JP5515403B2 - 食品用品質改良剤および食品 - Google Patents
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Description
例えば、油脂、有機酸モノグリセリド、ジグリセリド、乳化剤、糖類、及び水を特定の割合で混合した乳化油脂組成物を、冷凍食品に添加することにより、冷凍保存後の柔らかさ、しっとり感を維持すると共に、食感、風味などの低下を防止する方法が知られている(特許文献1参照)。
また、油脂、デキストリン類、及び乳化剤を含有する水中油型乳化油脂組成物を、澱粉質食品生地に練り込むことにより、冷凍、冷蔵保存時の硬化、乾燥、食感低下などの澱粉老化現象を抑制する方法も知られている(特許文献2参照)。
類、麺類(冷凍麺、乾麺、即席フライ麺等)などの澱粉含有食品、餅、餡、団子等の和菓子類、惣菜類、水産練製品類、冷凍餃子等の冷凍食品などの各種食品に添加した際に、加工や調理直後の食感や風味を長期間に亘って維持できる食品用品質改良剤を提供することにある。
8/068890号パンフレット参照)。更に、本発明者は、上記組成物にグルコマンナ
ンを含有させれば、より優れた食品用品質改良剤と成り得ることを見出し、本発明に到達した。
[1]乳化剤、ゲル形成物質および水を含有し、該ゲル形成物質が、グルコマンナンであり、該乳化剤が、有機酸モノグリセリドと、有機酸モノグリセリド以外の乳化剤とを含有し、該有機酸モノグリセリド以外の乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルであり、ゲル形成物質の含有量が0.01〜10質量%であり、有機酸モノグリセリドの含有量が0.01〜50質量%であり、有機酸モノグリセリド以外の乳化剤の含有量が0.001〜50質量%であり、水の含有量が30〜95質量%であり、かつ、有機酸モノグリセリドがラメラ構造体を形成することを特徴とする食品用品質改良剤。
[2]さらに、糖類を含有する上記[1]に記載の食品用品質改良剤。
[3]有機酸モノグリセリドが、有機酸の酸無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られる上記[1]又は[2]に記載の食品用品質改良剤。
[4]有機酸モノグリセリドを構成する有機酸が、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸及びフマル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、上記[1]〜[3]の何れかに記載の食品用品質改良剤。
[5]上記[1]〜[4]の何れかに記載の食品用品質改良剤を含有することを特徴とする食品。
(1)食品の加熱、冷凍などのヒートショックでも水を保持し、熱による障害を少なくする。
(2)小麦粉、及び澱粉食品の生地物性を改良し、多くの水を添加しても機械耐性を向上
させる。
(3)畜肉、及び魚肉の臭のマスキング効果があり、素材の味を生かす。
(4)食品の低カロリー化(油脂代替)が可能になる。
(5)食品の美味しさを向上させる。
また、ラメラ構造を形成する乳化剤のほかに、ラメラ構造を形成しない乳化剤(以下、その他の乳化剤という場合がある。)を含有することが好ましい。
なお、後述するとおり、ラメラ構造体を形成する乳化剤と、その他の乳化剤とは、含有させる目的が異なる場合がある。そのような場合は、ラメラ構造体を形成する乳化剤と同一の化合物を、その他の乳化剤として併せて用いてもよい。
本発明において、有機酸モノグリセリドによってラメラ構造体を形成する場合の、その他の乳化剤は特に制限されないが、ショ糖脂肪酸エステルやモノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられ、特にショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
その他の乳化剤を含有させる主な目的は、以下の2点にある。すなわち、一つは、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体を食品用品質改良剤中に均一に分散させることである。他の一つは、後述する食品用品質改良剤の調製方法において、W/O型エマルションを均一に乳化させることである。
。なお、ポリグリセリンは重合度が均一なものであっても、異なる重合度の混合物であってもよい。また、構成する脂肪酸は、炭素数14〜22の飽和または不飽和の脂肪酸であるものが好ましい。さらに、構成する脂肪酸の70質量%以上がステアリン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルが特に好ましい。
有機酸モノグリセリドのラメラ構造体を食品用品質改良剤中に均一に分散させるために用いる場合、その他の乳化剤の含有量は、食品用品質改良剤中に、通常0.001〜50質量%、好ましくは0.005〜20質量%、より好ましくは0.01〜10質量%である。
上記の乳化剤の含有量が余りにも少ない場合は、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体の分散が不十分となる。また、上記の乳化剤の含有量が余りにも多い場合は、有機酸モノグリセリドのラメラ構造体による水分保持が不十分となる傾向がある。
、すなわち含水ゲルを形成するもので、食用のものであればよい。具体的には、グルコマンナン、ガラクトマンナン、寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸類、ポリグルタミン酸類などが挙げられ、特にグルコマンナンが好ましい。また、これらゲル形性物質に対して、適宜、ゲル化促進剤を加えてもよい。
グルコマンナンとしては、通常、コンニャク芋を乾燥、粉末化して得られるコンニャク粉、コンニャク粉を精製したコンニャク精粉等を用いることができる。風味や色の点から、グルコマンナンとしては除蛋白したコンニャク粉が特に好ましい。このような除蛋白したコンニャク粉としては、例えば「レオレックスRS」(商品名、清水化学社製)等が挙げられる。
なお、ゲル形成物質としてグルコマンナンを用いる場合は、アルカリ成分を添加することによって容易にゲル化を促進することができる。
反応は、通常、無溶媒条件下で行われ、例えば無水コハク酸と炭素数18の脂肪酸のモノグリセリドの反応では、温度120℃前後において90分程度で反応が完了する。かくして得られた有機酸モノグリセリドは、通常、有機酸、未反応モノグリセリド、ジグリセリド、及びその他オリゴマーを含む混合物となっている。本発明においては、このような混合物をそのまま使用してもよい。
本発明の食品用品質改良剤中の有機酸モノグリセリドの純度を高めたい場合は、上記のような混合物中の有機酸モノグリセリドを蒸留等で精製すればよく、また、純度の高い有機酸モノグリセリドとしては、蒸留モノグリセリドとして市販されているものを使用できる。有機酸モノグリセリドの市販品としては、例えば「ポエムB−30」(商品名、理研ビタミン社製)、「ステップSS」(商品名、花王社製)等が挙げられる。また、有機酸モノグリセリドの有機酸部分が一部中和されたものを使用してもよい。
酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。これらの中では、食品用途に使用されるコハク酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸が好ましく、特にコハク酸が好ましい。また、異なる有機酸からなる有機酸モノグリセリドの混合物であってもよい。
有機酸モノグリセリドを構成する脂肪酸は限定されないが、炭素数8〜22の飽和または不飽和の脂肪酸が好ましく、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などが挙げられる。これらの中では風味の観点からステアリン酸を主成分とする脂肪酸が好ましい。また、異なる脂肪酸からなる有機酸モノグリセリドの混合物であってもよい。
ラメラ構造体は、有機酸モノグリセリドを水に分散させるだけで常に生じるものではないが、有機酸モノグリセリドを含有する水分散液を物理的に攪拌して再分散せしめることにより、分散液として調製することができる。ここで、有機酸モノグリセリドのラメラ液晶構造体は、それ自体が既知の相構造であり、その詳細は、例えば日高徹著「食品用乳化剤」第2版(株式会社幸書房、1987年)第74〜83頁等に記載されている。
上記の物理的分散には、例えば気泡の混入を避けるため、例えばアンカーミキサー等を使用してゆっくりと撹拌する。撹拌速度は、通常10〜100rpm、好ましくは20〜50rpmである。すなわち、使用する有機酸モノグリセリドの種類に応じて適当な撹拌速度で撹拌することでラメラ構造体が得られる。また、ラメラ構造体の確認は、例えば偏光顕微鏡による観察によって、ラメラ層構造の存在を確認することで容易に行うことができる。
また、ラメラ構造体を分散した水溶液に高い剪断をかけると、ラメラ構造が変化する場合があるため、本発明の食品用品質改良剤を製造するまでの工程で高い剪断をかけないことが好ましい。更には、本発明の食品用品質改良剤に対しても、高い剪断をかけないことが好ましい。具体的には、例えば処理圧力20MPa(ゲージ圧)以上の高圧ホモジナイザーやコロイドミルなどの使用は避けた方が好ましい。
先ず、ゲル形成物質の水膨潤液に、水相と油相とを乳化剤を用いて乳化して調製したW/O型エマルションを加えて撹拌して混合液を得る。ここで、ゲル形成物質としてグルコマンナンを用いる場合は、W/O型エマルションを形成する水相にアルカリ剤を含有しておくとよい。なお、W/O型エマルションに使用する乳化剤は、ラメラ構造体を形成する乳化剤ではない。これとは別に、有機酸モノグリセリド等によってラメラ構造体が形成された水分散液を調製する。該水分散液の調製に際しては、ラメラ構造を安定化させるために、その他の乳化剤を含有させておくことが好ましい。調製した該水分散液を前記の混合液に加えて撹拌することによって食品用品質改良剤が製造される。
あるいは、別の方法として、有機酸モノグリセリド等によってラメラ構造体が形成された水分散液に、グルコマンナンを油脂に分散させた分散液を混合し、この混合液に上記と同様に調製したW/O型エマルションと乳化剤水溶液を加えて撹拌する。
この際、エタノール等のアルコールやその他の成分を添加することにより、各食品の特性に応じた品質改良剤とすることができる。
上記した各成分の添加順序は、具体的な実施態様の一例であり、これに限定されるものではない。
食品に対する食品用品質改良剤の添加量は、食品の全量(100質量%)に対して、通常0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜10質量%であ
る。このような食品に対する本発明の食品用品質改良剤の添加方法は、小麦粉などに直接混合する、生地に練りこむ、水で希釈して加えるなどである。
なお、以下に記載する各種の食品へ適用する場合の好適な態様において、各成分の「含有量」とは、食品用品質改良剤中の当該成分の含有量を意味し、食品用品質改良剤の「添加量」とは、当該食品の全量(100質量%)に対する添加量を意味する。
本発明において和洋菓子類とは、一般的に和菓子や洋菓子といわれるもの全てを含むものである。和洋菓子類用品質改良剤として、好ましい成分と含有量は次のとおりである。
ラメラ構造体を形成する乳化剤以外の乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、その含有量は、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.003〜3質量%である。糖類としては、オリゴ糖が好ましく、その含有量は、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは50〜80質量%である。ゲル形成物質としてはグルコマンナンが好ましく、その含有量は、好ましくは0.1〜1質量%、より好ましくは0.3〜0.8質量%である。ラメラ構造体を形成する乳化剤としては、コハク酸モノグリセリドが好ましく、その含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.02〜5質量%である。
また、残部は通常、水であり、その含有量は、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは25〜40質量%である。
(1)冷凍、冷蔵耐性の付与、及び食感劣化防止。
(2)風味(卵風味)の強化。
(3)澱粉の老化防止。
(4)保湿性の向上。
(5)O/W型クリーム(アイスクリーム、ソフトクリーム)の保型性、及び食感の改良。
本発明において餡類とは、一般的に餡といわれるもの全てを含むものである。餡類用品質改良剤として、好ましい成分と含有量は次のとおりである。
ラメラ構造体を形成する乳化剤以外の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルの両者を含有することが好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.003〜3質量%である。糖類としては、オリゴ糖が好ましく、その含有量は、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは40〜70質量%である。ゲル形成物質としてはグルコマンナンが好ましく、その含有量は、好ましくは0.1〜1質量%、より好ましくは0.3〜0.8質量%である。ラメラ構造体を形成する乳化剤としては、コ
ハク酸モノグリセリドが好ましく、その含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.02〜5質量%である。
また、残部は通常、水であり、その含有量は、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
上記品質改良剤の餡類への添加量は、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%である。
(1)冷凍流通などによる解凍時の離水現象の抑制。
(2)澱粉の老化による食感、及び風味劣化の改善。
(3)色相向上(色が黒っぽくなり、ツヤがでる)。
(4)ほう餡機操作時(炊き上げ時)の乾燥防止。
(5)シャリ(砂糖が結晶化して大きくなったもの)防止。
本発明においてパン類とは、一般的にパンといわれるもの全てを含むものである。パン類用品質改良剤として、好ましい成分と含有量は次のとおりである。
ラメラ構造体を形成する乳化剤以外の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルの両者を含有することが好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは0.001〜10量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.003〜3質量%である。糖類としては、オリゴ糖が好ましく、その含有量は、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。ゲル形成物質としてはグルコマンナンが好ましく、その含有量は、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.5〜2質量%である。ラメラ構造体を形成する乳化剤としては、コハク酸モノグリセリドが好ましく、その含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.02〜5質量%である。
また、残部は通常、水であり、その含有量は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%である。
(1)香味の持続、及びベークド臭の発現及び持続。
(2)機械耐性の向上(生地の機械への付着防止)、及びしっとり感の付与。
(3)冷凍パン生地のガス保持力向上による風味、及びボリュームアップ。
(4)グルテンのネットワーク強化、保水性向上による澱粉の老化抑制。
本発明において麺類とは、一般的に麺と通常いわれるもの全てを含むものである。麺類用品質改良剤として、好ましい成分と含有量は次のとおりである。
ラメラ構造体を形成する乳化剤以外の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルが好ましく、その含有量は、好ましくは0.001〜10量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。ゲル形成物質としてはグルコマンナンが好ましく、その含有量は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。ラメラ構造体を形成する乳化剤としては、コハク酸モノグリセリドが好ましく、その含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.02〜5質量%である。
また、残部は通常、水であり、その含有量は、好ましくは30〜99質量%、より好ましくは50〜95質量%である。
(1)良好な喉越し、及び弾力向上など食感の改質。
(2)湯伸び、澱粉の溶出抑制など経時変化の抑制。
(3)チルド、冷凍耐性(澱粉の老化抑制)。
(4)電子レンジ耐性。
(5)風味の発現(小麦粉本来の風味)。
(6)機械耐性の向上(生地の機械への付着防止)。
(7)ほぐれ性の改善。
本発明において水産練製品類とは、一般的に水産練製品といわれるもの全てを含むものである。水産練製品類用品質改良剤として、好ましい成分と含有量は次のとおりである。
ラメラ構造体を形成する乳化剤以外の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルが好ましく、その含有量は、好ましくは0.001〜10量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。糖類としては、オリゴ糖が好ましく、その含有量は、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。ゲル形成物質としてはグルコマンナンが好ましく、その含有量は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。ラメラ構造体を形成する乳化剤としては、コハク酸モノグリセリドが好ましく、その含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.02〜5質量%である。
また、残部は通常、水であり、その含有量は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは40〜70質量%である。
ましくは1〜30質量%である。
(1)ソフトで弾力のある食感。
(2)等級の低いすり身でも洋上すり身並の品質が得られる。
(3)風味の改質。
(4)コストダウン(増加水系でも冷凍耐性、食感、風味に優れたものができる)。
本発明の食品用品質改良剤は、皮膜機能を有しており、(1)果物、野菜、肉、魚、花の鮮度保持、(2)煮野菜の煮崩れ防止、変色防止、風味、及び栄養素の保持、(3)発酵食品の変色防止、離水防止(キムチ、漬物)等として使用できる。
また、本発明の食品用品質改良剤は、油脂代替機能を有しており、(1)練りパイ、折パイなどに使用される油脂機能代替(生地の伸展性アップ、収縮防止、及び低カロリー化)、(2)ハム、ソーセージなどの注入油脂の代替(結着性の向上、及び低カロリー化)等にも使用することができる。
これら食品類への添加量や使用方法等は特に限定されず、対象となる食品とその使用目的に応じた量と方法を採用すればよい。
なお、以下の実験例においては、コハク酸ステアリン酸モノグリセリドのみが、本発明におけるラメラ構造体を形成する乳化剤であり、これ以外の乳化剤は全て、本発明における、その他の乳化剤に該当する。
1.食品用品質改良剤Aの調製
グルコマンナン(清水化学社製「レオックスRS」)2.1gを水道水219.94gに膨潤させ、香料製剤(協和香料興産社製「オレンジフラワーウォーターAS−1671」)0.042gとエタノール0.021gを加えて撹拌した。一方、コーン油83.77gにリポ蛋白(下記方法により調製した。)25.13gを分散させ、Na3PO4・12H2O 4.188gとNa2P2O7 0.084gを水道水86.289gに溶解した水溶液を混合し、VCパルミテート(三菱化学フーズ社製「ビタミンCパルミテート」)0.05gとポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学社製「サンソフト818SK」)0.503gを加えてホモミキサーにより40℃で乳化してW/O型エマルションを調製した。
別途、コハク酸ステアリン酸モノグリセリド(花王社製「ステップSS」)0.42gとHLB値が11のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルS−1170」)0.7gとを水道水48.4gに分散させ、撹拌しながら60℃まで昇温してコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体を形成させ、該ラメラ構造体の分散液を前記の混合液に加えた後、さらに、マルトースシロップ(日本食品化工社製「MC−45」)294gとオリゴ糖(日本食品化工社製「フジオリゴ#360」)126gを混合して撹拌し、食品用品質改良剤700gを調製した。これを食品用品質改良剤Aとした。なお、食品用品質改良剤A中のコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の確認は偏光顕微鏡による観察によって行った。
<配合>
乳性蛋白(太陽化学社製「サンラクトN−21」) 32.1%
大豆レシチン(辻製油社製) 12.9%
水道水 55.0%
なお、水道水としては、神奈川県横浜市の水道水を用いた(以下の実験例でも同様である)。
<製法>
(1)37〜38℃で「サンラクトN−21」を水道水にTKホモミキサー(6000rp
m×5min)により分散した。
(2)さらに、37〜38℃で大豆レシチンを加え、TKホモミキサー(6000rpm×
5min)で分散した。
(3)150mlポリ容器4本に充填し、冷蔵保管した。
上記食品用品質改良剤を炊き上げ後の餡に全量に対して1.5%となるように混合し、Brix(餡に含まれるショ糖の質量%濃度)55の黒こし餡(餡A)を製造した。この餡A、及び以下の餡B〜Dについて、製造直後の外観観察を実施した。その評価結果を表1に示す。
また、−30℃で1ヶ月冷凍保存後に解凍したサンプル(餡A〜D)についてパネラー12名による官能評価を実施した。その評価結果を表2に示す。
なお、表2中の数字は、各官能試験において評価した人の数である。
実施例1(餡A):上記方法で製造した黒こし餡。
比較例1(餡B):食品用品質改良剤の代わりにトレハロースを餡の全量に対して3.0質量%添加して製造した黒こし餡。
比較例2(餡C):食品用品質改良剤を添加せずに上記と同様の方法で製造した黒こし餡。
比較例3(餡D):食品用品質改良剤B(下記方法で調製した食品用品質改良剤であり、国際公開第2008/068890号パンフレットの実施例2参照)を餡の全量に対して1.5質量%添加して製造した黒こし餡。
HLB値が11のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルS−1170」)35gを室温でエタノール50gに分散し、その後、75℃に加温したオリゴ糖水溶液(三和澱粉工業社製「オリゴトース」)680gと混合し、30分間攪拌した。一方、コハク酸ステアリン酸モノグリセリド(花王社製「ステップSS」)35gを脱塩水200gに分散し、60℃まで昇温しながら攪拌し、ラメラ構造体の水分散液を得た。前記のオリゴ糖液を55℃まで冷却し、上記のコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の水分散液を加えて20分間攪拌した。次いで、45℃まで冷却することにより、食品用品質改良剤Bの1000gを調製した。なお、食品用品質改良剤B中のコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の確認は偏光顕微鏡による観察によって行った。
4.食品用品質改良剤Cの調整
500mlビーカーに水道水141.8gを秤取り、TKホモミキサーで攪拌しながら、グルコマンナン(清水化学社製「レオックスRS」)2.31gを加え、更に攪拌しながら澱粉(日本食品加工社製、ネオビスT−100)6.72gを加えて均一に分散した。これに、香料製剤(協和香料興産社製「オレンジフラワーウォーターAS−1671」)0.042gとエタノール0.021gを攪拌しながら加えて混合液を得た。
別途、コハク酸ステアリン酸モノグリセリド(花王社製「ステップSS」)0.44gを水道水48.4gに分散させ、撹拌しながら60℃まで昇温してコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体を形成させ、該ラメラ構造体の分散液を前記の混合液に加えた。さらにマルトースシロップ(日本食品化工社製「MC−45」)343gとオリゴ糖(日本食品化工社製「フジオリゴ#360」)147gを混合して加え、ラメラ構造体含有液を得た。
得られたW/O乳化物のうち6.87gを前記のラメラ構造体含有液に加え、TKホモミキサーを用いて均一分散し、混合物700gを得た。なお、食品用品質改良剤C中のコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の確認は偏光顕微鏡による観察によって行った。
純正生クリーム(明治乳業社製、十勝フレッシュ100(商品名):乳脂肪47%)191.9g、30%合成クリーム(メグミルク社製、乳脂肪30%)89.1gとグラニュー糖89.1gに食品用品質改良剤を加え、キッチンエイドミキサーで、粉砕した氷でボールを冷却しながら150rpmの条件でホイップし、3.5分の時間で十分にホイップされたことを確認した。なお、食品用品質改良剤は、全量に対して1%または3%となるように添加し、それぞれ評価した。
食品用品質改良剤として、食品用品質改良剤A,BまたはCを用いて得られたホイップクリームおよび食品用品質改良剤を添加しないホイップクリームについて、以下の方法により、保形性、離水試験および硬さ測定を行った。結果を表3に示す。
ホイップクリームを絞り袋に入れ、20cm×15cm角のステンレス製のトレー2個の上にそれぞれ、約5gずつ、横3個、縦4個の計12個となるように絞った。絞った際のホイップクリームの性状を目視で観察し、以下の基準で判定した。
A:絞った形状がそのまま維持され、絞った先端部のエッジがシャープである。
B:絞った形状が維持されず、絞った先端部のエッジも鈍い。
保形性試験は、2個のトレーのうち一方は、長辺方向30°の傾斜角度に立てかけ、他方は水平にして静置した。何れも、風の影響を受けないように上面は覆っておき、1hr経過毎にホイップクリームの形状を確認した。水平に静置したトレー上のホイップクリームの形状に対して、傾斜したトレー上のホイップクリームの形状が変化した(斜めに崩れ始めた)時間を確認した。絞った12個のホイップクリームのうち1個でも変形すれば、その時間とした。なお、試験は20℃で行った。
10メッシュのステンレス製の金網の上に置いた直径60mm×高さ35mmの円筒状の型に、ホイップクリーム約29〜32gを絞った後、ゆっくりと型を外した。これを金網ごとロート台に載せ、ホイップクリームから離水した水をロートを介してメスシリンダーに回収した。30分ごとに離水の有無を確認し、メスシリンダーに水が溜まり始めた時間を離水時間とした。なお、試験は20℃で行った。
直径5.5cm、容量100mlのカップにホイップクリームを入れ、レオメーター(サン科学社製「RHEO METER CR−500DX」)を使用し、5mm/minの速度で45°コーンアダプターをホイップクリーム中に押し込み、コーンの上面がクリームの上面と同じレベルまで押し込んだ時の応力を測定した。数値はn=3の平均値とした。なお、ホイップクリームの硬さは、150〜200N程度が最も好ましい。
6.食品用品質改良剤Dの調整
リポ蛋白10.5gを水道水35gに分散し、モーターに碇型の攪拌羽根を付け、150rpmで攪拌しながら以下の材料を順次加えて混合物を得た。なお、リポタンパクの調整は、食品用品質改質剤Aと同様である。
(1)澱粉(日本食品加工社製、ネオビスT−100(商品名))15.68gを水道水70.7gに分散させた分散液
(2)香料製剤(協和香料興産社製、「オレンジフラワーウォーターAS−1671」)0.041gとエタノール0.021g
(3)フマル酸(川崎化成工業社製)0.7gを水道水150gに70℃で加温溶解した溶液
(4)低分子ジェラチン(新田ゼラチン社製、イクオスHDL−50F)0.7gを水道水70gに60℃で加温溶解した溶液
(5)コハク酸ステアリン酸モノグリセリド(花王社製「ステップSS」)0.42gを水道水66.1gに分散させ、撹拌しながら60℃まで昇温して形成させた、コハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の分散液
(6)マルトースシロップ(日本食品化工社製「MC−45」)147gとオリゴ糖(日本食品化工社製「フジオリゴ#360」)63gの混合物
得られた混合物をニーダーに移し、47rpmで混練りし、これに、グルコマンナン(清水化学社製「レオックスRS」)10.77gおよびコーン油14.32gを練ったものを加えて、さらによく混練りした。
HLB11のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルS−1170S」)0.1gを水道水0.5gに分散させて60℃まで昇温して
得た分散液の上に、上記のW/O乳化物のうち12.53gを加えて混合しておき、これをニーダー中の混合物に加えた。その後、60℃で30分、さらに80℃に昇温した後に15分混練することにより、混合物700gを得た。なお、食品用品質改良剤D中のコハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の確認は偏光顕微鏡による観察によって行った。
玉ねぎ166.7gをみじん切りにし、サラダ油で色づくまで炒め、皿に広げて冷却した。ボールに合挽き肉550g、前記の炒めた玉ねぎ、牛乳で湿らせた食パン25g、卵83.3g、コショー0.8g、ナツメグ1.7g、塩5.8gを併せた。これに食品用品質改良剤41.7g(添加量4.8%)を加え、手で十分に練り混ぜた。生地に粘りが出た後、100gずつに分け、空気を抜きながら120mm×90mm×厚さ13mmの楕円形状に成形した。成形したハンバーグを金網の上に載せ、230℃で8分間焼成して調理した後、冷ました。これを樹脂製の袋で真空パックし、急速冷凍機で−40℃に冷凍した後、家庭用冷凍庫に移して2週間冷凍保存した。
食品用品質改良剤として、食品用品質改良剤DまたはBを用いて得られたハンバーグおよび食品用品質改良剤を添加しないハンバーグについて、以下の方法により、焼成時の重量変化、硬さ測定および官能評価を行った。結果を表4に示す。
ハンバーグの焼成前の重量と焼成後の重量とを測定し、以下の式より重量変化を算出した。各サンプルについてn=5の平均値とした。
重量変化(%)=(焼成後の重量/焼成前の重量)×100
レオメーター(サン科学社製「RHEO METER CR−500DX」)を使用し、5mm/minの速度で、50mm×50mmのアダプターを「モード:1」の条件で畜肉ハンバーグの中央部に押し込んだ。各サンプルについて、応力が20Nに達した時のアダプターの進入距離(mm)を測定した。進入距離が大きいほど、ハンバーグが柔らかいことを意味する。なお、測定は以下の2条件にて行った。
(1)焼成直後のもの
(2)2週間冷凍したものを冷凍庫から取り出し、600Wの電子レンジにて3分間加熱したもの
2週間冷凍したものを冷凍庫から取り出し、600Wの電子レンジにて3分間加熱したハンバーグについて12名のパネラーが食味を行い、ふっくら感、ジューシー感の観点から、以下の基準で評価し、その平均値を算出した。
評価基準: 良い=5、やや良い=4、普通=3、やや悪い=2、悪い=1
8.食品用品質改良剤Eの調整
リポ蛋白1.05gを水道水252.04gに分散し、モーターに碇型の攪拌羽根を付け、150rpmで攪拌しながら以下の材料を順次加えて混合物を得た。なお、リポタンパクの調整は、食品用品質改質剤Aと同様である。
(1)澱粉(日本食品加工社製、ネオビスT−100(商品名))15.68gを水道水260gに分散させた分散液
(2)コハク酸ステアリン酸モノグリセリド(花王社製「ステップSS」)0.42gを水道水66.1gに分散させ、撹拌しながら60℃まで昇温して形成させた、コハク酸モノグリセリドのラメラ構造体の分散液
得られた混合物をニーダーに移し、47rpmで混練りし、これにグルコマンナン(清水化学社製「レオックスRS」)16.17gおよびコーン油21.56gを練ったものを加えて、さらによく混練りした。
小麦粉100部、水道水26部、食塩1部、食品用品質改良剤1部を真空ミキサーに投入し、そぼろ状(粗い粒状)になるまで練った後、この混合物を10mm、5mm、3mmの厚さに順次圧延した。これをロールに巻きつけて室温下で40分熟成した後、製麺機で麺を作り、98℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた麺を室温下で2時間静置した。
食品用品質改良剤として、食品用品質改良剤EまたはBを用いて得られた麺および食品用品質改良剤を添加しない麺について、以下の方法により、茹で麺の性状および麺の強度について評価を行った。結果を表5に示す。
麺を茹でた後、茹でた麺を箸で持ち上げた際、および、麺を皿に移した後に箸で麺を持ち上げた際、の麺の状態を目視で観察し、以下の基準で判定した。
A:茹でた麺、皿に移動した麺の何れも、1本ずつの麺が単独で持ち上がる。
B:茹でた麺は箸で掻き混ぜなければ1本ずつに解れず、皿に移動した麺は塊となり1本ずつに解れない。
麺を3分間熱湯で茹でた後に採取し、レオメーター(サン科学社製「RHEO METER CR−500DX」)を用いて、引張り試験用アタッチメント(No.36)を「モード:1」の条件で、チャック間が約30mmとなるように巻きつけ、60mm/minの速度で引張り試験を行い、破断強度を測定した。各サンプルについてn=10の平均値とした。
Claims (5)
- 乳化剤、ゲル形成物質および水を含有し、
該ゲル形成物質が、グルコマンナンであり、
該乳化剤が、有機酸モノグリセリドと、有機酸モノグリセリド以外の乳化剤とを含有し、
該有機酸モノグリセリド以外の乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルであり、
ゲル形成物質の含有量が0.01〜10質量%であり、有機酸モノグリセリドの含有量が0.01〜50質量%であり、有機酸モノグリセリド以外の乳化剤の含有量が0.001〜50質量%であり、水の含有量が30〜95質量%であり、かつ、有機酸モノグリセリドがラメラ構造体を形成することを特徴とする食品用品質改良剤。 - さらに、糖類を含有する請求項1に記載の食品用品質改良剤。
- 有機酸モノグリセリドが、有機酸の酸無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られる請求項1又は2に記載の食品用品質改良剤。
- 有機酸モノグリセリドを構成する有機酸が、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸及びフマル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3の何れか1項に記載の食品用品質改良剤。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の食品用品質改良剤を含有することを特徴とする食品。
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