JP5610052B2 - リチウム電池用非水電解液及びそれを用いたリチウム電池 - Google Patents
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Description
また、電気自動車においては、リチウム二次電池の電力密度が低いとそれだけ電池の本数を増加して電力を稼ぐ必要があることから、搭載するリチウム二次電池の容量、サイクル特性の向上や、更には、過酷な環境下での電池性能の維持も求められている。
これらの要求に応えるため、リチウム二次電池は、更なる高容量化、高電圧化が図られてきているが、そうすると電池内の電気化学的な反応性が高まり、充放電サイクル時や高温保存時に、正極や負極の界面において非水電解液の分解が進行することでガスが発生する。このガスの発生により、リチウムイオンの移動が阻害されサイクル特性が悪化したり、保存時に電池が膨れる等の問題があった。
さらに、近年、電気自動車用又はハイブリッド電気自動車用の新しい電源として、出力密度の点から、活性炭等を電極に用いる電気二重層キャパシタ、エネルギー密度と出力密度の両立の観点から、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの蓄電原理を組み合わせた、ハイブリッドキャパシタ(リチウムの吸蔵・放出による容量と電気二重層容量の両方を活用する非対称型キャパシタ)と呼ばれる蓄電装置の開発が行われ、高温でのサイクル特性や高温保存特性等の電池性能の向上が求められている。
また、特許文献2には、飽和鎖状カルボン酸エステルとして酢酸メチル、不飽和カルボン酸エステルとしてアクリル酸ビニルを組み合わせて添加した非水電解液を用いたリチウム二次電池が開示されており、アクリル酸ビニルを添加しない場合に比べて、アクリル酸ビニルを添加するとサイクル特性に優れることが示されている。
さらに特許文献3には、スピネル型マンガン酸リチウムを正極活物質とし、メタクリル酸ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸エチル等の化合物を添加した非水電解液を用いたリチウム二次電池が開示されており、該化合物を添加しない場合に比べて、該化合物を添加するとサイクル特性や保存特性に優れることが示されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載された化合物を添加しても、サイクル特性や保存特性は十分満足できるものではなかった。
すなわち、本発明は、下記の(1)及び(2)を提供するものである。
(1)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、該非水電解液中に下記一般式(I)で表されるカルボン酸エステル化合物が非水電解液に対して0.01〜10質量%含有されていることを特徴とするリチウム電池用非水電解液。
本願発明の非水電解液中に含有されるカルボン酸エステル化合物は、下記一般式(I)で表される。
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、R1及びR2は、水素原子、メチル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
一般式(I)におけるR3は、水素原子、メチル基、又は−CH2CO2CR1R2C≡CH基(R1及びR2は前記と同じである)を示す。
アクリル酸アルキニルエステルの具体例としては、アクリル酸2−プロピニル(アクリル酸プロパルギルと同義)、アクリル酸1−メチル−2−プロピニル、アクリル酸1,1−ジメチル−2−プロピニル等が挙げられ、メタクリル酸アルキニルエステルの具体例としては、メタクリル酸2−プロピニル(メタクリル酸プロパルギルと同義)、メタクリル酸1−メチル−2−プロピニル、メタクリル酸1,1−ジメチル−2−プロピニル等が挙げられる。
また、イタコン酸ジアルキニルエステルの具体例としては、イタコン酸ジ(2−プロピニル)、イタコン酸ジ(1−メチル−2−プロピニル)、イタコン酸ジ(1,1−ジメチル−2−プロピニル)等が挙げられる。
これらの中でも、サイクル特性や保存特性の観点から、アクリル酸2−プロピニル、メタクリル酸2−プロピニル、イタコン酸ジ(2−プロピニル)から選ばれる1種以上が好ましい。
一般式(I)で表されるカルボン酸エステル化合物の中でも、エステル部分の一箇所だけに三重結合を有する場合よりも、二箇所に三重結合を有する場合の方がサイクル特性や保存特性をより向上させる効果を発揮することができるため、イタコン酸ジ(2−プロピニル)が特に好ましい。一方、アクリル酸ビニルは、エステル部分と、エステルが結合した炭素鎖上のそれぞれに二重結合を有する化合物であるが、重合を伴った還元分解をするため、負極に粗い被膜しか形成しないため、サイクル特性を向上させる効果がなく、い。また、アクリル酸ビニル自体の酸化電位が低いため、正極において該化合物自体の分解が進行し易くなり保存特性を向上させる効果も得られない。
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、前記一般式(I)で表されるカルボン酸エステル化合物を、該非水電解液の質量に対して0.01〜10質量%添加されていることを特徴とする。
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類、アミド類、リン酸エステル類、スルホン類、ラクトン類、ニトリル類、S=O結合含有化合物等が挙げられる。
環状カーボネート類としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、4−フルオロ−1、3−ジオキソラン−2
−オン(FEC)、トランス又はシス−4,5−ジフルオロ−1、3−ジオキソラン−2−オン(2つを総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等が挙げられる。これらの中でも、二重結合又はフッ素を含有する環状カーボネートを少なくとも1種を使用するとサイクル特性や保存特性が一段と向上するので好ましく、二重結合を含む環状カーボネートとフッ素を含有する環状カーボネートを両方含むことが特に好ましい。二重結合を含有する環状カーボネートとしては、VC、VEC、フッ素を含有する環状カーボネートとしては、FEC、DFECが好ましい。
これらの溶媒は1種類で使用してもよいが、2〜4種類を組み合わせて使用すると、サイクル特性や保存特性が向上するので好ましい。これらの環状カーボネートの好適な組合せとしては、ECとVC、PCとVC、FECとVC、FECとEC、FECとPC、ECとPCとVC、ECとFECとVC、FECとPCとVC、FECとECとPCとVC等が挙げられる。
環状カーボネートの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総容量に対して、10容量%〜40容量%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が10容量%未満であると非水電解液の電気伝導度が低下し、サイクル特性が低下する傾向があり、40容量%を超えると非水電解液の分解が進み、ガスが発生し、保存特性が低下する傾向があるので上記範囲であることが好ましい。
鎖状カーボネートの含有量は特に制限されないが、非水溶媒の総容量に対して、60〜90容量%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60容量%未満であると非水電解液の粘度が上昇し、サイクル特性が低下する傾向があり、90容量%を超えると非水電解液の電気伝導度が低下し、サイクル特性が低下する傾向があるので上記範囲であることが好ましい。
アミド類としては、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、リン酸エステル類としては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル等が挙げられ、スルホン類としては、スルホラン等が挙げられ、ラクトン類としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等が挙げられ、ニトリル類としてはアセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル等が挙げられる。
鎖状エステル類、エーテル類、アミド類、又はリン酸エステル類を添加すると、非水電解液の粘度を低くできるため、特に出力密度等の電池特性を向上することができ、スルホン類、ラクトン類を添加すると、非水電解液を難燃化する効果があり、ニトリル類を添加すると、保存特性が向上する傾向がある。
S=O結合含有化合物は、一般式(I)で表されるカルボン酸エステル化合物と併用すると、一段と保存特性が向上するので好ましい。
S=O結合化合物の含有量は、10質量%を超えるとサイクル特性が低下する場合があり、また、0.01質量%に満たないと保存特性を改善する効果が十分に得られない場合がある。したがって、該S=O結合含有化合物の含有量の下限は、非水電解液の質量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、その上限は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
これらの中でも、少なくとも環状カーボネート類と鎖状カーボネート類を組合せた非水溶媒を用いると、サイクル特性が向上するので好ましい。このときの環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の割合は、環状カーボネート類:鎖状カーボネート類(容量比)が10:90〜40:60が好ましく、15:85〜35:65がより好ましく、20:80〜30:70が特に好ましい。
本発明に使用される電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4等のリチウム塩、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(iso−C3F7)3、LiPF5(iso−C3F7)等の鎖状のアルキル基を含有するリチウム塩や、(CF2)2(SO2)2NLi、(CF2)3(SO2)2NLi等の環状のアルキレン鎖を含有するリチウム塩、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい電解質塩は、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2であり、最も好ましい電解質塩はLiPF6、LiBF4及びLiN(SO2CF3)2である。これらの電解質塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
LiPF6:LiBF4またはLiN(SO2CF3)2またはLiN(SO2C2F5)2 (モル比)が70:30よりもLiPF6の割合が低い場合、及び99:1よりもLiPF6の割合が高い場合にはサイクル特性や保存特性が低下する場合がある。したがって、LiPF6:LiBF4又はLiN(SO2CF3)2又はLiN(SO2C2F5)2(モル比)は、70:30〜99:1の範囲が好ましく、80:20〜98:2の範囲がより好ましい。上記組合せで使用することにより、サイクル特性や保存特性が向上する。
これら全電解質塩が溶解されて使用される濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましく、0.7M以上が更に好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.5M以下が更に好ましい。
本発明の非水電解液には、芳香族化合物を含有させることにより、過充電時の電池の安全性を確保することができる。かかる芳香族化合物の好適例としては、シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ−tert−ブチルベンゼン、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、2,4−ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)等が挙げられる。これらの芳香族化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液の質量に対して前記一般式(I)で表されるカルボン酸エステル化合物を0.01〜10質量%溶解することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒、及び非水電解液に加えるカルボン酸エステル化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
本発明の非水電解液は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池用電解液として好適に使用することができる。更に、本発明の非水電解液は、電気二重層キャパシタ用電解液やハイブリッドキャパシタ用電解液としても使用できる。これらの中でも、本発明の非水電解液は、リチウム二次電池用として用いることが最も適している。
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池を総称するものであって、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなり、該非水電解液中に前記一般式(I)で表されるカルボン酸エステル化合物が非水電解液に対して0.01〜10質量%含有されていることを特徴とする。
本発明のリチウム電池においては、非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、ニッケルを含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1-xNixO2(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn3/2O4、LiCo0.98Mg0.02O2等が挙げられる。また、LiCoO2とLiMn2O4、LiCoO2とLiNiO2、LiMn2O4とLiNiO2のように併用してもよい。
これらの中では、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2のような満充電状態における正極の充電電位がLi基準で4.3V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物が好ましく、LiCo1-xMxO2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cuから表される少なくとも1種類以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn3/2O4のような4.4V以上で使用可能なリチウム複合酸化物がより好ましい。高充電電圧のリチウム遷移金属複合酸化物を使用すると、充電時における非水電解液との反応によりガス発生が生じやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではガス発生を抑制することができる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及びZr等から選ばれる1種以上の元素で置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePO4又はLiMnPO4が好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
また、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いた場合、正極合剤層の密度は1.0g/cm3以上が好ましく、1.2g/cm3以上がより好ましく、1.4g/cm3以上が最も好ましい。またその上限は、4.0g/cm3を超えると実質上作製が困難となる場合があるため、4.0g/cm3以下が好ましい。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。また、高結晶性の炭素材料は低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、ガス発生が抑制されるので好ましい。高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応してガスを発生しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではその反応を抑制することができる。
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極合剤層の密度は、1.2g/cm3以上が好ましく、1.4g/cm3以上がより好ましく、1.6g/cm3以上が最も好ましい。その上限は、2.0g/cm3を超えると実質上作製が困難となる場合があるため、2.0g/cm3以下が好ましい。
リチウム二次電池の構造には特に限定はなく、単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート式電池等を適用できる。
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも長期間にわたり優れたサイクル特性を有しており、さらに、4.4Vにおいてもサイクル特性は良好である。放電終止電圧は、2.5V以上、さらに2.8V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜15Cの定電流放電で使用される。また、本発明におけるリチウム二次電池は、−40〜100℃、好ましくは0〜80℃で充放電することができる。
実施例1〜4
(1)非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジメチルカーボネート(DMC)(容量比)=(30:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を1Mになるように溶解して非水電解液を作製し、さらにイタコン酸ジ(2−プロピニル)を非水電解液に対して0.05質量%(実施例1)、1質量%(実施例2)、3質量%(実施例3)、7質量%(実施例4)を加えて非水電解液を調製した。
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3O2(正極活物質)を94質量%、アセチレンブラック(導電剤)を3質量%、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。このときの正極合剤層の密度は、3.5g/cm3であった。
また、人造黒鉛(d002=0.335nm)(負極活物質)を95質量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製した。このときの負極合剤層の密度は、1.6g/cm3であった。
そして、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シート及びセパレータの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。さらに、非水電解液を注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて、18650型円筒電池を作製した。なお、正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
上記の方法で作製した電池を用いて、60℃の恒温槽中、1mA/cm2の定電流で4.3Vまで充電した後、4.3Vの定電圧で2.5時間充電し、1mA/cm2の定電流で、放電電圧3.0Vまで放電することを1サイクルとし、これを100サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式により、60℃における100サイクル後の放電容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。
放電容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
上記の方法で作製した電池を用いて、1mA/cm2の定電流で4.3Vまで充電した後、4.3Vの定電圧で2.5時間充電し、60℃の恒温槽に入れ、開回路の状態で20日間保存を行った後、ガス発生量をアルキメデス法により測定した。ガス発生量は、比較例1のガス発生量を100%としたときを基準にし、相対的なガス発生量を調べた。結果を表1に示す。
実施例2で用いたイタコン酸ジ(2−プロピニル)の代わりに、アクリル酸2−プロピニル(実施例5)、メタクリル酸2−プロピニル(実施例6)を非水電解液に対して1質量%加えて非水電解液を調製した。調整した非水電解液を用いて、実施例1と同様に18650型円筒電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を測定した。結果を表1に示す。
フルオロエチレンカーボネート(FEC):エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジメチルカーボネート(DMC)(容量比)=(20:3:5:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を1M、LiN(SO2CF3)2を0.05Mになるように溶解して非水電解液を作製し、さらにイタコン酸ジ(2−プロピニル)を非水電解液に対して1質量%、1,3−プロパンスルトン0.5質量加えて非水電解液を調製した。調整した非水電解液を用いて、実施例1と同様に18650型円筒電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を測定した。結果を表1に示す。
エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジメチルカーボネート(DMC)(容量比)=(30:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を1Mになるように溶解して非水電解液を調製し、イタコン酸ジ(2−プロピニル)を非水電解液に加えなかった他は実施例1と同様に円筒電池を作製し、電池評価を行った。結果を表1に示す。
エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジメチルカーボネート(DMC)(容量比)=(30:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPF6を1Mになるように溶解して非水電解液を作製し、さらに実施例1におけるイタコン酸ジ(2−プロピニル)を添加する代わりに、メタクリル酸ビニル(比較例2)、イタコン酸ジメチル(比較例3)を1質量%加えて非水電解液を調製した。調整した非水電解液を用いて、実施例1と同様に18650型円筒電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を測定した。結果を表1に示す。
実施例2で用いた正極活物質に変えて、LiFePO4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。LiFePO4;90質量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製したこと、充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとしたことの他は、実施例2と同様に円筒電池を作製し、電池評価を行った。結果を表2に示す。なお、このときの正極合剤層の密度は、1.5g/cm3であった。
非水電解液にイタコン酸ジ(2−プロピニル)を非水電解液に加えなかった他は実施例8と同様に円筒電池を作製し、電池評価を行った。結果を表2に示す。
実施例2で用いた負極活物質に変えて、Si(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。Si;80質量%、アセチレンブラック(導電剤);15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製したことの他は、実施例2と同様に円筒電池を作製し、電池評価を行った。結果を表3に示す。なお、このときの負極合剤層の密度は、1.6g/cm3であった。
非水電解液にイタコン酸ジ(2−プロピニル)を非水電解液に加えなかった他は実施例9と同様に円筒電池を作製し、電池評価を行った。結果を表3に示す。
Claims (12)
- 一般式(I)で表されるカルボン酸エステル化合物が、イタコン酸ジ(2−プロピニル)、イタコン酸ジ(1−メチル−2−プロピニル)、及びイタコン酸ジ(1,1−ジメチル−2−プロピニル)から選ばれる1種以上である請求項1に記載のリチウム電池用電解液。
- 非水溶媒が2種以上の鎖状カーボネートを含む請求項1に記載のリチウム電池用非水電解液。
- 鎖状カーボネートが非対称鎖状カーボネートを含む請求項3に記載のリチウム電池用非水電解液。
- 非対称鎖状カーボネートがメチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネートから選ばれる1種以上である請求項4に記載のリチウム電池用非水電解液。
- 非水溶媒が2種〜4種の環状カーボネートを含む請求項1〜5のいずれかに記載のリチウム電池用非水電解液。
- 環状カーボネートがエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス又はシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートから選ばれる1種以上である請求項6に記載のリチウム電池用非水電解液。
- 環状カーボネートが二重結合を含む環状カーボネートとフッ素を含有する環状カーボネートの両方を含む請求項7に記載のリチウム電池用非水電解液。
- 電解質塩が、LiPF6を含み、かつLiBF4、LiN(SO2CF3)2及びLiN(SO2C2F5)2から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜8のいずれかに記載のリチウム電池用非水電解液。
- LiPF6:LiBF4又はLiN(SO2CF3)2又はLiN(SO2C2F5)2のモル比が、70:30〜99:1である請求項9に記載のリチウム電池用非水電解液。
- 非水電解液が、更に1、3−プロパンスルトン、エチレンサルファイト、1,2−シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイト、5−ビニル−ヘキサヒドロ1,3,2−ベンゾジオキサチオール−2−オキシド、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,3−ブタンジオールジメタンスルホネート、ジビニルスルホン、1,2−ビス(ビニルスルホニル)エタン、及びビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテルから選ばれる1種以上のS=O結合含有化合物を0.01〜10質量%含む請求項1〜10のいずれかに記載のリチウム電池用非水電解液。
- 正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池において、該非水電解液中に請求項1に記載の一般式(I)で表されるカルボン酸エステル化合物が非水電解液に対して0.01〜10質量%含有されていることを特徴とするリチウム電池。
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