以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂、ポリエステル樹脂、着色剤及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体とを有するトナーであり、前記トナーの平均円形度が0.970以上0.995以下であることを特徴とする。さらに、前記炭化水素ワックスの加熱脱着/GC/MS分析において、加熱温度200℃加熱時間10分におけるヘキサデカンのピーク検出時間以降に検出される揮発成分について、前記炭化水素ワックス質量を基準としたヘキサデカン換算の濃度が1100ppm以下であることを特徴とする。さらにまた、前記トナーの動的粘弾性試験において、温度70℃における貯蔵弾性率(G’70)が1.0×105(Pa)以上1.0×108(Pa)以下の範囲にあり、110℃における貯蔵弾性率(G’110)が1.0×104(Pa)以上2.0×105(Pa)以下の範囲にあることを特徴とする。
本発明において、トナーに含まれる炭化水素ワックスの加熱脱着−GC/MS分析における加熱温度200℃加熱時間10分におけるヘキサデカンのピーク検出時間以降に検出される揮発成分について、前記ワックス質量を基準としたヘキサデカン換算の濃度を1100ppm以下とすることにより、機内汚染を防止することができる。また、併せてトナーの平均円形度を0.970以上0.995以下とし、70℃の貯蔵弾性率(G’70)と110℃の貯蔵弾性率(G’110)を上記のように規定することで、クリーニング性が優れ、耐久性及び帯電均一性に優れ、更には部材汚染の抑制されたトナーを得ることができる。
ワックスの揮発成分の測定は定着温度付近の200℃で10分間保持することで、定着工程で発生する揮発成分を測定することができ、10分間以上保持しても値は変わらない。
ワックスの揮発成分とG’70とG’110及び平均円形度を上述の通りとすることにより本発明の効果が得られることについての詳細な理由は明らかではないが、本発明者らは次のように考えている。つまり、揮発成分の少ない炭化水素ワックスを本発明のトナーに使用することで、定着時の加熱により発生する揮発成分による機内汚染を防止することができる。
一方、揮発成分が少ない炭化水素ワックスは硬いため、トナーとしても硬くなる。そのため特に低温環境下でトナーの変形が少なくなり、感光体上に残ったトナーがクリーニングブレードによって剥ぎ取り難くなりクリーニング性が悪化してしまうため、G’70を上述のように規定することでクリーニング性を良好に保つことができる。ここでG’70はワックスの融点以下のため結着樹脂の弾性を表し、結着樹脂が弾性を持っていることでクリーニングブレードをすり抜けることなく感光体上から除去することができる。
またG’110を上述のように規定することでトナーが完全に潰れることがなく、トナーと種々の部材等との摺擦に起因する劣化や部材汚染を抑制することができる。ここでG’110はトナーの弾性を表し、硬い炭化水素ワックスがトナー内部に存在し、且つ、トナーが弾性を持っているため耐久性が向上すると考えられる。
ここで、上述の測定によるワックスの揮発成分について、前記ワックス質量を基準としたヘキサデカン換算の濃度が1100ppmを超えると、揮発成分が機内に付着しセンサーを汚すことによる誤作動や、定着ローラへの付着による画像弊害が発生する。
また、G’70が1.0×105(Pa)未満であると、結着樹脂の硬度が不足し、種々の部材等との摺擦等のストレスによりトナーが潰れやすく、現像性及び転写性が低下する。また、G’70が1.0×108(Pa)を超えると、結着樹脂の弾性が低くなるためトナーの変形が少なくなりクリーニングブレードで剥ぎ取り難くなって、クリーニング性が悪化する。
また、G’110が1.0×104(Pa)未満であるとトナーの硬度が低くなり、部材との摺擦によるトナーの融着が起き、部材汚染を発生させる。G’110が2.0×105(Pa)を超えるとトナーの硬度が高くなるとともに脆くなるため、種々の部材等との摺擦によってかけてしまう恐れがあり、耐久性が低下する。
更に、本発明の平均円形度が0.970未満ではトナーの劣化が抑制できないだけでなく、トナーの帯電特性が不均一なものとなる。
上記G’70とG’110の値は例えば結着樹脂を構成する結着樹脂のガラス転移温度、或いは架橋剤の添加量等を調整することで上記範囲を満たすことが可能である。
以下に、本発明のトナーの更に好ましい形態について述べる。
本発明に含有されるトナー粒子を製造する方法としては、特に懸濁重合法が好ましい。この懸濁重合法においては重合性単量体にワックス及び着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、帯電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散せしめて重合性単量体組成物をとする。その後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な攪拌器を用いて分散し、そして重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。上記トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要に応じて流動性向上剤を混合し表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。
懸濁重合法により本発明のトナーを得ることで、ワックスがトナー粒子の中心付近に存在し、結着樹脂の外層にポリエステル樹脂が存在するコアシェル構造となり、多数枚のプリントアウトを行っても現像性、クリーニング性を維持し、部材汚染を抑制できる。これはワックスが表面付近に存在し難いことで、結着樹脂層が弾性を持ちやすくクリーニング性と耐久性が向上するためと考えられる。
本発明に含有されるトナー粒子は更にスチレン系極性樹脂を含み、前記スチレン系極性樹脂のGPCクロマトグラムにおけるメインピークのピーク分子量をMpとした時、Mpが1.0×104以上3.0×104以下であり、低分子量成分(分子量がピーク分子量Mp未満の領域)の酸価をα(mgKOH/g)、高分子量成分(分子量がピーク分子量Mp以上の領域)の酸価をβ(mgKOH/g)としたとき、α/βが0.80以上1.20以下を満たすことが好ましい。
スチレン系極性樹脂を用いて、水系媒体中でトナーを製造することにより、極性樹脂はトナーの外層として機能している。
カプセルタイプのトナーの中には、内層と外層とに分離されているものが多い。このタイプのカプセルトナーは、外層によって内層を保護している。しかしながら、内層と外層との密着性が弱い場合、連続出力でトナーにストレスがかけ続けられると、外層の剥離や削れが生じ、トナー粒子表面がある時点で急激に変化する場合がある。
これに対して、メカニズムは明確ではないが、本発明においてスチレン系極性樹脂を用いることで内層との密着性が向上していると考えている。具体的には、水系媒体中でトナー粒子を製造する際に、極性を有しつつ結着樹脂となじみやすいスチレン系極性樹脂を用いることで、内層との密着性を充分確保しながら外層形成することが可能であると考えている。また、前記極性樹脂は、極性を持ちつつ結着樹脂とのなじみやすさをも同時に持つ為、トナー粒子中において極性基を有する樹脂の濃度勾配が生じると本発明者らは考えている。
即ち、トナー粒子における内層と外層との密着性が高いこと、トナーの加圧時の外的要因に対する強靭性が大きいことにより、現像特性が向上していると本発明者らは考えている。
スチレン系極性樹脂のピーク分子量Mpは上記範囲とすることで、トナーの保存安定性が向上し、より低温環境下でのクリーニング性と耐久性を両立させることができるため好ましい。
また、α/βを上記範囲とすることで、従来のトナーよりも耐久性が一層良好なものとなる。水系媒体中でトナーを製造する際、酸価が高い成分の方が水との親和性が高いためトナーの表面へ偏在しやすい傾向がある。そのため、極性樹脂中のポリマー鎖の中でも酸価が高いポリマー鎖がよりトナーの表面の方へ偏在する。
以上のことから、本発明に用いられるスチレン系極性樹脂は、低分子量成分の酸価と高分子量成分の酸価が近しいことが好ましい。
α/βの値を上記範囲にするためには例えば、下記のような製造方法が挙げられる。
(1)圧力下で重合温度を上げる。
(2)重合初期にスチレンを多めに滴下し、重合後半にメタクリル酸やアクリル酸を多めに滴下する。
(3)分子量分布が狭い酸価が同じでピーク分子量が異なる2種類の極性樹脂を混合する。
また、本発明に用いられるスチレン系極性樹脂の酸価は5mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることが好ましい。また、スチレン系極性樹脂の含有量が重合性単量体100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは8質量部以上30質量部以下である。スチレン系極性樹脂の酸価及び含有量を上記範囲とすることでトナーの外層が適度な硬さとなるため、トナーの耐久性とクリーニング性が一層良好なものとなる。
以下に、本発明で用いられる材料について説明する。
本発明で用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン;ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ポリ酢酸ビニル;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は混合して使用される。
スチレン共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドジテル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドのような二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換体;マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルのような二重結合を有するジカルボン酸及びその置換体;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルのようなビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンのようなエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンのようなビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテルが挙げられる。これらビニル単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
本発明のトナーを重合方法で製造する際に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。前記ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンのようなビニルケトンが挙げられる。
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
本発明においては、前記した単官能性重合性単量体を単独で或いは2種以上組み合わせて、又は前記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用する。多官能性重合性単量体は架橋剤として使用することも可能である。
本発明における、ポリエステル樹脂は、スチレンやアクリレートモノマーを主成分とする分散質の油滴中で、重合が進むにつれて層分離し易い傾向を示すため、安定した最外殻のシェル層が形成される。均一なシェル層の形成は、耐久性に優れる。
前記ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分と酸成分を以下に例示する。アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また下記一般式(1)で表されるビスフェノール誘導体、
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2乃至10である。)
あるいは一般式(1)の化合物の水添物、また、下記一般式(2)で示されるジオール、
あるいは式(2)の化合物の水添物のジオール、さらには、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコール等、が挙げられる。
2価のカルボン酸としては以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6乃至18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物、さらには、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸の如き多価カルボン酸やその無水物。
本発明における、ポリエステル樹脂の含有量は、重合性単量体100質量部に対して1乃至10質量部が好ましい。ポリエステル樹脂が1質量部以上含有されると、均一なシェル層を形成することができる。また10質量部以内で含有されると、乳化粒子等の生成が抑えられ、安定した現像性を示すことができる。
本発明に用いられるスチレン系極性樹脂の具体的な例としては、ビニル安息香酸及びその誘導体からなる重合性単量体とスチレンとの共重合体;メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如き含窒素単量体の重合体もしくは含窒素単量体とスチレン−不飽和カルボン酸エステルとスチレンとの共重合体;アクリロニトリルの如きニトリル系単量体とスチレンとの共重合体;塩化ビニルの如き含ハロゲン系単量体とスチレンとの共重合体;アクリル酸、メタクリル酸の如き不飽和カルボン酸とスチレンとの共重合体;不飽和二塩基酸とスチレンとの共重合体;不飽和二塩基酸無水物とスチレンとの共重合体;ニトロ系単量体とスチレン系単量体との共重合体;が挙げられる。
本発明においては帯電性を良好なものとするために、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸、アクリル酸エステルからなる重合性単量体より少なくとも一種の重合性単量体を含むスチレン系樹脂であることが好ましい。
また分子量を調整する目的で、これらの重合性単量体に公知の多官能性重合性単量体や連鎖移動剤を添加しても良い。
本発明に用いられる炭化水素ワックスとしては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスを使用した場合に、現像性を長期にわたり良好に維持した上で、定着部材への耐オフセット性を良好に保ち得る。なお、これらの炭化水素ワックスには、トナーの帯電性に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。
本発明に用いられるワックスの含有量は、重合性単量体100.0質量部に対して好ましくは1.0質量部乃至15.0質量部であり、より好ましくは6.0質量部乃至15.0質量部である。
更に、前記ワックスは、示差走査熱量測定(DSC)装置で測定される昇温時のDSC曲線において、最大吸熱ピーク温度が70℃乃至120℃の範囲内であることが好ましい。
本発明に用いられる黒色着色剤としては、カーボンブラック,磁性体,以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い各色に調色されたものが利用される。特に染料やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。
本発明に用いられるイエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、128、129、138、147、150、151、154、155、168、180、185、214等が例示できる。
本発明に用いられるマゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19等が例示できる。
本発明に用いられるシアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。前記着色剤の添加量は、重合性100質量部に対し1乃至20質量部添加して用いられる。
さらに本発明のトナーは、着色剤として磁性材料を含有させ磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。磁性材料としては、以下の、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト如きの酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属或いはこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属の合金及びその混合物等が例示できる。
前記磁性体は、より好ましくは、表面改質された磁性体が好ましい。重合法により磁性トナーを調製する場合には、重合阻害のない物質である表面改質剤により、疎水化処理を施したものが好ましい。このような表面改質剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤を挙げることができる。
これらの磁性体は個数平均粒径が2μm以下、好ましくは0.1乃至0.5μmのものが好ましい。トナー粒子中に含有させる量としては重合性単量体100質量部に対し20乃至200質量部、特に好ましくは結着樹脂100質量部に対し40乃至150質量部が良い。
本発明では、帯電制御や水系媒体中の造粒安定化を主目的として、スルホン酸基を側鎖に持つ高分子が用いられることが好ましい。その中で特にスルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を含有する重合体又は共重合体を用いることが好ましい。
上記重合体を製造するためのスルホン酸基を有する単量体として、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸が例示できる。
本発明に用いられるスルホン酸基等を含有する重合体は、上記単量体の単重合体であっても構わないが、上記単量体と他の単量体との共重合体であっても構わない。上記単量体と共重合体をなす単量体としては、ビニル系重合性単量体があり、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。
単官能性重合性単量体としては以下の、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン系重合性単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン等が例示出来る。
多官能性重合性単量体としては以下の、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が例示できる。
そして上記スルホン酸基等を有する重合体は、重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対し0.01乃至5.0質量部を含有することが好ましい。より好ましくは、0.1乃至3.0質量部である。
本発明のトナーには、帯電特性を安定化するために前記スルホン酸基を側鎖に持つ高分子の他に、帯電制御剤を配合しても良い。帯電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる帯電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法にて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない帯電制御剤が特に好ましい。
上記荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類が挙げられる。さらに、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
一方、荷電制御剤として、トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
これら荷電制御剤の中でも金属を含むサリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが好ましい。最も好ましい荷電制御剤としては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物である。
荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。しかしながら、本発明のトナーには、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナーの層厚規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
水系媒体中でトナー粒子を製造する方法としては、以下の方法が挙げられる。トナー必須成分から構成される乳化液を水系媒体中で凝集させる乳化凝集法;有機溶媒中にトナー必須成分を溶解させた後、水系媒体中で造粒後有機溶媒を揮発させる懸濁造粒法;トナー必須成分を溶解させた重合性単量体を直接水系媒体中で造粒後重合する懸濁重合法や乳化重合法;その後シード重合を利用しトナーに外層を設ける方法;界面重縮合や液中乾燥に代表されるマイクロカプセル法。
これらの中で、本発明の作用効果を発揮しやすいものとして、特に懸濁重合法が好ましい。この懸濁重合法においては、重合性単量体にワックス及び着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、帯電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散せしめて重合性単量体組成物とする。その後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌器を用いて分散し、そして重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。上記トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により流動性向上剤を混合し表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。
この懸濁重合法でトナーを製造する場合には、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、帯電量の分布も比較的均一となる。また外添剤への依存度が少ない高い転写性を維持するトナーが得られやすい。
懸濁重合法によるトナーを製造する際の重合性単量体としては上記単官能性重合性単量体、多官能性重合性単量体が挙げられる。
架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。以下の、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンの如きジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物等が例示できる。これらは、単独もしくは混合として使用できる。好ましい添加量としては、結着樹脂100質量部に対し0.001乃至15質量部である。
本発明に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。好ましくは、重合反応時の反応温度における半減期が0.5乃至30時間のものである。また重合性単量体100質量部に対し0.5乃至20質量部の添加量で重合反応を行うと、通常、分子量1万乃至10万の間に極大を有する重合体が得られ、適当な強度と溶融特性を有するトナーを得ることができる。
重合開始剤としては、以下の、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル如きのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド如きの過酸化物系重合開始剤等が例示できる。
上記水系媒体には、分散安定剤を添加する。分散安定剤として使用する無機化合物としては以下の、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が例示できる。
有機化合物としては以下の、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等が例示できる。これらの分散安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2乃至20質量部を使用することが好ましい。
また、これら分散安定剤の微細な分散のために、0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を使用しても良い。分散安定剤の初期の作用を促進するためのものである。具体例としては以下の、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が例示できる。
分散安定剤として、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いても良いが、より細かい粒子を得るために、水系媒体中にて上記無機化合物を生成させて用いても良い。
例えばリン酸カルシウムの場合、高撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合するとよい。
更に本発明のトナーにおいて、トナー粒子の流動性を向上させる目的で、流動性向上剤をトナー粒子に添加しても良い。流動性向上剤としては、以下の、フッ化ビニリデン微粉未、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛の如き脂肪酸金属塩;酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末の如き金属酸化物または、上記金属酸化物を疎水化処理した粉末;及び湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如きシリカ微粉末または、それらシリカにシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルの如き処理剤により表面処理を施した表面処理シリカ微粉末等が例示できる。
流動性向上剤は、トナー粒子100質量部に対して、0.01乃至5質量部を使用することが好ましい。
以下に本発明の物性値の測定方法について説明する。
<加熱脱着装置を用いたワックスの揮発成分濃度の測定>
本発明におけるワックスの揮発成分濃度は以下の方法で測定する。
測定装置としては以下の測定装置を用いる。
加熱脱着装置:TurboMatrixATD(パーキンエルマー社製)
GC/MS :TRACE DSQ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
(内部標準入りガラスチューブの作製)
あらかじめ10mg のTenaxTA吸着剤をガラスウールで挟んだ加熱脱着装置用のガラスチューブを作製し、不活性雰囲気ガスを流した状態下で、300℃、3時間コンディショニングを行ったものを用意する。その後、重水素化ヘキサデカン(ヘキサデカンD34)100ppmのメタノール溶液5μLをTenaxTAに吸着させ、内部標準入りガラスチューブとする。
(ワックスの測定)
ワックス約1mgをあらかじめ300℃で焼き出ししたアルミホイルに包み、(内部標準入りガラスチューブの作製)で準備した、専用チューブに入れる。このサンプルを加熱脱着装置用のテフロン(登録商標)キャップでフタをし、装置へセットする。
このサンプルを下記記条件で測定し、内部標準ピークおよび、重水素化ヘキサデカン以降のピークの全ピーク面積を算出する。
・加熱脱着装置条件
チューブ温度 :200℃
トランスファー温度 :300℃
バルブ温度 :300℃
カラム圧力 :150kPa
入口スプリット :25ml/min.
出口スプリット :10ml/min.
2次吸着管材質 :TenaxTA
保持時間 :10 min.
脱着時2次吸着管温度:−30℃
2次吸着管脱着温度 :300℃
・GC/MS条件
カラム:ウルトラアロイ(金属製カラム)UT−5(内径0.25mm, 液相0.25μm、 長さ30m)
カラム昇温条件:60℃(3min)、350℃(20.0℃/min)、350℃(10min)
なお、加熱脱着装置のトランスファーラインとGCカラムは直結させ、GC注入口は使用しない。
(解析)
上記操作で得られたピークのうち、内部標準である重水素化ヘキサデカンのリテンションタイム以降のピークをすべて積分し、全ピークの合計値を算出し、下記式よりワックスの揮発成分濃度を算出する。この際、ピークとは異なるノイズピーク等を積分値に加えないよう注意する。
ワックスの揮発成分濃度(ppm)
=(A1/B1×0.0005×0.77)/C1×1000000
A1・・・重水素化ヘキサデカン以降の全ピーク面積
B1・・・重水素化ヘキサデカン(内部標準)のピーク面積
C1・・・秤量したワックスの重量(mg)
<貯蔵弾性率の測定>
本発明における温度70℃の貯蔵弾性率(G’70)と、110℃における貯蔵弾性率(G’110)は以下の方法で測定する。
測定装置としては、回転平板型レオメーター「ARES」(TA INSTRUMENTS社製)を用いる。測定試料としては、25℃の環境下で、錠剤成型器を用いて、トナーを直径7.9mm、厚さ2.0±0.3mmの円板状に加圧成型した試料を用いる。
該試料をパラレルプレートに装着し、室温(25℃)から120℃に15分間で昇温して、試料の形を整えた後、粘弾性の測定開始温度まで冷却し、測定を開始する。この際、初期のノーマルフォースが0になるようにサンプルをセットすることが、重要である。また、以下に述べるように、その後の測定においては、自動テンション調整(Auto Tension Adjustment ON)にすることで、ノーマルフォースの影響をキャンセルできる。
測定は、以下の条件で行う。
(1) 直径7.9mmのパラレルプレートを用いる。
(2) 周波数(Frequency)は1.0Hzとする。
(3) 印加歪初期値(Strain)を0.1%に設定する。
(4) 30乃至200℃の間を、昇温速度(Ramp Rate)2.0℃/minで測定を行う。尚、測定においては、以下の自動調整モードの設定条件で行う。自動歪み調整モード(Auto Strain)で測定を行う。
(5) 最大歪(Max Applied Strain)を20.0%に設定する。
(6) 最大トルク(Max Allowed Torque)200.0g・cmとし、最低トルク(Min Allowed Torque)0.2g・cmと設定する。
(7) 歪み調整(Strain Adjustment)を 20.0% of Current Strain と設定する。測定においては、自動テンション調整モード(Auto Tension)を採用する。
(8) 自動テンションディレクション(Auto Tension Direction)をコンプレッション(Compression)と設定する。
(9) 初期スタティックフォース(Initial Static Force)を10.0g、自動テンションセンシティビティ(Auto Tension Sensitivity)を40.0gと設定する。
(10) 自動テンション(Auto Tension)の作動条件は、サンプルモデュラス(Sample Modulus)が1.0×103(Pa)以上である。
上記の方法により、温度30℃以上200℃以下の温度範囲において貯蔵弾性率G’を測定した際の温度70℃における貯蔵弾性率G’の値をG’70、110℃における貯蔵弾性率G’の値をG’110とした。
<トナーの平均円形度の測定>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200乃至1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
<極性樹脂の物性値>
本発明におけるGPCクロマトグラムにおけるピーク分子量Mpは以下のようにして測定した。
まず、測定試料は以下のようにして作成した。
極性樹脂とTHFとを5mg/mlの濃度で混合し、室温にて24時間静置して行った。その後、サンプル処理フィルタ(マイショリディスクH−25−2 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン サイエンスジャパン社製)を通過させたものをGPCの試料として調製した。
次に、GPC測定装置(HLC−8120G PC 東ソー社製)を用い、前記装置の操作マニュアルに従い、下記の測定条件で測定した。
(測定条件)
装置 :高速GPC「HLC8120 GPC」(東ソー社製)
カラム :Shodex KF−801、802、803、804、805 、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液 :THF
流速 :1.0ml/min
オーブン温度 :40.0℃
試料注入量 :0.10ml
また、試料の分子量の算出にあたっては、検量線は、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量較正曲線を使用して、ピーク分子量Mpを算出した。
極性樹脂の低分子量成分と高分子量成分の分取方法は以下のようにして実施した。
〈各成分の分取〉
[装置構成]
LC−908(日本分析工業株式会社製)
JRS−86(同社;リピートインジェクタ)
JAR−2(同社;オートサンプラー)
FC−201(ギルソン社;フラクッションコレクタ)
[カラム構成]
JAIGEL−1H乃至5H(20φ×600mm:分取カラム)
[測定条件]
温度:40℃
溶媒:THF
流量:5ml/min.
検出器:RI
分取方法は、極性樹脂のピーク分子量Mp となる溶出時間を予め測定し、その前後で低分子量成分及び高分子量成分を分取する。分取したサンプルから溶剤を除去し酸価測定用試料とする。
本発明における極性樹脂の酸価、低分子量成分の酸価α及び高分子量成分の酸価βは以下の方法で測定する。
酸価は以下算出式から求める。
酸価=〔(サンプル終点−ブランク終点)×1.009×56×1/10〕/試料質量
(試料調整)
200mlビーカーにサンプル1.0gを精秤し、スターラーで攪拌しながらトルエン120mlに溶解し、さらにエタノール30mlを加える。
(装置)
装置としては例えば、電位差自動滴定装置AT−400WIN(京都電子工業株式会社製)を用いる。
装置の設定は、有機溶剤に溶解する試料を対象とする。使用するガラス電極と比較電極は、有機溶剤対応のものを使用する。
pHガラス電極は、例えば商品コード#100−H112を用いる。尚、先端は絶対に乾燥させない。
コルク型比較電極は、商品コード#100−R115を用いる。尚、先端は絶対に乾燥させない。内部液が内部液補充口まで満たされているかを確認する。内部液は3.3mol/KCl溶液を使用する。
(手順)
前記調整した試料を前記装置のオートサンプラーにセットし、前記電極を試料溶液中に浸す。次に滴定液(1/10N KOH(エタノール溶液))を試料溶液上にセットし、0.05mlずつ自動間欠滴定で滴下させ酸価を算出する。
本発明における極性樹脂のガラス転移温度Tgは、以下の条件にて測定し、昇温1回目のDSC曲線のピーク位置からそれぞれ求める。
(測定条件)
・20℃で5分間平衡を保つ
・1.0℃/minのモジュレーションをかけ、140℃まで1℃/minで昇温
・140℃で5分間平衡を保つ
・20℃まで降温
示差走査熱量計(DSC測定装置)は、DSC−7(パーキンエルマー社製)、DSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)等を用い、ASTM D3418−82に準じて以下のように測定する。測定サンプルは2乃至5mg、好ましくは3mgを精密に秤量する。それをアルミニウム製のパン中に入れ、対照用に空のアルミパンを用い、測定範囲20乃至140℃の間で、昇温速度1℃/minで測定を行う。
ここでいうガラス転移温度は中点法で求めた値である。
次に本発明のトナー用いた画像形成方法の例について図1及び図2を用いて説明する。
本願実施例で用いられる画像形成方法を含む、画像形成装置の構成を図2に示す。図2に示された画像形成装置は転写方式電子写真プロセスを用いたレーザビームプリンタである。特に、図2はタンデム型のカラーLBP(カラーレーザープリンタ)の断面図を示す。
図2において、101(101a乃至101d)は図示矢印方向(反時計方向)に所定のプロセススピードで回転する潜像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと称する)である。感光ドラム101a、101b、101c、101dは順にカラー画像のイエロー(Y)成分、マゼンタ(M)成分、シアン(C)成分、ブラック(Bk)成分のそれぞれを分担するものである。
以下Y、M、C、Bkの各画像形成装置をそれぞれユニットa、ユニットb、ユニットc、ユニットdと呼ぶ。
これらの感光ドラム101a乃至101dは、不図示のドラムモータ(直流サーボモータ)によって回転駆動されるが、各感光ドラム101a乃至101dにそれぞれ独立した駆動源を設けても良い。尚、ドラムモータの回転駆動は不図示のDSP(デジタルシグナルプロセッサ)によって制御され、その他の制御は不図示のCPUによって行われる。
また、静電吸着搬送ベルト109aは、駆動ローラ109bと固定ローラ109c,109e及びテンションローラ109dに張架されており、駆動ローラ109bによって図示矢印方向に回転駆動され、記録媒体Sを吸着して搬送する。
以下、4色のうち、ユニットa(イエロー)を例として説明する。
感光ドラム101aはその回転過程で1次帯電手段102aにより所定の極性及び電位に一様に1次帯電処理される。そして、感光ドラム101aに対してレーザービーム露光手段(以下、スキャナーと称する)103aにより光像露光がなされ、前記感光ドラム101a上に画像情報の静電潜像が形成される。
次に、現像部104aによってトナー像が感光ドラム101a上に形成され、静電潜像が可視化される。同様な工程が他の3色(マゼンタ(B)、シアン(C)及びブラック(Bk))についてもそれぞれ実施される。
而して、4色のトナー像は、所定のタイミングで給紙ローラ108bにより搬送されてきた記録媒体Sを停止、再搬送するレジストローラ108cにより同期され、感光ドラム101a乃至101dと静電吸着搬送ベルト109aとのニップ部において記録媒体Sにトナー像が順次転写される。また、これと同時に記録媒体Sへのトナー像転写後の感光ドラム101a乃至101dはクリーニング手段106a,106b,106c,106dによって転写残トナー等の残存付着物が除去され、繰り返し作像に供される。
4つの感光ドラム101a乃至101dからトナー像が転写された記録媒体Sは、駆動ローラ109b部において静電吸着搬送ベルト109a面から分離されて定着器110に送り込まれ、定着器110においてトナー像が定着された後、排出ローラ110cによって排出トレー113に排出される。
次に現像部の拡大図(図1)を用いて、本発明に適用されうる非磁性一成分接触現像方式での画像形成方法の具体例を説明する。図1において、現像ユニット13は、一成分現像剤としての非磁性トナー17を収容した現像剤容器23と、現像剤容器23内の長手方向に延在する開口部に位置し潜像担持体(感光ドラム)10と、対向設置されたトナー担持体14とを備え、潜像担持体10上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。潜像担持体接触帯電部材11は潜像担持体10に当接している。潜像担持体接触帯電部材11のバイアスは電源12により印加されている。
トナー担持体14は、上記開口部にて図に示す右略半周面を現像剤容器23内に突入し、左略半周面を現像剤容器23外に露出して横設されている。この現像剤容器23外へ露出した面は、図1のように現像ユニット13の図中左方に位置する潜像担持体10に当接している。
トナー担持体14は矢印B方向に回転駆動され、潜像担持体10の周速は50乃至170mm/s、トナー担持体14の周速は潜像担持体10の周速に対して1乃至2倍の周速で回転させている。
トナー担持体14の上方位置には、SUS等の金属板や、ウレタン、シリコーン等のゴム材料、バネ弾性を有するSUS又はリン青銅の金属薄板を基体とし、トナー担持体14への当接面側にゴム材料を接着したもの等からなる規制部材16が、規制部材支持板金24に支持され、自由端側の先端近傍をトナー担持体14の外周面に面接触にて当接するように設けられており、その当接方向としては、当接部に対して先端側がトナー担持体14の回転方向上流側に位置するいわゆるカウンター方向になっている。規制部材16の一例としては、厚さ1.0mmの板状のウレタンゴムを規制部材支持板金24に接着した構成で、トナー担持体14に対する当接圧(線圧)を、適宜設定したものである。当接圧は、好ましくは20乃至300N/mである。なお、当接圧の測定は、摩擦係数が既知の金属薄板を3枚当接部に挿入し、中央の1枚をばねばかりで引き抜いた値から換算する。なお、規制部材16は当接面側にゴム材料などを接着したものの方がトナーとの付着性の面で、長期使用において規制部材へのトナーの融着、固着を抑制できるため望ましい。また規制部材16は、トナー担持体14に対する当接状態を先端を当接させるエッジ当接とすることも可能である。なお、エッジ当接とする場合は、トナー担持体との接点におけるトナー担持体の接線に対する規制部材の当接角を40度以下になるよう設定するとトナーの層規制の点で更に望ましい。
トナー供給ローラ15は、規制部材16のトナー担持体14表面との当接部に対しトナー担持体14の回転方向上流側に当接され、かつ回転可能に支持されている。このトナー供給ローラ15のトナー担持体14に対する当接幅としては、1乃至8mmが有効で、またトナー担持体14に対してその当接部において相対速度を持たせることが好ましい。
帯電ローラ29は本発明の画像形成方法に必須のものではないが、設置されているとより好ましい。帯電ローラ29はNBR、シリコーンゴム等の弾性体であり、抑圧部材30に取り付けられている。そしてこの抑圧部材30による帯電ローラ29のトナー担持体14への当接荷重は0.49乃至4.9Nに設定する。帯電ローラ29の当接により、トナー担持体14上のトナー層は細密充填され均一コートされる。規制部材16と帯電ローラ29の長手位置関係は、帯電ローラ29がトナー担持体14上の規制部材16当接全域を確実に覆うことができるように配置されるのが好ましい。
また、帯電ローラ29の駆動については、トナー担持体14との間は従動又は同周速が必須であり、帯電ローラ29とトナー担持体14間に周速差が生じるとトナーコートが不均一になり、画像上にムラが発生するため好ましくない。
帯電ローラ29のバイアスは、電源27によってトナー担持体14と潜像担持体10の両者間に直流で(図1の27)印加されており、トナー担持体14上の非磁性トナー17は帯電ローラ29より、放電によって電荷付与を受ける。
帯電ローラ29のバイアスは、非磁性トナーと同極性の放電開始電圧以上のバイアスであり、トナー担持体14に対して1000乃至2000Vの電位差が生じるように設定される。
帯電ローラ29による帯電付与を受けた後、トナー担持体14上に薄層形成されたトナー層は、一様に潜像担持体10との対向部である現像部へ搬送される。
この現像部において、トナー担持体14上に薄層形成されたトナー層は、図1に示す電源27によってトナー担持体14と潜像担持体10の両者間に印加された直流バイアスによって、潜像担持体10上の静電潜像にトナー像として現像される。
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。以下にワックス、スチレン系極性樹脂及びトナーの製造方法について記載する。実施例中及び比較例中の部は特に断りがない場合、全て質量基準である。
(ワックスの製造例1)
HNP−51(日本精鑞社製)を用いて0.2mmHg、250℃で真空蒸留を行い、低分子量成分が全体の20%留出した時点で蒸留を停止し、冷却することでワックスAを得た。
(ワックスの製造例2)
ワックスの製造例1において、低分子量成分を5%カットすること以外は同様の方法でワックスBを得た。
(ワックスの製造例3)
ワックスの製造例1においてHNP−9(日本精鑞社製)用い、低分子量成分を10%カットすること以外は同様の方法でワックスCを得た。
またHNP−51をワックスDとする。
ワックスA乃至Dの物性値を表1に示す。
(スチレン系極性樹脂の製造例1)
加圧及び減圧可能なフラスコ内にキシレン(沸点144℃)300部を投入し、撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換した後、昇温して還流させる。
この還流下で、
・スチレン 95.8部
・メタクリル酸メチル 2.5部
・メタクリル酸 1.7部
・ジ−tert−ブチルパーオキサイド 2.0部
の混合液を添加したのち後、重合温度を175℃、反応時の圧力を0.100MPaにて重合を5時間行った。その後、減圧下にて脱溶剤工程を3時間行い、キシレンを除去して、粉砕することで極性樹脂Aを得た。
(スチレン系極性樹脂の製造例2)
スチレン系極性樹脂の製造例1において、重合温度を198℃に変更することを除いて、同様にして製造し、極性樹脂Bを得た。
(スチレン系極性樹脂の製造例3)
スチレン系極性樹脂の製造例1において、重合温度を165℃に変更することを除いて、同様にして製造し、極性樹脂Cを得た。
(スチレン系極性樹脂の製造例4)
スチレン系極性樹脂の製造例1において、ジ−tert−ブチルパーオキサイドの添加量を1.0部に変更することを除いて、同様にして製造し、極性樹脂Dを得た。
(スチレン系極性樹脂の製造例5)
スチレン系極性樹脂の製造例1において、ジ−tert−ブチルパーオキサイドの添加量を3.5部に変更することを除いて、同様にして製造し、極性樹脂Eを得た。
(スチレン系極性樹脂の製造例6)
スチレン系極性樹脂の製造例1において、重合温度を210℃に変更することを除いて、同様にして製造し、極性樹脂Fを得た。
(スチレン系極性樹脂の製造例7)
スチレン系極性樹脂の製造例1において、重合温度を145℃に変更することを除いて、同様にして製造し、極性樹脂Gを得た。
(スチレン系極性樹脂の製造例8)
スチレン系極性樹脂の製造例1において、重合温度を165℃に変更し、ジ−tert−ブチルパーオキサイドの添加量を0.5部に変更することを除いて、同様にして製造し、極性樹脂Hを得た。
(スチレン系極性樹脂の製造例9)
スチレン系極性樹脂の製造例1において、重合温度を165℃に変更し、ジ−tert−ブチルパーオキサイドの添加量を4.0部に変更することを除いて、同様にして製造し、極性樹脂Iを得た。
極性樹脂A乃至Iに関する、物性を表2に示す。
〔実施例1〕
・スチレン 42.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7.0部
・スルホン酸基含有樹脂(アクリルベースFCA−1001−NS、藤倉化成製)
1.0部
上記材料を、スターミルLMZ2型(アシザワ・ファインテック社製)を用いて3時間分散し、顔料分散組成物を調製した。
また、別容器にて、下記材料をプロペラ式撹拌装置にて溶解して樹脂溶解液を調製した。
・スチレン 30.0部
・n−ブチルアクリレート 28.0部
・極性樹脂A 20.0部
・ポリエステル樹脂 5.0部
(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)−エチレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)(モル比 50:30:20);酸価9;ガラス転移点60℃ Mw=10000、Mw/Mn=3.20)
更に、別容器に60℃に加温したイオン交換水900部、リン酸三カルシウム2.5部、10%塩酸11部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて10,000rpmにて撹拌し、水系媒体を得た。
次に、上記顔料分散組成物、上記樹脂溶解液、ワックスA9.0部及びジビニルベンゼン0.075部を投入後、60℃に昇温し、30分間分散・混合を行った。
これに重合開始剤tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート8.0部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、温度60℃、窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて10,000rpmで10分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度70℃に昇温した。5時間反応させた後、更に80℃に昇温し、3時間反応させた。冷却後、塩酸を加えpHを1.4にし、3時間撹拌した。トナー粒子を濾別し、水洗を行った後、温度40℃にて48時間乾燥し、トナー粒子を得た。
トナー粒子(100.0部)に対し、ジメチルシリコーンオイルで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.5部(数平均一次粒子径:16nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で10分間混合して、トナー(A)を得た。
〔実施例2〕
実施例1において、ワックスAをワックスBに変更した以外は、同様の方法によりトナー(B)を得た。
〔実施例3〕
実施例1において、樹脂溶解液を調整する際のスチレン添加量を32.0部、n−ブチルアクリレート添加量を26.0部に変更し、ワックスAをワックスCに変更した以外は同様の方法によりトナー(C)を得た。
〔実施例4〕
実施例1において、樹脂溶解液を調整する際のスチレン添加量を28.0部、n−ブチルアクリレート添加量を32.0部に変更した以外は同様の方法によりトナー(D)を得た。
〔実施例5〕
実施例1において、ジビニルベンゼン添加量を0.10部に変更した以外は同様の方法によりトナー(E)を得た。
〔実施例6〕
実施例1において、ジビニルベンゼン添加量を0.050部に変更した以外は同様の方法によりトナー(F)を得た。
〔実施例7〕
実施例1において、水系媒体を得る際に添加する10%塩酸の添加量を13部とした以外は同様の方法によりトナー(G)を得た。
〔実施例8〕
実施例1において、水系媒体を得る際に添加する10%塩酸の添加量を9部とした以外は同様の方法によりトナー(H)を得た。
〔実施例9〕
実施例1において極性樹脂Aを極性樹脂Bに変更した以外は同様の方法によりトナー(I)を得た。
〔実施例10〕
実施例1において極性樹脂Aを極性樹脂Cに変更した以外は同様の方法によりトナー(J)を得た。
〔実施例11〕
実施例1において極性樹脂Aを極性樹脂Dに変更した以外は同様の方法によりトナー(K)を得た。
〔実施例12〕
実施例1において極性樹脂Aを極性樹脂Eに変更した以外は同様の方法によりトナー(L)を得た。
〔実施例13〕
実施例1において極性樹脂Aを極性樹脂Fに変更した以外は同様の方法によりトナー(M)を得た。
〔実施例14〕
実施例1において極性樹脂Aを極性樹脂Gに変更した以外は同様の方法によりトナー(N)を得た。
〔実施例15〕
実施例1において極性樹脂Aを極性樹脂Hに変更した以外は同様の方法によりトナー(O)を得た。
〔実施例16〕
実施例1において極性樹脂Aを極性樹脂Iに変更した以外は同様の方法によりトナー(P)を得た。
〔実施例17〕
実施例1において極性樹脂Aを使用しなかった以外は同様の方法によりトナー(Q)を得た。
〔実施例18〕
実施例18では以下に記した乳化凝集法によってトナーを製造した。
〈樹脂微粒子分散液の調製〉
・スチレン 72.0部
・n−ブチルアクリレート 28.0部
・極性樹脂A 20.0部
・スルホン酸基含有樹脂(アクリベースFCA−1001−NS,藤倉化成製))
1.0部
上記の成分を混合溶解し、他方、非イオン性界面活性剤(ノニポール400、花王製)6部、アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬製)10部をイオン交換水 500部に溶解したものをフラスコ中に収容し、上記の混合溶液を添加して分散し乳化して、10分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム4部を溶解したイオン交換水溶液50部を投入した。次いで、系内を十分に窒素で置換した後、フラスコを攪拌しながらオイルバスで系内が温度70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。これによりアニオン性樹脂微粒子分散液を得た。
〈着色剤粒子分散液の調製〉
・C.I.ピグメントブルー15:3 7.0部
・非イオン性界面活性剤(ノニポール400、花王製) 1.0部
・イオン交換水 100.0部
上記成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA 製ウルトラタラックス)により10分間分散し、着色剤粒子分散液を得た。
〈離型剤粒子分散液の調製〉
・ワックスA 9.0部
・カチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王製) 5.0部
・イオン交換水 200.0部
上記成分を温度95℃に加熱して、IKA 製ウルトラタラックスT50で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液を得た。
〈シェル形成用微粒子分散液の調整〉
実施例1で用いた、ポリエステル樹脂5.0部を酢酸エチル50.0部に溶解させた。その溶解液をIKA製ウルトラタラックスT50で乳化させながら、温度80℃で加熱して6時間保持することで脱溶剤を行い、シェル形成用微粒子分散液を得た。
〈トナー粒子の作製〉
上記樹脂微粒子分散液、上記着色剤粒子分散液、上記離型剤粒子分散液、及びポリ塩化アルミニウム1.2部を混合して、丸型ステンレス製フラスコ中でIKA製のウルトラタラックスT50を用い十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら温度51℃まで加熱した。温度51℃で60分保持した後、ここに上記シェル形成用微粒子分散液を添加した。その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを6.5 に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら温度97℃まで加熱して3時間保持した。反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに温度40℃のイオン交換水を用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに5回繰り返した後、吸引濾過により固液分離を行った。次いで温度40℃にて48時間乾燥し、トナー粒子を得た。
トナー粒子(100.0部)に対し、ジメチルシリコーンオイルで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.5部(数平均一次粒子径:16nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で10分間混合して、トナー(R)を得た。
〔比較例1〕
実施例1においてワックスAをワックスDに変更し、極性樹脂Aを極性樹脂Fに変更した以外は、同様の方法によりトナー(a)を得た。
〔比較例2〕
実施例1において、樹脂溶解液を調整する際のスチレン添加量を34.0部、n−ブチルアクリレート添加量を24.0部に変更、極性樹脂Aを極性樹脂Fに変更、ジビニルベンゼン添加量を0.12部に変更した。また水系媒体を得る際に添加する10%塩酸を添加しない以外は、同様の方法によりトナー(b)を得た。
〔比較例3〕
実施例1において、樹脂溶解液を調整する際のスチレン添加量を28.0部、n−ブチルアクリレート添加量を30.0部に変更、極性樹脂Aを極性樹脂Gに変更し、ジビニルベンゼン添加量を0.03部に変更した以外は同様の方法によりトナー(c)を得た。
〔比較例4〕
実施例1において、樹脂溶解液を調整する際のスチレン添加量を26.0部、n−ブチルアクリレート添加量を32.0部に変更、極性樹脂Aを極性樹脂Gに変更し、ジビニルベンゼン添加量を0.03部に変更した以外は同様の方法によりトナー(d)を得た。
表3に実施例1乃至18、比較例1乃至4のトナー物性値を示す。
以下に本発明の評価方法及び評価基準について説明する。
<現像性に関する評価>
画像形成装置としては市販のレーザプリンタであるLBP−5400(キヤノン製)の改造機を用い、温度15℃、相対湿度10%環境下及び温度0℃、相対湿度5%環境下でA4のカラーレーザーコピア用紙(キヤノン製、80g/m2)を用いて行った。現像装置の模式図を図1、図2に示す。
評価機の改造点は以下のとおりである。
(1)評価機本体のギアおよびソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが190mm/secとなるようにした。
(2)評価に用いるカートリッジは市販のシアンカートリッジ用い、クリーニングブレードと感光体との当接圧を通常の85%になるように変更した。
この市販のシアンカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、本発明によるトナーを200g充填して評価を行った。なお、マゼンタ、イエロー、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエロー、およびブラックカートリッジを挿入して評価を行った。
印字は印字比率2%のチャートにて連続出力を行い、評価は初期(1枚目)と6000枚の時点で実施し、以下の方法で画像濃度/フィルミング/クリーニング性の確認をした。
(画像濃度)
画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
評価基準
A:1.40以上
B:1.30以上1.40未満
C:1.20以上1.30未満
D:1.10以上1.20未満
(部材汚染)
部材汚染は、現像剤担持体表面へのトナーや外添剤の固着の様子と、得られた画像への影響を目視で観察して、以下の基準で評価した。
評価基準
A:未発生(固着なし)
B:固着がやや発生しているものの、画像への影響は少ない
C:固着があり、これによる画像ムラが僅かに生じているが実用上は問題が少ない。
D:固着が多量にあり、これによる画像ムラが生じている。実用上にも問題がある。
(クリーニング不良)
クリーニング性の評価は、ベタ白画像上の汚れの程度及び、ベタ白画像画出し後の静電画像担持体の汚れの程度を評価した。
評価基準
A:画像上全く問題のない鮮明な画質であり、像担持体に全く汚れが見られないクリーニ ング性。
B:画像上全く問題のない画質が得られるが、像担持体上にやや汚れがみられるクリーニ ング性。
C:実用的には問題の無いクリーニング性。
D:画像及び像担持体に汚れが見られ、実用上好ましくないクリーニング性。
<機内汚染に関する評価>
機内汚染の評価は、常温常湿環境下(25℃50%)で6000枚印字後、新たに作成したシアンカートリッジに入れ替え、再度6000枚印字を行い、これを三回繰り返した後の定着器及び周辺の汚れの程度を評価した。
評価基準
A:画像上全く問題のない鮮明な画質であり、機内全体に全く汚れが見られない。
B:画像上全く問題のない画質が得られるが、定着器周辺に汚れが見られる。
C:定着ローラに汚れが見られ、これにより画像ムラが僅かに生じているが実用上は問題 が少ない。
D:定着ローラ及び定着器周辺のセンサーに汚れが見られ、実用上にも問題がある。
<保存安定性に関する評価>
(ブロッキング試験)
50ccのポリカップにトナーを10g入れた。これに温度55℃の恒温槽に72時間放置した時のトナーの状態を下記のごとく目視判断した。
評価基準
A:まったくブロッキングしておらず、初期とほぼ同様の状態。
B:若干、凝集気味であるが、ポリカップの回転で崩れる状態であり、特に問題とならな い。
C:凝集気味であるが、手で崩してほぐれる状態であり、実用上は問題が少ない。
D:凝集が激しい(固形化)。
トナー(A)乃至(R)及びトナー(a)乃至(d)を上記評価方法により評価した結果を表4に示す。