JP5564336B2 - 塗装代替用フィルム及びこれを具備する積層成形品 - Google Patents
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Description
直刷り法とは、成形品に直接印刷する方法であり、パッド印刷法、曲面シルク印刷法、静電印刷法等が挙げられる。
これらの直刷り法は、印刷対象である成形品が複雑な形状を有している場合には不向きであり、高度な意匠性を付与することも困難である。
一方、転写法には、熱転写法や水転写法があるが、比較的コスト高であるという問題を有している。
この方法は、印刷したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のシート又はフィルムを、予め真空成形等によって三次元の形状に成形した状態とするか、あるいは成形せずに二次元の形状の状態で、射出成形金型内にインサートし、基材となる樹脂を射出成形する方法である。
このインモールド成形法においては、樹脂シート又はフィルムと基材樹脂とを一体化させる場合と、印刷のみ転写させる場合とがある。
このように、一旦シート又はフィルムに装飾を施しておき、この装飾シート又はフィルムを基材に貼り合わせることで、塗装の代替を行うことが可能となる。
上記のような塗装代替用フィルムを樹脂成形品の表面に使用することにより、成形品に意匠に深みと高級感を付与でき、かつ成形同時加飾プロセスを利用することで、塗装工程の削減や環境負荷物質低減に寄与することが可能である。
また、表面硬度、耐熱性を損なうことなく、耐可塑剤白化性と成形性とを両立した塗装代替用アクリル樹脂フィルムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、耐候性、耐傷つき性、耐薬品性、成形性及び木質材料の視認性に優れ、また高い意匠性を示すものアクリル樹脂フィルムが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、上記従来技術においては、近年の付加価値が要求される塗装代替用フィルム特性のうちの、特に耐熱性については未だ十分な特性が得られていない。
そこで本発明においては、上記従来技術の課題に鑑みて、製膜成形性、靭性、表面光沢度、表面硬度(鉛筆硬度)、透明性及び耐熱性の特性バランスが良好な塗装代替用フィルム及びこれを用いた積層成形品を得ることを目的とする。
通常、アクリル樹脂の耐熱性を向上させると流動性が低下することによる成形性、製膜性不良や機械強度の低下が生じ、さらにはゴム質含有により更に流動性低下、耐熱性低下、表面光沢度及び表面硬度(鉛筆硬度)が低下する傾向があるが、本発明によれば、製膜成形性、靭性、表面光沢度、表面硬度(鉛筆硬度)、透明性及び耐熱性の特性バランスが良好な樹脂組成物よりなる塗装代替用フィルム及びこれを用いた積層成形体が得られる。
本発明は以下の通りである。
メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記一般式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含む耐熱アクリル系樹脂(a):100質量部と、
を、含有し、
70℃環境下でのヘイズ値が3.0%以下である、塗装代替用フィルム。
前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、内側から硬質層と軟質層と硬質層とが形成された三層構造以上の多層構造を有する粒子である、前記〔1〕に記載の塗装代替用フィルム。
膜厚が200μm以下であり、23℃環境下のヘイズ値が2.0%以下であり、60°表面光沢度が120%以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の塗装代替用フィルム。
Tg(ガラス転移温度)が120℃以上である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の塗装代替フィルム。
片面に印刷画像が形成されている、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の塗装代替用フィルム。
前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の塗装代替用フィルムと、基材とが積層した積層成形品。
前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の塗装代替用フィルムに成形処理を施し、その後、当該塗装代替用フィルム上に樹脂を射出成形して基材を積層した前記〔6〕に記載の積層成形品。
なお、下記においては、重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」(「単量体」を省略して化合物名のみ記載する場合もある。)といい、共重合体を構成する構成単位のことを「〜単位」という。
本実施形態の塗装代替用フィルムは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記一般式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含む耐熱アクリル系樹脂(a):100質量部と、
を、含有する。
耐熱アクリル系樹脂(a)は、第一の単量体成分としてメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位を40質量%以上90質量%以下、第二の単量体成分として芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下、第三の単量体成分として上記一般式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下含有する。
耐熱アクリル系樹脂(a)の第一の単量体成分であるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル等のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルが挙げられる。特に、透明性や重合し易さの観点からメタクリル酸メチルが好ましい。
耐熱アクリル系樹脂(a)の第二の単量体成分である芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等が挙げられる。特に、耐熱分解性や重合し易さの観点からスチレンが好ましい。
耐熱アクリル系樹脂(a)の第三の単量体成分である一般式(1)で表される化合物単位のうち、XがOであるものとしては、例えば、無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位が挙げられる。これらの中でも、耐熱分解性や耐熱性向上の観点から、無水マレイン酸単量体単位が好ましい。
また、XがN−Rであるものとしては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド単量体単位が挙げられる。
また、第二の単量体成分:芳香族ビニル化合物単位の共重合割合が5質量%以上であると、光学特性が良好となる傾向にあり、40質量%以下であると、耐候性が維持される傾向にある。
さらに、第三の単量体成分:上記一般式(1)で表される化合物単位が5質量%以上であると、耐熱性が良好となる傾向にあり、30質量%以下であると、着色性や重合安定性が維持される傾向にある。
より好ましくは、第一の単量体成分:メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が45質量%以上78質量%以下、第二の単量体成分:芳香族ビニル化合物単位が16質量%以上40質量%以下、第三の単量体成分:上記一般式(1)で表される化合物単位が6質量%以上15質量%以下である。
上記割合が、上記範囲であることにより、芳香族ビニル化合物の添加の効果が得やすく、重合体の収率も一定範囲に維持することができる。また、モノマー配合相への溶解も容易であり、樹脂の強度も維持しやすい傾向がある。
ここで用いられる共重合可能な他の単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン単量体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を共重合してもよい。
耐熱アクリル系樹脂(a)は、ラジカル開始剤を使用した塊状重合により製造できるが、溶液重合、乳化重合によっても製造できる。
水系懸濁重合は、無水マレイン酸を単量体成分として用いる場合には、その水溶性が高いため、終始安定な懸濁系を保つことが困難となる傾向にあり推奨されない。
ラジカル開始剤としては、一般に使用されているものを用いることができるが、特に、過酸化系開始剤であるラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを使用すると、耐熱アクリル系樹脂(a)の着色が抑制される傾向にある。従って、耐熱アクリル系樹脂(a)を重合する際のラジカル開始剤としては、ラウロイルパーオキサイドのようなジアシルパーオキサイドを適用することが好ましい。
耐熱アクリル系樹脂(a)の好ましい重合方法としては、例えば、特公昭63−1964号公報に記載された方法等が挙げられる。
耐熱アクリル系樹脂(a)のメルトインデックス(ASTM D1238:I条件)は、本実施形態の塗装代替用フィルムの強度の観点から、好ましくは10g/10分以下、より好ましくは6g/10分以下、さらに好ましくは3g/10分以下である。
Mw/Mnが1.6以上であると、樹脂組成物のフィルム加工性と機械物性のバランスが良好となる傾向にある。
また、Mw/Mnが4.0以下であると、溶融流動性が改善し、加工性が良好となる傾向にある。
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及びこれらの比(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算によって求めることができる。
耐熱アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)が50万以下であると、押出し延伸加工時に十分な流動性が得られるため、溶融押出、延伸成膜が大きな支障無く行うことができる傾向にある。
また、耐熱アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)が8万以上であると、良好な延伸安定性と、フィルムに十分な配向度が付与される傾向にある。
本実施形態の塗装代替用フィルムは、上述した耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下であり、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を含む。
ゴム質含有共重合体粒子(b)としては、上記特性を満たすものであれば、特に限定されず、一般的なブタジエン系ABSゴム、アクリル系、ポリオレフィン系、シリコーン系、フッ素ゴム等のゴム粒子を使用することができる。
ゴム質含有共重合体粒子(b)は、三層構造以上の多層構造を有していることが好ましく、三層構造以上の多層構造を有するアクリル系ゴム粒子がより好ましい。
ゴム質含有共重合体粒子(b)として、上記三層構造以上の多層構造を有するゴム粒子を用いることにより、加熱によるゴム質含有共重合体粒子(b)の変形が抑制され、本実施形態の塗装代替用フィルムのガラス転移温度(Tg)や透明性が実用上良好なものとなる。
硬質層を最内層と最外層に有するものとすることにより、ゴム質含有共重合体粒子(b)の変形が抑制される傾向にあり、最内層と最外層との間にある中間層が軟質成分を含有するものとすることにより、本実施形態の塗装代替用フィルムにおいて良好な靭性が付与される傾向にある。
屈折率を適切に制御する観点から、上記メタクリル酸メチルと共重合可能な他の共重合性単量体は、アクリル酸エステル単量体0.1〜5質量%と、芳香族ビニル化合物単量体5〜35質量%と、共重合性多官能単量体0.01〜5質量%とを含むものであることが好ましい。
前記芳香族ビニル化合物単量体としては、耐熱アクリル系樹脂(a)に使用される単量体と同様のものを用いることができるが、好ましくは、最内層(b−i)の屈折率を調整して本実施形態の塗装代替用フィルムの透明性を良好にする観点から、スチレン又はその誘導体が用いられる。
前記共重合性多官能単量体としては、特に限定されないが、好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、トリアリルイソシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ジビニルベンゼン等から1種又は2種以上を併用することができる。これらの中では(メタ)アクリル酸アリルがより好ましい。
前記アクリル酸エステルと共重合可能な他の共重合性単量体としては、芳香族ビニル化合物単量体95質量%〜99.9質量%と、共重合性多官能単量体0.1〜5質量%とを含むものであることが好ましい。
前記中間層(b−ii)を構成するアクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。特に、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−へキシルがより好ましい。
また、前記アクリル酸エステルと共重合可能な他の共重合体単量体に含まれる芳香族ビニル化合物単量体としては、上述した耐熱アクリル系樹脂(a)に使用される単量体と同様のものを用いることができるが、前記中間層(b−ii)の屈折率を調製して、本実施形態の塗装代替用フィルムの透明性を良好にする観点から、スチレン又はその誘導体が好ましく用いられる。
また、前記アクリル酸エステルと共重合可能な他の共重合体単量体に含まれる共重合性多官能単量体としては、上述した最内層(b−i)で用いられる共重合性多官能単量体と同様のものを用いることができる。共重合性多官能単量体の含有量は、前記アクリル酸エステルと共重合可能な他の共重合性単量体中において、すなわちアクリル酸エステルと共重合可能な他の共重合性単量体100質量%として0.1質量%以上5質量%以下であると、良好な架橋効果を有し、かつ、架橋が適度でゴム弾性効果が大きくなるため、本実施形態の塗装代替用フィルムの靭性が向上する傾向にあり好ましい。
ゴム質含有共重合体粒子(b)の製造方法については、特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等の公知重合法により製造できる。特に、乳化重合により得ることが好ましい。この場合、乳化剤、開始剤の存在下、初めに最内層(b−i)の単量体混合物を添加し重合を完結させ、次に中間層(b−ii)の単量体混合物を添加して重合を完結させ、次いで最外層(b−iii)の単量体混合物を添加して重合を完結させることにより、容易に多層構造粒子をラテックスとして得られる。このゴム質含有共重合体粒子(b)は、ラテックスから塩析、噴霧乾燥、凍結乾燥等の公知の方法により粉体として回収できる。
ゴム質含有共重合体粒子(b)は、上述した耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下であり、より好ましくは0.012以下、さらに好ましくは0.01以下である。
ゴム質含有共重合体粒子(b)と、耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下であると、透明性に優れた塗装代替用フィルムが得られる。
そして、別途レーザー屈折計にて測定した、プレス成形した耐熱アクリル系樹脂(a)の屈折率との差を算出することにより求められる。
ゴム質含有共重合体粒子(b)の平均粒子径が0.04μm以上であると、本実施形態の塗装代替用フィルムの靭性を維持でき、0.13μm以下であると、本実施形態の塗装代替用フィルムの透明性を実用上良好な値に保つことができる。
特に、本実施形態の塗装代替用フィルムを100μm以下の膜厚とする場合には、透明性維持のために、ゴム質含有共重合体粒子(b)の平均粒子径は0.1μm以下であることが好ましく、高温条件(70℃)下においてヘイズ値を3.0%以下とするために、ゴム質含有共重合体粒子(b)の平均粒子径は0.08μm以下であることが好ましい。
ゴム質含有共重合体粒子(b)の平均粒子径は、ゴム質含有共重合体粒子の乳化液をサンプリングして水で希釈し、所定の分光光度計を用いて吸光度を測定し、この値から、透過型電子顕微鏡写真より粒子径を計測したサンプルについて、同様に吸光度を測定して作成した検量線を用いて求められる。
上述したゴム質含有共重合体粒子(b)の含有量は、本実施形態の塗装代替用フィルムのトリミング性、耐折強度、及び透明性の観点から、上述した耐熱アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下であるものとし、好ましくは5質量部以上80質量部以下、より好ましくは10質量部以上65質量部以下、さらに好ましくは15質量部以上50質量部以下であるものとする。
ゴム質含有共重合体粒子(b)の含有量が上記耐熱アクリル系樹脂(a)100質量部としたとき、0.1質量部以上であると、塗装代替用フィルムがトリミング性及び耐折強度に優れたものとなり、トリミング工程においてマイクロクラックや亀裂等を抑制できる。100質量部以下であると、塗装代替用フィルムの耐熱性及び透明性を実用上良好な値に維持できる。
なお、トリミング工程とは、塗装代替用フィルムを製造する際に、フィルムの幅を一定に揃えるために両端を切り落とす工程を意味する。この際、フィルムがトリミング性に劣っていると、この切り落とす工程中にマイクロクラックや亀裂現象等が起こり、フィルムの生産性が著しく低下する。
<他の重合体>
本実施形態の塗装代替用フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した(a)耐熱アクリル系樹脂及び(b)ゴム質含有共重合体粒子以外の、他の重合体を混合することができる。
このような他の重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、及びフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
また、本実施形態の塗装代替用フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種目的に応じて任意の添加剤を配合できる。
添加剤の種類は、樹脂の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、二酸化珪素等の無機充填剤、酸化鉄等の顔料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。
本実施形態の塗装代替用フィルムには、製膜性の安定化のために、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤等の酸化防止剤等を配合できる。特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド)、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
さらに、本実施形態の塗装代替用フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤を添加することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。
ここで、成形加工性に優れるとは、例えば、塗装代替用フィルムの成形時に、低分子化合物のロールへの付着が少ないこと等を意味する。例えば、低分子化合物がロールへ付着すると、フィルム表面へロールを介して低分子化合物が付着し、フィルムの外観、光学特性を悪化させるため、光学材料として好ましくないものとなる。ここで、低分子化合物とは、例えば、紫外線吸収剤由来の熱分解物や揮発分のことを言う。
本実施形態の塗装代替用フィルムの製造方法については、特に制限されるものではなく、耐熱アクリル系樹脂(a)、ゴム質含有共重合体粒子(b)、及び必要に応じて、上述したその他の重合体、添加剤等を原料として、公知の方法により製造できる。
例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて、上述した(a)及び(b)成分を含む樹脂組成物を製造し、その後、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、原反フィルム又はシートを押し出し成形することにより製造できる。
押し出し成形により塗装代替用フィルムを得る場合は、予め前記(a)及び前記(b)成分を溶融混錬した材料を用いてもよいし、押し出し成形時に溶融混錬を経て成形してもよい。
また、薄膜成形品であれば、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、発泡成形等、公知の方法で成形でき、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法を適用してもよい。
この場合、片側印刷処理を施して、片面に絵柄等が印刷されたフィルムとすることが好ましい。
特に、50μm以上150μm以下の膜厚とすることにより、成形品に貼着したとき、外観として十分な深み感が得られ、複雑な形状に成形する場合にも延伸されても十分な厚みが確保できる。
(ヘイズ値:濁度)
本実施形態の塗装代替用フィルムは、透明性を表す指標の一つである23℃環境下のヘイズ値(濁度)が、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。23℃環境下のヘイズ値が2.0%以下であると、塗装代替用フィルムに高度な透明性が付与される傾向にある。
本実施形態の塗装代替用フィルムは、Tg(ガラス転移温度)が、実用上、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。
ガラス転移温度が120℃以上であると、加工工程、使用環境下等におけるフィルムの熱変形が抑制される。
さらに、本実施形態の塗装代替用フィルムを車両用として使用するような場合、ガラス転移温度が110℃以上であると例えばハンドル部位付近での使用が可能となるが、Tgが120℃以上であると例えばメーターパネル部位付近における使用も可能となるので工業的利用価値が高くなる。
Tg(ガラス転移温度)は、後述する実施例において示す方法と同様の方法により測定できる。
本実施形態における塗装代替用フィルムは、MDに対して垂直方向の耐折強度が、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上である。
ここで耐折強度とは、JIS P 8115(国際標準化機構:ISO5626)に従って求めた耐折回数をLogでとった値をいう。
MDに対して垂直方向の耐折強度が1.0以上であることにより、塗装代替用フィルムとして用いた場合、フィルムに割れが生じ難く、複雑な成型表面への加工も可能となる。
なお、MDとは、フィルム成形時のおける機械的流れ方向を示す。
塗装によって成形品に十分な厚みの塗膜を形成するには、十数回の重ね塗りが必要であり、コストがかかり、生産性が極端に悪くなるのに対して、本実施形態における塗装代替用フィルムを用いれば、この塗装代替用フィルム自体が塗膜として機能するため、厚い塗膜を容易に形成することができ、工業的に有利である。
このよう塗装代替用フィルムは、例えば、鉛筆硬度(JIS K5400に基づく測定)がH以上、60°表面光沢度が120%以上であることが好ましい。
鉛筆硬度がH以上であることによりハンドリング時の傷つきが低減される他、ハードコート処理後の表面平滑性が良好となる傾向にある。
また、60°表面光沢度が120%以上であると、表面外観が良好となり好ましく、130%以上がより好ましく、140%以上がさらに好ましい。
本実施形態の積層成形品は、上述した塗装代替用フィルムと、所定の基材とを積層した構成を有している。
基材を構成する樹脂としては、上述した塗装代替用フィルムに溶融接着可能なものであることが好ましい。
例えば、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂あるいはこれらを主成分とする各種の樹脂が挙げられる。
接着性の点から、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂あるいはこれらの樹脂を主成分とする樹脂が好ましく、特にABS樹脂、ポリカーボネート樹脂あるいはこれらを主成分とする樹脂がより好ましい。
なお、ポリオレフィン樹脂等の溶融融着しない樹脂であっても、所定の接着層を介在させることにより塗装代替用フィルムの基材として用いることができる。
本実施形態の積層成形品は、上述した塗装代替用フィルムと、別途成形した基材とを貼り合わせることにより製造できる。
すなわち、塗装代替用フィルムを熱ラミネーション等の従来から知られる積層方法により積層すればよい。熱融着しない材料の基材に対しては、接着剤を介して貼り合わせることができる。
また、本実施形態の積層成形品は、塗装代替用フィルムに成形処理を施し、その後、所定の樹脂を射出成形して、前記塗装代替用フィルムと基材とを積層させることにより製造することもできる。
この方法は、本実施形態の積層成形体として3次元形状のものを製造する場合に好適である。
具体的には、インサート成形法やインモールド成形法等の従来から知られる成形法を適用できる。特に生産性の観点から、インモールド成形法が好ましい。
インモールド成形法においては、塗装代替用フィルムを加熱した後、真空引き機能を持つ型内で真空成形を行う。
加熱温度は、塗装代替用フィルムが軟化する温度以上とすることが好ましい。
具体的には、塗装代替用フィルムの熱的性質、目的とする積層成形品の形状に左右されるが、通常は70℃以上170℃以下とする。これにより表面外観が良好なものとなり、実用上十分な離型性が確保できる。
上述したように真空成形によりフィルムに3次元形状を付与する場合、金型コーナー部への追従性を有していることが重要である。すなわち、塗装代替用フィルムは、高温時の伸度に富んでいる場合に上記成形方法に有利である。
真空成形でフィルムに3次元形状を付与した後、射出成形によりフィルムと基材樹脂とを溶融一体化させることによって、表層に塗装代替用フィルム層を有する積層成形品が得られる。
上述した方法は、塗装代替用フィルムの成形と、基材の射出成形とを一工程で行うことができるので、作業性、経済性の観点から優れた方法である。
意匠性を付与するために、必要に応じて適当な印刷法により塗装代替用フィルム面に印刷を行う。
塗装代替用フィルムの印刷面を、基材との積層面とすることにより、印刷面を保護し、また視覚的に高級感を付与することができる。
この場合、基材の材質を生かし、透明性、深み感、高級感等、マット感を付与したり、所定の色調を付加したりすることもできる。
上述した塗装代替用フィルム及び積層成形品の用途は、特に限定されないが、例えば、コンソールボックス、シフトレバーボックス等の自動車内装部品、二輪車のカウリング等の車輌外装部品、家電製品、家具、建材、携帯電話等、従来から塗装が施されていた部材にも利用でき、これら用途において非常に利用価値が高い。
実施例及び比較例において適用した、物性の測定方法、評価方法について下記に示す。
(1)ガラス転移温度(Tg)の測定
DSC−7型(パーキン・エルマー社製)を用い、室温から200℃までの昇温測定において、昇温速度20℃/分で原反フィルムサンプル質量8.0〜10mgのTgを測定した。
ゴム質含有共重合体粒子の乳化液をサンプリングして、固形分500ppmになるように水で希釈し、UV1200V分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて波長550nmでの吸光度を測定した。この測定値から、透過型電子顕微鏡写真より粒子径を計測したサンプルについて、同様に吸光度を測定して作成した検量線を用いて平均粒子径を求めた。
フィルムの靭性は、以下の耐折強度の測定により評価した。
長さ110mm×幅15mmに裁断したサンプルフィルムを、JIS P 8115(国際標準化機構:ISO5626)に従って、MD方向に対して垂直方向の耐折回数を測定し、その平均値を示した。下記に試験条件を記載する。
試験条件 試験機:MIT耐揉試験機(東洋精機製作所株式会社)
荷重:2.45N (=250g)
折り曲げ角度:±135°
折り曲げ速度:175cpm
試験片つかみ具
先端半径:R=0.38mm
開き:0.25mm
当該耐折試験の結果は、耐折強度をもって表示する。
耐折強度は次の式で算出される。
耐折強度 = Log n
(式中、nは試験片が損傷(折れ破壊)にいたる試験回数を示す。)
マイクロメーター(ミツトヨ株式会社製)を用いて各原反フィルムの中央部を測定した。
各原反フィルムの全光線透過率及び23℃ヘイズ値を、JIS−K7136に準じて測定した。
また、各原反フィルムを3mmのアクリル板で挟み込み、温水で70℃下に保った状態でヘイズ値を測定した。
グロスメーター(ムラカミカラーリサーチラボラトリー製 GM−26D型)を用い、60°での表面光沢度を測定した。
JIS K 5400に従って、鉛筆引っかき値を測定した。
◎:樹脂の流動性が非常に良好のため、成形性が非常に良好である。
○:樹脂の流動性が良好のため、成形性が良好である。
△:樹脂の流動性が不安定のため、成形性が安定化しない。
Metricon社製レーザー屈折計Model2010を用いて、耐熱アクリル系樹脂(a)プレス品の、23℃、550nmでの平均屈折率を測定した。
〔(1)アクリル系樹脂:耐熱アクリル系樹脂(a)、アクリル系樹脂(d)〕
(1−1)耐熱アクリル系樹脂(a−1)
特公昭63−1964号公報に記載されている方法に従い、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体である、耐熱アクリル系樹脂(a−1)を得た。
得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル単位72質量%、スチレン単位16質量%、無水マレイン酸単位12質量%であり、質量平均分子量は10万、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は2.5g/10分であった。
耐熱アクリル系樹脂(a−1)は実施例1〜6、8、比較例1、3〜5で用いた。
上記と同様の方法により、メタクリル酸メチル単位70質量%、スチレン単位16質量%、無水マレイン酸単位14質量%の共重合組成を有する、耐熱アクリル系樹脂(a−2)を得た。
質量平均分子量は12万、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は1.2g/10分であった。
耐熱アクリル系樹脂(a−2)は、後述する実施例7で用いた。
上記と同様の方法により、メタクリル酸メチル単位51質量%、スチレン単位45質量%、無水マレイン酸単位4質量%の共重合組成を有するアクリル系樹脂(d−1)を得た。
質量平均分子量は12万、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は1.8g/10分であった。
アクリル系樹脂(d−1)は、後述する比較例2で用いた。
メタクリル酸メチル94質量%、アクリル酸メチル2.5質量%、及びキシレン3.5質量%からなる単量体混合物に、当該単量体混合物100質量部に対して、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,3−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部、及びn−オクチルメルカプタン0.12質量部を添加し、均一に混合した。
この溶液を内容積10Lの密閉耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯層に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去した。
さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、メタクリル酸メチル単位98質量%、アクリル酸メチル単位2質量%の共重合体組成を有するアクリル系樹脂(d−2)を得た。
質量平均分子量は10.2万、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は、2.0g/10分であった。
アクリル系樹脂(d−1)は、後述する比較例6で用いた。
後述するゴム質含有共重合体粒子(b)の製造方法に示す略号は、下記の化合物を示すものとする。
MMA:メチルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
St:スチレン
MA:メチルアクリレート
ALMA:アリルメタクリレ−ト
PEGDA:ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200)
DPBHP:ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド
n−OM:n−オクチルメルカプタン
HMBT:2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水4600mL、乳化剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム24gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下80℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態(略無酸素状態)にした。
次に、還元剤としてロンガリットl.2gを加え均一に溶解した。
第一層として、MMA150g、BA2.5g、St40g、ALMA0.2g、DPBHP0.2gの単量体混合物を加え、80℃で重合した。約15分で反応は完了した。
次いで、第二層として、BA1110g、St572g、PEGDA40g、ALMA7.0g、DPBHP3.5g、ロンガリット2.0gの単量体混合物を90分にわたって滴下した。滴下終了後60分で反応は完了した。
次いで、第三層1段としてMMA190g、BA2.0g、DPBHP0.2g、n−OM0.1gの単量体混合物を5分にわたって滴下し、滴下終了後、この段階の反応は約15分で完了した。
最後に、第三層2段としてMMA380g、BA2.5g、DPBHP0.4g、n−OM1.2gの単量体混合物を10分にわたって加えた。この段階は約15分で反応が完了した。
温度を95℃に上げ、1時間保持し、得られた乳化液を0.5%塩化アルミニウム水溶液中に投入して重合体を凝集させ、温水で5回洗浄後、乾燥して白色フロック状の材料を得た。
前記第一層が最内層、第二層が中間層、第三層が最外層に相当する。
得られたゴム質含有共重合体粒子(b−1)の平均粒子径は0.1μmであった。
また、耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.004であった。
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水4600mL、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム33gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下80℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態(略無酸素状態)にした。
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート1.0gを添加してから5分後に、MMA220g、BA3.5g、St48g、ALMA0.27g及びDPBHP0.27gからなる単量体混合物のうち30質量%を一括添加し、その直後から残りの70質量%を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持して最内層の重合を完結させた。
次に、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.8gを添加してから5分後に、BA620g、St325g、ALMA14g、テトラエチレングリコールジアクリレート4.8g及びDPBHP2.0gからなる単量体混合物を60分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに80分間保持して軟質層(中間層)の重合を完結させた。
次に、MMA760g、BA50g、DPBHP1.6g及びn−OM1.0gからなる単量体混合物を70分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持した。
次に、95℃に昇温し60分間保持して最外層の重合を完結させた。
このようにして得られた重合体乳化液を少量採取し、上記物性の測定方法における(2)の方法で平均粒子径を求めたところ0.09μmであった。
残りの乳化液を3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次に、脱水・洗浄を繰り返した後、乾燥処理を行い、ゴム質含有共重合体粒子(b−2)をパウダーとして得た。
耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.008であった。
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水5600mL、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム40gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下80℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態(略無酸素状態)にした。
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート1.2gを添加してから5分後に、MMA260g、BA4.2g、St64g、ALMA0.33g及びDPBHP0.33gからなる単量体混合物のうち30質量%を一括添加し、その直後から残りの70質量%を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持して最内層の重合を完結させた。
次に、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレ−ト1.0gを添加してから5分後に、BA917g、St480g、ALMA21g、テトラエチレングリコールジアクリレート7.0g及びDPBHP2.9gからなる単量体混合物を90分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに80分間保持して軟質層(中間層)の重合を完結させた。
次に、MMA695g、BA45g、DPBHP1.47g及びn−OM0.9gからなる単量体混合物を60分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持した。
次に、95℃に昇温し60分間保持して、最外層の重合を完結させた。
このようにして得られた重合体乳化液を少量採取し、吸光度法により平均粒子径を求めたところ、0.08μmであった。
残りの乳化液を3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、ゴム含有共重合体(b−3)をパウダーとして得た。
また、耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.008であった。
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水4600mL、乳化剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム24gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下80℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態(略無酸素状態)にした。
次に、還元剤としてロンガリット1.3gを加え均一に溶解した。
第一層としてMMA190g、BA2.5g、ALMA0.2g、DPBHP0.2gの単量体混合物を加え80℃で重合した。約15分で反応は完了した。
次に、第二層としてBA1360g、St320g、PEGDA40g、ALMA7.0g、DPBHP1.6g、ロンガリット1.0gの単量体混合物を90分にわたって滴下した。滴下終了後40分で反応は完了した。
次に、第三層1段としてMMA190g、BA2.3g、DPBHP0.2gの単量体混合物を5分にわたって滴下し、滴下終了後、この段階の反応は約15分で完了した。
最後に、第三層2段としてMMA380g、BA4.6g、DPBHP0.4g、n−OMの量を1.2gの単量体混合物を10分にわたって加えた。この段階は約15分で反応が完了した。
温度を95℃に上げ、1時間保持し、得られた乳化液を0.5%塩化アルミニウム水溶液中に投入して重合体を凝集させ、温水で5回洗浄後、乾燥して白色フロック状の材料を得た。
前記第一層が最内層、第二層が中間層、第三層が最外層に相当する。
得られたゴム質含有共重合体粒子(c−1)の平均粒子径は0.1μmであった。
耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.019であった。
ポリメタクリレート樹脂との屈折率差は0.001であった。
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水6868mL、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム13.7gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態(略無酸素状態)にした。
MMA907g、BA33g、HMBT0.28g及びALMA0.93gからなる混合物(I−1)のうち222gを一括添加し、5分後に過硫酸アンモニウム0.22gを添加した。
その40分後から前記(I−1)の残りの719gを20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持した。
次に、過硫酸アンモニウム1.01gを添加した後、BA1067g、St219g、HMBT0.39g、ALMA27.3gからなる混合物(I−2)を140分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに180分間保持した。
次に、過硫酸アンモニウム0.30gを添加した後、MMA730g、BA26.5g、HMBT0.22g、n−OM0.76gからなる混合物(I−3)を40分間かけて連続的に添加し、添加終了後95℃に昇温し30分間保持した。
残りのラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩拆・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、ゴム含有共重合体粒子(c−2)を得た。
得られたゴム質含有共重合体粒子(c−2)の平均粒子径は0.23μmであった。
また、耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.02であった。
乳化剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム15gを投入した。その他の条件は上記(b−1)と同様の処方で重合を行った。
得られたゴム質含有共重合体粒子(c−3)の平均粒子径は0.15μmであった。
耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.004であった。
プラスチック工学研究所製Tダイ装着押し出し機(BT−30−C−36−L型/幅400mmTダイ装着/リップ厚0.8mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を調整し、押出し成形をすることにより、原反フィルムを得た。
フィルムの流れ(押し出し方向)をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向とした。
実施例1〜8、比較例3〜6においては、耐熱アクリル系樹脂と、各種ゴム質含有共重合体粒子とを、二軸押出し機によりコンパウンドし、そのペレットをTダイ押出し成形した。
比較例1及び2においては、ゴム質含有共重合体粒子を配合せずに押出し成形を行った。
耐熱アクリル系樹脂の共重合組成比、ゴム質含有共重合体粒子の配合比、フィルム成形条件、特性評価結果及びフィルム特性結果を、下記表1に示す。
また、実施例7においては、ガラス転移温度が135℃であり、さらに高い耐熱性を要求される用途の塗装代替用フィルムとして有用であった。
比較例2においては、アクリル系樹脂の共重合組成比が本発明の範囲外であり耐熱性が不十分であり、さらにはゴム質含有共重合体粒子を混合していないため、靭性も不十分であった。
比較例3においては、耐熱アクリル系樹脂とゴム質含有共重合体粒子(c−1)との屈折率差が大きいために、ヘイズ値の上昇が見られた。
比較例4においては、平均粒子径の大きいゴム質含有共重合体粒子(c−2)を用いたことにより、薄膜状にした際に表面凹凸(外部ヘイズ)が発生し、フィルムのヘイズ値が上昇し表面光沢度も低下した。
比較例5においては、ゴム質含有共重合体粒子(c−3)を用いたことにより、耐熱アクリル系樹脂との屈折率差は適切であったが、平均粒子径が大きいため、フィルムのヘイズ値が上昇した。
比較例6においては、アクリル系樹脂の共重合組成が本発明の範囲外でありフィルムの耐熱性が不十分であった。
Claims (7)
- メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以
下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記一般式(1)で表さ
れる化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含む耐熱アクリル系樹脂(a):10
0質量部と、
前記耐熱アクリル系樹脂(a)との23℃環境下での屈折率差が0.015以下であり、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b):0.1質量部以上100質量部以下と、
を、含有し、
70℃環境下でのヘイズ値が3.0%以下である、塗装代替用フィルム。 - 前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、内側から硬質層と軟質層と硬質層とが形成され
た三層構造以上の多層構造を有する粒子である、請求項1に記載の塗装代替用フィルム。 - 膜厚が200μm以下であり、23℃環境下のヘイズ値が2.0%以下であり、60°表面光沢度が120%以上である、請求項1又は2に記載の塗装代替用フィルム。
- Tg(ガラス転移温度)が120℃以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗装代替フィルム。
- 片面に印刷画像が形成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塗装代替用フィルム。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の塗装代替用フィルムと、基材とが積層した積層
成形品。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の塗装代替用フィルムに成形処理を施し、その後、当該塗装代替用フィルム上に樹脂を射出成形して基材を積層した請求項6に記載の積層成形品。
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