JP5508085B2 - 感光性組成物、感光性平版印刷版材料および感光性平版印刷版材料の製造方法 - Google Patents

感光性組成物、感光性平版印刷版材料および感光性平版印刷版材料の製造方法 Download PDF

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本発明は水で現像可能な感光性組成物とこれを用いた感光性平版印刷版材料および感光性平版印刷版材料の製造方法に関する。特に、高感度で保存安定性に優れ、さらに高画質で、現像処理を続けても、現像疲労液中に感光性組成物に由来するスラッジの発生が軽減され、処理性に優れた感光性組成物と、これを利用した画質および処理安定性に優れた感光性平版印刷版材料とその製造方法に関する。
光重合を利用した感光性組成物として種々の応用分野があるが、例えばフォトレジストや平版印刷版などの用途では、有機溶剤や強アルカリ性試薬を用いる現像処理から、近年では水等による現像処理が可能であるシステムの開発が行われ、現像に関わる薬品や機器の取扱いが容易で、環境保全の観点からも極めて好ましい動向である。特に平版印刷版関係においては、近年、コンピューター上で作製したデジタルデータをもとにフィルム上に出力せずに直接印刷版上に出力するコンピューター・トゥー・プレート(CTP)技術が開発され、出力機として種々のレーザーを搭載した各種プレートセッターとこれらに適合する感光性平版印刷版材料の開発が盛んに行われている。CTP方式の普及と共にクローズアップされてきた重要な問題点或いは要望として、現像処理に関わる諸点が挙げられる。通常方式のCTP方式では、感光性平版印刷版材料をレーザー露光した後、アルカリ性現像液により非画像部を溶出し、水洗およびガム引き工程を経て印刷に供される。アルカリ性現像液は人体に有害であり、その取扱いおよび保管には十分な注意と管理が必要とされる。さらにその購入コストおよび廃液処理に関わるコストはユーザーに多大の負担を強いるものであり、加えてアルカリ性現像液の液性としてpH、温度等の管理を細心の注意を以て管理しなければならず、極めて取扱いが煩雑でかつ製版工程で再現性のある結果を常に得ることが困難であった。
このようなアルカリ性現像液を用いることを回避し、水で現像可能な感光性組成物の提案がされている。例えば特開平5−27437号公報(特許文献1)には、カルボキシル基含有樹脂、アミン化合物、光硬化性不飽和化合物、光重合開始剤、および水を含む水系感光性組成物が開示されている。しかしこのような系では、感光性組成物の水溶液もしくは水分散液を塗布液として用い、支持体上に皮膜を形成させて乾燥皮膜の状態で用いる場合、長期間にわたる保存に適さず、経時により現像性が低下したり、或いは高湿度雰囲気下では皮膜が軟化し、ブロッキングが生じたり、或いは使用する光重合開始剤が経時により分解することで感度が低下もしくは消失する等の問題が生じた。
或いは、特開2002−174898号公報(特許文献2)には、ポリオキシアルキレン構造を有するウレタンオリゴマーを用いる水に分散した感光性組成物が開示されている。この場合には可とう性に優れた感光性組成物皮膜が得られるが、高湿度雰囲気下での保存においてブロッキングが生じやすい問題があった。
さらに、特開2003−215801号公報(特許文献3)や特開2008−265297号公報(特許文献4)等には側鎖に重合性二重結合基を有するカチオン性或いはアニオン性の水溶性ポリマーをバインダーポリマーとして用いる、水で現像可能な感光性組成物およびこれを利用する感光性平版印刷版材料が開示されている。このような系では、上記の2例の場合のような保存安定性の問題は生ぜず、長期にわたり感度変化のない、ブロッキングも生じにくい安定である感光性組成物が与えられるものの、別の問題点として処理安定性の問題と画質に関わる問題を有していた。即ち、処理安定性に関して、水による現像処理を続けると、現像疲労液中に感光性組成物の構成成分に由来するスラッジの発生が顕著となり、特に自動現像装置を用いる場合には、循環中に循環系中に設置するフィルターが短期間で目詰まりを起こし、フィルターの交換頻度が高くなり、また、スラッジが感光性組成物被膜表面に付着して画像欠陥を引き起こすなどの種々の問題を生じていた。さらに、画質に関しても感光性組成物を塗布、乾燥する際に、水溶性であるバインダーポリマーと疎水性である光重合開始剤その他の感光性成分の相溶性が悪く、時として相分離を生じ、不均一な被膜を形成することから、均質な画質を与えない問題が発生した。こうした場合には、画質のみならず、感度に関しても十分な高感度が達成されず改良が求められていた。
特開平5−27437号公報 特開2002−174898号公報 特開2003−215801号公報 特開2008−265297号公報
水で現像可能な感光性組成物に関し、高感度で保存安定性に優れ、高画質で、現像処理を続けても、現像疲労液中に感光性組成物に由来するスラッジの発生が軽減された、処理性に優れた感光性組成物と、これを利用した画質および処理安定性に優れた感光性平版印刷版材料および感光性平版印刷版材料の製造方法を与えること。
(A)光重合開始剤と(B)重合性二重結合基を有する化合物を(C)スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーと(D)ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩類およびアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類から選ばれる少なくとも1種のアニオン性界面活性剤の存在下に乳化分散した水中乳化物である感光性組成物と、支持体上に該感光性組成物を含有する塗布液を塗布、乾燥することで設けた光硬化性感光層を有する感光性平版印刷版材料によって本発明の課題は本質的には解決される。
水で現像可能な感光性組成物であり、高感度で保存安定性に優れ、高画質で、現像処理を続けても、現像疲労液中に感光性組成物に由来するスラッジの発生が軽減された、処理性に優れた感光性組成物と、これを利用した画質および処理安定性に優れた感光性平版印刷版材料が与えられる。
最初に、(A)光重合開始剤および(B)重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散した水中乳化物について説明を行う。光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物は一般に水不溶性の化合物であることが知られており、本発明では、水に不溶性であれば任意の化合物が基本的には使用することができる。具体的な化合物の例については後ほど詳しく説明を行う。なお、本発明において水不溶性とは、25℃の水に対する溶解度(水100gに対するg数)が0.1未満であることを意味する。本発明においては、これらの化合物は水中において乳化分散されていることが重要であり、安定でかつ均一に乳化分散するために(C)スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーと(D)アニオン性界面活性剤の存在が不可欠となる。光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散するには、両者を溶解もしくは分散可能な有機溶剤を使用して溶液を作製し、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとアニオン性界面活性剤の存在下に乳化分散させる方法が好ましい。但し、重合性二重結合基を有する化合物が液体であり、光重合開始剤がこれに溶解して両者の混合物が液状である場合には、敢えて有機溶剤を使用せずとも両者の混合物を乳化分散させることも可能である。乳化分散を行う方法については、高速攪拌、振盪、その他高剪断応力下に光重合開始剤と重合性二重結合基を有する化合物を含む油状物質を微粒子状に水中分散させる方法が好ましく、このために用いる装置としてはホモミキサーやホモジナイザーなどの市販される装置が好ましく利用できる。
上記で使用できる有機溶剤としては、常温で液体であり、該光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を溶解もしくは分散可能である有機溶剤を意味する。本発明で用いることのできる該有機溶剤の例として、揮発性有機溶剤と不揮発性有機溶剤が挙げられる。揮発性有機溶剤を用いた場合には、作製した水中乳化物から該揮発性有機溶剤を加熱もしくは放置することなどで系中から取り除くことが好ましい。不揮発性有機溶剤を用いる場合には、該不揮発性有機溶剤が50℃より高い引火点を示し、通常の取扱いにおいて危険物としての対策が軽減できる場合が好ましい。
上記の該揮発性有機溶剤として、本発明で好ましく使用できる溶剤の例を挙げると、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の低級アルカノールの酢酸エステル類、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコール系酢酸エステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類などが挙げられるが、これらの内で酢酸エチルが後述する種々の理由から、最も好ましく使用することができる。
本発明で用いることのできる不揮発性有機溶剤として、リン酸エステル、フタル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルその他のカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、アルキル化ビフェニル、アルキル化ターフェニル、アルキル化ナフタレン、ジアリールエタン、塩素化パラフィン、アルコール系溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、モノオレフィン系溶剤、エポキシ系溶剤等が挙げられる。具体例としては、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリシクロヘキシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウレート、フタル酸ジシクロヘキシル、オレフィン酸ブチル、ジエチレングリコールベンゾエート、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸オクチル、マレイン酸ジブチル、イソアミルビフェニル、塩素化パラフィン、ジイソプロピルナフタレン、1,1′−ジトリルエタン、モノイソプロピルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、2,4−ジターシャリアミルフェノール、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−ターシャリオクチルアニリン、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシルエステル、ポリエチレングリコール等の高沸点溶剤が挙げられる。
上記の例示化合物のような不揮発性有機溶剤は50℃より高い引火点を示し、通常の取扱いにおいて危険物としての対策が軽減できるため、本発明の該光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を乳化分散した水中乳化物から敢えて溜去するなどして取り除く必要はなく、これらを含んだ塗布液を用いて、後述する感光性平版印刷版材料を作製することも可能である。
しかしながら、本発明において最も好ましく用いることのできる該光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を乳化分散した水中乳化物としては、該水中乳化物が酢酸エチルを使用した系であり、該水中乳化物において、後述するアニオン性界面活性剤とスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの両方を含んでなる該水中乳化物が最も安定して製造でき、かつ室温より高い温度に晒しても乳化分散状態が安定に保たれることから極めて好ましい。加えて、酢酸エチルは揮発性が高いため加熱もしくは減圧下に置くだけで簡便に酢酸エチルを水中乳化物から除去できるため好ましく、酢酸エチルを溜去した後の該水中乳化物は固体分散状態であり、酢酸エチル等の有機溶剤を含んだ状態よりもさらに安定な感光性組成物を形成することから極めて好ましい。
本発明において用いることのできる(D)アニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。これらの内で、特にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩類およびアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類が最も安定な水中乳化物を形成することから極めて好ましい。
本発明において用いられるアニオン性界面活性剤の水中乳化物に含有される量については好ましい範囲が存在する。本発明の感光性組成物の水中乳化物には、光重合開始剤と重合性二重結合基を有する化合物が乳化分散して含まれるが、さらに酢酸エチル等の有機溶剤を使用する場合にはこれを含有し、溜去していない状態において、この乳化分散物100質量部に対する最適なアニオン性界面活性剤の割合は0.5質量部から50質量部の範囲で含まれていることが好ましく、この範囲外の割合で添加した場合には、乳化物の分散状態が不安定になり凝集沈殿を生じる場合がある。
次に、前記の該感光性組成物の水中乳化物に含まれるもう一つの要素である(C)スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーについて述べる。前記のように光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を含む水中乳化物はアニオン性界面活性剤を用いて乳化分散することで、ある程度高温に晒しても安定に乳化分散状態が保てるのであるが、この系にさらにスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーを加えることで乳化分散安定性はさらに向上することを見出した。特に、水中乳化物の水中における分散粒子径の大きさが、こうしたスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの添加により顕著に減少し、極めて微小な液滴、微粒子の形態で分散するため、経時による沈降或いは浮上などの問題が発生せず、また後述する感光性平版印刷版材料を構成した場合に、該スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーは良好なバインダーポリマーとして機能し、光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を含んだ均質な皮膜を形成することから、水による現像性が良好で、現像処理を続けてもスラッジの発生がなく、画質に優れ、また感度の経時変化が少なく高感度である感光性平版印刷版材料を与えることを見出したものである。
こうした目的で使用できるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしては、スルホン酸基が任意の塩基により中和された塩である置換基を有する水溶性ポリマーであり、本発明で好ましく用いることのできる該塩基とは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物や、アミン類として、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、n−ブチルジエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン、或いは4級アンモニウム塩基としてテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、コリン、フェニルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド等の各種塩基を、該スルホン酸基を中和する目的で好ましく使用することができる。
本発明において最も好ましく使用できるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしては、下記化学式で示される構造のスルホン酸塩基を有するモノマーを重合して得られるポリマーである。
Figure 0005508085
式中、Lはなくても良い任意の原子または基からなる連結基を表し、酸素原子、硫黄原子、置換していても良い直鎖或いは分岐のアルキレン基、アリーレン基、−NH−、−COO−、−CONH−、−CO−、およびこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Rは、水素原子、またはメチル基を表す。Aはカチオンを表す。
こうしたスルホン酸塩基を有するモノマーの例として、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、アリルスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、メタリルスルホン酸のアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩、メタクリル酸3−スルホプルピルエステルのアルカリ金属塩およびそのアミン塩、4級アンモニウム塩等が好ましい例として挙げられる。ここでいうアルカリ金属塩とはナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩であり、アミン塩とはアミンとしてアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、n−ブチルジエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン等のアミン類、或いは4級アンモニウム塩とは、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、コリン、フェニルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロキサイドを用いて形成される塩を意味する。
本発明において最も好ましく使用できるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしては、上記の種々のスルホン酸塩基を有するモノマーを各々単独もしくは数種を組み合わせて重合して得られるポリマーを使用しても良い。さらに好ましい該水溶性ポリマーの例としては、上記のスルホン酸塩基を有するモノマーと共に、以下の各種共重合モノマーとの組み合わせで得られる共重合体ポリマーである場合がさらに好ましい。
上記の目的で使用することのできる共重合モノマーの例としては、例えば、スチレン、4−メチルスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの種々のアルキル(メタ)アクリレート、或いは4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することができる。これらの共重合モノマーの共重合体ポリマー中に占める割合としては、全体に対して最大でも90質量%未満であり、共重合体中に含まれるスルホン酸塩基を有するモノマーの共重合体ポリマー中に占める割合が10質量%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、これらの共重合体モノマーが含まれる場合であっても、全体に対する割合が最大でも70質量%未満であり、スルホン酸塩基を有するモノマーの共重合体ポリマー中に占める割合が30質量%以上である場合においては、該バインダーポリマーの水に対する溶解性が良好であり、好ましい。
上記の共重合体モノマーの中でも特に好ましい例が挙げられる。本発明に使用できるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーがある程度疎水性である構造を併せて有している場合において、該水溶性ポリマーを含んでなる感光性平版印刷版材料のインキ乗り性が向上することが好ましい効果として挙げられる。即ち、該スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーに疎水性構造を与えるための共重合モノマーの例として、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、c−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの種々の(メタ)アクリル酸エステルが極めて好ましく使用することができる。
本発明において好ましく使用することのできる該スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
Figure 0005508085
さらに好ましい該スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの例として、側鎖に重合性二重結合基を併せて有するポリマーを挙げることができる。この場合、該バインダーポリマーを含んでなる感光性平版印刷版材料において、画像部(露光部)において効率的に光重合による架橋構造の形成が生じるため、耐刷性に極めて優れた印刷版を与えることから極めて好ましく使用することができる。これらの側鎖に導入した重合性二重結合基の共重合体ポリマー中に占める割合としては、スルホン酸塩基を有するモノマーの共重合体ポリマー中に占める割合が10質量%以上である範囲であれば任意の割合で導入することができる。但し、スルホン酸塩基を有するモノマーの共重合体ポリマー中に占める割合が30質量%以上である場合においては、該バインダーポリマーの水に対する溶解性が良好であり好ましい。
本発明において好ましく使用することのできる側鎖に重合性二重結合基を併せて有する該スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
Figure 0005508085
側鎖に重合性二重結合基を併せて有する該スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの最も好ましい例として、例えば特開2008−265297号公報に記載される、スルホン酸塩基と、ヘテロ環を介してビニル基が結合したフェニル基の両方を側鎖に有するポリマーが挙げられる。こうした最も好ましい該水溶性ポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
Figure 0005508085
Figure 0005508085
本発明における上記のような該水溶性ポリマーと、前記の光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を含む水中乳化物の比率には好ましい範囲が存在する。該水溶性ポリマーが100質量部である場合には、光重合開始剤の含まれる好ましい範囲は1質量部〜50質量部であり、さらに好ましい範囲は3質量部〜40質量部である。さらに、重合性二重結合基を有する化合物が含まれる好ましい範囲は、10質量部〜100質量部であり、さらに好ましくは20質量部〜60質量部の範囲である。但し、下記に示す具体的な水中乳化物の製造方法においては、該水溶性ポリマーは、その一部を使用して先ず水中乳化物を作製し、安定な乳化物が作製された後にさらに該水溶性ポリマーを添加することも好ましく行うことができる。
具体的な本発明の光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を分散した水中乳化物を作製する製造方法について説明する。前述の酢酸エチルなどの有機溶剤を使用して後述する光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を溶解もしくは分散した溶液を作製する。これを上記のアニオン性界面活性剤と該水溶性ポリマーを含む水中に添加する際に、ホモミキサーやホモジナイザーなどの高速剪断が可能である公知の攪拌装置を使用して乳化分散を行うことで該光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を溶解した水中乳化物を作製することができる。或いはこのような組み合わせや添加順序によらず、各々の成分をどのような組み合わせで、どのような順序で添加しても、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとアニオン性界面活性剤が添加された状態で乳化分散されていれば、基本的には最終的に得られる水中乳化物は同様な特性を示す。さらにいずれの場合においても、乳化分散方式はバッチ式で行う場合や、連続的方式で配管系を流れる状態で連続して乳化分散を行うことが可能である。また、温度に関しては0℃から70℃の範囲で攪拌を行うことが好ましい。
上記のように分散された光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物の乳化物は、さらに加熱することで揮発性有機溶剤を使用した場合にはこれを溜去して除くことが可能である。乳化分散状態が不安定である場合には、こうした加熱溜去の工程で分散物の凝集が発生する場合があるが、本発明においては、こうした溜去の工程に置いても該水中乳化物が安定な乳化分散状態に保たれることを見出したものである。
上記の溜去の工程においては、加熱により揮発性有機溶剤を溜去しても良いが、減圧下に該有機溶剤を溜去することがさらに好ましく行われる。本発明で用いることのできる光重合開始剤は一般的に長時間加熱されることで分解する場合が多く、加熱を行う場合には、好ましくは70℃以下の温度で数時間以内の短時間で加熱されることが好ましい。従って、揮発性有機溶剤として酢酸エチルを用いた場合には70℃以下の温度で溜去が可能であり、さらに減圧にすることでより低い温度で溜去が可能であるため極めて好ましい。上記の減圧条件としては大気圧を標準として、これの70%から5%の圧力下で揮発性有機溶剤の溜去を行うことが好ましい。溜去した該有機溶剤は冷却されて別の容器に回収されることが好ましい。この際回収された該有機溶剤の量を計測することで、水中乳化物中の揮発性有機溶剤量を求めることができる。
次に、本発明に使用する(A)光重合開始剤について述べる。本発明に用いることのできる光重合開始剤の例としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)アジニウム化合物、(g)活性エステル化合物、(h)メタロセン化合物、(i)トリハロアルキル置換化合物、および(j)有機ホウ素化合物等が挙げられる。
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、"RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY"J.P.FOUASSIER,J.F.RABEK(1993)、P.77〜P.177に記載のベンゾフェノン骨格、或いはチオキサントン骨格を有する化合物、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン類、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報に記載のベンゾインエーテル類、特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報に記載のアシルホスフィン類、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42684号公報に記載のクマリン類を挙げることができる。
(b)芳香族オニウム塩の例としては、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、TeまたはIの芳香族オニウム塩が含まれる。このような芳香族オニウム塩は、特公昭52−14277号公報、特公昭52−14278号公報、特公昭52−14279号公報等に例示されている化合物を挙げることができる。
(c)有機過酸化物の例としては、分子中に酸素−酸素結合を一個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルジパーオキシイソフタレート等の過酸化エステル系が好ましい。
(d)ヘキサアリールビイミダゾールの例としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
(e)ケトオキシムエステルの例としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
(f)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、特開昭63−143537号公報、特公昭46−42363号公報等に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
(g)活性エステル化合物の例としては特公昭62−6223号公報等に記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号公報、特開昭59−174831号公報等に記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報等に記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報等に記載の鉄−アレーン錯体等を挙げることができる。具体的なチタノセン化合物としては、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等を挙げることができる。
(i)トリハロアルキル置換化合物の例としては、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、米国特許第3,954,475号明細書、米国特許第3,987,037号明細書、米国特許第4,189,323号明細書、特開昭61−151644号公報、特開昭63−298339号公報、特開平4−69661号公報、特開平11−153859号公報等に記載のトリハロメチル−s−トリアジン化合物、特開昭54−74728号公報、特開昭55−77742号公報、特開昭60−138539号公報、特開昭61−143748号公報、特開平4−362644号公報、特開平11−84649号公報等に記載の2−トリハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合した、特開2001−290271号公報等に記載のトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
(j)有機ホウ素塩化合物の例としては、特開平8−217813号公報、特開平9−106242号公報、特開平9−188685号公報、特開平9−188686号公報、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素アンモニウム化合物、特開平6−175561号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−157623号公報等に記載の有機ホウ素スルホニウム化合物および有機ホウ素オキソスルホニウム化合物、特開平6−175553号公報、特開平6−175554号公報等に記載の有機ホウ素ヨードニウム化合物、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素ホスホニウム化合物、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−292014号公報、特開平7−306527号公報等に記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体化合物等が挙げられる。また、特開昭62−143044号公報、特開平5−194619号公報等に記載の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有するカチオン性色素が挙げられる。
上記光重合開始剤は単独で用いても良いし、任意の2種以上の組み合わせで用いても良い。本発明に関わる光重合開始剤については特に有機ホウ素塩が好ましく用いられる。さらに好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物およびオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)を組み合わせて用いることである。これらを用いることによるメリットの一つは、得られる感光性組成物としての感度が高くなり、これを利用した感光性平版印刷版材料としての感度や耐刷性などが向上する効果が挙げられるが、加えて重要なメリットは、本発明に関わる感光性組成物の水中乳化物が極めて安定に製造できる点である。これは有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物が各種有機溶剤に易溶性であり、前記のアニオン性界面活性剤の存在下において、乳化分散状態および固体分散状態において安定に存在できる事実によるものである。
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式Iで表される。
Figure 0005508085
式中、R、R、RおよびRは各々同じであっても異なっていても良く、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R、R、RおよびRの内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオンおよびカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびホスホニウム化合物が挙げられる。
本発明において光重合開始剤として好ましく用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した一般式Iで表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
Figure 0005508085
Figure 0005508085
本発明において、有機ホウ素塩と共に用いることでさらに高感度化が具現される光重合開始剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を下記に示す。
Figure 0005508085
Figure 0005508085
次に、本発明の感光性組成物の水中乳化物に含まれる(B)重合性二重結合基を有する化合物について述べる。この場合の重合性二重結合基を有する化合物とは、上記の光重合性開始剤の光分解により発生するラジカルにより重合を行う化合物であればいずれも好ましく用いることができる。さらには、分子内に2個以上の重合性二重結合基を有する化合物を含んで用いた場合には、ラジカルによる重合の結果、架橋物が生成するため、後述する感光性平版印刷版材料を構成した場合に、架橋した堅い画像部皮膜を形成することから耐刷性およびインキ乗り性に優れた印刷版を与えるため極めて好ましく用いることができる。こうした目的で用いることのできる重合性二重結合基を有する化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性アクリル系モノマーなどを挙げることができ、或いは、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用される。
本発明に関わる感光性組成物中には、前述の光重合開始剤を増感する化合物を併せて含有することが好ましい。400〜430nmの波長域の感度を増大される化合物としてシアニン系色素、特開平7−271284号公報、特開平8−29973号公報等に記載されるクマリン系化合物、特開平9−230913号公報、特開2001−42524号公報等に記載されるカルバゾール系化合物や、特開平8−262715号公報、特開平8−272096号公報、特開平9−328505号公報等に記載されるカルボメロシアニン系色素、特開平4−194857号公報、特開平6−295061号公報、特開平7−84863号公報、特開平8−220755号公報、特開平9−80750号公報、特開平9−236913号公報等に記載されるアミノベンジリデンケトン系色素、特開平4−184344号公報、特開平6−301208号公報、特開平7−225474号公報、特開平7−5685号公報、特開平7−281434号公報、特開平8−6245号公報などに記載されるピロメチン系色素、特開平9−80751号公報などに記載されるスチリル系色素、或いは(チオ)ピリリウム系化合物等が挙げられる。これらの内、シアニン系色素またはクマリン系化合物或いは(チオ)ピリリウム系化合物が好ましい。好ましく用いることのできるシアニン系色素の例を下記に示す。
Figure 0005508085
Figure 0005508085
好ましいクマリン系化合物としての例を下記に示す。
Figure 0005508085
Figure 0005508085
Figure 0005508085
好ましい(チオ)ピリリウム系化合物としての例を下記に示す。
Figure 0005508085
特に近赤外光のような長波長域における増感色素として、シアニン系色素、ポリフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ系化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、スクアリリウム系化合物、(チオ)ピリリウム系化合物が挙げられ、さらに、欧州特許第568,993号明細書、米国特許第4,508,811号明細書、米国特許第5,227,227号明細書に記載の化合物も用いることができる。
長波長域の近赤外光に対応する好ましい増感色素の例を下記に示す。
Figure 0005508085
Figure 0005508085
本発明の感光性組成物を構成するその他の要素として、画像の視認性を高める目的で種々の着色剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で添加される着色剤として着色顔料の水系分散物が最も好ましく用いることができる。こうした顔料の水系分散物の例として各種、黒色、青色、赤色、緑色、黄色等の着色した顔料が水溶性である各種分散剤の存在下に水中で分散された任意の素材が使用可能である。顔料として特に、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等は入手が容易であり水中での分散も比較的容易であるため特に好ましく用いることができる。また、こうした顔料を水中で分散させるために用いることのできる分散剤の例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのオキシエチレン基を有する水溶性であるノニオン系界面活性剤や、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ポリスチレン−マレイン酸共重合体、その他各種水溶性高分子が挙げられる。こうした分散剤は着色顔料100質量部に対して5〜50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。さらに着色顔料を用いる場合には、本発明の感光性組成物に含まれる割合として、前述のスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマー100質量部に対して1〜30質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
本発明の感光性組成物を構成するその他の要素として、長期にわたる保存に関して、熱重合による暗所での硬化反応を防止するために重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で好ましく使用される重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、本発明の光重合性組成物の総固形分質量100質量部に対して0.01質量部から10質量部の範囲で使用することが好ましい。
本発明の感光性組成物の水中乳化物を用いて感光性平版印刷版材料を形成するための支持体としては各種プラスチックフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。プラスチックフィルム支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロースなどが代表的に挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。これらのフィルムは表面に本発明に関わる感光性組成物を用いた層を設ける前にフィルム表面に親水化加工が施されていることが好ましい。
こうした親水化加工としては、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。さらなる親水化加工としてフィルム上に種々の水溶性ポリマーを含む層を設けることも好ましく行うことができる。例えば、特開2008−250195号公報等に記載される水溶性ポリマー、コロイダルシリカおよび架橋剤から構成される親水性層を上記フィルム上に形成することが好ましく行われる。さらには、設ける親水性層との接着性を高めるためフィルム上にあらかじめ下引き層を設けても良い。下引き層としては、親水性樹脂を主成分とする層が有効である。親水性樹脂としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体(例えば、フタル化ゼラチン)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、キサンタン、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の親水性樹脂が好ましい。特に好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコールが挙げられる。こうした下引き層を介してフィルム支持体と親水性層を形成することで、多部数にわたるロングラン印刷条件での耐刷性が向上するため好ましく利用される。
支持体としてアルミニウム板を使用する場合には、粗面化処理され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板が好ましく用いられる。さらに、表面をシリケート処理したアルミニウム板も好ましく用いることができる。或いは、さらに表面に上記の親水性層を形成したアルミニウム板を用いることもできる。
上記のような支持体を用いてこれに本発明の感光性組成物の水中乳化物を用いて感光性平版印刷版材料を作製するためには、本発明の感光性組成物の水中乳化物を含有する塗布液を支持体上に塗布して光硬化性感光層を設けることが必要である。この光硬化性感光層は支持体表面或いは上記の親水性層を介して支持体表面に形成することが好ましい。この場合の光硬化性感光層自体の乾燥固形分塗布量に関しては、乾燥質量で1平方メートルあたり0.3gから10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、さらに0.5gから3gの範囲であることが良好な解像度を発揮し、かつ細線画像や微小網点画像の耐刷性を確保し、同時にインキ乗り性を大幅に向上させるために極めて好ましい。
本発明の感光性平版印刷版材料においては、本発明の感光性組成物からなる光硬化性感光層の上に、さらに保護層を設けることも好ましく行われる。保護層は、光硬化性感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の光硬化性感光層への混入を防止し、大気中での露光感度をさらに向上させる好ましい効果を有する。さらには感光層表面を傷から防止する効果も併せて期待される。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低く力学的強度に優れ、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、光硬化性感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。本発明の感光性平版印刷版材料においては、水現像の過程においてこうした保護層と光硬化性感光層の未露光部の除去が同時に行うことも可能であるため、特に保護層の除去工程を設ける必要がないことが特徴である。さらに、先に述べたような光硬化性感光層に含まれる該重合体が水溶性であるが故に大気中の水分を吸湿しブロッキングを発生したり、保存中に感度変化等の問題を生じる場合があるが、保護層を光硬化性感光層の上部に設けることでこうしたブロッキングや感度変化の問題を解消することが可能である。加えて、特に半導体レーザー等を使用して走査露光を行う場合、特に高感度である光硬化性感光層が要求される。こうした場合に、保護層を設けることでさらに感度が上昇するため特に好ましく適用することができる。
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報等に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが良く、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られているが、これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的に最も良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。こうした保護層を適用する際の乾燥固形分塗布量に関しては好ましい範囲が存在し、感光層上に乾燥質量で1平方メートルあたり0.1gから10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、さらには0.2gから2gの範囲が好ましい。保護層は、公知の種々の塗布方式を用いて光硬化性感光層上に塗布、乾燥される。
上記のようにして支持体上に形成された光硬化性感光層を有する材料を感光性平版印刷版材料として使用するためには、これに密着露光或いはレーザー走査露光を行い、露光された部分が架橋することで水に対する溶解性が低下することから、水により未露光部を溶出することでパターン形成が行われる。
本発明において、水現像に使用される水とは、pHが7±2の範囲にあり、純水もしくはこれに各種無機、有機イオン性化合物が含まれても良く、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムイオンなどが含まれる水であっても良い。或いは水中に公知である各種界面活性剤などが含まれていても良い。また、水には各種アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メトキシエタノール、ポリエチレングリコールなどの溶剤が含まれていても良い。或いは、水現像の際に、市販される各種ガム液を添加して現像することも、版面を指紋汚れ等から保護する目的で好ましく用いることができる。
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は断りのない限り質量基準である。
(感光性組成物の実施例1〜3と比較例1〜4)
光重合開始剤としてBC−6で示される有機ホウ素塩2部およびT−4で示されるトリハロアルキル置換化合物1.5部を秤取り、さらに重合性二重結合基を有する化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート6部を加え、酢酸エチル200部を加えて溶解した。この溶液にさらに増感剤としてS−38で示すシアニン色素を0.6部加えて溶解した。
一方、イオン交換水300部をとり、これに表1で示すように実施例1〜3では本発明に関わるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしてそれぞれSP−2、SP−6およびSP−13を各20部加え、さらにアニオン性界面活性剤としてOTP(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム)を3部加えて溶解した。比較例1として、本発明に関わるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーを添加しないでアニオン性界面活性剤を3部添加した系を作製し、比較例2では該水溶性ポリマーとしてSP−2を20部加え、アニオン性界面活性剤を添加しない系を作製した。さらに比較例3および4では、本発明に関わるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーに換えて、ポリアクリル酸ナトリウムを20部使用した系を作製し、比較例3ではアニオン性界面活性剤を加えない系を作製し、比較例4ではアニオン性界面活性剤3部を加えた系を作製した。
Figure 0005508085
水中乳化物の作製には、密閉容器内にホモミキサーが配置され、減圧下で加熱しながら溶媒を溜去可能な、みずほ工業(株)製卓上型真空乳化装置PVQ−1Dを使用して作製を行った。ホモミキサーの回転速度は5000rpmに設定した。上記で作製した光重合開始剤、重合性二重結合基を有する化合物および増感剤を溶解した酢酸エチル溶液と、水溶性ポリマーおよびアニオン性界面活性剤を溶解した水溶液を真空乳化装置内に導入し、室温下でホモミキサーの高速攪拌により乳化分散を行った。10分間攪拌を行い得られた水中乳化物から一部の試料を取り出し、蒸留水で希釈して粒度分布測定装置(堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910)を使用して水中乳化物の粒子径を分散直後において測定した。さらに、攪拌を10分間続けた後に、アスピレーターを用いて系を減圧状態にし、大気圧の20%の減圧条件下で温度を50℃に上昇させて酢酸エチルを減圧溜去した。冷却器にて回収した酢酸エチルの量から、用いた全ての酢酸エチルが分散系から溜去されたことを確認した。酢酸エチルを溜去した後の粒子径を同じく表2に纏めた。
Figure 0005508085
実施例1〜3で得られた水中乳化物は光重合開始剤、重合性二重結合基を有する化合物および増感剤を含んでなる微小な微粒子が酢酸エチル溜去後にも安定に乳化した状態が保たれていたが、比較例1では微粒子の平均粒子径が酢酸エチル溜去後に増大し、一部容器の底に沈殿物が認められた。比較例2〜4では酢酸エチル溜去時に乳化物が凝集する結果となった。
(感光性平版印刷版材料の実施例4〜6および比較例5)
上記実施例1〜3で得られた酢酸エチル溜去後の水中乳化物を使用して、さらに着色剤を添加することで感光性平版印刷版材料を製造するための塗布液を作製した。着色剤として水中に青色顔料が分散した市販の水系顔料分散液(御国色素(株)製ハイミクロンKブルー7361)を使用した。使用した水系顔料分散液はフタロシアニン系顔料を水溶性ポリマーである分散剤を使用して分散を行ったものであり、分散剤はフタロシアニン顔料に対して約20%添加されており、またフタロシアニン顔料の固形分濃度は約20%であった。各々の実施例1〜3で得られた水中乳化物全量に対して、それぞれに上記のハイミクロンKブルーを20部加えて攪拌を行い、均一に分散した青色の感光性組成物である塗布液を作製した。
厚みが0.3mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板に、さらに珪酸ナトリウムを使用してシリケート処理を行ったアルミニウム板を支持体として使用した。上記で得た塗布液を使用して該アルミニウム板の上に、塗布、乾燥することで、光硬化性感光層を形成し、各々感光性平版印刷版材料の実施例4〜6を作製した。光硬化性感光層の塗布量は乾燥質量で1平方メートル当たり1.6gになるようにワイヤーバーを使用して塗布を行った。乾燥は80℃の乾燥器で10分間加熱して乾燥を行った。
さらに比較として下記比較感光性組成物処方1を用いて感光性組成物溶液を作製した。この溶液は先の実施例3に対して用いた感光性組成物の水中乳化物に対してアニオン性界面活性剤と蒸留水を加えない均一溶液であることが特徴である。この処方において先の実施例1で使用した水系顔料分散物であるハイミクロンKブルーを添加したところ、顔料分散物が凝集したため塗布液は作製されなかった。そのため、顔料分散物としてフタロシアニン系青色顔料を有機溶剤としてメチルエチルケトンを使用して有機溶剤可溶性分散剤を顔料に対して約20部添加して分散を行い作製された市販の溶剤系顔料分散液(御国色素(株)製MHIブルー#454)を用いて下記の比較感光性組成物処方1に対して20部加えて攪拌を行い、均一に分散した青色の感光性組成物である比較塗布液を作製した。得られた比較塗布液を使用して前述のアルミニウム板の上に、塗布、乾燥することで、光硬化性感光層を形成し、感光性平版印刷版材料の比較例5を作製した。光硬化性感光層の塗布量は乾燥質量で1平方メートル当たり1.6gになるようにワイヤーバーを使用して塗布を行った。乾燥は80℃の乾燥器で10分間加熱して乾燥を行った。
(比較感光性組成物処方1)
バインダーポリマー(SP−13) 20部
トリメチロールプロパントリアクリレート 6部
光重合開始剤(BC−6) 2部
光重合開始剤(T−4) 1.5部
増感色素(S−38) 0.6部
酢酸エチル 300部
得られた実施例4〜6および比較例5の感光性平版印刷版材料を大日本スクリーン製造(株)製サーマルプレート用イメージセッターPT−R4000(830nmのレーザーを搭載した描画装置)を使用して、版面に照射される露光量を160mJ/cmに合わせて露光を行った。露光された感光性平版印刷版材料をイオン交換水で他に添加剤をいっさい含まない水を用いて種々の条件で現像を行った。
(現像性試験)
上記のようにして露光した試料を用いて、以下のようにして現像性試験を行った。現像は三菱製紙(株)製自動現像装置P−1310Tを使用して処理を行った。現像温度を25℃および30℃の2条件に設定し、各々の温度で処理時間を10秒、15秒および20秒の3条件で処理を行い、非画像部の溶出性(完全に残膜がなくなる場合を○とし、僅かに残膜が認められる場合を△、明確に残膜が発生し、溶出不良である場合を×とした)を評価した。結果を表3に纏めた。
Figure 0005508085
(解像性評価)
上記の現像液を用いて処理を行った場合の解像性評価として、10μm細線および1%網点が明瞭に再現されている場合を○とし、これらが部分的に欠落しているが、20μm以上の細線および2%以上の網点が明瞭に再現されている場合を△、これ以下の再現性である場合を×とした。結果を表4に纏めた。比較例5では光硬化性感光層の塗布面が均一でなく20μm程度のピッチでゆず肌状のムラが存在し画質に悪影響を与えており、さらに露光量に対する感度が十分でなく細線の再現性が悪い結果であった。実施例4〜6では光硬化性感光層の塗布面は均一で、感度も高解像度の画像を与えるのに十分であった。
Figure 0005508085
(印刷性試験)
先の現像処理後の試料の内、各々30℃15秒の条件で現像された試料を用い、通常のオフセット印刷を行うため、印刷機はリョービ560を使用し、印刷インキはオフセット印刷用墨インキを使用し、吸湿液は東洋インキ製造(株)製オフセット印刷用吸湿液アクワユニティWKKの1%水溶液を使用した。印刷性評価として、耐刷性について印刷開始から5万枚まで1万枚ごとの印刷物についてマイクロスコープ(オムロン(株)製CCDスコープVC4500−PC)を用いて測定を行った。20μm細線および網点面積率が2%の微小網点部分が印刷物上で再現されている場合を○とし、部分的にかけている場合を△とし、ほぼ完全に欠落した場合を×とした。インキ乗り性については、印刷物濃度の測定を1万枚ごとの印刷物について反射濃度計を用いて測定を行った。結果を表5に纏めた。なお、印刷時の地汚れについては、試験した全ての試料について認めなかった。比較例5では画線が均一でなく、さらに露光量に対する感度が十分でないことが耐刷不良の一因であった。
Figure 0005508085
(水現像処理ランニング試験)
上記で描画を行った各感光性平版印刷版を用い、自動現像処理装置としてアルミニウム印刷版(PS版)用自動現像装置PD−912−M(大日本スクリーン製造(株)製)を使用して現像処理を行った。現像槽中には30℃に調節したイオン交換水を投入し、現像時間は15秒に設定した。現像槽中において該感光性平版印刷版材料はモルトンロールにより表面が弱く擦られることで大部分の非画像部における光硬化性感光層が除去されるように調節した。モルトンロールによる擦り現像を経て、現像槽出口にある2本の絞りロールにより感光性平版印刷版材料表面の過剰な水分が絞り取られた。引き続く水洗槽において表面がシャワー洗浄され、最後に温風により乾燥を行った。この現像処理プロセスにおいて、水現像性評価として、(A)現像槽出口絞りロールへのスラッジ付着の有無、(B)水現像槽中のスラッジの沈降の有無、(C)処理済みの感光性平版印刷版表面へのスラッジの付着の有無、(D)処理済みの感光性平版印刷版の現像残膜の有無、の4つの評価項目について評価を行った。評価は各々の実施例6および比較例5の感光性平版印刷版材料をA3サイズで100版自動現像装置に連続して通して評価を行った。評価項目(A)については、現像槽出口絞りロールへのスラッジ付着が発生した場合を×とし、発生しなかった場合を○とした。評価項目(B)については、スラッジの沈降が著しい場合を×とし、スラッジの発生がなく、均一に分散した状態を○とした。評価項目(C)については、100版目の版にスラッジ付着が認められた場合を×とし、付着が認められなかった場合を○とした。評価項目(D)については、100版目の版に現像残膜が認められた場合を×とし、認められなかった場合を○とした。結果を表6に纏めた。
Figure 0005508085
表6において実施例6の感光性平版印刷版は上記ランニング試験においてスラッジの発生もなく、現像残膜も認められなかったため、100版目の版について再度、先の印刷性試験を実施したところ地汚れの発生もなく良好な印刷性を示した。比較例5の感光性平版印刷版はランニング試験において明確な現像残膜が発生したため印刷性試験は実施しなかった。
(保存安定性試験)
実施例4〜6で作製した感光性平版印刷版材料を、35℃で相対湿度85%に調整した加湿機内に2週間放置した。その際、各々の感光性平版印刷版材料の光硬化性感光層表面に100μm厚みのポリエステルフィルムを重ねて放置を行い、ブロッキングの発生が生じるか否かを観察した。取り出した感光性平版印刷版材料の実施例4〜6は全てブロッキングの発生は認められなかった。さらに、上述した条件で露光を行い、さらに現像性試験を行ったが先の結果と同様な結果が得られ、解像性評価の結果も同一であったことから保存安定性試験において変化が認められない良好な結果が得られた。
水による現像が可能な感光性平版印刷版材料、プリント配線基板作製用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成等に好適な感光性組成物が与えられる。

Claims (3)

  1. (A)光重合開始剤と(B)重合性二重結合基を有する化合物を(C)スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーと(D)ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩類およびアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類から選ばれる少なくとも1種のアニオン性界面活性剤の存在下に乳化分散した水中乳化物である感光性組成物。
  2. 支持体上に、請求項1に記載の感光性組成物を含有する塗布液を塗布して設けた光硬化性感光層を有する感光性平版印刷版材料。
  3. 酢酸エチルを使用して、これに光重合開始剤および重合性二重結合基を有する化合物を溶解し、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩類およびアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類から選ばれる少なくとも1種のアニオン性界面活性剤およびスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーを加えて高速剪断下に水中に分散させて感光性組成物の水中乳化物を作製し、該水中乳化物を含有する塗布液を支持体上に塗布、乾燥する感光性平版印刷版材料の製造方法。
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