JP2005307234A - 耐リジング性,表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents

耐リジング性,表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 Download PDF

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崇史 川越
Junichi Katsuki
淳一 香月
Nobuhisa Hiruhama
修久 蛭浜
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Abstract

【課題】 複合型窒化チタンの形態,分散状態を制御することにより、耐リジング性,表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼板を得る。
【解決手段】 C:0.05%以下,Si:0.01〜2.0%,Mn:2.0%以下,S:0.007%以下,Cr:9〜40%,Al:0.05%以下,Mg:0.0001〜0.001%,Ca:0.001%以下,残部が実質的にFeで、Ti,Nの濃度積(Ti%×N%)が0.0007〜0.004の範囲に調整された組成をもち、Mg/Sの質量比:5以上を満足する酸化物,硫化物の介在物を核とする複合型窒化チタンが鋼断面に10〜100個/mm2の割合で存在している。必要に応じNb:0.8%以下,Zr:0.5%以下,V:0.5%以下,REM(希土類金属):0.1%以下,B:0.05%以下,Mo:2.0%以下,Cu:2.0%以下の一種又は二種以上を含むことができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、冷間加工後にもリジングの発生がなく美麗な表面を維持するフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関する。
SUS430に代表されるフェライト系ステンレス鋼は、加工性,耐食性に優れ比較的安価なため、厨房機器,電気・電子製品,自動車用鋼板等として広範な分野で使用されている。しかし、フェライト系ステンレス鋼の連鋳片を圧延して製造した鋼板に深絞り,曲げ等の冷間加工を施すと、縞状の起伏(リジング)が圧延方向に沿って発生し、製品外観が著しく損なわれることがある。リジングは、連鋳時に生成した粗大な柱状晶組織が熱延工程で破壊されず、粗大なバンド状組織からなる集合組織が残存することに原因があると考えられている。バンド状組織は、加工時の割れや異方性等、加工性低下の原因ともなる。
バンド状組織の抑制には、熱延後に冷延,焼鈍を複数回繰り返して再結晶させる組織微細化が有効とされている。しかし、冷延,焼鈍の繰返しは、工程負荷が大きく製造コストの上昇,生産性の低下を招くため、安価なフェライト系鋼種を大量生産する上では望ましくない。冷延,焼鈍の繰返しによっても、バンド状組織の影響を完全に解消することは容易でない。
そこで、連鋳スラブ等の鋳片に粗大な柱状晶組織が発達しないように、等軸晶率を増大させる溶製方法が開発されている。たとえば、溶鋼温度を比較的低温に維持して鋳造する方法,溶鋼を電磁攪拌しながら鋳造する方法等である。しかし、低温鋳造法は、溶鋼の凝固温度近くまで鋳込み温度を下げて鋳造することを要し、操業中にノズル詰り等のトラブルが発生しやすく、生産性を著しく阻害する。電磁攪拌法は、凝固組織の等軸晶化に有効であるものの高価な設備を必要とし、電磁攪拌の条件によってはホワイトバンド等のマクロ偏析が生じやすい。したがって、耐リジング性を高レベルで改善する上である程度負荷の大きな冷延・焼鈍工程を併用せざるを得ず、結果として製造コストが上昇する。
最近では、フェライト系ステンレス鋼にチタンを添加し、溶鋼中に生成したTiNをフェライトの核生成サイトとして利用する凝固組織の微細化,高等軸晶率化が報告されている。たとえば、所定組成に調製された成分系においてMg/Ca≧0.5(質量比)のMg含有酸化物を含むTiN含有介在物の個数を制御する方法(特許文献1),Mg,Al,Ti含有介在物の個数制御(特許文献2)等が知られている。
特開2001-288542号公報 特開2002-030395号公報
成分調整で介在物を制御しても、高等軸晶率化の効果が安定しない。また、等軸晶の核生成サイトに利用されるTiNが鋳造時のノズル閉塞を引き起こし、冷延板の表面疵や加工割れの発生起点になりやすい。
本発明は、等軸晶の核生成サイトとして有効なTiNについて調査・研究して得られた知見をベースとし、より確実な方法で介在物組成を制御して等軸晶率を高め、耐リジング性,表面性状を改善したフェライト系ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、C:0.05質量%以下,Si:0.01〜2.0質量%,Mn:2.0質量%以下,S:0.007質量%以下,Cr:9〜40質量%,Al:0.05質量%以下,Mg:0.0001〜0.001質量%,Ca:0.001質量%以下,残部が実質的にFeで、Ti,Nの濃度積(Ti質量%×N質量%)が0.0007〜0.004の範囲に調整された組成をもち、Mg/Sの質量比:5以上を満足する酸化物,硫化物の介在物を核とする複合型窒化チタンが鋼断面に10〜100個/mm2の割合で存在することを特徴とする。
フェライト系ステンレス鋼は、必要に応じNb:0.8質量%以下,Zr:0.5質量%以下,V:0.5質量%以下,REM(希土類金属):0.1質量%以下,B:0.05質量%以下,Mo:2.0質量%以下,Cu:2.0質量%以下の一種又は二種以上を含むことができる。
所定組成に調整されたTi含有フェライト系ステンレス溶鋼をMgO含有耐火物でライニングした精錬容器に収容し、真空又は不活性雰囲気中でステンレス溶鋼に脱酸剤を添加し、CaO-Al23を主成分とするスラグをステンレス溶鋼に接触させながらスラグ/メタル間を十分攪拌した後、連続鋳造することにより、Mg/Sの質量比:5以上を満足する酸化物系,硫化物系介在物を核とする複合型窒化チタンが鋼断面に10〜100個/mm2の割合で分散する。
TiN系介在物の存在下でフェライト系ステンレス溶鋼が凝固すると等軸晶率が増大するが、TiN系介在物が高等軸晶率化に及ぼす要因として、(1)TiNが溶鋼に濡れやすいこと,(2)フェライトとの結晶格子の不整合度が小さいTiNを核としてフェライトが晶出しやすくなること,(3)TiNは溶鋼の液相線温度近傍で生成するため浮上・分離し難いこと等が上げられる。したがって、溶鋼の液相線温度近傍でTiNが生成する条件が整ったとき、生成したTiNが介在物として浮上・分離される前にフェライトの核生成サイトとして有効に作用し、高等軸晶率化が図られるといえる。
ところで、TiN系介在物は、TiN単独で生成した単独型(図1a)と酸化物,硫化物等の介在物を核として生成した複合型(図1b)に大別される。等軸晶生成に与える影響は、TiNの核となる酸化物の種類に応じて異なり、MgO・Al23の核が高等軸晶率化に好ましいとされている(非特許文献1)。
鉄と鋼,87(2001),707
しかし、工業ベースの生産では、耐火物,スラグ,脱酸剤由来の脱酸生成物等の影響が大きく、純粋なMgO・Al23を溶鋼中の介在物として生成させることは困難である。そこで、TiNの核となる介在物について詳細に調査・検討した結果、溶鋼成分が特定条件を満足しているとき、工業ベースの生産でもTiNの核となりやすい介在物が生成し、結果として高等軸晶率化が図れることを見出した。
本成分系では、Al,Mg,Ca,Sを量的に規制することにより、TiNの核となるMg/Sの質量比:5以上の酸化物,硫化物系介在物を生成させている。この介在物を核として成長した複合型窒化チタンは、等軸晶の核生成サイトとして有効に働き、等軸晶率を増大させる。
Mg/Sの質量比:5以上の酸化物,硫化物系介在物の生成には、Mgを0.0001〜0.001質量%とし、Al:0.05質量%以下,Ca:0.001質量%以下,S:0.007質量%以下の規制が必要である。Mgが不足し、Al,Ca,Sが過剰な場合、生成する介在物が複合型窒化チタンの核になりがたく、等軸晶の核生成サイトとして有効に作用できず、等軸晶率が低くなる。
Mg/Sの質量比:5以上の酸化物,硫化物系介在物を核とする複合型窒化チタンが生成しても、所定個数以上の複合型窒化チタンが存在しないと効果的な高等軸晶率化を達成できない。高等軸晶率化に必要な複合型窒化チタンの条件を検討したところ、Ti,Nの成分条件としてTi,Nの濃度積(Ti質量%×N質量%)を0.0007〜0.004の範囲に調整することが有効であることが判った。Ti,Nの濃度積:0.0007以上の条件下では、Mg/Sの質量比:5以上の酸化物,硫化物系介在物を核とする複合型窒化チタンが鋼断面で10個/mm2以上の割合で分散し、等軸晶率が増大した。しかし、複合型窒化チタンの過剰分散は表面疵,加工割れ等の欠陥発生原因となるので、Ti,Nの濃度積を0.004以下に抑え複合型窒化チタンの分散割合を100個/mm2以下とすることにより、表面疵,加工割れ等を抑制する。
このように、Al:0.05質量%以下,Mg:0.0001〜0.001質量%,Ca:0.001質量%以下,S:0.007質量%以下,Ti,Nの濃度積:0.0007〜0.004と規制するとき、Mg/Sの質量比:5以上の酸化物,硫化物系介在物を核とする複合型窒化チタンが10〜100個/mm2の割合で鋼断面に分散し、等軸晶率:60%以上のスラブを安定して製造できる。なお、等軸晶率は、鋳造方向に直交する鋳片断面に占める等軸晶帯の面積比率で示す。しかも、高等軸晶率化に有効ではあるが表面疵,加工割れ等の悪影響を及ぼさない分散割合に複合型窒化チタンが調整されるため、耐リジング性,表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼板が得られる。
本発明で使用するフェライト系ステンレス鋼は、たとえば真空雰囲気又は不活性雰囲気下で脱酸剤を添加し、CaO-Al23系を主成分とするスラグを溶鋼に接触させながら、スラグ/メタルを攪拌する精錬方法で製造される。CaF2等の造滓剤を含むスラグも使用可能である。脱酸剤には、Al,Si,Mn,Ti,REM等、或いはそれらの一種又は二種以上を含む合金が使用される。
Mgは、精錬容器のライニング材であるMgO含有耐火物から供給される。耐火物中のMgOが還元されて金属Mgとして溶鋼中に一旦溶解し、溶鋼のMg濃度が0.0001〜0.001質量%となり、溶鋼中の金属MgがTiNの核として好適な介在物の形成源になる。好ましくは、溶鋼に接する容器内面の50面積%以上をMgO含有率:60質量%以上の耐火物でライニングした精錬容器が使用される。
ステンレス溶鋼は、精錬容器内で十分攪拌され、Al:0.05質量%以下,S:0.007質量%以下,Mg:0.0001〜0.001質量%,Ca:0.001質量%以下、Ti,Nの濃度積:0.0007〜0.004に成分調整される。攪拌には、3分以上のガス攪拌が好適である。成分調整されたステンレス溶鋼はタンディッシュを経て連続鋳造されるが、タンディッシュ内の溶鋼過熱度を30〜70℃に維持することによりノズル閉塞が防止される。
次いで、本発明が対象とするフェライト系ステンレス鋼の合金成分,含有量等を説明する。
〔C:0.05質量%以下〕
フェライト系ステンレス鋼の強度上昇に有効な成分であるが、過剰添加すると製造性,耐食性が劣化するので上限を0.05質量%に設定した。
〔Si:0.01〜2.0質量%〕
耐食性,強度向上に有効な成分であり、0.01質量%以上でSiの添加効果がみられる。しかし、過剰添加すると製造性が低下するので、上限を2.0質量%に設定した。
〔Mn:2.0質量%以下〕
Siと同様に耐食性,強度上昇に有効な成分であるが、過剰添加は製造性を低下させるので上限を2.0質量%に設定した。
〔S:0.007質量%以下〕
複合型窒化チタンの核となる介在物の形態に影響を及ぼす成分であり、等軸晶の核生成サイトとして有効な複合型窒化チタンを必要量生成させるためにはS:0.007質量%以下の規制が重要である。S含有量が0.007質量%を超えると、介在物中のMg/Sの質量比が5を下回り、目標とする複合型窒化チタンが生成しなくなる。
〔Cr:9〜40質量%〕
フェライト系ステンレス鋼の耐食性を維持するために必須の合金成分であり、9質量%以上でCrの添加効果がみられる。しかし、40質量%を超える過剰量のCr添加は、製造性を悪化させる。
〔Al:0.05質量%以下〕
複合型窒化チタンの核となる介在物の形態に影響を及ぼす成分であり、等軸晶の核生成サイトとして有効で必要量の複合型窒化チタンを生成させるためにはAl:0.05質量%以下の規制が重要である。Al含有量が0.05質量%を超えると、介在物中のMg/Sの質量比が5を下回り、必要量の複合型窒化チタンが生成しなくなる。
〔Mg:0.0001〜0.001質量%〕
複合型窒化チタンの核となる介在物の形態に影響を及ぼす成分であり、等軸晶の核生成サイトとして有効な必要量の複合型窒化チタンを生成させるためには0.0001質量%以上のMgが必要である。しかし、Mg含有量が0.001質量%を超えると、MgSが生成してしまうためMg/Sの質量比が5未満になり、必要量の複合型窒化チタンが生成しなくなる。MgO:50質量%以上の耐火物でライニングした精錬容器を使用する場合でも、Mg溶解度から溶鋼のMg濃度が0.001質量%以下に抑えられる。
〔Ca:0.001質量%以下〕
複合型窒化チタンの核となる介在物の形態に影響を及ぼす成分であり、等軸晶の核生成サイトとして有効で必要量の複合型窒化チタンを生成させるためにはCa:0.001質量%以下の規制が重要である。Ca含有量が0.001質量%を超えると、介在物中のMg/Sの質量比が5を下回り、目標とする複合型窒化チタンが必要量生成しなくなる。
〔Ti,Nの濃度積:0.0007〜0.004〕
Tiは、複合型窒化チタンを溶鋼中に生成させる上で必要な合金成分である。本成分系では、Al,Mg,Ca,S含有量の規制によってMg/Sの質量比:5以上の酸化物,硫化物系介在物が溶鋼中に分散しているので、この介在物を核として複合型窒化チタンが生成する。等軸晶の核生成サイトとして有効で必要量の複合型窒化チタンを生成させるため、Ti,Nの濃度積(Ti質量%×N質量%)を0.0007以上に調整する。しかし、過剰量のTi,Nが含まれると、TiNがクラスタとなって鋳造時にノズルが閉塞し、或いは製品材に表面疵、加工割れ等が発生しやすくなるので、Ti,N濃度積の上限を0.004に設定した。Ti,N濃度積の上限規制により複合型窒化チタンの分散割合が100個/mm2以下に抑えられ、表面疵,加工割れ等の欠陥発生が解消される。
〔Nb:0.8質量%以下〕
必要に応じて添加される合金成分であり、鋼中のC,Nを固定した析出物となり、耐食性,加工性を改善する作用を呈する。しかし、過剰添加は製造性,加工性を低下させることになるので、添加する場合には0.8質量%以下にNb含有量を調整する。
〔Zr:0.5質量%以下〕
必要に応じて添加される合金成分であり、同様に鋼中のC,Nを固定した析出物となり、耐食性,加工性を改善する作用を呈する。しかし、過剰添加は製造性,加工性を低下させることになるので、添加する場合には0.5質量%以下にZr含有量を調整する。
〔V:0.5質量%以下〕
必要に応じて添加される合金成分であり、同様に鋼中のC,Nを固定した析出物となり、耐食性,加工性を改善する作用を呈する。しかし、過剰添加は製造性,加工性を低下させることになるので、添加する場合には0.5質量%以下にV含有量を調整する。
〔REM:0.1質量%以下〕
必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性を改善する作用を呈する。しかし、過剰添加は却って熱間加工性に悪影響を及ぼすので、添加する場合には0.1質量%以下にREM含有量を調整する。
〔B:0.05質量%以下〕
必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性,製品の二次加工性を改善する作用を呈する。しかし、過剰添加すると熱間加工性,二次加工性が却って劣化するので、添加する場合には0.05質量%以下にB含有量を調整する。
〔Mo:2.0質量%以下〕
必要に応じて添加される合金成分であり、耐食性,強度向上に有効である。しかし、過剰添加は製造性,加工性にとって好ましくないので、添加する場合には2.0質量%以下にMo含有量を調整する。
〔Cu:2.0質量%以下〕
必要に応じて添加される合金成分であり、Moと同様に耐食性,強度向上に有効である。しかし、過剰添加は製造性,加工性を低下させるので、添加する場合には2.0質量%以下にCu含有量を調整する。
〔他の成分〕
以上の合金成分の他に、Y:0.05質量%以下,W:1質量%以下,Ag:0.5質量%以下,Sn:0.5質量%以下,Co:1質量%以下,Zn:0.5質量%以下等の一種又は二種以上を添加しても良い。不純物として含まれるPは、0.05質量%以下に規制されている限り特性に悪影響を及ぼすことはない。
〔複合型窒化チタンの核:Mg/Sの質量比が5以上の介在物〕
等軸晶の核生成サイトとして有効な複合型窒化チタンを分散させる上では、複合型窒化チタンの核となるMg/S≧5(質量比)の酸化物,硫化物系介在物を生成させることが重要である。介在物のMg/S質量比が5未満になると、単独型のTiNが生成しやすくなり、高等軸晶率化が望めない。
Mg/S≧5の質量比は、脱酸剤を用いた脱酸後に3分以上のガス攪拌で十分脱硫し、次いでAl,Mg,Ca,Sを所定範囲に成分調整することにより達成できる。Mg/S≧5(質量比)の介在物は、Mg,S以外にAl,Ca,O,Si,Ti,Mn,Cr等が含まれている酸化物,硫化物であり、Mg/Sの質量比以外、含有量等の制約は加わらない。介在物の組成は、たとえばX線マイクロアナライザを用いた定量分析で測定できる。
〔複合型窒化チタン:10〜100個/mm2以上〕
高等軸晶率化に及ぼす複合型窒化チタンの影響は、10個/mm2以上の割合で複合型窒化チタンが鋼断面に分散するとき顕著になる。しかし、複合型窒化チタンが過剰分散すると圧延時の表面疵や冷間加工時の割れが発生しやすくなるので、複合型窒化チタンの分散割合を100個/mm2以下に抑える。微量のC,O,S,Nb等を含んでいても、高等軸晶率化に及ぼす複合型窒化チタンの影響は変わらない。
複合型窒化チタンの分散割合は、真空又は不活性雰囲気下で脱酸剤を添加する脱酸処理し、流量:100〜500Nl/分でガス攪拌を3分以上継続した後、メタルチタン,フェロチタン等のTi含有原料を添加することにより制御できる。Ti含有原料の添加量を増加させ、或いはN2含有ガスを攪拌ガスに用い長時間,高流量でガス攪拌するほどTi,Nの濃度積が大きくなり、複合型窒化チタンの分散個数が増加する。
複合型窒化チタンは、製造時の熱履歴では再固溶せず、熱延,冷延時に圧延方向に伸ばされにくいため形態が変化しにくい。そのため、どの段階で測定しても複合型窒化チタンの個数に大幅な変動がなく、スラブ,熱延板,冷延板何れの断面観察で得られた複合型窒化チタンの測定個数も指標に使用できる。
表1の組成を持つフェライト系ステンレス鋼(80トン/チャージ)を電気炉,転炉,VOD工程を経て溶製し、スラブに連続鋳造した。VODプロセスの真空精練では、真空度:50〜200Paに維持した真空炉内でポーラスプラグを介して100〜500Nl/分の流量でArを吹き込むことにより溶鋼を攪拌した。
得られたスラブから切り出した試験片の複数断面を観察し、スラブ厚みに対する等軸晶帯の厚みの割合を算出した。算出結果の平均値を等軸晶率として表2に示した。
Figure 2005307234
次いで、常法に従ってスラブを熱延,焼鈍,冷延,仕上げ焼鈍し、冷延焼鈍板を製造した。各冷延焼鈍板について、以下の試験でMg/Sの質量比:5以上の複合型窒化チタンの分散割合,耐リジング性,表面疵発生の有無を調査した。
〔複合型窒化チタンの形態及び分散状態〕
冷延焼鈍板から切り出された試験片の圧延方向,板厚方向に平行な断面を研磨し、X線マイクロアナライザを用いて複合型窒化チタンの核となる介在物を定量分析した。分析結果から、Mg/Sの質量比:5以上の介在物を核とする複合型窒化チタンの全窒化チタンに対する割合を求めた。また、光学顕微鏡で複合型窒化チタンの分散個数をカウントし、単位面積当りの複合型窒化チタンの個数を算出した。そして、全窒化チタンに対するMg/Sの質量比:5以上の介在物を核とする複合型窒化チタンの割合と単位面積当りの複合型窒化チタンの分散個数との積として、Mg/Sの質量比:5以上の介在物を核とする複合型窒化チタンの分散割合を算出した。
〔耐リジング性,表面性状〕
冷延焼鈍板から切り出されたJIS 5号引張り試験片の表面を鏡面研磨し、20%で引張り変形させた後、試験片表面の目視観察でリジング,表面疵の発生状況を調査した。リジングは目視観察で五段階評価したが、リジング判定2以下が実用上問題のないリジングレベルといえる。
表2の調査結果にみられるように、本発明に従った試験番号1〜5では、Mg/Sの質量比:5以上の介在物を核とする複合型窒化チタンが10個/mm2以上で分散しており、スラブも60%以上に高等軸晶率化されていた。冷延焼鈍板も、リジングが実質的にない表面をもち、表面疵も検出されなかった。
他方、本発明で規定した成分条件を満足しない試験番号6,7,9,10では、Mg/Sの質量比:5以上の介在物を核とする複合型窒化チタンの分散割合が10個/mm2未満で、スラブの等軸晶率も60%未満の低い値であった。低い分散割合,等軸晶率は、冷延焼鈍板のリジング判定が3以上と耐リジング性に劣る結果として現れている。
Ti質量%×N質量%が低い試験番号8は、Mgを除く個々の合金成分が本発明で規定した範囲にあるにも拘わらず、Mg/Sの質量比:5以上の介在物を核とする複合型窒化チタンの分散割合が不足している。そのため、スラブの等軸晶率が60%未満と低く、耐リジング性にも劣っていた。逆にTi質量%×N質量%が高すぎる試験番号11は、Mg/Sの質量比:5以上の介在物を核とする複合型窒化チタンの分散割合が100個/mm2以上となり、スラブも高等軸晶率化され、冷延焼鈍板の耐リジング性も良好であったが、複合型窒化チタンの過剰分散に起因して表面疵が発生していた。
以上の対比から、本発明で規定した成分条件を満足させると共にMg/Sの質量比:5以上の酸化物,硫化物系介在物を核とする複合型窒化チタンの分散割合を10〜100個/mm2に調整することにより、高等軸晶率化された断面組織をもつ連鋳鋳片が得られ、耐リジング性,表面性状の良好な冷延焼鈍板を製造できることが判る。
Figure 2005307234
以上に説明したように、本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、耐リジング性,表面性状に優れているので、深絞り,曲げ加工等の冷間加工を施しても皺状の起伏や表面疵の発生なく目標とする製品形状に成形できる。そのため、ステンレス鋼本来の優れた外観を活用して厨房機器,電気・電子機器,自動車用材料等、広範な分野で使用される。
金属組織に分散している単独型窒化チタン(a),複合型窒化チタン(b)を対比した模式図

Claims (3)

  1. C:0.05質量%以下,Si:0.01〜2.0質量%,Mn:2.0質量%以下,S:0.007質量%以下,Cr:9〜40質量%,Al:0.05質量%以下,Mg:0.0001〜0.001質量%,Ca:0.001質量%以下,残部が実質的にFeで、Ti,Nの濃度積(Ti質量%×N質量%)が0.0007〜0.004の範囲に調整された組成をもち、Mg/Sの質量比:5以上を満足する酸化物,硫化物の介在物を核とする複合型窒化チタンが鋼断面に10〜100個/mm2の割合で分散していることを特徴とする耐リジング性,表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
  2. 更に、Nb:0.8質量%以下,Zr:0.5質量%以下,V:0.5質量%以下,REM(希土類金属):0.1質量%以下,B:0.05質量%以下,Mo:2.0質量%以下,Cu:2.0質量%以下の一種又は二種以上を含む請求項1記載のフェライト系ステンレス鋼板。
  3. MgO含有耐火物をライニングした精錬容器にTi含有フェライト系ステンレス溶鋼を収容し、真空又は不活性雰囲気中でステンレス溶鋼に脱酸剤を添加し、CaO-Al23を主成分とするスラグをステンレス溶鋼に接触させながらスラグ/メタル間を攪拌した後、連続鋳造することにより、Mg/Sの質量比:5以上を満足する酸化物系,硫化物系介在物を核とする複合型窒化チタンを鋼断面に10〜100個/mm2の割合で分散させることを特徴とする耐リジング性,表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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