以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。連続符号は記号「〜」を用いて簡略表記する。例えば「スイッチング素子Q1〜Q4」は、「スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4」を意味する。「オン(on;真)」や「オフ(off;偽)」は正論理を前提として説明するが、負論理でも実施可能であることは言うまでもない。
〔実施の形態1〕
実施の形態1は、電圧制御による電力に基づいて、トランスの偏磁を抑止する例であって、図1〜図7を参照しながら説明する。まず、図1には電力変換装置を含む電源システムの第1構成例を模式図で示す。
図1に示す電源システム10は、いわゆる「DC−DCコンバータ」であって、電力源Edc(例えばバッテリや燃料電池等)から供給される直流電圧(例えば300[V]等)を目的の電圧(例えば12[V]等)に変換して出力機器30に出力する機能を担う。この電源システム10は、電力変換装置20を含むとともに、チョークコイルL10、コンデンサC10,C11、ダイオードD11,D12、フィルタ部12などを有する。
直流電圧(「直流電力」に相当する)を供給する電力源Edcには、例えばバッテリや燃料電池が用いられる。電力源Edcのプラス端子とマイナス端子とは、チョークコイルL10やコンデンサC10を経て、電力変換装置20に接続される。チョークコイルL10は入力フィルタとして機能する。コンデンサC10は、直流電圧の充放電を繰り返し行う。残りのダイオードD11,D12、コンデンサC11およびフィルタ部12等を説明する前に、説明の都合上、電力変換装置20の構成や作用等について以下に説明する。
電力変換装置20は、いわゆる「インバータ」であって、電力源Edcから供給される直流電圧を交流電圧(「交流電力」に相当する)に変換して出力する機能を担う。この電力変換装置20は、スイッチング素子Q1〜Q4、ダイオードD1〜D4、トランスTr1、ダイオードD21,D22、操作信号制御部21、積分波形出力部22,23、ピークホールド部24、差分値検出部25などを有する。
スイッチング素子Q1〜Q4は、後述する操作信号制御部21から個別に伝達される操作信号に従ってオン/オフが駆動される。本形態のスイッチング素子Q1〜Q4には、例えばそれぞれNチャネルMOSFETを用いる。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q3とは上下アームで直列接続され、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q4とは上下アームで直列接続される。スイッチング素子Q1,Q3の組と、スイッチング素子Q2,Q4の組とは並列接続される。スイッチング素子Q1(ソース端子)とスイッチング素子Q3(ドレイン端子)との接続点は、トランスTr1の一次端子(一端側)に接続される。同様に、スイッチング素子Q2(ソース端子)とスイッチング素子Q4(ドレイン端子)との接続点は、トランスTr1の一次端子(他端側)に接続される。
ダイオードD1〜D4は、スイッチング素子Q1〜Q4にそれぞれ対応して並列接続され、フリーホイールダイオードとして機能すればよい。そのため、スイッチング素子Q1〜Q4に内蔵されたものでもよく、外付けしたものでもよい。
トランスTr1には、例えば上記一次端子のほかに二次端子として少なくとも三端子を有し、中間端子(中間タップ)の電位を基準として二相の電圧を出力するタイプのものを用いる。この中間端子の電位を基準として、一方側の二次端子には正の二次電圧Vs1が出力され、他方側の二次端子には負の二次電圧Vs2が出力される。二次電圧Vs1,Vs2はそれぞれ「交流電力」に相当する。二次電圧Vs1の出力にはスイッチング素子Q1,Q4が関与し、二次電圧Vs2の出力にはスイッチング素子Q2,Q3が関与する(図3〜図5をも参照)。
周期ごとにみたとき、二次電圧Vs1,Vs2にかかる電圧時間積が等しくなければ偏磁が生じ、電圧時間積が等しければ偏磁が生じない。この「電圧時間積」は、トランスTr1の二次端子から出力される二次電圧Vs1,Vs2と、各電圧ごとに出力されている時間との積算値で示される。例えば、二次電圧Vs1の出力時間を「T1」と仮定し、二次電圧Vs2の出力時間を「T2」と仮定する。この仮定では、スイッチング素子Q1,Q4が関与する二次電圧Vs1の電圧時間積は「Vs1×T1」になり、スイッチング素子Q2,Q3が関与する二次電圧Vs2の電圧時間積は「Vs2×T2」になる。
二次電圧Vs1が生じる一方側の二次端子は、差分値検出部25のプラス端子との間に、ダイオードD22,積分波形出力部23,ピークホールド部24が直列接続される。二次電圧Vs2が生じる他方側の二次端子は、差分値検出部25のマイナス端子との間に、ダイオードD21と積分波形出力部22が直列接続される。
積分波形出力部22,23は、それぞれダイオードD21,D22で整流された直流電圧を積分して得られる積分波形を個別に出力する機能を担う。この積分波形は、二次電圧Vs1,Vs2が印加される期間に応じて時々刻々と積分値が変化する。積分波形は、積分波形出力部22の構成や時定数等によって色々な波形になるが、二次電圧Vs1,Vs2に応じて三角波が得られるように調整するのが望ましい。本形態の積分波形出力部22,23は、いずれもコストを低く抑えるために、抵抗器とコンデンサとで構成する。図示するように、コンデンサの一端側を抵抗器に接続し、同じく他端側をグラウンドNに接続する。なお、グラウンドNの電位は必ずしも0[V]とは限らない。
ピークホールド部24は、二次電圧Vs1に基づいて積分波形出力部23から出力される波形(すなわち積分波形)の波形値W1を受けて、波形値W1の最大値となるピーク値Wpを保持して出力する。ただし、操作信号制御部21(具体的には制御回路21b)からリセット信号を受けると、ピーク値Wpは所定値(例えば0)にリセットされる。
差分値検出部25は、ピークホールド部24から出力されるピーク値Wpと、二次電圧Vs2に基づいて積分波形出力部22から出力される波形の波形値W2との差分を示す差分値Δdを検出して出力する。本形態の差分値検出部25は、例えばオペアンプを用いた差動増幅回路等のような差動増幅器を用いる。具体的には、二次電圧Vs1に基づくピーク値Wpをプラス端子に入力し、二次電圧Vs2に基づく波形値W2をマイナス端子に入力する。増幅率を「1」と仮定した場合は、差分値Δd(=Wp−W2)を出力する。
操作信号制御部21は、ドライブ回路21aや制御回路21bなどを有する。この操作信号制御部21は、上述した差分値Δdに基づいて操作信号を変化させる制御を行う。操作信号は、スイッチング素子Q1〜Q4に対して個別に伝達してオン/オフさせる信号である。本形態の操作信号には、例えばパルス信号を用いる。制御回路21bは、電力変換装置20の全体の動作を司る。本発明を実現するにあたり、制御回路21bは差分値検出部25から伝達される差分値Δdがゼロになると、現在駆動しているスイッチング素子のオン/オフを切り替える(反転させる)ようにドライブ回路21aを駆動する指令信号Vc*を出力する。ドライブ回路21aは、制御回路21bから伝達される指令信号Vc*に基づいて、上述した操作信号(パルス信号)を生成してスイッチング素子Q1〜Q4に個別に出力(伝達)する。
上述のように構成された電力変換装置20は、トランスTr1から中間端子の電位を基準とする二相の二次電圧Vs1,Vs2を出力する。電源システム10では、トランスTr1の中間端子をグラウンドNに接続する。二相全波整流を行うため、二次電圧Vs1をダイオードD11で整流し、二次電圧Vs2をダイオードD12で整流し、双方の整流後に接続部Jで接続(直結)する。ダイオードD11,D12はそれぞれ「整流部」に相当する。接続部Jでは整流された直流電圧が合成されるに過ぎないので、コンデンサC11で平滑化し、フィルタ部12で交流成分(例えば高周波成分や脈動等)を除去(低減を含む。以下同じである。)する。フィルタ部12は、リアクトルL12(コイル)やコンデンサC12などを有する。こうして安定化された直流電圧は、出力機器30に出力される。出力機器30には、所定の直流電圧を必要とする任意の機器を適用できる。
電源システム10に含まれるトランスTr1に偏磁が生じる場合において、当該偏磁を抑止(低減を含む)ための制御例について、図2を参照しながら説明する。図2には、操作信号処理の第1手続き例をフローチャートで示す。この操作信号処理は、図1に示す制御回路21bが行う制御処理の一つであり、当該制御回路21bが作動する間において繰り返し実行される。なお、制御回路21bはスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチングを行うために指令信号Vc*を出力するので、現時点でどのスイッチング素子をオン/オフさせている状態や、スイッチング素子ごとの周期などを当然に把握している。
図2に示す操作信号処理では、差分値Δdを入力開始するタイミングに達していない場合には(ステップS10でNO)、操作信号処理をリターンする。一方、差分値Δdを入力開始するタイミングに達すると(ステップS10でYES)、差分値検出部25から差分値Δdの入力を開始する〔ステップS11〕。
ステップS11の「差分値Δdを入力するタイミング」は任意に設定可能であるが、差分値Δdがゼロ以外になるタイミングが望ましい。例えば、スイッチング素子Q1〜Q4のうちで特定のスイッチング素子にかかる一周期ごとなどが該当する。後述する図3〜図5のタイムチャートは、「特定のスイッチング素子」をスイッチング素子Q1とし、当該スイッチング素子Q1がオフからオンに立ち上がるタイミングとする例である。
もしステップS11で入力した差分値Δdがゼロでなければ(ステップS13でNO)、トランスTr1に偏磁が生じているので、操作信号処理をリターンする。具体的には、スイッチング素子Q1,Q4の関与に伴って出力される二次電圧Vs1に基づいて、トランスTr1に偏磁が生じている。
その後、ステップS11で入力した差分値Δdがゼロならば(ステップS13でYES)、上述した二次電圧Vs1,Vs2にかかる電圧時間積が等しくなる。よって、ピークホールド部24にリセット信号を伝達してリセットするとともに、所要のスイッチング素子に伝達する操作信号を変化させ〔ステップS14〕、差分値検出部25から差分値Δdの入力を停止したうえで〔ステップS15〕、操作信号処理をリターンする。
ステップS13で差分値Δdがゼロになるのは、スイッチング素子Q2,Q3の関与に伴って出力される二次電圧Vs2にかかる波形値W2と、二次電圧Vs1にかかるピーク値Wpとが等しくなったことを意味する。すなわち二次電圧Vs1,Vs2にかかる電圧時間積が等しくなったので、トランスTr1に生じていた偏磁が消失する。したがって、ステップS14ではスイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方のスイッチング素子をオンからオフに立ち下げるように操作信号を変化させる。
なお二点鎖線で図示するように、ステップS13で差分値Δdの判別を行う前に、タイムラグを考慮して操作信号を変化させるタイミングを決定するのが望ましい〔ステップS12〕。このタイムラグは、操作信号を出力してからスイッチング素子のオン/オフが変化するまでに要する期間である。すなわち、ステップS14ではタイムラグの期間だけ前倒して操作信号を出力する制御を行い、スイッチング素子を変化させるタイミングで差分値Δdがゼロとなるようにする。タイムラグの期間に対応する差分値Δdを「閾値α」とすると、ステップS13で括弧内に示すように差分値Δdが閾値α以下(0≦Δd≦α)であるか否かで分岐する。タイムラグの期間に対応する「閾値α」は、実験や実地試験を行うなどして電力変換装置20にかかる適切な数値を設定するのが望ましい。具体的には、制御回路21b内の記録媒体に予め記録したり、通信回線(有線/無線を問わない)を通じてアクセス可能に接続される外部装置(例えばECU等)から入力したりする。
図2に示す操作信号処理を実行し、スイッチング素子Q1〜Q4にそれぞれ伝達する操作信号を変化させて、トランスTr1の偏磁を未然に抑止するための操作信号制御例1〜4について、図3〜図7を参照しながら説明する。説明を簡単にするために、操作信号制御例1〜4ではスイッチング素子Q1の周期を基準とする制御を説明する。
(操作信号制御例1)
操作信号制御例1は、スイッチング素子Q1の周期を基準としてスイッチング素子Q2への操作信号を変化させる例であって、図3を参照しながら説明する。図3には、上から順番にスイッチング素子Q1,Q3,Q2,Q4、ピーク値Wp、波形値W2、スイッチング素子Q2(図7ではスイッチング素子Q3)への操作信号について各々の経時的変化を示す。各スイッチング素子のオン状態を「on」とし、オフ状態を「off」とする。波形値W1は二点鎖線でピーク値Wpに重畳して示す。理解を容易にするために、波形値W1,W2の各変化を直線的に示すが、積分波形出力部22,23の構成や時定数等によっては曲線的に変化する。後述する図4〜図7についても同様である。
図3に示すスイッチング素子Q1の一周期は、周期Cy1(時刻t11から時刻t16までの期間)、周期Cy2(時刻t16から時刻t1bまでの期間)、周期Cy3(時刻t1b以降の期間)などである。各周期内でトランスTr1に偏磁が発生しないように制御する。周期Cy1,Cy2,Cy3,…は、基本的には同一の時間長(期間)であるが、異なる時間長になっても制御可能である。一周期内でトランスTr1に偏磁が発生しないように制御するので、以下では周期Cy1を代表して説明する。
時刻t11から時刻t12までは、スイッチング素子Q1,Q4が同時にオンするため、トランスTr1の二次端子から二次電圧Vs1が出力される。二次電圧Vs1の発生に伴って、積分波形出力部23から出力される波形値W1が増加し、二点鎖線で示すように時刻t12以降は減少する。波形値W1の変化に伴って、ピーク値Wpは時刻t11から時刻t12まで増加し、時刻t12に最大値Wxとなる。ピークホールド部24は、時刻t12以降(制御回路21bによってリセットされる時刻t14まで)は最大値Wxを保持して出力する。
時刻t12の後、時刻t13にはスイッチング素子Q2,Q3が同時にオンするため、トランスTr1の二次端子から二次電圧Vs2が出力される。二次電圧Vs2の発生に伴って、積分波形出力部22から出力される波形値W2が増加する。
上述したように差分値検出部25には、ピーク値Wpがプラス端子に入力され、波形値W2がマイナス端子に入力される。よって差分値検出部25から出力される差分値Δdは、時刻t11からピーク値Wpの増加とともに増加し、時刻t12から最大値dxで一定になり、時刻t13から波形値W2の増加とともに減少することになる。
図2の操作信号処理では、スイッチング素子Q1がオフからオンに立ち上がる時刻t11には、差分値Δdを入力開始するタイミングに達したと判別する(ステップS10)。そのため、時刻t11から差分値Δdが増加し始め、時刻t12からは最大値Wxで一定になる。しかし、時刻t13から差分値Δdが減少し始め、時刻t14には差分値Δdがゼロになるので(ステップS13でYES)、スイッチング素子Q2の操作信号を変化(オンからオフ)させるとともに(ステップS14)、差分値検出部25から差分値Δdの入力を停止する(ステップS15)。
上記操作信号処理の制御によって、本来ではデューティ比Dr2aに従って時刻t15でオンからオフに立ち下げられる予定であったスイッチング素子Q2は、時刻t14で強制的にオンからオフに立ち下げられる(矢印Daを参照)。スイッチング素子Q2がオフになる時刻t14には、トランスTr1の二次端子に二次電圧Vs2が出力されず、波形値W2もゼロになる。波形値W2がゼロになった時点(あるいは次にスイッチング素子Q1がオフからオンに立ち上がる時刻t16まで)に、ピーク値Wpがゼロになるようにピークホールド部24をリセットする。こうして、スイッチング素子Q1,Q4が関与する二次電圧Vs1の電圧時間積と、スイッチング素子Q2,Q3が関与する二次電圧Vs2の電圧時間積とがほぼ同一になり、周期Cy1ではトランスTr1に偏磁が発生しない。仮に偏磁が発生したとしても、極めてわずかな偏磁量であるので、DC−DCコンバータとしての電源システム10に与える影響はほとんど無視できる。周期Cy2以降の各周期も同様に制御される。したがって、全ての周期においてトランスTr1には偏磁が発生せず、トランスTr1の偏磁を未然に抑止することができる。
なお、操作信号の変化を受けるスイッチング素子Q2は、時刻t14,t19,…にそれぞれ強制的にオンからオフに立ち下げられる。結果として、時刻t11以降の各周期ではデューティ比Dr2b(Dr2b<Dr2a)になる。言い換えれば、デューティ比の変更による制御とみることもできる。ただし、電源の受給開始時期が時刻t11である場合には、全周期ともデューティ比Dr2bで変化しない。
(操作信号制御例2)
操作信号制御例2は、図4を参照しながら説明する。この操作信号制御例2は、上述した操作信号制御例1と同様に、スイッチング素子Q1の周期を基準としてスイッチング素子Q3への操作信号を変化させる例である。操作信号を変化させる対象が異なるだけであるので、以下では操作信号制御例1と相違する点について説明する。よって、操作信号制御例1と同じ制御内容については図3と同一符号を付して説明を省略する。
操作信号制御例2が操作信号制御例1と相違するのは、図2の操作信号処理において操作信号を変化させる対象となるスイッチング素子である(ステップS14)。トランスTr1の二次端子に出力される二次電圧Vs2に関与するのは、スイッチング素子Q2,Q3である。すなわちスイッチング素子Q2,Q3の双方がオンになるときに限って、二次電圧Vs2が出力されるのである。操作信号制御例1ではスイッチング素子Q2の操作信号を変化させたのに対して、操作信号制御例2ではスイッチング素子Q3の操作信号を変化させても同様の作用効果が得られる。この点について、図4を参照しながら説明する。
操作信号制御例1と同様に、時刻t13からスイッチング素子Q2,Q3が同時にオンするため、トランスTr1の二次端子から二次電圧Vs2が出力され、さらに積分波形出力部22から出力される波形値W2が増加する。この増加に伴って差分値Δdが減少してゆくと、時刻t14には差分値Δdがゼロになる(図2のステップS13でYES)。このとき、スイッチング素子Q3の操作信号を変化(オンからオフ)させるとともに(図2のステップS14)、差分値検出部25から差分値Δdの入力を停止する(図2のステップS15)。
上記操作信号処理の制御によって、本来ではデューティ比Dr3aに従って時刻t20でオンからオフに立ち下げられる予定であったスイッチング素子Q3は、時刻t14で強制的にオンからオフに立ち下げられる(矢印Dbを参照)。スイッチング素子Q3がオフになる時刻t14には、トランスTr1の二次端子に二次電圧Vs2が出力されず、波形値W2もゼロになる。周期Cy2以降の各周期も同様に制御する。操作信号制御例1と同様に、全ての周期においてトランスTr1には偏磁が発生せず、トランスTr1の偏磁を未然に抑止することができる。
(操作信号制御例3)
操作信号制御例3は、図5を参照しながら説明する。この操作信号制御例3は、上述した操作信号制御例1と同様に、スイッチング素子Q1の周期を基準としてスイッチング素子Q2への操作信号を変化させる例である。ただし、操作信号を出力してからスイッチング素子のオン/オフが変化するまでに要するタイムラグを考慮して、スイッチング素子Q2への操作信号を変化させる点が操作信号制御例1と相違する。以下では、操作信号制御例1と相違する点について説明することにし、操作信号制御例1と同じ制御内容については図3と同一符号を付して説明を省略する。
操作信号制御例3が操作信号制御例1と相違するのは、図2の操作信号処理において、タイムラグを考慮して操作信号を変化させるタイミングを決定する点である(ステップS12)。当該タイミングの一例として、タイムラグの期間に対応する閾値αを用い、差分値Δdが閾値α以下になるか否かで分岐する(ステップS13の括弧内)。
操作信号制御例1のように、差分値Δdがゼロになったことを検知してから、スイッチング素子Q2に伝達する操作信号を変化させても、実際にスイッチング素子Q2がオンからオフに立ち下がるまでには少なからずタイムラグが生じる。そこで、操作信号制御例3ではタイムラグを考慮して早めに操作信号を変化させて、差分値Δdがゼロになる時期とスイッチング素子Q2がオンからオフに立ち下がる時期を一致させるように制御する。
操作信号制御例1と同様に、時刻t13からスイッチング素子Q2,Q3が同時にオンするため、トランスTr1の二次端子から二次電圧Vs2が出力され、さらに積分波形出力部22から出力される波形値W2が増加する。この増加に伴って差分値Δdが減少してゆくと、時刻t14には差分値Δdが閾値α以下になる(図2のステップS13でYES)。このとき、スイッチング素子Q2の操作信号を変化(オンからオフ)させるとともに(図2のステップS14)、差分値検出部25から差分値Δdの入力を停止する(図2のステップS15)。
上記操作信号処理の制御によって、操作信号制御部21(具体的には制御回路21b)からスイッチング素子Q2に伝達する操作信号は、本来では時刻t15でオンからオフに立ち下げられる予定であったが、タイムラグTLを考慮して時刻t32に強制的にオンからオフに立ち下げられる(矢印Dcを参照)。図示するように操作信号制御例1の時刻t14よりも早く操作信号を変化させる。当該操作信号を受けたスイッチング素子Q2は、時刻t14にオンからオフに立ち下がる(矢印Daを参照)。こうして、差分値Δdがゼロになる時期と、スイッチング素子Q2がオンからオフに立ち下がる時期がともに時刻t14で一致する。周期Cy2以降の各周期も同様に制御される。したがって、全ての周期においてトランスTr1には偏磁が発生せず、トランスTr1の偏磁を未然かつ確実に抑止することができる。
なお、スイッチング素子Q2をオフからオンに立ち上げる場合にも、タイムラグTLを考慮して操作信号を変化させる制御を行うのが望ましい。周期Cy1におけるスイッチング素子Q2への操作信号は、本来では時刻t31でオフからオンに立ち上げられる予定であったが、タイムラグTLを考慮して時刻t30にオフからオンに立ち上げる。周期Cy2以降の各周期も同様に制御する。このように操作信号を変化させることによって、スイッチング素子Q2は時刻t31,t34,t37,…にそれぞれオフからオンに立ち上がる。結果として、時刻t11以降の各周期ではデューティ比Dr2c(Dr2c<Dr2a)になる。言い換えれば、デューティ比の変更による制御とみることもできる。ただし、電源の受給開始時期が時刻t11である場合には、全周期ともデューティ比Dr2cで変化しない。
(操作信号制御例4)
操作信号制御例4は、図6および図7を参照しながら説明する。この操作信号制御例4は、上述した操作信号制御例2と同様に、スイッチング素子Q1の周期を基準としてスイッチング素子Q3への操作信号を変化させる例である。以下では、操作信号制御例2と相違する点について説明することにし、操作信号制御例2と同じ制御内容については図4と同一符号を付して説明を省略する。
スイッチング素子Q3に伝達する操作信号について、操作信号制御例2ではオンからオフに立ち下げるタイミングを変化させる。これに対して、操作信号制御例4ではオフからオンに立ち上げるタイミングを変化させる点で相違する。
図6にフローチャートで示す操作信号処理の第2手続き例は、図2に示す手続きに代えて実行される。図2と同じ処理については同一符号を付して説明を省略する。図6が図2と相違するステップは、ステップS20〜S22である。ステップS20では、前回の実行においてステップS11で入力した差分値Δdと、今回の実行においてステップS11で入力した差分値Δdとが異なるか否かで分岐する。
もし、前回と今回とで差分値Δdが異なれば(ステップS20でYES)、まだ差分値Δdが最大値Wxに達していないので、操作信号処理をリターンする。一方、前回と今回とで差分値Δdが同一値であれば(ステップS20でNO)、差分値Δdが最大値Wxに達したことを意味するので、最初に差分値Δdを入力開始してから現時点までの期間(以下では「変化期間Dw1」と呼ぶ。)を特定する〔ステップS21〕。
制御回路21bは、スイッチング素子Q2をオンからオフするタイミングは予め把握している。そのため、ステップS21で特定された変化期間に基づいてスイッチング素子Q3をオフからオンにするタイミングを求め、当該スイッチング素子Q3に伝達する操作信号を変化させる〔ステップS22〕。
上記操作信号処理の制御によれば、図7に示すように制御される。すなわち、スイッチング素子Q1がオフからオンに立ち上げられる時刻t11から差分値Δdが変化し始め、時刻t12以降にはピーク値Wpと同じ最大値Wxになるので(図6のステップS20でNO)、時刻t11から時刻t12までの期間が変化期間Dw1になる(図6のステップS21)。変化期間Dw1が特定されるので、スイッチング素子Q2がオンからオフに立ち下げる予定の時刻t15から、変化期間Dw1だけ遡った時刻t40を容易に算出できる。そして、時刻t40になるとスイッチング素子Q3がオフからオンに立ち上げるように操作信号を変化させる(図6のステップS22)。
このように操作信号を変化させる結果、スイッチング素子Q3は本来の時刻t13から時刻t40に遅れさせて、オフからオンに立ち上げられる(矢印Ddを参照)。よってスイッチング素子Q2,Q3が同時にオンするのは時刻t40から時刻t15までの期間になり、当該期間の長さは変化期間Dw1と一致する。一方、波形値W2は時刻t40から増え始め、時刻t15にはピーク値Wpと同じ最大値Wxに達する。こうして、スイッチング素子Q1,Q4が関与する二次電圧Vs1の電圧時間積と、スイッチング素子Q2,Q3が関与する二次電圧Vs2の電圧時間積とがほぼ同一になり、周期Cy1ではトランスTr1に偏磁が発生しない。周期Cy2以降の各周期も同様に制御される。したがって、全ての周期においてトランスTr1には偏磁が発生せず、トランスTr1の偏磁を未然かつ確実に抑止することができる。
なお、操作信号の変化を受けるスイッチング素子Q3は、時刻t13,t18,…にはオン/オフが変化せず、時刻t40,t42,…にそれぞれ強制的にオフからオンに立ち上げられる。結果として、時刻t11までの周期はデューティ比Dr3aであったが、時刻t11以降の各周期ではデューティ比Dr3c(Dr3c<Dr3a)になる。言い換えれば、デューティ比の変更による制御とみることもできる。ただし、電力源Edcから電力供給の開始時期が時刻t11である場合には、全周期ともデューティ比Dr3cで変化しない。
また操作信号制御例3(図5)に示すように、タイムラグTLを考慮して、スイッチング素子Q3に伝達する操作信号を早めに変化させるように制御することもできる。この制御によれば、差分値Δdがゼロになる時期とスイッチング素子Q2がオンからオフに立ち下がる時期を一致させることができる。スイッチング素子Q1,Q4が関与する二次電圧Vs1の電圧時間積と、スイッチング素子Q2,Q3が関与する二次電圧Vs2の電圧時間積とを同一にすることができる。
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1に対応し、電力変換装置20において、トランスTr1の二次端子から出力される交流電圧(交流電力)を整流するダイオードD21,D22(二以上の整流部)と、ダイオードD21,D22によって整流される直流電圧(直流電力)を個別に積分して得られる波形を出力する積分波形出力部22,23と、積分波形出力部22,23から出力される二以上の波形(積分波形)のうちで一の波形(波形値W1)にかかるピーク値Wpを保持するピークホールド部24と、積分波形出力部22,23から出力される二以上の波形のうちで一の波形を除く波形の波形値W2とピークホールド部24によって保持されるピーク値Wpとの差分値Δdを検出する差分値検出部25と、差分値検出部25によって検出される差分値Δdに基づいてスイッチング素子(すなわちスイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方)を操作する操作信号を制御する操作信号制御部21とを有する構成とした(図1〜図7を参照)。この構成によれば、差分値Δd(=Wp−W2)に基づいて、スイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方に伝達する操作信号を変化させる制御を行うので、トランスTr1の偏磁を未然に抑止することができる。個々のダイオードD21,D22を正負の直流電圧に対応させることで、正負にかかわらずトランスTr1の偏磁を未然に抑止できる。電流の流れる経路に回路素子を追加せずに、トランスTr1の二次端子から出力される交流電圧の正負に対応したダイオードD21,D22を備えるだけでよいので、装置全体のコストを抑えることができる。
請求項2に対応し、操作信号制御部21は、差分値Δdに基づいて、スイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方(一の波形を除く波形にかかるスイッチング素子)のオン/オフを操作する構成とした(図2〜図7を参照)。この構成によれば、二次電圧Vs1の出力に関与するスイッチング素子Q1,Q4とは別個のスイッチング素子、すなわち二次電圧Vs2の出力に関与するスイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方を操作する操作信号を変化させる。波形値W2がピーク値Wpと等しくなるように制御すると、二次電圧Vs1の電圧時間積と二次電圧Vs2の電圧時間積とがほぼ同一になる。したがって、トランスTr1の偏磁を未然かつ確実に抑止することができる。
請求項3に対応し、操作信号制御部21は、差分値Δdがゼロ(数値の「0」)に達すると、スイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方(一の波形を除く波形にかかるスイッチング素子)のオン/オフを操作する構成とした(図2,図3を参照)。この構成によれば、差分値Δdがゼロ、すなわち波形値W2がピーク値Wpと等しくなるように制御するので、二次電圧Vs1の電圧時間積と二次電圧Vs2の電圧時間積とが同一になる。したがって、トランスTr1の偏磁を未然かつ確実に抑止することができる。
請求項4に対応し、操作信号制御部21は、操作信号を出力してからスイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方のオン/オフが変化するまでのタイムラグTLを考慮して、操作信号を出力するタイミングをタイムラグTLの期間だけ早めて出力する構成とした(図2のステップS12,S14や図3を参照)。この構成によれば、操作信号制御部21はスイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方を操作する操作信号を上記タイムラグTLの期間だけ早めて出力する。こうしてタイムラグTLを見込んで操作信号をスイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方に伝達するので、トランスTr1に生じ得る偏磁をより確実に抑止することができる。
請求項5に対応し、電力変換装置20を有する電源システム10は、ダイオードD11,D12(整流部)の出力端子を電気的に接続する接続部Jと、接続部Jにおける直流電圧の交流成分を低減するフィルタ部12とを有する構成とした(図1を参照)。この構成によれば、コストを抑えながらも正負の直流成分に対応可能であり、電流の流れる経路に回路素子を追加することなくトランスTr1の偏磁を抑止することができる。
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、上述した実施の形態1と同様に、電圧制御による電力に基づいてトランスの偏磁を未然に抑止する例であって、図8を参照しながら説明する。電力変換装置20を含む電源システム10の構成は、一部の構成が実施の形態1と同様である。そのため実施の形態2では、実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略し、上述した実施の形態1と相違する内容を説明する。
実施の形態2は、実施の形態1のトランスTr1(図1を参照)に代えて、トランスTr2を用いる点が大きく異なる。トランスTr1は、一次端子とともに、二次端子として少なくとも三端子を有するタイプを用いた。これに対して、トランスTr2は一次端子と二次端子が同一のタイプであり、トランスTr1のような中間端子を有しない。なお、トランスTr1と同様に中間端子を有するタイプのトランスを用いても構わないが、中間端子を使用しないで構成する。
トランスTr2を用いるのに伴って、整流部Db1,Db2、スイッチSW1,SW2などを新たに加える。整流部Db1,Db2、入力側をトランスTr2の二次端子に並列接続される。整流部Db1は「接続部J」の機能をも担い、電源システム10に備えられる。整流部Db1の一方側端子をコンデンサC11およびフィルタ部12に接続し、同じく他方側端子をグラウンドNに接続する。整流部Db2は電力変換装置20に備えられる。整流部Db2の一方側端子を積分波形出力部22,23に接続し、同じく他方側端子をグラウンドNに接続する。これらの整流部Db1,Db2はダイオード等で構成され、トランスTr2の二次端子に出力される二次電圧Vs3(交流電力)を直流電圧(直流電力)に整流する機能を担い、半波整流回路であると全波整流回路であるとを問わない。
スイッチSW1,SW2は、いずれも制御回路21bによって個別にオン/オフが制御される。スイッチSW1は、積分波形出力部23の出力(すなわち二次電圧Vs1に相当する二次電圧Vs3の波形値W1)をピークホールド部24に伝達するか否かを切り替える。スイッチSW2は、積分波形出力部22の出力(すなわち二次電圧Vs2に相当する二次電圧Vs3の波形値W2)を差分値検出部25に伝達するか否かを切り替える。
例えば、スイッチSW1は図3〜図7に示すスイッチング素子Q1と同様のタイミングでオン/オフが制御され、スイッチSW2はスイッチSW1とは逆のパターンでオン/オフが制御される。すなわち、実施の形態1における二次電圧Vs1に相当する二次電圧Vs3にかかる波形値W1を検出するときはスイッチSW1がオンになる。同じく実施の形態1における二次電圧Vs2に相当する二次電圧Vs3にかかる波形値W2を検出するときはスイッチSW2がオンになる。こうして制御回路21bがスイッチSW1,SW2のオン/オフを制御することによって、実施の形態1で説明した操作信号制御例1〜4(図3〜図7を参照)を実現することができる。
上述した実施の形態2によれば、実施の形態1で説明した操作信号制御例1〜4(図3〜図7を参照)を実現できるので、請求項1〜5に各々対応する実施の形態1と同様の作用効果が得られる。すなわち、トランスTr2の偏磁を未然に抑止することができる。
また請求項6にも対応し、電力変換装置20を有する電源システム10は、接続部Jの機能を含む整流部Db1と、整流部Db1から出力される直流電圧(直流電力)の交流成分を低減するフィルタ部12とを有する構成とした(図8を参照)。この構成によれば、コストを抑えながらも正負の直流成分に対応可能であり、電流の流れる経路に回路素子を追加せずにトランスTr2の偏磁を未然に抑止することができる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1,2に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、以下に示す各形態を実現してもよい。
上述した実施の形態1,2では、二次電圧Vs1(あるいは二次電圧Vs1に相当する二次電圧Vs3)に基づいて積分波形出力部23から出力される波形の波形値W1を受けて、波形値W1の最大値となるピーク値Wpを保持して出力するピークホールド部24を備えた(図1,図8を参照)。ピークホールド部24に代えて、二次電圧Vs2(あるいは二次電圧Vs2に相当する二次電圧Vs3)に基づいて積分波形出力部22から出力される波形の波形値W2を受けて、波形値W2の最大値となるピーク値Wpを保持して出力するピークホールド部26を備えてもよい(図1,図8で示す二点鎖線を参照)。この場合、ピーク値Wpの出力を差分値検出部25のプラス端子に入力し、積分波形出力部23から出力される波形値W1を差分値検出部25のマイナス端子に入力すると、図3〜図7と同様の経時的変化が得られる。ただし、図3〜図7に示す波形値W1と波形値W2とは逆に読み替える。すなわち、波形値W1と波形値W2とのいずれか一方についてピーク値Wpを差分値検出部25のプラス端子に入力し、他方を差分値検出部25のマイナス端子に入力する構成であればよい。また、差分値検出部25のプラス端子とマイナス端子に入力する波形(波形値)を逆にしてもよい。この構成では、図3〜図7に示す波形値W1,W2やピーク値Wpがマイナス値(−dx)になるだけである。いずれの構成にせよ、差分値Δdに基づいて、対象となるスイッチング素子に伝達する操作信号を変化させる制御を行うので、トランスTr1,Tr2の偏磁を未然に抑止することができる。
上述した実施の形態1,2では、電力変換装置20のうち、直流電圧(直流電力)を交流電圧(交流電力)に変換する電力変換部には、スイッチング素子Q1〜Q4を用いてフルブリッジで構成した(図1,図8を参照)。この形態に代えて、スイッチング素子の数を少なくする電力変換部を構成してもよい。例えば、図9(A)に示すハーフブリッジ方式で構成してもよく、図9(B)に示すプッシュプル方式で構成してもよい。図9(A)に示すハーフブリッジ構成では、スイッチング素子Q2に代えてコンデンサC2を用い、スイッチング素子Q4に代えてコンデンサC4を用いる。図示しないが、シングルフォワード方式やフライバック方式などを複数(例えば2つや4つ等)用い、トランスTr1,Tr2の一次端子側に接続する構成としてもよい。トランスTr1,Tr2の一次端子側に接続する電力変換部の構成が相違するに過ぎないので、上述した実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、スイッチング素子Q1の操作信号を基準とし、スイッチング素子Q2,Q3の各操作信号を変化させる構成とした(操作信号制御例1〜4;図3〜図7を参照)。この形態に代えて、スイッチング素子Q4の操作信号を基準とし、スイッチング素子Q2,Q3の各操作信号を変化させる構成としてもよい。この構成では、例えば図3〜図7において時刻t12から時刻t17まで、時刻t17から時刻t1cまで、…が一周期になる。実施の形態1,2と同様に、スイッチング素子Q2,Q3のうちで一方の操作信号を基準とし、スイッチング素子Q1,Q4のうちで一方または双方の操作信号を変化させる構成としてもよい。基準となる操作信号が相違するに過ぎないので、上述した実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、積分波形出力部22,23として抵抗器とコンデンサとからなるRC回路を適用した(図1,図8を参照)。この形態に代えて、例えばオペアンプを用いた積分回路などを用いてもよい。積分回路を用いても経時的に積算されて積分波形となる波形値W1,W2を出力することができるので、上述した実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、フィルタ部12(ローパスフィルタ)として、リアクトルL12とコンデンサC12とからなるLC回路を適用した(図1,図8を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、直流電圧(直流電力)の高周波成分を除去可能な他の構成からなるフィルタ部を適用してもよい。例えば、抵抗器とコンデンサとからなるRC回路や、オペアンプを用いたアクティブローパスフィルタなどが該当する。これらのようなアナログフィルタに限らず、ディジタルフィルタを用いてもよい。いずれのフィルタ部にせよ直流電圧(直流電力)の高周波成分(交流成分)を除去できるので、上述した実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2などでは、スイッチング素子Q1〜Q4にNチャネルMOSFETを用いる構成とした(図1,図8,図9を参照)。この形態に代えて、他のスイッチング素子を用いる構成としてもよい。他のスイッチング素子には、例えばFET(具体的にはPチャネルMOSFET,JFET,MESFET等)、IGBT、GTO、パワートランジスタなどが該当する。いずれのスイッチング素子にせよ、直流電圧(直流電力)を交流電圧(交流電力)に変換する電力変換部を構成できるので、上述した実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、電力源Edcから供給される直流電圧(直流電力)に基づいて、二次電圧Vs1,Vs2や二次電圧Vs3の各積分波形を求め、一周期内に差分値Δdが0になるとスイッチング素子Q2,Q3のうちで一方または双方を操作する操作信号を変化させる構成とした(図1〜図8を参照)。すなわち、電圧制御による電力について適用した。この形態に代えて、電流制御による電力に適用することもできる。この場合における電力変換装置20は、電力源Edcから直流電流(直流電力)が供給され、交流電流(交流電力)に変換して出力する。定電圧源にかかる回路構成を定電流源にかかる回路構成に変換する方法は周知であるので、図1や図8の回路構成も同様に変換できる。ただし、トランスTr1,Tr2によって位相遅れが発生するので、当該位相遅れを考慮してスイッチング素子Q1〜Q4を制御するのが望ましい。よって電流制御による電力についても、上述した実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、タイムラグTLの期間に対応する差分値Δdを閾値αとし、当該閾値αは変化させない構成とした(図2のステップS12,S13や図5を参照)。この形態に代えて、閾値αの数値を変化させる構成としてもよい。例えば、初期化時(例えば電源供給開始時やリセット時など)では閾値αに適切な数値を設定しておき、ステップS12を実行するごとに増減値Δαだけ増減し(すなわちα=α±Δαを行う)、対象となるスイッチング素子の操作信号を変化させるタイミングで差分値Δdがゼロとなるように制御する構成などが該当する。外部環境(特に外来ノイズなど)や経年劣化等の影響を受けてタイムラグTLの期間が伸縮しても、差分値Δdがゼロとなるタイミングで対象となるスイッチング素子の操作信号をきめ細かく変化させることができる。よって、上述した実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、スイッチング素子Q2に対して、タイムラグTLを考慮して操作信号を変化させる制御を行う構成とした(図2のステップS12,S13や図5を参照)。この形態に加えて、スイッチング素子Q1,Q3,Q4のうちで一以上のスイッチング素子についても、スイッチング素子Q2の場合と同様にタイムラグを考慮して操作信号を変化させる制御を行う構成としてもよい。さらにはスイッチング素子Q1〜Q4の個体差を考慮して、個々のスイッチング素子ごとにタイムラグを考慮して操作信号を変化させる制御を行う構成とするのが望ましい。こうすればタイムラグによる制御遅れを無くすことができ、トランスTr1,Tr2の偏磁を未然かつ確実に抑止できる。
上述した実施の形態1,2では、タイムラグTLを「操作信号を出力してからスイッチング素子Q1〜Q4のオン/オフが変化するまでの期間」として構成した(図2のステップS12,S13や図5を参照)。この形態に代えて、さらに「差分値Δdを検出してから操作信号を出力するまでの期間」をも含める構成とするのが望ましい。わずかな期間ではあるが、対象となるスイッチング素子の操作信号を変化させるタイミングで差分値Δdがゼロとなるように、より精密に制御できる。よってタイムラグによる制御遅れをさらに無くすことができ、トランスTr1,Tr2の偏磁を未然かつ確実に抑止できる。