JP5550856B2 - 銅合金材及び銅合金材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銅合金材及び銅合金材の製造方法に関する。特に、本発明は、曲げ加工性に優れた銅合金材及び銅合金材の製造方法に関する。
近年、各種の電気・電子機器の小型化、薄型化、及び軽量化に伴い、電気・電子機器に用いられる部品も小型化している。そして、部品の小型化に伴い、部品の端子又はコネクタ部品についても、小型化及び電極間ピッチの狭小化が望まれている。このような部品の小型化により、各種部品に用いられる電極等の材料が従来に比べて薄肉になっている。ここで、薄肉の電極であっても電気的な接続の信頼性を保つべく、電極等の材料にばね性の高い材料を用いることが要求されており、高いばね性の確保には、材料の強度、及び耐力を十分に高めることを要する。
更に、部品の小型化に伴い、従来より小型で、かつ複雑な形状の部品を一体成形で製作する要求もあり、より厳しい条件の曲げ加工に適用できる材料が強く求められている。また、電気・電子機器の高機能化に伴う電極数の増加、及び通電する電流の増加によって、電極等において発生するジュール熱も増加しており、従来より導電性の良い材料を用いることに対する要求も強まっている。すなわち、電気・電子機器に用いられる端子又はコネクタ部品を構成する材料は、高強度、高耐力、及び良好な曲げ加工性を有すると共に、良好な導電性を有することが求められている。
従来、高強度、良好な導電性を有すると共に低コストである材料として、Cu−Ni−Si系等の銅合金材が用いられている。例えば、0.4〜4.0wt%のNiと、0.1〜1.0wt%のSiと、1.0〜5.0wt%のZnと(ただし、1.0wt%は除く)、0.1〜0.5wt%のMgと(ただし、0.1wt%は除く)、0.1〜0.5wt%のSnと、0.001〜0.01wt%(ただし、0.01wt%は除く)のCr、Ti、Zrのいずれか1種以上と、残部がCuと不可避不純物からなる耐マイグレーション性端子・コネクタ用銅合金が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の耐マイグレーション性端子・コネクタ用銅合金は、上記構成を備えるので、ばね限界値、導電率、耐熱性、及び耐マイグレーション性に優れた特性を発揮する。
特許第2977845号
しかし、特許文献1に記載の耐マイグレーション性端子・コネクタ用銅合金等のCu−Ni−Si系銅合金は、銅合金材料の高強度、高耐力と曲げ加工性とは二律背反的な関係にあり、強度を高めると曲げ加工性が大きく低下する一方で、曲げ加工性を向上させようとすると強度が低下する場合がある。そのため、従来の銅合金材では高強度、高耐力と良好な曲げ加工性とを同時に満足させることは困難である。
したがって、本発明の目的は、高強度、高耐力、高導電率、及び良好な曲げ加工性を有する銅合金材及び銅合金材の製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、複数の結晶粒を有する圧延面を備え、圧延面は、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を、面積率で55%以上有する銅合金材が提供される。
また、上記銅合金材は、圧延面は、当該圧延面の100μm×100μmの範囲内において、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を、面積率で55%以上有することが好ましい。
また、上記銅合金材は、圧延面は、0.35以上0.4未満のシュミット因子を有する結晶粒を、面積率で10%以上有することもできる。
また、上記銅合金材は、シュミット因子は、圧延面に平行な方向に引張り力と、圧延面に垂直な方向に圧縮力とを同時に加える条件において解析される値である。
また、上記銅合金材は、Niと、Siとを含み、残部がCu及び不可避的不純物から形成することができる。
また、上記銅合金材は、Zn、Sn、及びPからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、Niと、Siとを含み、残部がCu及び不可避的不純物から形成することもできる。
また、本発明は、上記目的を達成するため、銅合金から成るインゴットを熱間圧延加工して銅合金の板材を製造する熱間圧延工程と、板材を冷間圧延する冷間圧延工程と、冷間圧延工程を経た板材に溶体化処理を施す溶体化処理工程と、溶体化処理工程を経た板材を冷間圧延する仕上げ冷間圧延工程とを備え、冷間圧延工程は、熱間圧延工程後の板材の厚さをAとし、当該冷間圧延工程後の板材の厚さをBとした場合に、(A−B)/A×100の値が93以上になるように板材に冷間圧延を施す銅合金材の製造方法が提供される。
また、上記銅合金材の製造方法は、冷間圧延工程は、冷間圧延時の板材の前方張力成分の大きさを、板材の圧縮成分の大きさより大きくなるように、板材に冷間圧延を施すことが好ましい。
本発明に係る銅合金材及び銅合金材の製造方法によれば、高強度、高耐力、高導電率、及び良好な曲げ加工性を有する銅合金材及び銅合金材の製造方法を提供できる。
単結晶の引張り分解せん断応力を簡易的に説明するモデルを示す図である。 本発明の実施の形態に係る銅合金材の製造工程の流れを示す図である。 本発明の実施の形態の変形例に係る銅合金材の製造工程の流れを示す図である。
(発明者が得た知見)
本発明の実施の形態に係る銅合金材は、本発明者が得た以下の知見に基づく。すなわち、本発明者は、良好な曲げ加工性を発揮する銅合金材料について、金属組織学における銅合金材料の塑性変形の観点から鋭意研究した結果得た以下の知見に基づく。
具体的に、まず、銅合金材の結晶構造は面心立方構造である。そして、銅合金材が塑性変形する場合には、面心立方構造において大きな格子面間隔を有すると共に原子密度が最密な状態の面、すなわち「すべり面」がすべることで銅合金材料が変形する。換言すれば、すべり面を形成している原子がすべる(つまり、動く)ことにより、銅合金材料が変形する。なお、すべり方向はすべり面に沿った方向である。
また、圧延工程を経て製造される銅合金材は多結晶体であるので、圧延面に複数の結晶粒が存在しており、その複数の結晶粒はそれぞれの結晶方位を有する。ここで、各結晶粒の結晶方位が異なると、すべり面の向きが異なることになる。そして、圧延工程を経て製造される銅合金材に曲げ加工を施した場合の銅合金材の変形は塑性変形であるので、塑性変形させるために銅合金材に負荷する力の方向と銅合金材のすべり面の向きとが近いほど銅合金材は塑性変形しやすくなる。すなわち、当該銅合金材は、曲げ加工しやすいことになる。
このようなすべり面のすべり易さの指標として、シュミット因子(Schmidt factor)がある。シュミット因子の値が大きいほど、すべり面がすべりやすいことになる(なお、シュミット因子の最大値は0.5である)。そこで、本発明者は、銅合金材の圧延面の各結晶粒のシュミット因子の値を制御することで、曲げ加工性に優れた銅合金材を実現できるという知見を得た。
(シュミット因子について)
図1は、単結晶の引張り分解せん断応力を簡易的に説明するモデルを示す。
具体的に、図1は、シュミット因子について簡易的に説明するためのモデル図であり、単結晶の塑性変形を模式的に示した図である。すなわち、断面積Aの単結晶丸棒10を、単軸荷重Fで引っ張った場合、単結晶丸棒10の結晶粒内のすべり面20、すべり方向25に分解せん断応力が生じる。この分解せん断応力τがその材料特有の臨界せん断応力τcに達するとすべり変形(塑性変形)が生じる。分解せん断応力τは、軸応力をσ、負荷軸とすべり面の法線とのなす角をφ、負荷軸とすべり方向とのなす角をλとすると、τ=(F/A)・cosλ・cosφ=σ・cosλ・cosφで表される。これがシュミットの法則であり、cosλ・cosφがシュミット因子である。シュミット因子は、λ=φ=45°の時に最大値になる(なお、シュミット因子については、塑性加工技術シリーズ2「材料」日本塑性加工学会編,コロナ社,p.12を参照)。
(シュミット因子の解析について)
シュミット因子は、後方散乱電子線回折(Electron Backscatter Diffraction Pattern:EBSD、又はEBSP)測定によって得られたデータを解析することで算出できる。解析には、例えば、OIM Analysis Ver.5(株式会社TSLソリューションズ製)を用いることができる。具体的には、銅合金材の圧延面についてEBSD測定を実施すると、「菊池線」と呼ばれる回折パターンに関する情報を得ることができる。上記ソフトを用いてこの情報を解析することで、各結晶粒のシュミット因子の値を算出することができ、更に、所定のシュミット因子の値もしくは所定のシュミット因子の値の範囲の結晶粒が測定領域内に占める割合を面積率で算出することができる。
なお、EBSD測定には、測定制御ソフトとしてOIM Data Collection Ver.5(株式会社TSLソリューションズ製)を用いることができる。また、EBSD測定では、銅合金材の圧延面表面から30nm〜50nm程度の深さまでの情報を得ることができる。更に、測定装置全体の構成は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM、型式:SU−70、日立製作所製)に、EBSD装置(株式会社TSLソリューションズ製)を取り付けた構成のものを用いることができる。
以下の実施の形態では、合金材である銅合金材のうち、Cu−Ni−Si系銅合金材を一例として説明する。
(実施の形態の要約)
本実施の形態に係る銅合金材は、圧延工程を経て製造される銅合金材において、複数の結晶粒を有する圧延面を備え、圧延面は、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を、面積率で55%以上有する。
[実施の形態]
(銅合金材の概要)
本発明の実施の形態に係るCu−Ni−Si系銅合金材は、圧延工程を経て製造される銅合金材であって、圧延工程によって形成され、複数の結晶粒を有する圧延面を備え、当該圧延面は、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を面積率で55%以上有する。なお、面積率は、圧延面の所定の領域を基準にした場合に、所定の結晶粒が当該所定の領域を占める割合である。
具体的に、本実施の形態においては、当該圧延面の100μm×100μmの範囲内において、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を、面積率で55%以上、好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上有することが好ましい。また、圧延面は、0.35以上0.4未満のシュミット因子を有する結晶粒を、面積率で10%以上、好ましくは15%以上有することもできる。なお、0.4以上のシュミット因子の面積率が55%以上であることは必須であるが、0.35以上0.4未満のシュミット因子の面積率が10%以上であることは必ずしも必須ではない。
また、本実施の形態に係るCu−Ni−Si系銅合金材は、Niと、Siとを含み、残部がCu及び不可避的不純物から形成される。具体的に銅合金材は、2.5重量%以上3.5重量%以下のNiを含み、0.5重量%以上0.85重量%以下のSiを含み、残部がCuと不可避的不純物とからなる。
なお、Cu−Ni−Si系銅合金材は上記例に限られず、Zn、Sn、及びPからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、Niと、Siとを含み、残部がCu及び不可避的不純物から形成することもできる。具体的に、当該銅合金材は、2.5重量%以上3.5重量%以下のNiを含み、0.5重量%以上0.85重量%以下のSiを含み、Zn、Sn、及びPからなる群から選択される少なくとも1つの元素を合計3.0重量%以下含むと共に、残部がCu及び不可避的不純物から形成される。
(銅合金材の製造工程)
図2は、本発明の実施の形態に係る銅合金材の製造工程の流れの一例を示す。
まず、製造する銅合金材に含まれるべき元素の原料と、無酸素銅とを準備する。準備する原料の量は、製造する銅合金材に含まれる元素の組成比に応じた量である。そして、高周波溶解炉において準備した原料及び無酸素銅を溶解させ、銅合金のインゴットを鋳造する(鋳造工程:ステップ10、以下、ステップを「S」と称する)。次に、銅合金からなるインゴットを熱間圧延加工することにより、銅合金の板材を製造する(熱間圧延工程:S20)。続いて、銅合金の板材を複数回、冷間圧延する(冷間圧延工程:S30)。
ここで、本実施の形態においては、冷間圧延工程における総加工度「P」を93%以上に設定すると共に、各圧延パス、すなわち、1パス毎の冷間圧延において、前方張力、圧延速度(すなわち、圧延ロールの回転速度)、圧延ロール径等の条件の組合せを調整する。具体的に、『張力の成分+圧縮力の成分=2×せん断降伏応力』(本式の詳細は、塑性加工技術シリーズ7「板圧延」日本塑性加工学会編,コロナ社,p.27,式(3.3)を参照)の関係において「張力の成分」の大きさを「圧縮力の成分」の大きさより大きくする。
更に、圧延速度とロール径とのバランスを制御する。具体的には、圧延時のロールと材料との接触面における中立点の位置を制御する(なお、中立点についての詳細は、塑性加工技術シリーズ7「板圧延」日本塑性加工学会編,コロナ社,p.14,p.26〜29 を参照)。より具体的には、中立点の位置が、接触面において当該接触面の圧延方向においてその2分の1の位置より前方方向(すなわち、進行方向に対して前方側)に位置するように、1パス毎に制御しつつ圧延する。
なお、冷間圧延工程の総加工度「P(%)」は、熱間圧延工程後に得られる板材であって、冷間圧延工程前における板材の厚さを「A」、冷間圧延工程後(すなわち、S30の冷間圧延工程の最終パス後)の厚さを「B」とした場合に、P(%)={(A−B)/A}×100の式から算出することができる。
次に、冷間圧延工程を経た銅合金の板材に、溶体化処理を施す(溶体化処理工程:S40)。続いて、溶体化処理を施した銅合金の板材に、仕上げ冷間圧延加工を施す(仕上げ冷間圧延工程:S50)。この仕上げ冷間圧延工程においても、上記の冷間圧延工程(S30)と同様に、1パス毎の圧延において中立点の位置を制御する。
なお、冷間圧延工程(S30)及び仕上げ冷間圧延工程(S50)における「中立点」の位置の制御は、Karmanの理論(なお、Karmanの理論についての詳細は、塑性加工技術シリーズ7「板圧延」日本塑性加工学会編,コロナ社,p.26〜29を参照)に基づいて計算することのできる圧延条件で圧延する。また、中立点を計測することは実際にはできないので、実際の圧延において、1パスごとに計算した加工度で制御されている場合に、中立点の制御がなされているとすることができる。
更に、仕上げ冷間圧延工程を経た銅合金の板材に、時効処理を施す(時効処理工程:S60)。以上の工程を経ることにより、本実施の形態に係るCu−Ni−Si系銅合金材が得られる。
(実施の形態の変形例の製造方法)
図3は、本発明の実施の形態の変形例に係る銅合金材の製造工程の流れの一例を示す。
実施の形態の変形例に係る銅合金材の製造工程は、溶体化処理工程後の工程が異なる点を除き、同一の工程を備える。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
実施の形態の変形例に係る銅合金材の製造工程においては、溶体化処理工程(S40)の後、まず、溶体化処理を施した板材に時効処理を施す(時効処理工程:S55)。次に、溶体化処理・時効処理を施した板材に、冷間圧延を施す(仕上げ冷間圧延工程:S65)。これにより、本実施の形態と同様に、Cu−Ni−Si系銅合金材が得られる。
(変形例)
本実施の形態では、Cu−Ni−Si系銅合金材(コルソン系銅合金材とも言う)について説明したが、圧延面が、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を面積率で55%以上有する限り、合金材はCu−Ni−Si系銅合金材に限られない。例えば、りん青銅、黄銅、ベリリウム銅、及びその他の合金を用いることができる。
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る銅合金材は、圧延面に0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を、面積率で55%以上有するようにして製造するので、高い強度、高い耐力を有すると共に、曲げ加工性に優れた特性を発揮することができる。したがって、本実施の形態に係る銅合金材は、例えば、小型の電気・電子装置に用いられる端子、コネクタ用途に用いることができる。
また、本実施の形態に係る銅合金材は、高い強度、高い耐力を有すると共に、曲げ加工性に優れているので、電気・電子装置に用いられる端子、コネクタの小型化に容易に対応することができ、電気・電子装置の設計の自由度を大幅に拡げることができる。
更に、圧延面を備え、圧延面に対して平行で任意の100μm×100μmの領域内において、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒が面積率で55%以上である面心立方構造を有する金属合金材であれば、銅合金材以外の合金材料の全般に広く適用できる。
以下、本発明の実施例に係る銅合金材及び比較例に係る銅合金材について説明する。
実施例及び比較例に係る銅合金材の製造方法は略同一である。すなわち、まず、母材としての無酸素銅と、製造すべき銅合金材に含まれる合金元素とを準備した。準備した合金元素の量は、製造すべき銅合金材に含まれる各合金元素の組成に応じた量である。表1に、実施例1〜4、及び比較例1〜4のそれぞれに係る銅合金材の組成を示す。
Figure 0005550856
次に、表1に示した銅合金材の組成になるように、無酸素銅と合金元素とを高周波溶解炉で融解して、厚さ20mm、幅50mm、長さ250mmのインゴットを鋳造した(鋳造工程)。次に、インゴットを850℃に加熱して熱間圧延加工することにより厚さ8mmの板材を製造した(熱間圧延工程)。続いて、厚さ8mmの板材を厚さ0.25mmの板材になるまで冷間圧延した(冷間圧延工程)。冷間圧延工程の後、冷間圧延した板材を750℃〜850℃の温度で1分間保持した後、水中に投入して室温(約20℃)まで冷却した(溶体化処理工程)。なお、この時の冷却速度は約300℃/分であった。更に、冷却した板材を厚さ0.2mmまで冷間圧延した(仕上げ冷間圧延工程)。そして、仕上げ冷間圧延工程を経た板材に、450℃で4時間保持した(時効処理工程)。
ここで、実施例と比較例との相違は、厚さ8mmから厚さ0.25mmまでと、厚さ0.25mmから厚さ0.2mmまで、板材をそれぞれ冷間圧延する際の冷間圧延工程における条件である。
具体的には、実施例1〜4に係る銅合金材の製造工程の冷間圧延では、圧延ロールと材料との接触面のおける中立点の位置を、当該接触面の圧延方向においてその2分の1の位置より前方方向(すなわち、進行方向に対して前方側)に位置するように、毎パス制御しながら圧延した。一方、比較例1〜4に係る銅合金材の製造工程の冷間圧延では、中立点の位置を当該接触面の圧延方向においてその2分の1の位置付近あるいは2分の1の位置より後方側(すなわち、進行方向に対して後方側)で冷間圧延した。
(実施例及び比較例に係る銅合金材のシュミット因子の測定・解析結果)
表2に、実施例1〜4に係る銅合金材のシュミット因子の測定・解析結果、及び比較例1〜4に係る銅合金材のシュミット因子の測定・解析結果を示す。シュミット因子の測定は、銅合金材の圧延面に対して平行で任意の100μm×100μmの領域内の全域で実施した。また、シュミット因子の解析は、圧延面に平行な方向に引張り力と、圧延面に垂直な方向に圧縮力とを同時にかける条件で解析した。
Figure 0005550856
表2を参照すると、実施例1〜4に係る銅合金材ではいずれも、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒が面積率で55%以上であること、0.35以上0.4未満のシュミット因子の面積率が10%以上であることが示された。一方、比較例1〜2に係る銅合金材では、0.4以上のシュミット因子は55%未満で、かつ、0.35以上0.4未満のシュミット因子の面積率が10%未満であった。また、比較例3に係る銅合金材では、0.4以上のシュミット因子は55%以上であったが、0.35以上0.4未満のシュミット因子の面積率が10%未満であった。また、比較例4に係る銅合金材では、0.35以上0.4未満のシュミット因子の面積率が10%以上であったが、0.4以上のシュミット因子は55%未満であった。
(実施例及び比較例に係る銅合金材の特性評価)
実施例1〜4及び比較例1〜4に係る銅合金材それぞれについて、引張り強さ、0.2%耐力、及び曲げ加工性を評価した。引張り強さ及び0.2%耐力は、JIS Z2241に準拠した引張り試験を実施して測定した。曲げ加工性試験は、銅合金材から採取した試験片を用い、試験片の圧延方向と平行な方向を曲げ軸にしてJIS H3110、H3130、及び日本伸銅協会技術標準JCBA T307に準拠して実施した。曲げ加工性試験の試験条件は、試験片の厚さtを0.2mmにすると共に、曲げ半径をR=0.1mmにした場合(R/t=0.5)と、曲げ半径をR=0.2mmにした場合(R/t=1)との双方を実施した。表3に、実施例及び比較例に係る銅合金材それぞれについて、引張り強さ、0.2%耐力、及び曲げ加工性の評価結果を示す。なお、表3において、曲げ加工性の評価は、割れが大きい場合「××」と、割れが小さい場合「×」と、割れが微小の場合「△」と、割れがない場合「○」とした。
Figure 0005550856
表3を参照すると、実施例1〜4に係る銅合金材は、高強度、高耐力、及び曲げ加工性のすべてにおいて優れていると考えられた。すなわち、実施例1〜4に係る銅合金材においては、引張強さが800N/mm以上であると共に、良好な曲げ加工性を発揮することができることが示された。
なお、実施例1〜4に係る銅合金材の製造工程においては、冷間圧延工程における1パス毎の圧延条件を前述したように制御した。すなわち、まず、S30(図2を参照)工程の総加工度を93%以上(すなわち、([8−0.25]/8)×100=96.9(%))とした。そして、「張力の成分+圧縮力の成分=2×せん断降伏応力」の関係において「張力の成分」を「圧縮力の成分」より優先した(すなわち、大きくした)。また、圧延速度とロール径との条件のバランス、すなわち、圧延時のロールと材料との接触面における中立点の位置を、接触面において当該接触面の圧延方向においてその2分の1の位置より前方方向(すなわち、進行方向に対して前方側)に位置するように、1パス毎に制御しながら圧延した。更に、仕上げ冷間圧延工程(図2:S50を参照)においても同様に制御しながら圧延した。その結果、高強度、高耐力、及び曲げ加工性のすべてにおいて優れている銅合金材が得られることが実施例において実証された。なお、このような優れた特性の銅合金材が得られるメカニズムとしては、未だ明白ではないが以下のように考察している。
冷間圧延のよる塑性変形で、銅結晶の原子が移動して(すなわち、すべり面がすべって)銅合金材が変形するが、圧延ロールと材料とが接触している面の中で中立点がどこにあるかで、銅結晶の原子にかかる力、あるいはすべり面にかかる力の成分の方向が変わるため、原子の移動方向や移動程度が1パス毎に異なり、圧延を繰り返すほど顕著になってくると考えられる。本発明の実施の形態に係る冷間圧延条件で圧延を繰り返すと、塑性変形した状態、すなわち銅原子の移動方向やその移動の程度が、結果的に曲げ加工性に最適な状態(すなわち、すべり面の配置が最適状態)になったものと考えられる。しかしながら、具体的な理論、メカニズムについては、現在考察中である。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
10 単結晶丸棒
20 すべり面
25 すべり方向
30 すべり面の法線

Claims (4)

  1. 複数の結晶粒を有する圧延面を備え、
    前記圧延面は、当該圧延面の100μm×100μmの範囲内において、0.4以上のシュミット因子を有する前記結晶粒を、面積率で55%以上有し、
    前記圧延面は、0.35以上0.4未満の前記シュミット因子を有する前記結晶粒を、面積率で10%以上有し、
    前記シュミット因子は、前記圧延面に平行な方向に引張り力と、前記圧延面に垂直な方向に圧縮力とを同時に加える条件において解析される値である
    銅合金材。
  2. Niと、Siとを含み、残部がCu及び不可避的不純物から形成される請求項に記載の銅合金材。
  3. Zn、Sn、及びPからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、Niと、Siとを含み、残部がCu及び不可避的不純物から形成される請求項に記載の銅合金材。
  4. 複数の結晶粒を有する圧延面を備え、前記圧延面は、当該圧延面の100μm×100μmの範囲内において、0.4以上のシュミット因子を有する前記結晶粒を、面積率で55%以上有し、前記圧延面は、0.35以上0.4未満の前記シュミット因子を有する前記結晶粒を、面積率で10%以上有し、前記シュミット因子は、前記圧延面に平行な方向に引張り力と、前記圧延面に垂直な方向に圧縮力とを同時に加える条件において解析される値である銅合金材の製造方法であって、
    銅合金から成るインゴットを熱間圧延加工して前記銅合金の板材を製造する熱間圧延工程と、
    前記板材を冷間圧延する冷間圧延工程と、
    前記冷間圧延工程を経た前記板材に溶体化処理を施す溶体化処理工程と、
    前記溶体化処理工程を経た前記板材を冷間圧延する仕上げ冷間圧延工程と
    を備え、
    前記冷間圧延工程は、前記熱間圧延工程後の前記板材の厚さをAとし、当該冷間圧延工程後の前記板材の厚さをBとした場合に、(A−B)/A×100の値が93以上になるように前記板材に冷間圧延を施し、
    前記冷間圧延工程は、冷間圧延時の前記板材の前方張力成分の大きさを、前記板材の圧縮成分の大きさより大きくなるように、前記板材に冷間圧延を施す
    銅合金材の製造方法。
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