JP5574945B2 - 光硬化性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、光硬化性組成物、および前記光硬化性組成物に配合して好適な光重合開始剤の一成分である新規化合物カンファーキノンのアセタール誘導体に関する。前記光硬化性組成物は歯科用接着材等の歯科用組成物に好適である。
光を照射することにより硬化する光硬化性組成物は、各種の用途に使用されている。歯科の分野では、例えば歯科用接着材、歯科用修復材等が例示される。
齲蝕等により損傷を受けた歯質が、初中期の比較的小さい窩洞の場合には、審美性、操作の簡略性や迅速性の点から、コンポジットレジンによる直接修復を行うことが多い。一方、比較的大きな窩洞の修復には、金属やセラミックス、或いは歯科用レジンで作られた補綴物が多用される。
コンポジットレジンや補綴物等の修復材料は、歯質に対して接着性を有していない。従って、修復材料を歯質に接着させるためには、重合性単量体成分と重合開始剤成分とを含む硬化性組成物からなる歯科用接着材が併用される。こうした接着材に使用される重合性単量体は、入手のしやすさや安全性の観点から、通常、(メタ)アクリレート系重合性単量体を使用しているが、その歯質への接着力は十分ではない。歯質に対するコンポジットレジンの接着の場合を例にすれば、接着材の接着強度は該コンポジットレジンの硬化に際して発生する内部応力、即ち、歯質とコンポジットレジンとの界面に生じる引っ張り応力に打ち勝つだけの接着強度に達していないことが多い。
更に、咬合によってかかる力に対しても耐えられるだけの接着強度に達していないことが多い。
そのため、これら歯科用接着材の接着強度を向上させるために、使用に際しては、歯質に対して次のような前処理を施している。すなわち、1)硬い歯質(主にヒドロキシアパタイトを主成分とするエナメル質)にエッチング処理するための前処理材を塗布し、さらに、2)プライマーと呼ばれる、歯質中への浸透促進剤としての前処理材の塗布を行っている。
ここで、前者のエッチング処理用の前処理材としては、歯の表面を脱灰する酸水溶液が一般的であり、リン酸、クエン酸、マレイン酸等の水溶液が用いられている。
一方、後者のプライマーは、この後に塗布する接着材を、前記エッチング処理用の前処理材(酸水溶液)により脱灰され粗造化されたエナメル質表面や、脱灰後に象牙質表面に露出したスポンジ状のコラーゲン繊維の微細な隙間に高度に浸透促進し得るものでなくてはならない。この要求から、ヒドロキシエチルメタクリレート等の上記歯質との親和性の良い親水性重合性単量体、或いはさらに浸透性を高めるため有機溶媒を配合した重合性単量体組成物が用いられている。
なお、プライマー自体には、重合開始剤は通常含有されていないが、その上に塗布されるコンポジットレジン用接着材の硬化反応時に、該接着材で生じるラジカルが作用することにより、含有される重合性単量体は重合硬化する。
更に最近では、リン酸エステル基やカルボキシル基等の酸性基を有する重合性単量体を含有させ、プライマーや接着材自身に脱灰能を持たせたものが広く利用されている。
この様にして使用される歯科用接着材に配合される重合開始剤としては、光重合開始剤が多用されている(例えば特許文献1,2)。光重合開始剤は、重合を開始させたいときに、歯科用接着材に可視光領域の波長の光を照射させることにより、短時間に、且つ簡単に歯科用接着材を硬化させる。
任意のタイミングで、短時間に、且つ簡単に接着することのできる歯科用接着材は、歯の治療に際して患者の苦痛および施術者の疲労を大きく減少できる。従って、歯科用接着材に光重合開始剤を配合することは、歯科用接着材の利用価値を大きく向上させ得る。
従来、光重合開始剤が配合される歯科用接着材は、光を遮蔽する遮光容器に収納されている。その理由は、容器に収納されている歯科用接着材が、室内光源の放射する可視光や自然光に含まれる可視光に暴露され、接着材が硬化することを防止するためにある。従来の光重合開始剤が配合される歯科用接着材は、遮光容器に収納されているので、使用前に歯科用接着材が硬化することが避けられる。
しかし、遮光容器を用いている場合は、その内部に収納されている歯科用接着材の残存量を直接視認することができない。従って、残存量を確認する必要がある毎に、遮光容器の蓋を取外し、残存量を視認することになる。または、接着材の入っている遮光容器の質量を測定し、接着材の残存量を推定することになる。
しかし、視認するためには、可視光の存在が不可欠である。この可視光の存在は、微弱であっても、使用前の保管期間のように長時間可視光に晒された場合、歯科用接着材の硬化開始につながる。
以上述べたように、従来、透明容器に保存できる光硬化性組成物は、存在していない。
特開2004-196949号(特許請求の範囲、請求項1、5) 特開2005-89729号(特許請求の範囲、請求項1、7)
本発明者は、上記問題を解決するために、光重合開始剤につき、種々検討してきた。これらの検討の過程で、通常の可視光重合開始剤として使用されるカルボニル化合物の代りに、これらカルボニル化合物から誘導されるアセタール誘導体を使用することに想到した。本発明者の検討によれば、これらアセタール誘導体は、可視波長領域において殆ど光吸収が認められない。更に、アセタール誘導体は、酸が共存すると、迅速に加水分解して元の光重合開始機能を有するカルボニル化合物に誘導される。
従って、アセタール誘導体と、重合性単量体との混合物は、透明容器に収納していても重合は起らない。使用に際しては、この混合物に酸成分を加えることにより、アセタール誘導体は短時間で加水分解して光重合開始機能を有するカルボニル化合物に誘導される。この状態で混合物に可視光照射をすることにより、重合性単量体は重合する。
これらアセタール誘導体特有の化学的、物理的特性を利用することにより、上記問題を解決できることに本発明者は想到し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、可視光下で操作や保存をすることができる、例えば透明容器に収納して保存等ができる、光硬化性組成物、および光重合開始剤として有用なカンファーキノンのアセタール誘導体を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
〔1〕 a)重合性単量体と、b)酸性成分と、c)1以上のカルボニル基を有し、可視光域に吸収を有する化合物のアセタール誘導体からなる光重合開始剤前駆体と、を含有する光硬化性組成物であって、b)の酸性成分とc)の光重合開始剤前駆体とが分包されてなることを特徴とする光硬化性組成物。
〔2〕 b)酸性成分が、酸性基含有重合性単量体を含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。
〔3〕 c)1以上のカルボニル基を有し、可視光域に吸収を有する化合物のアセタール誘導体からなる光重合開始剤前駆体が、α−ジケトン化合物のアセタール誘導体である、〔1〕又は〔2〕に記載の光硬化性組成物。
〔4〕 更にd)水を含んでなる〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の光硬化性組成物。
〔5〕 更に化学重合開始剤を含んでなる〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の光硬化性組成物。
〔6〕 〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の光硬化性組成物からなる歯科用硬化性組成物。
〔7〕 下記式(1)又は(2)
Figure 0005574945
(R〜Rは、同一であっても異なっていても良い炭素数が1〜20のアルキル基で、R〜Rの何れか2つのアルキル基の末端同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。)
で示されるカンファーキノンのアセタール誘導体。
本発明の光硬化性組成物は、アセタール誘導体を含む。アセタール誘導体は、可視光領域に実質的に光吸収波長域を持たず、可視光重合開始剤として機能することはない。従って、アセタール誘導体を含む本光硬化性組成物は、可視光下で硬化することはない。一方、アセタール誘導体は、酸が共存すると直ちにカルボニル化合物に誘導され、可視光重合機能を発揮する。尚、この場合の可視光重合機能とは波長380nm〜750nmの光を吸収し、重合開始剤として有効に機能する能力のことを言う。
本光硬化性組成物は、使用前は、可視光下で保存し、取扱うことができる。使用に際しては、予めアセタール誘導体と酸性成分とを反応させ、アセタール誘導体をカルボニル化合物に誘導する。これにより、本光硬化性組成物は本来の光重合性を発揮し、可視光の照射により硬化する。
従って、本光硬化性組成物は、取扱いが極めて簡便なものである。特に、歯科用接着材等の歯科用硬化性組成物のように、酸性化合物を含有させる場合には有用である。
本発明の光硬化性組成物は、
a)重合性単量体と、b)酸性成分と、c)1以上のカルボニル基を有し、可視光域に吸収を有する化合物のアセタール誘導体からなる光重合開始剤(以下、単にc)の光重合開始剤と略記する場合がある。)と、を含有し、
b)の酸性成分とc)の光重合開始剤とは分包されてなる、
光硬化性組成物である。
[a)重合性単量体]
本発明において使用する、a)重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体であれば、スチレン系単量体、アクリル系単量体等の、1以上、好ましくは1の不飽和基を分子内に有する単量体が、任意に使用できる。これらの単量体を任意の割合で混合して使用することもできる。
本発明の光硬化性組成物は、特に歯科用の硬化性組成物に適している。従って、以下歯科用の光硬化性組成物に配合して好適な重合性単量体について説明する。
歯科用硬化性組成物、特に歯科用接着材、に適する重合性単量体としては、(メタ)アクリル系単量体(アクリル系およびメタアクリル系を示す。)がある。これらの(メタ)アクリル系単量体は、単独或いは2種以上を混合して用いてもよい。
非酸性(メタ)アクリル系重合性単量体(即ち、分子内に酸性基を持たない(メタ)アクリル系重合性単量体)は、分子中に少なくとも(メタ)アクリル基を有する化合物であれば、公知の化合物を何等制限無く使用できる。具体例を示すと、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルオキシエチルアセチルアセテート等のモノメタアクリレート系単量体が挙げられる。
更に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2'−ビス[4−(メタ)アクリルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'−ビス[4−(メタ)アクリルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'−ビス{4−[3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート系単量体等が挙げられる。
(メタ)アクリル系単量体は、酸性基を有する酸性基含有(メタ)アクリル系単量体を含んでもよい。特に歯科用接着材等の歯科用硬化性組成物に使用する場合において好適である。なお、後述するように本発明の光硬化性組成物では、a)重合性単量体の他に、b)酸性成分を含有している。このようにa)重合性単量体として酸性基含有(メタ)アクリル系単量体を用いる場合、該酸性基含有(メタ)アクリル系単量体はb)酸性成分にも該当する。
これら酸性基含有(メタ)アクリル系単量体の配合量は、後述するb)酸性成分としての作用を十分に発揮する下限値量以上(酸性成分が、c)の光重合開始剤前駆体1モルに対して0.01モル以上になる量、より好適には0.1モル以上になる量)であるのが好ましい。また、酸性基含有(メタ)アクリル系単量体は、a)重合性単量体の全てとして配合しても良い。光硬化性組成物を、歯科用接着材等の歯科用硬化性組成物として使用するのであれば、接着材の歯質に対する浸透性を調節したり、硬化体の強度を向上させたりする観点から、酸性基を有しない非酸性(メタ)アクリル系単量体と併用することが好ましい。
非酸性(メタ)アクリル系単量体を併用する場合であれば、酸性基含有(メタ)アクリル系単量体の配合量は、エナメル質及び象牙質の両方に対する接着強度を良好にする観点から、全重合性単量体中において5質量%以上使用することがより好ましく、10〜80質量%の範囲で使用するのが特に好ましい。
酸性基含有(メタ)アクリル系単量体の配合量が少ないと、エナメル質に対する接着強度が低下する傾向があり、逆に多いと象牙質に対する接着強度が低下する傾向がある。
酸性基含有(メタ)アクリル系単量体の酸性基としては、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}、カルボキシル基{−C(=O)OH}、リン酸二水素モノエステル基{−O−P(=O)(OH)}、リン酸水素ジエステル基{(−O−)P(=O)OH}、スルホ基(−SOH)、及び酸無水物骨格{−C(=O)−O−C(=O)−}を有する有機基等の水溶液中で酸性を示す官能基が挙げられる。
これらの官能基のなかでも、水に対する安定性が高く、歯面のスメアー層の溶解や歯質脱灰をマイルドに実施できるため、カルボキシル基、リン酸二水素モノエステル基、リン酸水素ジエステル基が好ましく、歯質エナメル質に対してより高い接着強度が得られる点で、リン酸二水素モノエステル基とリン酸水素ジ
エステル基が最も好ましい。
リン酸二水素モノエステル基またはリン酸水素ジエステル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエト
キシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、4−(メタ)ア
クリロキシエチルトリメリット酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
[b)酸性成分]
本光硬化性組成物の構成成分であるb)酸性成分は、本光硬化性組成物を可視光で光硬化させる際に、c)のアセタール誘導体からなる光重合開始剤前駆体をカルボニル化合物からなる光重合開始剤に誘導する役割を果す。
酸性成分は、50%エタノール水溶液に10質量%溶解したときのpHが3 以下の化合物であれば、本発明の目的に反しない限り任意の化合物を使用できる。
酸性成分としては、無機酸、有機酸が使用できる。
無機酸としては、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸等が例示される。人体に対する安全性を考慮すると、リン酸が好ましい。
有機酸としては、蟻酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸、リン酸モノエチルエステル、リン酸ジエチルエステル等のリン酸モノエステルやリン酸ジエステル、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸等のホスホン酸等が例示される。人体に対する安全性を考慮すると、カルボン酸、リン酸モノエステル、及びリン酸ジエステルが好ましい。
これらの酸性成分の配合量は、酸性成分により異なるが、一般的には光重合開始剤前駆体1モルに対して0.01〜100モルが好ましく、0.1〜10モルがより好ましい。
更に、酸性成分としては、前記a)重合性単量体の所で述べた酸性基含有(メタ)アクリル系単量体を使用することもできる。この場合は、酸性成分の配合量は、光重合開始剤前駆体1モルに対して0.01モル以上であるのが好ましく、さらに0.1モル以上であるのがより好ましく、この量以上でa)重合性単量体の全量を占めるまでの任意の配合量が採用できる。
[c)1以上のカルボニル基を有し、可視光域に吸収を有する化合物のアセタール誘導体からなる光重合開始剤前駆体]
c)の光重合開始剤前駆体は、アセタール誘導体からなる。このアセタール誘導体は、1以上、好ましくは2つのカルボニル基を分子内に有するカルボニル化合物(ケトン)を原料として製造することができる。
カルボニル化合物としては、公知の、可視光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤が制限無く使用できる。
このようなカルボニル化合物としては、水素引き抜き型の光ラジカル発生剤があげられる。更に詳細に述べると、水素引き抜き型の光ラジカル発生剤は、光照射により励起して、水素供与体から水素原子を引く抜き、ラジカルを発生する化合物であれば特に制限されず、公知の化合物を用いることができる。
該水素引き抜き型のラジカル発生剤としては、ジアリールケトン化合物、α − ジケトン化合物、ケトクマリン化合物等を挙げることができる。
当該ジアリールケトン化合物を具体的に例示すると4 , 4 − ビス( ジメチルアミノ) ベンゾフェノン、4 , 4 − ビス( ジエチルアミノ) ベンゾフェノン、9 − フルオレノン、3 , 4 − ベンゾ― 9 − フルオレノン、2 ― ジメチルアミノ― 9 − フルオレノン、2 − メトキシ― 9 ― フルオレノン、2 − クロロ― 9 − フルオレノン、2 , 7 − ジクロロ― 9 ― フルオレノン、2 − ブロモ― 9 ― フルオレノン、2 , 7 − ジブロモ― 9 ― フルオレノン、2 − ニトロ− 9 − フルオレノン、2 − アセトキ− 9 − フルオレノン、ベンズアントロン、アントラキノン、1 , 2 − ベンズアントラキノン、2 − メチルアントラキノン、2 − エチルアントラキノン、1 − ジメチルアミノアントラキノン、2, 3 − ジメチルアントラキノン、2 − t e r t− ブチルアントラキノン、1 − クロロアントラキノン、2 − クロロアントラキノン、1 , 5 − ジクロロアントラキノン、1 , 2 − ジメトキシアントラキノン、1 , 2 − ジアセトキシ− アントラキノン、5 , 1 2 − ナフタセンキノン、6 、1 3 − ペンタセンキノン、キサントン、チオキサントン、2 , 4 − ジメチルチオキサントン、2 , 4 − ジエチルチオキサントン、2 − クロロチオキサントン、9 ( 1 0H ) − アクリドン、9 − メチル− 9 ( 1 0 H ) − アクリドン、ジベンゾスベレノン等を挙げることができる。
α − ジケトン化合物の具体例を例示すれば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、アセチルベンゾイル、2 , 3 − ペンタジオン、2 , 3 − オクタジオン、4 , 4 ’ − ジメトキシベンジル、4 , 4 ’ − オキシベンジル、9 , 1 0 − フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等が挙げられる。
ケトクマリン化合物としては、3 − ベンゾイルクマリン、3 − ( 4 − メトキシベンゾイル) クマリン、3 − ベンゾイル− 7 − メトキシクマリン、3 − ( 4 − メトキシベンゾイル) 7 − メトキシ− 3 − クマリン、3 − アセチル− 7 − ジメチルアミノクマリン、3 − ベンゾイル− 7 − ジメチルアミノクマリン、3 , 3 ’ − クマリノケトン、3 , 3 ’ − ビス(7 − ジエチルアミノクマリノ) ケトン等を挙げることができる。
また、光照射による自己開裂によってラジカルを発生するものも利用できる。このようなカルボニル化合物としては、アシルフォスフィンオキシド類、トリクロロアセトフェノン等が挙げられる。
さらに光照射を行った際の重合活性が他の化合物に比してより高い点で、水素引き抜き型の光ラジカル発生剤が好ましく、なかでも、ジアリールケトン化合物、又はα − ジケトン化合物が特に好ましい。中でも、α − ジケトン化合物が最も好適である。
また、水素供与体は、通常、重合性単量体もその機能を有するが、好適な水素供与体としてアミン類が利用できる。中でも第3級アミンがより好ましい。特にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル等の芳香族第3級アミンがより好ましい。最も好ましくは、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル等の、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル類である。
上記ケトン化合物の有するカルボニル基のアセタール化反応は、公知の反応がなんら制限無く利用できる。
例えば、酸触媒下、カルボニル化合物とアルコール化合物を脱水条件で反応させる方法がある。この方法は、モレキュラーシーブ等の脱水剤の存在下に、メチレンクロライド、アセトニトリル、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中でカルボニル化合物とアルコール化合物とを反応させて、対応するアセタール化合物を得る方法である。
カルボニル化合物とアルコール化合物の沸点がベンゼンより高い場合、ディーンスターク等の水分離装置を取る付け、酸触媒の存在下でカルボニル化合物とアルコール化合物とを加熱還流することでもアセタール化合物が得られる。酸触媒としては、有機酸や無機酸が挙げられる。有機酸としては、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が好ましい。無機酸としては硫酸、リン酸、硝酸等が、また固体酸としてはモンモリロナイトK10等が、また、ルイス酸としては、トリメチルメチルシリルトリフラート、スズ(II)トリフラート、ランタン(III)トリフラート、スカンジウム(III)トリフラート等が好ましい。
カルボニル化合物をアセタール化する方法としては、酸触媒存在下、カルボニル化合物とアルコキシトリメチルシラン(トリメチルシリルオキシアルカン)、アルコキシトリエチルシラン(トリエチルシリルオキシアルカン)等のアルコキシトリ低級アルキルシラン(トリ低級アルキルシリルオキシアルカン)を反応させる方法も利用できる。この場合、反応が速やかに進行し、また副生物がヘキサメチルジシロキサンであるので、逆反応が進行しないため好ましい。この反応の場合、カルボニル化合物にメチルオキシトリメチルシランを反応させるとジメチルアセタールが得られる。また、1,2−ビス(トリメチルシリルオキシ)エタンを反応させると、環状のエチレンアセタールが得られる。これらの反応で使用できる酸触媒としては、上述の酸触媒が利用できる。
また、カルボニル化合物とオルトエステル化合物を酸触媒下反応させても、アセタール化合物が得られる。例えば、カルボニル化合物にオルト蟻酸トリメチルを反応させれば、カルボニル化合物をジメチルアセタールに変換することができる。
上述のアセタール化合物を得る方法の中でも、酸触媒存在下、カルボニル化合物とアルコキシトリメチルシランを反応させる方法が、より好ましい。酸触媒としては、トリメチルメチルシリルトリフラート等のルイス酸触媒が好適に使用できる。
これら、カルボニル化合物のアセタール化は、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)の測定により確認できる。すなわち、上述のアセタール化合物は、H−NMR)スペクトルの測定による、化学シフトやスピン−スピン結合の観測から、その分子構造を決定することができる。具体的には、アセタール化前には観測されなかった3.1〜4.3ppmに、アセタール構造のプロトンに由来する新たなピークが観測される特徴を有する。
上記製造方法等で製造される好ましい光重合開始剤前駆体は、下記式(1)、(2)で示される。
Figure 0005574945
ここで、R〜Rは、同一であっても異なっていても良い炭素数が1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数が1〜5のアルキル基がより好ましく、炭素数が1〜3のアルキル基が最も好ましい。R〜Rの何れか2つのアルキル基の末端同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。この場合、上記2つのアルキル基の末端同士が互いに結合して形成されるアルキレン基の炭素数は2〜5であるのが好ましく、2〜3であるのが特に好ましい。
以下、光重合開始剤前駆体の具体例を記載する。
Figure 0005574945
Figure 0005574945
c)の光重合開始剤前駆体の配合量は、a)重合性単量体100質量部を基準として0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましい。
上記各構成成分a)、b)、c)からなる本光硬化性組成物は、その使用前は、b)酸性成分とc)の光重合開始剤前駆体とを分離した状態(分包)で保存する。
a)重合性単量体は、b)酸性成分の包装またはc)の光重合開始剤前駆体の包装の何れに加えても良い。または、これらの包装とは異なる包装としても良い。包装容器は、可視光透過性の容器が好ましい。各構成成分a)、b)、c)を上記分包状態に保つことにより、使用前に光硬化性組成物を硬化させることなく、可視光中で安定に保存できる。
光硬化性組成物の使用に際しては、分包状態で保管してある各分包成分を混合して光硬化性組成物を調製し、これを所望の使用形態に応じて塗布、成形し、光照射することにより、光硬化性組成物は、硬化する。b)酸性成分の包装とc)の光重合開始剤前駆体の包装の混合比は特に制限されるものでは無く、例えば、b)酸性成分の包装の1質量部に対してc)の光重合開始剤前駆体の包装の0.01〜100質量部の範囲から採択すれば良い。通常は等量混合とするのが望ましい。b)酸性成分の包装とc)の光重合開始剤前駆体の包装のそれぞれは、このような割合で両者を混合した後において、前記説明したa)、b)、c)の各成分の含有量になるように、各成分を含有させておけば良い。
各分包成分を混合した後において、混合物はc)の光重合開始剤前駆体であるアセタール誘導体がカルボニル化合物に誘導されるのを待ってから、光硬化性組成物として使用する。その保持時間は、c)光重合開始剤前駆体、b)酸性成分、およびその他成分の種類によって幾分異なるため、予備的な実験で決定しておくことが好ましい。通常は、5秒程度保持すれば十分である。
光照射は、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、蛍光灯、太陽光、ヘリウムカドミウムレーザー、アルゴンレーザー等の光源が何等制限なく使用できる。照射時間は、光源の波長、強度、硬化体の形状や材質によって異なるため、予備的な実験によって予め決定しておくことが好ましい。一般には、照射時間が5〜60秒程度の範囲になるように、各成分の配合割合を調整しておくことが好ましい。
本光硬化性組成物は、更に化学重合開始剤を含んでいても良い。化学重合開始剤とは、2種類以上の化合物が接触混合して、ラジカルが発生するものである。例えば、本光硬化性組成物を歯科用接着材として使用する場合、使用形態によっては光が接着材全体に十分到達しない場合がある。この場合は、その部分は硬化不良になる。しかし、化学重合開始剤が配合されている場合は、光が十分到達しなかった部分は化学重合により硬化するので、この部分の硬化不良が避けられる。
代表的な化学重合開始剤としては、有機過酸化物及びアミン類の組み合わせ、有機過酸化物類、アミン類及びスルフィン酸塩類の組み合わせ、酸性化合物及びアリールボレート類の組み合わせ、バルビツール酸、アルキルボラン等の化学重合開始剤等が挙げられる。
該化学重合開始剤に使用される各化合物として好適なものを以下に例示すると、有機過酸化物類としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過酸化ジt−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を配合して使用することができる。
アミン類としては、第二級又は第三級アミン類が好ましく、具体的に例示すると、第二級アミンとしてはN−メチルアニリン、N−メチル−p−トルイジン等が挙げられ、第三級アミンとしてはN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2'−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。
アリールボレート類としては、1分子中に少なくても1つのホウ素―アリール結合を有していれば、公知のものを使用することができるが、保存安定性が高いことや取り扱いの容易さ、入手のし易さから、1分子中に4つのホウ素−アリール結合を有するアリールボレートが最も好ましい。1分子中に4つのホウ素−アリール結合を有するアリールボレート(アリールホウ酸イオン)の具体例としては、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラキス(p―クロロフェニル)ホウ酸イオン、テトラキス(p―フルオロフェニル)ホウ酸イオン、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ酸イオン、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3―ヘキサフルオロ―2―メトキシ―2―プロピル)フェニル]ホウ酸イオン、テトラキス(p―ニトロフェニル)ホウ酸イオン、テトラキス(m―ニトロフェニル)ホウ酸イオン、テトラキス(p―ブチルフェニル)ホウ酸イオン、テトラキス(m―ブチルフェニル)ホウ酸イオン、テトラキス(p―ブチルオキシフェニル)ホウ酸イオン、テトラキス(m―ブチルオキシフェニル)ホウ酸イオン、テトラキス(p―オクチルオキシフェニル)ホウ酸イオン、テトラキス(m―オクチルオキシフェニル)ホウ酸イオンなどのホウ素化合物の塩を挙げることができる。ホウ素化合物と塩を形成する陽イオンとしては、金属イオン、第3級または第4級アンモニウムイオン、第4級ピリジニウムイオン、第4級キノリニウムイオン、または第4級ホスホニウムイオンを使用することができる。
上記化学重合開始剤の中でも、酸性化合物及びアリールボレート類の組み合わせに、+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物を併用した化学重合開始剤は、重合活性が高いことから、特に好適に使用できる。さらに、上記の有機化酸化物を併用することにより、重合活性をさらに高めることができるため、最も好ましい。
上記バナジウム化合物の具体例としては、四酸化二バナジウム(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1―フェニル―1,3―ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)等を挙げることができる。
化学重合開始剤の配合量は、a)重合性単量体と、酸性基含有重合性単量体との合計質量を基準として、0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。
化学重合開始剤は、通常は保存安定性の観点から、接触混合することでラジカルを発生する2以上の化合物の全てが同一包装に共存しないように、c)光重合開始剤前駆体の分包中とb)酸性成分の分包中に適宜分けて配合される。
本光硬化性組成物は、更に水を含んでいても良い。例えば、本光硬化性組成物を歯科用接着材として使用する場合、水は歯科用接着材に脱灰機能ならびに歯質への浸透機能を持たすことができ、その結果接着強度を向上させる。
水の配合量は、通常、(a)重合性単量体100質量部に対して0.1〜100 質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
水を配合する場合は、水はb)酸性成分の分包中に配合することが好ましい。
以下、本発明を、実施例、比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。尚、実施例中に示した、略称、略号は以下の通りである。
略称及び略号
[リン酸から誘導される酸性基を有する重合性単量体]
PM1:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート
PM2:ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート
PM:PM1とPM2の1:1モル比の混合物

[酸性基を含有しない重合性単量体]
BisGMA:2,2‘−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート

[揮発性の水溶性有機溶媒]
IPA:イソプロピルアルコール

[本発明の光重合開始剤]
下記に示す方法で、合成した。なお、得られたアセタール誘導体は、H NMRスペクトルを測定し、カルボニル化合物のアセタール化が行なわれているか確認した。すなわち、3.1〜4.3ppmのピークは、アセタール構造のプロトンに由来するものであり、このピークの観察と解析されるプロトン数から確認した。
CQM:カンファーキノンジメチルアセタール
Figure 0005574945
アセトニトリルを溶媒として用い、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルの存在下、カンファーキノンと2.2当量のメトキシトリメチルシランとを室温下において反応させた。生成物をアルミナゲルカラムクロマトグラフィーにより単離精製してCQMを得た(収率42%)。
H NMR δ1.11(s,6H),1.16(s,3H),1.43(m,2H),1.75(m,2H),2.03(m,1H),3.24(s,6H;アセタール構造由来)

CQDM:カンファーキノンビス(ジメチルアセタール)
Figure 0005574945
CQMと同様に操作し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル存在下、カンファーキノンと4.4当量のメトキシトリメチルシランとを反応させてCQDMを得た(収率83%)。
H NMR δ1.11(s,6H),1.16(s,3H),1.36(m,2H),1.40(m,2H),2.06(m,1H),3.24(s,12H;アセタール構造由来)

CQE:カンファーキノンエチレンアセタール
Figure 0005574945
CQMと同様に操作し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル存在下、カンファーキノンと1.1当量の1,2−ビス(トリメチルシリルオキシ)エタンとを反応させてCQEを得た(収率51%)。
H NMR δ1.11(s,6H),1.16(s,3H),1.43(m,2H),1.75(m,2H),2.03(m,1H),3.90(m,4H;アセタール構造由来)

BNM:4,4−ジメトキシベンジルジメチルアセタール
Figure 0005574945
CQMと同様に操作し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル存在下、4,4−ジメトキシベンジルと2.2当量のメトキシトリメチルシランとを反応させてBNMを得た(収率41%)。
H NMR δ3.24(s,6H),3.73(s,6H;アセタール構造由来),6.70−7.75(m,8H)

AQE:アントラキノンエチレンアセタール
Figure 0005574945
CQMと同様に操作し、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル存在下、アントラキノンと1.1当量の1,2−ビス(トリメチルシリルオキシ)エタンとを反応させてAQEを得た(収率33%)。
H NMR δ4.02(m,4H;アセタール構造由来),7.29−7.63(m,8H)

[その他の光重合開始剤]
CQ:カンファーキノン
BN:ベンジル
AQ:アントラキノン
[第3級アミン]
DMBE:p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
[重合禁止剤]
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
[有機過酸化物]
TMBHO:1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド
[バナジウム化合物]
BMOV:ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)
[ボレート化合物]
PhBTEOA:テトラフェニルホウ酸トリエタノールアンモニウム

以下の実施例および比較例において、各種の測定は以下の方法により実施した。
(1)耐光性試験
硬化性組成物を透明のスクリュー管ビンにいれ、10,000ルクスの蛍光灯下で24時間光照射した。照射後、スクリュー管ビン中の硬化性組成物の流動性が光照射前と同程度であれば○、流動性が失われていたら硬化×と判断した。
(2)光硬化試験
耐光性試験に用いた硬化性組成物のA液とB液を一滴ずつ混和皿に滴下して混合し、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて30秒間光照射し、固体状に変化していれば○、液状或いは半液状であれば×とした。
(3)接着試験
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、往水下、#600のエメリーペーパーで唇面に平行になるようにエナメル質および象牙質平面を削り出した。次に、これらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させた。その後、エナメル質および象牙質のいずれかの平面に直径3mmの孔の開いた両面テープを貼付けた。
次いで、厚さ0.5mm直径8mmの孔の開いたパラフィンワックスを上記円孔上に同一中心となるように固定して模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞内にA液とB液を一滴ずつ混合し5秒経過後塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させ、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて30秒間光照射した。
更にその上に歯科用コンポジットレジン(エステライトΣ、トクヤマデンタル社製)を充填し、可視光線照射器により30秒間光照射して、接着試験片作成し、37℃の水中に浸漬して一晩保管した。
その後、引張り試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minで引張り、エナメル質または象牙質とコンポジットレジンの引張り接着強度を測定した。1試験当り、4本の引張り接着強さを上記方法で測定し、その平均値を耐久試験後の接着強度とした。この値を用いて接着強度を評価した。
実施例1
重合性単量体として1.2gのBisGMA、0.8gの3G及び3.0gのHEMAと、酸性物質として0.5gのリン酸を混合しA液とした。また、重合性単量体として5.0gのHEMA、光重合開始剤として0.2gのCQM、その他成分として0.15gのDMBEを混合しB液とした。この組成物について、耐光性試験および光硬化試験を行った。接着材の組成および評価結果を表1に示した。
実施例2〜11
実施例1の方法に準じ、酸性化合物としてリン酸モノマーを用い、表1に示した組成の組成物を調製した。尚、実施例11においては化学重合開始剤としてA液にバナジウム化合物であるBMOV、B液に過酸化物であるTMBHOおよびボレート化合物であるPhBTEOAを配合した。得られた各A液およびB液の組み合わせおいて、耐光性試験および光硬化試験を行った。接着材の組成および評価結果を表1に示した。
尚、実施例3、4、5及び11においては接着試験を行った。また、実施例3において、酸性成分であるPMの配合量は、光重合開始剤(光重合開始剤前駆体)であるCQM1モルに対して0.12モルであった。
参考例1
実施例5おいて、CQDMに代えて通常のCQを用いた以外は、実施例5と同様にしてA液およびB液を調製した。得られた各A液およびB液を用いて接試験を行なった。評価結果を表2に示したが、実施例5と同等の接着強度であった。
Figure 0005574945
Figure 0005574945
比較例1〜7
実施例の方法に準じ、酸性化合物としてリン酸モノマーを用い、表3に示した組成の組成物を調製した。得られた各A液およびB液の組み合わせ毎に、耐光性試験および光硬化試験を行った。接着材の組成および評価結果を表3に示した。
実施例1〜11は、本発明の必須成分である光重合開始剤を用いたものであるが、いずれの場合でも優れた耐光性と光硬化性を示した。
これに対して、比較例1〜7は本発明の必須成分ではない通常の光重合開始剤を用いたものであるが、何れの場合も耐光性試験においてもB液が硬化し、光硬化性試験まで至らなかった。
Figure 0005574945

Claims (6)

  1. a)重合性単量体と、b)酸性成分と、c)1以上のカルボニル基を有し、可視光域に吸収を有する化合物のアセタール誘導体からなる光重合開始剤前駆体と、を含有する光硬化性組成物であって、b)の酸性成分とc)の光重合開始剤前駆体とが分包されてなることを特徴とする歯科用光硬化性組成物。
  2. b)酸性成分が、酸性基含有重合性単量体を含む、請求項1に記載の歯科用光硬化性組成物。
  3. c)1以上のカルボニル基を有し、可視光域に吸収を有する化合物のアセタール誘導体からなる光重合開始剤前駆体が、α−ジケトン化合物のアセタール誘導体である、請求項1又は2に記載の歯科用光硬化性組成物。
  4. 更にd)水を含んでなる請求項1乃至3のいずれかに記載の歯科用光硬化性組成物。
  5. 更に化学重合開始剤を含んでなる請求項1乃至4いずれかに記載の歯科用光硬化性組成物。
  6. 下記式(1)又は(2)
    Figure 0005574945
    (R〜Rは、同一であっても異なっていても良い炭素数が1〜20のアルキル基である。
    で示されるカンファーキノンのアセタール誘導体。
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