図1及び図2に示すように、車体側部構造10は、側部構造10の上方で車体の前後方向に向けて延びたサイドレール11と、サイドレール11に左端部(端部)12aが接合されたルーフアーチ12と、サイドレール11に接合されたセンタピラー13と、センタピラー13およびサイドレール11を車体外側から覆うアウタパネル14と、ルーフアーチ12の上方に設けられたルーフパネル15と、側部構造10に形成された前後のドア開口部17,18に沿って設けられた前後のトリム部材21,22とを備えている。
図3及び図4に示すように、サイドレール11は、側部構造10の上方で前後方向に延出されて前ドア開口部17の上辺17aと、後ドア開口部18の上辺18aとを形成するレールである。このサイドレール11は、レールフロント25およびレールリヤ26に分割されている。レールフロント25は車体前方側に設けられ、レールリヤ26は車体後方側に設けられている。
レールリヤ26の前端部26aにレールフロント25の後端部25aが車室28側から重ね合わされている。重ね合わされた接合部31はスポット溶接で一体に接合されている。レールリヤ26およびレールフロント25が接合されることでサイドレール11が形成される。
図5に示すように、レールフロント25は、車体前後方向に延出された前レール本体33と、前レール本体33の下端部33aから下方に向けて張り出された前レールフランジ34とを有する。このレールフロント25は、板厚寸法W1(図4)の板材で、側面視略真直ぐな形状に形成されている。
前レール本体33は、前レールフランジ34に対して車室28側に膨出している。前レールフランジ34は、前レール本体33の下端部33aに沿って車体前後方向に延び、前ドア開口部17(具体的には、上辺17a)の一部を形成する張出片である。
レールリヤ26は、レールフロント25の車体後方側に設けられ、車体前後方向に延びた後レール本体36と、後レール本体36の下端部36aから下方に向けて張り出された後レールフランジ37とを有する。このレールリヤ26は、板厚寸法W2(図4)の板材で、側面視略真直ぐな形状に形成されている。
後レール本体36は、後レールフランジ37に対して車室28側に膨出している。後レールフランジ37は、後レール本体36の下端部36aに沿って車体前後方向に延び、後ドア開口部18(具体的には、上辺18a)の一部を形成する張出片である。
図3及び図4に示すように、レールフロント25の板厚寸法W1およびレールリヤ26の板厚寸法W2は、W1>W2の関係を有する。このように、サイドレール11をレールフロント25およびレールリヤ26に分割することで、レールフロント25の板厚寸法W1を大きく確保して、レールリヤ26の板厚寸法W2を小さく抑えることができる。
レールフロント25の板厚寸法W1を大きく確保することで、レールフロント25の剛性を高めることができ、車体前方に入力する衝突荷重を好適に支えることができる。さらに、レールリヤ26の板厚寸法W2を小さく抑えることで、レールリヤ26の重量を軽減することができ、車体の軽量化を図ることができる。
ルーフアーチ12は、左右側のサイドレール11(右のサイドレール11は図示せず)間に車幅方向に向けて延びている。ルーフアーチ12は、左側のサイドレール11の接合部31に左端部12aがスポット溶接で接合されるとともに、右側のサイドレール11の接合部31(上端部)に左端部12aがスポット溶接で接合されている(右側の部位11,31,12aは図示せず)。
センタピラー13は、上下方向に延出された部材であって、車室28側に設けられたピラーインナー(ピラー)41と、車外29側に設けられたピラースチフナ42とを備えている。ピラーインナー41にアウタパネル14のピラー部14aが車外29側から重ね合わされることで、ピラーインナー41およびピラー部14aで閉断面が形成されている。ピラーインナー41およびピラー部14aで形成された閉断面内にピラースチフナ42が収容されている。
図2及び図5に示すように、ピラーインナー41は、上下方向に延びており、サイドレール11の接合部31のうち下半部31aに上端部41aが車室28側から重ね合わされた状態において一対のボルト51で取り付けられている。詳しくは、上端部41aは、接合部31の下半部31aを跨ぐように重ね合わされている。この状態において、サイドレール11にピラーインナー41の上端部41aが略直交するように交差させた状態で重ね合わされている。
ピラーインナー41は、上下方向に延びたピラー本体45と、ピラー本体45の前端部45aから車体前方向に向けて張り出された前ピラーフランジ46と、ピラー本体45の後端部45bから車体後方向に向けて張り出された後ピラーフランジ47とを有する。
上記ピラーインナー41は、ピラー本体45、前ピラーフランジ46、後ピラーフランジ47で断面略ハット形状(すなわち、前後のピラーフランジ46,47に対してピラー本体45が車室28側に断面略U字状に膨出された状態)に形成されている。
前ピラーフランジ46は、前ドア開口部17(具体的には、縦辺17b)の一部を形成する張出片である。後ピラーフランジ47は、後ドア開口部18(具体的には、縦辺18b)の一部を形成する張出片である。
ピラーインナー41の上端部41aにおいて、ピラー本体45の前端部45aおよび後端部45bが前後のレール本体33,36に重ね合わせ可能に形成されている。よって、前述したように、サイドレール11にピラーインナー41の上端部41aが略直交するように交差させた状態で接合部31の下半部31aを跨ぐように重ね合わせられている。
これにより、前レールフランジ34および前ピラーフランジ46が互いに交差する前交差部(交差部)54が形成されている。さらに、後レールフランジ37および後ピラーフランジ47が互いに交差する後交差部(交差部)55が形成されている。
図2、図5及び図6に示すように、前交差部54において、前ピラーフランジ46の上端部46aに前段差部(段差部)57が形成され、前レールフランジ34の後端部(すなわち、前段差部54に対応する部位)34aに前凹部(凹部)58が形成されている。
前段差部57は、車室28側に膨出されることで、前レールフランジ34を回避可能に形成された部位である。前凹部58は、前レールフランジ34の後端部34aに位置し、前レールフランジ34の側縁34bより上方に向けて凹むように形成されている。よって、前凹部58の底部58aは前レールフランジ34の側縁34bよりH1だけ上方に位置している。
図5及び図7に示すように、後交差部55において、前交差部54と同様に、後ピラーフランジ47の上端部47aに後段差部(段差部)62が形成され、後レールフランジ37の前端部(すなわち、後段差62部に対応する部位)37aに後凹部(凹部)63が形成されている。後段差部62は、車室28側に膨出されることで、後レールフランジ37を回避可能に形成された部位である。
後凹部63は、後段差部62に対応する部位に位置し、後レールフランジ37の側縁37bより上方に向けて凹むように形成されている。よって、後凹部63の底部63aは後レールフランジ37の側縁37bよりH1だけ上方に位置している。
このように、図2及び図5に示すように、前ピラーフランジ46の上端部46aに前段差部57を備えて前レールフランジ34を回避可能とし、後ピラーフランジ47の上端部47aに後段差部62を備えて後レールフランジ37を回避するようにした。よって、サイドレール11の接合部31(具体的には、図5に示す下半部31a)にピラーインナー41の上端部41aを重ね合わせた状態で下半部31aおよび上端部41aを好適に設ける(取り付ける)ことができる。
具体的には、前ピラーフランジ46(上端部46a)の取付部46bを前レール本体33の表面33bに確実に当接させることができる。さらに、前レール本体33の取付孔33cに取付部46bに形成された差込孔46cを確実に位置合わせすることができる。
同様に、後ピラーフランジ47(上端部47a)の取付部47bを後レール本体36の表面36bに確実に当接させることができる。さらに、後レール本体36の取付孔36cに取付部47bに形成された差込孔47cを確実に位置合わせすることができる。
これにより、前ピラーフランジ46の取付部46bをボルト51およびナット52で前レール本体33に確実に取り付けることができる。さらに、後ピラーフランジ47の取付部47bをボルト51およびナット52で後レール本体36に確実に取り付けることができる。したがって、サイドレール11およびピラーインナー41の上端部41aの連結強度を十分に確保することができる。
さらに、レールフロント25およびレールリヤ26の接合部31(下半部31a)にピラーインナー41の上端部41aを重ね合わせた。よって、レールフロント25およびレールリヤ26の接合部31をピラーインナー41の上端部41aで補強することができる。
これにより、レールフロント25に衝突荷重が入力された場合に、衝突荷重をピラーインナー41の上端部41aに分散させて、接合部31に伝わる衝突荷重を小さく抑えることができる。したがって、衝突荷重に対する接合部31の剛性を好適に確保することができる。
加えて、レールフロント25およびレールリヤ26の接合部31にルーフアーチ12の左端部12aを接合した。よって、レールフロント25およびレールリヤ26の接合部31をルーフアーチ12の左端部12aで補強することができる。これにより、レールフロント25に衝突荷重が入力された場合に、衝突荷重をルーフアーチ12の左端部12aに分散させて、接合部31に伝わる衝突荷重を小さく抑えることができる。したがって、衝突荷重に対する接合部の剛性を好適に確保することができる。
図2及び図3に示すように、前レールフランジ34および前ピラーフランジ46に沿って前トリム部材21が取り付けられている。前トリム部材21は、例えば断面略U字状に形成され、前ドア開口部17の上辺17aおよび縦辺17bに挟み込まれるように取り付けられることで上辺17aや縦辺17bを装飾/シールする部材である。
後レールフランジ37および後ピラーフランジ47に沿って後トリム部材22が取り付けられている。後トリム部材22は、前トリム部材21と同様に、例えば断面略U字状に形成され、後ドア開口部18の上辺18aおよび縦辺18bに挟み込まれるように取り付けられることで上辺18aや縦辺18bを装飾/シールする部材である。
つぎに、サイドレール11にセンタピラー13を取り付ける例について、図8〜図9に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、レールリヤ26の前端部26aにレールフロント25の後端部25aを車室28側から重ね合わせ、重ね合わせた接合部31をスポット溶接で一体に接合する。レールリヤ26およびレールフロント25を接合することでサイドレール11を形成する。
サイドレール11を形成した後、サイドレール11の接合部31のうち下半部31aにピラーインナー41の上端部41aを車室28側から矢印Aの如く重ね合わせる。
図8(b)に示すように、サイドレール11の接合部31(下半部31a)にピラーインナー41の上端部41aを重ね合わせた後、上端部41aをボルト51およびナット52(図8(a))で締結する。上端部41aをボルト51・ナット52で締結した状態で、ピラーインナー41にピラースチフナ42(図4)およびアウタパネル14を車外側から重ね合わせて接合する。
図9に示すように、前ピラーフランジ46および前レールフランジ34に沿って前トリム部材21を矢印Bの如く取り付ける。後ピラーフランジ47および後レールフランジ37に沿って後トリム部材22を矢印Cの如く取り付ける。
図8(a)に示すように、前レールフランジ34の後端部34aに前凹部58が形成され、後レールフランジ37の前端部37aに後凹部63が形成されている。よって、前凹部58の底部58aを前トリム部材21(図9)から離すとともに、後凹部63の底部63aを後トリム部材22(図9)から離すことができる。
図9に示すように、前凹部58の底部58a(図8(a))を前トリム部材21から離すことで、前トリム部材21から前段差部57を離すことができる。同様に、後凹部63の底部63a(図8(a))を後トリム部材22から離すことで、後トリム部材22から後段差部62を離すことができる。したがって、前段差部57が前トリム部材21の取付を妨げることや、後段差部62が後トリム部材22の取付を妨げるおそれがない。
ついで、サイドレール11(レールフロント25)の素材72を型抜き(die cutting)する例を図8及び図10に基づいて説明する。
図8(a),(b)に示すように、サイドレール11の接合部31にピラーインナー41の上端部41aを重ね合わせて、前レールフランジ34および前ピラーフランジ46を互いに交差させるとともに、後レールフランジ37および後ピラーフランジ47を互いに交差させるように構成した。よって、従来技術で必要とした、下向きのピラー受部をサイドレールから除去することができる。
サイドレールから下向きのピラー受部を除去することで、サイドレール11(レールフロント25)を側面視略真直ぐな形状に形成することができる(図8(a))。レールフロント25を側面視略真直ぐな形状に形成することで、図10に示すように、サイドレール11の素材72を略真直ぐな形状にすることができる。
このように、サイドレール11の素材72を略真直ぐな形状にすることで、パネル材71からサイドレール11の素材72を型抜きする際に、パネル材71に余り部分を残さないようにできる。これにより、パネル材71を無駄なく使用してパネル材71の歩留まりを高めることができる。
図8(a)に示すように、サイドレール11のレールリヤ26も、レールフロント25と同様に、側面視略真直ぐな形状に形成することができる。これにより、レールリヤ26の素材をパネル材から型抜きする際に、パネル材に余り部分を残さないようにしてパネル材の歩留まりを高めることができる。
本発明に係る車体側部構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。例えば、実施例では、前後のピラーフランジ46,47に前後の段差部57,62を形成し、前後のレールフランジ34,37に前後の凹部58,63を形成した例について説明したが、これに限定するものではない。例えば、前後のピラーフランジ46,47に前後の凹部58,63を形成し、前後のレールフランジ34,37に前後の段差部57,62を形成することも可能である。これにより、サイドレール11の接合部31に上端部41aを車外29側から重ね合わせることが可能になる。
さらに、実施例では、サイドレール11にピラーインナー41の上端部41aを一対のボルト51で取り付けた例について説明したが、これに限らないで、サイドレール11にピラーインナー41の上端部41aをスポット溶接などで設けることも可能である。
さらにまた、実施例では、ピラーとしてセンタピラー13を例示したが、これに限らないで、フロントピラーやクオータピラーなどの他のピラーに適用することも可能である。
さらに、実施例で示した車体側部構造10、サイドレール11、ルーフアーチ12、センタピラー13、前後のドア開口部17,18、前後のトリム部材21,22、レールフロント25、レールリヤ26、前後のレールフランジ34,37、ピラーインナー41、前後のピラーフランジ46,47、前後の交差部54,55、前後の前段差部57,62および前後の前凹部58,63などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。