以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図11を用いて詳細に説明する。第1実施形態は、蒸気圧縮式冷凍機をハイブリッド車両用の空調装置に適用したものである。図1は、本発明の第1実施形態に用いる車両用空調装置のCOOLサイクル時の冷媒の流れを説明する模式図である。図2は、上記実施形態におけるHOTサイクル時の冷媒の流れを説明する模式図である。図3は、上記実施形態におけるDRY EVAサイクル時の冷媒の流れを説明する模式図である。図4は、上記実施形態におけるDRY ALLサイクル時の冷媒の流れを説明する模式図である。図5は、上記各サイクルにおいて、各電磁弁および三方弁の動作状態を示す図表である。図6は、上記実施形態におけるエアコンECUへの接続を示すブロック構成図である。
ハイブリッド車両は、ガソリン等の液体燃料を爆発燃焼させて動力を発生させる走行用内燃機関をなすエンジン30(図1)、走行補助用電動機機能および発電機機能を備える図示しない走行補助用の電動発電機、エンジン30への燃料供給量や点火時期等を制御するエンジン用電子制御装置(以下、エンジンECU60(図6)ともいう)、電動発電機やエンジンECU60等に電力を供給する図示しない電池、電動発電機の制御および無断変速機等の制御を行うと共にエンジンECU60に制御信号を出力するハイブリッド電子制御装置(以下、ハイブリッドECU70(図6)ともいう)を備えている。
したがってハイブリッド車両は、走行するための駆動源としてエンジン30と電動発電機とを有する。ハイブリッドECU70は、電動発電機およびエンジン30のいずれの駆動力を駆動輪に伝達するかの駆動切替えを制御する機能、および電池(車載用蓄電装置)の充放電を制御する機能を備えている。
また電池は、車載用蓄電装置であって、車室内空調、走行等によって消費した電力を充電するための充電装置を備えており、例えばニッケル水素蓄電池、リチウムイオン電池等が用いられる。この充電装置は、電力供給源としての電気スタンドや商業用電源(家庭用電源)に接続されるコンセントを備えており、このコンセントに電源供給源を接続することにより、電池の充電を行うこともできる。
具体的には、第1実施形態の車両制御システムは、以下のような制御を行う。
(1)車両が停止しているときは、基本的にエンジン30を停止させる。
(2)走行中は、減速時を除き、エンジン30で発生した駆動力を駆動輪に伝達する。なお、減速時は、エンジン30を停止させて電動発電機にて発電して電池に充電する(電気走行モード)。
(3)発進時、加速時、登坂時および高速走行時等の走行負荷が大きいときには、電動発電機を電動モータとして機能させて、エンジン30で発生した駆動力に加えて、電動発電機に発生した駆動力を駆動輪に伝達する(ハイブリッド走行モード)。
(4)電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジン30の動力を電動発電機に伝達して電動発電機を発電機として作動させて電池の充電を行う。
(5)車両が停止しているときに電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジンECU60に対してエンジン30を始動する指令を発するとともに、エンジン30の動力を電動発電機に伝達する。
車両用空調装置100は、乗員の乗車前に行われる車室内空調運転(以下、乗車前空調運転またはプレ空調運転という)が実施可能な空調装置である。車両のユーザーが、乗車前空調運転を行いたいときに携帯する携帯機52(図6)を操作すると、エアコンECU50は、携帯機52から送信される乗車前空調運転の命令信号を受信し、所定のプログラムによる演算を行って乗車前空調運転を実行するものである。
ユーザーは、車両に乗車しようとする前に車室内の空調環境を快適にしておくために、携帯機52を操作して、車両の空調装置に対して乗車前空調運転の指令を送信する。この乗車前空調運転は、原則として、車両のイグニッションスイッチがOFF状態であること、あるいはエアコンECU50に対して乗員が乗車している信号が送信されていないことが許容条件となる。
図1から図4に示す各サイクルにおいて、各電磁弁11〜14および三方弁4の動作状態を図5の図表に示している。また、図1から図4において、各サイクルにおける冷媒が流れる経路は太字実線で示し、冷媒が流れない経路は破線で示している。
図1において、車両用空調装置100は、アキュムレータ式冷凍サイクルであるヒートポンプサイクル1(以下、単にヒートポンプとも言う)を用いた装置であり、車室内に送風空気を導く空調ケース20、この空調ケース20内に空気を導入して車室内へ送る室内用ブロワ21(空調用送風機)、および図6のように、エンジンECU60に接続されたエアコン電子制御装置(以下、エアコンECU50ともいう)を備える。
室内用ブロワ21は、ブロワケース(図示せず)、ファン、ブロワモータよりなり、このブロワモータへの印加電圧に応じて、ブロワモータの回転速度が決定される。ブロワモータへの印加電圧は、上記エアコンECU50からの制御信号に基づいている。この結果、送風量がエアコンECU50により制御される。
室内用ブロワ21のブロワケースの一方側には、空気を取り入れる空気取入口として、車室内空気(内気)を導入する内気導入口(図示せず)と、車室外空気(外気)を導入する外気導入口(図示せず)とが形成されるとともに、内気導入口と外気導入口との開口割合を調節する内外気切替手段を成す内外気切替ドア25(図6)が設けられている。
室内用ブロワ21よりも送風空気の下流側における空調ケース20内の通風路には、上流側から下流側に進むにしたがい順に、図1の蒸発器8(冷却用熱交換器)、エアミックスドア22、ヒータコア23、凝縮器3(加熱用熱交換器)、PTCヒータ24(電気式補助熱源)が配置されている。
空調ケース20の他方側の下流端(図1の上方)は、車両のフロントウィンドウ(窓ガラス)の内表面に向かって送風空気を吐出するデフロスタ吹出口(図示せず)、乗員の上半身に向かって送風空気を吐出するフェイス吹出口(図示せず)、乗員足元に向かって送風空気を吐出するフット吹出口(図示せず)に接続されている。
蒸発器8は、室内用ブロワ21直後の通路(通風路)全体を横断するように配置されており、室内用ブロワ21から吹き出された空気全部が通過するようになっている。蒸発器8は、COOLサイクル運転時や除湿サイクル運転時において、内部を流れる冷媒の吸熱作用によって、送風空気を除湿したり冷却したりする冷却用熱交換器として機能する。
ヒータコア23は、少なくともその伝熱部分が空調ケース20内の温風側通路のみに位置するように蒸発器8よりも送風空気の下流側に配置されている。ヒータコア23は、HOTサイクル運転時において、内部を流れるエンジン30の冷却水の熱(水温)を利用して、周囲の空気を加熱する加熱用熱交換器として機能する。
凝縮器3は、少なくともその伝熱部分が、空調ケース20内の温風側通路のみに位置して配置されており、ヒータコア23よりもさらに送風空気の下流側に配置されている。凝縮器3はHOT(暖房)サイクル運転時、除湿サイクル運転時およびCOOLサイクル運転時において内部を流れる冷媒の放熱作用によって温風側通路を流れる送風空気を加熱する熱交換器として機能する。
PTC(positive temperature coefficient)ヒータ24は、少なくともその伝熱部分が温風側通路のみに位置して設置されており、凝縮器3よりもさらに送風空気の下流側に配置されている。PTCヒータ24は、HOTサイクル運転やCOOLサイクル運転において、温風側通路を流れる送風空気を加熱する補助的な加熱手段である。PTCヒータ24は、複数本の通電発熱素子部を備え、スイッチまたはリレーにて任意の本数の通電発熱素子部に通電されることによって発熱し、周囲の空気を暖めることができる。
この通電発熱素子部は、耐熱性を有する樹脂材料(例えば、66ナイロンやポリブタジエンテレフタレート等)で成形された樹脂枠の中にPTC素子を嵌め込むことにより構成したものである。また、PTCヒータ24は、さらに通電発熱素子部からの発熱を伝達する熱交換フィン部を有してもよい。
この熱交換フィン部は、アルミニウムの薄板を波形状に成形したコルゲートフィンと、このコルゲートフィンを一定の形状に保つとともにPTC素子や電極板との接触面積を確保するアルミニウムプレートとを有している。コルゲートフィンとアルミニウムプレートとは、ろう付により接合されている。
蒸発器8よりも下流側であってヒータコア23や凝縮器3よりも上流側の通風路には、蒸発器8を通過した空気を、凝縮器3を通る空気と凝縮器3を迂回する空気とに分けたり、切り替えたりして、これらの空気の風量比を調整できるエアミックスドア22が設けられている。
エアミックスドア22は、アクチュエータ等によりそのドア本***置を変化させることで、空調ケース20内の二分された通路である温風側通路および冷風側通路のそれぞれの一部または全部を塞ぐことができる。そして、エアミックスドア22による温風側通路の開度は、温風側通路の横断方向の開口が開放される割合のことであり、0から100%の範囲で調整可能である。また、エアミックスドア22による冷風側通路の開度は、冷風側通路の横断方向の開口が開放される割合のことであり、0から100%の範囲で調整可能である。
ヒートポンプは、電動圧縮機2、凝縮器3、三方弁4、室外熱交換器5、第1膨張弁10、第2膨張弁7、蒸発器8、アキュムレータ9、および各電磁弁11〜14を備える。このヒートポンプは、冷凍サイクル内を流れる冷媒(例えば、R134a、CO2等)の状態変化を利用することにより、冷房用の蒸発器8と暖房用の凝縮器3によって冷房、暖房および除湿を行うことができる。また、蒸発器8と凝縮器3とは、室外熱交換器5に対して、室内熱交換器を構成する。
COOLサイクル運転時の冷媒は、図1の太字実線の経路を白抜き矢印の向きに流れる。このCOOLサイクルは、除湿能力が大きく、図1に示すように、冷媒を吸入して吐出する電動圧縮機2と、電動圧縮機2から吐出された冷媒が流入する凝縮器3と、COOLサイクル運転時に、凝縮器3から流入する冷媒が空気と熱交換して放熱する室外熱交換器5と、凝縮器3を流出した冷媒を室外熱交換器5に向かわせる三方弁4と、室外熱交換器5から蒸発器8への冷媒流れを制御するように設けられた電磁弁11と、電磁弁11によって開放された流路を通ってきた冷媒を減圧する第2膨張弁7とを備える。
更に、COOLサイクルは、第2膨張弁7で減圧された冷媒が蒸発して送風空気を冷却する蒸発器8と、冷媒を気液分離するアキュムレータ9とを備え、これらを配管により環状に接続することにより形成されている。COOLサイクル運転経路は、電動圧縮機2→凝縮器3→三方弁4→室外熱交換器5→電磁弁11→第2膨張弁7→蒸発器8→アキュムレータ9→電動圧縮機2となる。
このようにCOOLサイクル運転経路は、三方弁4を室外熱交換器5側の流路と連通するように切り替えることによって、COOLサイクル運転時に、凝縮器3で送風空気と熱交換して冷却された冷媒が、第1膨張弁10を通らないで室外熱交換器5に流入し、更に電磁弁11によって開放された流路を通り、第2膨張弁7で減圧された後、蒸発器8に流入し、アキュムレータ9を経由して電動圧縮機2に吸入される。
COOLサイクル運転では、凝縮器として機能する室外熱交換器5から、熱が室外に放出され、蒸発器8から熱が吸収される。このとき、凝縮器3も発熱しているが、エアミックスドア22の位置制御で、車室内空気との熱交換量を少なくすることができる。また、電磁弁11と第2膨張弁7との間の通路には、逆流防止用の逆止弁15が設けられている。
次に、ヒートポンプのHOTサイクル運転時の冷媒は、図2の太字実線の経路を黒塗り矢印の向きに流れる。HOTサイクルは、暖房性能が大であり、除湿能力無しの運転である。図2に示すように、HOTサイクルは、電動圧縮機2と、HOTサイクル運転時に電動圧縮機2から吐出された冷媒と空気とを熱交換させて空気を加熱する凝縮器3と、凝縮器3から流入した冷媒を減圧する減圧装置としての第1膨張弁10と、第1膨張弁10から室外熱交換器5への冷媒流れを制御するように設けられた電磁弁14と、第1膨張弁10で減圧された冷媒を蒸発させる室外熱交換器5と、室外熱交換器5から電動圧縮機2への冷媒流れを制御するように設けられた電磁弁12と、アキュムレータ9と、を配管により環状に接続することにより形成されている。
HOTサイクル運転経路は、電動圧縮機2→凝縮器3→三方弁4→第1膨張弁10→電磁弁14→室外熱交換器5→電磁弁12→アキュムレータ9→電動圧縮機2となる。また、電磁弁12とアキュムレータ9との間の通路には、逆流防止用の逆止弁16が設けられている。
なお、室外空気が極めて低いときは、HOTサイクルによる暖房は効量が悪いので、COOLサイクルにてエンジン30を稼動させ、エンジン冷却水(温水)の温度を上げて、ヒータコア23の熱で車室内が暖房される。
次に、第1の除湿(DRY EVA)サイクル運転時の冷媒は、図3の太字実線の経路を斜線太矢印の向きに流れる。ヒートポンプの第1の除湿サイクルは、暖房性能が小、除湿能力が中レベルの運転であり、例えば、操作パネル51(図6)の操作等により、暖房能力が小レベルで車室内の除湿を行うときに選択されて実行される。
第1の除湿サイクルは、図3に示すように電動圧縮機2、凝縮器3、第1膨張弁10、第1膨張弁10から蒸発器8への冷媒流れを制御するように設けられた電磁弁13、第1膨張弁10で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器8、およびアキュムレータ9を配管により環状に接続することにより形成されている。
第1の除湿サイクル運転経路は、電動圧縮機2→凝縮器3→三方弁4→第1膨張弁10→電磁弁13→蒸発器8→アキュムレータ9→電動圧縮機2となる。この第1の除湿サイクル運転経路は、第1膨張弁10で減圧された冷媒が室外熱交換器5に流入しないで蒸発器8に流入して送風空気を冷却した後、アキュムレータ9を経由して電動圧縮機2に吸入される経路である。
次に、第2の除湿(DRY ALL)サイクル運転時の冷媒は、図4の太字実線の経路を斜線太矢印の向きに流れる。ヒートポンプの第2の除湿サイクルは、暖房性能が中レベル、除湿能力が小レベルの運転であり、例えば、操作パネル51の操作等により、暖房能力が中レベルで車室内の除湿を行うときに選択されて実行される。
第2の除湿サイクルは、図4に示すように第1の除湿サイクル運転経路に加え、第1膨張弁10と電磁弁13の間で分岐した冷媒経路を有する。この分岐する冷媒経路は、第1膨張弁10と電磁弁13の間の通路から電磁弁14、室外熱交換器5および電磁弁12を通り、蒸発器8とアキュムレータ9の間の通路に合流するようになっている。
これにより、第2の除湿サイクル運転経路は、電動圧縮機2→凝縮器3→三方弁4→第1膨張弁10→電磁弁13→蒸発器8→アキュムレータ9→電動圧縮機2の経路と、第1膨張弁10→室外熱交換器5→電磁弁12→アキュムレータ9の経路とで構成される。
この第2の除湿サイクル運転経路は、第1膨張弁10で減圧された冷媒が、室外熱交換器5に流入しないで蒸発器8に流入して送風空気を冷却した後、アキュムレータ9を経由して電動圧縮機2に吸入される経路と、室外熱交換器5に流入して空気から吸熱した後、アキュムレータ9を経由して電動圧縮機2に吸入される経路と、を有している。
電動圧縮機2は、内蔵された電動モータ2aにより駆動され、回転数制御が可能であり、回転数に応じて冷媒吐出流量が可変である。電動圧縮機2はインバータ90(図6)により周波数が調整された交流電圧が印加されてその電動モータ2aの回転速度が制御される。インバータ90は車載電池から直流電源の供給を受け、エアコンECU50により制御される。
室外熱交換器5は、エンジンコンパートメント等の車室外に配置されて、外気と冷媒との熱交換を行うもので、室外ファン6から強制的に送風を受けてHOTサイクル運転時には蒸発器として機能し、COOLサイクル運転時には凝縮器として機能する。
第1膨張弁10は固定絞り等の固定式膨張弁(例えばキャピラリチューブ)、定圧式膨張弁、機械式膨張弁等で構成される。第1膨張弁10は、HOTサイクル運転時に室外熱交換器5へ供給される冷媒を減圧膨脹させる。
第2膨張弁7は感温筒を備え、蒸発器8出口の冷媒の蒸発状態が適度な過熱度をもつように出口冷媒温度をフィードバックし適切な弁開度によって冷媒流量を制御する温度作動方式を採用している。HOTサイクルおよび各除湿サイクルでは、第2膨張弁7で減圧された低圧冷媒を蒸発器8で吸熱して蒸発させ、蒸発器8を通過した冷媒をアキュムレータ9に流入させ、アキュムレータ9で蒸発器8の出口冷媒の気液を分離し、アキュムレータ9内のガス冷媒を電動圧縮機2に吸入させる。
蒸発器(エバポレータ)8は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器であり、COOLサイクル運転時に空調風を冷却する部材として機能する。この蒸発器8は、第2膨張弁7で減圧膨脹された低温低圧の冷媒と空気との熱交換を行うことにより、コア部を通過する空気を冷却する。
凝縮器3は、送風空気を加熱する加熱用熱交換器であり、空調ケース20内で蒸発器8の下流(風下)に配設されて、電動圧縮機2で圧縮された高温高圧の冷媒と空気との熱交換を行うことにより、コア部を通過する空気を加熱する。ウォータポンプ31は、エンジン冷却水が循環する回路に設けられ、エンジン冷却水から成る温水をヒータコア23に供給する。このヒータコア23は、凝縮器3と共に送風空気を加熱する加熱器として機能する。
エアミックスドア22は、蒸発器8からの冷風と凝縮器3等(加熱器)との暖風との混合割合を制御する。アキュムレータ9は、冷凍サイクル内の過剰冷媒を一時蓄えると共に、気相冷媒のみを送り出して、電動圧縮機2に液冷媒が吸い込まれるのを防止する。三方弁4、常開型の電磁弁11、常閉型の電磁弁12、常閉型の電磁弁13、および常開型の電磁弁14は、流路切替手段であり、これらの上記各サイクルにおける動作状態は図5に示すとおりである。
冷媒圧力センサ40は、ヒートポンプの高圧側の流路に設けられ、凝縮器3よりも上流の冷媒の高圧圧力、すなわち電動圧縮機2の吐出圧力Preを検出する。また、冷媒吸入温度センサ41は、室外熱交換器5の冷媒流れの下流側に設けられ、冷媒吸入温度を検出する。
図6のエアコンECU50は、車室内の空調運転を制御する制御手段であり、マイクロコンピュータと、車室内前面に設けられた操作パネル51上の各種スイッチからの信号や、冷媒圧力センサ40、冷媒吸入温度センサ41、内気センサ42、外気センサ(外気温検出手段)43、日射センサ44、入口温度センサ45等からセンサ信号が入力される入力回路と、各種アクチュエータに出力信号を送る出力回路と、を備えている。
マイクロコンピュータは、ROM(読み込み専用記憶装置)、RAM(読み込み書き込み可能記憶装置)等のメモリおよびCPU(中央演算装置)等から構成されており、操作パネル51等から送信された運転命令に基づいた演算に使用される各種プログラムを有している。
また、エアコンECU50は、上記の各サイクル運転時に、エアコン環境情報、エアコン運転条件情報および車両環境情報を受信してこれらを演算し、電動圧縮機2の設定容量を算出する。そして、エアコンECU50は、演算結果に基づいてインバータ90に対して制御信号を出力し、インバータ90によって電動圧縮機2の出力電力量が制御される。
このように乗員による操作パネル51や携帯機52の操作によって、空調装置の運転・停止等の操作信号および設定温度等がエアコンECU50に入力されて各種センサの検出信号が入力されると、エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70、ナビゲーションECU80等と通信し、各種の演算結果に基づいて、電動圧縮機2、室内用ブロワ21、室外ファン6、PTCヒータ24、三方弁4、電磁弁11〜14、内外気切替ドア25、吹出口切替ドア26等の各機器の運転を制御する。ナビゲーションECU80は、たとえば自車の位置情報等をエアコンECU50に送信する。
図7は、上記実施形態におけるエアコンECU50による基本的な制御処理を示したフローチャートである。図7において、イグニッションスイッチが投入されてエアコンECU50に電源が供給されると制御がスタートする。以降の各ステップに係る処理は、エアコンECU50によって実行されるものである。
(プレ空調判定)
エアコンECU50は、上記の各種センサからの信号、操作パネル51に設けられた各種操作部材からの信号、または遠隔操作可能な操作手段である携帯機52からの信号等に基づいて、車室内を空調するように構成されている。車両が継続的に停止して乗員が搭乗していないときには、エアコンECU50は、上記携帯機52からのプレ空調要求の有無、または予め設定されたプレ空調運転指令を監視している。
図7は、上記実施形態によるエアコンECUにおける全体制御を示すフローチャートである。この図7のステップS1では、携帯機52からプレ空調要求があった場合、または予め送信入力された空調要求時刻に基づいてプレ空調を開始するタイミングとなった場合には、車両が停止状態であるか否かを判断するとともに、電源電力がプレ空調作動時の要求電力に対し大きいか否か判断する。車両が停止状態であり、電源電力がプレ空調要求電力より大きいことを確認したら、プレ空調の実施を許可するためにプレ空調フラグを立てる。
(初期化)
次に、ステップS2で図6のエアコンECU50内のRAM等に記憶されている各パラメータ等を初期化(イニシャライズ)する。
(スイッチ信号読み込み)
次に、ステップS3で操作パネル51等からのスイッチ信号等を読み込む。
(センサ信号読み込み)
次に、ステップS4で上記の各種センサからの信号を読み込む。
(TAO算出・目標エバポレータ温度演算)
次に、ステップS5で、ROMに記憶された下記の数式1を用いて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する。
(数式1)TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C
ここで、Tsetは、温度設定スイッチにて設定された設定温度、Trは内気センサ42にて検出された内気温度、Tamは外気センサ43にて検出された外気温度、Tsは日射センサ44にて検出された日射量である。また、Kset,Kr,KamおよびKsは各ゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。そして、このTAOおよび上記各種センサからの信号により、エアミックスドア22のアクチュエータの制御値およびウォータポンプ31の回転数の制御値等を算出する。
また、このステップS5では、図8に記載したサブルーチン制御を実行し、目標エバポレータ温度を演算する。図8は、図7のステップS5における目標エバポレータ温度を演算する一部フローチャートである。
図8において、ステップS81において、走行パワーモードか否かを判定する。走行パワーモードの場合、ステップS82において、目標吹出温度TAOに応じて3〜11℃の間で目標冷却用熱交換器温度TEOを、マップを用いて決定する。
走行パワーモード以外の場合、ステップS83において、目標吹出温度TAOに応じて、2〜7℃の間で目標冷却用熱交換器温度TEOをマップを用いて決定する。このように、走行パワーモード選択時、目標冷却用熱交換器温度TEOを高くすることで、冷却用熱交換器温度を維持するのに必要な冷媒量が減少し、電動圧縮機2の稼働量も減少するので、車両用空調装置100全体の消費電力が少なくなり、電池の放電電流が減少し、その結果、電池温度が低下する。これにより、電池の能力がアップすると共に、車両全体の消費電力も低下するので、走行パワーモードを維持することが可能になる。
(サイクル・PTC選択)
次に、図7のステップS6で、サイクルとPTCヒータ選択との処理を行う。図9は、図7のサイクル・PTC選択処理を示すフローチャートである。図9において、ステップS901において、プレ空調か否かを判定する。プレ空調の場合は、ステップS902にて外気温が−3℃より低いか否かを判定する。
外気温が−3℃より低い場合は、ヒートポンプの効量が悪くなり、かつ、着霜しやすくなるので、ステップS903にてPTCヒータに通電することによるプレ空調を行う。外気温が−3℃より低くない場合は、ステップS904にて、自動選択されている吹出口モードがフェイス(FACE)か否かを判定する。
自動選択されている吹出口モードがフェイスの場合は、HOTサイクルによる暖房の必要が無いと判断して、ステップS905にてCOOLサイクルでのプレ空調を行う。吹出口モードがフェイスでない場合は、ステップS906にて、HOTサイクルでのプレ空調を行う。
ステップS901において、プレ空調か否かを判定して、プレ空調ではないと判定された場合は、ステップS907にて、外気温が−3℃より低いか否かを判定する。−3℃より低い場合は、ヒートポンプの効率が悪くなり、かつ着霜しやすくなるので、ステップS908にて、COOLサイクルによる空調を行い、エンジン30を稼動(エンジンON)させる。
ステップS907にて、外気温が−3℃より低いか否かを判定した結果、外気温が−3℃より低くない場合は、ステップS909にて、吹出口モードがフェイスか否かを判定する。フェイスの場合は、HOTサイクルの必要が無いと判断して、ステップS910にてCOOLサイクルの空調を行う。ステップS909にて、吹出口モードがフェイスか否かを判定した結果、フェイスでない場合は、ステップS911にて、HOTサイクルの空調を行う。
以上のように、たとえばプレ空調フラグが立っており、外気温が−3℃より低い場合は、ヒートポンプによる暖房の効率が悪くなり、かつ室外熱交換器5に着霜しやすくなるため、PTCヒータ24によるプレ空調を実施するため、PTCヒータ24に通電する。
また、外気温が−3℃以上の場合は、自動運転での吹出口モードがフェイスモードの場合には、ヒートポンプによる暖房の必要なしと判断して、COOLサイクルによるプレ空調を実施する。外気温が−3℃以上であり、フェイスモード以外の場合には、HOTサイクルによる暖房のプレ空調を実施する。
プレ空調フラグが立っておらず、プレ空調でなく、外気温が−3℃より低い場合は、ヒートポンプによる暖房の効率が悪くなり、かつ、室外熱交換器5に着霜しやすくなるため、COOLサイクルによる空調を実施する。なお、このときは、エンジン30を稼動し、温水およびヒータコア23の温度を上昇させるようにする。なお、図1〜図4に示した各サイクルの選定は、操作パネル51を介して、マニュアル操作でも行うことができる。
(ブロワ電圧決定)
次に、図7に示すステップS7において、ROMに記憶されたマップを用いて目標吹出温度TAOに対応するブロワ電圧(室内用ブロワ21のブロワモータに印加する電圧)を決定する。このステップS7は、具体的には図10に基づいて実行される。図10は、図7のステップS7におけるブロワ電圧決定処理を示すフローチャートである。
図10に示すように、ステップS1001において、ブロワ制御がオートか否かを判定する。オートの場合、ステップS1002にて、ベースとなる仮のブロワレベルf(TAO)を算出する。この場合、走行パワーモードにおいては、走行パワーモード以外のときに比べて、低いブロワレベルを演算して決定する。
走行パワーモードを選択しているときは、ブロワ風量を規制することで、ブロワモータ消費電力が少なくなると共に、風量が減ることにより冷却用熱交換器8の温度上昇も遅くなるので、電動圧縮機2の仕事量も減少する。これにより、車両用空調装置100全体の消費電力が少なくなり、電池温度が低下すると共に、車両全体の消費電力も低下するので、走行パワーモードを維持することが可能になる。
次に、ステップS1003において、ヒータコア23の水温およびPTCヒータ24の作動本数に応じて、ウオームアップ風量f(TW)を算出する。更に、ステップS1004にて、吹出口がフット(FOOT)、バイレベル(B/L)、フットデフ(F/D)のいずれかであるか否かを判定する。いずれかであるときは、ステップS1005に進み、いずれでもないときは、ステップS1006に進む。
ステップS1005では、ブロワレベルを、その時のf(TAO)の最小値とf(TW)とを比較し、そのうちの大きい方をブロワレベルとして決定する。次に、ステップS1007では、決定されたブロワレベルをブロワ電圧に変換する。一方、ステップS1006では、ブロワレベルを、f(TAO)で決定し、次に、ステップS1008では決定されたブロワレベルをブロワ電圧に変換する。
ステップS1001でブロワ風量の制御がオートでないと判定されたときは、ステップS1009でLoからHiまでのマニュアル操作で、指定されたブロワレベルに従って4ボルトから12ボルトの電圧をブロワモータに印加する。
(吸込口モード決定)
次に、図7のステップS8で、ROMに記憶されたマップから、目標吹出温度TAOに対応する吸込口モードを決定する。具体的には、周知のように、目標吹出温度TAOが高いときには、内気循環モードが選択され、目標吹出温度TAOが低いときには、外気導入モードが選択される。
(吹出口モード決定)
次に、図7のステップS9で、ROMに記憶されたマップから、目標吹出温度TAOに対応する吹出口モードを周知のように決定する。目標吹出温度TAOが高いときには、フットモード(FOOT)が選択され、目標吹出温度TAOの低下に伴ってバイレベルモード(B/L)、さらにはフェイスモード(FACE)の順に選択され、本制御を終了する。
(電動圧縮機回転数等決定)
次に、図7のステップS10で電動圧縮機回転数等の決定処理を実行する。ステップS10は、具体的には図11に基づいて決定される。図11は、図7の電動圧縮機回転数等の決定処理を示すフローチャートである。図11において、ステップS1101において、COOLサイクル時にフロストを防止するための圧縮機回転数変化量ΔfCを演算する。まず、エアコンECU50は、ステップS1101において、各種センサの検出信号を用いて算出した目標冷却用熱交換器温度TEOと、実際の蒸発器温度TE(図示しない蒸発器温度センサによって検出された温度)との温度偏差Enを以下の数式2を用いて演算する。
(数式2) En=TEO−TE
さらに、以下の数式3を用いて偏差変化量EDOTを演算する。
(数式3) EDOT=En−En−1
ここで、Enは、1秒に1回更新されるため、En−1は、Enに対して1秒前の値となる。
さらに、エアコンECU50は、算出したEn及びEDOTと、図11のステップS1101に示すマップとを用いて、1秒前の電動モータ2aの「COOLサイクル時の圧縮機回転数変化量ΔfCを算出する。このCOOLサイクル時の圧縮機回転数変化量ΔfCは、COOLサイクル時の熱交換器のフロスト防止に貢献する値である。
図11に示すマップは、偏差Enと偏差変化量EDOTとの関係を示すマップであり、予めROMに記憶されている。なお、この温度偏差En及び偏差変化量EDOTにおける圧縮機回転数変化量ΔfCは、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数およびルールに基づいて、ファジィ制御にて求めてもよい。
次に、ステップS1102において、同様に、HOTサイクル時に異常高圧を防止するための圧縮機回転数変化量ΔfHを演算する。このステップS1102では、目標圧力PDO、高圧圧力Pre(Preは冷媒圧力センサ40(図1、図6)にて測定した高圧圧力)、偏差Pn、偏差変化量PDOTを用いて、電動圧縮機2の圧縮機回転数変化量ΔfHを以下のように求める。
ヒートポンプによるHOTサイクル運転時において、図11のステップS1102において、先に求められた目標吹出温度TAOを、冷凍サイクルの高圧側を流れる冷媒の目標圧力PDO(以下、単にPDOともいう)に変換する。この変換は、周知の方法を用いればよく、目標吹出温度TAOを変換用マップでPDOに変換してもよい。
また、目標吹出温度TAOと、室内用ブロワ21の風量Vによって異なる温度効率φと、凝縮器3の吸入側空気温度とから飽和冷媒温度Tcを求め、この飽和冷媒温度Tcと飽和圧力Pc(凝縮器3の凝縮圧力)との関係に基づいて、上記飽和冷媒温度Tcに対応する飽和圧力Pcを求めて、この飽和圧力Pcを目標圧力PDOとしてもよい。
次に、目標圧力PDOと、冷媒圧力センサ40にて検出された高圧圧力Preとの圧力偏差Pnを下記数式4によって算出する。
(数式4) Pn=PDO−Pre
また、偏差変化量PDOTを下記数式5によって算出する。
(数式5) PDOT=Pn−Pn−1
なお、Pn−1は、偏差Pnの先回の値である。また、nは自然数である。
図11のステップS1102には、圧力偏差Pnと、偏差変化量PDOTと、圧縮機回転数変化量ΔfHとの関係を示すマップを記載している。次に、このPnとPDOTと、エアコンECU50のROMに記憶された図11に示すマップとを用いて、1秒前の電動圧縮機回転数fn−1に対して増減する圧縮機回転数変化量ΔfHを求める。
なお、この圧力偏差Pnおよび偏差変化量PDOTにおける圧縮機回転数変化量ΔfHは、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数及び所定のルールに基づいて、ファジィ制御にて求めてもよい。
更に、ステップS1103において、走行パワーモードか否かを判定する。走行パワーモード中の場合、ステップS1104に進み、最大消費電力f(走行)Wを4000ワットに決定する。走行パワーモード中でない場合、ステップS1105に進み、最大消費電力f(走行)Wを6000ワットに決定する。
次に、ステップS1106において、電動圧縮機2の使用許可電力と実際の電動圧縮機消費電力との差のワット数から、圧縮機回転数変化量rpm(ΔfPOWER)を、マップを用いて演算する。この場合、使用許可電力は、最大消費電力f(走行)Wから電動ファン消費電力とブロワ消費電力とを差し引いて求められる。
使用許可電力と圧縮機消費電力との差が大きい時は、圧縮機回転数変化量ΔfPOWERを大きくする。また、電動圧縮機2の使用可能電力と、電動圧縮機2の実際の消費電力がおおよそ等しい時は、電動圧縮機2の圧縮機回転数変化量ΔfPOWERを下げるよう制御する。
以上のように、走行パワーモード選択時は、ステップS1104において、車両用空調装置100の最大消費電力を規制することで、電池の放電電流が低下して電池温度が低下すると共に、車両全体の消費電力も低下するので、電池電力に余裕ができ、走行パワーモードを維持することが容易になる。
次に、図11のステップS1107にて、COOLサイクルか否かを判定する。COOLサイクルの場合、ステップS1108にて、圧縮機回転数変化量ΔfPOWERとΔfCとのうち小さい方を選択することで、使用許可電力超過防止とフロスト防止を両立できる。COOLサイクルでない場合は、ステップS1109にて、ΔfPOWERとΔfHとのうちいずれか小さい方を選択することで、使用許可電力超過防止と異常高圧防止とを両立できる。
(各弁ON/OFF決定)
次に、図7のステップS11において、所定の各サイクルで制御が実行できるよう、サイクル中の三方弁4および電磁弁11〜14のONまたはOFF作動について決定する。この制御では、図5に示した各サイクルに対応する各弁の動作状態となるように、各弁の作動をオン、オフする出力信号を決定する。
(制御信号出力)
次に、図7のステップS12において、上記各ステップS1〜S11で算出または決定された各制御状態が得られるように、エンジンECU60、インバータ90、PTCヒータ24、各種アクチュエータ、三方弁4および電磁弁11〜14等に対して制御信号を出力する。そして、図7のステップS13において所定時間の経過を待って、ステップS3に戻り、継続して各ステップが実行される。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。図12は、本発明の第2実施形態における援用する図7の電動圧縮機回転数等の決定処理(ステップS10)を示すフローチャートである。
各種センサの検出信号を用いて算出した目標冷却用熱交換器温度TEOと、実際の冷却用熱交換器温度TE(図示しない蒸発器温度センサ44によって検出される温度)との温度偏差Enを上記数式2を用いて演算する。さらに、上記の数式3を用いて偏差変化量EDOTを演算する。
さらに、エアコンECU50は、算出したEn及びEDOTと、図12のステップS1201に示すマップとを用いて、1秒前の電動モータ2aの「COOLサイクル時の圧縮機回転数変化量ΔfC」を算出する。このCOOLサイクル時の圧縮機回転数変化量ΔfCは、COOLサイクル時の熱交換器のフロスト防止に貢献する値である。
図12のステップS1201に示すマップは、偏差Enと偏差変化量EDOTとの関係を示すマップであり、予めROMに記憶されている。なお、この温度偏差En及び偏差変化量EDOTにおける圧縮機回転数変化量ΔfCは、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数およびルールに基づいて、ファジィ制御にて求めてもよい。
次に、ステップS1202では、目標圧力PDO、高圧圧力Pre(Preは冷媒圧力センサ40にて測定した高圧圧力)、偏差Pn、偏差変化量PDOTを用いて、電動圧縮機2の圧縮機回転数変化量PDOTを後述のように求める。
以下、圧縮機回転数変化量PDOTの求め方を詳述する。ヒートポンプによるHOTサイクル運転時において、先に求められた目標吹出温度TAOを、COOLサイクルの高圧側を流れる冷媒の目標圧力PDO(以下、単にPDOともいう)に変換する。この変換は、周知の方法を用いればよく、目標吹出温度TAOを変換用マップでPDOに変換してもよい。
また、前述したように、目標吹出温度TAOと、室内用ブロワ21の風量Vによって飽和圧力Pcを求めて、この飽和圧力Pcを目標圧力PDOとしてもよい。次に、目標圧力PDOと、冷媒圧力センサ40にて検出された高圧圧力Preとの圧力偏差Pnを上記数式4によって算出する。また、偏差変化量PDOTを上記数式5によって算出する。
図12のステップS1202に示したマップは、圧力偏差Pnと、偏差変化量PDOTと、圧縮機回転数変化量ΔfHとの関係を示す。次に、このPnとPDOTと、エアコンECU50のROMに記憶されたステップS1202に示すマップとを用いて、1秒前の電動圧縮機回転数fn−1に対して増減する圧縮機回転数変化量ΔfHを求める。
なお、この圧力偏差Pn及び偏差変化量PDOTにおける圧縮機回転数変化量ΔfHは、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数及び所定のルールに基づいて、ファジィ制御にて求めてもよい。
更に、ステップS1203において、走行パワーモードか否かを判定する。走行パワーモード中の場合、ステップS1204に進み、電力制限するための最大回転数f(走行)rpmを7000rpmに決定する。走行パワーモード中でない場合、ステップS1205に進み、最大回転数f(走行)rpmを10000rpmに決定する。
次に、ステップS1206にて、COOLサイクルか否かを判定する。COOLサイクルの場合、ステップS1207にて(Δf)をΔfCに設定する。COOLサイクルでない場合は、ステップS1208にて、(Δf)をΔfHに設定する。そして、ステップS1209では、前回の電動圧縮機回転数に(Δf)を加えた値とf(走行)rpmとを比較し、小さいほうを今回の電動圧縮機回転数とする。
このように、この第2実施形態においては、ステップS1203において、走行パワーモードか否かを判定して、走行パワーモードの場合、ステップS1204で回転数制限するための最大回転数を走行パワーモードでない時よりも低い回転数に設定している。
また、ステップS1206にて、COOLサイクルの場合、ステップS1207でΔfCを選択することで、フロストを防止できる。COOLサイクルでない場合は、ステップS1208にて、ΔfHを選択することで異常高圧を防止できる。
そして、ステップS1209にて、今回の圧縮機回転数を演算する。前回の圧縮機回転数に対して今回の変化量(Δf)を足しこむが、この時、最大回転数f(走行)rpmを超えないように設定される。これにより、走行パワーモード選択時、電動圧縮機2の最大回転数を低くすることで、電動圧縮機2の仕事量が減少するので、消費電力が少なくなり、電池温度が低下する。また、車両全体の消費電力も低下するので、走行パワーモードを維持することが可能になる。
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。例えば、前述の第1実施形態では、ハイブリッド自動車に本発明を適用しているが、ハイブリッド自動車に限るものではなく、電気自動車であってもよい。
また、前述の第1実施形態では、電気式補助熱源としてPTCヒータ24を採用しているが、これに限定するものではない。電気式補助熱源は、通電されることにより、発熱体等から発熱して周囲の空気や物体を加熱できれば他の装置でもよい。
また、ヒートポンプサイクルの車両用空調装置を実施形態にて示したが、本発明は、暖房を専ら、ヒータコアでエンジン冷却水温を使用して行い、かつ高圧、かつ液体の冷媒を車内にあるエキスパンションバルブで減圧して気化を開始させた状態で空調ケース内のエバポレータへ導き、気化した冷媒を電動圧縮機で圧縮して、空調ケース外部のコンデンサへ送るクーラサイクル(エアコンサイクル等とも呼ばれる)を使用した車両用空調装置に適用することもできる。