、後輪の制動力低下に伴って横力が増加してヨーモーメントの低下によりオーバステアが抑制される。これにより前後輪の車輪速のみならず車両のステア特性も反映して統合的に前後輪の他方側に分配させるべき駆動力分配が制御され、車両の旋回状態に関わらず良好なステア特性が実現される。
請求項の発明は、車の前後輪間に設けられ、駆動源から後輪に伝達された駆動力の一部を前輪側に可変分配可能な駆動力分配手段と、車両の旋回状態に基づいて前輪側に分配させるべき駆動力分配に対する補正量として旋回対応制御量を算出する制御量算出手段と、車両の現在のステア特性を判定するステア特性判定手段と、前後輪の車輪速をそれぞれ検出する車輪速検出手段と、車輪速検出手段による検出結果に基づき後輪の車輪速が前輪の車輪速より高いと判定した場合、ステア特性判定手段により判定されたステア特性がアンダステアのときには前後輪間の駆動力分配を旋回対応制御量に基づき減少補正する一方、ステア特性がオーバステアのときには前後輪間の駆動力分配を旋回対応制御量に基づき増加補正し、後輪の車輪速が前輪の車輪速より低いと判定した場合、ステア特性判定手段により判定されたステア特性に関わらず前後輪間の駆動力分配を旋回対応制御量に基づき減少補正し、補正後の駆動力分配に基づいて駆動力分配手段を制御する駆動力分配制御手段とを備えたものである。
従って、車両の旋回状態に基づいて制御量算出手段により前輪側に分配させるべき駆動力分配に対する補正量として旋回対応制御量が算出されると共に、ステア特性判定手段により現在の車両のステア特性が判定され、前後輪の車輪速が車輪速検出手段により検出される。前後輪間の駆動力分配によるトルク移動は車輪速の高い側から低い側へと行われるため、後輪の車輪速が前輪の車輪速より高い場合には駆動力分配手段を介して後輪から前輪へとトルクが移動しており、アンダステアであるとして旋回対応制御量に基づき駆動力分配が減少補正されると、前輪の駆動力低下に伴って横力が増加してヨーモーメントの増加によりアンダステアが抑制され、オーバステアであるとして駆動力分配が増加補正されると、後輪の駆動力低下に伴って横力が増加してヨーモーメントの低下によりオーバステアが抑制される。
また、後輪の車輪速が前輪の車輪速より低い場合には駆動力分配手段を介して前輪から後輪へとトルクが移動し、後輪が前輪側から逆駆動されると共に、前輪が制動力(負の駆動力)を発生しており、アンダステアの場合に駆動力分配が減少補正されると、前輪の制動力低下に伴って横力が増加してヨーモーメントの増加によりアンダステアが抑制され、オーバステアの場合に駆動力分配が減少補正されると、後輪の駆動力低下に伴って横力が増加してヨーモーメントの低下によりオーバステアが抑制される。これにより前後輪の車輪速のみならず車両のステア特性も反映して統合的に前後輪の他方側に分配させるべき駆動力分配が制御され、車両の旋回状態に関わらず良好なステア特性が実現される。
好ましい態様として、制御量算出手段を、旋回対応制御量に加えて、前後輪の車輪速の差に基づく差回転対応制御量、アクセル操作に伴う車両の加速状態に基づく加速対応制御量、及びブレーキ操作に伴う車両の減速状態に基づく減速対応制御量などの内の少なくとも一つを駆動力分配のベース制御量として算出するように構成し、駆動力分配制御手段を、ベース制御量を旋回対応制御量に基づいて増加補正または減少補正するように構成することが望ましい。
従って、駆動力分配のベース制御量として差回転対応制御量、加速対応制御量、減速対応制御量の内の少なくとも一つが算出され、このベース制御量が旋回対応制御量に基づいて増加補正または減少補正される。即ち、ベース制御量に対して旋回対応制御量に基づく補正が行われるため、増加補正のみならず減少補正も常に可能となり、旋回対応制御量を確実に前後輪の他方側に分配させるべき駆動力分配に反映させることができる。
請求項3の発明は、請求項1または2において、ステア特性判定手段が、車両の走行状態に基づいて目標旋回状態指標を決定する目標旋回状態指標決定手段と、車両の実際の旋回状態指標を検出する実旋回状態指標検出手段とを備え、目標旋回状態指標と実旋回状態指標とに基づき現在の車両のステア特性を判定すると共に、制御量算出手段が、ステア特性判定手段によりステア特性として判定されたアンダステア及びオーバステアに基づき前後輪のスリップ輪を特定し、スリップ輪の駆動力及び横力からグリップ限界と相関するグリップ限界指標を推定するグリップ限界指標推定手段と、車両の旋回状態に基づいてアンダステアまたはオーバステアを抑制するための要求ヨーモーメントを算出し、要求ヨーモーメントを達成可能なスリップ輪の要求横力を算出する要求横力算出手段と、グリップ限界指標算出手段により算出されたグリップ限界指標を前提として、要求横力算出手段により算出された要求横力を達成するために必要なスリップ輪の駆動力低下量を算出する駆動力低下量算出手段とを備え、駆動力低下量算出手段により算出されたスリップ輪の駆動力低下量に応じて旋回対応制御量を算出するものである。
従って、目標旋回状態指標決定手段により決定された目標旋回状態指標と、実旋回状態指標検出手段により検出された実際の旋回状態指標とに基づき車両のステア特性が判定される。車両旋回中のアンダステアの発生は前輪の横力不足によるスリップに起因し、オーバステアの発生は後輪の横力不足によるスリップに起因するため、ステア特性としてアンダステアが判定されたときには前輪がスリップ輪として特定され、オーバステアのときには後輪がスリップ輪として特定される。
そして、スリップ輪の駆動力及び横力からグリップ限界と相関するグリップ限界指標、例えば駆動力及び横力に対するグリップ限界を規定する摩擦円がグリップ限界指標推定手段により推定される。さらに車両の旋回状態に基づいて要求横力算出手段によりアンダステアまたはオーバステアを抑制するための要求ヨーモーメントが算出された上で、要求ヨーモーメントを達成可能なスリップ輪の要求横力が算出され、グリップ限界指標を前提として要求横力を達成するためのスリップ輪の駆動力低下量が駆動力低下量算出手段により算出され、この駆動力低下量に応じて制御量算出手段により旋回対応制御量が算出される。
即ち、具体的な目標旋回状態指標と実旋回状態指標に基づいて車両のステア特性が判定される一方、スリップ輪のグリップ限界と相関するグリップ限界指標を前提とし、ステア特性として判定されたアンダステアやオーバステアを抑制するための要求ヨーモーメント、要求ヨーモーメントを達成可能なスリップ輪の要求横力、要求横力を達成するためのスリップ輪の駆動力低下量などの具体的な算出値に基づいて旋回対応制御量が算出されるため、例えば過去の経験則や実験結果に基づいて旋回対応制御量を設定する場合などに比較して、より現実に即した旋回対応制御量を算出可能となる。
好ましい態様として、上記要求横力算出手段を、車両の旋回状態から決定した目標ヨーレイトと実際のヨーレイトとの偏差に基づき、アンダステアまたはオーバステアを抑制するための要求ヨーモーメントを算出し、該要求ヨーモーメントからスリップ輪の要求横力を算出するように構成することが望ましい。
このように構成すれば、車両の旋回状態を端的に表すヨーレイトに基づいて適切な要求ヨーモーメント、ひいては一層適切な旋回対応制御量を算出することができる。
以上説明したように請求項1の発明の車両の駆動力分配制御装置によれば、前輪の駆動力の一部を後輪に分配する車両において、車両の旋回状態を端的に表す現在のステア特性と前後輪の車輪速の大小関係との組合せに応じて前後輪間の駆動力分配を増加補正または減少補正するため、前後輪間の駆動力分配を適切に制御でき、もってアンダステアやオーバステアを確実に抑制することができる。
請求項2の発明の車両の駆動力分配制御装置によれば、後輪の駆動力の一部を前輪に分配する車両において、車両の旋回状態を端的に表す現在のステア特性と前後輪の車輪速の大小関係との組合せに応じて前後輪間の駆動力分配を増加補正または減少補正するため、前後輪間の駆動力分配を適切に制御でき、もってアンダステアやオーバステアを確実に抑制することができる。
請求項の発明の車両の駆動力分配制御装置によれば、請求項1または2に加えて、具体的な目標旋回状態指標と実旋回状態指標に基づいて車両のステア特性を判定した上で、スリップ輪のグリップ限界と相関するグリップ限界指標を前提とし、ステア特性として判定されたアンダステアやオーバステアを抑制するための要求ヨーモーメント、スリップ輪の要求横力や駆動力低下量などの具体的な算出値に基づいて駆動力分配手段に適用する旋回対応制御量を算出するため、より現実に即した旋回対応制御量に基づいて前後輪間の駆動力分配を適切に制御でき、車両のアンダステアやオーバステアを確実に抑制することができる。
[第1実施形態]
以下、本発明をFF車ベースの電子制御式オンディマンド4輪駆動車の前後輪間の駆動力分配を制御する駆動力分配制御装置に具体化した第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態の車両の駆動力分配制御装置を示す全体構成図である。車両前部にはフロントディファレンシャル1(以下、フロントデフと称する)が設けられ、フロントデフ1に固定されたリングギア2には図示しないエンジンの駆動力が変速機を介して入力される。フロントデフ1にはドライブシャフト3を介して左右の前輪4が接続され、フロントデフ1はリングギア2に入力されたエンジンの駆動力を、差動を許容しながら左右の前輪4に伝達する。フロントデフ1にはフロント電子制御LSD5が併設され、当該フロント電子制御LSD5は内蔵された図示しない電磁クラッチの係合状態に応じて左右前輪4間に差動制限力を作用させる。
フロントデフ1のリングギア2にはフロントプロペラシャフト6の前端に固定されたピニオンギア7が噛合し、フロントプロペラシャフト6の後端は電子制御カップリング8(駆動力分配手段)を介してリアプロペラシャフト9の前端に接続されている。リアプロペラシャフト9の後端に固定されたピニオンギア10はリアディファレンシャル11(以下、リアデフと称する)のリングギア12に噛合し、リアデフ11にはドライブシャフト13を介して左右の後輪14が接続されている。
エンジンの駆動力の一部はフロントデフ1からプロペラシャフト6,9及び電子制御カップリング8を介してリアデフ11側に分配され、リアデフ11により差動を許容されながら左右の後輪14に伝達される。電子制御カップリング8は内蔵された図示しない電磁クラッチの係合状態に応じて前輪4側から後輪14側に分配される駆動力、即ち、前後輪4,14間の駆動力分配を調整する。なお、駆動力配分を調整する原理はこれに限ることはなく、ポンプやモータなどの制御デバイスを利用して駆動力配分を調整可能なのもであれば任意に変更可能であり、例えば油圧ポンプから供給した作動油により油圧ピストンを作動させてクラッチの係合状態を調整してもよい。
一方、車両の室内には4WD用ECU21が設置され、この4WD用ECU21は図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えている。4WD用ECU21の入力側には、ステアリングの操舵角θstrを検出する操舵角センサ22、車速Vを検出する車速センサ23、車両のヨーレイトYRを検出するヨーレイトセンサ24、車両の各輪4,14の車輪速NFR,NFL,NRR,NRLを検出する車輪速センサ25、車両旋回時に発生する横加速度GYを検出する横加速度センサ26などの各種センサ類が接続され、4WD用ECU21の出力側には、上記フロント電子制御LSD5の電磁クラッチ及び電子制御カップリング8の電磁クラッチなどの各種デバイス類が接続されている。
4WD用ECU21は上記各種センサからの検出情報に基づいてフロント電子制御LSD5や電子制御カップリング8の電磁クラッチの係合状態を制御する。本実施形態では車両旋回時のアンダステアやオーバステアの抑制を目的として、前後輪4,14のグリップ限界と相関する摩擦円(グリップ限界指標)に基づき電子制御カップリング8による前後輪4,14間の駆動力分配の制御を実行しており、以下、当該電子制御カップリング8の制御量の設定手順を説明する。
電子制御カップリング8の制御量の設定は、車両のステア特性がアンダステアであるかオーバステアであるかに応じて異なる手順で実行されるため、ステア特性毎に場合分けして説明する。本実施形態ではECU21はヨーレイトセンサ24(実旋回状態指標検出手段)により検出された実ヨーレイトYR(実旋回状態指標)と後述する目標ヨーレイトYT(目標旋回状態指標)との比較結果に基づいて現在車両に発生しているステア特性を判定した上で(ステア特性判定手段)、ステア特性に応じた制御量の設定を実行している。但し、ステア特性の判定手法はこれに限るものではなく任意に変更可能である。
図2はアンダステア発生時にECU21により実行される電子制御カップリング8の制御量の設定手順を示すブロック図、図3,4は設定された制御量に基づく駆動力分配の制御状況を示す模式図であり、まず、これらの図に従ってアンダステアが発生した場合について述べる。なお、図3,4は左右前輪4の車輪速NFR,NFL及び左右後輪14の車輪速NRR,NRLを平均化して2輪モデルとして模式的に表しており、図3は前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより高い場合を示し、図4は前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより低い場合を示している。
また、図3,4において、前後輪4,14に付した上下方向の黒塗り直線矢印Adrvの長さ及び方向は駆動力の大きさ及び方向(駆動か制動か)を表し、前後輪4,14に付した左方向の黒塗り直線矢印Acorneringの長さは横力の大きさを表し、これに対して白抜き直線矢印Adrv,Acorneringはステア特性に応じた制御量(ヨーレイト対応制御量Ty)に基づく駆動力および横力に対する補正状況を表している。また、前後輪4,14に付した白抜き回転矢印Arevの長さは前輪平均車輪速NFave及び後輪平均車輪速NRaveを表し、前後輪4,14間の黒塗り直線矢印Atrqの長さ及び方向は電子制御カップリング8の最終制御量Tに応じた駆動力分配によるトルク移動量及び移動方向を表している。
車両のアンダステアは前輪4の横力不足によるスリップに起因する現象であり、このときの前輪4は自己の摩擦円により規定される駆動力及び横力に対するグリップを限界まで使用しているものと推測でき、換言すれば、前輪4の駆動力の低下により横力を増加させてアンダステアを抑制できる余地があると解釈できる。一方、前輪4の駆動力は、電子制御カップリング8を介して前輪4から後輪14に分配されるトルク、或いは後輪14から前輪4に伝達されるトルクに応じて変化するため、前後輪4,14間の駆動力分配に応じて調整可能である。
以上の観点の下に図2に従ってアンダステア時の電子制御カップリング8の制御量が設定される。まず、前輪駆動力算出部31ではエンジントルク及び前後輪4,14間の駆動力分配に基づき前輪4が発生している駆動力FXが算出され、前輪横力算出部32では横加速度センサ26により検出された横加速度GYと予め判明している前輪分担質量MFとから次式(1)に従って前輪4が発生している横力FCFが算出される。
FCF=MF×|GY|………(1)
前輪駆動力算出部31からの前輪駆動力FXと前輪横力算出部32からの前輪横力FCFは前輪摩擦円算出部33に入力され、これらの情報に基づき前輪摩擦円算出部33では次式(2)に従って前輪摩擦円FFRが当該摩擦円FFRの半径として算出される(グリップ限界指標推定手段)。
FFR=√(FX+FCF)………(2)
前輪4が発揮するグリップ力は、タイヤの磨耗状態の相違、天候(晴天や降雪)や路面形態(舗装路やダート)に応じた路面摩擦係数の相違などの種々の要因に影響されるが、前輪4がグリップ限界に達してアンダステアを生じたときの駆動力FX及び横力FCFから摩擦円FFRが推定されるため、推定された摩擦円FFRは前輪4のグリップ力と正確に相関する大きさとなる。
ヨーモーメント算出部34では、操舵角センサ22からの操舵角θstr及び車速センサ23からの車速Vに基づいて目標ヨーレイトYTが算出され(目標旋回状態指標決定手段)、目標ヨーレイトYTとヨーレイトセンサ24により検出された実ヨーレイトYRとの偏差ΔYに基づきアンダステアを抑制するために必要な要求ヨーモーメントYAWMが算出される。要求ヨーモーメントYAWMは前輪要求横力算出部35に入力され、前輪要求横力算出部35では次式(3)に従って要求ヨーモーメントYAWMを達成するために必要な前輪4の要求横力FCFTが算出される(要求横力算出手段)。
FCFT=YAWM/LF………(3)
ここに、LFは重心から前軸までの距離である。
前輪摩擦円算出部33からの前輪摩擦円FFR、前輪横力算出部32からの前輪横力FCF、前輪要求横力算出部35からの前輪要求横力FCFTは前輪駆動力低下量算出部36に入力され、当該前輪駆動力低下量算出部36では、前輪摩擦円FFRを前提として要求横力FCFT相当分だけ前輪4の横力FCFを増加させるために必要な前輪4の駆動力低下量FXTが次式(4)に従って算出される(駆動力低下量算出手段)。
FXT=|FX|−√(FFR−(FCF+FCFT))………(4)
算出された前輪4の駆動力低下量FXTは制御量算出部37に入力され、制御量算出部37では駆動力低下量FXTに対応する駆動力分配に対する補正量としてヨーレイト対応制御量Ty(旋回対応制御量)が次式(5)に従って算出される(制御量算出手段)。
Ty=FXT×R/FHG………(5)
ここに、Rは前輪4のタイヤ半径、FHGはリングギヤ2とピニオンギヤ7のギア比である。
一方、ベース制御量算出部38では、ヨーレイト対応制御量Ty以外のベース制御量Tbaseが算出される。例えば車両旋回時には前輪平均車輪速NFaveと後輪平均車輪速NRaveとの差に基づいて差回転対応制御量が算出され、アクセル操作に伴う車両加速時にはアクセル操作量などに基づいて初期スリップを抑制するための加速対応制御量が算出され、ブレーキ操作に伴う車両減速時には車両減速度などに基づいて車両姿勢を安定化するための減速対応制御量が算出され、これらの制御量を加算した総和がベース制御量Tbaseとして設定される。また、車輪速判定部39では車輪速NFR,NFL,NRR,NRから前輪平均車輪速NFaveと後輪平均車輪速NRaveとが算出され、これらの前輪平均車輪速NFaveと後輪平均車輪速NRaveの大小関係が判定される。
以上の制御量算出部37からのヨーレイト対応制御量Ty、ベース制御量算出部38からのベース制御量Tbase、車輪速判定部39からの前輪平均車輪速NFaveと後輪平均車輪速NRaveとの大小関係は最終制御量算出部40に入力され、最終制御量算出部40ではこれらの情報に基づき図2中に示す条件に従って最終制御量Tが算出される。そして、このようにして設定された最終制御量Tに基づいて前後輪4,14間の実際の駆動力分配が制御される。即ち、最終制御量Tに対応するデューティ率が図示しないマップから設定され、そのデューティ率に基づく電子制御カップリング8の電磁クラッチの励磁により係合状態が調整され、その結果、前後輪4,14間の駆動力分配が上記最終制御量Tに対応する値に調整される(駆動力分配制御手段)。
前後輪4,14間の駆動力分配によるトルク移動は車輪速の高い側から低い側へと行われるため、図3に示す前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより高い走行状況(NFave>NRave)では電子制御カップリング8を介して前輪4から後輪14へとトルクが移動している。即ち、前輪4の駆動力の一部が後輪14に分配されることにより、トルク移動相当分だけ後輪14が駆動力を発生すると共に前輪4の駆動力が低下している。図2に示すように最終制御量算出部40では最終制御量Tがヨーレイト対応制御量Tyだけ増加補正されるため、最終制御量Tの増加に応じて実際の前後輪4,14間の駆動力分配も増加する。結果として前輪4から後輪14へのトルク移動量が増加し、図3に白抜き矢印Adrv,Acorneringで示すように後輪14の駆動力が増加する一方、前輪4の駆動力が低下する。このときの前輪4の駆動力は上記前輪駆動力低下量算出部36で算出された駆動力低下量FXT相当分だけ低下し、それに応じて前輪要求横力算出部35で算出された要求横力FCFT相当分だけ前輪4の横力が増加し、前輪4の横力増加に伴ってヨーモーメント算出部34で算出された要求ヨーモーメントYAWM相当分だけ車両のヨーモーメントが増加し、車両に発生しているアンダステアが抑制される。
また、図4に示す前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより低い走行状況(NFave<NRave)では電子制御カップリング8を介して後輪14から前輪4へとトルクが移動している。即ち、前輪4が後輪14側から逆駆動されると共に、トルク移動相当分だけ後輪14が制動力(負の駆動力)を発生すると共に前輪4の駆動力が増加している。図2に示すように最終制御量算出部40では最終制御量Tがヨーレイト対応制御量Tyだけ減少補正されるため、最終制御量Tの低下に応じて実際の前後輪4,14間の駆動力分配も低下する。結果として後輪14から前輪4へのトルク移動量が低下し、図4に白抜き矢印Adrv,Acorneringで示すように後輪14の制動力が低下する一方、前輪4の駆動力が低下する。従って、上記と同様に前輪4の駆動力の低下に伴って横力が増加し、ヨーモーメントの増加に応じてアンダステアが抑制される。
なお、図2では示されていないが、車両が旋回中でないとき及び旋回中であってもステア特性がニュートラルステアのときには最終制御量Tの算出にヨーレイト制御量Tyは反映されず、ベース制御量Tbaseがそのまま最終制御量Tとして設定されるため、上記のようなアンダステアの抑制のための駆動力分配の制御は実行されない。
一方、旋回中の車両にオーバステアが発生した場合について述べる。図5はオーバステア発生時にECU21により実行される電子制御カップリング8の制御量の設定手順を示すブロック図、図6,7は設定された制御量に基づく駆動力分配の制御状況を示す模式図であり、図6は前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより高い場合を示し、図7は前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより低い場合を示している。
車両のオーバステアは後輪14の横力不足によるスリップに起因する現象であり、このときの後輪14は自己の摩擦円により規定される駆動力及び横力に対するグリップを限界まで使用しているものと推測でき、換言すれば、後輪14の駆動力の低下により横力を増加させてオーバステアを抑制できる余地があると解釈できる。一方、後輪14の駆動力は、電子制御カップリング8を介して前輪4から後輪14に分配されるトルク、或いは後輪14から前輪に伝達されるトルクに応じて変化するため、前後輪4,14間の駆動力分配に応じて調整可能である。
以上の観点の下に図5に従ってオーバステア時の電子制御カップリング8の制御量が設定される。まず、後輪駆動力算出部31'では前後輪4,14間の駆動力分配に基づき後輪14が発生している駆動力RXが算出され、後輪横力算出部32'では横加速度センサ26により検出された横加速度GYと予め判明している後輪分担質量MRとから次式(6)に従って後輪14が発生している横力RCFが算出される。
RCF=MR×|GY|………(6)
後輪駆動力算出部31'からの後輪駆動力RXと後輪横力算出部32'からの後輪横力RCFは後輪摩擦円算出部33'に入力され、これらの情報に基づき後輪摩擦円算出部33'では次式(7)に従って後輪摩擦円RFRが当該摩擦円RFRの半径として算出される(グリップ限界指標推定手段)。
RFR=√(RX+RCF)………(7)
前輪4と同じく後輪14についても、グリップ限界に達してオーバステアを生じたときの駆動力RX及び横力RCFから摩擦円RFRが推定されるため、推定された摩擦円RFRは後輪14のグリップ力と正確に相関する大きさとなる。
ヨーモーメント算出部34'では、上記アンダステア時と同様の手順に従ってオーバステアを抑制するために必要な要求ヨーモーメントYAWMが算出され、この要求ヨーモーメントYAWMに基づき後輪要求横力算出部35'では次式(8)に従って要求ヨーモーメントYAWMを達成するために必要な後輪14の要求横力RCFTが算出される(要求横力算出手段)。
RCFT=YAWM/LR………(8)
ここに、LRは重心から後軸までの距離である。
後輪摩擦円算出部33'からの後輪摩擦円RFR、後輪横力算出部32'からの後輪横力RCF、後輪要求横力算出部35'からの後輪要求横力RCFTは後輪駆動力低下量算出部36'に入力され、当該後輪駆動力低下量算出部36'では、後輪摩擦円RFRを前提として要求横力RCFT相当分だけ後輪14の横力RCFを増加させるために必要な後輪14の駆動力低下量RXTが次式(9)に従って算出される(駆動力低下量算出手段)。
RXT=|RX|−√(RFR−(RCF+RCFT))………(9)
算出された後輪14の駆動力低下量RXTは制御量算出部37'に入力され、制御量算出部37'では駆動力低下量RXTに対応する駆動力分配に応じた補正量としてヨーレイト対応制御量Ty(旋回対応制御量)が次式(10)に従って算出される(制御量算出手段)。
Ty=RXT×R/RHG………(10)
ここに、RHGはリングギヤ12とピニオンギヤ10のギア比である。
一方、ベース制御量算出部38'及び車輪速判定部39'の処理は上記アンダステア時と同様であり、ベース制御量算出部38'ではベース制御量Tbaseが算出され、車輪速判定部39'では前輪平均車輪速NFaveと後輪平均車輪速NRaveとの大小関係が判定される。
以上の情報に基づき最終制御量算出部40'では図5中に示す条件に従って最終制御量Tが算出され、この最終制御量Tに基づいて電子制御カップリング8により前後輪4,14間の駆動力分配が調整される(駆動力分配制御手段)。
図6に示す前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより高い走行状況(NFave>NRave)では、図3と同じく電子制御カップリング8を介して前輪4から後輪14へとトルクが移動している。即ち、前輪4の駆動力の一部が後輪14に分配されることにより、トルク移動相当分だけ後輪14が駆動力を発生すると共に前輪4の駆動力が低下している。図5に示すように最終制御量算出部40'では最終制御量Tがヨーレイト対応制御量Tyだけ減少補正されるため、最終制御量Tの低下に応じて実際の前後輪4,14間の駆動力分配も低下する。結果として前輪4から後輪14へのトルク移動量が低下し、図6に白抜き矢印Adrv,Acorneringで示すように後輪14の駆動力が低下する一方、前輪4の駆動力が増加する。このときの後輪14の駆動力は上記後輪駆動力低下量算出部36'で算出された駆動力低下量RXT相当分だけ低下し、それに応じて後輪要求横力算出部35'で算出された要求横力RCFT相当分だけ後輪14の横力が増加し、後輪14の横力増加に伴ってヨーモーメント算出部34'で算出された要求ヨーモーメントYAWM相当分だけ車両のヨーモーメントが低下し、車両に発生しているオーバステアが抑制される。
また、図7に示す前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより低い走行状況(NFave<NRave)では、図4と同じく電子制御カップリング8を介して後輪14から前輪4へとトルクが移動している。即ち、前輪4が後輪14側から逆駆動されると共に、トルク移動相当分だけ後輪14が制動力を発生している。図5に示すように最終制御量算出部40'では最終制御量Tがヨーレイト対応制御量Tyだけ減少補正されるため、最終制御量Tの低下に応じて実際の前後輪4,14間の駆動力分配も低下する。結果として後輪14から前輪4へのトルク移動量が低下し、図7に白抜き矢印Adrv,Acorneringで示すように後輪14の制動力が低下する一方、前輪4の駆動力が低下する。従って、上記と同様に後輪14の駆動力の低下に伴って横力が増加し、ヨーモーメントの増加に応じてオーバステアが抑制される。
以上のように本実施形態の車両の駆動力分配制御装置では、車両の旋回中において前輪平均車輪速NFaveと後輪平均車輪速NRaveとの大小関係のみならず車両のステア特性も反映して統合的に前後輪4,14間の駆動力分配を制御している。車両のステア特性は車両のヨーモーメントを何れの方向に修正すべきかを表し、前輪平均車輪速NFaveと後輪平均車輪速NRaveとの大小関係は前後輪4,14間のトルク移動方向、ひいては駆動力分配の増減によるヨーモーメントの変化方向を表すため、双方の条件の組み合わせに基づき車両の旋回状態に対して最適な前後輪4,14間の駆動力分配を設定できる。よって、前後輪4,14間の駆動力分配を適切に制御してアンダステアやオーバステアを確実に抑制でき、もって車両の旋回状態に関わらず常に良好なステア特性を実現することができる。
また、本実施形態では、具体的な目標ヨーレイトYTと実ヨーレイトYRに基づいて車両のステア特性を判定した上で、このステア特性に基づいてグリップ限界を越えたスリップ輪が前後輪4,14の何れであるかを特定し、スリップ輪の駆動力FX,RX及び横力FCF,RCFから推定した摩擦円FFR,RFRを前提とし、アンダステアやオーバステアを抑制するための要求ヨーモーメントYAWM、要求ヨーモーメントYAWMを達成可能なスリップ輪の要求横力FCFT,RCFT、要求横力FCFT,RCFTを達成するためのスリップ輪の駆動力低下量FXT,RXTなどの具体的な算出値に基づいてヨーレイト対応制御量Tyを算出している。従って、例えば過去の経験則や実験結果に基づいてヨーレイト対応制御量Tyを設定する場合などに比較して、より現実に即したヨーレイト対応制御量Tyを算出でき、もって、一層適切に前後輪4,14間の駆動力分配を制御することができる。
しかも、駆動力FX,RX及び横力FCF,RCFに基づいてスリップ輪のグリップ力と正確に相関する摩擦円FFR,RFRが推定されるため、例えばタイヤの磨耗状態の相違、天候(晴天や降雪)や路面形態(舗装路やダート)に応じた路面摩擦係数の相違などに影響されることなく適切なヨーレイト対応制御量Tyを算出できる。換言すれば、これらの外乱要因による影響を排除すべくタイヤ磨耗状態や路面摩擦係数をセンサにより検出して補償処理を実行する必要がなくなるという利点もある。
一方、車両のステア特性の判定処理やヨーモーメント算出部34,34'での要求ヨーモーメントYAWMの算出処理には実ヨーレイトYR及び目標ヨーレイトYTが適用されるが、これらのヨーレイトYR,YTは車両の旋回状態を端的に表す指標と見なせる。よって、これらのヨーレイトYR,YTに基づいてステア特性の判定や要求ヨーモーメントYAWMの算出を適確に実行でき、ひいては前後輪4,14間の駆動力分配を一層適切に制御することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明をFR車ベースの電子制御式オンディマンド4輪駆動車の前後輪4,14間の駆動力分配を制御する駆動力分配制御装置に具体化した第2実施形態を説明する。
本実施形態で行われる前後輪4,14間の駆動力分配の制御は、第1実施形態の制御と同様の着想の下に実行されるものであり、第1実施形態のFF車ベースの4輪駆動車に対して前後輪4,14間のトルク移動が逆方向になることを考慮して、図2,5に示す最終制御量算出部40,40'でのヨーレイト対応制御量Tyに基づく補正方向を変更した点が相違する。従って、共通の構成及び処理内容の箇所は重複する説明を省略し、相違点を重点的に説明する。
図8,9はアンダステア発生時における駆動力分配の制御状況を示す模式図であり、図8は前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより高い場合を示し、図9は前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより低い場合を示し、まず、これらの図に従ってアンダステア発生時の駆動力分配の制御状況を説明する。
FR車ベースの電子制御式オンディマンド4輪駆動車ではエンジンからの駆動力が後輪14に伝達され、後輪14の駆動力の一部が前後輪4,14間に設けられた電子制御カップリング8を介して前輪4側に分配され、電子制御カップリング8の電磁クラッチの係合状態に応じて後輪14側から前輪4側に分配される駆動力、即ち、前後輪4,14間の駆動力分配を調整する。
前後輪4,14間の駆動力分配によるトルク移動は車輪速の高い側から低い側へと行われるため、図8に示す前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより高い走行状況(NFave>NRave)では電子制御カップリング8を介して前輪4から後輪14へとトルクが移動している。即ち、後輪14が前輪4側から逆駆動されると共に、トルク移動相当分だけ前輪4が制動力(負の駆動力)を発生すると共に後輪14の駆動力が増加している。このときには最終制御量Tがヨーレイト対応制御量Tyだけ減少補正されるため(T=Tbase−Ty)、最終制御量Tの低下に応じて実際の前後輪4,14間の駆動力分配も低下する。結果として前輪4から後輪14へのトルク移動量が低下し、図8に白抜き矢印Adrv,Acorneringで示すように前輪4の制動力が低下する一方、後輪14の駆動力が低下する。従って、前輪4の駆動力の低下に伴って横力が増加し、ヨーモーメントの増加に応じてアンダステアが抑制される。
また、図9に示す前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより低い走行状況(NFave<NRave)では電子制御カップリング8を介して後輪14から前輪4へとトルクが移動している。即ち、後輪14の駆動力の一部が前輪4に分配されることにより、トルク移動相当分だけ前輪4が駆動力を発生すると共に後輪14の駆動力が低下している。このときには最終制御量Tがヨーレイト対応制御量Tyだけ減少補正されるため(T=Tbase−Ty)、最終制御量Tの低下に応じて実際の前後輪4,14間の駆動力分配も低下する。結果として後輪14から前輪4へのトルク移動量が低下し、図9に白抜き矢印Adrv,Acorneringで示すように後輪14の駆動力が増加する一方、前輪4の駆動力が低下する。従って、前輪4の駆動力の低下に伴って横力が増加し、ヨーモーメントの増加に応じてアンダステアが抑制される。
一方、オーバステア発生時の駆動力分配の制御状況を説明すると、図10,11はオーバステア発生時における駆動力分配の制御状況を示す模式図であり、図10は前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより高い場合を示し、図11は前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより低い場合を示している。
図10に示す前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより高い走行状況(NFave>NRave)では、図8と同じく電子制御カップリング8を介して前輪4から後輪14へとトルクが移動している。即ち、後輪14が前輪4側から逆駆動されると共に、トルク移動相当分だけ前輪4が制動力を発生している。このときには最終制御量Tがヨーレイト対応制御量Tyだけ減少補正されるため(T=Tbase−Ty)、最終制御量Tの低下に応じて実際の前後輪4,14間の駆動力分配も低下する。結果として前輪4から後輪14へのトルク移動量が低下し、図10に白抜き矢印Adrv,Acorneringで示すように前輪4の制動力が低下する一方、後輪14の駆動力が低下する。従って、後輪14の駆動力の低下に伴って横力が増加し、ヨーモーメントの増加に応じてオーバステアが抑制される。
また、図11に示す前輪平均車輪速NFaveが後輪平均車輪速NRaveより低い走行状況(NFave<NRave)では、図9と同じく電子制御カップリング8を介して後輪14から前輪4へとトルクが移動している。即ち、後輪14の駆動力の一部が前輪4に分配されることにより、トルク移動相当分だけ前輪4が駆動力を発生すると共に後輪14の駆動力が低下している。このときには最終制御量Tがヨーレイト対応制御量Tyだけ増加補正されるため(T=Tbase+Ty)、最終制御量Tの増加に応じて実際の前後輪4,14間の駆動力分配も増加する。結果として後輪14から前輪4へのトルク移動量が増加し、図11に白抜き矢印Adrv,Acorneringで示すように後輪14の駆動力が低下する一方、前輪4の駆動力が増加する。従って、後輪14の駆動力の低下に伴って横力が増加し、ヨーモーメントの増加に応じてオーバステアが抑制される。
アンダステア及びオーバステア時の前後輪4,14間の駆動力分配の制御は以上のように実行され、重複する説明はしないが本実施形態の車両の駆動力分配制御装置によれば、FR車ベースの4輪駆動車において第1実施形態で説明したものと全く同様の作用効果を得ることができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、目標旋回状態指標としてヨーレイトYRを適用したが、車両の旋回状態と相関する指標であればこれに限ることはなく、例えばヨーレイトに代えて横加速度センサ26により検出された横加速度GYを適用してもよい。
第1実施形態のFF車ベースの4輪駆動車の駆動力分配制御装置を示す全体構成図である。 アンダステア時にECUにより実行される電子制御カップリングの制御量の設定手順を示すブロック図である。 アンダステアで前輪平均車輪速が後輪平均車輪速より高いときの駆動力分配の制御状況を示す模式図である。 アンダステアで前輪平均車輪速が後輪平均車輪速より低いときの駆動力分配の制御状況を示す模式図である。 オーバステア時にECUにより実行される電子制御カップリングの制御量の設定手順を示すブロック図である。 オーバステアで前輪平均車輪速が後輪平均車輪速より高いときの駆動力分配の制御状況を示す模式図である。 オーバステアで前輪平均車輪速が後輪平均車輪速より低いときの駆動力分配の制御状況を示す模式図である。 第2実施形態におけるアンダステアで前輪平均車輪速が後輪平均車輪速より高いときの駆動力分配の制御状況を示す模式図である。 アンダステアで前輪平均車輪速が後輪平均車輪速より低いときの駆動力分配の制御状況を示す模式図である。 オーバステアで前輪平均車輪速が後輪平均車輪速より高いときの駆動力分配の制御状況を示す模式図である。 オーバステアで前輪平均車輪速が後輪平均車輪速より低いときの駆動力分配の制御状況を示す模式図である。
符号の説明
4 前輪
8 電子制御カップリング(駆動力分配手段)
14 後輪
21 4WD用ECU(制御量算出手段、ステア特性判定手段、駆動力分配制御手段、
目標旋回状態指標決定手段、グリップ限界指標推定手段、要求横力算出手段、
駆動力低下量算出手段)
24 ヨーレイトセンサ(実旋回状態指標検出手段)
25 車輪速センサ(車輪速検出手段)

Claims (3)

  1. 車両の前後輪間に設けられ、駆動源から上記前輪に伝達された駆動力の一部を上記後輪側に可変分配可能な駆動力分配手段と、
    上記車両の旋回状態に基づいて上記後輪側に分配させるべき駆動力分配に対する補正量として旋回対応制御量を算出する制御量算出手段と、
    上記車両の現在のステア特性を判定するステア特性判定手段と、
    上記前後輪の車輪速をそれぞれ検出する車輪速検出手段と、
    上記車輪速検出手段による検出結果に基づき上記前輪の車輪速が後輪の車輪速より高いと判定した場合、上記ステア特性判定手段により判定されたステア特性がアンダステアのときには上記前後輪間の駆動力分配を上記旋回対応制御量に基づき増加補正する一方、該ステア特性がオーバステアのときには上記前後輪間の駆動力分配を上記旋回対応制御量に基づき減少補正し、上記前輪の車輪速が後輪の車輪速より低いと判定した場合、上記ステア特性判定手段により判定されたステア特性に関わらず上記前後輪間の駆動力分配を上記旋回対応制御量に基づき減少補正し、該補正後の駆動力分配に基づいて上記駆動力分配手段を制御する駆動力分配制御手段と
    を備えたことを特徴とする車両の駆動力分配制御装置。
  2. 車両の前後輪間に設けられ、駆動源から上記後輪に伝達された駆動力の一部を上記前輪側に可変分配可能な駆動力分配手段と、
    上記車両の旋回状態に基づいて上記前輪側に分配させるべき駆動力分配に対する補正量として旋回対応制御量を算出する制御量算出手段と、
    上記車両の現在のステア特性を判定するステア特性判定手段と、
    上記前後輪の車輪速をそれぞれ検出する車輪速検出手段と、
    上記車輪速検出手段による検出結果に基づき上記後輪の車輪速が前輪の車輪速より高いと判定した場合、上記ステア特性判定手段により判定されたステア特性がアンダステアのときには上記前後輪間の駆動力分配を上記旋回対応制御量に基づき減少補正する一方、該ステア特性がオーバステアのときには上記前後輪間の駆動力分配を上記旋回対応制御量に基づき増加補正し、上記後輪の車輪速が前輪の車輪速より低いと判定した場合、上記ステア特性判定手段により判定されたステア特性に関わらず上記前後輪間の駆動力分配を上記旋回対応制御量に基づき減少補正し、該補正後の駆動力分配に基づいて上記駆動力分配手段を制御する駆動力分配制御手段と
    を備えたことを特徴とする車両の駆動力分配制御装置。
  3. 上記ステア特性判定手段は、
    上記車両の走行状態に基づいて目標旋回状態指標を決定する目標旋回状態指標決定手段と、
    上記車両の実際の旋回状態指標を検出する実旋回状態指標検出手段とを備え、
    上記目標旋回状態指標と上記実旋回状態指標とに基づき現在の車両のステア特性を判定すると共に、
    上記制御量算出手段は、
    上記ステア特性判定手段によりステア特性として判定されたアンダステア及びオーバステアに基づき上記前後輪のスリップ輪を特定し、該スリップ輪の駆動力及び横力からグリップ限界と相関するグリップ限界指標を推定するグリップ限界指標推定手段と、
    上記車両の旋回状態に基づいて上記アンダステアまたはオーバステアを抑制するための要求ヨーモーメントを算出し、該要求ヨーモーメントを達成可能な上記スリップ輪の要求横力を算出する要求横力算出手段と、
    上記グリップ限界指標算出手段により算出されたグリップ限界指標を前提として、上記要求横力算出手段により算出された要求横力を達成するために必要なスリップ輪の駆動力低下量を算出する駆動力低下量算出手段とを備え、
    記駆動力低下量算出手段により算出されたスリップ輪の駆動力低下量に応じて上記旋回対応制御量を算出することを特徴とする請求項1または2記載の車両の駆動力分配制御装置。
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