図1は、第一の実施の形態に係る欠陥検査装置の構成を示す。光源1、照明光学系100、検査対象基板W、対物レンズ3a、空間フィルタ4a、結像レンズ5a、偏光検出部200a、信号処理部300、全体制御部6、表示部7、演算部8、記憶部9、X-Y-Z-θステージドライバ10、X-Y-Z-θステージ11、光源ドライバ12から構成されている。光源1、照明光学系100、対物レンズ3a、空間フィルタ4a、結像レンズ5a、偏光検出部200aを合せて光学系1000とする。
動作の概略を説明する。光源1より発した光は照明光学系100により被検査対象基板Wに照射される。検査対象基板Wから発した反射散乱光は対物レンズ3aで集光された後、空間フィルタ4a、結像レンズ5aを介して検出系光路14を通り、偏光検出部200aにて電気信号に変換される。得られた電気信号に基づき信号処理部300において検査対象基板上の欠陥が判定される。判定された結果は全体制御部6を介し、記憶部9に記憶され、表示部7に表示される。
空間フィルタ4aは、対物レンズ3aの出射側の瞳位置又はその共役な位置に配置されており、被検査対象基板W上に形成された微小なピッチの繰り返しパターンを照明することにより発生する回折光パターンを遮光するためのものであって、例えば特開2000−105203号公報に記載されているような、ピッチが可変な複数の直線状の遮光パターンを備えているものである。
検査対象基板Wを高照度で照明するためには、光源1は、レーザ光源が適している。微小な欠陥の散乱効率を上げるためには、深紫外光レーザ(DUV(Deep Ultraviolet)光)・真空紫外光レーザ・YAGレーザ第3あるいは第4高調波・水銀ランプ・キセノンランプなどの短波長の光源が適している。これらを満たす光源にはまた、光学系を構成する部品コストおよびメンテナンスコストを抑えるにはYAGレーザ第2高調波・ハロゲンランプ・水銀ランプ・キセノンランプなどの可視光波長の光源が適している。また、特定の偏光状態の照明光を高効率に生成するには、偏光度の高いレーザ光源が適している。
図2(a)は照明光学系100の構成を示す。光源1から発射した光はアッテネータ101により、照明光の強度が制御される。偏光板102が必要に応じて設置され、光源より発する照明光の偏光が直線偏光に揃えられる。位相子103、104により、照明光の偏光状態が任意に設定される。位相子103、104は、光軸の周りに回転可能なλ/2板あるいはλ/4板あるいは位相量を制御可能な位相子で構成される。位相子103、104を透過した光はビームエキスパンダ105によって、照明光のビーム径が拡大される。ビームエキスパンダ105によって、ビーム径が拡大された照明光はミラー群M1〜M9およびシリンドリカルレンズ109、110、111によって検査対象基板W上に導かれる。図2(a)においては、ミラーM4とシリンドリカルレンズ109、ミラーM7とが重なり合う状態となるため、シリンドリカルレンズ109とミラーM7の表示を省略した。ミラーM5とシリンドリカルレンズ109、ミラーM8との関係、及びミラーM6とシリンドリカルレンズ110、ミラーM9との関係も同様になるので、シリンドリカルレンズ109、110及びミラーM8、M9の表示を省略した。
以下、光路106をとった場合を例にとって説明する。ミラーM1およびM2を光路より退避することで、照明光はミラーM3、ミラーM4により反射され、光路106をとる。図2(b)はミラーM4から検査対象基板Wまでの構成を示す側面図である。シリンドリカルレンズ109により検査対象基板W上で楕円状又は線状の領域F1に集光される。
ミラーM7を矢印の方向へ平行移動及び回転させることにより、検査対象基板W表面と成す角(照明光の検査対象基板への入射角:仰角)を変更可能である。
光路107に関しても同様に、ミラーM5から検査対象基板Wまでの間にミラーM8およびシリンドリカルレンズ110が、光路108に関しても同様に、ミラーM6から検査対象基板Wまでの間にミラーM9およびシリンドリカルレンズ111が設置される。シリンドリカルレンズ110、111は、各々を通過する照明光が検査対象基板W上で集光領域の中心位置および長手方向がシリンドリカルレンズ109により照射される領域F1と同じになるよう、あおりおよび光軸周りの回転が加えられている。上記構成により、互いに異なる複数の方位および仰角から選択的に照明光を照射し、かつ検査対象基板W上の同一位置を照射することが可能となる。また、ミラーM1および/またはM2をハーフミラーで構成することにより、検査対象基板W上の領域F1を複数の方位及び仰角方向から同時に照明することもできる。
照明光学系100の光路中に、照明光の光学条件を高速に変化させる手段を設け、後述する偏光検出部の受光器の蓄積時間より短い時間の間に照明光の光学条件を変化させ、受光器において変化した照明光学条件による信号を蓄積することで、検出可能な欠陥種の拡大や検査S/Nの向上を図ることが可能である。照明光の光学条件を高速に変化させる手段としては、特開2000−193443に記載のある瞳上で光束位置を走査する手段や、特開2003−177102に記載のある拡散板を回転させる手段などが挙げられる。
対物レンズ3aおよび結像レンズ5aにより、検査対象基板W表面の照明領域F1の拡大像が形成される。検査対象基板W上に形成された周期的パターンによる回折光が対物レンズ3aの瞳共役位置に集光されるため、これを空間フィルタ4aにより遮光することにより、検査対象基板W上に形成された周期的パターンの像が除去される。
偏光検出部200aについて、図3から図5を用いて説明する。
図3(a)は偏光検出部200aの振幅分割法により実現する構成として互いに異なる2種類の偏光成分を検出する偏光検出部200a'の構成を示す。偏光検出部200a'は、無偏光ビームスプリッタ(ハーフミラー)201、偏光板あるいは位相板の組み合わせで構成されて透過する光の偏光状態を調整可能な偏光選択手段210,211、および受光器220,221とによって構成される。各々の受光器220、221は対物レンズ3aおよび結像レンズ5aによって拡大結像された検査対象基板W表面の像を検出するよう設置される。対物レンズ3aおよび結像レンズ5aによる検査対象基板W表面の像に対する像面共役位置を像面230として一点鎖線で示した(受光器221の前面の一転鎖線も像面共役位置を表わす)。受光器220、221として、エリアセンサ、リニアセンサ、あるいはTDI(Time Delay Integration)センサを用いることで、各々の偏光成分に対応する画像が得られる。
エリアセンサ、リニアセンサ、あるいはTDIセンサの方式として、CCD方式あるいはCMOS方式など時間積分型の受光器を用い、照明光学系100において受光器220,221の積分時間より短い時間内に高速に光学条件を変化することで、複数の光学条件の照明光による散乱光を積分して一括に検出することが可能である。
また、受光器220、221として光電子増倍管を用いた場合には、高感度検出が実現される。ここでは受光器220によって検査対象基板W上の主要な配線パターンに平行な方位の直線偏光成分を、受光器221によって検査対象基板W上の主要な配線パターンに垂直な方位の直線偏光成分を検出する場合を例にとって説明する。
無偏光ビームスプリッタ201を透過した光成分のうち、検査対象基板W上の主要な配線パターンに平行な方位の直線偏光成分を透過する偏光板によって構成された偏光選択手段210を透過した光成分は、受光器220によって検出される。一方、無偏光ビームスプリッタ201によって反射した光成分のうち、検査対象基板W上の主要な配線パターンに垂直な方位の直線偏光成分を透過する偏光板によって構成された偏光選択手段211を透過した光成分は、受光器221によって検出される。
同等の機能を実現する別の構成例として、無偏光ビームスプリッタ201の代わりに、検査対象基板W上の主要な配線パターンに平行な方位の直線偏光成分を透過する偏光ビームスプリッタを配置し、偏光選択手段211として検査対象基板W上の主要な配線パターンに垂直な方位の直線偏光成分を透過する偏光板を設置することも可能である。前者は検出する偏光の方位を変更する場合に偏光選択手段210、211の変更だけで対応可能であるというメリットがある。後者は、無偏光ビームスプリッタ201に残留する偏光特性を考慮する必要がなく、前者より精度の高い偏光測定が可能であるというメリットがある。なお、上記のように互いに直交する直線偏光成分を検出することで、得られた測定値に基づく演算により、偏光成分によらない光の全強度、成分の検査対象基板W上の主要な配線パターンに平行な方位の直線偏光度、(楕円)偏光の長軸方位角などの、偏光に関する物理量を算出ことができる。
図3(b)は偏光検出部200aの振幅分割法により実現する構成として互いに異なる4種類の偏光成分を検出する偏光検出部200a''の構成を示す。偏光検出部200a''は、無偏光ビームスプリッタ202〜204、偏光選択手段212〜215、および受光器222〜225によって構成される。検出系光路に沿い偏光検出部200a''に入射した光は、無偏光ビームスプリッタ202〜204により分岐され、各々が別々の受光器222〜225に入射する構成となっている。偏光選択手段212〜215は、各々が偏光板あるいは位相板の組み合わせで構成されており、透過する光の偏光状態を各々独立に調整できるよう設定される。
各々の受光器222〜225は対物レンズ3aおよび結像レンズ5aによって拡大結像された検査対象基板W表面の像を検出するよう設置される。図3(a)の場合と同様に、各受光器222〜225の前面の一転鎖線は、対物レンズ3aおよび結像レンズ5aによる検査対象基板W表面の像に対する像面共役位置を示す。受光器222〜225として、エリアセンサ、リニアセンサ、あるいはTDI(Time Delay Integration)センサを用いることで、各々の偏光成分に対応する画像が得られる。
エリアセンサ、リニアセンサ、あるいはTDIセンサの方式として、CCD方式あるいはCMOS方式など時間積分型の受光器を用い、照明光学系100において受光器220,221の積分時間より短い時間内に高速に光学条件を変化することで、複数の光学条件の照明光による散乱光を積分して一括に検出することが可能である。
また、受光器220、221として光電子増倍管を用いた場合には、高感度検出が実現される。
ここでは受光器222によって検出系光路14の周りの所定方位(αとする)の直線偏光成分を、受光器223によって方位α+90度の直線偏光成分を、受光器224によって方位α+45度の方位の直線偏光成分を、受光器225によって左回り円偏光成分を検出する場合を例にとって説明する。
無偏光ビームスプリッタ202を透過した光成分は、無偏光ビームスプリッタ203によってさらに分岐される。無偏光ビームスプリッタ203により反射された光成分は、所定方位αの直線偏光成分を透過する偏光板により構成された偏光選択手段212を透過し、受光器222により検出される。無偏光ビームスプリッタ203を透過した光成分は、方位α+90度の直線偏光成分を透過する偏光板により構成された偏光選択手段213を透過し、受光器223により検出される。無偏光ビームスプリッタ202により反射された光成分は、無偏光ビームスプリッタ204によってさらに分岐される。無偏光ビームスプリッタ204を透過した光成分は、方位α+45度の直線偏光成分を透過する偏光板により構成された偏光選択手段214を透過し、受光器224により検出される。無偏光ビームスプリッタ204により反射された光成分は、方位0度に設定したλ/4板と方位α+45度の直線偏光成分を透過する偏光板により構成された偏光選択手段215を透過し、受光器225により検出される。
受光器222、223、224、225によって検出された光成分の強度を各々I1、I2、I3、I4とすると、以下の式によって、偏光検出部200aに入射した光成分の偏光状態を表すストークスパラメータS0〜S3を求めることができ、偏光状態を完全に決定することが可能である。また、ストークスパラメータS0〜S3に基づき、前記の偏光に関する物理量に加えてさらに、偏光度、楕円率などを算出することができる。
S0=I1+I2
S1=I1−I2
S2=2*I3−(I1+I2)
S3=2*I4−(I1+I2)
互いに異なる3種類の偏光成分を検出する構成は、図3(a)(b)より容易に類推可能である。互いに異なる3種類の偏光成分として、検出系光路14の周りの所定方位αの直線偏光成分、方位α+45度の方位の直線偏光成分、および左回り円偏光成分を検出し、さらに偏光検出部200aに入射した光成分が完全偏光であると仮定することで、偏光検出部200aに入射した光成分の偏光状態を決定することが可能である。
図4、図5は図3に示した構成と異なる偏光検出部200aの構成例を示す。
図4(a)は複屈折ウェッジを用いた偏光検出部200a'''の構成を示す。偏光検出部200a'''は、周波数変調画像取得部250とフーリエ解析部255により構成される。図4(b)は周波数変調画像取得部250の構成を示す。周波数変調画像取得部250は、検出光軸14周りの所定の方位(0度方位とする)を進相軸、90度方位を遅相軸とし、位相量が方位90度方向に線形に変化するプリズム素子251と、45度方位を進相軸、135度方位を遅相軸とし、位相量が方位0度方向に線形に変化するプリズム素子252と、0度方位の直線偏光成分を透過する偏光板253と、イメージセンサ254とで構成される。イメージセンサ254は、対物レンズ3aおよび結像レンズ5aによってプリズム素子251、252および偏光板253を透過し拡大結像された像を検出するよう設置される。上記構成により、偏光成分ごとに異なる周波数で空間的に変調された画像信号がイメージセンサ254より出力される。出力された画像信号は周波数解析部255においてFFT処理し周波数解析を行うことで、画像上の各位置ごとに偏光状態に対応する複数のパラメータが得られる。
図5(a)は微小偏光素子アレイを用いた偏光検出部200a''''の構成を示す。偏光検出部200a''''はイメージセンサ261とその受光面に設置された微小偏光素子アレイ262とで構成される。微小偏光素子アレイ262の構造を図5(b)に示す。画素毎に異なる偏光成分を透過する構成になっている。図5(b)の例では、イメージセンサ261画素配列の横方向に平行な直線偏光(方位0度)を透過する画素263、縦方向に平行な直線偏光(方位0度)を透過する画素264、45度方位の直線偏光を透過する画素265、0度、0度方位に90度の位相遅れを与えた後45度方位の直線偏光を透過する画素266の4つの画素を1単位267として1つの偏光状態が得られる。
このような微小偏光素子アレイ262の作成方法として、撮像素子または基板の上にミクロンオーダからサブミクロンオーダ厚の薄膜状の偏光板を載せ、画素の大きさに合せて不要な部分をエッチングで除去し、さらに主軸方位の異なる薄膜偏光板あるいは波長板を載せて同様のパターニングを繰り返す方法がある。別の方法としては、使用する光の波長より短い周期を持つ微細格子をパターニングによって作成することで、画素毎に光学異方性を持たせる方法がある。また、対物レンズ3aおよび結像レンズ5aの結像性能で決まる光学解像度(錯乱円の径)を、偏光状態を決める1単位となる4画素を合せた幅と同等以上とすることで、同4画素の間での像面強度変化の影響を低減し高精度な偏光計測を行うことが可能である。
X-Y-Z-θステージ10をX方向およびY方向に走査することで、対物レンズ3a、結像レンズ5a、および偏光検出部200a''''によって定まる検査対象基板W上の視野を検査対象基板Wに対し相対的に走査する。X方向走査およびY方向走査を順次繰返し、検査対象基板W全面あるいはその一部から偏光成分検出信号を得ることができる。
信号処理部300の構成を図6に示す。図6(a)は、検査対象基板Wにて設計上同一パターンが形成された隣接チップ間における、偏光検出部200a'(図3(a))より出力された信号の差分を基に欠陥を判定する方式を実現する信号処理部300′の構成を示す。
図6(a)に示す信号処理部300′は、遅延メモリ301、302、差分演算部303、304、欠陥判定部305、および欠陥判定基準算出部306により構成され、偏光検出部200a'より出力された信号Ik(図6(a)では2つの偏光成分に対応する信号I1、I2)の入力に対し、欠陥情報307を出力する。次に動作を説明する。信号I1は差分演算部303と遅延メモリ301に入力される。遅延メモリ301は信号を蓄積し1チップの処理時間分を遅らせて出力する。差分演算部303には、信号I1と、遅延メモリ301より出力された隣接チップの対応位置の信号が入力され、それらの差分ΔI1を出力する。得られた信号I1の隣接チップとの差分信号は欠陥判定部305および欠陥判定基準算出部306に入力される。信号I1に対応する偏光成分と異なる偏光成分に対応する信号I2についても同様に隣接チップとの差分がとられ(ΔI2)、欠陥判定部305および欠陥判定基準算出部306に入力される。欠陥判定基準算出部306は隣接チップ間差分信号ΔI1、ΔI2に基づいて欠陥判定基準308を出力する。欠陥判定部305は隣接チップ間差分信号ΔI1、ΔI2の入力に対して欠陥判定基準308に基づいて欠陥判定を行い、欠陥情報307を出力する。
図6(b)は、検査対象基板W上の所定の領域内に対応し、偏光検出部200a'(図3(a))より出力される一連の信号(画像信号)を基に欠陥を判定する方式を実現する信号処理部300''の構成を示す。偏光検出部200a'より出力された画像信号I1は、所定の偏光成分を、検査対象基板W上の所定の領域内の位置ごとに検出した画像信号に相当する。同じく偏光検出部200a'より出力された画像信号I2は、画像信号I1と異なる偏光成分を、検査対象基板W上の所定の領域内の位置ごとに検出した画像信号に相当する。画像信号I1およびI2は欠陥判定基準算出部311および欠陥判定部312に入力される。欠陥判定基準算出部311は画像信号I1およびI2に基づいて欠陥判定基準314を出力する。欠陥判定部312は画像信号I1、I2、および欠陥判定基準314に基づいて欠陥判定を行い、欠陥情報313を出力する欠陥判定基準算出部306又は311にメモリを備え、先に検出した複数のチップにおける対応位置の偏光成分検出信号に基づいて欠陥判定基準308又は314を算出することもできる。信号処理部300'または300''から出力される欠陥情報307又は313は、欠陥の位置、欠陥部差画像、偏光成分ごとの欠陥部差画像、欠陥部差画像から算出した欠陥特徴量、欠陥分類結果などを含む。なお、欠陥分類は、欠陥判定部305又は312において実施することも、欠陥情報307又は313に基づいて演算部8において実施することも可能である。
また、ここでは信号処理部300'または300''の構成として図3(a)で説明した偏光検出部200a'から出力される二つの偏光成分I1、I2を処理する場合を例にとって説明したが、図3(b)で説明した偏光検出部200a''、図4で説明した偏光検出部200a'''及び図5で説明した偏光検出部200a''''のそれぞれから出力される4つの偏光成分を検出する場合も、図6(a)及び(b)で説明した構成を応用することができる。すなわち、4つの偏光成分からなる画像信号I1〜I4を入力して処理する場合は、図6(a)及び(b)で説明した画像信号I1及びI2を処理する回路構成を4つの入力信号を処理する構成とすることにより容易に実現できる。
欠陥判定基準算出部306あるいは311(以下、欠陥判定基準算出部)における欠陥判定基準算出方法および欠陥判定部305あるいは312(以下、欠陥判定部)における欠陥判定方法について図7〜図9を用いて説明する。
図7を用いて、互いに異なる二つの偏光成分を検出した信号を利用して欠陥を判定する方法を説明する。
図7(a−1)および(a−2)は、単一の偏光成分のみを利用して欠陥を判定する従来技術の例を示す。図7(a−1)は偏光成分信号I1の分布を示す。プロットされた各マークA〜Fは、欠陥判定基準算出部に蓄えられた複数チップの各々に対応する偏光成分信号I1を示す。プロットされた各マーク○△×に対応する記号A〜Fの分布より、多数がI1値範囲401に含まれ、Aの信号のみが範囲401の外にある。範囲401は、プロットされた各マークの分布の平均値や標準偏差などの統計量から算出される欠陥判定基準に相当する。範囲401の内部を正常部、外部を欠陥部と判定することで、Aが欠陥部であり、C〜Fが正常部であると正しく判定されるが、Bが正常部であると誤判定されてしまう。
一方、図7(a−2)は偏光成分信号I2の分布を示し、図7(a−1)と同様の方法で欠陥判定基準に相当する範囲402を算出して欠陥判定を行った場合、Bが欠陥部でありC〜Fは正常部であると正しく判定されるが、Aが正常部であると誤判定されてしまう。
図7(a−3)は、本発明による互いに異なる二つの偏光成分を利用して欠陥を判定する方法を説明する図であり、偏光成分信号I1を横軸に、偏光成分信号I2を縦軸にとり、欠陥判定基準算出部に蓄えられた複数チップの各々に対応する偏光成分信号(I1,I2)をプロットした図である。欠陥判定基準算出部306あるいは311において、各プロットされた点の分布の平均値や標準偏差などの統計量を用いて分布の多数が含まれるような矩形領域404を欠陥判定基準として算出し、欠陥判定部において矩形領域404の内部を正常部、外れ値である矩形領域404の外部を欠陥部と判定することで、A、Bがともに欠陥部であり、C〜Fが正常部であると、誤判定なく正しく欠陥判定を行うことができる。欠陥判定基準として各プロットされた点の分布の平均値や標準偏差などの統計量を用いて円形領域403を算出しても同様に正しい判定が可能である。
なお、図7(b)に示したように、偏光成分信号I1に対し範囲401の外にプロットされる信号(I1<Th1− OR I1>Th1+ :ただし、TH1+は範囲401の上限値、TH1−は範囲401の下限値を示す)が欠陥であるという判定基準(J1)を適用し、偏光成分信号I2に対し範囲402の外にプロットされる信号(I2<Th2− OR I2>Th2+ :ただし、TH2+は範囲402の上限値、TH2−は範囲402の下限値を示す)が欠陥であるという判定基準(J2)を適用し、どちらかの判定基準を満たす条件(J1)OR(J2)を最終的な欠陥判定基準として適用した場合でも、上記と同様に正しい判定が可能である。これは、上記矩形領域404の外部にプロットされる信号が欠陥であるとする欠陥判定条件と等価である。
また、図7(c)に示したように、偏光成分信号I1と偏光成分信号I2に対し所定の演算処理した値をプロットし、これにたいして正常部あるいは欠陥部と判定する値の範囲を定めて欠陥を判定することもできる。図7(c)は、偏光成分信号I1と偏光成分信号I2に対する演算として、f(I1, I2) = (I1-a)2+(I2-b)2を算出してAからFをプロットし、これに対して範囲405の外部にプロットされる信号(f(I1,I2)>Th)を欠陥と判定する例である。この方法でも、前記と同様に正しい判定が可能である。なお、これは、上記円形領域403の外部にプロットされる信号が欠陥であるとする欠陥判定条件と等価である。一般に、欠陥判定条件がI1とI2のN次式で表される場合、I1とI2を軸として張られる平面に信号をプロットし、N次曲線に含まれる範囲を正常部あるいは欠陥部と判定する問題に帰着できる。
複数の偏光成分信号に基づいて得られる物理量を軸にとり、偏光成分信号をプロットし、欠陥判定を行うこともできる。図8(a)に示すように、複数の偏光成分信号に対する任意の演算により得られる物理量を各々の軸にとる。
図8(b)は、物理量として横軸に光の全強度、縦軸に偏光の楕円率をとった例である。なお、異物等粒子状の欠陥による散乱を考えた場合、光の波長に対して粒径が小さいレイリー散乱領域では、直線偏光照明に対し散乱光も直線偏光となるのに対し、光の波長に対して粒径が同等あるいはそれ以上のミー散乱領域では、直線偏光照明に対し散乱光が楕円偏光となることが知られている。従って、欠陥寸法が大きいほど検出する散乱光の偏光成分の楕円率が高くなる傾向がある。これより、検出された欠陥部の偏光成分の楕円率に基づいて欠陥の寸法を推定することが可能である。
図8(c)は、物理量として横軸に光の全強度、縦軸に偏光の長軸方位角をとった例である。なお、欠陥あるいはパターンの種類によって、照明光の偏光方向に対する反射散乱光の偏光方向が異なる場合があることが知られている。図8(c)では検出した欠陥の偏光成分の長軸方位角に基づいて異物とスクラッチを分類する例を示した。
図8(d)は、物理量として既知である照明光の偏光状態と、検出した複数の偏光成分信号より、エリプソメトリで用いられる振幅反射率比Ψと位相差Δを算出し、縦軸、横軸にとった例である。これらの物理量より、各々の位置における薄膜の膜厚や屈折率に関する情報が得られるため、それに基づいた処理を行うことが可能である。
図9は複数の偏光成分信号に基づいて得られる三つの物理量に基づく値を軸にとり、偏光成分信号あるいはそれらの演算により得られる値をプロットした例である。図9(a)は偏光検出部200aにおいて四つの互いに異なる偏光成分信号を取得しストークスパラメータS0〜S3を求め、ストークスパラメータS1〜S3をストークスパラメータS0で規格化した値を軸にとった例である。これは、偏光状態を半径1のポアンカレ球で表示したもの対応し、偏光状態に対応する点が、完全偏光であればポアンカレ球面上、部分偏光であればポアンカレ球の内部にプロットされる。
欠陥判定基準として、欠陥部であるあるいは正常部であると判定する3次元空間内の領域を算出し、欠陥判定を行う。光の強度S0で規格化するため、元の散乱光の明るさ変動が大きい場合などでも、その影響を受けることなく、偏光状態の違いを反映した分布に基づいた欠陥検出が可能である。また、図9(b)に示すように、ポアンカレ球表示においてS1−S2平面を赤道面としたときの緯度が偏光の楕円率角(楕円率の逆正接)、経度が偏光の長軸方位角の2倍に対応することから、図8(b)(c)に示した方法と同様に、欠陥寸法の推定および欠陥種の分類が可能である。また、図9(c)に示すように、S0で規格化することなくS1〜S3をそのままプロットすることで、偏光状態に加えて光の強度を加味した分布に基づいた欠陥検出を行うことが可能である。
図10から図13を用いて、上記第一の実施例の第一の変形例を説明する。
図10は第一の変形例の構成を示す。前記第一の実施例に対し、対物レンズ3b、空間フィルタ4b、結像レンズ5b、偏光検出部200bが追加された構成となっている。対物レンズ3b、空間フィルタ4b、および結像レンズ5bにより斜方検出系500bが構成され、対物レンズ3aと異なる仰角および方位角に反射散乱する光成分が偏光検出部200bに導かれる。偏光検出部200bの構成は前記第一の実施例における偏光検出部200aの構成として説明した200a'〜200a''''の何れかの構成を採用することができる。偏光検出部200bの構成は偏光検出部200aの構成と同じであることが望ましいが、必ずしも同じ構成でなくてもよい。偏光検出部200bにて検出された複数の偏光成分信号は、偏光検出部200aにて検出されたものと同様に信号処理部300に入力される。信号処理部300にて、偏光検出部200aにて検出された複数の偏光成分信号および偏光検出部200bにて検出された複数の偏光成分信号に基づいて欠陥判定がなされる。また、信号処理部300とは別に信号処理部300b(図示せず)を設け、検出部200bにて検出された複数の偏光成分信号に基づく欠陥判定を信号処理部300とは独立に行うことも可能である。
図11は斜方検出系500bの検出方向と照明方向との関係を示す。検出方位がステージX方向と同じになるよう斜方検出系500bを設置する。照明方位角は図2で説明したように選択可能である。ここでは、ステージX方向を基準とした照明進行方位角をθ(θが0度のときは検出方向と同じ方位角になる)とし、θを0度から−90度の間とした例と−90度から−180度の間とした例を図示した。θを0度から−90度の間とした配置は、斜方検出系500bに欠陥による前方散乱光が入射するため、波長に対して比較的大きい欠陥を検出するのに適する。一方、θを−90度から−180度の間とした配置は、斜方検出系500bに欠陥による後方散乱光が入射するため、波長に対して比較的小さい欠陥を検出するのに適する。
図12は斜方検出系500bの検出方向と、X-Y-Z-θステージ10の主走査方向St1と副走査方向St2と、照明領域F1の長手方向との関係を示す。照明領域F1の長手方向を主走査方向と垂直とすることで、検査対象基板Wの全面を効率良く走査することができる。検出方向を主走査方向S1に対し平行かつ照明領域F1に対し垂直とすることで、斜方検出系500bの受光器にリニアセンサを用いた場合に検査対象基板Wを高スループットで検査することができる。
図13は照明方向と検出方向に関して図11と異なる構成例を示す。ステージ主走査方向St1と垂直な方位に照明光を入射し、シリンドリカルレンズSLの円筒面回転軸をステージ主走査方向St1と平行とし、照明領域F1の長手方向がステージ主走査方向St1と垂直になるようシリンドリカルレンズSLを配置する。これにより、照明光の絞り方向に照明仰角を傾斜させた場合と比べて照明領域F1の短手方向を細く絞ることができ高い照明効率が得られるとともに、X-Y-Z-θステージ10走査中のZ方向の微小変動に伴う照明領域F1の短手方向の位置変動を抑えることができるため検出感度が安定する。
図14は、前記第一の実施例の第二の変形例における光学系1000の構成を示す。光源1から発した照明光は照明光学系100’を介しハーフミラー150および対物レンズ3aにより検査対象基板W上の照明領域F1に導かれる。本構成によれば偏光検出部200において明視野画像が検出される。偏光検出部200から出力された検出信号は、信号処理部300において処理され、欠陥が検出される。
図15は、前記第一の実施例の第三の変形例における光学系1000の構成を示す。光源1から発した照明光は照明光学系100’を介し暗視野対物レンズ3a’により検査対象基板W上の照明領域F1に導かれる。本構成によれば偏光検出部200において輪帯照明暗視野画像が検出される。
照明光学系100’の構成を図16に示す。アッテネータ101’により、照明光の強度が制御される。偏光板102’を必要に応じて設け、光源より発する照明光の偏光が直線偏光に揃えられる。光軸の周りに回転可能なλ/2板103’、およびλ/4板104’により、照明光の偏光状態が任意に設定される。なお、光源1としてレーザ光源を用いる場合は、スペックル低減手段111’を設置することでスペックルノイズの発生を抑えることができる。スペックル低減手段としては、互いに光路長の異なる複数の光ファイバあるいは石英板あるいはガラス板等を用いて、互いに異なる光路長を持つ複数の光束を生成しこれを重ね合わせる方法、あるいは回転拡散板を通過させる方法などがある。
前記第一の実施例の第三の変形例における光学系1000およびX-Y-Z-θステージ10の構成を図17に示す。光源1’として断続的に発光するストロボ光源を用いる。具体的には、パルスレーザ、LD励起Qスイッチパルスレーザ、ランプ励起Qスイッチパルスレーザ、フラッシュランプなどが適している。また、偏光検出部200の受光器としてエリアセンサを用いる。この構成で光源1’の発光、X-Y-Z-θステージ10の走査、および受光器の信号蓄積を同期してストロボ撮像を行うことで、歪みのない2次元画像を取得することができ、高精度なチップ比較が可能となる。また、X-Y-Z-θステージ10の代わりにr−θ回転ステージ10’を用いることで、XY走査と比較してより高速に検査対象基板W全面を走査することが可能となる。
前記第一の実施例の第四の変形例の構成を図18に示す。検査対象基板W1とW2は設計上同じパターンが形成されている。光源1’より発した光は分岐され、r−θ回転ステージ10’上に載置された検査対象基板W1とW2各々に照射される。検査対象基板W1からの反射散乱光は対物レンズ3a、結像レンズ5aを介し、偏光検出部200に入射する。検査対象基板W2からの反射散乱光は対物レンズ3a−2、結像レンズ5a−2を介し、偏光検出部200−2に入射する。光源1’の発光、X-Y-Z-θステージ10の走査、偏光検出部200内の受光器の信号蓄積および偏光検出部200−2内の受光器の信号蓄積を同期してストロボ撮像を行う。
r−θ回転ステージ10’を用いて回転走査を行う場合、図19(a)に示すように、検査対象基板W、W1、W2上における視野位置によって、検査対象基板上に形成されたパターンに対する照明の偏光状態、および偏光検出部200あるいは200−2の方位が異なる。照明光の偏光状態を光軸周りに対称な円偏光あるいは無偏光とするか、視野位置に対応するステージ回転角に応じて、照明光の偏光状態の長軸方位角を回転することで、検査対象基板上に形成されたパターンに対する照明の偏光状態を一定に保つことが可能である。さらに、図19(b)に示すように、視野位置に対応するステージ回転角に応じて、検出した偏光成分の方位角を回転するよう補正を加えることで、検査対象基板上に形成されたパターンに対する偏光検出部方位の回転の影響を除去し、検査対象基板上に形成されたパターンに対する偏光検出部方位の回転によらず検査対象基板全面を一定の感度で検査することが可能である。
次に、第2の実施例として、図1及び2で説明した構成において、光源1の代わりにパルス発振のUVレーザ光源2001を用いた場合に照明光学系100に変わる光学系の実施例を図20乃至23を用いて説明する。
光源2001にパルス発振のUVレーザを用いる場合,例えば大きさが10nm前後の極微小な異物欠陥から検出するのに十分な強度の散乱光を得るためには照射するパルスレーザの光量を大きくする必要が有るが、その結果として、パルス発振レーザの必要な平均出力に対して,尖頭値(最大出力)が非常に大きくなる。例えば,平均出力2[W],発光周波数100MHzでパルス間隔10[ns],パルス幅10[ps]のレーザの場合,尖頭値(最大出力)は2[kW]にもなり,試料にダメージを与える恐れがある。このために,平均出力を維持したままで尖頭値(最大出力)を低減させることが望ましい。
この平均出力を維持した状態で尖頭値を低減させる方法として、本実施例では、図20に示すように、光源2001から発射されたレーザビームL0をビーム拡大光学系2016で拡大し、パルス分岐光学系2017に入射させて光路長が異なる複数の光路に分岐した後光路を合体させることで、光源から発射された1パルス分のレーザビームを尖頭値を小さくした複数のパルスに分割し、この分割した複数のパルスレーザを分岐光学要素2018(図2のミラーM1からM9及びシリンドリカルレンズ109,110および111で構成される光学系に相当)に入射させて光路L1,2,3の何れか(図2の光路106,107,108に相当)の方向に導いてスリット状ビームに形成してウェハWのスリット状の領域2100に照射するように構成した。
また、パルスレーザビームを複数に分割して照射することにより、例えば、被検査対象基板Wを載置するX−Y−Z−θステージ11のX方向(図11参照)への移動速度を毎秒20cm、図3(a)に示した偏光検出部200a'の検出器220または221をCCD方式あるいはCMOS方式など時間蓄積型のリニアイメージセンサで構成したときの1画素あたりの検出視野を1μmとし、発光周波数100MHzのUVパルスレーザビームを上記した条件で複数に分割して照射すると、検出器220または221の1画素で検出する領域に数百パルスを超えるレーザビームが重ねて照射されるので、レーザビームにより発生するスペックルノイズを時間的に平均化して撮像することができ、ノイズが低減された画像を得ることができる。
パルス光分割光学系2017の一例を図21(a)に示す。この例においては,パルス光分割光学系2017を、1/4波長板1711,PBS(偏光ビームスプリッタ)1712a,1712bとミラー1713a,1713bの組合せで構成する。ビーム拡大光学系2016で拡大されて直線偏光(この例ではP偏光)で入射したレーザビームを1/4波長板1711aで楕円偏光にし,偏光ビームスプリッタ1712aでP偏光とS偏光に分離する。分離された一方のP偏光成分は偏光ビームスプリッタ1712aと偏光ビームスプリッタ1712bとを通過する。分離された他方のS偏光成分は偏光ビームスプリッタ1712a,ミラー1713a,ミラー1713b,偏光ビームスプリッタ1712bでそれぞれ反射して偏光ビームスプリッタ1712aと1712bとを通過してきたP偏光成分と同一光軸に戻る。このとき,偏光ビームスプリッタ1712aとミラー1713a,偏光ビームスプリッタ1712bとミラー1713bの間隔をL/2[m]とすると,S偏光成分とP偏光成分との間にはL[m]の光路差ができる。光速をc[m/s]とすると,S偏光成分とP偏光成分との間には
t[s]=L[m]/c[m/s] (数1)
の時間差が生じ,図21(b)に示すようなレーザ光源2001から発射された時間間隔Tで発振された2パルスのビームを時分割することにより、図21(c)に示すように各1パルスのレーザを時間間隔tでP偏光とS偏光各1パルスずつの計2パルスに分割して,尖頭値を1/2に低減させることができる。
例えば、パルス間隔10ns(10−8秒),パルス幅10ps(10−11秒)のレーザを用いて、偏光ビームスプリッタ1712aとミラー1713a及び偏光ビームスプリッタ1712bとミラー1713bの間隔をそれぞれ15cm(0.15m)に設定した場合、S偏光成分とP偏光成分との間の時間差は1ns(10−9秒)となる。すなわち、ウェハ表面は、10nsの間に1ns間隔でP偏光とS偏光各1パルスずつの計2回、尖頭値が半減されたレーザビームがパルス状に照射されることになる。
1/4波長板1711aの回転角を調整して,偏光ビームスプリッタ1712aの入射ビームのS偏光成分とP偏光成分の比率を1:1(円偏光)にすると,使用する光学部品(偏光ビームスプリッタ1712a,1712bとミラー1713a,1713b)の損失(反射率,透過率)により,偏光ビームスプリッタ1712bの出射ビームでのS偏光成分とP偏光成分のパルス光の尖頭値が異なってしまう。各パルス光の尖頭値の最大値を低くするには、各パルス光の尖頭値をほぼ同じ大きさにする必要がある。
図21(a)に示したパルス分割光学系2017の構成において,P偏光成分は偏光ビームスプリッタ1712a,1712bのP偏光透過率(Tp)が影響するだけであるが,S偏光成分は偏光ビームスプリッタ1712a,1712bのS偏光反射率(Rs)とミラー1713a,1713bのS偏光反射率(Rm)が影響する。損失比率(Pl)はS偏光成分損失をLs,P偏光成分損失をLpとすると
P1=Ls/Lp=Rm2×Rs2/Tp2 (数2)
となる。
したがって,偏光ビームスプリッタ1712aの入射ビーム偏光の楕円率を上記損失比率と等しくなるように,1/4波長板1711aの回転角を調整することにより,偏光ビームスプリッタ1712bの出射ビームでのS偏光成分とP偏光成分のパルス光の尖頭値をほぼ等しくすることができる。この尖頭値がほぼ等しくなるように分割されたP偏光成分とS偏光成分のパルス光はそれぞれの光路長差に応じた時間間隔を持って図2(a)に示した光路106,107,108の何れかを通ってウェハWに照射される。
上記説明ではパルス分割光学系2017を用いてパルス光を2分割する方法について説明したが,分割数を更に増やすためのパルス分割光学系2017の変形例として、4分割する方法について図22(a)および(b)を用いて説明する。図22(a)に示したパルス分割光学系2217の構成は,図21(a)に示したパルス分割光学系2017の構成を2段にしたものである。2段目の偏光ビームスプリッタ1732cとミラー1733cとの間隔,及び偏光ビームスプリッタ1732dとミラー1733dとの間隔を、それぞれ1段目の偏光ビームスプリッタ1732aとミラー1733a,及び偏光ビームスプリッタ1732bとミラー1733bとの間隔の2倍に設定する。
1段目の偏光ビームスプリッタ1732bからの射出ビームは,P偏向パルス光と時間遅れをもつS偏向パルス光である。このパルス光列を1/4波長板1731bにより円偏光にすることにより,1/4波長板1731bを透過したパルス光列の1/2の強度がP偏光となって偏光ビームスプリッタ1732c, 1732dを透過し,1/2の強度がS偏光となって偏光ビームスプリッタ1732cおよびミラー1733c, 1733dで反射し, 偏光ビームスプリッタ1732dで反射してP偏光と同一光軸に戻る。これにより,パルス光が4つに分割されて,それぞれの尖頭値が光源2001から出射したパルスレーザビームの1/4に低減する。厳密には上述のように光学部品の損失があるため,1/4より低減する。
図22(a)の構成において、偏光ビームスプリッタ1732cを通過して偏光ビームスプリッタ1732dを通過したP偏光パルスレーザと、ミラー1733dで反射し偏光ビームスプリッタ1732dで反射したS偏光パルスレーザとは同一の光軸を通って1/4波長板1731cで円偏光にされ、偏光ビームスプリッタ1734に入射してP偏光とS偏光とに光路が分離される。光路が分離された一方のP偏光成分のレーザビームは、光路L1に入って円筒レンズ1735(図2(b)のシリンドリカルレンズ109又は110または111に相当)で成形されてウェハ1上の線状の領域2110を照明する。
一方、偏光ビームスプリッタ1734で反射されて光路を90°曲げられたS偏光ビームは、光路L2に入ってミラー1736及び1737で反射して光路を変更して円筒レンズ1738で成形されてウェハW上の線状の領域2110を、光路L2方向から照明するP変更成分のレーザビームに対してウェハW面上で直角方向から照明する。
このとき光路L1と光路L2とは光路長が異なるように設計されており、ウェハW上の線状の領域2110に照射されるP偏光レーザビームとS偏光レーザビームとは、図22(b)に示すように光路長差分だけ時間差t0が発生し、タイミングがずれて照射される。これにより、線状の領域2110に照射されるP偏光レーザビームとS偏光レーザビームとの間の干渉の発生を防止することができる。
また、レーザ光源2001からの照明による反射散乱光を検出する光検出器220と221とは、それぞれ1画素分を検出する時間内に90°ずれた方向からの照明による反射散乱光を検出することになり、照明方向の違いによる検出感度のばらつきを低減することが可能になり、より微小な異物欠陥を安定に検出することができるようになる。なお、このとき図10に示したような斜方検出系500bも用いた場合には、斜方検出系500bの検出の方向は、矢印1740の方向への反射散乱光を検出をする。
また、図23には、図22(a)に示した構成における光路L2を光路L3に変更した構成を示す。この構成においては、偏光ビームスプリッタ1734で反射されて光路を90°曲げられたS偏光ビームを、光路L3でミラー1736、1747及び1748で反射して光路を変更して円筒レンズ1749で成形されてウェハW上の線状の領域2110を、光路L1と対向する方向から照明する。
図22(a)及び図23に示した構成においては、1/4波長板1731cと偏光ビームスプリッタ1734を用いる構成を示したが、1/4波長板1731cを削除して偏光ビームスプリッタ1734の代わりに無偏光ビームスプリッタ(図示せず)を用いることにより、光路L1,L2,L3それぞれの方向からP偏光とS偏光がそれぞれ異なるタイミングでウェハWを照明する。このとき、光検出器220と221とは、それぞれ1画素分を検出する時間内に90°または180°ずれた方向からP偏光とS偏光とで順次照明されることによる反射散乱光を検出することになる。これにより、1画素分を検出する時間内に複数の照明条件で照明されたウェハWからの反射散乱光を検出することになり、単一の照明条件で照明された場合に比べて検出感度を向上させることが可能になり、より微小な異物欠陥を安定に検出することができるようになる。
光検出器220と221とで検出した信号は、第1の実施例で説明したのと同様に信号処理部300で処理されて欠陥が検出される。
なお、第2の実施例において、偏光検出部200aとして図3(a)の構成を用いて説明したが、図3(b)、図4または図5で説明した偏光検出部を用いてもよい。
本実施例によれば、UVパルスレーザビームを尖頭値を低減してウェハに照射することができるために、0.1μm前後、またはそれよりも小さい極微小な欠陥をウェハにダメージを与えずに高感度に検出することが可能になった。