JP5570821B2 - 進化と合理的設計の組合せによって得られた、1,2−プロパンジオールの製造のための新規微生物 - Google Patents

進化と合理的設計の組合せによって得られた、1,2−プロパンジオールの製造のための新規微生物 Download PDF

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Description

発明の背景
本発明は、1,2−プロパンジオールを製造するための微生物の製造を目的とする進化と合理的設計を組み合わせた新規な方法、それにより得られる微生物および1,2−プロパンジオールの製造のためのその使用に関する。
C3ジアルコールである1,2−プロパンジオールすなわちプロピレングリコールは、広く用いられている化学物質である。これは、不飽和ポリエステル樹脂、液体洗剤、冷却剤、不凍剤および航空機の徐氷液の成分である。プロピレングリコールは、プロピレン誘導体より有毒であると認識されているエチレン誘導体の代わりとして1993〜1994年以来、使用が増えてきた。
1,2−プロパンジオールは現在、大量の水を消費するプロピレンオキシド水和法を用いた化学的手段により製造されている。プロピレンオキシドは、一方はエピクロロヒドリンを用い、他方はヒドロペルオキシドを用いる2つの方法のいずれかよって製造することができる。両経路とも、毒性が強い物質を用いる。さらに、ヒドロペルオキシド経路は、tert−ブタノールおよび1−フェニルエタノールなどの副生成物を生じる。プロピレンの産生を有利にするためには、これらの副生成物の用途を見出さなければならない。この化学的経路は一般的にラセミ1,2−プロパンジオールを生成するが、2つの立体異性体(R)1,2−プロパンジオールおよび(S)1,2−プロパンジオールはそれぞれ、ある特定の適用(例えば、特殊化学物質および医薬品のためのキラル出発材料)に関して注目されるものである。
これら1,2−プロパンジオールの製造のための化学法の欠点は、生合成を魅力的な選択肢とする。微生物による糖からの1,2−プロパンジオールの天然生産に関して2つの経路が同定されている。
1つ目の経路では、6−デオキシ糖(例えば、L−ラムノースまたはL−フコース)がジヒドロキシアセトンリン酸および(S)−ラクトアルデヒドに開裂され、さらに(S)−1,2−プロパンジオールへと還元することができる(Badia et al, 1985)。この経路は大腸菌(E. coli)で機能するものの、デオキシヘキソースのコストが高いために経済上実現可能な方法をもたらすことはできない。
2つ目の経路は、解糖経路、次いでメチルグリオキサール経路を介した汎用糖(例えば、グルコースまたはキシロース)の代謝である。ジヒドロキシアセトンリン酸はメチルグリオキサールへ変換され、これがラクトアルデヒドまたはアセトールのいずれかへ還元することができる。その後、これら2つの化合物は2回目の還元を受け、1,2−プロパンジオールを生じ得る。この経路は、クロストリジウム・スフェノイデス(Clostridium sphenoides)およびサーモアナエロバクター・サーモサッカロリチカム(Thermoanaerobacter thermosaccharolyticum)などの天然(R)−1,2−プロパンジオール生産株によって用いられている。クロストリジウム・スフェノイデスは、リン酸制限条件下、1.58g/lの力価で1,2−プロパンジオールを産生するために用いられている(Tran Din and Gottschalk, 1985)。また、サーモアナエロバクター・サーモサッカロリチカムも、1,2−プロパンジオールの生産に関して検討されてきた(Cameron and Cooney, 1986, Sanchez-Rivera et al, 1987)。得られた最高性能は力価9g/lであり、0.2g/gのグルコースからの収率であった。しかしながら、これらの生物で得られる性能の改良は、利用可能な遺伝的手段が不足しているために限られていると思われる。
先行技術
Cameron et al (1998)は、糖の1,2−プロパンジオールへの変換に関して代謝操作するためのプラットフォームとしての使用を検討した。彼らの理論分析は、現実的な生成物収率の上限(質量バランスと増殖のためのエネルギーの生産を考慮)は培養条件によって著しく異なる。嫌気性条件下では、減少した補因子を再循環させるために副生成物として酢酸が生成され、最良の収率はグルコース1モル当たり1,2−プロパンジオール1モル(0.42g/g)に限定されるはずである。好気性条件下では、補因子の再循環は末端電子受容体として酸素を用いる呼吸鎖によって確保されるはずであり、副生成物を生じずに1,2−プロパンジオールを生産することが可能となる。これらの条件下では、収率は良くて1.42mol/mol(0.6g/g)に達し得る。Cameron et alは、1,2−プロパンジオールの最大力価を考慮して、生成物および副生成物の毒性へのその依存を考察した。1,2−プロパンジオールは1,3−プロパンジオールよりも著しく毒性が低く、大腸菌(E. coli)は100g/l 1,2−プロパンジオールで、0.5/時の増殖速度の残存を示す。この増殖の阻害は、増殖阻害性が高いことが知られている副生成物の酢酸によるものである可能性が高い。高い力価および収率で1,2−プロパンジオールを製造するための嫌気性プロセスの開発では、この酢酸の問題に取り組まなければならない。酢酸の、阻害性がより低く、in situで容易に除去できるアセトンへの変換が提案されている(WO2005/073364)。
単純炭素源を用いて1,2−プロパンジオール生産株を得るための大腸菌の遺伝的改変に関するいくつかの検討がCameronのグループ(Cameron et al, 1998, Altaras and Cameron, 1999, Altaras and Cameron, 2000)およびBennettのグループ(Huang et al, 1999, Berrios-Rivera et al, 2003)によって行われた。これらの研究は、一方では、ジヒドロキシアセトンリン酸から1,2−プロパンジオールへの経路における1つ、またはいくつかの酵素活性に頼り、他方では、宿主株におけるNADHおよび炭素消費経路の除去に頼るものである。Cameronのグループによって得られた最良の結果は、嫌気的フラスコ培養における1.4g/lの1,2−プロパンジオールの生産であり、グルコース消費1g当たり0.2gの収率であった。嫌気性流加発酵槽に外挿すると、生産量は1,2−プロパンジオール4.5g/lであり、グルコース1g当たり0.19gの収率であり、Cameronの理論的評価からかけ離れていた。これらの性能は、乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(ldhA)を欠いた株における、大腸菌のメチルグリオキサールシンターゼ遺伝子(mgs)、大腸菌のグリセロールデヒドロゲナーゼ遺伝子(gldA)および大腸菌の1,2−プロパンジオールオキシドレダクターゼ遺伝子(fucO)の過剰発現を用いて得られたものである。力価および収率は低いが、同じアプローチを用いて得られた結果が米国特許第6,087,140号、同第6,303,352号およびWO98/37204にも記載されている。
Bennettのグループも、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のmgs遺伝子および大腸菌由来のgldA遺伝子の過剰発現のためにldhA欠損大腸菌宿主株を用いた。嫌気条件下でのフラスコ培養では力価1.3g/lおよび収率0.12g/gであったが、微好気培養では力価1.4g/lであり、収率は0.13g/gであった。
1,2−プロパンジオールを生産する株を得るための別法は、「始原株」の進化を、その「進化株」がより良い特徴を有する所望の化合物を生産する状態へ向けることである。この方法は、まず、tpiAとメチルグリオキサールの乳酸への変換に関与する一遺伝子の2つの遺伝子の減弱により改変された微生物の自然進化に基づく。トリオースリン酸イソメラーゼをコードするtpiA遺伝子を減弱する目的は、この酵素により自然に相互変換されるグリセルアルデヒド−3−リン酸(GA3P)およびジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)において始まる2つの代謝分岐を分離することである。DHPAから1,2−プロパンジオールへの経路は、還元型の補因子(NADH)を消費する「還元分岐」であり、一方、GA3Pから酢酸への代謝は、NADHと細胞増殖のためのエネルギーを生産する「酸化分岐」である。機能的tpiA遺伝子が存在しないと、細胞の代謝は「ロック」され、株の増殖、1,2−プロパンジオールの生産および酢酸の生産が強く結びつけられている。適切な増殖培地での選択圧下では、この始原株は該株による1,2−プロパンジオールの生産が高まる状態へ進化する。1,2−プロパンジオールの製造向けの微生物の「進化株」を得るためのこの手法は特許出願WO2005/073364に記載されている。この進化プロセスおよび次の発酵段階は好ましくは嫌気性条件下で行われる。この技術は先行技術に優る明らかな改良法である。力価1.8g/lの1,2−プロパンジオールが得られ、消費グルコース1g当たり0.35グラムの収率となり、Cameron et alの理論的結果に近かった。
本発明の目的は、進化とそれに続く進化株の合理的遺伝子操作による1,2−プロパンジオール生産株の改良である。特異な特徴は進化したtpiAマイナス株における機能的tpiA遺伝子の再構築である。これらの改変は1,2−プロパンジオール生産の改良をもたらす。
本発明は、炭素源から1,2−プロパンジオールを製造するための微生物株の製造を目的として進化と合理的設計を組み合わせた新規な方法に関する。該方法は、
始原株を適切な増殖培地中、選択圧下で増殖させること(該始原細菌株は、始原株において進化を促進するための、tpiA遺伝子の発現の減弱、およびメチルグリオキサールの乳酸への変換に関与する少なくとも1つの遺伝子(gloA、aldA、aldBなど)の発現の減弱を含む)、
次に、1,2プロパンジオールの生産率が高まった(少なくとも20%高まった)進化株を選択および単離すること、
その後、その進化株において機能的tpiA遺伝子を再構築すること
を含む。
本発明の一態様では、不要な副生成物の合成が、ピルビン酸からの乳酸の合成に関与する酵素をコードする遺伝子(ldhA)、ギ酸の合成に関与する酵素をコードする遺伝子(pflA、pflB)、エタノールの合成に関与する酵素をコードする遺伝子(adhE)を欠失させることにより減弱される。本発明の別の態様では、Entner-Doudoroff経路がedd遺伝子またはeda遺伝子のいずれか、または双方を欠失させることによって削除される。有利には、1,2−プロパンジオールの生合成経路の還元段階により多くのNADHを利用可能とするために、arcAおよびndhから選択される少なくとも1つの遺伝子が減弱される。
1,2−プロパンジオールの製造に使用される微生物は細菌、酵母および真菌から選択されるが、好ましくは大腸菌 (Escherichia coli)またはクロストリジウム・アセトブチリカム種に由来のものである。
本発明はまた、得られたもののような進化株に関し、それは副生成物無しに、最良の可能性ある収率で、炭素源の1,2−プロパンジオールへの変換を至適化するためにさらに遺伝的に改変することができる。本発明の一態様では、利用可能なグリセルアルデヒド3リン酸の一部を1,2−プロパンジオールの合成へ向け直すために、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ活性が低減される。本発明の別の態様では、galPによりコードされているもののようなホスホエノールピルビン酸(PEP)とは独立の糖移入を用いるか、または糖ホスホトランスフェラーゼ系により多くのPEPを供給するかのいずれかによって、糖移入効率が高められる。これは、ピルビン酸キナーゼ(pykAおよびpykF遺伝子によりコードされている)のようなPEPを消費する経路を除去することにより、かつ/または例えばPEPシンターゼをコードするppsA遺伝子を過剰発現させることによるなど、PEPの合成を促進することにより得られる。さらに、ピルビン酸をアセチル−coAに変換する酵素が、嫌気性条件下で見られる高濃度のNADHに耐性があることも有用である。これはlpd遺伝子の特異的突然変異により得ることができる。有利には、副生成物である酢酸の合成が、遺伝子ackA、pta、poxBの1つまたはいくつかを減弱することにより妨げられる。
本発明はまた、好気性、微好気性または嫌気性条件下で、進化し、かつ所望により遺伝的に改変された大腸菌株を、単純炭素源を含有する適切な増殖培地で増殖させたものを用いて、至適収率で1,2−プロパンジオールを製造するための方法に関する。さらに、本発明は、嫌気性条件下で、進化し、かつ所望により遺伝的に改変されたC.アセトブチリカム株を、単純または複合炭素源を含有する適切な増殖培地で増殖させたものを用いて、至適収率で1,2−プロパンジオールを製造するための方法に関する。次に、本発明の方法に従って製造された1,2−プロパンジオールは回収され、所望により精製される。
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす添付図面は本発明を例示し、その説明とともに本発明の原理を説明にするのに役立つ。
炭水化物からの1,2−プロパンジオール生産系の開発における中枢代謝の遺伝子工学を示す。
発明の具体的説明
本明細書において、特許請求の範囲および明細書の解釈に以下の用語を用いることができる。
「株」とは、ある種(species)の遺伝的変異体を表す。従って、「微生物株」とは、ある種(species)の特定の微生物の遺伝的変異体を表す。株について示された特徴はその対応する微生物にも当てはまり、逆もそうである。
本発明によれば、「培養」、「増殖」および「発酵」とは、単純炭素源を含有する適切な増殖培地での細菌の増殖を表すために互換的に用いられる。
本発明において「炭素源」とは、微生物の正常な増殖を支えるために当業者が使用可能ないずれの炭素源も表し、ヘキソース、ペントース、単糖類、二糖類、オリゴ糖、デンプンまたはその誘導体、ヘミセルロース、グリセロールおよびそれらの組合せであり得る。
本発明において「適切な増殖培地」とは、微生物の増殖に適合され、望む進化を促進するように設計された既知の分子組成の培地を表す。
本発明の進化プロセスは、改良された生産特徴を示す進化した微生物を製造するための方法であり、次の工程:
a)代謝がロックされた始原株を得るための微生物の改変(その始原株の細胞を適切な培地で増殖させた際に進化が所望の方向にのみ向くことができる)、
b)それを進化させるための、適切な培地での上記で得られた始原株の増殖(始原株は好気性、微好気性または嫌気性条件下で増殖される)、
c)所望の化合物に対して改良された生産特徴を示す、これらの特定の条件下で増殖可能な「進化株」の選択
を含んでなる。この進化プロセスは、同じ出願者らによる、2004年2月17日出願の特許出願WO2004/076659および2005年12月1日出願のWO2005/073364に包括的に記載されている。
本発明において「選択」とは、その培地で保持される微生物株だけが選択圧条件下でより良い適合性を示すものとなるプロセスを表す。一般に、最適株は競合株よりも速く増殖し、その後選択される。ある集団において微生物の特定の進化株を選択する簡単な方法は、その集団を連続培養で増殖させ、増殖の遅い株が培養からやがて排除されるということからなる。これは選択の排他的な例ではなく、当業者に知られている他の選択法も適用可能である。
「単離」とは、特定の遺伝的改変を示す個々の株が、種々の遺伝的特徴を示す株の集団から分離されるプロセスを表す。これは、進化期間の後にバイオマスをサンプリングし、それをペトリ皿に拡げて単一のコロニーを単離することによって行う。
「1,2−プロパンジオール生産率」とは、次のようにして算出される、g/l/時で表される生産率を意味する:
培地中の1,2−プロパンジオール生産濃度(g/l)/この生産に要する時間(時間)
さらに、バイオマスの量を考慮してg/g/時で表される特殊な生産率も次のようにして算出することができる:
培地中1,2−プロパンジオール生産濃度(g/l)/培地中のバイオマス生産濃度(g/l)/この生産に要する時間(時間)
バイオマスの濃度は、例えば600nmでの分光光度計の読み取りにより発酵液の吸光度を測定するか、または規定量の発酵液を乾燥させた後に細胞の乾重を測定するかのいずれかによって求める。
生産された1,2−プロパンジオールの量は、当技術分野のプロトコールの現状に従い、適したカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定される。
本発明では、進化株は次の特徴:グルコース取り込み率の上昇および1,2−プロパンジオールの生産率の向上に関して選択される。次に、これらの特徴を示す株を単離し、有利には、最良の生産株を同定する方法で互いに比較する。
グルコースの取り込み率(g/l/時で表される)は次のようにして算出される:
培養により消費されたグルコースの濃度(g/l)/この消費に要する時間(時間)
上記のように培地中のバイオマスの濃度を考慮することで、特殊なグルコース取り込み率が算出できる。
グルコース取り込み率と1,2−プロパンジオール生産率は密接に関連している。グルコースの消費が増えれば、グルコース代謝からの生成物の生産が同じ割合で増える。
選択および単離の後、最良の進化株は、始原株の取り込みよりも約20%高い、好ましくは約30%高いまたはそれを超える、より好ましくは50%高いグルコース取り込みを示す。
1,2−プロパンジオール生産率の上昇は、始原株の生産率よりも約20%高い、好ましくは約30%高いまたはそれを超える、より好ましくは約50%高いものである。
tpih遺伝子は、DHAPとGA3Pの相互変換を触媒する酵素「トリオースリン酸イソメラーゼ」をコードする(図1参照)。この遺伝子の減弱の目的は、最も有効な1,2−プロパンジオール生産へ向かう進化が可能となるように細胞の代謝を操作することである。
本発明において「遺伝子の発現の減弱」とは、遺伝子の発現の部分的なまたは完全な抑制を表し、その後、それは「減弱された」と言われる。この発現の抑制は、その遺伝子の活性化機構の抑制、その遺伝子の発現の阻害、その遺伝子発現に必要なプロモーター領域の全てもしくは一部の欠失、またはその遺伝子のコード領域の欠失のいずれかであり得る。好ましくは、遺伝子の減弱は本質的にその遺伝子の完全な欠失であり、その遺伝子は、本発明の株の同定、単離および精製を助ける選択マーカー遺伝子で置換することができる。遺伝子は、Datsenko, K.A. & Wanner, B. L. (2000) "One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K- 12 using PCR products". Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 6640-6645に記載されているように、好ましくは、相同組換えの技術によって不活性化される。他の方法を以下に記載する。
「発現」とは、その遺伝子の産物である、対応するタンパク質の生成をもたらす遺伝子配列の転写および翻訳を指す。
「進化株において機能的tpiA遺伝子を再構築する」とは、選択された進化株が進化プロセスの後に機能的tpiA遺伝子を導入することにより改変されることを意味し、これは、相同組換えによって、減弱された遺伝子コピーを野生型の機能的コピーで置換し、始原株で測定された活性と類似のトリオースリン酸イソメラーゼ活性を回復させることによるか、または異なる染色体座に機能的tpiA遺伝子を導入することによるか、またはプラスミドに機能的tpiA遺伝子を導入することによって達成することができる。この回復は、トリオースリン酸イソメラーゼの作用を介した1,2−プロパンジオールの生産のためにGA3Pを部分的にDHAPへ再循環させることにより、グルコースから1モル/モルを超える収率の1,2−プロパンジオール生産を可能とする。
メチルグリオキサール(2−オキソプロパナール)の乳酸への変換に関与する少なくとも1つの遺伝子の発現を減弱する目的は、メチルグリオキサールの乳酸への変換を阻害することであり、従って、存在するメチルグリオキサールは本質的に1,2−プロパンジオールの合成のための細胞機構により用いられる。
メチルグリオキサールの乳酸への変換に関与する遺伝子は、特に、
・メチルグリオキサールからのラクトイルグルタチオンの合成を触媒するグリオキサラーゼをコードする遺伝子、例えばグリオキサラーゼIをコードするgloA遺伝子、
・ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ((S)ラクトアルデヒドからの(S)乳酸の合成を触媒する)をコードするaldAおよびaldB遺伝子
である。
これらの1以上の遺伝子の発現が始原株において減弱される(または遺伝子が完全に欠失される)ことが有利である。好ましくは、gloA遺伝子が欠失される。
還元性の、NADH等価物を消費する、従って、1,2−プロパンジオール生合成経路と競合する天然のグルコース発酵経路を抑制することからなるさらなる改変を始原株に施すことが有利である。
特に、ピルビン酸からの乳酸の合成を触媒する乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldhA遺伝子の発現と、アセチル−CoAからのエタノールの合成を触媒するアルコール−アルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするadhE遺伝子の発現を減弱することが有利である。
同様に、ピルビン酸からアセチル−CoAとNADHを生産するために微生物にピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体を使用させることができる。これは、ピルビン酸ギ酸リアーゼをコードするpflAおよびpflB遺伝子の発現を減弱することにより達成することができる。
1,2−プロパンジオール合成経路を迂回可能なグルコースの、グリセルアルデヒド−3−リン酸およびピルビン酸への直接代謝を妨げるために、Entner-Doudoroff経路に関与する酵素をコードするeddおよびeda遺伝子の少なくとも1つを減弱することもまた有用である。
嫌気性または微好気性条件下では、前駆体の1,2−プロパンジオールへの還元のためのNADHのアベラビリティーを高めることが有利である。これは、グローバルレギュレーターArcA(arcA遺伝子によりコードされている)により媒介されるトリカルボン酸サイクルに対する抑制を軽減することにより得られる。細胞のNADH濃度はまた、遺伝子ndhによりコードされているNADHデヒドロゲナーゼIIを不活性化することにより増強され得る。よって、好ましくは、arcAおよびndhから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現が減弱される。
好ましくは、始原株は細菌、酵母または真菌からなる群から選択される。
より好ましくは、始原株は腸内細菌科、バチルス科、クロストリジウム科、ストレプトミセス科およびコリネバクテリア科からなる群から選択される。
本発明の好ましい実施態様では、始原株は大腸菌かクロストリジウム・アセトブチリカムのいずれかである。
取得可能な進化株および前記の方法によって得られるような進化株も本発明の目的である。
この進化株において、特定の遺伝子の発現を改変する、すなわち、遺伝子発現を増強または減弱することが有利である。これらの改変は1,2−プロパンジオールの生産性能の改善を可能とする。
目的遺伝子の過剰発現を得るため、当業者であれば、例えば
・内因性プロモーターのより強力なプロモーターでの置換
・目的遺伝子を有する発現ベクターの、微生物への導入
・目的遺伝子の付加的コピーの、染色体への導入
などの種々の方法を知っている。
当業者ならば、DNAを細菌株へ導入するためのいくつかの技術を知っている。好ましい技術はエレクトロポレーションであり、当業者にはよく知られている。
本発明の特定の実施態様では、進化株は、解糖の下方部分のフラックスを低減するため、そしてそれをDHAP、最終的には1,2−プロパンジオールの合成に向け直すために、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)活性の減弱により改変される(図1参照)。この低減された活性は特に、gapA遺伝子の発現の減弱により得られる。
「酵素の活性の減弱」とは、改変前の進化株で観察された活性に比べた、目的酵素の活性の低下を指す。当業者ならばこの結果を得るための多数の手段を知っており、例えば、下記のもの:
・その遺伝子への、この遺伝子の発現レベルまたはコードされているタンパク質の活性のレベルを低下させる突然変異の導入
・その遺伝子の天然プロモーターの、より低い発現をもたらす強度の低いプロモーターでの置換
・対応するメッセンジャーRNAまたはタンパク質を脱安定化するエレメントの使用
・発現が全く望まれないならば、その遺伝子の欠失
がある。
有利には、進化株において、糖移入の効率が高められる。gapA遺伝子発現の強い減弱はGAPDH反応において50%を超える炭素フラックスの低下をもたらし、この結果、移入グルコース1モル当たり1モル未満のホスホエノールピルビン酸(PEP)が合成される。単純糖の細胞への移入を通常確保する糖ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)は、グルコース6リン酸を生じるリン酸化反応と結びついている。この反応に必要なリン酸は、PEPのピルビン酸への変換により供給される。グリセルアルデヒド−3−リン酸を介してフラックスを低減することにより生産されるPEPの量を減らすと、糖移入が減少する。
本発明の特定の実施態様では、糖はホスホエノールピルビン酸のアベラビリティーとは独立の糖移入系によって微生物に移入され得る。リン酸化を含まない遺伝子galPによりコードされているガラクターゼ−プロトン共輸送体が利用可能である。この場合、移入したグルコースは、glk遺伝子によりコードされているグルコースキナーゼによってリン酸化されなければならない。この経路を促進するために、galPおよびglkから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現が増強される。結果として、PTSは分配可能となり、ptsH、ptsIまたはcrrから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を減弱することによって排除することができる。
本発明の別の特定の実施態様では、PTSの効率が、代謝産物PEPのアベラビリティーを高めることによって増強される。gapA活性の減弱およびピルビン酸へ向かう炭素フラックスの低さのために、本発明の改変株におけるPEPの量は限定され、細胞へ輸送されるグルコースの量が少なくなり得る。
微生物株においてPEPのアベラビリティーを高めるために使用可能な様々な手段がある。特に、PEP→ピルビン酸の反応を減弱する手段がある。好ましくは、この結果を得るために前記の株においてピルビン酸キナーゼ酵素をコードするpykAおよびpykFから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現が減弱される。PEPのアベラビリティーを高める別法は、この酵素の活性を高めることによってホスホエノールピルビン酸シンターゼにより触媒されるピルビン酸→PEPの反応に有利になるようにすることである。この酵素はppsA遺伝子によりコードされている。よって、好ましくは、この微生物において、ppsA遺伝子の発現が増強される。両改変が微生物に同時に存在してもよい。
特に嫌気性または微好気性条件下で、ピルビン酸をアセチル−coAへ変換するピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)がNADHによる阻害に対して低い感受性を有することが有利である。より低い感受性とは、WO2005/073364にすでに示されているように、非改変酵素の感受性に対して定義される。特に、このような特徴は、酵素のタンパク質配列においてアラニン55のバリンによる置換をもたらす、lpd遺伝子(PDCのサブユニットリポアミドデヒドロゲナーゼをコードする)に特異的突然変異を導入することによって得ることができる。
本発明の別の特定の実施態様では、副生成物である酢酸の合成が妨げられる。完全好気条件下では、還元された補因子NADHは好ましくは、末端電子受容体として酸素を用いる呼吸鎖を介してNAD+へと酸化される。従って、同時生成物(例えば、酢酸)の合成が強いられない。1,2−プロパンジオールの生産を至適化するためにはこのような酢酸合成を回避することが好ましい。
酢酸の生産を妨げるためには、有利には、酢酸の合成に関与する少なくとも1つの遺伝子の活性が減弱される。好ましくは、ackA、ptaおよびpoxBから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現が減弱され、これらの遺伝子は全て、異なる酢酸生合成経路(図1参照)に関与する酵素をコードしている。
本発明のもう1つの目的は、これまでに記載したものなどの進化株が炭素源を含有する適切な増殖培地で増殖され、その後、生成された1,2−プロパンジオールが回収される、1,2−プロパンジオールを製造するための方法である。1,2−プロパンジオールの製造は好気性、微好気性または嫌気性条件下で行われる。
本発明の微生物の培養条件(発酵)は、当業者ならば容易に定義することができる。特に、細菌は20℃〜55℃の間、好ましくは25℃〜40℃の間の温度、好ましくは、C.アセトブチリカムでは約35℃、大腸菌では約37℃で発酵される。
この工程は回分法、流加法または連続法のいずれかで行うことができる。
「好気性条件下」とは、酸素が、液体相に気体を溶解させることにより培養物に供給されることを意味する。これは、(1)酸素を含有する気体(例えば、空気)を液体相に散布すること、または(2)培養培地を含有する容器を振盪して、上部空間に含まれている酸素を液体相に送ることにより得ることができる。嫌気性条件下ではなく好気性条件下での発酵の利点は、電子受容体としての酸素の存在が、その株の、細胞プロセスのためにより多くのエネルギーをATP形態で生産する能力を改良するということである。従って、その株はその全般的代謝が改良されている。
微好気性条件は、低パーセンテージの酸素(例えば、0.1〜10%の間の酸素を含み、窒素で100%とした混合物を用いる)が液体相に溶解される培養条件として定義される。
嫌気性条件は、培養培地に酸素が供給されない培養条件として定義される。厳密な嫌気性条件は、他の気体の痕跡を除去するために培養培地に窒素のような不活性ガスを散布することにより得られる。硝酸を電子受容体として用い、株によるATP生産を改良し、その代謝を改良することができる。
1,2−プロパンジオール製造のための進化プロセスおよび発酵プロセスの際の株の培養は、発酵槽で、少なくとも1つの炭素源を含有し、使用する細菌に適合した既知の設定構成の無機培養培地を用いて行われる。従って、特に、大腸菌用の無機増殖培地は、M9培地(Anderson, 1946, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 32:120-128)、M63培地(Miller, 1992; A Short Course in Bacterial Genetics: A Laboratory Manual and Handbook for Escherichia coli and Related Bacteria, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)と同一もしくは類似の組成のもの、またはSchaefer et al. (1999, Anal. Biochem. 270: 88-96)により定義されているものなどの培地、および下記のMPGと呼ばれる最小培養培地であり得る。
Figure 0005570821
本発明の特定の実施態様では、この方法は、大腸菌の進化株を用い、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、スクロースまたはキシロースであり得る単純炭素源を含有する増殖培地で行われる。
本発明の別の特定の実施態様では、この方法はクロストリジウム・アセトブチリカムの進化株を用い、単純炭素源または複合炭素源を含有する増殖培地で行われる。
従って、C.アセトブチリカム用の増殖培地は、クロストリジウム増殖培地(CGM, Wiesenborn et al., Appl. Environm. Microbiol., 54: 2717-2722)またはMonot et al. (Appl. Environm. Microbiol., 44: 1318-1324)もしくはVasconcelos et al. (J. Bacterid., 176: 1443-1450)により示されているような無機増殖培地と同一もしくは類似の組成のものであり得る。
C.アセトブチリカムの培養に用いられる炭素源は単純炭素または複合炭素のいずれかである。単純炭素源はアラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、スクロースまたはキシロースであり得る。特に好ましい単純炭素源はグルコースである。複合炭素源はデンプンまたはヘミセルロースであり得る。特に好ましい複合炭素源はデンプンである。
好ましくは、回収された1,2−プロパンジオールはさらに精製される。当業者ならば生産された1,2−プロパンジオールを回収および精製するための方法を知っている。これらの方法は通常のプロセスである。
本発明は上記、下記および大腸菌に関して実施例に記載されている。よって、本発明の始原株および進化株に関して減弱、欠失または過剰発現可能な遺伝子は、主として大腸菌由来の遺伝子の名称を用いて定義される。しかしながら、この名称は本発明によればより一般的な意味を持ち、他の微生物において対応する遺伝子も包含する。当業者ならば、大腸菌由来の遺伝子のGenBank参照番号を用いて、大腸菌以外の生物における等価な遺伝子を同定することができる。
相同配列の同定の手段およびそれらの相同性%は当業者によく知られており、特に、ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で、このウェブサイトに示されているデフォルトパラメーターとともに使用することができるBLASTプログラムを含む。得られた配列は、例えばCLUSTALWプログラム(http://www.ebi.ac.uk/clustalw/)を、これらのウェブサイトに示されているデフォルトパラメーターとともに用いて利用(アライン)することができる。
PFAMデータベース(protein families database of alignments and Hidden Markov Models http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/)は、タンパク質配列アライメントの大きなコレクションである。各PFAMは、複数のアライメントの可視化、タンパク質ドメインの観測、生物間での分布の評価、他のデータベースへのアクセスの確保および既知のタンパク質構造の可視化を可能とする。
COG(Clusters of Orthologous Groups of protein http://www.ncbi.nlm.nih. gov/COG/)は、44の主要な系統発生論的系統を表す66の完全に配列決定されたゲノムに由来するタンパク質配列を比較することにより得られる。各COGは少なくとも3つの系統から定義され、古くから保存されていたドメインの同定が可能となる。
参照文献(本明細書に引用されている順)
Figure 0005570821
以下の実施例は、
1−改変大腸菌株MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcA,Δndhの構築
2−前記始原株の進化
3−選択された進化株におけるtpiA遺伝子の再構築
4−gapA遺伝子の減弱;pykAおよびpykF遺伝子の欠失;ppsA遺伝子の過剰発現
5−ackA−pta、poxB遺伝子の欠失
6−得られた数株の、好気性条件下での1,2−プロパンジオール生産に関する比較
7−最良の株を用いた流加培養での1,2−プロパンジオールの生産
実施例1:1,2−プロパンジオール生産の改良に向けた進化が可能な大腸菌MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcA,Δndhの改変株構築
a)改変大腸菌株MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ldhA::km,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δeddの構築
プロトコール1に従い、大腸菌株MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ldhA::km,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd::cm(WO2005073364参照)においてクロラムフェニコール耐性カセットを除去した。
プロトコール1:耐性カセットの除去
クロラムフェニコールおよび/またはカナマイシン耐性カセットを以下の技術に従って除去した。クロラムフェニコールおよび/またはカナマイシン耐性カセットのFRT部位にFLPレコンビナーゼ作用を有するプラスミドpCP20をエレクトロポレーションによりこの株へ導入した。42℃で連続培養した後、これらの抗生物質耐性カセットの欠損を、表1に示されたオリゴヌクレオチドを用いたPCR分析により確認した。
この株において予め確立されている改変の存在を、表1に示されたオリゴヌクレオチドを用いて確認した。
得られた株を大腸菌MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ldhA::km,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δeddと命名した。
Figure 0005570821
b)改変大腸菌株MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA::cm,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δeddの構築
カナマイシン耐性カセットを除去するため、およびldhA遺伝子を不活性化するために、プロトコール2に従い、関連遺伝子の大部分を欠失したldhA遺伝子にクロラムフェニコール耐性カセットを挿入した。
プロトコール2:組換えのためのPCR産物の導入および組換え体の選択
遺伝子または遺伝子間領域の置換のために選択され、表2に示されたオリゴヌクレオチドを用い、プラスミドpKD3由来のクロラムフェニコール耐性カセットまたはプラスミドpKD4由来のカナマイシン耐性カセットを増幅した(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L. (2000))。次に、得られたPCR産物を、そこで発現したλ Red(γβ,exo)系が相同組換えに極めて有利である、プラスミドpKD46を担持するレシピエント株にエレクトロポレーションにより導入した。その後、抗生物質耐性形質転換体を選択し、その耐性カセットの挿入を、表1に示された適切なオリゴヌクレオチドを用いた分析により確認した。
この株の他の改変も、表1に示されたオリゴヌクレオチドを用いて確認した。
得られた株を大腸菌MG1655 lpd*,ΔldhA::cmΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δeddと命名した。
Figure 0005570821
c)改変大腸菌株MG1655 ΔarcA::kmの構築
大腸菌株MG1655において、プロトコール2に記載の技術を表2に示されたオリゴヌクレオチドとともに用い、カナマイシン抗生物質耐性カセットを挿入し、関連遺伝子の大部分を欠失させることにより、arcA遺伝子を不活性化した。得られた株を大腸菌MG1655 ΔarcA::kmと命名した。
d)大腸菌MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔplfAB,ΔadhE,ΔldhA,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcAの改変株の構築
大腸菌株MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA::cm,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δeddにおける、その遺伝子をカナマイシン耐性カセットで置換することによるarcA遺伝子の欠失は、ファージP1を用いた形質導入技術によって行った。
プロトコール3:遺伝子欠失のためのファージP1を用いた形質導入
レシピエント大腸菌における、その遺伝子を耐性カセット(カナマイシンまたはクロラムフェニコール)で置換することによる選択された遺伝子の欠失は、ファージP1を用いた形質導入技術によって行った。プロトコールは、(i)単一の遺伝子が欠失したMG1655株でのファージ溶解液の作製、および(ii)このファージ溶解液によるレシピエント株の形質導入の二段階であった。
ファージ溶解液の作製
・10mlのLB+Cm 30μg/ml+グルコース0.2%+CaCl2 5mMでの、単一の遺伝子が欠失したMG1655株の一晩培養物100μlを播種する。
・振盪しながら37℃で30分インキュベーション。
・野生株MG1655で作製したファージP1溶解液100μl(およそ1×109ファージ/ml)を加える。
・37℃で3時間、全ての細胞が溶解するまで振盪する。
・200μlのクロロホルムを加え、ボルテックスにかける・
・4500gで10分の遠心分離を行い、細胞残渣を除去する。
・上清を無菌試験管に移し、200μlのクロロホルムを加える。
・この溶解液を4℃で保存する。
形質導入
・LB培地中、大腸菌レシピエント株の一晩培養物5mlを1500gで10分遠心分離する。
・この細胞ペレットを2.5mlのMgSO4 10mM、CaCl2 5mM中に懸濁させる。
・対照試験管:細胞100μl
単一の遺伝子が欠失したMG1655株のファージP1 100μl
・試験管試験:細胞100μl+単一の遺伝子が欠失したMG1655株のファージP1 100μl
・振盪せずに30℃で30分インキュベーション。
・各試験管に1Mクエン酸ナトリウム100μlを加え、ボルテックスにかける。
・1mlのLBを加える。
・振盪しながら37℃で1時間インキュベーション。
・試験管を7000rpmで3分遠心分離した後、ディッシュ上、LB+Cm30μg/mlでプレーティング。
・37℃で一晩インキュベーション。
次に、抗生物質耐性形質転換体を選択し、欠失の挿入を、表1に示された適切なオリゴヌクレオチドを用いたPCR分析により確認した。
得られた株を大腸菌MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA::cm,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcA::kmと命名した。
次に、プロトコール1に従い、クロラムフェニコール耐性カセットおよびカナマイシン耐性カセットを除去した。
得られた株を大腸菌MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcAと命名した。
e)改変大腸菌株MG1655 Δndh::kmの構築
プロトコール2に記載の技術を表2に示されたオリゴヌクレオチドとともに用い、カナマイシン抗生物質耐性カセットを挿入し、関連遺伝子の大部分を欠失させることにより、ndh遺伝子を不活性化した。得られた株を大腸菌MG1655 Δndh::kmと命名した。
f)大腸菌株MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔplfAB,ΔadhE,ΔldhA,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcA,Δndhの構築
大腸菌株MG1655 lpd*,ΔtpiA,AplfAB,ΔadhE,ΔldhA,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcAにおける、その遺伝子をカナマイシン耐性カセットで置換することによるndh遺伝子の欠失は、これまでのように、プロトコール3に記載のファージP1を用いた形質導入技術を用いて行った。
得られた株を大腸菌MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcA,Δndh::kmと命名した。
次に、プロトコール1に従い、カナマイシン耐性カセットを除去した。得られた株を大腸菌MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcA,Δndhと命名した。
各段階で、株においてそれまでに構築された改変の存在を、表1に示されたオリゴヌクレオチドを用いて確認した。
実施例2:微好気性条件下でのケモスタット培養における改変大腸菌株MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA::cm,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δeddの進化および進化の生理学的特徴
1,2−プロパンジオール生産の改良に向けて進化させるため、大腸菌株MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA::cm,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δeddを、過剰なグルコース(最初は20g/l、グルコースが使い尽くされれば追加)を含む、これまでに記載したものなどの培養培地MPG中、一方は嫌気性条件下、他方は微好気性条件(1%酸素)下での連続培養で培養した。温度は37℃に設定し、pHは塩基を加えることで6.5に調整した。これらのケモスタットでの株の進化に続き、生成物1,2−プロパンジオールと副生成物である酢酸の濃度の増加と結びついたバイオマス濃度の増加が数週間(4週間から6週間まで)見られた。これはこれらの株の性能の改良を表すものであった。これらの培養物が、これらの条件下でその濃度のさらなる上昇が見られない定常状態に達した際に、その進化が起こった。
進化前後の株の特徴を評価した。個々のクローンを表す単一のコロニーをペトリ皿に単離した。これらのクローンを、エルレンマイヤーフラスコアッセイにて、ケモスタット培養で用いたものと同じMPG培地を用い、始原株を対照として評価した。これらのクローンのうちいくつかが対照に比べて良好な1,2−プロパンジオール特異的生産率を示した。これらのクローンを次の工程のために選択した。各進化条件に関して最良のクローンで得られた結果を以下の表4および5に報告する。
Figure 0005570821
Figure 0005570821
これらのクローンを、酵母抽出液を含む培養培地で長期間培養したことから、最小培地での増殖に順応させる必要があった。2つの最良のクローン(その性能は表4および5に示されている)は、最小培地で連続培養して、そのような条件下での増殖速度を高めることにより順応させ、増殖速度が安定した際に順応を止めた。最終培養物からクローンを単離し、その順応した集団に代表的なものであるかどうか確認した。
実施例3:大腸菌MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔpflAB,ΔadhE,ΔldhA::cm,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δeddの選択された進化株におけるtpiA遺伝子の再構築
a)改変大腸菌株MG1655 tpiA::kmの構築
プロトコール2に記載の技術に従い、表2に示されたオリゴヌクレオチドを用い、tpiA遺伝子の上流にカナマイシン抗生物質耐性カセットを挿入した。得られた株を大腸菌MG1655 tpiA::kmと命名した。
次に、プロトコール3に記載のファージP1による形質導入技術を用い、大腸菌進化株MG1655 lpd*,ΔtpiA,ΔplfAB,ΔadhE,Δldh::cm,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcA,ΔndhにおけるtpiA遺伝子の再構築を行った。
得られた株を進化型大腸菌MG1655 lpd*,tpiArc::km,ΔplfAB,ΔadhE,ΔldhA::cm,ΔgloA,ΔaldA,ΔaldB,Δedd,ΔarcA,Δndhと命名した。
その後、プロトコール2に従い、カナマイシン耐性カセットおよびクロラムフェニコール耐性カセットを除去した。得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」と命名した。
株においてそれまでに構築された改変の存在を、表1に示されたオリゴヌクレオチドを用いて確認した。
実施例4:「進化型大腸菌tpiArc」の改変:gapA遺伝子の減弱;pykAおよびprkF遺伝子の欠失;ベクターpJB137−PgapA−ppsAによるppsA遺伝子の剰発現
a)天然gapAプロモーターの、合成ショートPtrc16プロモーターでの置換
「進化型大腸菌tpiArc」株における天然gapAプロモーターの、合成ショートPtrc16プロモーター(配列番号52:gagctgttgacgattaatcatccggctcgaataatgtgtggaa)での置換は、225pbの上流gapA配列をFRT−CmR−FRTおよび操作プロモーターで置換することにより行った。この技術はプロトコール2に記載され、表2に示されたオリゴヌクレオチドを用いる。得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapAと命名した。
次に、プロトコール1に従い、クロラムフェニコール耐性カセットを除去した。得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapAと命名した。
b)pykA遺伝子の欠失
pykA遺伝子は、プロトコール2に記載の技術を表2に示されたオリゴヌクレオチドとともに用い、カナマイシン抗生物質耐性カセットを挿入し、関連遺伝子の大部分を欠失させることにより不活性化した。得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapA ΔpykA::kmと命名した。
次に、プロトコール1に従い、カナマイシン耐性カセットを除去した。得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapA ΔpykAと命名した。
c)pykF遺伝子の欠失
pykF遺伝子は、プロトコール2に記載の技術を表2に示されたオリゴヌクレオチドとともに用い、カナマイシン抗生物質耐性カセットを挿入し、関連遺伝子の大部分を欠失させることにより不活性化した。得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF::kmと命名した。
次に、前記のように、プロトコール1に従い、カナマイシン耐性カセットを除去した。得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykFと命名した。
d)発現ベクターpJB137−PgapA−ppsAの株への導入
ホスホエノールピルビン酸の生産を高めるために、ppsA遺伝子を、gapAプロモーターを用いてプラスミドpJB137から発現させた。プラスミドpJB137−P gapA−ppsAの構築のため、ppsA遺伝子を、以下のオリゴヌクレオチドを用いて大腸菌MG1655のゲノムDNAからPCR増幅した。
1.gapA−ppsAFは、65塩基(配列番号53):
ccttttattcactaacaaatagctggtggaatatATGTCCAACAATGGCTCGTCACCGCTGGTGC
からなり、
・ウェブサイト(http://genolist.pasteur.fr/Colibri/)の参照配列であるppsA遺伝子(1785136〜1782758)の配列(1785106〜1785136)と相同な領域(大文字)
・gapAプロモーター(1860794〜1860761)と相同な領域(小文字)
を含む。
2.ppsARは、43塩基(配列番号54):
aatcgcaagcttGAATCCGGTTATTTCTTCAGTTCAGCCAGGC
からなり、
・ppsA遺伝子の領域(1785136〜1782758)の配列(1782758〜1782780)と相同な領域(小文字)
・制限部位HindIII(下線の文字)
を含む。
同時に、大腸菌gapA遺伝子のgapAプロモーター領域を、以下のオリゴヌクレオチドを用いて増幅した。
1.gapA−ppsARは、65塩基(配列番号55):
GCACCAGCGGTGACGAGCCATTGTTGGACATatattccaccagctatttgttagtgaataaaagg
からなり、
・ppsA遺伝子(1785136〜1782758)の配列(1785106〜1785136)と相同な領域(大文字)および
・gapAプロモーター(1860794〜1860761)と相同な領域(小文字)
を含む。
2.gapAFは、33塩基(配列番号56):
ACGTCCCGGGcaagcccaaaggaagagtgaggc
からなり、
・gapAプロモーター(1860639〜1860661)と相同な領域(小文字)
・制限部位SmaI(下線の文字)
を含む。
次に、両断片を、オリゴヌクレオチドppsARおよびgapAF(Horton et al. 1989 Gene 77:61-68)を用いて融合した。PCR増幅した断片を制限酵素HindIIIおよびSmaIで切断し、ベクターpJB137(EMBL受託番号:U75326)のHindIII/SmaI部位にクローニングし、ベクターpJB137−PgapA−ppsAを得た。組換えプラスミドをDNA配列決定により確認した。
このプラスミドpJB137−PgapA−ppsAを「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF株に導入する。
得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」,Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF,(pJB137−PgapA−ppsA)と命名する。
各段階で、株においてそれまでに構築された改変の存在を、表1に示されたオリゴヌクレオチドを用いて確認した。
実施例5:副生成物として酢酸を生じずに1,2−プロパンジオールを生産可能な「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF,ΔackA−pta,ΔpoxB(pJB137−PgapA−ppsA)株の構築
a)改変大腸菌株MG1655 ΔackA−pta::cmの構築
プロトコール2に記載の技術を表2に示されたオリゴヌクレオチドとともに用い、クロラムフェニコール抗生物質耐性カセットを挿入し、関連遺伝子の大部分を欠失させることにより、ackAおよびpta遺伝子を不活性化する。得られた株を大腸菌MG1655 ΔackA−pta::cmと命名する。
b)「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF,ΔackA−pta株の構築
「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF株におけるackAおよびpta遺伝子の欠失を、前記のように、プロトコール3に記載のようなファージP1を用いた形質導入技術を用いて行う。
得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF,ΔackA−pta::cmと命名する。
次に、前記のように、プロトコール1に従い、クロラムフェニコール耐性カセットを除去する。得られた株を「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc1−gapA,ΔpykA,ΔpykF,ΔackA−ptaと命名する。
c)改変株「進化型大腸菌tpiArc」Ptrc1−gapA,ΔpykA,ΔpykF,ΔackA−pta,ΔpoxB(pJB137−PgapA−ppsA)の構築
プロトコール2に記載の技術を表2に示されたオリゴヌクレオチドとともに用い、クロラムフェニコール抗生物質耐性カセットを挿入し、関連遺伝子の大部分を欠失させることにより、poxB遺伝子を不活性化する。
得られた株を進化型大腸菌tpiArc Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF,ΔackA−pta,ΔpoxB::cmと命名する。
次に、前記のように、プロトコール1に従い、クロラムフェニコール耐性カセットを除去する。得られた株を進化型大腸菌tpiArc Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF,ΔackA−pta,ΔpoxBと命名する。
このプラスミドpJB137−PgapA−ppsAを、進化型大腸菌株tpiArc Ptrc1−gapA,ΔpykA,ΔpykF,ΔackA−pta,ΔpoxBに導入する。得られた株を進化型大腸菌tpiArc Ptrc16−gapA,ΔpykA,ΔpykF,ΔackA−pta,ΔpoxB(pJB137−PgapA−ppsA)と命名する。
各段階で、株においてそれまでに構築された改変の存在を、表1に示されたオリゴヌクレオチドを用いて確認した。
実施例6:好気性条件下での1,2−プロパンジオール生産に関する種々の進化株の比較
実施例4に記載のように得られた株と対照株(対照1:嫌気性条件下で進化したMG1655 lpd* ΔtpiA ΔpflAB ΔadhE ΔldhA::Cm ΔgloA Δald,ΔaldB Δeddおよび対照2:微好気性条件下で進化したMG1655 lpd* ΔtpiA ΔpflAB ΔadhE ΔldhA::Cm ΔgloA Δald,ΔaldB Δedd)を、エルレンマイヤーフラスコアッセイにて、好気性条件下、酵母抽出液および炭素源としてのグルコースを添加した最小培地で培養した。培養は34℃で行い、培養培地をMOPSで緩衝させることによりpHを維持した。培養の終了時に、発酵液中の1,2−プロパンジオール、アセトールおよび残留グルコースをHPLCにより分析し、グルコースに対する1,2−プロパンジオールおよびグルコースに対する1,2−プロパンジオール+アセトールの収率を算出した。その後、最良の株を発酵槽での流加培養のために選択した。
Figure 0005570821
実施例7:最良の株を用いた流加培養での1,2−プロパンジオールの生産
これまでの実験で選択された最良の株を、流加プロトコールを用い、21発酵槽で培養する。
培養物の温度は37℃に維持し、pHはNH4OH溶液を用い、常に6.5〜8の間に調整する。振盪速度は回分期には200〜300rpmの間に維持し、流加期の終了時には1000rpmまで引き上げる。溶解酸素濃度は、ガスコントローラーを用いて30〜40%の間の値に維持する。光学密度が3〜5の間の値に達した際に、流加を初期流速0.3〜0.5ml/時で開始し、2.5〜3.5ml/時の間の流速値まで段階的に引き上げる。この時点で24〜48時間、流速を一定に維持する。流加培地は300〜500g/lの間の濃度のグルコースを含有する最小培地に基づく。

Claims (5)

  1. 炭素源から1,2−プロパンジオールを製造するための進化した大腸菌株を製造する方法であって、
    始原株を、増殖培地中で増殖させること、
    次に、1,2−プロパンジオールの生産率が高まった進化株を選択および単離すること、
    その後、その進化株に機能的tpiA遺伝子を導入すること
    を含んでなり、前記始原株が、始原株において進化を促進するための、tpiA遺伝子の発現の減弱、およびメチルグリオキサールの乳酸への変換に関与する少なくとも1つの遺伝子の発現の減弱を含むものである、方法。
  2. メチルグリオキサールの乳酸への変換に関与する遺伝子が、gloA、aldA、aldBおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 始原株が、ldhA、pflA、pflB、adhE、eddおよびedaからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の減弱をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 始原株が、arcAおよびndhからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の減弱をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 1,2−プロパンジオールを製造するための方法であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法によって得られた進化株が炭素源を含有する増殖培地で増殖され、生成した1,2−プロパンジオールが回収される、方法。
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