以下、本発明のエアバッグ装置の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1ないし図5において、1はエアバッグで、このエアバッグ1を備えたエアバッグ装置2は、カーテンエアバッグ装置、カーテン型エアバッグモジュール(CAB)、あるいは頭部保護エアバッグ装置などとも呼ばれるもので、図4に示すように、車両としての自動車を構成する車体3の車室4の被設置部であるルーフサイド部5に配置されている。そして、このエアバッグ1は、カーテンエアバッグ、側突用エアバッグ、インフレータブルカーテン、あるいは頭部保護エアバッグなどとも呼ばれるもので、側面衝突の衝撃を受けた際や横転(ロールオーバー)の際などに、被保護物としての座席に着席した乗員の側方にほぼ面状に展開し、乗員を保護するようになっている。
なお、以下、前後方向、車幅方向である両側方向、上下方向などの方向は、車体3の直進方向を基準とし、前側方向(図1などに示す矢印F方向)、下方(図1などに示す矢印A方向)、上方(図1に示す矢印U方向)、外方(図3に示す矢印W方向)などを説明する。
そして、この自動車の車体3は、図4に示すように、車室4内に乗員が着座可能な前席及び後席を備え、これら前席及び後席に対応して、開口可能な窓部(サイドウィンドウ)8を備えたドアが設けられている。また、車室の両側の側部10には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれるフロントピラー11、Bピラーとも呼ばれるセンターピラー12、Cピラーとも呼ばれるリアピラー13が設けられている。そして、これら窓部8、ドア及び各ピラー11,12,13などにより、車室の両側の側部10に所定面14が構成されている。また、これらピラー11,12,13の上側、すなわち窓部8の一縁部である上縁部に、ルーフサイドレールとも呼ばれる被取付部材としての車体パネル5aが設けられ、この車体パネル5aを介して図示しない天井部の天井パネルが支持されている。また、両側のフロントピラー11の前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)が設けられ、両側のリアピラー13の後側にはリアガラスが設けられている。
また、ルーフサイド部5は、車体3のドア開口部の上縁に沿った車室4の側部上縁部であり、天井パネルの両側の縁部の部分から、この縁部の部分と交差する方向に伸びるフロントピラー11及びリアピラー13のほぼ全長にかかる部分にまで設定され、これら天井パネルの縁部の部分とフロントピラー11及びリアピラー13とで仮想的に構成される弧の内側に、エアバッグ1が展開する所定面14が設定される。そして、このルーフサイド部5の車体パネル5aには、所定位置に被取付部である固定部としての固定点16が形成されている。各固定点16は、車体パネル5aに一体にあるいは別体のナットを固着などしたねじ孔などとして形成され、車内側からねじ、ボルトやリベットなどの固定具17が挿入され車体パネル5aに締め付けて固定されるようになっている。また、この固定点16は、車種毎に異なる所定の複数の位置に所定の数で設けられ、例えば、図4(a)に示す車種では5カ所、図4(b)に示す車種では6カ所に設けられている。
なお、ここで、センターピラー12とは、前席及び後席の間の部分の側方の側部10に位置し前後の端部のピラーではないピラーであり、展開したエアバッグ1に覆われるピラーを示す。また、車両の種類によっては、片側に例えば4本以上のピラーを備える場合があるが、前から3本目以後のピラーは、リアピラー13として説明する。
また、図示しないが、天井パネルの下面すなわち車室4側には、ルーフライニングあるいはヘッドライニングなどと呼ばれる軟質のパネルであるルーフトリムが配置され、このルーフトリムにより、ルーフサイド部5の車室4側が覆われるようになっている。
そして、エアバッグ装置2は、前席及び後席の乗員を保護可能な、いわゆる前後席用エアバッグであり、ルーフサイド部5に沿って細長く折り畳んで収納されたエアバッグ1に加え、後席の後部上側に位置してエアバッグ1に膨張のためのガスを供給するガス発生器であるインフレータ20、エアバッグ1を車体パネル5aに取り付ける取付手段22、折り畳んだエアバッグ1に沿って取り付けられて展開時などにエアバッグ1を保護する図示しない樹脂製のプロテクタ、エアバッグ1の前端部に連結された吊り紐26、及び折り畳んだエアバッグ1の形状を保持する形状保持部材などが備えられ、モジュールが構成されている。
そして、エアバッグ1は、単数あるいは複数の基布を組み合わせ、例えば1枚の基布を折り返し、あるいは2枚の基布を重ねて接合して、扁平な袋状に形成されたエアバッグ本体部31と、このエアバッグ本体部31の上縁部に沿って延設して形成された取付受部32となどを備え、前後方向を長手方向として細長く折り畳んでルーフサイド部5に収納される。
例えば、エアバッグ本体部31は、車室4側に配置される内側の基布部33と車体3側である外側に配置される外側の基布部34とを重ね、接合部である所定の縫製部35で縫い合わせ、ガスが流入して膨張展開する袋状の膨張部36と、この膨張部36に連通するインフレータ接続部37と、ガスが流入せず膨張展開しない非膨張部38となどが設けられている。
そして、膨張部36は、中空部である気室であり、前席の乗員に対向して展開する前席保護部である第1の気室41、後席の乗員に対向して展開する後席保護部である第2の気室42、及びエアバッグ本体部31の上縁部に沿って前後方向を長手方向として設けられこれら気室41,42同士の上側部を連通させる連通路43を備えている。また、インフレータ接続部37は、膨張部36の後端上部に接続されている。さらに、基布部33,34どうしを接合する縫製部35は、縫製、接着、あるいは縫製とシール手段との併用などにより略気密あるいは高度な気密に構成され、インフレータ20に連通する部分を除いて膨張部36の外周を縫製する外周縫製部45と、この外周縫製部に囲まれた領域に位置し、第1の気室及び第2の気室の展開時の幅寸法を規制する規制部46とを備えている。また、外周縫製部45の上側の部分は、エアバッグ本体部31の一縁部としての上縁部を規定し、エアバッグ本体部31の全長、少なくとも膨張部36の長手方向の全長にわたり、水平な直線状に形成されている。さらに、非膨張部38は、例えば、連通路の下側、すなわち、第1の気室33と第2の気室34との間の通常乗員が対向しない位置に、例えば外側の基布部34のみの1枚の基布で構成されている。
また、エアバッグ1の取付受部32は、エアバッグ本体部31の上縁部、ここでは膨張部36の上縁部に沿って形成されている。そして、この取付受部32は、エアバッグ本体部31を構成する基布部と一体に形成され、すなわち布製で、内側の基布部33と外側の基布部34に一体に連続し、いわばエアバッグ本体部31を上側に延長した部分で、基布部33,34を構成する1枚の基布を折り返した部分であり、外周縫製部45により下端部が閉じられて、断面ループ状の筒状部48となっている。さらに、この実施の形態では、取付受部32の全体が、エアバッグ本体部31の膨張部36の上縁部に沿って、膨張部36の全長との位置範囲内で、一定の断面形状を有し前後の端部は開口した筒状部48となっている。すなわち、この筒状部48は、エアバッグ本体部31のほぼ全長にわたって形成され、エアバッグ1を車体3に取り付けた状態で、前席から後席にかかる位置に配置される。
さらに、図4に示すように、吊り紐26は、テザー、テザーベルト、あるいはストラップなどとも呼ばれるもので、基布などにてひも状に形成され、基端部がエアバッグ本体部31の前側部に縫合などして連結され、先端部には、取付金具26aが取り付けられている。
また、取付手段22は、第1の部材としてのインナピース51と、第2の部材としての複数のアウタピース52とを備えている。そして、インナピース51は、棒状、ここでは断面円形状の円柱状で、長棒あるいは挿入棒などとも呼び得るもので、樹脂製あるいは金属製でしなるように弾性的に変形可能あるいは塑性変形可能であり、全長にわたり断面形状は等しく形成されている。そして、このインナピース51は、取付受部32の筒状部48と長さ寸法が等しくあるいはほぼ等しく、筒状部48の内側に挿入可能な直径寸法を備えている。すなわち、この取付手段22は、前側あるいは後側の端部から筒状部48に挿入され収容されるようになっている。
また、アウタピース52は、ブラケットなどとも呼び得るもので、互いに同じ形状の複数の、本実施の形態では5個あるいは6個のアウタピース52が用いられる。そして、各アウタピース52は、樹脂製あるいは金属製で、連結部55と、取付片部56とが一体に形成されている。そして、連結部54は、略筒状で、ここでは、図3に示すように、略円筒をなす連結本体部58の一部である下端部に軸方向に沿って切り欠き溝部59を設けた断面略C字状となっている。そして、連結本体部58の内側の形状すなわち直径寸法は、インナピース51を収容したエアバッグ1の取付受部32の筒状部48を内側に隙間を介してあるいは密着して収容可能な寸法となっている。一方、溝部59の幅寸法は、エアバッグ1すなわち2枚の基布部33,34あるいは2枚の基布部33,34を縫製した外周縫製部45の部分が通過可能な寸法であり、かつ、筒状部48に収容されたインナピース51が通過不可能すなわち下方に抜け落ちない寸法となっている。
そして、インナピース51を収容したエアバッグ1の取付受部32の筒状部48をアウタピース52の連結本体部58の内側に挿入すると、筒状部48をアウタピース52とインナピース51とで挟持した状態で、筒状部48及びインナピース51は連結本体部58に外側から包持され、これら部材が少なくとも上下方向には外れないように連結される。すなわち、長手方向に形状が等しいインナピース51及び筒状部48に対して、アウタピース52の連結本体部58を任意の位置に取り付けできるようになっている。
また、アウタピース52の取付片部56は、連結部54の一側である外側部から上側に向かって突設された平板状をなしている。そして、この取付片部56には、円孔状の固定受部61が設けられ、固定具17の軸部を挿入可能となっている。
一方、インフレータ20は、図2に示すように、円柱状のインフレータ本体部20aを備え、このインフレータ本体部20aに、薬剤を燃焼させる燃焼式(パイロテクニックタイプ)、ガスを高圧で貯蔵する貯蔵式(ストレージタイプ)、あるいはこれら燃焼式と貯蔵式とを組み合わせたハイブリッド式などのガス発生手段が内蔵されている。そして、このインフレータ本体部の長手方向の一端部である前端部には、ガスを噴射するガス供給部が設けられ、接続管20bによりインフレータ接続部37に接続されている。また、インフレータ本体部の後端部には、ハーネスと呼ばれる電線が接続されるコネクタ部が設けられている。
また、図示しないが、必要に応じて配置されるプロテクタは、カバーとも呼ばれるもので、折り畳んだエアバッグ1の略全長あるいは一部に沿って配置され、例えば折り畳んだエアバッグ本体部31の略全長の上半部に沿うように配置されている。
さらに、エアバッグ装置2は、車体3側に、センサなどを備えた図示しない制御装置を備え、この制御装置が、ハーネスを介してインフレータ20に電気的に接続されている。
また、形状保持部材は、折り畳んだエアバッグ1の形状を保持して折り崩れを防止するもので、破断可能なスリットを設けた筒状部材や、破断可能な粘着テープであるいわゆるバインディングテープなどが用いられる。
次に、このエアバッグ装置2の組立工程を説明する。
まず、エアバッグ1は、エアバッグ本体部31を所定の細長い形状に折り畳み、形状保持部材を用いて折り畳み形状を保持する。このエアバッグ本体部31の折畳方法は、種々の方法を採ることができるが、例えば、エアバッグ本体部31を平面状に広げた状態から、展開時の下側部を渦巻き状すなわちロール状に折り畳んで集積部を形成するとともに、展開時の上側部は波形すなわち蛇腹状に折り畳んだ案内部とし、この案内部で集積部の上側部から両側部まで包むように折り畳む。なお、例えば、集積部は、エアバッグ本体部31を下端部から外側すなわち所定面14側に巻き上げるように巻回する。また、案内部は、連通路を含む部分であり、上側部を車室4側に折り線が向くように折返し、下側部を車外側に折り線が向くように折返して構成されている。
そして、この折畳工程の前あるいは後に、エアバッグ1の取付受部32に取付手段22を取り付ける。この工程は、取付受部32の筒状部48に端部の開口からインナピース51を挿入して収容するとともに、インナピース51を収容したエアバッグ1の取付受部32の筒状部48の外側に、前後の端部からアウタピース52の連結本体部58をスライドさせて嵌合し、さらに適宜の位置までスライドさせて、車体3の固定点16の位置に応じた所定の位置に取り付ける。この状態で、取付手段22の取付片部56の固定受部61が、折り畳んだエアバッグ本体部31の上部に沿った所定の位置に配置される。
次いで、必要に応じてプロテクタを取り付け、さらに、エアバッグ1のインフレータ接続部37にインフレータ20を接続し、図2に示すように、エアバッグ装置2の組立状態であるモジュールが構成される。
次に、エアバッグ装置2の車体3への取付作業を説明する。
この取付作業は、まず、エアバッグ装置2のモジュールを車室4内に持ち込み、エアバッグ1をルーフサイド部5に沿って曲げながら配置するとともに、取付片部56の固定受部61にそれぞれ固定具17を挿入し、車体パネル5aの固定点16に螺合などして締め付け固定する。この状態で、図4(a)あるいは(b)に示すように、エアバッグ1が所定の位置に配置され、すなわち、取付手段22を介して、ルーフサイド部5にエアバッグ1が取り付けられる。
そして、エアバッグ1の前端部の吊り紐26の先端の取付金具26aを、フロントピラー11に取り付ける。また、インフレータ20を図示しないリテーナを用いて車体3に取り付ける。さらに、インフレータ20から導出されたハーネスを車体3に備えた制御装置に接続する。次いで、各ピラー11,12,13にピラーガーニッシュを取り付け、車体3の天井パネルにルーフトリムを取り付け、このルーフトリムでエアバッグ装置2を覆うことにより、エアバッグ装置2の車体3のルーフサイド部5への取付作業が完了する。
次に、エアバッグ1の展開動作を説明する。
車両の側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータ20が作動し、このインフレータ20から噴射されるガスがエアバッグ本体部31の膨張部内に導入される。すると、エアバッグ本体部31は、まず、通気抵抗が小さく迅速に展開する形状である波状に折られた案内部が膨張して、下側に位置する集積部を下方に押し出す。同時に、形状保持部材が開裂し、さらに、ルーフトリムを下方に押し開いて、エアバッグ1のエアバッグ本体部31がルーフサイド部5から下方に迅速に突出する。次いで、若干通気抵抗が大きい形状であるロール状に折りたたまれた集積部が車室4の側部10内面である所定面14をこすりながら巻き戻されるように所定面14に沿った所定方向である略下方に展開し、いわば側部10に沿ってカーテン状に膨張展開して、前後の窓部8や各ピラー11,12,13などを覆う。すなわち、第1の気室41が前席の乗員の着座位置の側方に対向する領域に迅速に展開し、第2の気室42が後席の乗員の着座位置の側方に対向する領域に迅速に展開して、前席及び後席の各乗員の頭部、胸部などを保護するように展開し、乗員を効果的に保護する。また、このエアバッグ1の展開の際には、プロテクタによりエアバッグ1の展開方向が案内される。
このように、本実施の形態によれば、いわゆるカーテンエアバッグ装置などのエアバッグ装置2のエアバッグ1を車体3に沿って取り付けるエアバッグ1の取付構造について、車体3の車体パネル5aの所定位置に設けられた固定点16に対して、取付受部32に取り付けた取付手段22の取付片部56に設けた固定受部61を固定し、エアバッグ1を取り付けできる。
そして、エアバッグ1の取付受部32は、エアバッグ本体部31の一縁部に沿って所定の位置範囲内で一定の断面形状を有する筒状部48であり、取付手段22は、取付受部32の断面形状に適合して取付受部32の所定の位置範囲内で任意の位置に取付片部56を配置でき、いわば前後の任意の位置にスライドできるアジャスタブルなため、複数の形状の車体3の車体パネル5aに対応が可能になり、汎用性が向上し、開発及び製造に関するコストを低減できる。すなわち、図5に示すように、取付片部56すなわち固定受部61の位置及び数を実線で示す位置とすることにより、エアバッグ1を、図4(a)に示す窓部8の前端から後端までの寸法Laの車体3に取り付けできるとともに、取付片部56すなわち固定受部61の位置及び数を図5に波線で示す位置に変更することにより、同一のエアバッグ1を図4(b)に示す窓部8の前端から後端までの寸法Lbの車体3に取り付けできる。このように、特定のエアバッグ1を固定点16の位置が異なる他車種へ適用することが可能になり、汎用性を向上し、開発及び製造に関するコストを低減できる。
そして、取付手段22を棒状のインナピース51と取付片部56を設けたアウタピース52とで構成し、取付受部32の筒状部48に対し、インナピース51を筒状部48の内方に収容し、アウタピース52は筒状部48を外方から包持して、これらインナピース51とアウタピース52とで筒状部48を挟持してする構成により、所定の位置範囲内で一定の断面形状を有する取付受部32を用いて取付片部56を任意の位置に配置可能とする構成を容易に実現できる。
また、上記のように、エアバッグ1に取付手段22を組み合わせる作業工程が簡略であるとともに、エアバッグ1及び取付手段22の構造は簡略であり、製造コストを低減できる。
なお、上記の実施の形態では、エアバッグ1の取付受部32はエアバッグ本体部31の膨張部36のほぼ全長にわたり連続して形成し、インナピース51もこの膨張部36と同じ長さの円柱状としたが、この構成に限られるものではない。すなわち、エアバッグ1の取付受部32は、取付片部56が配置される可能性のある部分にのみ分割して配置することもでき、さらに、インナピース51も、この取付片部56の長さと同じか、あるいはさらに短い寸法で配置することができる。また、インナピース51は、円柱状に限られず、角柱状、円筒状、角筒状、あるいは板状など、種々の形状を採ることができる。また、いずれかの部材に一体にあるいは別体の部材を用いて、エアバッグ1の取付受部32と取付手段22のインナピース51及びアウタピース52とを係合などして位置決め連結する連結手段を用いることができる。さらに、エアバッグ1の取付受部32について、筒状部48の一端を縫製などして閉じておき、インナピース51の位置決めを容易にすることができる。さらに、取付受部32は、筒状に限られず、種々の形状とすることができる。
例えば、図6ないし図8に示す第2の実施の形態のように、エアバッグ1の取付受部32は、膨張部36の全長に設けずに、膨張部36の全長より小さい長さ寸法L0の複数の筒状部48を互いに間隔を介して配置し、さらに適宜の筒状部48の一端部を縫製して閉塞した閉塞部48aとすることができる。そして、この実施の形態では、インナピース51は、寸法L0と等しいか寸法L0より短い長さ寸法L1の四角筒状に形成されているとともに、連結本体部58の側面に、円孔状の複数の連結受部65が形成されている。また、アウタピース52も、インナピース51の形状に対応し、すなわちインナピース51の外側に嵌合するように、連結本体部58が略四角筒状に形成されているとともに、それぞれ1個の円孔状の連結受部66が形成されている。また、連結手段としてのアンカー68及びロックピン69を備えている。アンカー68は、環状のフランジ部68aと、このフランジ部68aから突設された略筒状の軸部68bとを備え、さらに、軸部68bは中央部の孔68cから放射状の溝で軸方向に沿って複数に分割されている。また、ロックピン69は、円板状の基部69aと、この基部69aから突設された軸部69bと、この軸部69bの先端部に径大に設けられた径大部69cとを備えている。
そこで、この第2の実施の形態においては、エアバッグ1の各取付受部32にそれぞれインナピース51を挿入した状態で、取付受部32の外側に、アウタピース52の連結本体部58を嵌合し、連結受部65,66同士の位置が合う任意の位置にアウタピース52を配置する。そして、アウタピース52の連結受部66からアンカー68の軸部68aを打ち込み、取付受部32の基布部33,34に孔をあけ、インナピース51の連結受部65まで挿入する。次いで、アンカー68の中央部の孔68cに、ロックピン69の軸部69bを打ち込むと、図8に示すように、このロックピン69の径大部69cに押されて、アンカー68の軸部68aの先端部がインナピース51の内側で放射状に広がり、アンカー68及びロックピン69が抜け止めされる。この状態で、これらアンカー68及びロックピン69により、エアバッグ1の取付受部32と取付手段22のインナピース51及びアウタピース52とが位置決め固定される。
そして、この状態で、アウタピース52の取付片部56の固定受部61を利用し、第1の実施の形態と同様に、エアバッグ1を車体3に取り付けできる。そして、この第2の実施の形態では、取付受部32より長さ寸法の小さいインナピース51を用い、このインナピース51よりさらに長さ寸法の小さいアウタピース52を用いることにより、取付手段22を小形化及び軽量化でき、エアバッグ装置2を容易に小形化及び軽量化できる。また、アンカー68及びロックピン69を用い、エアバッグ1の取付受部32と取付手段22のインナピース51及びアウタピース52とを容易かつ確実に位置決め固定できる。
また、例えば図9に示す第3の実施の形態のように、エアバッグ1の取付受部32を筒状とせず、取付手段22の第1の部材71と第2の部材72とが互いに係合した状態で、取付手段22が取付受部32にも係合して取り付けられる構成とすることもできる。この構成では、エアバッグ1の取付受部32は筒状ではなく、各基布部33,34の上側の縁部は連続せず、それぞれ自由端部33a,34aとなっている。そして、適宜の位置を縫製するなどして、これら自由端部33a,34aは、互いに向き合う方向から下方に向かうように屈曲した状態とされ、これら自由端部33a,34a同士の間は、上側に開口可能な溝状となっている。
一方、第1の部材71は、インナピースとも呼び得る金属製あるいは樹脂製で、垂直板状の基板部74と、この基板部74の下端部から互いに離間する方向に向かいさらに上側に向かうように屈曲された係止受片部75となっている。また、基板部74の上端部は、上側に延設され、取付片部56を兼ねた挿入片部76となっており、この挿入片部76に円孔状の固定受部61が形成されている。また、第2の部材72は、アウタピースあるいはクリップ体とも呼び得るもので、弾性変形可能な金属製あるいは樹脂製で、上端の基部77から下方に延設された一対の腕部78と、これら腕部78の先端部から互いに接近する方向に向かいさらに上側に向かうように屈曲された係止部79と、基部77にエアバッグ1の長手方向に沿って形成されたスリット状の挿入受部80とを備えている。
そこで、この第3の実施の形態では、挿入片部76が基布部33,34の間から上側に突出するようにして、第1の部材71を取付受部32の前後方向の任意の位置に配置する。この状態で、第2の部材72を第1の部材71に被せるようにして、腕部78を弾性的に変形させながら上側から組み合わせる。すると、挿入片部76が挿入受部80に挿入され、第1の部材71と第2の部材72とが位置決めされるとともに、係止部79が係止受片部75の下側に係止され、第1の部材71と第2の部材72とが係合して固定される。さらに、この状態で、係止受片部75と、腕部78及び係止部79との間に取付受部32の基布部33,34が挟持され、エアバッグ1の取付受部32に取付手段22の第1の部材71と第2の部材72とが取り付けられる。
この構成では、第1の部材71及び第2の部材72を小型化、軽量化し、エアバッグ装置2を容易に小形化及び軽量化できる。また、第1の部材71及び第2の部材72を上側からの作業で取付受部32の任意の位置に配置でき、作業性を向上して製造コストを低減できる。また、第1の部材71及び第2の部材72の一方に備えた挿入受部80に、他方に備えた挿入片部76を挿入することにより、第1の部材71と第2の部材72とを互いに容易かつ確実に位置決めでき、取付片部56の位置を容易に安定させることができる。
また、図10及び図11に示す第4の実施の形態も、第3の実施の形態と同様に、エアバッグ1の取付受部32は筒状ではなく、各基布部33,34の縁部は自由端部33a,34aとなっているとともに、取付手段22の第1の部材81と第2の部材82とが互いに係合した状態で、取付手段22が取付受部32に係合して取り付けられる構成となっている。そして、エアバッグ1の取付受部32は各基布部33,34が互いに重ねられた状態で、自由端部33a,34aが下方に向かうように屈曲され、下方が開口した部品配置部32aが形成される。
また、第1の部材81は、インナピースとも呼び得る金属製あるいは樹脂製で、垂直板状の基板部84と、この基板部84の複数カ所ここでは3カ所を外方に向けて切り起こした矩形孔状の係止受部85とが形成されている。また、基板部84の上端部は、外側に屈曲しさらに上側に屈曲されて延設され、取付片部56を兼ねた挿入片部86となっており、この挿入片部76に円孔状の固定受部61が形成されている。さらに、基板部84の両側の端部は、外方に屈曲され、当接部84aが形成されている。また、第2の部材82は、アウタピースあるいはクリップ体とも呼び得るもので、弾性変形可能な金属製あるいは樹脂製で、上端の基部87から下方に延設された一対の腕部88と、基部87に形成されたスリット状の挿入受部90とを備えている。さらに、内側の腕部88には、係止受部85の位置に対応して、先端部及び中間部の2カ所から外方に切り起こされた係止部91が形成され、外側の腕部88には、先端部から内側に屈曲しさらに上側に屈曲された対向受部92が形成されている。また、各係止部91の先端部は、腕部88を押圧することにより各基布部33,34を貫通可能となっている。
そこで、この第4の実施の形態では、第1の部材81を取付受部32の部品配置部32aの前後方向の任意の位置に配置し、取付受部32の上端部に基布部33,34を貫通するスリット状の開口を形成し、この開口から挿入片部86を上側に突出させる。この状態で、第2の部材82を第1の部材81に被せるようにして、腕部88を弾性的に変形させながら上側から組み合わせる。すると、挿入片部86が挿入受部90に挿入され、第1の部材81と第2の部材82とが位置決めされ、両側の当接部84aが対向受部92に当接する。さらに、腕部88を押圧し、各係止部91の先端部を各基布部33,34を貫通させ、各係止部91を係止受部85に挿入して係止する。また、各基布部33,34の自由端部33a,34aは、対向受部92に当接する。この状態で、第1の部材81と第2の部材82とが係合して固定され、腕部88基板部84との間に取付受部32の基布部33,34が挟持されるとともに、第2の部材82の係止部91が基布部33,34を貫通して第1の部材81の係止受部85に係止された状態となり、エアバッグ1の取付受部32に取付手段22の第1の部材81と第2の部材82とが取り付けられる。
なお、上記の各実施の形態の構成は組み合わせて用いることもできる。例えば、図7及び図8に示す第2の実施の形態の連結手段を、他の実施の形態に適用することもできる。
また、エアバッグ1は、上側から下側に向かって展開して自動車の側方の前後の窓部8を覆う構成に限られず、細長く折り畳まれた状態から所定方向に向かい所定面に沿って面状に膨張展開する適宜のエアバッグ装置に適用できる。