以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図10に示す第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る前部車体構造を示す平面図であり、図2は、同側面図である。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示す。
本実施形態に係る車両Vは、図1に示すように前側に衝撃吸収空間1が設けられている。該衝撃吸収空間1は、例えば、車両Vがエンジンを搭載する車両であれば、エンジンルームに設定され、エンジンおよびトランスミッションからなるパワープラントが搭載される。一方、電気自動車や燃料電池自動車のようにエンジンを搭載しない車両であれば、荷室空間に設定されるか、または、衝撃吸収空間1の車両前後方向の長さが縮小され、前輪よりも前側のオーバーハング長が短く設定される。
衝撃吸収空間1の後側は、ダッシュパネル2によって仕切られており、このダッシュパネル2の後側が車室3とされ、その車室3の下側はフロアパネル4によって仕切られている。このフロアパネル4は、ダッシュパネル2の下端縁部から、後方へ向かって下方へ傾斜して車体の下端部まで達した後に、そこから略水平に後方へ延びるように形成され、その車幅方向両端縁部には、図1、図2示すように、該縁部に沿って延びるサイドシル5がそれぞれ設けられている。
そして、サイドシル5の前端部には、後述する開口部6を開閉可能に覆うドアを支持するためのヒンジピラー7が設けられると共に、該ヒンジピラー7の上端部からは、車両後方に向かってフロントピラー8が延びている。車両Vでは、これらサイドシル5、ヒンジピラー7、フロントピラー8等により、前席の乗員が乗降するための開口部6が形成されている。
また、衝撃吸収空間1の車幅方向両側には、ダッシュパネル2からそれぞれ車両前方へ突出して延びる左右一対のフロントサイドフレーム9、9が設けられている。この左右一対のフロントサイドフレーム9、9は、それぞれ略矩形状の閉断面を有し、車体の下端部からフロアパネル4の傾斜部に沿って前方の衝撃吸収空間1まで延びている。
上述した左右一対のフロントサイドフレーム9、9は、図1、図2に示すように、その車体外方の側面において、車両前後方向中間部および後端部に、それぞれ上下に亘って車両内側に窪んだ折曲予定部としてのビード9a、9bが形成されると共に、車体内方の側面には、ビード9a、9bとの間の位置に、上下および車両前後方向に亘って車両外側に窪んだ折曲予定部としてのビード9cが形成されている。
フロントサイドフレーム9では、ビード9aより前側の部位が、車両前方からの衝突荷重入力時に軸方向に圧縮変形するクラッシュ領域9Aにより構成される一方、ビード9aより後側、つまりはクラッシュ領域9Aの後側の部位が、車両前方からの衝突荷重入力時に車幅方向外側に折れ曲がるベント領域9Bにより構成されている。
また、左右一対のフロントサイドフレーム9、9の後端側は、図1に示すようにフロアパネル4の下面に沿って後方へ延びるように設けられた左右一対のフロアフレーム10、10の前端側にそれぞれ連続している。このフロアフレーム10、10は、上方が開放したコ字状断面を有し、その上端部が前記フロアパネル4の下面に接合されている。また、左右一対のフロアフレーム10、10に挟まれた略中央位置に対応するフロアパネル4には、その前端から後端に亘るように車室3側へ向かって膨出したフロアトンネル部11が形成されている。
一方、前記フロントサイドフレーム9、9のそれぞれの前端側には、車幅方向および上下方向にそれぞれ延出した矩形のフランジ部12、12が設けられている。このフランジ部12、12には、後端部にこのフランジ部12、12と略同形状のフランジ部13、13を有するクラッシュボックス14、14が取付けられている。
また、クラッシュボックス14、14は、前側ほど小さい矩形断面を有するように形成され、車両前突時の衝撃により車両前方から圧縮荷重が入力されると、車両前後方向に圧縮変形し、このことにより衝撃を吸収するものである。このクラッシュボックス14、14は、フロントサイドフレーム9、9の前端部分、さらに詳しく言えば、クラッシュ領域9Aの前端部分の一部を形成している。
さらに、この左右両側のクラッシュボックス14、14の前端部には、バンパーレインフォースメント15の車幅方向両端部がそれぞれ固定されている。本実施形態では、主にダッシュパネル2、左右一対のフロントサイドフレーム9、9、およびバンパーレインフォースメント15により衝撃吸収空間1が区画されている。
また、本実施形態では、衝撃吸収空間1内のフロントサイドフレーム9、9間に衝撃吸収部材16が設けられており、この衝撃吸収部材16は、車幅方向に延びてフロントサイドフレーム9、9を連結している。そして、衝撃吸収部材16は、その車幅方向両端部が、ベント領域9Bに連結されており、さらに詳しく言えば、ビード9a、9b間に位置するビード9cの近傍に接合されている。
図3は、衝撃吸収部材16を示す斜視図であり、図4は、図3のA−A線矢視断面図である。衝撃吸収部材16は、図1〜図4に示すように複数の円筒部材16A、16B1、16B2、…が軸方向に連結することにより構成されている。
このうち、円筒部材16Aは、衝撃吸収部材16においてその軸方向両端に配設されるものであり、フロントサイドフレーム9の車体内方の側面に接合されるものである。また、円筒部材16Aは、図3、図4に示すように、その一端側にフロントサイドフレーム9に接合される平面状のフランジ部16aが形成されると共に、断面の直径が略一定の大径(拡幅)部16b、および、該大径部16bよりも直径が縮小された小径(細幅)部16cが形成されている。そして、大径部16bと小径部16cとの間は、断面の直径が軸方向において徐々に変化するようにテーパー状に形成されている。
円筒部材16B1、16B2、…は、左右の円筒部材16A間に複数配設されて両者を連結するものである。円筒部材16B1、16B2、…は、大径部16d、16fと小径部16e、16gとが軸方向において交互に形成されると共に、大径部16d、16fと小径部16e、16gとの間は、断面の直径が軸方向において徐々に変化するようにテーパー状に形成されている。
衝撃吸収部材16では、円筒部材16Aと隣接する円筒部材16B1の大径部16d側が、円筒部材16Aの小径部16c側の内部空間に挿入され、両者が隙間無く重なっていることで円筒部材16A、16B1が連結状態にあり、さらには、円筒部材16B1と隣接する円筒部材16B2の大径部16d側が、円筒部材16B1の小径部16g側の内部空間に挿入され、両者が隙間無く重なっていることで円筒部材16B1、16B2が連結状態にある。
そして、円筒部材16B2と隣接する円筒部材16B3の大径部16d側は、円筒部材16B2の小径部16g側の内部空間に挿入されており、両者が隙間無く重なっていることで円筒部材16B2、16B3が連結状態にある。
このように、衝撃吸収部材16では、円筒部材16A、16B1、…の小径部16c、16g側の内部空間に、隣接する円筒部材16B1、16B2、…の大径部16d側を挿入するという上述の配置を軸方向に沿って繰り返すことで、1つの衝撃吸収部材16を構成している。
また、各円筒部材16A、16B1、16B2…では、円筒部材16B1、16B2、…を抜く方向に沿って断面の直径が縮小されるように(細幅となるように)テーパの傾斜が設定されている。このため、通常時、円筒部材16B1、16B2、…の大径部16d側は、円筒部材16A、16B1、…の小径部16c、16gにより、円筒部材16A、16B1、…から抜ける方向に相対移動することが規制されている。
図5、図6は、衝撃吸収部材16の製造方法の一例を説明するための説明図である。図1〜図4に示す衝撃吸収部材16を製造するにあたっては、先ず、図5に示すように小さい円錐台状筒部材16X1、16X2の小径部16e1側を、大きい円錐台状筒部材16Y1、16Y2の大径部16b1、16f1側に挿入して互いを重ねた状態にする。
そして、円錐台状筒部材16X1、16Y1を重ねたものについては、図6に示すように、その大径部16b1を、予めフランジ部16aが取付けられた円筒部材16A1の大径部16b2に接合する。これにより、円筒部材16Aが生成される。
一方、円錐台状筒部材16X1の小径部16e1を、テーパの向きが逆になるように配置された円錐台状筒部材16Z1の小径部16e2に接合する。さらに、円錐台状筒部材16X2、16Y2を重ねたものについては、図6に示すようにその大径部16f1を円錐台状筒部材16Z1の大径部16f2に接合する。これにより、円筒部材16Bが生成される。
次に、円錐台状筒部材16X2の小径部16e1を第2の円錐台状筒部材16Z2の小径部16e2(ここでは不図示)に接合し、以降、上述した円錐台状筒部材16X2、16Y2、16Z1、16Z2の場合と同様の作業を繰り返す。これにより、複数の円筒部材16B1、16B2、…を生成することができ、最終的に1つの衝撃吸収部材16を生成することができる。なお、衝撃吸収部材16の軸方向中央部では、例えば、円錐台状筒部材16Xm(m:自然数)を挿入せずに、2つの円筒部材16Bn(n:自然数)を左右対称に配置して、小径部16g同士を接合する。
ここで、衝撃吸収部材16の製造では、円筒部材16A1、円錐台状筒部材16Y1、16X1、16Z1を接合する際、レーザ溶接等によって上記各小径部、大径部の略全周を接合するのが好ましい。
図7、図8は、それぞれ車両Vの前突時の状態を示す平面図、側面図であり、障害物αと正面衝突した状態を示している。図7、図8に示すように、車両Vが障害物αと正面衝突すると、本実施形態では、バンパーレインフォースメント15への衝突荷重入力により、フロントサイドフレーム9のクラッシュ領域9Aが軸方向に圧縮変形し、該領域9Aが車両前後方向に潰れる。
この時、クラッシュ領域9Aでは、車両前方から衝突荷重が入力されることにより、先ず、クラッシュボックス14が圧縮変形し、これが車両前後方向に潰れる。そして、さらなる衝突荷重の入力により、クラッシュボックス14とフロントサイドフレーム9のビード9aとの間の残りの領域が、クラッシュボックス14の場合と同様に圧縮変形して車両前後方向に潰れる。
次に、フロントサイドフレーム9では、さらなる衝突荷重の入力により、ベント領域9Bにおいて折れ曲がりが生じる。ベント領域9Bでは、上述したように、ビード9a、9bが車両内側に窪んでいる一方、両ビード9a、9b間に形成されたビード9cが車両外側に窪んでいることにより、上記衝撃荷重の入力時には、ベント領域9Bが車両外側に折れ曲がる。この時、ビード9cと対応する部位では、該ビード部9cにより車両外側への折れ曲がりが最も促進されるようになっており、これによって、ベント領域9Bが折れ曲がった時には、ビード部9cと対応する部位が、図示のように最も車両外側に位置する頂点となる。
本実施形態では、車両Vの前突時、車両前方から衝突荷重が入力されると、フロントサイドフレーム9のクラッシュ領域9Aが車両前後方向に圧縮変形することによって衝撃を吸収することが可能であり、さらには、ベント領域9Bが車両外側に折れ曲がることによってさらに衝撃を吸収することが可能になっている。
また、本実施形態の場合、ベント領域9Bが車両外側へ折れ曲がるのに伴い、衝撃吸収部材16では、ビード9cの近傍に連結された車幅方向両端部が車両外側に引張られることになる。この時、衝撃吸収部材16では、車幅方向両端の円筒部材16Aが車両外側に引張られることで、図9に示すように小径部16c側の内部空間に挿入された円筒部材16B1の大径部16dが、小径部16cを拡開しながら外側へ抜ける方向に相対移動する。
さらに、円筒部材16B1と円筒部材16B2との間では、円筒部材16B1が車両外側に引張られることにより、小径部16g側の内部空間に挿入された円筒部材16B2の大径部16dが、小径部16gを拡開しながら外側へ抜ける方向に相対移動する。そして、円筒部材16B2と円筒部材16B3との間においても同様の現象が起き、さらに隣接する円筒部材16B4(ここでは不図示)、…においても上述した現象が連鎖的に発生する。
このように、衝撃吸収部材16では、ベント領域9Bが車両外側へ折れ曲がることにより、円筒部材16Aと円筒部材16B1との間、円筒部材16B1と円筒部材16B2との間、円筒部材16B2と円筒部材16B3との間、…において、各円筒部材16B1、16B2、…が、隣接する円筒部材16A、16B1、16B2、…から抜ける方向に相対移動するようになっており、これによって、衝撃吸収部材16が、図7に示すように、全体的に軸方向つまりは車幅方向に伸長するようになっている。
ここで、円筒部材16B1が円筒部材16Aか抜ける方向に相対移動する時には、円筒部材16B1の大径部16dが、上述したように、円筒部材16Aの小径部16cを拡開しながら移動するため、両者間には摩擦が生じ、さらには小径部16cを拡開するためにエネルギが消費される。そして、円筒部材16B2、…が円筒部材16B1、…から抜ける方向に相対移動する時には、同様に円筒部材16B2、16B3、…の大径部16dが、円筒部材16B1、16B2、…の小径部16gを拡開しながら移動するため、両者間には摩擦が生じ、小径部16gを拡開するためにエネルギが消費される。
従って、車両Vの前突によってベント領域9Bが、図7、図8に示すように折れ曲がった時には、各円筒部材16B、16B2、…隣接する円筒部材16A、16B1…から抜ける方向に相対移動することにより、衝撃吸収部材16は車幅方向に伸長し、この時、衝突荷重のエネルギの一部は、上記摩擦や小径部16c、16gの拡開のために消費されるようになっている。その結果、衝撃吸収部材16による衝撃吸収が可能になっている。
図10は、車両Vの前突時の状態を示す平面図であり、車両Vの左側前部が障害物βとオフセット衝突した状態を示している。図10に示すように、車両Vが障害物βとオフセット衝突すると、オフセット衝突した車両Vの左側前部では、正面衝突時と同様、バンパーレインフォースメント15への衝突荷重入力により、フロントサイドフレーム9のクラッシュ領域9Aが圧縮変形すると共に、ベント領域9Bが車両外側に折れ曲がる。
そして、ベント領域9Bが車両外側へ折れ曲がるのに伴い、衝撃吸収部材16では、その車幅方向左側部が車両外側に引張られる。このため、衝撃吸収部材16は、正面衝突時と同様に車幅方向に伸長して衝撃を吸収することができる。
このように、本実施形態では、ベント領域9Bに折曲予定部としてのビード部9a〜9cが形成されることにより、フロントサイドフレーム9は、車両前方からの荷重入力時に車両外側への折れ曲がりを可能とする折れ構造を有している。そして、このフロントサイドフレーム9の車両外側への折れ曲がりに伴って、衝撃吸収部材16が伸長することにより、該衝撃吸収部材16が衝撃を吸収するように構成されている。このような構成により、ベント領域9Bが折れ曲がった時には、該ベント領域9Bの折れ曲がりそのものによって車両前突時の衝撃を吸収するだけでなく、衝撃吸収部材16の伸長によっても上記衝撃を吸収することができ、フロントサイドフレーム9、衝撃吸収部材16の協働によって衝撃を効果的に吸収することができる。
ところで、衝撃吸収空間1内にエンジンが搭載される車両の場合、一般的にエンジンがエンジンマウントを介してフロントサイドフレームに弾性支持されるため、車両前突時には、衝突荷重をフロントサイドフレームやエンジンマウントを介して車両後方に分散させることが可能である。しかしながら、電気自動車や燃料電池自動車では、エンジンが搭載されないため、上述したようにエンジンマウントを介して衝突荷重を分散させることはできない。
そこで、電気自動車や燃料電池自動車に上述した衝撃吸収部材16を配設した場合を考えてみる。衝撃吸収部材16は、エンジンの搭載の有無に関わらず衝撃を吸収することができるものである。従って、この場合、エンジンマウントを介して衝突荷重を分散させる代わりに、衝撃吸収部材16の伸長によって衝撃を吸収することができ、車室6内の乗員を確実に保護することができる。このような理由から、衝撃吸収空間1に衝撃吸収部材16を配設した本実施形態の構造は、電気自動車や燃料電池自動車に適用するのがより好適であると言える。
また、本実施形態では、フロントサイドフレーム9が、車両前方からの衝突荷重入力時に軸方向に圧縮変形することによって衝撃を吸収可能なクラッシュ領域9Aと、該クラッシュ領域9Aの後方に設けられ、上記衝突荷重入力時に車両外側に折れ曲がることによって衝撃吸収可能なベント領域9Bとから構成されることにより、衝突荷重の入力初期の段階では、先ず、クラッシュ領域9Aにて衝撃を吸収でき、その後は、該衝撃をベント領域9Bで確実に吸収することができる。
また、特に、衝撃吸収部材16が、ベント領域9Bに連結されることで、ベント領域9Bが車両外側に折れ曲がった時、衝撃吸収部材16を確実に車幅方向に伸長させることができる。このため、衝撃吸収部材16で確実に衝撃を吸収することができる。
また、ベント領域9Bのうち、荷重入力によってこれが折れ曲がった時に最も車両外側に位置する頂点、すなわちビード部9cに対応する部位の近傍に衝撃吸収部材16が連結されることで、ベント領域9Bが車両外側に折れ曲がった時には、衝撃吸収部材16をより確実に、かつ、より長く車幅方向に伸長させることができ、衝撃吸収部材16による衝撃吸収をより確実に行うことができる。
また、衝撃吸収部材16では、一方の円筒部材16A、16B1…のテーパ状部位の内部空間に、隣接する他方の円筒部材16B1、16B2、…のテーパ状部位が挿入され、他方の円筒部材16B1、16B2、…の大径部16dは、小径部16c、16gによって円筒部材16A、16B1…から抜ける方向に相対移動することが規制されている。
一方、所定の荷重入力時には、各小径部16c、16gが拡開変形することにより、他方の大径部16d、…が、一方の円筒部材16A、16B1、…から抜ける方向へ移動し、衝撃吸収部材16が伸長するようになっている。これにより、ベント領域9Bが折れ曲がって衝撃吸収部材16が伸長する時には、衝突荷重のエネルギの一部を、円筒部材16A、16B、16B2、…同士の摩擦や小径部16c、16gの拡開のために消費させることができ、その結果、衝撃吸収部材16による衝撃吸収が可能になる。
(第2実施形態)
次に、図11〜図15に示す第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、断面が円形をなす円筒部材16A、16B1、…によって衝撃吸収部材16を構成したが、本発明は円筒部材によって衝撃吸収部材を構成することに必ずしも限定されるものではない。例えば、図11〜図15に示すように、断面が多角形(ここでは四角形)をなす筒部材56A、56B1、56C1、…によって衝撃吸収部材56を構成してもよい。なお、図11〜図15において、上述した第1実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、衝撃吸収部材56を示す斜視図であり、図12は、図11のB−B線矢視断面図である。衝撃吸収部材は、図11、図12に示すように断面が略正方形をなす複数の筒部材56A、56B1、56C1、…が軸方向に連続することにより構成されている。
このうち、円筒部材56Aは、衝撃吸収部材56においてその軸方向両端に配設されるものであり、フロントサイドフレーム9の車両外方の側面に接合されるものである。また、円筒部材56Aは、その一端側にフロントサイドフレーム9に接合される平面状のフランジ部56aが形成されると共に、断面積が略一定の拡幅部56b、および、該拡幅部56bよりも断面積が縮小された細幅部56cが形成されている。そして、拡幅部56bと細幅部56cとの間は、断面積が軸方向において徐々に変化するようにテーパ状に形成されている。
筒部材56B1、56C1、…は、左右の筒部材56Aの間に交互に複数配設されて両者を連結するものである。筒部材56B1、…は、拡幅部56d、56fと細幅部56eとが軸方向において交互に形成されると共に、拡幅部56d、56fと細幅部56eとの間は、断面積が徐々に変化するようにテーパ状に形成されている。一方、筒部材56C1、…は、細幅部56g、56iと拡幅部56hとが軸方向において交互に形成されると共に、細幅部56g、56iと拡幅部56hとの間は、断面積が徐々に変化するようにテーパ状に形成されている。
衝撃吸収部材56では、筒部材56Aと隣接する筒部材56B1の拡幅部56d側が、筒部材56Aの細幅部56c側の内部空間に挿入され、両者が隙間無く重なっていることで筒部材56A、56B1が連結状態にあり、さらには、拡幅部56f側が、隣接する筒部材56C1の細幅部56g側の内部空間に挿入され、両者が隙間無く重なっていることで筒部材56B、56Cが連結状態にある。
そして、筒部材56C1と隣接する筒部材56B2の拡幅部56d側は、筒部材56C1の細幅部56i側の内部空間に挿入されており、両者が隙間無く重なっていることで筒部材56C1、56B2が連結状態にある。
このように、衝撃吸収部材56では、筒部材56A、56C1の細幅部56c、56g、56i側の内部空間に、隣接する筒部材56B1の拡幅部56d、56f側を挿入するという上述の配置を軸方向に沿って繰り返すことで、1つの衝撃吸収部材56を構成している。
また、各筒部材56A、56B1、56C1…では、筒部材56B1、56C1、…を抜く方向に沿って細幅となるようにテーパの傾斜が設定されている。このため、通常時、筒部材56B1、56C1の拡幅部56d、56f側は、筒部材56A、56C1、…の細幅部56c、56g、56iにより、筒部材56A、56B1、…から抜ける方向に相対移動することが規制されている。
図13、図14は、衝撃吸収部材56の製造方法の一例を説明するための説明図である。図11、図12に示す衝撃吸収部材56を製造するにあたっては、先ず、図13に示すように小さい角錐台状筒部材56X1、56X2、56X3の細幅部56e1、56e2、56e1側を、大きい角錐台状筒部材56Y1、56Y2、56Y3の拡幅部56b1、56h1、56h2側に挿入して互いを重ねた状態にする。
そして、角錐台状筒部材56X1、56Y1を重ねたものについては、図14に示すようにその拡幅部56b1を、予めフランジ部56aが取付けられた筒部材56A1の拡幅部56b2に接合する。これにより、筒部材56Aが生成される。
一方、角錐台状筒部材56X1の細幅部56e1を、角錐台状筒部材56X2の細幅部56e2に接合する。これにより、筒部材56B1が生成される。さらに、角錐台状筒部材56X2、16Y2を重ねたものについては、図14に示すように、その拡幅部56h1を角錐台状筒部材56Y3の拡幅部56h2に接合する。これにより、筒部材56C1が生成される。以降、上述した角錐台状筒部材56X1〜56X3、56Y1〜56Y3の場合と同様の作業を繰り返す。これにより、複数の筒部材56B1、…、56C1、…を生成することができ、最終的に1つの衝撃吸収部材56を生成することができる。
ここで、衝撃吸収部材56の製造では、筒部材56A1、角錐台状筒部材56Y1、56X1、56X2、…を接合する際、レーザ溶接によって上記拡幅部、細幅部の略全周を接合してもよいし、または拡幅部、細幅部の一方の縁部にフランジ部を一体成形して、これを他方にスポット溶接またはレーザ溶接することによって両者を接合してもよい。
本実施形態の場合、フロントサイドフレーム9のベント領域9B(図1等参照)が車両外側へ折れ曲がるのに伴って衝撃吸収部材56の車幅方向両端部が車両外側に引張られた時、衝撃吸収部材56では、車幅方向両端の筒部材56Aが車両外側に引張られることで、図15に示すように、細幅部56c側の内部空間に挿入された筒部材56B1の拡幅部56dが、細幅部56cを拡開しながら外側へ抜ける方向に相対移動する。
さらに、筒部材56B1と筒部材56C1との間では、筒部材56B1が車両外側に引張られることにより、細幅部56g側の内部空間に挿入された筒部材56B1の拡幅部56fが、細幅部56gを拡開しながら外側へ抜ける方向に相対移動する。そして、筒部材56C1と筒部材56B2との間では、筒部材56B2の拡幅部56dが、細幅部56iを拡開しながら外側へ抜ける方向に相対移動し、さらに隣接する筒部材56C2、56B3(ここでは不図示)、…との間においても上述した現象が連鎖的に発生する。
このように、衝撃吸収部材56では、ベント領域9Bが車両外側へ折れ曲がることにより、筒部材56Aと筒部材56B1との間、筒部材56B1と筒部材56C1との間、筒部材56C1と筒部材56B2との間、…において、各筒部材56B1、56B2、…が、隣接する筒部材56A、56C1、…から抜ける方向に相対移動するようになっており、これによって、衝撃吸収部材56が、全体的に車幅方向に伸長するようになっている。
本実施形態の場合、車両Vの前突によってベント領域9Bが折れ曲がった時には、各筒部材56B1、56B2、…が隣接する筒部材56A、56C1…から抜ける方向に相対移動することにより、衝撃吸収部材56は車幅方向に伸長し、この時、衝突荷重のエネルギの一部は、筒部材56A、56B1、56C1、…同士の摩擦や細幅部56c、56g、56iの拡開のために消費されるようになっている。その結果、衝撃吸収部材56による衝撃吸収が可能になっている。
なお、その他の作用効果は、上述した第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、図16、図17に示す第3実施形態について説明する。図16は、本発明の第3実施形態に係る衝撃吸収部材66を示す斜視図であり、図17は、車両Vの前突時における衝撃吸収部材66の状態を示す斜視図である。図16、図17において、上述した実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、衝撃吸収部材66が、断面略ハット状に形成されており、その車両前後方向両側のフランジ部66a(図では一方のみ図示)が、車幅方向両端部でフロントサイドフレーム9に接合されている。
また、衝撃吸収部材66の角部には、車幅方向の所定間隔毎に開口部66bが形成されており、開口部66bが形成されていない側面および上面には、車幅方向に収縮した状態で内向きに折り畳まれた折り畳み部66cが形成されている。なお、折り畳み部66cの折り畳みの向きとしては、外向きであってもよい。
さらに、開口部66b及び折り畳み部66cと対応する位置では、フランジ部66aが一旦切断され、隣接するフランジ部66aの端部同士が上下に重なった状態で互いに接合されている。この接合部位は、伸長制御部66dを構成しており、通常時は、折り畳み部66cにおける伸長が伸長制御部66dによって規制され、折り畳み状態が保持されるようになっている。
本実施形態の場合、車両Vの前突によってフロントサイドフレーム9のベント領域9B(図1等参照)が車両外側へ折れ曲がり、衝撃吸収部材66に所定の荷重が入力されると、図17に示すように伸長制御部66dでは、フランジ部66a同士の連結が強制的に解除されるようになっている。
この時、折り畳み部66cでは、その折り畳み状態が解除されるため、折り畳み部66cが車幅方向に伸長し、衝撃吸収部材66は、全体的に車幅方向に伸長することになる。
本実施形態では、衝撃吸収部材66が車幅方向に伸長する時、衝突荷重のエネルギの一部が折り畳み部66cの伸長のために消費されるようになっており、その結果、衝撃吸収部材66による衝撃吸収が可能になっている。
なお、その他の作用効果は、上述した第1実施形態と同様である。
(第4実施形態)
なお、本発明は、少なくともフロントサイドフレーム9のベント領域9Bが車幅方向外側に折れ曲がった時、衝撃吸収部材の伸長によって衝突荷重のエネルギを消費できるように構成されていればよく、例えば、図18に示すようにシリンダ76a内に流体が充填された油圧ダンパやガスダンパ等のダンパ部材によって衝撃吸収部材76を構成してもよい。
本実施形態の場合、通常時は、衝撃吸収部材76が収縮状態に保持される一方、車両Vの前突によってフロントサイドフレーム9のベント領域9Bが車幅方向外側に折れ曲がった時には、衝撃吸収部材76の伸長によって衝撃を吸収することが可能である。
なお、その他の作用効果は、上述した第1実施形態と同様である。
(その他の実施形態)
また、衝撃吸収部材としては、例えば、クラッシュボックス14に相当する筒部材を予め軸方向に圧縮変形させたものであってもよい。この場合、車両前突によってフロントサイドフレーム9のベント領域9Bが車幅方向外側に折れ曲がると、筒部材は、車幅方向外側への引張りにより車幅方向に伸長して圧縮変形前の状態に戻ろうとする。この時、筒部材の伸長によって衝突荷重のエネルギの一部が消費されるため、結果として筒部材による衝撃吸収が可能になる。
また、衝撃吸収部材としては、例えば、大径(拡幅)部、小径(細幅)部を長手方向において交互に成形することにより側面部を蛇腹状に形成した単一の筒部材であってもよい。
また、折曲予定部を含む折れ構造に関し、ビード部9a、9cを形成する代わりに、折曲予定部を薄肉部等の脆弱部で構成してもよい。また、特開2009−137379号公報に開示されているように、フロントサイドフレームと補強部材とが接続された接続部と他の部位との剛性差によって折曲予定部を構成してもよい。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、筒部材は、円筒部材16A、16B1、16B2、16B3…、筒部材56A、56B1、56C1、56B2…に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。