JP5626438B2 - 連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
このため、二次冷却帯での注水量の調整では、冷却不足に起因する内部割れと過冷却に起因する表面割れの両立が困難であった。なお、鋳片の表面温度を均一化する方法としては、上記した注水量の調整以外に、鋳型直下で鋳片表面からパウダー(モールドパウダー又はモールドフラックスともいう)を剥離させることが、既に知られている。
また、特許文献2には、鋳型の出側における凝固シェルの表面温度と、鋳型内の溶鋼に投入されるモールドフラックスの凝固温度と、モールドフラックスの化学成分の含有量とを用いて算出されるβ値が、1.5以下又は2.5以上を満足するように鋳造速度を調整して連続鋳造を行う方法が記載されている。
特許文献1の方法では、高圧スプレーノズルによる10N/cm2以上の注水を行うと、特にSi含有量の高い電磁鋼(例えば、無方向性電磁鋼)などでは、過冷却による鋳片の表面割れが発生する可能性が高く、適用が難しい。
また、特許文献2の方法を用いる場合、鋳型直下ではスプレー水の流量が非常に多いため、鋳型下端で鋳片の表面温度を連続的に測定することが困難である。なお、鋳片の表面温度を鋳造速度で調整すると、Si含有量の高い電磁鋼の場合、凝固シェルのバルジングに伴う内部割れが発生し、製品の表面欠陥の原因となる。
更に、特許文献1、2の方法は、基本的にパウダーが付着することで冷却が阻害されるという考え方に基づいて、パウダーの剥離により高速鋳造(Vc≧2.0m/分)領域での冷却能力の向上を図るものであるため、鋳片の幅方向の不均一冷却による鋳片の表面割れの解決は困難であった。
前記パウダーを加熱溶融させた後、温度を降下させる過程で結晶が晶出し始める温度である凝固温度を1050℃以上1200℃以下とし、溶融した前記パウダーを急冷固化させると生成するガラスを焼鈍した際に結晶が析出し始める温度である結晶化温度を500℃以上600℃以下とする。
また、パウダーの凝固温度を1050℃以上1200℃以下とし、結晶化温度を500℃以上600℃以下とするので、鋳型と凝固シェルとの間に形成されるスラグフィルムを構成する液相、結晶相、及びガラス相の各厚みを調整できる。これにより、鋳型と凝固シェルとの間からのスラグフィルムの脱落を防止できるので、鋳型と凝固シェルとの焼き付きを抑制できる。
従って、Siを1.0質量%以上含有する溶鋼(例えば、無方向性電磁鋼等の電磁鋼)を連続鋳造するに際し、連続鋳造時の焼き付きによるブレークアウトを防止しつつ、表面割れを抑制でき、高品質の鋳片を安定して製造することができる。
本発明の一実施の形態に係る連続鋳造方法は、Siを1.0質量%以上含有する溶鋼を鋳型に供給し、鋳型内に供給するパウダーの消費量を0.2kg/m2以上0.6kg/m2以下にする方法であって、パウダーの凝固温度を1050℃以上1200℃以下とし、結晶化温度を500℃以上600℃以下とする方法である。
以下、本発明に想到した経緯について説明する。
そこで、本発明者らは、二次冷却帯での冷却に与える因子として、鋳片表面からのパウダー(モールドパウダー)の剥離性に着目し、鋳片の均一冷却化を図るために必要なパウダー物性の検討を行った。
このパウダーは、鋳片表面に付着した状態で二次冷却帯で冷却されると、鋳片の冷却能力が低下するという報告が多数なされている。これは、鋳片と比べて熱伝導が低いパウダーが熱抵抗になり、鋳片自体の抜熱を阻害することを根拠としていることによる。
まず、ラボ試験では、熱電対を埋め込んだ鋼材を1200℃以上に加熱した後、これを冷却用ノズルで冷却し、パウダー付着の有無による鋼材の冷却速度の影響を調査した。続いて、このラボ試験の結果と伝熱解析モデルを用いて、パウダー付着の有無が鋳片の冷却能へ及ぼす影響を調査した。なお、使用した伝熱解析モデルは、例えば、鉄と鋼、第60巻(1974年)、1023頁に示される一般的な手法を用いた。
・連続鋳造機の鋳型直下から鋳造方向に1.2mまでのロールのピッチ:200mm
・鋳型直下から曲げ戻し部までの距離:16m
・鋳造条件:鋳造速度1.3m/分、鋳造幅(鋳片の幅)1300mm、鋳造厚み(鋳片の厚み)250mm
・冷却条件:鋳型直下から、鋳造方向に2.0mまでの範囲で、冷却用ノズルから鋳片に吹き付けられる冷却水の水量密度を、鋳片の表面積1m2あたり、450リットル/分(以下、L/m2/分ともいう)で一定。
図1の横軸は、鋳型直下から鋳造方向の距離(m)を示している。なお、図1においては、鋳型直下(横軸の値が0.0m:鋳片の表面温度が600℃付近)から、鋳造方向の距離が2.0m(鋳片表面温度900℃付近)までの範囲を図示している。
また、図1の縦軸は、パウダーの付着ありを前提とした鋳片を冷却した際に、鋳造方向の距離が1.2m相当位置の鋳片の熱伝達係数を1として、パウダーの付着なし(図1中の実線)と付着あり(図1中の点線)の場合の鋳片の各熱伝達係数を、それぞれ指数化(冷却能指数)した値を図示している。
・パウダー付着の有無によらず、鋳造の進行(横軸の増加)と共に、冷却能が低下した。
・パウダー付着の有無による冷却能の大小関係は存在するが、横軸の位置(鋳片の表面温度が異なる位置)によって、大小関係が異なる場合があった。
・鋳型直下付近(例えば、0.2m位置)では、パウダー付着なしは、パウダー付着ありと比べて、冷却能指数が約30%大きくなった。
・鋳型直下から鋳造方向に1.2mの位置を超える(例えば、1.4m位置)と、パウダー付着なしは、パウダー付着ありと比べて、冷却能指数が20%を超えて小さくなった。
実機の鋳造試験では、パウダーの消費量が0.2kg/m2未満となると、鋳片の幅方向の温度偏差が大きくなり、鋳片の表面割れが発生した。これは、パウダーの消費量が少なくなると、鋳型直下で鋳片表面に付着するパウダーの厚みが薄くなり、スプレー水の圧力により、鋳片表面から剥離し易くなるためと推定した。また、同じスプレー水量密度でも、パウダーの消費量が0.6kg/m2を超える場合、鋳片の幅方向の温度偏差の抑制効果が飽和してしまうため、それ以上パウダーの消費量を増やす必要性は低い。
このパウダーの消費量の調整は、主にパウダー中のCaO、SiO2、F、Na2Oの量を変化させ、粘度をコントロールすることで実現した。この粘度は、後述する凝固温度や結晶化温度を固定したまま、任意の値に調整することが可能である。
{パウダーの消費量(kg/m2)}
={鋳造時間中にメニスカスへ投入したパウダーの量(kg)}
/{鋳造速度(m/分)×{鋳片の幅(m)+鋳片の厚み(m)}×2×鋳造時間(分)}
ここで、鋳造時間とは、例えば、150〜350トン程度の1チャージの溶鋼を鋳造する時間や、複数チャージの溶鋼を鋳造する時間を意味する。
そこで、鋳型と凝固シェルとの間の焼き付き抑制を目的として、パウダー物性の調整を行った。本実施の形態では、パウダーを評価する指標として、凝固温度と結晶化温度を用いた。この凝固温度とは、パウダーを加熱溶融させた後、温度を降下させる過程で、結晶が晶出し始める温度であり、結晶化温度とは、溶融スラグを急冷固化させると生成するガラスを焼鈍した際に、結晶が析出し始める温度である。
図2に示すように、一般的に、スラグフィルムは、鋳型側からガラス相、結晶相、及び液相(溶融状態)の順に、3相に分かれて形成されている。ここで、凝固温度(B.P)は、スラグフィルムを構成する液相と結晶相の境界を、また結晶化温度(Tc)は、スラグフィルムを構成する結晶相とガラス相の境界を、それぞれ表している。
まず、はじめに、パウダーの結晶化温度(Tc)を、パウダー中のNa2OとFの量を主として増減させることで調整した。この結晶化温度は、凝固温度に比べ、成分変更により制御できる範囲が小さい。また、図2から明らかなように、凝固温度を一定とした場合、結晶化温度を低下させるとガラス相が減少し、結晶相の厚みが増大する。
一方、結晶化温度が600℃を超えると、結晶相の厚みが薄くなると共にガラス相の厚みが厚くなり、鋳型直下でのパウダーの破砕性が低下するため、鋳片表面からの剥離性が悪化し、鋳片に過冷却が発生した。
以上のことから、結晶化温度を500℃以上600℃以下の範囲に規定して、凝固温度を調整した。
また、逆に、凝固温度が1050℃を下回ると、湯面変動が顕著になる上、鋳片の表面割れが多発した。これは、凝固温度が低くなると、液相が厚くなると共に結晶相が薄くなるため、凝固シェルと鋳型との間の輻射伝熱が増大し、鋳型内の冷却能が向上して、初期凝固が不安定化し、凝固シェルの成長が不均一になることによる。
上記した湯面変動、ブレークアウト、鋳片の表面割れなどの操業トラブルに対しては、鋳造速度を0.6m/分未満まで落とすことで、ある程度抑制することは可能であるが、生産性を阻害する要因となるため問題である。
以上のことから、実際の連続鋳造機を用いて実施した試験の結果から、凝固温度を1050℃以上1200℃以下(好ましくは、下限を1080℃、更には1100℃、上限を1170℃、更には1150℃)、結晶化温度を500℃以上600℃以下(好ましくは、下限を520℃、上限を580℃)とすることで、鋳造を安定化できることが判った。
しかし、前記した物性のパウダーを使用することで、矯正点(湾曲部から水平部への矯正を行う位置)での鋳片の表面温度が600〜900℃になり、鋳片表面割れ防止と内部割れ防止の両立が可能になる。これは、鋳片の表面温度が600℃を下回ると、鋳片に表面割れが発生し、一方、900℃を超えると、鋳片の内部割れが、製品に影響を及ぼすレベルまで悪化することによる。
ここでは、Siを3.0質量%以上含有する電磁鋼を連続鋳造機でテスト鋳造するに際し、凝固温度と結晶化温度を種々変更したパウダーを鋳型内に供給して、その評価を行った。
なお、使用した連続鋳造機は、鋳型の下流側に、鋳造方向に渡って多数の分割ロールが配置された垂直曲げ型のスラブ連続鋳造機である。この鋳型内には、各種パウダーを、その消費量が0.2kg/m2以上0.6kg/m2以下の範囲内になるように供給し、スラブの鋳造速度を0.8〜1.5m/分に調整した。鋳造したスラブの断面サイズは、厚み:252mm、幅:1000〜1500mm、である。
このテスト鋳造に使用したパウダーの種類と鋳造結果を、表1と図3に示す。
そして、表1に示した判定は、連続鋳造を0.6m/分以上の鋳造速度で継続して実施できた場合を「○」印で、一方、0.6m/分未満の鋳造速度に低下させる必要があった場合を「×」印で、それぞれ示している。
また、比較例1、2、4、5では、鋳片の表面割れの発生は抑制できたが、鋳型内での焼き付きが発生し、ブレークアウトの前駆現象(溶鋼の鋳片表面への染み出し)の発生が見られる場合もあった。なお、比較例3では、鋳型内での焼き付きの発生はなかったが、湯面変動が大きく操業性が悪かった。
このため、従来例と比較例1〜5では、鋳造速度を0.6m/分未満に低下させる必要があった。
なお、スラブの幅を1000〜1500mmの範囲でテスト鋳造したが、鋳造速度を変更することなく連続鋳造を実施できた。特に、焼き付きや湯面変動が起こり易い、1200〜1500mmの幅が広いスラブを鋳造した場合の改善効果は著しかった。
以上のことから、本発明の連続鋳造方法を使用することで、焼き付き、湯面変動、過冷却などの操業トラブルを回避し、鋳片の生産性の向上が図れることを確認できた。
Claims (1)
- Siを1.0質量%以上含有する溶鋼を鋳型に供給し、該鋳型内に供給するパウダーの消費量を0.2kg/m2以上0.6kg/m2以下にして、幅が1200〜1500mmのスラブを鋳造する連続鋳造方法において、
前記パウダーを加熱溶融させた後、温度を降下させる過程で結晶が晶出し始める温度である凝固温度を1050℃以上1200℃以下とし、溶融した前記パウダーを急冷固化させると生成するガラスを焼鈍した際に結晶が析出し始める温度である結晶化温度を500℃以上600℃以下とすることを特徴とする連続鋳造方法。
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