JP5261619B2 - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどに適用される銅合金板材およびその製造方法に関する。
電気・電子機器用途に使用される銅合金材料に要求される特性項目は、導電率、耐力(降伏応力)、引張強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性等がある。近年、電気・電子機器の小型化、軽量化、高機能化、高密度実装化や、使用環境の高温化に伴って、これらの特性について要求水準が高まっている。
従来、一般的に電気・電子機器用材料としては、鉄系材料の他、リン青銅、丹銅、黄銅等の銅系材料も広く用いられている。これらの合金はSnやZnの固溶強化と、圧延や線引きなどの冷間加工による加工硬化の組み合わせにより強度を向上させている。この方法では、導電率が不十分であり、また、高い圧延率の冷間加工を加えることによって高強度を得ているために、曲げ加工性や耐応力緩和特性が不十分である。
これに代わる強化法として材料中に微細な第二相を析出させる析出強化法がある。この強化方法は、強度が高くなることに加えて、導電率を同時に向上させる利点があるため、多くの合金系で行われている。しかし、昨今の電子機器や自動車に使用される部品の小型化に伴って、銅合金は、より高強度な材料により小さい半径の曲げ加工を施す様になっており、曲げ加工性に優れた銅合金板材が強く要求されている。さらに、高強度、高ばね性と良好な曲げ加工性を有する板材でも、圧延平行方向と圧延垂直方向とで特性差があることは好ましくなく、いずれの方向でも良好な特性を示すことが重要である。特に、超小型端子として用いられる際、狭幅でピン型に微細な加工が施され、ここでもいずれの方向でも良好な特性を示すことが重要である。従来のCu−Ni−Si系銅合金において、高い強度を得るには、圧延率を高めて大きな加工硬化を得ていたが、この方法は先述した様に曲げ加工性を劣化させてしまい、高強度と良好な曲げ加工性を両立することが困難であった。
この曲げ加工性向上の要求に対して、結晶方位の制御によって解決する提案がいくつかなされている。例えば、Cu−Ni−Si系銅合金において以下のような提案がなされている。特許文献1には、Cu−Ni−Si系銅合金において、結晶粒径と、{311}、{220}、{200}面からのX線回折強度Iがある条件を満たす様な結晶方位の場合に、曲げ加工性が優れることが開示されている。また、特許文献2には、Cu−Ni−Si系銅合金において、{200}面および{220}面からのX線回折強度がある条件を満足する結晶方位の場合に、曲げ加工性が優れることが開示されている。また、特許文献3には、Cu−Ni−Si系銅合金において、cube方位{001}<100>の割合を50%以下に制御することによって曲げ加工性が優れることが開示されている。特許文献4には、Cu−Ni−Si系銅合金において、強い冷間加工で歪んだ状態にある結晶組織を再結晶させて、異方性の小さい結晶組織に変えるとともに、伸びを向上させることによって曲げ加工性が良好となることが開示されている。特許文献5には、Cu−Ni−Si系銅合金において、結晶粒径と、cube方位{001}<100>の割合を20〜60%に制御することによって強度異方性が小さく曲げ加工性が優れることが開示されている。特許文献6には、Cu−Ni−Si系銅合金において、結晶粒径と、cube方位{001}<100>の割合を5〜50%に制御することによって機械強度、導電率や曲げ加工性を損なうことなく疲労特性を向上させることが開示されている。
特許文献1および特許文献2に記載された発明においては、特定面からのX線回折による結晶方位の解析は、ある広がりを持った結晶方位の分布の中のごく一部の特定の面に関するものである。また、特許文献3に記載された発明においては、結晶方位の制御は溶体化熱処理後の圧延加工率の低減によって行っている。また、cube方位結晶粒の面積、分散性は記載されておらず、曲げ加工性、強度の異方性については開示されていない。特許文献4に記載された発明においては、強い冷間圧延で歪んだ状態にある結晶組織を再結晶させて、異方性の小さい結晶組織を実現し、伸びの向上により良好な曲げ加工性を実現しているが、結晶方位制御による特性改善は行っていない。特許文献5に記載された発明においては、溶体化処理前の冷間圧延における圧下率、溶体化処理での昇温速度などの工程を調整することで、cube方位を集積させ、強度と曲げ加工性における異方性を低減させている。しかしながら、特許文献5では、溶体化処理での昇温速度が遅い為にその昇温時間が長く、その結果、cube方位結晶粒が粗大であり、かつcube方位結晶粒の等分散性が劣っており、強度の異方性も大きい。また、特許文献6に記載された発明においては、溶体化処理前の冷間圧延を85〜99.8%と高い圧下率で行い、その後の溶体化処理での加熱温度と保持時間を調整することで、cube方位を集積させ、疲労特性を向上させている。しかしながら、特許文献6では、溶体化処理の結果得られるcube方位結晶粒が粗大であり、かつcube方位結晶粒の等分散性が劣っており、強度の異方性も大きい。
また、電気・電子機器用途に使用される銅合金材料に要求される特性項目の一つとして、ヤング率(縦弾性係数)が低いことが求められている。近年コネクタなどの電子部品の小型化の進行に伴い、端子の寸法精度やプレス加工の公差が厳しくなっている。材料のヤング率を低減することで、コンタクト接圧に及ぼす寸法変動の影響を低減できるため、設計が容易となる。ヤング率の測定には、引張試験による応力−ひずみ線図の弾性領域の傾きから算出する方法、梁(片持ち梁)をたわませた際の応力−ひずみ線図の弾性領域の傾きから算出する方法の2つの方法がある。
特開2006−009137号公報 特開2008−013836号公報 特開2006−283059号公報 特開2005−350695号公報 特開2011−162848号公報 特開2011−012321号公報
上記のような従来技術の問題点に鑑み、本発明は、曲げ加工性に優れ、優れた強度を有し、各特性の圧延平行方向と圧延垂直方向との異方性の少ない、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや端子材、リレー、スイッチなどに適した銅合金板材を提供することを課題とする。また、前記銅合金板材を得るのに好適な製造方法を提供することを別の課題とする。
本発明者らは、電気・電子部品用途に適した銅合金について鋭意研究を行い、Cu−Ni−Si系の銅合金板材において、曲げ加工性、強度、導電性を大きく向上させるために、cube方位の集積割合と曲げ加工性について相関があることを見出した。また、その結晶方位および特性を有する銅合金板材において、さらに強度を向上させる働きのある合金組成を見出し、それに加えて、本合金系において導電率や曲げ加工性を損なうことなく、強度を向上させる働きのある元素を添加した銅合金板材を見出した。また、上記の様な結晶方位を実現するため、cube方位の集積割合と曲げ加工性について相関があることに基づいて、特定の工程を有してなる製造方法を見出した。本発明は、これらの知見に基づいた検討の結果、なされるに至ったものである。
すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
(1)Niを1.0質量%以上5.0質量%以下、Siを0.1質量%以上2.0質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有し、
電子後方散乱回折法による結晶方位解析において、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒の面積率が5%以上50%以下であり、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒が60μm四方内に40個以上100個以下で分散していることを特徴とする銅合金板材。
(2)Niを1.0質量%以上5.0質量%以下、Siを0.1質量%以上2.0質量%以下、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zr、FeおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で0.005質量%以上1.0質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有し、
電子後方散乱回折法による結晶方位解析において、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒の面積率が5%以上50%以下であり、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒が60μm四方内に40個以上100個以下で分散していることを特徴とする銅合金板材。
(3)cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒の平均結晶粒面積が1.8μm以上45.0μm以下である(1)または(2)項に記載の銅合金板材。
(4)母材の結晶粒の平均結晶粒面積が50μm以下であることを特徴とする(1)から(3)のいずれか1項に記載の銅合金板材。
(5)圧延平行方向のたわみ係数と圧延垂直方向のたわみ係数の差が絶対値で10GPa以下、圧延平行方向の耐力と圧延垂直方向の耐力の差が絶対値で10MPa以下である、(1)から(4)のいずれか1項に記載の銅合金板材。
(6)銅合金素材を鋳造して得た鋳塊に均質化熱処理と熱間圧延とを施し、さらに冷間圧延によって薄板に成形した後、前記薄板中の溶質原子を再固溶させる中間溶体化熱処理を施す銅合金板材の製造方法であって、
前記銅合金素材は、前記(1)または(2)項に記載の銅合金板材の合金組成を有してなり、
前記均質化熱処理を800℃以上1020℃以下で3分間から10時間で行い、
前記冷間圧延を圧延率80%以上99.8%以下で行った後に
再結晶温度未満である400℃以上700℃以下の温度で5秒間から20時間の中間焼鈍を行い、
さらに100℃以上400℃以下に加熱した後にその温度下で圧延率が5%以上50%以下の中間温間圧延を行った後、
前記中間溶体化熱処理を600℃以上1000℃以下で5秒間から1時間で行い、
400℃以上700℃以下で5分間から10時間の時効析出熱処理を行う
各工程をこの順に含んでなる銅合金板材の製造方法。
本発明の銅合金板材によれば、曲げ加工性に優れ、優れた強度を示し、各特性の圧延平行方向と圧延垂直方向の異方性の少ない銅合金板材を提供することができる。よって、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや端子材、リレー、スイッチなどに特に適した性質を有する銅合金板材を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、上記銅合金板材を好適に製造することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
図1は、隣り合う4ブロックを1群として少なくとも4群以上の場合の等分散性を説明した図面である。
本発明の銅合金板材の好ましい一実施形態について説明する。なお、本発明における「板材」には、「条材」も含むものとする。
本発明の銅合金板材は、Niを1.0質量%以上5.0質量%以下、Siを0.1質量%以上2.0質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有する。好ましくはNiを3.0質量%以上5.0質量%以下、Siを0.5質量%以上2.0質量%以下とする。特に好ましくはNiを4.0質量%以上、Siを1.0質量%以上とする。
また、電子後方散乱回折法による結晶方位解析において、cube方位{001}<100>の面積率(以下、cube方位面積率ということもある。)は、5%以上50%以下であり、好ましくは10%以上45%以下であり、より好ましくは15%以上40%以下であり、特に好ましくは20%以上35%以下である。
または銅合金板材は、Niを1.0質量%以上5.0質量%以下、Siを0.1質量%以上2.0質量%以下含有し、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zr、FeおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で0.005質量%以上1.0質量%以下含有するものとしてもよい。Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zr、FeおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの合計は、好ましくは0.01質量%以上0.9質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以上0.8質量%以下であり、特に好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。この場合も、Ni及びSiの好ましい含有量、特に好ましい含有量と、cube方位面積率の好ましい範囲、特に好ましい範囲は上述した範囲と同じである。
また上記各銅合金板材において、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒の平均結晶粒面積は、好ましくは1.8μm以上45.0μm以下であり、より好ましくは3.8μm以上36.0μm以下である。さらに好ましくは6.0μm以上28.8μm以下、特に好ましくは10.0μm以上25.0μm以下である。
本書において、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒の平均結晶粒面積を省略して、cube方位面積率またはcube方位{001}<100>の面積率などということもある。また、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒を省略して、cube方位結晶粒またはcube方位{001}<100>の結晶粒などということもある。
cube方位の結晶粒を含んだ母材の平均結晶粒面積は好ましくは40μm2以下、さらに好ましくは5〜30μm2である。板材平面の300×300μmの範囲でのEBSD測定結果から結晶粒面積の平均値を算出し、平均結晶粒面積とした。
さらに、電子後方散乱回折法による結晶方位解析において、60μm四方内にcube方位{001}<100>の結晶粒が40個以上100個以下分布し等分散性を有している。該cube方位{001}<100>の結晶粒は、60μm四方内に、好ましくは45個以上95個以下分布して等分散性を有し、特に好ましくは50個以上90個以下分布して等分散性を有している。
またさらに、圧延平行方向と圧延垂直方向の曲げ加工性として、1mm幅以下の狭幅の曲げ加工での180°U密着曲げにて、曲げ加工表面にクラックが生じないことが好ましい。
さらにまた、圧延平行方向(//)のたわみ係数と圧延垂直方向(⊥)のたわみ係数の差は、絶対値で、好ましくは10GPa以下であり、より好ましくは8GPa以下であり、特に好ましくは5GPa以下である。圧延平行方向の耐力と圧延垂直方向の耐力の差は、絶対値で、好ましくは10MPa以下であり、より好ましくは8MPa以下であり、特に好ましくは5MPa以下である。これらの差は、いずれも小さければ小さい程、等方性がより高いを意味するので好ましい。理想的には、これらの差はいずれも0(ゼロ)であって、つまり、圧延平行方向と圧延垂直方向の値が同一であることが最も好ましい。
本発明の銅合金板材は、cube方位{001}<100>の面積率およびその平均結晶粒面積と、さらに好ましくは母材の平均結晶粒面積とが、いずれも上記範囲内にあるときに、180°U密着曲げで曲げ部の頂点にクラックを発生せず良好な曲げ特性が得られ、たわみ異方性および耐力異方性が小さくなる。一方、上記面積率が小さすぎる場合または平均結晶粒面積が大きすぎる場合、あるいは母材の平均結晶粒面積が大きすぎる場合には、曲げ部の頂点にクラックを発生しやすくなって良好な曲げ特性が得られず、たわみ異方性および耐力異方性が大きくなる。
本発明の銅合金板材は、Niを1.0質量%〜5.0質量%、Siを0.1質量%〜2.0質量%含有する。これによって、Ni−Si系化合物(NiSi相)がCuマトリックス中に析出して強度および導電性が向上する。一方、Niの含有量が少なすぎると強度が得られず、多すぎると鋳造時や熱間加工時に強度向上に寄与しない析出が生じ、添加量に見合う強度が得られず、さらに熱間加工性および曲げ加工性が低下する。またSiはNiとNiSi相を形成するため、Ni量が決まるとSi添加量が決まるが、Si量が少なすぎると強度が得られず、Si量が多すぎるとNi量が多い場合と同様な問題が生じる。したがって、NiおよびSiの添加量は上記範囲とすることが好ましい。
次に、cube方位{001}<100>の面積率について説明する。
銅合金板材の曲げ加工性を改善するために、本発明者らは曲げ加工部に発生するクラックの発生原因について調査した。その結果、塑性変形が局所的に発達して剪断変形帯を形成し、局所的な加工硬化によってマイクロボイドの生成と連結が起こり、成形限界に達することが原因であることを確認した。その対策として、曲げ変形において加工硬化が起きにくい結晶方位の割合を高めることが有効であることを見出した。すなわち、上述のように、cube方位{001}<100>の面積率が5%以上50%以下の場合に、良好な曲げ加工性を示すことを見出した。
cube方位{001}<100>の面積率が上記範囲内の場合は、上述した作用効果が十分に発揮される。また、上記範囲内であることにより、再結晶処理後の冷間圧延加工を低い圧延率で行わなくても、強度が著しく低下することがないために好ましい。すなわち、再結晶処理後の冷間圧延加工を、強度を著しく低下させることなく高い圧延率で行うことができる。一方、cube方位{001}<100>の面積率が低すぎる場合、曲げ加工性が劣化し、逆にcube方位{001}<100>の面積率が高すぎる場合には強度が低下する。よって上記の観点から、cube方位{001}<100>の面積率は5%以上50%以下とするが、この好ましい範囲は10%以上45%以下であり、より好ましい範囲は15%以上40%以下であり、特に好ましい範囲は20%以上35%以下である。
次に、上記範囲のcube方位の他の方位について説明する。本発明の銅合金板材においては、S方位{3 2 1}<4 3 6>、copper方位{1 2 1}<1 −1 1>、D方位{4 11 4}<11 −8 11>、brass方位{1 1 0}<1 −1 2>、Goss方位{1 1 0}<0 0 1>、RDW方位{1 0 2}<0 1 0>などが発生する。これらの方位成分は、観測される全方位の面積に対してcube方位面積率が上記の範囲にあれば、許容される。
上述のように、本発明における上記結晶方位の解析には、電子後方散乱回折(以下EBSDと記す。)法が用いられる。EBSD法とは、Electron BackScatter Diffractionの略であり、走査電子顕微鏡(SEM)内で試料表面の1点に電子線を照射したときに生じる反射電子回折模様(EBSP:electron back−scattering pattern)を用いて局所領域の結晶方位や結晶構造を解析する結晶方位解析技術のことである。
結晶粒を200個以上含む1mm四方の試料面積に対し、0.1μmステップでスキャンして結晶方位を解析した。試料の結晶粒の大きさから測定面積は300μm×300μmとした。各方位の面積率は、cube方位{001}<100>の理想方位からのずれが15°以内の方位を有する結晶粒の面積の全測定面積に対する割合である。EBSD法による方位解析において得られる情報は、電子線が試料に侵入する数10nmの深さまでの方位情報を含んでいるが、測定している広さに対して十分に小さいため、本明細書中では面積率として記載した。また、方位分布は板厚方向に変化しているため、EBSD法による方位解析は板厚方向に何点かを任意にとって平均を取ることが好ましい。本願では特に断りのない限り、ある結晶方位を有する結晶面の面積率はこのようにして測定したものを呼ぶことにする。
次に、cube方位{001}<100>の結晶粒の等分散性について説明する。
cube方位結晶粒の分散性を調査するため、EBSD法による結晶方位解析にて300μm×300μmの範囲を0.1μmステップでスキャンし、このうち60μm四方を1ブロックとし、計25ブロックの解析を行った。1ブロックあたりのcube方位結晶粒の面積率、個数、平均結晶粒面積、さらにcube方位粒を含んだ母材の平均結晶粒面積を確認し、分散性を調査した。1ブロックあたり、上述のようにcube方位面積率が5%以上50%以下、cube方位結晶粒の個数が40個以上100個以下、およびcube方位結晶粒1個あたりの平均結晶粒面積が1.8μm以上45.0μm以下、さらにはcube方位粒を含んだ母材の平均結晶粒面積50μm2以下である場合を、本発明における1視野(300μm×300μm)あたりのcube方位結晶粒の等分散性として定量化した。等分散性は、1ブロックの面積(60μm×60μm=3600μm)に当該ブロックのcube方位面積率を乗じて1ブロックあたりのcube方位結晶粒の総面積を求め、その総面積の値を1ブロック内のcube方位結晶粒の個数で除して、1ブロックにおけるcube方位結晶粒1個当たりの平均面積を求めることで計算される。その求めた値が、平均結晶粒面積である。ここでいう「等分散性」とは、1ブロックあたりのcube方位結晶粒の平均結晶粒面積と個数を規定し、ここでcube方位結晶粒の分布状態が仮に偏っていても、25ブロックが集積した300×300μmの全体で見た際に等分散性を確認できる。例えば、超小型コネクタの狭幅ピン(0.25mm=250μm)の曲げ加工部が250×250μmとすると、cube方位群は少なくとも4つ以上のブロックで含まれることとなり、等分散性があると言える。仮に、図1に示すように、隣り合う4ブロックの隅にcube方位が集積していても、分散性は等しく、圧延平行、垂直方向の異方性が小さい。ここでの等分散性(隣り合う4ブロックを1群として少なくとも4群以上の場合)は、さらに好ましくは、1ブロックの面積をより小さく設定することでも規定することができる。例えば、1ブロックの面積を30μm四方とし、この1ブロック内に10〜25個のcube方位{001}<100>の結晶粒が存在して、cube方位{001}<100>の結晶粒面積率が5〜50%であり、cube方位{001}<100>の結晶粒の平均結晶粒面積が1.8〜45.0μmであることが好ましい。この場合、母材の結晶粒の平均結晶粒面積は好ましくは40μm以下である。
cube方位結晶粒の平均結晶粒面積が小さすぎる場合には、溶体化熱処理が不十分で、未再結晶組織が残存しており、強度と曲げ加工性が低下する可能性がある。一方、cube方位結晶粒の平均結晶面積が大きすぎる場合には、曲げ加工の際にcube方位結晶粒以外の方位を持った結晶粒の部分で割れ(クラック)が発生する可能性が高い。また、曲げの方向によって異方性が生じる場合がある。したがって、cube方位結晶粒の平均結晶面積は上述のような範囲に設定されることが好ましい。
また、cube方位結晶粒は、60μm四方内に40個以上100個以下分布し等分散性を有していることから、曲げ部の頂点にクラックを発生せず良好な曲げ特性が得られ、たわみ異方性および耐力異方性が小さくなる。一方、60μm四方内に分布するcube方位結晶粒の個数が少なすぎると、曲げ部の頂点にクラックを発生して良好な曲げ特性が得られず、たわみ異方性および耐力異方性が大きくなる。一方、上記結晶粒の個数が多すぎる場合、曲げ加工性、たわみ異方性、耐力異方性に優れるが、強度が低下する。
特に上記銅合金板材からなる超小型コネクタ用の狭幅ピン(例えば0.25mm幅)の場合、曲げ加工性改善に有効なcube方位{001}<100>結晶粒の面積率の範囲でその面積率を高めても、cube方位結晶粒の平均結晶粒面積が大きく、またcube方位結晶粒の分布が不均一な場合には、曲げ加工の際にcube方位結晶粒以外の方位を持った結晶粒の部分で割れ(クラック)が発生する可能性が高い。また、曲げの方向によって異方性が生じる場合がある。したがって、EBSD法による結晶方位解析において、60μm四方内にcube方位結晶粒が40個以上100個以下分布し、等分散性を有していることが好ましい。
そこで、本発明の銅合金板材では、cube方位結晶粒の平均結晶粒面積、分散性を制御する。具体的には、再結晶溶体化熱処理前の中間温間圧延にて、再結晶しない温度まで加熱し、その温度下で圧延率5%以上の圧延を施すことによって、圧延材全体でひずみの導入と開放を適度な状態に制御することが可能である。これにより、cube方位の等分散性を実現できる。また、同時に各結晶方位の平均結晶粒面積も制御可能である。この分散性を制御することにより、狭幅ピンの曲げ加工性を高め、たわみ異方性および耐力異方性等の強度の異方性を低減している。
次に本発明の銅合金板材に添加される副添加元素について説明する。
上述したように、本発明の銅合金板材は、好ましい1つの形態においては、Ni及びSiの主添加元素に加えて、副添加元素としてSn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zr、FeおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでもよく、その含有量は副添加元素の合計で、0.005質量%以上1.0質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上0.9質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以上0.8質量%以下であり、特に好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。これらの副添加元素は総量で1.0質量%以下であると導電率を低下させる弊害が生じにくくなる。また上記範囲であれば、下記の添加効果を十分に活用し、かつ導電率が著しく低下しない。特に好ましい範囲内であれば、高い添加効果と高い導電率を得ることができる。一方、副添加元素の含有量が少なすぎる場合には、添加効果が十分に発現しなくなる。他方、副添加元素の含有量が多すぎる場合には、導電率が低くなり好ましくない。以下に、各副添加元素の添加効果を説明する。
上記副添加元素の内で、Mg、Sn、Znは、銅合金板材の耐応力緩和特性を向上させる。それぞれを単独で添加した場合よりも併せて添加した場合に相乗効果によってさらに耐応力緩和特性が向上する。また、半田脆化が著しく改善される効果がある。耐応力緩和特性は、日本電子材料工業会標準規格 EMAS‐3003に準じて、150℃、1000時間の条件で測定する。片持ち梁法により耐力の80%の初期応力を負荷して、150℃、1000時間の試験後の変位量を耐応力緩和特性とする。
上記副添加元素の内で、Mn、Ag、B、Pは、銅合金板材の熱間加工性を向上させるとともに、強度を向上させる。
上記副添加元素の内で、Cr、Zr、Fe、Hfは、化合物や単体で母材に微細に析出する。単体としては、好ましくは75nm以上450nm以下に析出し、より好ましくは90nm以上400nm以下に析出し、特に好ましくは100nm以上350nm以下に析出して、析出硬化に寄与する。また、化合物として50nmから500nmの大きさで析出する。いずれの場合にも、結晶粒の成長を抑制することによって結晶粒を微細にする効果があり、cube方位{001}<100>の結晶粒の分散状態を良化することによって、曲げ加工性を良好に向上させる。
次に、本発明の銅合金板材の曲げ加工性について説明する。
曲げ加工性は、90°W曲げ加工した試験片を、圧縮試験機にて180°密着曲げ加工を行い、その曲げ部頂点に割れ(クラック)の発生がないことが好ましい。
これを換言すると、本発明の銅合金板材は、圧延平行方向と圧延垂直方向の曲げ加工性として、1mm幅以下の狭幅の曲げ加工での180°U密着曲げにて、曲げ加工表面にクラックが生じないことが好ましい。
次に、たわみ係数の異方性および耐力の異方性について説明する。
圧延平行方向(//)のたわみ係数と圧延垂直方向(⊥)のたわみ係数の差が絶対値で10GPa以下であることが好ましく、この場合、たわみ係数の異方性が小さい。また、圧延平行方向の耐力と圧延垂直方向の耐力の差が絶対値で10MPa以下であることが好ましく、この場合、耐力の異方性が小さい。
次に、本発明の銅合金板材の製造方法の好ましい実施形態について説明する。
本発明の銅合金板材を製造するには、銅合金素材を鋳造して得た鋳塊に熱処理(均質化処理)と熱間圧延とを施し、さらに冷間圧延によって薄板に成形した後、前記薄板の再結晶温度未満での中間焼鈍と、100℃以上400℃以下に加熱した後にその温度下で圧延率が5%以上の温間圧延(以下、中間温間圧延という。)を行い、その後薄板中の溶質原子を再固溶させる中間溶体化熱処理を行うという製造方法である。
上記銅合金素材は、Niを1.0質量%以上5.0質量%以下、Siを0.1質量%以上1.0質量%以下と、必要により、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zr、FeおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で0.005質量%以上1.0質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有するものである。
ここでいう、圧延率とは、圧延前の断面積から圧延後の断面積を引いた値を圧延前の断面積で除して100を乗じ、パーセントで表した値である。すなわち、下記式で表される。
[圧延率]={([圧延前の断面積]−[圧延後の断面積])/[圧延前の断面積]}×100(%)
具体的には、次のような製造方法を好ましい一例として挙げることができる。
上記銅合金素材を鋳造[工程1]して鋳塊を得る。この鋳塊を均質化熱処理[工程2]し、熱間圧延[工程3]した後、直ちに冷却(例えば、水冷、水焼き入れ)[工程4]する。次に表面の酸化被膜を除去するために面削[工程5]を行う。その後、冷間圧延[工程6]を行い、圧延率80%以上に圧延して薄板を得る。
そして薄板が一部再結晶する程度の温度である400℃以上700℃以下の温度で5秒間から20時間の中間焼鈍[工程7]を行ってから、100℃以上400℃以下に加熱した後にその温度下で中間温間圧延[工程8]として5%以上50%以下の圧延率の中間温間圧延を薄板に施す。
その後、溶質原子を再固溶させる中間溶体化熱処理[工程9]を行う。この中間溶体化熱処理における薄板の再結晶集合組織においてcube方位面積率が増加する。
この中間溶体化熱処理[工程9]後には、時効析出熱処理[工程10]、仕上げ冷間圧延[工程11]および、調質焼鈍[工程12]をこの順で施す。
一方、従来の析出型銅合金の製造方法は、銅合金素材を鋳造[工程1]して鋳塊を得て、これを均質化熱処理[工程2]し、熱間圧延[工程3]、冷却(水冷)[工程4]、面削[工程5]、冷間圧延[工程6]をこの順に行い薄板化する。そして700℃以上1000℃以下の温度範囲で中間溶体化熱処理[工程9]を行って溶質原子を再固溶させた後に、時効析出熱処理[工程10]と仕上げ冷間圧延[工程11]および必要により調質焼鈍[工程12]によって必要な強度を満足させるという方法である。この一連の工程の中で、材料の集合組織は、中間溶体化熱処理中に起きる再結晶によっておおよそが決定され、仕上げ圧延中に起きる方位の回転により、最終的に決定される。
本発明の製造方法と比較して、前記中間焼鈍[工程7]と中間温間圧延[工程8]の2つの工程は、従来行われていなかった。
次に、本発明の製造方法における各工程の条件をより詳細に設定した実施態様について説明する。
鋳造[工程1]では、少なくともNiを1.0質量%以上5.0質量%以下含有し、Siを0.1質量%以上1.0質量%以下含有し、他の副添加元素については必要により適宜含有するように元素を配合し、残部がCuと不可避不純物から成る合金素材を高周波溶解炉により溶解し、これを0.1℃/秒以上100℃/秒以下の冷却速度で冷却して鋳塊を得る。そして、この鋳塊に対して800℃以上1020℃以下で3分間から10時間の均質化熱処理[工程2]を施う。その後、熱間圧延[工程3]を行い、さらに水焼入れ(冷却[工程4]に相当)を行う。そして、面削[工程5]で、酸化被膜を除去する。その後、圧延率80%〜99.8%の冷間圧延[工程6]を施して薄板を得る。
次に400℃以上700℃以下で5秒間から20時間の中間焼鈍[工程7]を行い、さらに、100℃以上400℃以下の条件にて加熱後にその温度下で圧延率5%以上50%以下の中間温間圧延[工程8]を行う。ここで、温間圧延とは、前記100℃以上400℃以下の温度で圧延することをいう。
その後、600℃以上1000℃以下で5秒間から1時間の中間溶体化熱処理[工程9]を行う。その後、好ましくは窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中での400℃以上700℃以下で5分間から10時間の時効析出熱処理[工程10]、圧延率が3%以上25%以下の仕上げの冷間圧延[工程11]、200℃以上600℃以下で5秒間以上10時間以下の調質焼鈍[工程12]を、この順に行って本発明の銅合金板材を得る。
本発明の製造方法においては、得られる板材の性状に特に必要ない場合には、前記面削[工程5]、仕上げ冷間圧延[工程11]、調質焼鈍[工程12]の各工程の1つ以上を省略して行わなくてもよい。
本実施態様において、熱間圧延[工程3]では、700℃以上再熱温度(1020℃)以下の温度域で、鋳造組織や偏析を破壊し均一な組織にするための加工と、動的再結晶による結晶粒の微細化のための加工を行う。
中間焼鈍[工程7]では合金中の組織を全面は再結晶させない程度に熱処理を行う。その後、再結晶しない温度帯である好ましくは100℃以上400℃以下、より好ましくは120℃以上380℃以下、特に好ましくは140℃以上360℃以下まで加熱し、その温度下で、好ましくは5%以上50%以下、より好ましくは7%以上45%以下、特に好ましくは10%以上40%以下の圧延率にて中間温間圧延[工程8]を施し、加工ひずみの導入と開放を制御する。
この中間温間圧延[工程8]における圧延率が低すぎると、加工歪が小さく、次工程の中間溶体化熱処理[工程9]にて結晶粒が粗大化し、曲げしわが大きくなり特性が劣る。一方、中間温間圧延[工程8]における圧延率が高すぎると、再結晶溶体化熱処理[工程9]にて成長するcube方位が他の方位へ回転し、cube方位面積率が低下する。また、中間温間圧延[工程8]における加熱温度が100℃より低い場合には加工歪の開放が少なくなり、逆に400℃より高い場合には加工歪の開放が進行するとともに再結晶が進行してしまい、次工程の中間溶体化熱処理[工程9]において、ひずみ誘起粒界移動でのcube方位結晶粒の等分散性が不十分となる。この結果、中間温間圧延[工程8]における加熱温度が高すぎるかあるいは低すぎるいずれの場合にも、曲げの異方性としてのたわみ異方性や強度の異方性としての耐力異方性が生じる。
中間溶体化熱処理[工程9]では、再結晶集合組織においてcube方位面積率が増加する。ここで、中間溶体化熱処理[工程9]前の中間焼鈍[工程7]の熱処理温度を上記範囲の温度より高くすると、酸化被膜が形成され好ましくない。このため、この中間焼鈍[工程7]での熱処理温度は好ましくは400℃以上700℃以下とした。特に、一義的には断定しがたいが、中間焼鈍[工程7]にて熱処理温度を上記温度範囲とすることにより、中間溶体化熱処理[工程9]でcube方位面積率が増加する傾向がある。
中間溶体化熱処理[工程9]後には、時効析出熱処理[工程10]、仕上げ冷間圧延[工程11]、調質焼鈍[工程12]を施す。中間溶体化熱処理[工程9]で形成される再結晶集合組織においてひずみ誘起粒界移動によるcube方位面積率を増加させるためには、中間温間圧延[工程8]において所定の加工を行うことが有効である。かつ、中間温間圧延[工程8]において結晶方位を一定方向に制御しておくことで、cube方位結晶粒の発達に寄与する。さらに、時効析出熱処理[工程10]を行うによって、添加元素を固溶体から析出させることで析出強化によって機械強度を上げることができる。また、仕上げ冷間圧延[工程11]を行うによって、板厚を最終的に調整してもよい。さらには、調質焼鈍[工程12]を行うによって、板材の調質を最終的に調整してもよい。
また、冷間圧延[工程6]によりさらなる加工歪を入れ、中間焼鈍[工程7]にて400℃以上700℃以下で5秒間から20時間の熱処理を加え、さらに中間温間圧延[工程8]を行うことで、中間溶体化処理[工程9]での再結晶集合組織においてcube方位面積率が著しく増加する。
上記中間焼鈍[工程7]は、完全には再結晶しておらず、部分的に再結晶している亜焼鈍組織を得ることが目的である。上記中間温間圧延[工程8]では、加熱温度が100℃以上400℃以下、圧延率が5%以上の圧延によって、微視的に不均一な歪の導入と開放を進めることが目的である。
中間焼鈍[工程7]と中間温間圧延[工程8]の作用効果によって、中間溶体化処理[工程9]におけるcube方位結晶粒の成長とcube方位結晶粒の微細化と等分散を可能にする。中間温間圧延[工程8]では、圧延による歪の導入と、加熱による歪の開放を行っているが、これらを両方とも適正に制御することで、中間溶体化熱処理[工程9]のひずみ誘起粒界移動でのcube方位結晶粒の発達と、cube方位結晶粒の微細化および等分散性を高めることができる。すなわち、歪を導入することでcube方位結晶粒を発達させることができ、歪を開放することでcube方位結晶粒の微細化および等分散性が高められる。従来の通常の方法では、中間溶体化処理[工程9]のような熱処理は次工程での荷重を低減するために材料を再結晶させて強度を落とすことが主目的であるが、本発明ではその目的とは全く異なる。
本発明の銅合金板材の板厚には特に制限はないが、通常、0.03〜0.50mmであり、好ましくは、0.05〜0.35mmである。
本発明の銅合金板材は、上述の各要件を満たすことで、例えばコネクタ用銅合金板材に要求される下記特性を満足して有することが好ましい。
特性の一つの曲げ加工性は、180°密着U曲げ試験において曲げ加工表面部にクラックがないことが好ましい。この詳細な条件は実施例に記載の通りとする。
特性の一つのたわみ係数は、130GPa以下であることが好ましい。この詳細な条件は、実施例に記載の通りとする。本発明の銅合金板材の示すたわみ係数の下限値には特に制限はないが、通常、90GPa以上である。
特性の一つの耐力は、700MPa以上であることが好ましい。さらに好ましくは750MPa以上である。この詳細な測定条件は実施例に記載の通りとする。本発明の銅合金板材の示す耐力の上限値には特に制限はないが、通常、900MPa以下である。
特性の一つの導電率は、5%IACS(International Annealed Copper Standard)以上であることが好ましい。さらに好ましくは10%IACS以上、特に好ましくは20%IACS以上である。この詳細な測定条件は実施例に記載の通りとする。本発明の銅合金板材の示す導電率の上限値には特に制限はないが、通常、50%IACS以下である。
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1〜14および比較例1〜4)
表1に示したそれぞれの量のNi、Si、副添加元素を含有し、残部がCuと不可避不純物から成る合金を高周波溶解炉にて溶解し、これを0.1℃/秒から100℃/秒の冷却速度で冷却して鋳造[工程1]し、鋳塊を得た。
この鋳塊を800℃以上1020℃以下で3分から10時間の均質化熱処理[工程2]した後、700℃以上でかつ再熱温度(1020℃)以下で熱間加工としての熱間圧延[工程3]を行い、さらに水焼入れ(冷却[工程4]に相当)を行って熱間圧延板を得た。次に、この熱間圧延板の表面の面削[工程5]を行って酸化被膜を除去した。その後、圧延率80%から99.8%の冷間圧延[工程6]を行って薄板を得た。
次に400℃以上700℃以下で5秒間から20時間の熱処理により薄板の中間焼鈍[工程7]を行い、さらに、100℃以上400℃以下に加熱後にその温度下で5%以上50%以下の圧延率で圧延する中間温間圧延[工程8]を行った。
その後、600℃以上1000℃以下で5秒間から1時間の中間溶体化処理[工程9]を実施した。次に、不活性ガス雰囲気中、400℃以上700℃以下で5分間から1時間の時効析出熱処理[工程10]を行い、3%から25%の圧延率で仕上げの冷間圧延[工程11]、200℃以上600℃以下で5秒間以上10時間以下の調質焼鈍[工程12]を行って銅合金板材の供試材(実施例1から14および比較例1から4)を作製した。各供試材の最終板厚は0.08mmとした。
これらの実施例1から14および比較例1から4のそれぞれの組成および特性については、表1および表2に示す通りである。
なお、各熱処理や圧延の後に、材料表面の酸化や粗度の状態に応じて酸洗浄や表面研磨を、形状に応じてテンションレベラーによる矯正を行った。また、熱間加工[工程3]での加工温度は、圧延機の入り側と出側に設置した放射温度計により測定した。
各供試材について下記の特性調査を行った。
(a)cube方位面積率
EBSD法により、0.09mm(300μm×300μm)の測定面積を、スキャンステップが0.1μmの条件で測定を行った。また、この測定面積においては、60μm×60μmを1ブロックとし、1視野で計25ブロック(5ブロック×5ブロック)の測定ができるようにした。この場合のスキャンステップは、微細な結晶粒を測定するために上記のように0.1μmステップとした。解析では、300μm×300μmの測定面積におけるEBSD測定結果を、上述の25ブロックに分割し、各ブロックのcube方位面積率、平均結晶粒面積、結晶粒の個数、cube方位粒を含んだ母材の平均結晶粒面積を確認した。電子線は走査型電子顕微鏡のタングステンフィラメントからの熱電子を発生源とした。
(b)180°密着U曲げ試験
圧延方向に垂直に幅0.25mm、長さは1.5mmとなるようにプレスによる打ち抜きで加工した。これに曲げの軸が圧延方向に直角になるようにW曲げしたものをGW(Good Way)、圧延方向に平行になるようにW曲げしたものをBW(Bad Way)とし、日本伸銅協会技術標準JCBA―T307(2007)に準拠して90°W曲げ加工後、圧縮試験機にて内側半径を付けずに180°密着曲げ加工を行った。曲げ加工表面を100倍の走査型電子顕微鏡で観察し、クラックの有無を調査した。クラックの無いものを「○(良)」で表し、クラックのあるものを「×(劣)」で表した。ここでのクラックのサイズは、最大幅が30μm〜100μm、最大深さが10μm以上である。
(c)たわみ係数
試験片は、圧延方向に垂直に幅が0.25mm、圧延方向に平行に長さが1.5mmとなるようにプレスによる打ち抜きで加工した。片持ち梁にて試験片の表裏を10回ずつ測定し、その平均値を示した。
たわみ係数E(GPa)は下記式(1)で表される。
E=4a/b×(L/t) (1)
ここで、aは変位fと応力wの傾き、bは供試材の幅、Lは固定端と荷重点の距離、tは供試材の板厚である。
この試験では、たわみの圧延平行方向と圧延垂直方向の異方性を確認した。
(d)耐力[Y]
たわみ係数の測定において、各試験片の弾性限界までの押し込み量(変位)から耐力Y(MPa)を下記式(2)から算出した。
Y={(3E/2)×t×(f/L)×1000}/L (2)
Eはたわみ係数、tは板厚、Lは固定端と荷重点の距離、fは変位(押込み深さ)である。
この試験では、耐力の圧延平行方向と圧延垂直方向の異方性を確認した。
(e)導電率[EC]
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温槽中で四端子法により比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
本発明の実施例1から実施例14、比較例1から比較例4について、表1に示す組成となるように、主原料CuとNi、Si、副添加元素を配合し、溶解、鋳造した。
表2に示すように、実施例1から実施例14の製造条件で、中間温間圧延[工程8]は、100℃以上400℃以下に加熱後、圧延率を5%以上とした。組織は、実施例1から実施例14のcube方位面積率が5%以上50%以下、cube方位結晶粒の平均結晶粒面積が1.8μm以上45.0μm以下、1ブロック(60μm×60μm)あたりのcube方位結晶粒の個数が40個以上100個以下、cube方位粒を含んだ母材の平均結晶粒面積が50μm以下であった。実施例1から実施例14の特性では、180°U密着曲げ、たわみ異方性、耐力異方性がいずれも優れた結果を示した。
比較例1から比較例4では、本発明の製造方法における規定を満たさなかったために、cube方位面積率、1ブロックあたりのcube方位粒の個数を満たさなかった場合を示した。
Figure 0005261619
Figure 0005261619
表1、2に示す様に、本発明の範囲、すなわち、Niを1.0質量%以上5.0質量%以下、Siを0.1質量%以上2.0質量%以下、必要によりSn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zr、FeおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で0.005質量%以上1.0質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有し、電子後方散乱回折法による結晶方位解析において、cube方位{001}<100>の面積率が5%以上50%以下であり、これらに加えて好ましくはcube方位を有する結晶粒の平均結晶粒面積が1.8μm以上45.0μm以下であり、さらには母材の結晶粒の平均結晶粒面積が50μm以下であることを満たす場合には、曲げの特性、たわみ係数の特性、耐力の特性のいずれも良好であった。曲げの特性では、曲げの頂部に割れが発生しなかった。またたわみ係数の特性では、たわみ係数異方性が10GPa以内であり、耐力の特性では耐力異方性が10MPa以内であり、ともに異方性が小さかった。
したがって、本発明の銅合金板材は、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等、自動車車載用などのコネクタや端子材、リレー、スイッチなどに適した銅合金板材として提供することができる。
また表2に示すように、比較例の試料では、いずれかの特性が劣る結果となった。
すなわち、比較例1、2、4は、cube方位結晶粒の平均結晶粒面積が大きすぎたために、BWの曲げの特性およびたわみ係数異方性、耐力異方性が劣った。比較例3は、cube方位面積率が小さすぎたために、曲げの特性(GW、BW)およびたわみ異方性、耐力異方性が劣った。
なお、導電率はいずれも30〜45%IACSを示した。
(従来例)
下記表3に記載の合金組成(残部は銅(Cu))に対して、中間焼鈍[工程7]と中間温間圧延[工程8]での加熱を行わない以外は、前記実施例1と同様にして、銅合金板材を作製した。その結果得られた銅合金板材の供試材について、前記実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表4に示す。
Figure 0005261619
Figure 0005261619
表3、4から明らかなように、本発明で規定する合金組成を満たさずに、中間焼鈍[工程7]を行わずに、その後の中間温間圧延[工程8]での加熱を介さずに作製した従来例1、2の銅合金板材は、これら2つの工程以外の製造条件(各工程と条件)を採用していたとしても、いずれもcube方位の平均結晶粒面積が大きく、1ブロックあたりのcube粒の個数が少なく、たわみ係数と耐力の異方性が大きくなっている。
また、本発明で規定する合金組成を満たすが、中間焼鈍[工程7]を行わずに、その後の中間温間圧延[工程8]での加熱を介さずに作製した従来例3の銅合金板材は、これら2つの工程以外の製造条件(各工程と条件)を採用していたとしても、いずれもcube方位の平均結晶粒面積が大きく、1ブロックあたりのcube粒の個数が少なく、曲げの特性(BW)に劣り、たわみ係数と耐力の異方性が大きくなっている。
これらとは別に、従来の製造条件により製造した銅合金板材について、本発明に係る銅合金板材との相違を明確化するために、その従来の製造条件で銅合金板材を作製し、上記と同様の特性項目の評価を行った。なお、各板材の厚さは特に断らない限り上記実施例と同じ厚さになるように加工率を調整した。
(比較例101)・・・特開2011−162848公報本発明例1の条件
3.2質量%のNi、0.7質量%のSi、1.0質量%のZn、0.2質量%のSnからなる組成の銅合金を溶製し、鋳造した。得られた鋳塊の面削を行い、均質化熱処理後に終了温度が550〜850℃となるように熱間圧延を行い、水冷による急冷の後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。次いで、冷間圧延にて所定の板厚まで圧延後、さらに90%以上の加工率で冷間圧延を行い、800〜900℃の温度まで0.1℃/s以下の昇温速度で加熱して溶体化処理を行った。
次いで、500℃で時効処理を行った。時効処理時間は、銅合金の組成に応じて、460℃の温度での時効で硬さがピークになる時間に調整した。なお、この時効処理時間については、本発明例1の合金の組成に応じて最適な時効処理時間を予備実験により求めた。
次いで、上記時効処理後の板材に対して、更に40%の圧延率で仕上げ冷間圧延を施した。さらに、480℃で30秒間の低温焼鈍を実施した。なお、必要に応じて途中で研磨、面削を行い、板厚は0.10mmに揃えた。
これを試料c01とした。
得られた試験体c01は、上記本発明に係る実施例とは製造条件で比較して、中間焼鈍[工程7]を行っておらず、溶体化熱処理[工程9]前の加熱温度下での中間温間圧延[工程8]も施されていない。また、溶体化熱処理の昇温速度が遅いため、到達温度付近では粒成長が顕著になり、結晶粒が粗大化した。得られた組織は、cube方位結晶粒の面積が150μm以上と大きくなっていた。また、たわみ係数と強度の異方性も、それぞれ10GPaよりも大、15MPaよりも大、と大きく、本発明における要求特性を満たさない結果となった。
(比較例102)・・・特開2011−12321公報実施例1及び実施例4の条件
2.8質量%のNi、0.9質量%のSiからなる組成の銅合金(当該公報の実施例1)、及び2.8質量%のNi、0.9質量%のSi、0.1質量%のZn、0.1質量%のMg、0.1質量%のSnからなる組成の銅合金(当該公報の実施例4)の各合金をコアレス炉(高周波誘導溶解炉)にて木炭被覆下で大気溶解し、4辺が銅モールドに囲まれた鋳型に鋳造し、厚さ250mm、幅620mm、長さ2500mmの鋳塊を作製した。
次に鋳型の幅155mm位置と厚み125mm位置の交点位置に、φ3mmの径のSUS棒を鋳型上端部の湯面より鉛直方向に挿入し、未凝固部の深さを測定した。得られた未凝固部の深さから鋳型長さ(銅モールド長さ)を減じた値を、鋳型下端深さから凝固終了深さまでの距離として定義した。具体的には、300mm(当該公報の実施例1)及び260mm(当該公報の実施例4)であった。この距離が250mm以上となるように、鋳造速度を50〜200mm/分の範囲で調整して、鋳造を行い、鋳塊を得た。
得られた鋳塊より定常部の250×620×300mmブロックを切断し取り出し、幅620mmの中央部より鋳造方向と平行断面のスライス(250×15×300mm)を採取した。これを硝酸に0.5〜1時間浸し、エッチングされて得られたマクロ組織より柱状晶の[100]軸の向きを得た。鋳造方向と直交する面と柱状晶の[100]軸の向きが交わる角度を測定した。具体的には、13°(当該公報の実施例1)及び11°(当該公報の実施例4)であった。
さらに鋳塊を均質化処理後、500〜1000℃に温度調整し、トータル加工率で60〜96%の圧延を行い、その後得られた圧延材を直接水冷して厚さ約10mmのコイルとした。この圧延材の表面をミーリングし酸化スケールを除去した。この時点での圧延材のcube方位の割合は5〜95%とした。その後、加工率85〜99.8%の冷間圧延、700〜1020℃で5秒〜1時間の溶体化熱処理、加工率1〜60%の仕上げ冷間圧延、200〜600℃で5秒〜10時間の調質焼鈍を記載の順に実施し、厚さ0.15mmの供試材を得た。
これらをそれぞれ試料d01(当該公報の実施例1)及びd02(当該公報の実施例4)とした。
得られた試験体d01及びd02は、上記本発明に係る実施例とは製造条件で比較して、中間焼鈍[工程7]を行っておらず、溶体化熱処理[工程9]前の加熱温度下での中間温間圧延[工程8]も施されていない。得られた組織は、cube方位結晶粒の面積率はそれぞれ試料d01(当該公報の実施例1)で35%及び試料d02(当該公報の実施例4)で7%であったが、粒成長が顕著になり、cube方位の結晶粒を含んだ母材の平均結晶粒面積はそれぞれ試料d01(当該公報の実施例1)で254μm及び試料d02(当該公報の実施例4)では201μmと粗大なものであった。また、たわみ係数と強度の異方性も、それぞれ10GPaよりも大、15MPaよりも大、と大きく、本発明における要求特性を満たさない結果となった。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2011年5月2日に日本国で特許出願された特願2011−102996に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。

Claims (6)

  1. Niを1.0質量%以上5.0質量%以下、Siを0.1質量%以上2.0質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有し、
    電子後方散乱回折法による結晶方位解析において、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒の面積率が5%以上50%以下であり、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒が60μm四方内に40個以上100個以下で分散していることを特徴とする銅合金板材。
  2. Niを1.0質量%以上5.0質量%以下、Siを0.1質量%以上2.0質量%以下、Sn、Zn、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zr、FeおよびHfからなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で0.005質量%以上1.0質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有し、
    電子後方散乱回折法による結晶方位解析において、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒の面積率が5%以上50%以下であり、cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒が60μm四方内に40個以上100個以下で分散していることを特徴とする銅合金板材。
  3. cube方位{001}<100>からのずれが15°以内である方位を有する結晶粒の平均結晶粒面積が1.8μm以上45.0μm以下である請求項1または2に記載の銅合金板材。
  4. 母材の結晶粒の平均結晶粒面積が50μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の銅合金板材。
  5. 圧延平行方向のたわみ係数と圧延垂直方向のたわみ係数の差が絶対値で10GPa以下、圧延平行方向の耐力と圧延垂直方向の耐力の差が絶対値で10MPa以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の銅合金板材。
  6. 銅合金素材を鋳造して得た鋳塊に均質化熱処理と熱間圧延とを施し、さらに冷間圧延によって薄板に成形した後、前記薄板中の溶質原子を再固溶させる中間溶体化熱処理を施す銅合金板材の製造方法であって、
    前記銅合金素材は、前記請求項1または2記載の銅合金板材の合金組成を有してなり、
    前記均質化熱処理を800℃以上1020℃以下で3分間から10時間で行い、
    前記冷間圧延を圧延率80%以上99.8%以下で行った後に
    再結晶温度未満である400℃以上700℃以下の温度で5秒間から20時間の中間焼鈍を行い、
    さらに100℃以上400℃以下に加熱した後にその温度下で圧延率が5%以上50%以下の中間温間圧延を行った後、
    前記中間溶体化熱処理を600℃以上1000℃以下で5秒間から1時間で行い、
    400℃以上700℃以下で5分間から10時間の時効析出熱処理を行う
    各工程をこの順に含んでなる銅合金板材の製造方法。
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