JP5580643B2 - 負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂組成物、位相差フィルムおよび画像表示装置 - Google Patents

負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂組成物、位相差フィルムおよび画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いた位相差フィルム、および当該位相差フィルムを備える画像表示装置に関する。
熱可塑性樹脂組成物からなる原フィルムを延伸した延伸フィルムは、当該組成物に含まれる重合体の配向に基づく光学特性を示す。このような延伸フィルムの一種に、重合体の配向により生じる複屈折を利用した位相差フィルムがある。位相差フィルムは、液晶表示装置(LCD)をはじめとする画像表示装置に広く使用されている。
正の固有複屈折を有するアクリル重合体と、負の固有複屈折を有するスチレン系重合体とを含む樹脂組成物からなり、面内位相差Reがゼロ近傍にある延伸フィルムが知られている(特許文献1参照)。この延伸フィルムは、偏光子保護フィルムに好適である。
特許文献1の樹脂組成物において、当該組成物におけるスチレン系重合体の含有率を増加させていくと、上記アクリル重合体によって正であった当該組成物の固有複屈折が負に変化する。このような負の固有複屈折を有する樹脂組成物を成形して原フィルムとし、得られた原フィルムを延伸して配向を与えることで、負の位相差フィルムが得られる。負の位相差フィルムは、延伸方向に光学的な進相軸を有し、画像表示装置の光学補償をはじめとする様々な用途に使用可能である。原フィルムは、通常、樹脂組成物の溶融押出成形により製造される。
特開2006-171464号公報
しかし、正の固有複屈折を有するアクリル重合体と、負の固有複屈折を有するスチレン系重合体とを含む樹脂組成物においてスチレン系重合体の含有率を増加させた場合、溶融押出成形による当該組成物からの原フィルム作製時に、成形ダイから吐出された後の樹脂組成物から当該組成物に含まれる成分が蒸散したり、フィルム成形用ロールに付着物が堆積したりして、得られた原フィルムならびに当該原フィルムを延伸、配向して得た位相差フィルムに光学的な欠点が生じることがある。原フィルムに光学的な欠点が発生する頻度は、樹脂組成物におけるスチレン系重合体の含有率が大きくなるにしたがって高くなる。
本発明は、正の固有複屈折を有するアクリル重合体と負の固有複屈折を有するスチレン系重合体とを含む、負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂組成物であって、溶融押出成形時(例えば、溶融押出成形による当該組成物からのフィルム形成時)に、当該組成物に含まれる成分の蒸散ならびに押出成形に使用する装置(例えば、フィルム成形用ロール)への付着物の堆積が抑制された樹脂組成物の提供を目的とする。
本発明者らは、検討の結果、特定の熱重量変化特性を有する樹脂組成物とすることにより、溶融押出成形時に、上記蒸散および付着物の堆積が抑制されることを見出した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂組成物であって、正の固有複屈折を有するアクリル重合体(A)と、負の固有複屈折を有するスチレン系重合体(B)と、を含む。前記アクリル重合体(A)は、主鎖に環構造を有するアクリル重合体である。前記スチレン系重合体(B)は、重合開始剤を使用して重合した重合体である。重量15mgの前記樹脂組成物を、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で20℃から150℃まで加熱し、150℃で15分保持したときの当該樹脂組成物の重量W1に対する、前記150℃で15分保持した樹脂組成物を、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度でさらに280℃まで加熱し、280℃で30分保持したときの前記樹脂組成物の重量W2の比W2/W1が、0.995以上である。
本発明の位相差フィルムは、本発明の熱可塑性樹脂組成物の延伸配向体からなる。
本発明の画像表示装置は、本発明の位相差フィルムを備える。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、重量比W2/W1が0.995以上であることにより示される熱重量変化特性を有する。これにより、正の固有複屈折を有するアクリル重合体と負の固有複屈折を有するスチレン系重合体とを含む、負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂組成物であって、溶融押出成形時に、上記蒸散および付着物の堆積が抑制された樹脂組成物となる。
重量W1は、アクリル重合体とスチレン系重合体とを含む樹脂組成物の熱重量変化特性を評価する基準となる重量である。重量W1は、重量15mgの当該組成物を、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で室温(20℃)から150℃まで加熱し、150℃で15分保持したときの当該組成物の重量である。この加熱および保持により、樹脂組成物に含まれる水分および残留モノマーが、当該組成物から除去される。現実の溶融押出成形においても、水分および残留モノマーなど、150℃への加熱および150℃での保持により樹脂組成物から除去される成分は、樹脂組成物が成形ダイから吐出される前に押出機のベント部から除去されるため、原フィルムに光学的な欠点を与えないと考えられる。したがって、上記加熱および保持によって水分および残留モノマーが除去された状態の樹脂組成物の重量W1が、樹脂組成物の熱重量変化特性を評価する基準の重量となる。
重量W2は、重量W1を測定した樹脂組成物を(上記150℃で15分保持した樹脂組成物を)、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で、150℃から280℃までさらに加熱し、280℃で30分保持したときの当該組成物の重量である。このさらなる加熱および保持によって、樹脂組成物に含まれる、上記蒸散および付着によって原フィルムに光学的な欠点を与える成分が当該組成物から除かれる。そして、除かれる当該成分の量が多いほど、重量W2は重量W1よりも小さくなる。換言すれば、樹脂組成物に含まれる当該成分の量が少ないほど、重量比W2/W1が1に近づくことになり、当該比が0.995以上の場合に本発明の効果が得られる。このさらなる保持の条件は、現実の溶融押出成形における条件よりも遙かに過酷である。本発明者らは、検討の結果、溶融押出成形時に上記蒸散および付着物の堆積が抑制された樹脂組成物となる、この条件を見出した。
なお、重量比W2/W1は、特定の重量(15mg)の樹脂組成物に対する値であるが、これは、当該重量比の測定精度を確保しながら、組成物の形状およびサイズによって、各加熱および保持によって除去される成分の量が変動するのをできるだけ抑える趣旨である。重量15mgは、重量比W2/W1の測定精度が十分に確保できるとともに、各加熱および保持によって、樹脂組成物からの成分の除去が均一に行われると判断できる量である。この趣旨を考慮すると、重量15mgは正確に15.0mgである必要はなく、通常、14.5mg〜15.4mgであればよい。
重量W1およびW2は、熱天秤(TG)などの一般的な熱重量測定装置により測定できる。重量W1およびW2の単位は限定されないが、15mgの樹脂組成物に対して所定の処理を行って得られる値であることから、mgが合理的である。
本発明の位相差フィルムは、上記本発明の樹脂組成物の延伸配向体からなり、スチレン系重合体を含むにも拘わらず、光学的な欠点が少ない。本発明の位相差フィルムは、本発明の樹脂組成物の固有複屈折が負であることに基づき、負の位相差フィルムである。本発明の位相差フィルムは、LCDなどの画像表示装置の光学補償に好適である。
[アクリル重合体(A)]
アクリル重合体(A)は、正の固有複屈折を有する限り、限定されない。
重合体の固有複屈折の正負は、重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えば、フィルム)において、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値「n1−n2」に基づいて判断できる。固有複屈折の値は、各々の重合体について、その分子構造に基づく計算により求めることができる。
アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または(メタ)アクリル酸単位を構成単位として有する重合体である。アクリル重合体が有する全構成単位に占める(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位の割合の合計は、通常50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。なお、ラクトン環構造など、(メタ)アクリル酸エステル単位の誘導体である環構造が重合体の主鎖に存在する場合、その全構成単位に占める(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位の割合と、当該重合体における環構造の含有率との合計が50重量%以上であればアクリル重合体とする。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの各(メタ)アクリル酸エステルの重合により形成される構成単位である。アクリル重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、これらの構成単位を2種以上有してもよい。アクリル重合体(A)は、(メタ)アクリル酸メチル単位を有することが好ましく、この場合、位相差フィルムの光学特性および表面の硬度が向上する。
アクリル重合体(A)は、典型的には、主鎖に環構造を有する。
主鎖に環構造を有するアクリル重合体(A)はガラス転移温度(Tg)が高いため、当該アクリル重合体(A)を含む本発明の樹脂組成物のTgが高くなる。このように高いTgを有する樹脂組成物の延伸配向体からなる本発明の位相差フィルムは、耐熱性に優れ、光源などの発熱部の近傍に配置できるなど、画像表示装置への使用に好適である。
これに加えて、環構造の種類によっては、主鎖に環構造を有するアクリル重合体(A)とスチレン系重合体(B)との相溶性が高くなる。
環構造は、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造およびN−置換マレイミド構造から選ばれる少なくとも1種である。
環構造は、環構造としての安定性に優れること、光学特性に優れる位相差フィルムが得られることから、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ラクトン環構造がより好ましい。
アクリル重合体(A)が主鎖に有していてもよいラクトン環構造は特に限定されず、例えば、4〜8員環であってもよいが、環構造としての安定性に優れることから5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造は、例えば特開2004-168882号公報に開示されている構造であるが、前駆体(前駆体を環化縮合反応させることで、ラクトン環構造を主鎖に有する重合体が得られる)の重合収率が高いこと、前駆体の環化縮合反応によって高いラクトン環含有率を有する重合体が得られること、メタクリル酸メチル単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること、などの理由から、以下の式(1)に示す構造が好ましい。
Figure 0005580643
式(1)において、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の範囲の有機残基である。有機残基は酸素原子を含んでもよい。
有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基および上記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。
ラクトン環構造は、分子鎖内に水酸基およびエステル基を有する前駆体を脱アルコール環化縮合させて形成できる。式(1)に示すラクトン環は、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)との共重合体を形成した後、当該共重合体における隣り合ったMMA単位とMHMA単位とを脱アルコール環化縮合させることで形成できる。このとき、R1はH、R2およびR3はCH3である。
アクリル重合体(A)が主鎖にラクトン環構造を有する場合、アクリル重合体(A)におけるラクトン環構造の含有率は特に限定されないが、通常10〜70重量%であり、20〜60重量%が好ましい。また、当該含有率は、25〜55重量%、30〜55重量%になるほど、さらに好ましい。
アクリル重合体(A)におけるラクトン環構造の含有率は、ダイナミックTG法により、以下のようにして求めることができる。最初に、ラクトン環構造を有するアクリル重合体(A)に対してダイナミックTG測定を実施し、150℃から300℃の間の重量減少率を測定して、得られた値を実測重量減少率(X)とする。150℃は、アクリル重合体(A)に残存する水酸基およびエステル基が環化縮合反応を開始する温度であり、300℃は、アクリル重合体(A)の熱分解が始まる温度である。これとは別に、前駆体である重合体に含まれる全ての水酸基が脱アルコール反応を起こしてラクトン環が形成されたと仮定して、その反応による重量減少率(即ち、前駆体の脱アルコール環化縮合反応率が100%であったと仮定した重量減少率)を算出し、理論重量減少率(Y)とする。理論重量減少率(Y)は、前駆体における、脱アルコール反応に関与する水酸基を有する構成単位の含有率から求めることができる。なお、前駆体の組成は、アクリル重合体(A)の組成から導くことが可能である。次に、式[1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))]×100(%)により、アクリル重合体(A)の脱アルコール反応率を求める。アクリル重合体(A)では、求めた脱アルコール反応率の分だけラクトン環構造が形成されていると考えられる。そこで、前駆体における、脱アルコール反応に関与する水酸基を有する構成単位の含有率に、求めた脱アルコール反応率を乗じ、ラクトン環構造の重量に換算することで、アクリル重合体(A)におけるラクトン環構造の含有率を求めることができる。
アクリル重合体(A)は、以下の式(2)に示す環構造を主鎖に有してもよい。
Figure 0005580643
式(2)におけるR4およびR5は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X1は酸素原子または窒素原子である。X1が酸素原子のときR6は存在せず、X1が窒素原子のとき、R6は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
1が窒素原子のとき、式(2)に示す環構造は、グルタルイミド構造である。グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル重合体(A)は、例えば(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化して形成できる。
1が酸素原子のとき、式(2)に示す環構造は、無水グルタル酸構造である。無水グルタル酸構造を主鎖に有するアクリル重合体(A)は、例えば(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、分子内で脱アルコール環化縮合させて形成できる。
アクリル重合体(A)は、以下の式(3)に示す環構造を主鎖に有してもよい。
Figure 0005580643
式(3)におけるR7およびR8は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X2は、酸素原子または窒素原子である。X2が酸素原子のときR9は存在せず、X2が窒素原子のとき、R9は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
2が窒素原子のとき、式(3)に示す環構造は、N−置換マレイミド構造である。N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル重合体(A)は、例えばN−置換マレイミドと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
2が酸素原子のとき、式(3)に示す環構造は、無水マレイン酸構造である。無水マレイン酸構造を主鎖に有するアクリル重合体(A)は、例えば無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
アクリル重合体(A)が式(2)、(3)に示す環構造を主鎖に有する場合、アクリル重合体(A)における式(2)、(3)に示す環構造の含有率は特に限定されないが、通常5〜90重量であり、10〜70重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましく、10〜50重量%がさらに好ましい。
主鎖に環構造を有するアクリル重合体(A)のTgは、通常、110℃以上である。環構造の種類およびその含有率によっては、当該重合体のTgは、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上となる。
アクリル重合体(A)は、正の固有複屈折を有する限り、(メタ)アクリル酸エステル単位および(メタ)アクリル酸単位以外の構成単位を有していてもよい。当該構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、メタリルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレンなどの各単量体の重合により形成される構成単位である。アクリル重合体(A)がこれらの構成単位を有する場合、スチレン系重合体(B)に対するアクリル重合体(A)の相溶性がさらに高くなる。アクリル重合体(A)は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
アクリル重合体(A)の重量平均分子量は、例えば1000〜300000の範囲であり、5000〜250000の範囲が好ましく、10000〜200000の範囲がより好ましく、50000〜200000の範囲がさらに好ましい。
アクリル重合体(A)は、公知の方法により製造できる。ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル重合体(A)は、例えば特開2006-96960号公報、特開2006-171464号公報、特開2007-63541号公報に記載の方法により製造できる。N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル重合体(A)、無水グルタル酸構造を主鎖に有するアクリル重合体(A)およびグルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル重合体(A)は、例えば特開2007-31537号公報、国際公開第2007/26659号、国際公開第2005/108438号に記載の方法により製造できる。無水マレイン酸構造を主鎖に有するアクリル重合体(A)は、例えば特開昭57-153008号公報に記載の方法により製造できる。
[スチレン系重合体(B)]
スチレン系重合体(B)は、負の固有複屈折を有する限り、限定されない。
スチレン系重合体は、スチレン系単量体の重合により形成される構成単位が、全構成単位の50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上を占める重合体である。スチレン系単量体は、スチレンならびにスチレンにおけるフェニル基またはビニル基に置換基を有するスチレン誘導体であり、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、クロロスチレンである。
固有複屈折が負である限り、スチレン系重合体は、スチレン系単量体の重合により形成される構成単位以外の構成単位を有していてもよい。当該構成単位は、不飽和二重結合を有し、スチレン系単量体との共重合が可能である単量体の重合により形成される構成単位である限り限定されない。当該構成単位は、例えば、以下の単量体の重合により形成される構成単位である:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、アクリロニトリル、ブタジエン。
スチレン系重合体の具体的な例は、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、N−フェニルマレイミド−(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体である。
本発明者らは、上記蒸散および付着によって原フィルムに光学的な欠点を与える成分が、スチレン系重合体に含まれるオリゴマー成分であると推定する。このオリゴマー成分は、バルク重合法によってスチレン系重合体を合成する際に、熱により生成したスチレンモノマーのディールスアルダー付加物から発生するラジカルが開始剤となって、スチレン系重合体中に多数生成されると考えられる。したがって、スチレン系重合体(B)は、バルク重合法以外の重合方法により合成された重合体であることが好ましく、特に、溶液重合により合成された重合体であることが好ましい。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、負の固有複屈折を有する。
樹脂組成物の固有複屈折の正負は、当該組成物に含まれる重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えば、フィルム)において、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n3から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n4を引いた値「n3−n4」に基づいて判断できる。樹脂組成物の固有複屈折の正負は、当該組成物に含まれる各重合体が有する固有複屈折の兼ね合いにより決定される。
本発明の樹脂組成物におけるアクリル重合体(A)およびスチレン系重合体(B)の含有率は、当該樹脂組成物の固有複屈折が負である限り、特に限定されない。例えば、アクリル重合体(A):スチレン系重合体(B)=85:15〜50:50であり、75:25〜55:45が好ましく、70:30〜60:40がより好ましい。
上述したように、樹脂組成物におけるスチレン系重合体の含有率が高くなるほど、当該樹脂組成物の溶融押出成形により得られた原フィルムに光学的な欠点が発生する頻度が高くなる。このため、本発明の樹脂組成物におけるスチレン系重合体(B)の含有率が15重量%以上である場合に、本発明の効果はより顕著となる。
溶融押出成形による樹脂組成物からの原フィルム形成時に、上記蒸散および付着によって原フィルムに光学的な欠点が生じる場合、従来、樹脂組成物に酸化防止剤を添加したり、押出機のベント部から樹脂組成物の揮発成分を効率よく取り除くことが有効であるとされてきた。しかし、本発明者らの検討によれば、樹脂組成物におけるスチレン系重合体(B)の含有率が30重量%以上になると、これら従来の対処方法の有効性が著しく低くなる。このため、本発明の樹脂組成物におけるスチレン系重合体(B)の含有率が30重量%以上である場合に、本発明の効果はさらに顕著となる。
本発明の樹脂組成物における上記重量比W2/W1は、0.995以上であり、0.996以上が好ましく、0.997以上がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、アクリル重合体(A)およびスチレン系重合体(B)からなってもよい。
本発明の樹脂組成物は、2種以上のアクリル重合体(A)および/またはスチレン系重合体(B)を含んでいてもよい。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物としての固有複屈折が負であるとともに、本発明の効果が得られる限り、アクリル重合体(A)およびスチレン系重合体(B)以外の重合体をさらに含んでいてもよい。
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が得られる限り、アクリル重合体(A)、スチレン系重合体(B)およびその他の重合体以外の任意の材料を含んでいてもよい。当該材料は、例えば、酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;難燃剤である。樹脂組成物におけるこれらの材料の含有率は、例えば0〜5重量%であり、0〜2重量%が好ましく、0〜0.5重量%がより好ましい。
[位相差フィルム]
本発明の位相差フィルムは、本発明の樹脂組成物の延伸配向体からなる。本発明の位相差フィルムは、その延伸方向に光学的な進相軸を有する負の位相差フィルムである。
本発明の樹脂組成物から、本発明の位相差フィルムを得る方法は特に限定されない。例えば、本発明の樹脂組成物を押出成形(溶融押出成形)して得た原フィルムを延伸すればよい。
原フィルムの延伸は、一軸延伸(自由端一軸延伸、固定端一軸延伸など)または二軸延伸(逐次二軸延伸、同時二軸延伸など)などの公知の延伸法に基づいて実施すればよい。
本発明の位相差フィルムの用途は特に限定されず、従来の位相差フィルムと同様の用途、例えば、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)などの画像表示装置に使用が可能である。
具体的には、本発明の位相差フィルムは、光学的な欠点が少ないことから、LCDの光学補償部材として好適である。例えば、STN型LCD、TFT−TN型LCD、OCB型LCD、VA型LCD、IPS型LCDなどの各種LCDの位相差フィルム、光学補償フィルム、偏光板との積層フィルム、偏光板光学補償フィルムに好適に使用できる。本発明の位相差フィルムの好ましい光学特性は、使用する液晶の表示モードによって異なる。
本発明の位相差フィルムは、LCDの偏光板に用いる偏光子保護フィルムとして好適である。
本発明の位相差フィルムは、用途に応じて、他の光学部材と組み合わせて用いてもよい。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の位相差フィルムを備える。これにより、画像表示特性に優れる画像表示装置となる。本発明の画像表示装置は、例えば、LCDである。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
最初に、本実施例において作製したアクリル重合体(A)、スチレン系重合体(B)、樹脂組成物および位相差フィルムの評価方法を示す。
[アクリル重合体(A)、スチレン系重合体(B)および樹脂組成物のTg]
アクリル重合体(A)、スチレン系重合体(B)および樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[アクリル重合体(A)およびスチレン系重合体(B)の重量平均分子量]
アクリル重合体(A)およびスチレン系重合体(B)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件に従って求めた:
測定システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
測定側カラム構成:ガードカラム(東ソー製、TSK-GEL SuperHZ-L、4.6X35、1本)、分離カラム(東ソー製、TSK-GEL Super HZM-M、6.0X150、2本直列接続)
リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム(東ソー製、TSK-GEL SuperH-RC、6.0X150、2本直列接続)
カラム温度:40℃。
[樹脂組成物の固有複屈折]
樹脂組成物の固有複屈折は、以下のようにして求めた。
作製した樹脂組成物を、280℃に設定した単軸押出機(φ=20mm、L/D=25)およびコートハンガータイプTダイ(幅150mm)を用いて、当該Tダイから、110℃に保持した冷却ロール上にフィルム状に押出、吐出して、厚さ100μmの原フィルム(未延伸フィルム)を作製した。次に、作製した原フィルムを、二軸延伸機(東洋精機製作所製、TYPE EX4)を用いて、樹脂組成物のTgより7℃高い延伸温度ならびにMD方向(Tダイからの押出、吐出方向)に2.0倍の延伸倍率で自由端一軸延伸して、厚さ70μmの一軸延伸性の位相差フィルムを作製した。次に、作製した位相差フィルムの配向角を、全自動複屈折計(王子計測機器製、KOBRA−WR)により求め、その値に基づいて、樹脂組成物の固有複屈折の正負を評価した。測定された配向角が延伸方向に対して0°近傍である場合、樹脂組成物の固有複屈折は正であり、90°近傍である場合、樹脂組成物の固有複屈折は負である。
アクリル重合体(A)およびスチレン系重合体(B)の固有複屈折の正負も、各重合体からなる原フィルムおよび位相差フィルムを準備し、位相差フィルムの配向角を求めることによって、これと同様に評価した。
[樹脂組成物の重量比W2/W1]
樹脂組成物の重量比W2/W1は、熱天秤(リガク製、Thermo Plus 2 TG-8120 Dynamic TG)を用いて評価した。具体的には、樹脂組成物(重量14.5〜15.4mg、高さ2mm×直径2.8mmの円柱状のペレット)を熱天秤にセットし、流量200mL/分の窒素フロー雰囲気の下、以下の昇温プログラムによる加熱、温度保持および重量測定を実施して、重量比W2/W1を求めた。
−昇温プログラム−
ステップ1:室温(20℃)から150℃まで、20℃/分の昇温速度で昇温、
ステップ2:150℃に達した時点から、当該温度で15分ホールド、
ステップ3:150℃で15分ホールドした時点における樹脂組成物の重量W1(mg)を測定、
ステップ4:重量W1の測定後、150℃から280℃まで、20℃/分の昇温速度で昇温、
ステップ5:280℃に達した時点から、当該温度で30分ホールド、
ステップ6:280℃で30分ホールドした時点における樹脂組成物の重量W2(mg)を測定、
ステップ1〜6は、連続的に実施した。
[位相差フィルムの面内位相差Re]
位相差フィルムの面内位相差Reは、全自動複屈折計(王子計測機器製、KOBRA−WR)を用いて評価した。面内位相差Reは、波長589nmの光に対する値である。
位相差フィルムの面内位相差Reは、式Re=(nx−ny)×dにより示される。ここで、nxは位相差フィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率、nyは位相差フィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内におけるnxと垂直な方向)の屈折率、dは位相差フィルムの厚さ(nm)である。
[位相差フィルムの厚さ方向の位相差Rth]
位相差フィルムの厚さ方向の位相差Rthは、全自動複屈折計(王子計測機器製、KOBRA−WR)を用いて評価した。具体的には、遅相軸を傾斜軸として、位相差フィルムを40°傾斜させて測定した値を基に算出した。厚さ方向の位相差Rthは、波長589nmの光に対する値である。
位相差フィルムの厚さ方向の位相差Rthは、式Rth={(nx+ny)/2−nz}×dにより示される。ここで、nxは位相差フィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率、nyは位相差フィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内におけるnxと垂直な方向)の屈折率、nzは位相差フィルムの厚さ方向の屈折率、dは位相差フィルムの厚さ(nm)である。
(製造例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた、内容積1000Lの反応容器に、40重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、重合溶媒として50重量部のトルエンおよび酸化防止剤として0.025重量部のアデカスタブ2112(ADEKA製)を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.05重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)を添加するとともに、0.10重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを3時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として0.05重量部のリン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A-8)を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。続いて、重合溶液を240℃のオートクレーブにより30分間加熱して、環化縮合反応をさらに進行させた。
次に、得られた重合溶液を、バレル温度240℃、回転速度100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)であり、リーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm、濾過面積1.5m2)が先端部に配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=50.0mm、L/D=30)に、樹脂量換算で45kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。脱揮時には、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を、0.68kg/時の投入速度で第1ベントの後ろから、、イオン交換水を、0.22kg/時の投入速度で第2および第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。
酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、50重量部の酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、Irganox1010)と、失活剤として35重量部のオクチル酸亜鉛(日本化学工業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)とを、トルエン200重量部に溶解させた溶液を用いた。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態の重合体を、押出機の先端から、ポリマーフィルタによる濾過を行いながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル重合体(A−1)のペレットを得た。アクリル重合体(A−1)のTgは131℃、重量平均分子量は13.1万、固有複屈折は正であった。
(製造例2)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた、内容積1000Lの反応容器に、36.5重量部のスチレン(St)、13.5重量部のアクリロニトリル(AN)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、95℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.05重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)を添加して、約95〜105℃の還流下で溶液重合を進行させた。
次に、得られた重合溶液を、バレル温度240℃、回転速度100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=50.0mm、L/D=30)に、樹脂量換算で45kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。脱揮時には、イオン交換水を、0.22kg/時の投入速度で第1、第2および第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態の重合体を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによりペレット化して、スチレン系重合体(B)であるアクリロニトリル−スチレン共重合体(B−1)のペレットを得た。共重合体(B−1)のTgは112℃、重量平均分子量は16.1万、固有複屈折は負であった。
(製造例3)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた、内容積1000Lの反応容器に、6重量部のN−フェニルマレイミド(PMI)、36.5重量部のMMA、7.5重量部のSt、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)を添加して、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。
次に、得られた重合溶液を、バレル温度240℃、回転速度100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=50.0mm、L/D=30)に、樹脂量換算で45kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。脱揮時には、イオン交換水を、0.22kg/時の投入速度で第1、第2および第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態の重合体を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによりペレット化して、スチレン系重合体(B)であるPMI−MMA−St共重合体(B−2)のペレットを得た。共重合体(B−2)のTgは142℃、重量平均分子量は15.3万、固有複屈折は負であった。
(実施例1)
製造例1で作製したアクリル重合体(A−1)のペレットと、製造例2で作製したアクリロニトリル−スチレン共重合体(B−1)のペレットとを、単軸押出機(φ=30mm)を用いて(A−1)/(B−1)=70/30の重量比で混練し、熱可塑性樹脂組成物(C−1)を作製した。樹脂組成物(C−1)のTgは122℃、固有複屈折は負、重量比W2/W1は0.9971であった。
次に、濾過精度5μmおよび濾過面積0.75m2のポリマーフィルタならびにダイスを備えたベント付き単軸押出機を用いて、作製した樹脂組成物(C−1)を連続的にフィルム(原フィルム)に溶融押出成形した。単軸押出機のシリンダは、当該シリンダにおける樹脂組成物の供給部を180℃に保持した以外は、280℃に保持した。ギアポンプ、ポリマーフィルタおよびダイスは、282℃に保持した。樹脂組成物(C−1)を、単軸押出機内において溶融混練した後、押出成形したが、溶融混練は、ペレットベント口から吸引圧力12hPaおよび排気速度200L/kg・cm2で揮発成分の吸引を行うとともに、バリアフライト型スクリューを用いて行った。溶融混練を経た、溶融状態にある樹脂組成物(C−1)は、ポリマーフィルタおよびダイスを通して溶融押出成形した。その際、90℃に保持したキャスティングドラム上にフィルム(原フィルム)を形成した。
この押出成形を20時間連続で行った時点で、キャスティングドラムの表面および原フィルムの状態を目視により確認した。キャスティングドラム表面に、原フィルムに光学的な欠点を発生させる付着物(当該付着物は、有機物を主成分とする)の堆積がある場合、当該表面に、曇りあるいは虹色の干渉模様が見られる。しかし、キャスティングドラムの表面には、原フィルムに光学的な欠点を発生させるような付着物の堆積は見られず、得られた原フィルムにも、堆積した付着物の痕跡(転写跡)である光学的な欠点は観察されなかった。
(実施例2)
製造例1で作製したアクリル重合体(A−1)のペレットと、製造例2で作製したアクリロニトリル−スチレン共重合体(B−1)のペレットとを、単軸押出機(φ=30mm)を用いて(A−1)/(B−1)=60/40の重量比で混練し、熱可塑性樹脂組成物(C−2)を作製した。樹脂組成物(C−2)のTgは121℃、固有複屈折は負、重量比W2/W1は0.9962であった。
次に、実施例1と同様に、作製した樹脂組成物(C−2)を連続的にフィルム(原フィルム)に溶融押出成形した。
押出成形を20時間連続で行った時点で、キャスティングドラムの表面および原フィルムの状態を目視により確認したところ、得られた原フィルムに光学的な欠点は観察されず、キャスティングドラムの表面にも、原フィルムに光学的な欠点を発生させるような付着物の堆積は見られなかった。
(実施例3)
製造例1で作製したアクリル重合体(A−1)のペレットと、製造例3で作製したPMI−MMA−St共重合体(B−2)のペレットとを、単軸押出機(φ=30mm)を用いて(A−1)/(B−2)=70/30の重量比で混練し、熱可塑性樹脂組成物(C−3)を作製した。樹脂組成物(C−3)のTgは127℃、固有複屈折は負、重量比W2/W1は0.9984であった。
次に、実施例1と同様に、作製した樹脂組成物(C−3)を連続的にフィルム(原フィルム)に溶融押出成形した。
押出成形を20時間連続で行った時点で、キャスティングドラムの表面および原フィルムの状態を目視により確認したところ、得られた原フィルムに光学的な欠点は観察されず、キャスティングドラムの表面にも、原フィルムに光学的な欠点を発生させるような付着物の堆積は見られなかった。
(実施例4)
製造例1で作製したアクリル重合体(A−1)のペレットと、製造例3で作製したPMI−MMA−St共重合体(B−2)のペレットとを、単軸押出機(φ=30mm)を用いて(A−1)/(B−2)=60/40の重量比で混練し、熱可塑性樹脂組成物(C−4)を作製した。樹脂組成物(C−4)のTgは127℃、固有複屈折は負、重量比W2/W1は0.9972であった。
次に、実施例1と同様に、作製した樹脂組成物(C−4)を連続的にフィルム(原フィルム)に溶融押出成形した。
押出成形を20時間連続で行った時点で、キャスティングドラムの表面および原フィルムの状態を目視により確認したところ、得られた原フィルムに光学的な欠点は観察されず、キャスティングドラムの表面にも、原フィルムに光学的な欠点を発生させるような付着物の堆積は見られなかった。
(比較例1)
製造例1で作製したアクリル重合体(A−1)のペレットと、スチレン系樹脂として市販のアクリロニトリル−スチレン共重合体ペレット(旭化成ケミカルズ製、スタイラックAS783)とを、単軸押出機(φ=30mm)を用いて(A−1)/スタイラックAS783=70/30の重量比で混練し、熱可塑性樹脂組成物(D−1)を作製した。樹脂組成物(D−1)のTgは122℃、固有複屈折は負、重量比W2/W1は0.9925であった。なお、スタイラックAS783の固有複屈折は負であった。
次に、実施例1と同様に、作製した樹脂組成物(D−1)を連続的にフィルム(原フィルム)に溶融押出成形した。
押出成形を5時間行った時点で、キャスティングドラムの表面および原フィルムの状態を目視により確認したところ、キャスティングドラムの表面に、原フィルムに光学的な欠点を発生させるような付着物の堆積が、当該ドラム表面の著しい曇りおよび干渉模様として、確認された。同時に、キャスティングドラム表面への付着物に起因する、原フィルム表面への当該付着物の転写跡が多数確認された。これに加えて、ダイスのリップ部にも、付着物の堆積が見られた。
(比較例2)
製造例1で作製したアクリル重合体(A−1)のペレットと、スチレン系樹脂として市販のアクリロニトリル−スチレン共重合体ペレット(旭化成ケミカルズ製、スタイラックAS767)とを、単軸押出機(φ=30mm)を用いて(A−1)/スタイラックAS767=60/40の重量比で混練し、熱可塑性樹脂組成物(D−2)を作製した。樹脂組成物(D−2)のTgは121℃、固有複屈折は負、重量比W2/W1は0.9910であった。なお、スタイラックAS767の固有複屈折は負であった。
次に、実施例1と同様に、作製した樹脂組成物(D−2)を連続的にフィルム(原フィルム)に押出成形した。
押出成形を2時間行った時点で、キャスティングドラムの表面および原フィルムの状態を目視により確認したところ、キャスティングドラムの表面に、原フィルムに光学的な欠点を発生させるような付着物の堆積が、当該ドラム表面の著しい曇りおよび干渉模様として、確認された。同時に、キャスティングドラム表面への付着物に起因する、原フィルム表面への当該付着物の転写跡が多数確認された。これに加えて、ダイスのリップ部にも、付着物の堆積が見られた。
実施例および比較例の結果を、以下の表1にまとめる。表1における連続成膜結果の欄は、以下の基準により記載した。
○:樹脂組成物の連続的な溶融押出成形を開始してから20時間が経過した後も、キャスティングドラムの表面に、原フィルムに光学的な欠点を発生させるような付着物の堆積が確認されないとともに、作製した原フィルムの表面に、キャスティングドラム表面への付着物に起因する当該付着物の転写跡が確認されなかった。
×:樹脂組成物の連続的な溶融押出成形を開始してから20時間が経過する前に、キャスティングドラムの表面に、原フィルムに光学的な欠点を発生させるような付着物の堆積が確認されるとともに、作製した原フィルムの表面に、キャスティングドラム表面への付着物に起因する当該付着物の転写跡が確認された。この場合、溶融押出成形を開始してから、これらが確認されるまでの経過時間を、当該欄内に併せて示す。
Figure 0005580643
表1に示すように、樹脂組成物の重量比W2/W1にして0.995を境に、連続成膜結果が大きく異なるとともに、重量比W2/W1が0.995以上の場合に、溶融押出成形における、樹脂組成物に含まれる成分の蒸散およびフィルム成形用ロールへの付着物の堆積が抑制された樹脂組成物となることが確認された。
本発明の位相差フィルムは、従来の位相差フィルムと同様に、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)をはじめとする画像表示装置に広く使用できる。

Claims (5)

  1. 負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂組成物であって、
    正の固有複屈折を有するアクリル重合体(A)と、負の固有複屈折を有するスチレン系重合体(B)と、を含み、
    前記アクリル重合体(A)が、主鎖に環構造を有するアクリル重合体であり、
    前記スチレン系重合体(B)は、重合開始剤を使用して重合した重合体であり、
    重量15mgの前記樹脂組成物を、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で20℃から150℃まで加熱し、150℃で15分保持したときの当該樹脂組成物の重量W1に対する、
    前記150℃で15分保持した樹脂組成物を、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度でさらに280℃まで加熱し、280℃で30分保持したときの前記樹脂組成物の重量W2の比W2/W1が、0.995以上である熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記樹脂組成物における前記スチレン系重合体(B)の含有率が、15重量%以上である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記樹脂組成物における前記スチレン系重合体(B)の含有率が、30重量%以上である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の延伸配向体からなる位相差フィルム。
  5. 請求項に記載の位相差フィルムを備える画像表示装置。
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