JP5541002B2 - 耐水素誘起割れ性に優れた鋼材 - Google Patents

耐水素誘起割れ性に優れた鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、主にラインパイプの製造に用いる耐水素誘起割れ性に優れた鋼材に関するものである。
鋼板中に不可避不純物として含有する硫黄は、同じく鋼材中に強度発現元素として含有するマンガンと結合し、MnSを形成する。MnSは、圧延中に延伸し、その結果、硫化水素と水分を含む環境下で、水素誘起割れが発生する原因となる。また、延伸したMnSは、靭性をはじめとする材質が低下する原因となる。
MnSに起因する水素誘起割れの発生や、靭性の低下を防止するためには、鋼材中でのMnSの生成を抑制する必要があり、特に、連続鋳造鋳片の中心偏析部に生成する粗大MnSを抑制することが重要である。
鋼板でのMnSの生成を抑制するためには、鋼中Sの含有量を低下し、連続鋳造時の中心偏析を低減する対策を講じることが有効である。さらに、鋼中にCa又はREM(希土類元素)を添加し、硫化物を、MnSではなく、CaSや、REMオキシサルファイドとして形成し、圧延中に硫化物が延伸することを抑制する方法が用いられる。
特許文献1には、S:0.0020%未満、Ca:0.0020%以上0.0050%未満を含有する、耐水素誘起割れ性の優れた鋼材が記載されている。また、特許文献2には、0.040%以下(かつ、0.008%以上)のREMを、0.005%以下に低減したS含有量に応じて、所定の範囲で含む耐水素誘起割れ性の優れた鋼材が記載されている。
さらに、特許文献3には、S:0.01%以下とし、3≦REM(%)/S(%)≦10の範囲でREMを含有する、耐水素誘起割れ性に優れたラインパイプ用鋼が記載されている。また、引用文献4には、S≦0.008%を含み、CaとREMのうち少なくとも1種以上を含有し、Ca:0.001%以上0.005%未満とし、REMは、少なくとも0.008%以上で、SとO含有量に応じて定まる範囲の量を含有する、耐水素誘起割れ性の優れた鋼材が記載されている。
特開昭54−31019号公報 特開昭54−31020号公報 特開昭53−14606号公報 特開昭54−92511号公報
特許文献1に記載のように、鋼中にCaを添加すると、硫化物をCaSとして、MnSの延伸を防止する効果は得られるが、靭性をはじめとする材質においては、満足する向上が見られないことが解った。また、鋼中にCaを多量に添加すると、連続鋳造時にノズル耐火物が溶損するという問題も発生する。
特許文献2〜4のように、鋼中にREMを添加すると、硫化物の形態制御による延伸防止効果は得られるが、連続鋳造時のノズル詰まりの発生傾向が増大し、さらに、鋼板内部に存在する介在物に起因する製品欠陥が増大することが解った。
本発明は、ラインパイプ等の製造に用いる鋼材において、耐水素誘起割れ性や靭性を向上させ、製造の際に、連続鋳造浸漬ノズル耐火物の溶損及びノズル詰まりの発生を防止することができ、かつ、鋼板内部における介在物欠陥の発生を防止することができる耐水素誘起割れ性に優れた鋼材、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
鋼中にCaを添加すると、硫化物をCaSとすることで、MnSの延伸を防止する効果は得られるものの、添加したCaと、脱酸剤として添加したAlとにより、CaO−Al23系酸化物が形成される。
このCaO−Al23系酸化物は低融点酸化物であり、圧延中に延伸するため、靭性をはじめとする材質が低下することが解った。また、REM添加鋼において、浸漬ノズルのノズル詰まり及び鋼板内部の介在物欠陥は、REM添加量が0.006質量%超の場合に発生することが解った。
これに対し、MnS、又は、低融点のCaO−Al23系酸化物であっても、微細に分散すれば、圧延による延伸後の長さも短くなり、その結果、耐水素誘起割れ性に優れ、靭性低下を防止して靭性を確保した鋼材を製造することが可能であることが解った。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.8〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.0025%以下、N:0.005%以下、sol.Al:0.010〜0.11%、Ca:0.0004〜0.0040%、希土類元素(REM):0.0003〜0.0060%と、Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、V:0.05%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.0020%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.5%以下の1種以上とを含み、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼鋳片を圧延して得られた鋼材であって、
(i)上記鋼材中に存在する介在物の最大円相当直径が30μmであり、
(ii)上記鋼材の圧延方向の断面視において、平均組成が、%Al23+%CaO+%REM23≧80%であり、かつ、(%REM)/(%Al+%Ca+%REM)≧0.5である領域の面積が介在物の全面積の40%以上である介在物が、介在物の個数割合で、50%以上存在している
ことを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた鋼材。
(2)質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.8〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.0025%以下、N:0.005%以下、sol.Al:0.010〜0.11%、Ca:0.0004〜0.0040%、希土類元素(REM):0.0003〜0.0060%と、Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、V:0.05%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.0020%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.5%以下の1種以上とを含み、残部Fe及び不可避不純物からなる溶鋼を溶製するに際して、
(i)C、Si、Mn、P、S、Nの組成、及び、Ti、Nb、V、Cr、Mo、B、Ni、Cuの1種以上の組成を調整した後、REM添加後の溶存酸素濃度が50ppm以上となるようにREMを添加し、その後、Al及びCaを添加して、上記成分組成の溶鋼を溶製し、
(ii)上記溶鋼を鋳造して鋼鋳片を製造し、次いで、圧延して請求1項記載の鋼材を得ることを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
本発明においては、圧延前の鋳片段階で、平均組成が、%Al23+%CaO+%REM23≧80%で、かつ、(%REM)/(%Al+%Ca+%REM)≧0.5である領域を含む介在物を、多数、鋼材中に生成、分散させて、その周囲に、MnS又は低融点のCaO−Al23系酸化物を生成させて、MnS又はCaO−Al23系酸化物を微細分散させることにより、MnS又はCaO−Al23系酸化物の粗大化を防止する。
即ち、平均組成が、%Al23+%CaO+%REM23≧80%で、かつ、(%REM)/(%Al+%Ca+%REM)≧0.5である領域を含む介在物を、MnS又はCaO−Al23系酸化物の晶出核として利用する。
これにより、本発明の圧延後の鋼材では、晶出核の効果により、それぞれの介在物粒径が微細化した介在物が延伸しているので、延伸後の介在物の最大径の長さは、大幅に短縮される。その結果、本発明によれば、耐水素誘起割れ性に優れ、かつ、靭性低下を防止して靭性を確保した鋼材を製造し、提供することができる。
REM添加後の溶存酸素(ppm)とMnS個数(個/mm2)の関係を示す図である。 REM添加後の溶存酸素(ppm)と最大MnS径(μm)の関係を示す図である。 MnS個数(個/mm2)と最大MnS径(円相当直径の最大値(μm))の関係を示す図である。
本発明は、ラインパイプ等の製造に用いることができる耐水素誘起割れ性に優れた鋼材を対象とする。以下に、本発明の鋼材の成分組成を規定する根拠を説明する。特に断らない限り、%は質量%を意味する。
C:0.03〜0.10%
ラインパイプ用鋼材等に適用できるための必要強度を得るため、Cは、0.03%以上とする。一方、Cが0.10%を超えると、靭性や溶接性が劣化するので、上限を0.10%とする。好ましい下限は0.043%であり、一方、好ましい上限は0.082%である。
Si:0.1〜0.5%
Siは、脱酸に必要な元素であり、通常は0.1%以上を添加するが、0.5%を超えると、靭性が劣化するので、上限を0.5%とする。好ましい下限は0.22%であり、一方、好ましい上限は0.37%である。
Mn:0.8〜2.0%
Mnは、強度を向上する元素であり、0.8%以上を添加するが、2.0%を超えると、溶接性が劣化するので、上限を2.0%とする。好ましい下限は1.08%であり、一方、好ましい上限は1.77%である。
P:0.030%以下
Pは、鋼の靭性などに悪影響を与える不純物であるので、低いほど好ましいが、低燐化に要する費用との兼ね合いで、上限を0.030%とした。好ましい上限は、0.022%である。下限は、低いほど好ましいので、特に規定しない。
S:0.0025%以下
MnSの生成を防止する観点から、S含有量は少ないほど好ましいので、下限は特に規定しない。ただし、二次精錬の負荷を大きくしても、Sを0.0005%より低くすることは、現実的に困難である。一方、Sが0.0025%を超えると、圧延時に延伸し易い単独MnSが一定以上に増加し、材質の低下が避けられないので、上限は0.0025%とする。好ましい上限は、0.0018%である。
N:0.005%以下
Nが0.005%を超えると、Alが本発明の範囲内であっても、AlNが多量に生成し、靭性が劣化する懸念があるので、上限を0.005%とした。好ましい上限は、0.0029%である。一方、Nは少ないほど好ましいので、下限は特に規定しない。
sol.Al:0.010〜0.11%
本発明においては、CaとREMを添加して硫化物形態制御を行うため、鋼を十分に脱酸して、CaとREMの酸化を極力抑えることが重要である。このように、Alは脱酸元素として必要であり、sol.Alで0.010%以上含有することにより、十分な脱酸を行うことができる。ただし、0.11%を超えると、AlNが多量に生成し、靭性が劣化する懸念があるので、上限を0.11%とする。好ましい下限は0.023%であり、一方、好ましい上限は0.08%である。
sol.Alは、溶存Alのことであり、分析上、酸可溶Alである。Al23を形成していない溶存Alは酸に溶解し、Al23は酸に溶解しないことを利用して、溶存AlとAl23を分別して分析することができる。ちなみに、本発明の鋼材は、Alで十分に脱酸して得られるので、鋼中のトータル酸素量が低くなっており、例えば、0.0025%未満まで低下していることを例示できる。
Ca:0.0004〜0.0040%
Caは、Sを固定することに加えて、後述のREM添加により生成する晶出核の周囲に、CaO−Al23系酸化物を生成させるために添加する。ただし、Caが低すぎると、事実上、REMの単独添加となり、連続鋳造ノズル詰まりや、REM酸化物系の高比重介在物の堆積が生じるので、下限を0.0004%とする。
一方、Caが0.0040%を超えると、粗大な低融点酸化物(主にCaO−Al23系酸化物)が多量に生成し、製品に内部欠陥を引き起こす。さらに、ノズル耐火物が溶損し易くなり、連続鋳造の操業が安定しないので、上限を0.0040%とする。好ましい下限は0.0018%であり、一方、好ましい上限は0.0033%である。
REM:0.0003〜0.0060%
REMは、希土類元素を意味し、Ce、La、Nd、Prから選ばれる1種以上の元素を含有する。添加方法としては、例えば、鋼中に、ミッシュメタルとして添加することが広く行われている。ここでは、これら含有する希土類元素の合計量を、REM量とする。
REMは、Sを固定することに加えて、MnSや、CaO−Al23系酸化物を微細分散させるための晶出核を生成するために添加する。ただし、REMが少な過ぎると、MnSや、CaO−Al23系酸化物を微細分散させるための晶出核を生成する効果が得られず、延伸酸化物による材質低下の問題が生じるので、下限を0.0003%とする。好ましい下限は0.0013%である。
一方、REMが0.0060%を超えると、ノズル詰まりや、粗大なREM酸化物による内部欠陥が発生するので、上限を0.0060%とする。好ましい上限は0.0048%である。
本発明の鋼材を得るには、REM添加後の溶鋼中の溶存酸素を50ppm以上に制御することが重要である。即ち、本発明は、Al脱酸鋼を対象とするが、REM添加は、Al添加を全く行わないか、又は、Al添加を行っても、REM添加後の溶存酸素が50ppm以上残存するような予備脱酸にとどめた段階で行うことが特徴である。そして、REM添加後にAlを添加し、最終的なsol.Al濃度に調整する。
以下に、本発明における介在物分散の考え方を、ラボ実験結果に基づいて説明する。
ラボ実験は、まず、電解鉄1kgを高周波誘導溶解炉で、Ar雰囲気で溶解した。溶解直後の溶存酸素は、300〜400ppmと高かった。次に、種々の量のAlを添加し、溶存酸素を様々の値に変化させてから、REMを添加した。REM添加後に溶存酸素量を測定し、その後、Alを添加し、最後に、CaをCa−Si合金を添加し、炉の電源を切って炉冷した。
得られた鋳片の成分組成は、REM=20〜25ppm、sol.Al=0.030〜0.035%、Ca=15〜20ppmであった。即ち、鋳片分析値は、一定の範囲に収まっており、REM添加後の溶存酸素量だけを変更して実験を行った。
このようにして作製した鋳片の横断面をミクロ研磨し、光学顕微鏡で、倍率1000倍で50視野観察し、円相当直径1μm以上の介在物の個数とサイズを測定した。ここで、円相当直径1μm以上の介在物を対象としたのは、円相当直径1μm未満の小さな介在物は、耐水素誘起割れ性に影響を及ぼさないことを知見しているからである。
図1に、REM添加後の溶存酸素(ppm)と介在物個数(個/mm2)の関係を示し、図2に、REM添加後の溶存酸素(ppm)と最大MnS径(円相当直径の最大値(μm))の関係を示す。これらの関係から、REM添加後の溶存酸素が50ppm以上の時に、介在物個数が急激に増加すること(図1、参照)、また、介在物個数が増加するにしたがって介在物サイズが減少すること(図2、参照)、が判明した。
また、任意の20個の介在物組成をSEM−EDSで調査した結果、MnS、CaO−Al23系介在物、CaO−Al23−REM23系介在物のほか、MnSがCaO−Al23系介在物やCaO−Al23−REM23系介在物の周囲に付着した形態(MnSが一部又は全体を覆う)が観察された。CaO−Al23系介在物、CaO−Al23−REM23系介在物ではSを含有するものも観察された。
REM添加後の溶存酸素が50ppm以上で介在物個数が多い試料の場合、得られた鋼材では、介在物の個数割合で50%以上が、平均組成が%Al23+%CaO+%REM23≧80%で、かつ、(%REM)/(%Al+%Ca+%REM)≧0.5である領域(晶出相)が面積率で40%以上の介在物であった。
以上の実験結果を基に、本発明の技術思想を述べる。
(1)[REM添加を行わず、AlとCa添加を行う場合]
Al添加(=Al脱酸)後の溶存酸素が低いためAl23の凝集合体が進行し、クラスターが生成される。このクラスターは粗大化する分、個数は減少する。そこにCaを添加すると、Al23クラスターを母体に、粗大なAl23−CaO系酸化物が生成する。
前記溶鋼の凝固中にMnSが生成するが、単独で生成、又は、上記のAl23−CaO系酸化物に付着して生成する。付着場所となる介在物個数が少ないため、単独MnSが後述する本発明より多い。また、粗大なAl23−CaO系酸化物上にMnSが付着すると、介在物全体のサイズは、更に粗大となる。
この鋳片を圧延した場合、単独MnSはもちろん、粗大Al23−CaO系酸化物上にMnSが付着した介在物も、Al23−CaO系酸化物は低融点酸化物であるため、延伸し易い。こうして大部分の介在物が長く延伸し、HIC起点が多くなる。
(2)[Al脱酸して溶存酸素を50ppm未満にした後、REM添加とCa添加を行なう場合]
Al脱酸時にAl23クラスターが生成し、その後、REMを添加した時に、単独のREM酸化物、又は、Al23−REM23酸化物が生成する。Al脱酸後の溶存酸素が低いため、REM添加後の介在物は分散し難く、凝集合体が進行し粗大化する。この様に、粗大化する結果、介在物個数は減少する。
また、Ca添加により、既存の介在物がCaOを含有する組成に変化する。凝固中に生成するMnSは単独、又は、前記の粗大化した介在物上に付着して生成する。付着場所となる介在物数が少ないため、単独MnSが後述する本発明より多い。圧延時に単独MnSは容易に延伸するので、HIC性も良くない。
(3)[本発明;REM添加後の溶存酸素を50ppm以上に保ってから、Al脱酸とCa添加を行う場合]
REM添加時にREM酸化物が生成する。ここで、REM添加後の溶存酸素が高いため、REM酸化物の凝集合体が抑制され、微細分散する。
この傾向は、Al予備脱酸の有無に関わらず、REM添加後の溶存酸素が50ppm以上である限り、十分得られることが判明した。その後、Al脱酸を行うと、微細分散したREM酸化物を核にしてAl23が生成するので、Al23を微細分散させることができる。
また、Ca添加後には、上記のREM酸化物を核とした比較的微細なAl23が、Al23−CaO系に改質される。そして、凝固中にMnSが単独、又は、上記酸化物の周囲に生成する。上記酸化物は微細分散しているため、その酸化物上に付着生成するMnSが大部分であり、単独MnSは少ない。従って、延伸が容易な単独MnSが少なく、耐HIC性も良好となる。
また、生成した介在物の平均組成が、断面視において、%Al23+%CaO+%REM23≧80%であり、かつ、(%REM)/(%Al+%Ca+%REM)≧0.5である領域(晶出相)は、圧延時にほとんど延伸しない。そのため、この様な領域を含む介在物の周囲にMnSが付着・生成しても、MnSを含めた介在物全体としては、延伸し難い。
本発明者らのラボ実験結果によれば、上記条件を満たす領域が合計で、MnSを含む介在物全体の面積率の40%以上を占めていれば、圧延後の鋼材中に存在する介在物の最大円相当直径が30μmであることが判明した。
本発明においては、さらに、下記元素を1種以上含有する。
Ti:0.05%以下
強度向上のためにTiを添加してもよい。ただし、Ti含有量が0.05%を超えると、角状のTiNが生成し、靭性が低下するので、上限を0.05%とした。
Nb:0.05%以下
強度向上のためにNbを添加してもよい。ただし、Nb含有量が0.05%を超えると、粗大なNb(C,N)が析出し、靭性の低下を招くので、上限を0.05%とした。
V:0.05%以下
強度向上のためにVを添加してもよい。ただし、V含有量が0.05%を超えると、粗大な析出物が生成し、靭性の低下を招くので、上限を0.05%とした。
Cr:0.5%以下
強度向上のためにCrを添加してもよい。ただし、Cr含有量が0.5%を超えると、靭性の低下を招くので、上限を0.5%とした。
Mo:0.5%以下
強度向上のためにMoを添加してもよい。ただし、Mo含有量が0.5%を超えると、靭性の劣化を招くほか、経済的理由から、上限を0.5%とした。
B:0.0020%以下
焼入れ性、強度向上のためにBを添加してもよい。ただし、B含有量が0.0020%を超えると、靭性の劣化を招くので、上限を0.0020%とした。
Ni:0.5%以下
強度と靭性向上を目的にNiを添加してもよい。ただし、Ni含有量が0.5%を超えると、熱間加工性が低下するので、上限を0.5%とした。なお、トランプエレメントとして、一般に、鋼中に、0.01%程度のNiが含まれている。
Cu:0.5%以下
強度と靭性向上を目的にCuを添加してもよい。ただし、Cu含有量が0.5%を超えると、熱間加工性を損なうので、上限を0.5%とした。なお、トランプエレメントとして、一般に、鋼中に、0.01%程度のCuが含まれている。
次に、本発明の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法について説明する。高炉溶銑を原料とし、転炉精錬の後に、連続鋳造によって鋳片を製造する場合を例にとって説明する。
本発明では、Sが0.0025%以下の低硫鋼を対象としているので、一般には、溶銑脱硫と溶鋼脱硫を併用する。転炉出鋼後にAlを添加して、溶鋼を予備脱酸してもよい。その後、二次精錬工程で溶鋼脱硫を行う場合には、CaO−CaF2を主成分とする脱硫剤を添加して、鋼材の要求に応じた脱硫処理を行う。
REMは、これ以外の元素の組成を調整した後に、また、Al予備脱酸を行う場合は、予備脱酸で生じるAl23を浮上させる時間(例えば、5分以上)を取った後に、添加することが好ましい。
Al23が溶鋼中に多量に残存していると、その後に添加するREMが、Al23の還元に消費され、Sの固定に使われる割合が低下し、MnSの生成を十分に防止できなくなるからである。また、Al予備脱酸を行う場合、REM添加後の溶存酸素濃度が50ppm以上とすることができる範囲で行うことが重要である。
その後、AlとCaを添加する。Alは溶存酸素を脱酸するために添加するので、Al23が溶鋼中に生成する。ここでのAl23の生成量は、あまり多くないので、CaをAlと同時に添加しても、CaがAl23の還元に消費される量も少なく、問題にはならない。ただし、Al23を浮上させる時間(例えば、5分以上)を取った後に、Caを添加すると、CaがAl23の還元に消費される量をより減少できるので好ましい。
ちなみに、Caは、蒸気圧が高いので、歩留を上げるために、Ca−Si合金や、Ca−Ni合金等の形で添加することが一般的である。これらの合金添加では、それぞれの合金ワイヤー添加を用いてもよい。REMは、Fe−Si−REM合金や、ミッシュメタルの形で添加すればよい。
以上により溶製された溶鋼を、連続鋳造機を用いて鋳片を製造し、その後、熱間圧延工程で圧延されて、本発明の鋼材を得ることができる。
高炉溶銑を原料として用い、溶銑予備処理工程で、トーピードカー中の溶銑に、CaOを主成分とする脱硫剤を吹き込み、予備脱硫を行った。この溶銑を、溶鋼量300トンの上底吹き転炉で脱炭処理した。転炉出鋼後に、溶湯中にAlを添加して溶鋼を予備脱酸した。その後、二次精錬工程で溶鋼脱硫を行い、CaO−CaF2を主成分とする脱硫剤を添加して、目標S含有量に応じた脱硫処理を行った。
REMは、種々の元素の組成を調整した後、さらに、Al予備脱酸で生じるAl23を浮上させるため、5分以上の時間を取った後に添加した。その後、AlとCaを添加した。Caは、蒸気圧が高いため、歩留を上げるために、Ca−Si合金の形で添加した。REMはミッシュメタルの形で添加した。
連続鋳造により、厚み240mmの鋳片とした。その後、鋳片を、1250℃×1時間の条件で加熱し、仕上げ温度850℃の条件で、板厚12mmまで厚板圧延を行った。圧下比は20である。
連続鋳造において、タンディッシュから鋳型に溶鋼を注入するための浸漬ノズルの評価を行った。1ヒート(300トン)鋳造後のノズル内面に、介在物層又は介在物を含んだ地金層が、10mm以上、付着していた場合には、ノズル詰まり「有り」とし、それ以外を「無」とした。
製造した鋼材について、介在物の長さを調査した。圧延方向と平行な断面において、光学顕微鏡で、倍率400倍(ただし、介在物形状を詳細に測定する際は、倍率1000倍)で、厚み方向12mm×長手方向10mmの範囲を観察した。圧延方向と平行な断面で観察したのは、この断面が、介在物が最も長く伸延しているからである。
介在物の組成については、操作型電子顕微鏡(SEM)で、円相当径が1μm以上である介在物を30個観察し、SEMに付属するEDS等の組成分析装置で分析した。SEM像では、介在物内部に組成が異なる領域があれば、明暗差で識別することができるので、領域ごとの組成を分析することができる。
そこで、介在物ごとに、平均組成が、%Al23+%CaO+%REM23≧80%であり、かつ、(%REM)/(%Al+%Ca+%REM)≧0.5である領域(晶出相)の面積割合を求めし、この面積割合が40%以上の介在物について、介在物総数に占める個数割合を求めた。
鋼材の耐水素誘起割れ性については、NACE(National Association of Corrosion Engineers)TM0284−2003に規定される方法に従って評価した。試験片は、厚さ10mm、幅20mm、長さ100mmのものを、圧延方向と平行に、各鋼材から10個採取した。試験片は、101.325kPaの硫化水素を飽和させた25℃の(0.5%酢酸+5%食塩)水溶液中に96時間浸漬した。
試験後、各試験片に発生した水素誘起割れの面積を超音波探傷法により測定し、割れ面積率を算出した。試験片1個あたりの割れ面積率は、(各試験片に発生した割れ面積/試験片面積)×100(%)であり、試験片面積は20mm×100mmである。10個の試験片の割れ面積率の平均値が1%以上の場合は×、1%未満の場合を○と評価した。
連続鋳造鋳片の下面側に堆積した介在物起因の内部欠陥については、鋼材の圧延方向と平行な断面を光学顕微鏡で観察し、長さ50μm超の介在物(形状によらず、延伸、塊状、クラスター上のいずれも)が観察された場合は×とし、それ以外の場合は○として評価した。
製造条件及び製造結果を表1及び表2(表1の続き)に示す。本発明範囲から外れる数値にアンダーラインを付している。
Figure 0005541002
Figure 0005541002
表1及び2の発明例1〜15は、本発明条件を満足する鋼材である。平均組成が、%Al23+%CaO+%REM23≧80%で、かつ、(%REM)/(%Al+%Ca+%REM)≧0.5である領域(晶出相)が面積率で40%以上の介在物が、介在物総数に対する割合で、いずれも、50%以上であった。圧延方向に平行な断面における介在物の最大長さは、いずれも、30μm以下であり、内部欠陥、及び、耐HIC性の評価は「○」であった。そして、ノズル詰まりは無く、評価は「無」であった。
表1及び2の比較例1〜8は比較例であり、本発明範囲から外れた条件を含んでいる。比較例1〜5は、REM添加後の溶存酸素が50ppm未満であった。その結果、平均組成が、%Al23+%CaO+%REM23≧80%で、かつ、(%REM)/(%Al+%Ca+%REM)≧0.5である領域(晶出相)が面積率で40%以上の介在物が、介在物総数に対する割合で50%未満であり、介在物が微細分散していないことを示している。
また、介在物最大長さは50μmを超えており、その結果、内部欠陥と耐HIC性は、ともに「×」であった。比較例6は、REM量が少ないため、介在物が延伸し、最大長さは50μmを超え、内部欠陥と耐HIC性は、ともに「×」であった。比較例7と8は、REM量が過剰なため、ノズル詰まりが生じ、内部欠陥も「×」であった。
前述したように、本発明によれば、耐水素誘起割れ性に優れ、かつ、靭性低下を防止して靭性を確保した鋼材を製造し、提供することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.8〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.0025%以下、N:0.005%以下、sol.Al:0.010〜0.11%、Ca:0.0004〜0.0040%、希土類元素(REM):0.0003〜0.0060%と、Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、V:0.05%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.0020%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.5%以下の1種以上とを含み、残部Fe及び不可避不純物からなる鋼鋳片を圧延して得られた鋼材であって、
    (i)上記鋼材中に存在する介在物の最大円相当直径が30μmであり、
    (ii)上記鋼材の圧延方向の断面視において、平均組成が、%Al23+%CaO+%REM23≧80%であり、かつ、(%REM)/(%Al+%Ca+%REM)≧0.5である領域の面積が介在物の全面積の40%以上である介在物が、介在物の個数割合で、50%以上存在している
    ことを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた鋼材。
  2. 質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.8〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.0025%以下、N:0.005%以下、sol.Al:0.010〜0.11%、Ca:0.0004〜0.0040%、希土類元素(REM):0.0003〜0.0060%と、Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下、V:0.05%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、B:0.0020%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.5%以下の1種以上とを含み、残部Fe及び不可避不純物からなる溶鋼を溶製するに際して、
    (i)C、Si、Mn、P、S、Nの組成、及び、Ti、Nb、V、Cr、Mo、B、Ni、Cuの1種以上の組成を調整した後、REM添加後の溶存酸素濃度が50ppm以上となるようにREMを添加し、その後、Al及びCaを添加して、上記成分組成の溶鋼を溶製し、
    (ii)上記溶鋼を鋳造して鋼鋳片を製造し、次いで、圧延して請求項1記載の鋼材を得ることを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
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