JP5488410B2 - 熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。本発明は、特に自動車のボデー構造部品、足回り部品等を初めとする機械構造部品等の素材に好適な熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
近年、自動車の軽量化のため、鋼材の高強度化を図り、使用重量を減ずる努力が進められている。自動車に広く使用される薄鋼板においては、鋼板強度の増加に伴って、プレス成形性が低下し、複雑な形状を製造することが困難になってきている。具体的には、延性が低下し加工度が高い部位で破断が生じる、スプリングバックや壁反りが大きくなり寸法精度が劣化するという問題が発生する。したがって、高強度、特に780MPa級以上の鋼板を用いて、プレス成形で部品を製造することは容易ではない。プレス成形ではなくロール成形によれば、高強度の鋼板の加工が可能であるが、長手方向に一様な断面を有する部品にしか適用できない。
しかしながら、特許文献1で示されているように、加熱した鋼板をプレス成形する熱間プレスと呼ばれる方法では、鋼板が高温で軟質、高延性になっているため、複雑な形状を寸法精度よく成形することが可能である。さらに、鋼板をオーステナイト域に加熱しておき、金型内で急冷(焼入れ)することにより、マルテンサイト変態による鋼板の高強度化が同時に達成できるとしている。また、特許文献2には、室温で予め所定の形状に成形後、オーステナイト域に加熱し、金型内で急冷することで鋼板の高強度化と成形性を同時に達成する予プレスクエンチ法が開示されている。
このような熱間プレス法や予プレスクエンチ法は、部材の高強度化と成形性を同時に確保できる優れた成形方法である。
ところで、現在、熱間プレス成形品は、適用部品のニーズが増大し、自動車などでは、ドアビームならびにセンターピラー部の補強材、バンパー補強材のように複雑な形状部材に用いられるようになった。そのため、複雑な形状部材でも焼き入れ後均一な硬度分布を確保できる鋼板、操業効率の面から短時間加熱で鋼板の鋼組織をオーステナイト化できる鋼板が求められている。
また、熱間プレス成形品は、厳しい腐食環境で使用される鋼材にまで、適用範囲が拡大されつつあり、より優れた耐食性を有することが求められている。そのため、熱間プレス成形品には優れた耐食性も求められており、溶融亜鉛めっき鋼板の適用が主流になりつつある。
このような熱間プレス成形品に耐食性を具備させる観点から、本出願人は先に、特許文献3において、表層に加熱時の亜鉛の蒸発を防止するバリア層を備えた亜鉛または亜鉛系合金のめっき層を鋼板表面に有する熱間プレス用鋼板に係る発明を、特許文献4において、C:0.08〜0.45%(本明細書においては特にことわりがない限り「%」は「質量%」を意味するものとする)、Mnおよび/またはCr合計で0.5〜3.0%を含有する鋼板にFe含有量が5〜80%であるFe−Zn合金からなりZn付着量が10〜90g/mであるZnめっき層を有する熱間プレス用鋼板に係る発明を、さらに特許文献5において、表面に設けためっき層中に鉄亜鉛固溶相が存在する熱間プレス成形品に係る発明を、それぞれ開示した。
これらは非常に優れた発明であるが、加熱後の熱間プレス加工時にめっきが剥がれる場合があり、めっき粉の押し込み疵発生による品質不良や金型清掃のための操業時間ロス等が発生する場合があった。そのため、熱間プレス加工時におけるめっき密着性の改善が望まれている。
また、短時間加熱で鋼板の鋼組織をオーステナイト化することについての検討が十分にはなされておらず、長時間加熱または高温加熱を採用していた。そのため、加熱中に亜鉛層上部に亜鉛酸化層が多く生成し、耐食性の劣化が生じる問題が生じていた。
英国特許第1490535号明細書 特開平10−96031号公報 特開2003−73774号公報 特開2003−147499号公報 特開2003−126921号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、短時間加熱であっても熱処理後の鋼板部材において硬度分布が均一で靭性に優れ、かつ、優れためっき密着性を兼ね備えた熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。
その結果、鋼板の化学組成、表面近傍の成分偏析や表面形状を適正化するとともに鋼組織を適正化し、さらに溶融亜鉛めっき層の厚みを適正化することによって、熱処理後の鋼板部材において硬度分布が均一で靭性に優れ、かつ、優れためっき密着性および耐食性を兼ね備えた熱処理用鋼板を得ることができるという新たな知見を得た。
上記の知見に基づき完成された本発明は次のとおりである。
(1)鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板は、質量%で、C:0.07%以上0.50%以下、Si:0.005%以上2.0%以下、Mn:0.3%以上4.0%以下、P:0.0002%以上0.2%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.0002%以上2.0%以下、N:0.010%以下およびSn:0.0002%以上0.01%以下、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、鋼板の表面から50μmの深さの位置における圧延方向に展伸したMn、SiおよびPの濃化部の圧延直角方向の平均間隔である濃化部平均間隔が1000μm以下であり、鋼板の表面における深さが3μm以上10μm以下のクラックの数密度が3個/mm以上1000個/mm以下であり、鋼板の表面から板厚の1/4深さの位置におけるセメンタイト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイトの最近接距離の平均値である硬質相平均間隔が30μm以下である鋼組織を有し、前記溶融亜鉛めっき層は、3μm以上20μm以下の厚みを有することを特徴とする熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
(2)前記化学組成が、Bi:0.5質量%以下をさらに含有し、前記濃化部平均間隔が500μm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
(3)前記化学組成が、Ti:0.5質量%以下をさらに含有し、前記硬質相平均間隔が20μm以内であり、粒径3μm以上のTiNの数密度が500個/mm以下である鋼組織を有することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
(4)前記化学組成が、質量%で、Nb:1.0%以下、V:1.0%以下、W:1.0%、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする上記(1)〜上記(3)のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
(5)前記化学組成が、質量%で、REM:0.1%以下、Mg:0.05%以下、Ca:0.05%以下およびZr:0.05%以下からなる群から選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする上記(1)〜上記(4)のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
(6)鋼板の表面から板厚の1/4の深さの位置におけるMn、SiおよびPの合計含有量の最大値と最小値との比の値が1.30以下であることを特徴とする上記(1)〜上記(5)のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
(7)前記溶融亜鉛めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層であり、前記合金化溶融亜鉛めっき層中のFe濃度が7質量%以上かつAl濃度が0.5質量%以下であることを特徴とする上記(上記(のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
(8)下記工程(A)〜(C)を有することを特徴とする上記(1)〜上記(6)のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(A)溶鋼を、鋳片表面から10mmの深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度が10℃/秒以上となる条件で鋳造する鋳造工程;
(B)前記鋳造工程により得られた鋳片を熱間圧延に供し、780℃以上の温度域で熱間圧延を完了し、2℃/秒以上の平均冷却速度で冷却して、750℃以下の温度域で巻取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(C)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に下記式(i)を満足する条件下で酸洗処理を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;および
(D)前記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施して溶融亜鉛めっき鋼板とする溶融亜鉛めっき工程。
5000≦酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)≦2000000 (i)
(9)下記工程(A)〜(D)および(G)を有することを特徴とする上記(7)に記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(A)溶鋼を、鋳片表面から10mmの深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度が10℃/秒以上となる条件で鋳造する鋳造工程;
(B)前記鋳造工程により得られた鋳片を熱間圧延に供し、780℃以上の温度域で熱間圧延を完了し、2℃/秒以上の平均冷却速度で冷却して、750℃以下の温度域で巻取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(C)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に下記式(1)を満足する条件下で酸洗処理を施して酸洗鋼板とする酸洗工程
(D)前記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施して溶融亜鉛めっき鋼板とする溶融亜鉛めっき工程;および
(G)前記溶融亜鉛めっき工程により得られた溶融亜鉛めっき鋼板に合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板とする合金化処理工程。
5000≦酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)≦2000000
(i)
10)前記工程(D)に代えて、下記工程(E)および(F)を有することを特徴とする上記(8)または上記(9)に記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(E)前記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に90%以下の圧下率の冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(F)前記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施して溶融亜鉛めっき鋼板とする溶融亜鉛めっき工程。
(11)前記工程(A)において、移動磁場による溶鋼の攪拌を施して鋳造することを特徴とする上記(8)〜上記(10)のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(12)前記工程(A)において、鋳片表面から鋳片厚の1/4の深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度が0.2℃/秒以上となる条件で鋳造することを特徴とする上記(8)〜上記(11)のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(13)前記工程(B)において、1200℃以上の温度域で8時間以上保持した鋳片を熱間圧延に供することを特徴とする上記(8)〜上記(12)のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
ここで、鋼板の表面とは、めっき基材である鋼板と溶融亜鉛めっき層との界面であり、通常、熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の断面を走査型電子顕微鏡を用いて反射電子(BSE像)で観察されるコントラストの差から判別できる。反射電子(BSE像)でもその界面が不鮮明な場合には、溶融亜鉛めっき鋼板の断面をEDXにてFeやAl、Zn等、溶融亜鉛めっき層に含まれる元素を面分析し、Fe濃度が70質量%以上である部位を鋼板、Fe濃度が70質量%未満である部位を溶融亜鉛めっき層とすることで溶融亜鉛めっき層と鋼板との界面を判別する。
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき密着性および靭性に優れているので、熱処理用鋼板特に耐食性が要求される熱間プレス成形品の成形材料として好適である。その中でも自動車や各種の産業機械に用いられる構造部材の素材、特に自動車のメンバーや足廻り部品に代表される構造部材の素材として最適である。また、安価に製造できるので産業上格段の効果を奏する。
以下、本発明に係る熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法について説明する。
なお、以下の説明に係る本発明の形態では、熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板に施される熱処理は、オーステナイト域に加熱したのち、金型内でMs点以下に急冷する熱処理である。
1.鋼板の化学組成
本発明の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板のめっき基材である鋼板の化学組成の限定理由について説明する。化学組成についての「%」は「質量%」を意味する。
C:0.07%以上0.50%以下
Cは、熱処理後の鋼板の強度確保のために必要な元素である。C含有量が0.07%未満では熱処理後において980MPa以上の引張強度を確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.07%以上とする。熱処理後において1480MPa以上の引張強度を確保するにはC含有量を0.18%以上とすることが好ましく、熱処理後において1780MPa以上の引張強度を確保するにはC含有量を0.28%以上とすることが好ましい。一方、C含有量が0.50%超では溶接性の劣化が著しくなる。したがって、C含有量は0.50%以下とする。
Si:0.005%以上2.0%以下
Siは、焼き入れ性を高める作用を有する。Si含有量が0.005%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Si含有量は0.005%以上とする。一方、Si含有量が2.0%超では、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Siの含有量は2.0%以下とする。
Mn:0.3%以上4.0%以下
Mnは、焼き入れ性を高める作用を有する。Mn含有量が0.3%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.3%以上とする。好ましくは0.5%以上である。一方、Mn含有量が4.0%超では、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Mn含有量は4.0%以下とする。好ましくは3.0%以下である。
P:0.0002%以上0.2%以下
Pは、焼き入れ性を高める作用を有する。P含有量が0.0002%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、P含有量は0.0002%以上とする。好ましくは0.004%以上である。一方、P含有量が0.2%超では、結晶粒界へのP偏析に起因する靭性の劣化が著しくなる。したがって、P含有量は0.2%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
S:0.01%以下
Sは、不純物として含有され、鋼中に硫化物を形成して靭性を劣化させる作用を有する。S含有量が0.01%超では靭性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.008%以下である。S含有量は低ければ低いほど好ましいので、S含有量の下限は規定する必要はないが、製鋼コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0004%以上である。
sol.Al:0.0002%以上2.0%以下
Alは、鋼を脱酸して鋼板を健全化する作用を有する。sol.Al含有量が0.0002%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は0.0002%以上とする。好ましくは0.0004%以上である。一方、sol.Al含有量が2.0%超では、粗大なアルミナ系介在物が増加して、靭性の劣化が著しくなる。したがって、sol.Al含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.5%以下である。
N:0.010%以下
Nは、不純物として含有され、鋼中に窒化物を形成して靭性を劣化させる作用を有する。N含有量が0.010%超では靭性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.008%以下である。N含有量は低ければ低いほど好ましいので、N含有量の下限は規定する必要はないが、製鋼コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0004%以上である。
Sn:0.0002%以上0.01%以下
Snは、溶融亜鉛めっき層のめっき密着性を向上させる作用を有するので、本発明において非常に重要な元素である。SnはFeよりも酸化し難い元素であると同時に、鋼板表層に偏析し易い元素であるので、鋼板表層に濃化して溶融亜鉛めっき層のめっき密着性を向上させる。Snが0.0002%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Sn含有量は0.0002%以上とする。好ましくは0.0004%以上、さらに好ましくは0.0005%以上である。一方、Sn含有量が0.01%超では、熱間加工性の低下が著しくなり、熱間加工時に割れが発生してしまう場合がある。したがって、Sn含有量は0.01%以下とする。
Bi:0.5%以下
Biは、凝固の接種核となり、凝固時のデンドライトアーム間隔を小さくし、凝固組織を細かくする作用を有する。その結果、MnやSiやP等の偏析が生じ易い元素の偏析を抑制し、熱処理後の鋼板部材の局所的な硬度差を低減し、熱処理後の鋼板部材の靭性を向上させる作用を有する。したがって、Biを含有させることが好ましい。しかしながら、Biは鋼中に割れの起点となる酸化物を形成するため、Biの含有量が0.5%を超えると却って靭性の劣化を招く場合がある。したがって、Bi含有量は0.5%以下とする。好ましくは0.03%以下である。上記作用による効果をより確実に得るにはBi含有量を0.0002%以上とすることが好ましく、このようにすることで、鋼板の表面から50μmの深さの位置(以下、「深さ位置A」ともいう。)における圧延方向に展伸したMn、SiおよびPの濃化部の、圧延方向と直交する方向、すなわち鋼板の幅方向(本発明において、「圧延直角方向」という。)の平均間隔(本発明において、「濃化部平均間隔」ともいう。)を500μm以下とすることをより安定的に達成することができる。さらに好ましくは0.0003%以上とすることであり、このようにすることで、濃化部平均間隔を300μm以下とすることをより安定的に達成することができる。
Ti:0.5%以下
Tiは、セメンタイト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイト等の硬質相を微細に分散させる作用を有するので、熱処理後の鋼板部材における硬度ばらつきを抑制して、熱処理後の鋼板部材において一層良好な靭性を得ることができる。したがって、Tiを含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が0.5%超では、粗大な晶出系TiN粒子が多く形成されてしまうため、却って焼入れ後の鋼板部材の靭性を劣化させる場合がある。したがって、Ti含有量は0.5%以下とする。このようにすることにより、粒径が3μm以上のTiNの数密度(以下、「粗大TiN数密度」という。)を500個/mm以下とすることをより安定的に達成することができる。好ましくは0.2%以下である。上記作用による効果をより確実に得るにはTi含有量を0.003%以上とすることが好ましい。このようにするにより、後述する硬質相平均間隔を20μm以下とすることをより安定的に達成することができる。さらに好ましくは0.01%以上である。
Nb:1.0%以下、V:1.0%以下、W:1.0%、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Nb、V、W、Cr、Mo、Cu、NiおよびBは、Mnと同様に鋼の焼入性を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、Nb、V、W、Cr、Mo、CuおよびNiについてはそれぞれ含有量が1.0%を超えると、Bについては含有量が0.01%を超えると、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Nb、V、W、Cr、Mo、Cu、NiおよびBの含有量はそれぞれ上記のとおりとする。上記作用による効果をより確実に得るには、Nb、V、W、Cr、Mo、CuおよびNiのいずれかの元素を0.005%以上とするか、Bの含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。Bについては含有量を0.0004%以上とすることがさらに好ましい。
REM:0.1%以下、Mg:0.05%以下、Ca:0.05%以下およびZr:0.05%以下からなる群から選択される1種または2種以上
REM(希土類元素)、Mg、CaおよびZrは、鋼中に形成される酸化物や硫化物を微細に球状化させて靭性を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、REMについては含有量が0.1%超えると、Mg、CaおよびZrについてはそれぞれ含有量が0.05%を超えると、鋼中に形成される酸化物や硫化物の数が過剰となり、却って靭性を劣化させる。したがって、REM(希土類元素)、Mg、CaおよびZrの含有量はそれぞれ上記のとおりとする。上記作用による効果をより確実に得るには、REM、Mg、CaおよびZrのいずれかの含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、上記REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。
2.鋼板の濃化部、表面形状および鋼組織
本発明の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板のめっき基材である鋼板の濃化部、表面形状および鋼組織の限定理由について説明する。
(1)鋼板の表面から50μmの深さの位置における圧延方向に展伸したMn、SiおよびPの濃化部の圧延直角方向の平均間隔(濃化部平均間隔):1000μm以下
濃化部平均間隔を1000μm以下とすることで、熱処理後の鋼板部材の硬度分布が均一化され、熱処理後の鋼板部材において良好な靭性を得ることができる。ここで、Mn、SiおよびPの濃化部の定義は、Mn、SiおよびPの少なくとも一つの元素の濃度がバルクの濃度に対し1.1倍以上である部位とする。
濃化部平均間隔の求め方は次のとおりである。すなわち、溶融亜鉛めっき鋼板の表面を研削して深さ位置Aにおける表面を露出させる。露出させた表面について、圧延直角方向にEPMAの線分析を行う。一回の線分析による測定距離は、濃化部平均間隔が1000μmとなる場合についても対応できるように、3mm以上とすることが好ましい。線分析により求めたSi濃度、Mn濃度およびP濃度のラインプロファイルのそれぞれについて、平均濃度を求め、これらの濃度をバルクの含有量とする。ラインプロファイルにおけるSi濃度、Mn濃度またはP濃度が平均濃度の1.1倍となる領域を求め、これらの領域を濃化部とする。得られた濃化部をなす各領域において最大濃度を示す部分をその領域の中心点とする。隣接する領域同士の中心点間距離を求め、これらをラインプロファイル内で平均し、得られた平均値を濃化部平均間隔とする。
濃化部平均間隔が1000μm超では、Mn、Siおよび/またはPの濃化が不均一に生じているため、鋼板内に成分濃化による局所的な焼入れ性のばらつきが生じ、これにより熱処理後の鋼板部材の硬度にもばらつきが生じる。このような鋼板部材に荷重が負荷されると、上記硬度ばらつきにより硬度差が生じている箇所から割れが生じやすい。このため靭性が劣化する。よって、濃化部平均間隔は1000μm以下とする。好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。これらの濃化部平均間隔は、上述したようにBiを含有させることでより確実に達成することができる。濃化部平均間隔は小さいほど好ましいので下限は特に規定しないが、通常スラブ厚みである30mm〜350mm程度のスラブを鋳造する場合を考慮すると、冷却速度の関係から3μm以上とすることが実用上好ましい。
(2)鋼板の表面における深さが3μm以上10μm以下のクラックの数密度:3個/mm以上1000個/mm以下
鋼板の表面における深さが3μm以上10μm以下のクラックの数密度(以下、「クラック数密度」と略記する。)を3個/mm以上1000個/mm以下とすることにより、熱処理加工時および熱処理後の鋼板部材において良好な酸化スケールの密着性を実現することができる。
鋼板表面に適度なクラックを形成することにより、溶融亜鉛めっき層と鋼板との接触面積の増加することに加えて、溶融亜鉛めっき層が鋼板に入り込むアンカー効果が相俟って、めっき密着性が飛躍的に向上する。
クラックの深さが3μm未満ではめっき密着性向上の効果が小さい。一方、クラックの深さが10μm超では、熱処理後の鋼板部材に荷重が負荷された際に、クラック自体が亀裂に発展しやすく、靭性が劣化する。また、クラック数密度が3個/mm未満ではめっき密着性向上の効果が十分に得られない場合がある。一方、クラック数密度が1000個/mm超では、熱処理後の鋼板部材に荷重が負荷された際に、クラック同士の連結が生じ易く、大きなクラックに発展する可能性が高まり、却って靭性を劣化させる場合がある。したがって、鋼板表面における深さが3μm以上10μm以下のクラック数密度は3個/mm以上1000個/mm以下とする。
このようにすることにより、上述した濃化部平均間隔の規定と相俟って、優れた靭性を確保したうえで優れためっき密着性を得ることができる。
なお、クラック数密度の測定は、次のようにして行えばよい。すなわち、溶融亜鉛めっき鋼板の断面観察を行い、深さが3μm以上10μm以下であるクラックを特定する。観察視野において特定されたこれらのクラックの本数を計数する。観察像で線状に観察される鋼板の表面を直線近似し、その直線の観察視野における長さで求められたクラック本数を除して、クラック数密度とする。
(3)鋼板の鋼組織における、硬質相平均間隔:30μm以下
鋼板の表面から板厚の1/4深さの位置におけるセメンタイト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイトの最近接距離の平均値(以下、本発明において「硬質相平均間隔」と略記する。)を30μm以下とすることにより、熱処理後の鋼板部材の硬度分布が均一化され、熱処理後の鋼板部材において良好な靭性を得ることができる。
硬質相平均間隔は次のようにして求めればよい。すなわち、鋼板の圧延方向に平行な断面についてナイタルエッチングを施し断面観察用の試料を得る。得られた試料について、走査型電子顕微鏡を用いて鋼組織を観察する。測定倍率は1000倍とし、鋼板の表面から板厚の1/4深さの位置(以下、「板厚1/4位置」という。)において各10視野、都合20視野を観察する。得られた20視野の鋼組織画像の全てについて、セメンタイト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイト(以下、この硬質相平均間隔の説明においてこれらを「硬質相」と総称する。)を特定する。特定された硬質相のそれぞれについて、最も近接する他の硬質相との距離(以下、「最近接距離」という。)を計測する。各視野について測定された最近接距離のうち最長のものおよび最短のものを選び出すことにより、20個の最長の最近接距離および20個の最短の最近接距離を求める。これらの都合40個の最近接距離のデータにおける算術平均値を硬質相平均間隔とする。
セメンタイト、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのようにフェライトに比してC含有量の高い相および組織は、熱処理の加熱工程において早期にオーステナイトに変態する。したがって、硬質相平均間隔が狭い鋼板は、早期にオーステナイトに変態する領域が密に存在し、オーステナイトに変態しにくい相からなる広い領域が存在しない。それゆえ、熱処理の加熱工程における鋼板全体のオーステナイト化が早期に完了する。そして、これにより、オーステナイト中のC濃度の均一化が促進され、熱処理後の鋼板部材における硬度ばらつきが抑制され、熱処理後の鋼板部材において良好な靭性を得ることができる。
上記の硬質相平均間隔が30μm超では、熱処理後の鋼板部材における硬度ばらつきを十分に抑制することが困難となり、熱処理後の鋼板部材において靭性が劣化する場合がある。したがって、硬質相平均間隔は30μm以下とする。好ましくは20μm以下である。これは、上述したようにTiを含有させることでより確実に達成することができる。
なお、硬質相平均間隔が上記のとおりであれば、フェライトの面積率や平均粒径は特に規定する必要はない。
(4)粒径3μm以上のTiNの数密度(粗大TiN数密度):500個/mm以下
粗大TiN数密度を500個/mm以下とすることが好ましい。
上述したように、Tiを含有させることにより、セメンタイト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイト等の硬質相を微細に分散させることが可能となり、熱処理後の鋼板部材において一層良好な靭性を得ることが可能となる。しかしながら、Tiを過剰に含有させると、粗大なTiN粒子が多く形成されてしまい、粗大TiNと他の鋼組織と界面において発生したボイドが連結し易くなり、却って靭性を劣化させる場合がある。したがって、Tiの含有を適正化することにより粗大なTiN粒子の形成を抑制することが好ましい。なお、TiNの粒径のしきい値を3μmとしたのは、フェライトの微細化や強化に寄与する微細なTi系化合物の粒径はおおむね数十nmであるから、粒径が1μmを大きく超え、3μm以上となったTiNが鋼板の強化に寄与することはなく、その一方でTiNの粒径が3μm以上となると、TiNと他の鋼組織と界面において発生したボイドが機械特性に与える影響が顕著となるためである。
粗大TiN数密度が500個/mm超では、靭性の劣化が著しくなる場合がある。したがって、粗大TiN数密度は500個/mm以下とすることが好ましく、100個/mm以下であればさらに好ましく、50個/mm以下とすることが特に好ましい。
(5)鋼板の表面からの板厚の1/4深さの位置におけるMn+Si+P含有量の最大値と最小値との比の値:1.30以下
鋼板の表面からの板厚の1/4深さの位置(板厚1/4位置)におけるMn+Si+P含有量の最大値と最小値との比(最大値/最小値、以下、「偏析比」ともいう。)の値は1.30以下であることが好ましい。
熱処理後の鋼板部材についてより一層優れた靭性を得るには、鋼板の表面近傍におけるMn、SiおよびPの偏析を抑制することに加えて、鋼板内部におけるMn、SiおよびPの偏析を抑制することが好ましい。鋼板内部におけるMn、SiおよびPの偏析の指標である上記偏析比の値を1.30以下とすることにより、熱処理後の鋼板部材について、鋼板内部の硬度ばらつきも低減されるので、鋼板の表面に発生した亀裂の鋼板内部における伝播が抑制される。このため、熱処理後の鋼板部材の靭性がより一層向上する。
3.溶融亜鉛めっき層
本発明の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層である溶融亜鉛めっき層の限定理由について説明する。
(1)溶融亜鉛めっき層の厚み:3μm以上20μm以下
溶融亜鉛めっき層の厚みが3μm未満では十分な耐食性を確保することが困難である。したがって、溶融亜鉛めっき層の厚みは3μm以上とする。好ましくは4μm以上である。一方、溶融亜鉛めっき層の厚みが20μm超では溶融亜鉛めっき層の密着性の低下が著しくなる。したがって、溶融亜鉛めっき層の厚みは20μm以下とする。好ましくは15μm以下である。
(2)合金化溶融亜鉛めっき層のFe濃度:7質量%以上かつAl濃度:0.5質量%以下
溶融亜鉛めっき処理後に合金化処理を施すことにより溶融亜鉛めっき層を合金化溶融亜鉛めっき層とすると、めっき密着性が一層向上するので好ましい。溶融亜鉛めっき層を合金化溶融亜鉛めっき層とする場合には、合金化溶融亜鉛めっき層におけるFe濃度を7質量%以上とし、Al濃度を0.5質量%以下とすることが好ましい。
合金化溶融亜鉛めっき層におけるFe濃度を7質量%以上とすることにより、合金化によるめっき密着性向上作用をより確実に得ることができる。さらに好ましくは8質量%以上である。Fe濃度の上限は特に規定しないが、Fe濃度を25質量%以下とすることにより、鋼板の平坦矯正時やブランク加工時におけるパウダリングを抑制することができるので好ましい。さらに好ましくは20質量%以下である。
また、合金化溶融亜鉛めっき層におけるAl濃度を0.5質量%以下とすることにより、鋼板と合金化溶融亜鉛めっき層との界面におけるAl濃化を抑制することができ、めっき剥離が生じやすいAl濃化部の界面面積を低減させることができるので好ましい。Al濃度の下限は特に規定しないが、合金化溶融亜鉛めっき層中のAlは、微量であるならば合金化溶融亜鉛めっき層の剥離を抑制する作用を発揮するため、0.02質量%以上とすることが好ましい。
なお、合金化溶融亜鉛めっき層には、合金化処理を行う際に、めっき基材である鋼板からSi、Mn、P、S等の合金元素が取り込まれる可能性があるものの、通常の条件で溶融めっきおよび合金化処理した際に合金化溶融亜鉛めっき層中にとりこまれる範囲内であれば、めっき品質に悪影響を及ぼすことはない。
4.製造方法
次に、本発明の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の好ましい製造方法について説明する。
(1)鋳造工程
上記の化学組成を有する溶鋼を、鋳片表面から10mmの深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度(以下、「10mm深さ冷却速度」という。)を10℃/秒以上となる条件で鋳造することが好ましい。
上記の10mm深さ冷却速度はMn、SiおよびPの偏析に大きく影響する。
10mm深さ冷却速度が10℃/秒未満では、冷却速度が遅すぎるため、鋳片におけるデンドライトアーム間隔が拡がり、上記の濃化部平均間隔を1000μm以下とすることが困難となる。したがって、上記平均冷却速度は10℃/秒以上とすることが好ましい。
上述したように、Biを含有させた場合には、Biによる凝固組織を細かくする作用と相俟って、濃化部平均間隔を500μm以下とすることをより安定的に達成できる。さらに鋳造過程において移動磁場による溶鋼の攪拌を施すと、デンドライトアーム間隔をより一層狭くすることができるので、濃化部平均間隔を300μm以下とすることをより安定的に達成できる。
また、Tiを0.5%以下含有させる場合には、鋳片表面から鋳片厚の1/4深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度(以下、「1/4深さ冷却速度」という。)を0.2℃/秒以上となる条件で鋳造することが好ましい。TiNは、MnSやPと同様にデンドライドの樹間に偏析し、デンドライドの樹間内にTiNを晶出する。したがって、鋳片の全体的な冷却速度を高めることにより粗大なTiNの晶出を抑制することができる。鋳片の全体的な冷却速度の指標として、1/4深さ冷却速度を0.2℃/秒以上となる強冷却条件で鋳造することにより、粒径3μm以上のTiNの数密度(粗大TiN数密度)を500個/mm以下とすることをより確実に実現できる。
上記の10mm深さ冷却速度および1/4深さ冷却速度は、具体的には次の方法により求められる。すなわち、得られた鋳片の断面をピクリン酸にてエッチングし、鋳片表面から10mmの深さの位置および鋳片厚の1/4深さの位置のそれぞれについて鋳込み方向に5mmピッチでデンドライト2次アーム間隔λ(μm)を100点測定する。そして、スラブの液相線温度から固相線温度までの温度域内の冷却速度A(℃/秒)を、それらの測定されたλ値から次式に基づいて算出する。得られた冷却速度Aを算術平均して、それらの平均値をそれぞれ10mm深さ冷却速度および1/4深さ冷却速度とする。
λ=710×A−0.39
(2)熱間圧延工程
上記鋳造工程により得られた鋳片を熱間圧延に供し、780℃以上の温度域で熱間圧延を完了し、2℃/秒以上の平均冷却速度で冷却して、750℃以下の温度域で巻取って熱延鋼板とすることが好ましい。
熱間圧延完了温度が780℃未満では、フェライト域圧延となって、粗大なフェライトが生成することが懸念される。そのため、上記の硬質相平均間隔を安定的に30μm以下とすることが困難となる。したがって、熱間圧延完了温度は780℃以上とすることが好ましい。熱間圧延完了温度の上限は特に規定しないが、スケール生成が著しくなってスケール噛み込みによる表面疵が誘発されるのを防ぐために1050℃以上とすることが好ましい。
熱間圧延完了後の平均冷却速度が2℃/秒未満または巻取温度が750℃超では、フェライトの生成が過剰となり、硬質相平均間隔を安定的に30μm以下とすることが困難となる。したがって、熱間圧延完了から巻取りまでの平均冷却速度は2℃/秒以上とし、巻取温度は750℃以下とすることが好ましい。熱間圧延完了から巻取りまでの平均冷却速度の上限は特に規定する必要はないが、良好な平坦形状を確保する観点からは200℃/秒以下とすることが好ましい。また、巻取温度の下限も特に規定する必要はなく室温でも構わない。
熱間圧延に供する鋳片は1200℃以上の温度域で8時間以上保持することが好ましい。このようにすることにより、鋳造工程において鋳片内部のデンドライト樹間に偏析したMn、Si、Pなどの元素を再度拡散させることができ、これらの元素の偏析を低減することができる。鋳片を上記の温度域で8時間以上保持することにより、上記の偏析比の値を1.30以下とすることがより安定的に実現される。
熱間圧延に供する鋳片を保持する温度の上限は特に規定されない。加熱炉等の耐火物寿命の観点から1300℃以下にすることが好ましい。また、熱間圧延に供する鋳片を保持する時間の上限も特に規定されない。生産性の観点から60時間以下とすることが好ましい。
(3)酸洗工程
上記の熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に下記式(1)を満足する条件下で酸洗処理を施して酸洗鋼板とすることが好ましい。
5000≦酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)≦2000000 (1)
鋼板の表面におけるクラックは酸洗処理によって鋼組織の粒界部が選択酸化されることによって形成される。酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)の値が5000未満では、鋼組織の粒界部の選択酸化が不十分となり、上記のクラック数密度を安定的に3個/mm以上とすることが困難となる。一方、酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)の値が2000000超では、と鋼組織の粒界部の選択酸化が過剰に進行してしまい、クラック数密度を安定的に1000個/mm以下とすることが困難となる。
なお、酸の種類は特に限定されるものでなく、塩酸や硫酸が例示される。
(4)冷間圧延工程
上記の酸洗鋼板は、そのまま溶融亜鉛めっきを施して熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板としてもよいが、冷間圧延を施して冷延鋼板としてから溶融亜鉛めっきを施して熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。冷間圧延を施す場合には、上記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に90%以下の圧下率の冷間圧延を施して冷延鋼板とする。
冷間圧延の圧下率が90%超では、圧下率が高すぎるため、酸洗で形成したクラックが消滅してしまうことが懸念される。したがって、冷間圧延を施す場合には、その圧下率を90%以下とすることが好ましい。
(5)溶融亜鉛めっき工程
上記酸洗工程により得られた酸洗鋼板、または、上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に、溶融亜鉛めっき処理を施して熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板とする。溶融亜鉛めっき処理後の合金化処理を施してもよい。溶融亜鉛めっき浴の温度は限定されない。生産性の観点から、溶融亜鉛めっき浴内の亜鉛または亜鉛合金の融点以上(当該融点+200℃)以下とすることが好ましい。
合金化処理を施す場合には、溶融亜鉛めっき処理を施した後、溶融亜鉛めっき鋼板の表面温度が470℃以上680℃以下となった状態で1秒間以上40秒間以下保持することが好ましい。溶融亜鉛めっき鋼板の表面温度を470℃以上とすることにより、合金化反応を効率的に促進させることができるので生産性の観点から好ましい。さらに好ましくは500℃以上である。また、溶融亜鉛めっき鋼板の表面温度を680℃以下とすることにより、合金化反応の制御が容易となり、精度の高いFe濃度の調整が可能となるので好ましい。合金化処理温度を470℃以上680℃以下として合金化処理時間を1秒間以上40秒間以下とすることで、合金化溶融亜鉛めっき層のFe濃度を7質量%以上25質量%以下とすることができる。また、合金化溶融亜鉛めっき層のAl濃度は、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度を調整することにより、0.5質量%以下とすることができる。
なお、溶融亜鉛めっき処理後または合金化処理後の溶融亜鉛めっき鋼板を調質圧延ロールにて調質圧延を施しても特に構わない。
(6)焼鈍
上記方法により得られる熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板には、熱間圧延後または冷間圧延後、溶融亜鉛めっき前に焼鈍を実施しても構わない。但し、鋼組織がオーステナイトとフェライトとの2相域となる温度域において60時間以上保持する条件(以下、「2相域長期保持条件」という。)で焼鈍を行うと、フェライトが過剰に生成し、上記の硬質相平均間隔を30μm以下とすることが困難となる可能性がある。したがって、熱間圧延後または冷間圧延後に焼鈍を行う場合には、焼鈍における加熱保持条件を上記の2相域長期保持条件としないことが好ましい。この条件以外であれば、例えば冷却速度が変化しても上記の硬質相平均間隔に影響を及ぼさないので、他の焼鈍条件は特に規定する必要はない。
本発明の具体的な実施例を以下に説明する。
1.供試材の作製
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造試験機を用いて連続鋳造を実施し、巾1000mmで250mm厚のスラブとした。10mm深さ冷却速度の変更は鋳型の冷却水量を変更することによって行った。また、1/4深さ冷却速度の変更は連続鋳造試験機の2次スプレーの水量を変更することによって行った。一部のスラブについては、鋳型内で移動磁場による電磁攪拌を施した。
Figure 0005488410
このようにして得られたスラブを加熱し、熱間圧延試験機により熱間圧延を施して熱延鋼板とし、その後、塩酸による酸洗処理を施して酸洗鋼板とした。一部のスラブについては熱間圧延に供する前に1250℃で24時間保持する熱処理(以下、「均質化処理」という。)を施した。また、一部の酸洗鋼板については冷間圧延を施して冷延鋼板とした。このようにして得られた酸洗鋼板および冷延鋼板について、連続溶融亜鉛めっき試験機を用いて焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を施した。焼鈍および溶融亜鉛めっき処理の条件は、780℃で60秒間保持した後に、7℃/秒の冷却速度で520℃まで冷却して60秒間保持し、470℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬するものとした。めっきの厚みは2〜25μmとし、溶融亜鉛めっき浴のAl濃度を変化させることにより溶融亜鉛めっき層のAl濃度を変化させた。また、一部の溶融亜鉛めっき鋼板については、溶融亜鉛めっき処理後に600℃で30秒間保持する合金化処理を施した。
これらの製造条件を表2および3に示す。
Figure 0005488410
Figure 0005488410
このようにして得られた鋼板に、熱処理加工として、熱間プレス試験装置を用いて、熱間プレスを実施した。熱間プレスは、鋼板を加熱炉内で鋼板表面温度900℃に到達させ、その温度にて150秒間保持し、加熱炉より取り出し、冷却装置付きの金型にてプレスをすみやかに実施し、成形と同時に焼入れ処理を実施した。熱間プレス後の鋼板部材(以下、「熱間プレス鋼板部材」という。)の形状は平板とした。熱間プレス用の試験片サイズは、熱延鋼板をめっき基材とするものについては板厚2.6mm、冷延鋼板をめっき基材とするものについては板厚1.4mmとし、幅300mm×長さ80mmとした。
2.評価方法
(1)スラブの液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度
スラブ表面から10mmの深さの位置およびスラブ厚の1/4深さ位置におけるスラブ(鋳片)の液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度(10mm深さ冷却速度、1/4深さ冷却速度)は、得られたスラブの断面をピクリン酸にてエッチングし、スラブ表面から10mmの深さの位置と鋳片厚の1/4深さ位置とについて、鋳込み方向に5mmピッチでデンドライト2次アーム間隔を100点測定した。それらの値から次式に基づいて液相線温度から固相線温度までの温度域内の冷却速度A(℃/秒)を算出し、算術平均して平均値を求めて、各深さ位置の平均冷却速度を求めた。
λ=710×A−0.39
(2)濃化部平均間隔
濃化部平均間隔の測定はEPMAの線分析にて実施した。すなわち、鋼板の表面(鋼板と溶融亜鉛めっき層との界面)から50μm深さ位置まで研削して、EPMAの線分析を実施した。圧延方向に展伸したMn、SiおよびPの濃化部の圧延直角方向の平均間隔は、線分析から得られたMn、SiおよびPの濃度の波形を読み取り、濃度平均値の1.1倍以上である濃度極大値の間隔から求めた。
濃化部平均間隔の測定方法は具体的には次のとおりであった。すなわち、鋼板の表面を研削して深さ位置Aにおける表面を露出させた。露出させた表面について、圧延直角方向にEPMAの線分析を行った。一回の線分析による測定距離は、濃化部平均間隔1000μmが測定できるように、3mm以上とした。線分析により求めたSi濃度、Mn濃度およびP濃度のラインプロファイルのそれぞれについて、平均濃度を求め、この濃度をバルクの含有量とした。ラインプロファイルにおけるSi濃度、Mn濃度またはP濃度が平均濃度の1.1倍となる領域を求め、これらの領域を濃化部とした。得られた濃化部をなす各領域において最大濃度を示す部分を、その領域の中心点とした。隣接する領域同士の中心点間距離を求め、これらをラインプロファイル内で平均し、得られた平均値を濃化部平均間隔とした。
(3)偏析比
偏析比を求めるために必要なMn、SiおよびPの合計含有量の測定はEPMAの線分析にて実施した。すなわち、上記の濃化部平均間隔を求める方法と同様に、板厚1/4位置を露出させ、その露出面についてEPMAの線分析を実施して、Mn濃度、Si濃度およびP濃度のそれぞれについてラインプロファイルを求めた。求めたラインプロファイルを総和することにより、Mn、SiおよびPの合計含有量のラインプロファイルとした。この合計含有量のラインプロファイルにおける最大値および最小値を求め、これらの数値から偏析比(最大値/最小値)を求めた。
(4)鋼組織の評価
鋼板の圧延方向に平行な断面について、ナイタルエッチングを施し、走査型電子顕微鏡を用いて、得られた断面の鋼組織を観察した。測定倍率は1000倍とし、板厚1/4位置において各10視野(合計20視野)を観察した。得られた鋼組織画像から硬質相平均間隔を求めた。すなわち、得られた20視野の鋼組織画像の全てについて、セメンタイト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイト(以下、鋼組織の評価方法の説明においてこれらを「硬質相等」と総称する。)を特定した。特定された硬質相等のそれぞれについて最近接距離を計測した。各鋼組織画像について測定された最近接距離のうち最長のものおよび最短のものを選び出すことにより、20個の最長の最近接距離および20個の最短の最近接距離を求めた。これらの合計40個の最近接距離のデータにおける算術平均値を硬質相平均間隔とした。
(5)クラック数密度
鋼板の表面のクラック数密度は、鋼板の圧延方向に平行な断面について、走査型電子顕微鏡を用いて2000倍の倍率で100視野観察し、単位長さ当たりの個数に換算して求めた。具体的には、鋼板の断面観察を行い、深さが3μm以上10μm以下であるクラックを特定した。観察視野において特定されたこれらのクラックの本数を計数した。観察像で線状に観察される鋼板の表面を直線近似し、その直線の観察視野における長さで計数されたクラック本数を除して、クラック数密度とした。
(6)粗大TiN
TiNの平均粒径、および平均粒径の測定に基づく3μm以上のTiNの数密度(粗大TiN数密度)は、得られた鋼板の断面を走査型電子顕微鏡にて、2000倍の倍率で、200視野を撮影し、その画像処理にて算出した。粒径は、画像処理にて求められたTiNの断面積を求め、断面形状が円であるとした場合の換算直径(円換算直径)として求めた。
(7)機械特性
A)引張試験
得られた溶融亜鉛めっき鋼板に対して、引張試験を実施した。
各鋼板の圧延直角方向からJIS5号引張試験を採取した。試験方法はJIS Z2241に準じた。引張強さ(TS)を測定した。
B)熱間プレス鋼板部材の評価
熱間プレス鋼板部材に対して、硬度のばらつきと靱性およびめっき密着性を次の方法により評価した。
<熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつき>
熱間プレス鋼板部材をその表面から50μmの深さの位置まで研削し、研削表面の硬度をビッカース硬度計で測定した。測定荷重は98kNであった。測定方法はJIS Z2244に準拠した。この硬度測定を、試験片の幅方向に200μmピッチで移動しながら、合計50回実施した。各部材についてこうして得られた50個のビッカース硬度値(Hv)の最大値および最小値から、ビッカース硬度の差(ΔHv)を求めた。
<熱間プレス鋼板部材の靭性>
熱間プレス鋼板部材を3点曲げ冶具に取り付け、冷却媒体にて冷却し、冷延鋼板をめっき基材とするものは9.80×10Nm(100kgf・m)にて落錘試験を実施し、熱延鋼板をめっき基材とするものは1.96×10Nm(200kgf・m)にて実施した。脆性割れが発生する温度の上限値(以下、「脆性割れ発生温度」という。)を測定した。
<熱間プレス鋼板部材のめっき密着性>
熱間プレス鋼板部材のめっき密着性を調査した。粘着テープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標))を長さ200mmに切り取り、鋼板部材上に貼り付け、その後剥がして、めっきの剥離重量を測定した。
<熱間プレス鋼板部材の引張特性>
得られた熱間プレス鋼板部材からJIS 13B号引張試験を採取した。試験方法はJIS Z2241に準じた。引張強さ(TS)を測定した。
(8)溶融亜鉛めっき層
溶融亜鉛めっき鋼板を圧延方向に平行に切断し、走査型電子顕微鏡を用いて得られた断面を観察することにより溶融亜鉛めっき層の厚みを求めた。測定倍率は500倍とし、各試料につてN=20の厚みを測定し、算術計算により平均厚みを求め、その値を溶融めっき層厚みとした。
溶融亜鉛めっき層の化学組成は、10%濃度の塩酸にインヒビットを溶解した溶液にて溶融亜鉛めっき層を溶解し、原子吸光法にてFe濃度とAl濃度とを調査した。
(9)塗装後耐食性
得られた熱間プレス鋼板部材に、日本パーカライジング(株)製PBL−3080で通常の化成処理条件により燐酸亜鉛処理を行ったのち、関西ペイント(株)製電着塗料GT−10を電圧200Vのスロープ通電で電着塗装し、焼き付け温度150℃で20分間焼き付け塗装した。塗膜厚みは20μmであった。試験片の塗膜にカッターナイフで素地に達するスクラッチ傷を入れた後、JIS Z2371に規定された塩水噴霧試験を480時間行った。傷部からの塗膜膨れ幅または錆幅を測定し、塗装後耐食性を評価した。評価基準は錆幅、塗膜膨れ幅のいずれか大きい方の値で0mm以上〜4mm未満を良好:評価記号○、4mm以上を不良:評価記号×とした。
3.評価結果
上記の評価試験の結果を表4および5に示す。なお、表1〜5における、化学組成、製造条件、組織特性およびめっき層厚みを示す数値に下線が付されたものは、本発明の規定の範囲外であることを示している。
Figure 0005488410
Figure 0005488410
(1)本発明
本発明である供試材No.1〜30は、濃化部平均間隔が1000μm以下であるため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが25Hv以下であって脆性割れ発生温度が−40℃以下であり、靭性に優れていた。まためっき剥離重量も240mg以下であり、めっき密着性にも優れていた。
その中で、Tiを含有する供試材No.2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,22,23,24,25,26および27は、硬質相平均間隔が20μm以下であるため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが20Hv以下であって3点曲げ脆性割れ発生温度が−50℃以下であり、靭性がさらに優れていた。
Biを含有する供試材No.19〜30は、濃化部平均間隔が500μm以下であるため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが15Hv以下であって脆性割れ発生温度が−60℃以下であり、靭性がさらに優れていた。
BiおよびTiの双方を含有するNo.22〜27は、硬質相平均間隔が20μm以下でかつ、濃化部平均間隔が500μm以下であるため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが10Hv以下であって脆性割れ発生温度が−70℃以下であり、靭性が特に優れていた。
Biを含有し鋳型内電磁攪拌を行った供試材のうちNo.24,27および29は、濃化部平均間隔が300μm以下であるため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが5Hv以下であって脆性割れ発生温度が−80℃以下であり、靭性が際立って優れていた。
均質化処理を行ったNo.2,4,19,25および26は偏在比が1.30以下であるため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが3Hv以下であって脆性割れ発生温度が−100℃以下であり、靭性が最も優れていた。
(2)比較例
供試材No.31は10mm冷却速度が8℃/秒であったため、濃化部平均間隔が1020μmとなった。そのため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが80Hvとなって、脆性割れ発生温度が−10℃と靭性に劣っていた。
Tiを含有する供試材No.32は、1/4深さ冷却速度が0.1℃/秒であったため、粗大TiN数密度が550個/mmとなった。そのため、脆性割れ発生温度が−10℃と靭性に劣っていた。
供試材No.33は熱間圧延完了温度が760℃であったため、鋼板の鋼組織においてフェライト生成が促進され、その結果、硬質相平均間隔が35μmとなった。そのため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが70Hvとなって、脆性割れ発生温度が−10℃と靭性に劣っていた。
供試材No.34は熱間圧延完了後巻取りまでの平均冷却速度が1℃/秒であったため、フェライト生成が促進され、硬質相平均間隔が32μmとなった。そのため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが70Hvとなって、脆性割れ発生温度が−10℃と靭性に劣っていた。
供試材No.35は巻取温度が760℃であったため、フェライト生成が促進され、硬質相平均間隔が32μmとなった。そのため、熱間プレス鋼板部材の硬度のばらつきが70Hvとなって、脆性割れ発生温度が−10℃と靭性に劣っていた。
供試材No.36は酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)の値が4800であったため、クラック数密度が2個/mmとなった。そのため、めっき剥離量が1000mgとスケール密着性に劣っていた。
供試材No.37は酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)の値が2002000であったため、クラック数密度が1020個/mmとなった。そのため、脆性割れ発生温度が−10℃と靭性に劣っていた。
供試材No.38は冷間圧延の圧下率が92%であったため、クラック数密度が2個/mmとなった。そのため、めっき剥離重量が1100mgとスケール密着性に劣っていた。
供試材No.39は溶融亜鉛めっき層の厚みが2μmであったため、傷部からの塗膜膨れ幅が4mm以上となり塗装後耐食性に劣っていた。
供試材No.40は溶融亜鉛めっき層の厚みが22μmであったため、めっき剥離量が1100mgとめっき密着性に劣っていた。
供試材No.41はSn含有量が0.0001%であったため、めっき剥離量が1000mgとめっき密着性に劣っていた。

Claims (13)

  1. 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板であって、
    前記鋼板は、
    質量%で、C:0.07%以上0.50%以下、Si:0.005%以上2.0%以下、Mn:0.3%以上4.0%以下、P:0.0002%以上0.2%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.0002%以上2.0%以下、N:0.010%以下およびSn:0.0002%以上0.01%以下、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、
    鋼板の表面から50μmの深さの位置における圧延方向に展伸したMn、SiおよびPの濃化部の圧延直角方向の平均間隔である濃化部平均間隔が1000μm以下であり、
    鋼板の表面における深さが3μm以上10μm以下のクラックの数密度が3個/mm以上1000個/mm以下であり、
    鋼板の表面から板厚の1/4深さの位置におけるセメンタイト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよびオーステナイトの最近接距離の平均値である硬質相平均間隔が30μm以下である鋼組織を有し、
    前記溶融亜鉛めっき層は、3μm以上20μm以下の厚みを有することを特徴とする熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記化学組成が、Bi:0.5質量%以下をさらに含有し、前記濃化部平均間隔が500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記化学組成が、Ti:0.5質量%以下をさらに含有し、前記硬質相平均間隔が20μm以内であり、粒径3μm以上のTiNの数密度が500個/mm以下である鋼組織を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、Nb:1.0%以下、V:1.0%以下、W:1.0%、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 前記化学組成が、質量%で、REM:0.1%以下、Mg:0.05%以下、Ca:0.05%以下およびZr:0.05%以下からなる群から選択される1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 鋼板の表面から板厚の1/4の深さの位置におけるMn、SiおよびPの合計含有量の最大値と最小値との比の値が1.30以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
  7. 前記溶融亜鉛めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層であり、前記合金化溶融亜鉛めっき層中のFe濃度が7質量%以上かつAl濃度が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板。
  8. 下記工程(A)〜()を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
    (A)溶鋼を、鋳片表面から10mmの深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度が10℃/秒以上となる条件で鋳造する鋳造工程;
    (B)前記鋳造工程により得られた鋳片を熱間圧延に供し、780℃以上の温度域で熱間圧延を完了し、2℃/秒以上の平均冷却速度で冷却して、750℃以下の温度域で巻取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
    (C)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に下記式(1)を満足する条件下で酸洗処理を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;および
    (D)前記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施して溶融亜鉛めっき鋼板とする溶融亜鉛めっき工程。
    5000≦酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)≦2000000 (1)
  9. 記工程(A)〜(D)および(G)を有することを特徴とする請求項に記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
    (A)溶鋼を、鋳片表面から10mmの深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度が10℃/秒以上となる条件で鋳造する鋳造工程;
    (B)前記鋳造工程により得られた鋳片を熱間圧延に供し、780℃以上の温度域で熱間圧延を完了し、2℃/秒以上の平均冷却速度で冷却して、750℃以下の温度域で巻取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
    (C)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に下記式(1)を満足する条件下で酸洗処理を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
    (D)前記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施して溶融亜鉛めっき鋼板とする溶融亜鉛めっき工程;および
    (G)前記溶融亜鉛めっき工程により得られた溶融亜鉛めっき鋼板に合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板とする合金化処理工程。
    5000≦酸濃度(質量%)×酸温度(℃)×酸浸漬時間(秒)≦2000000
    (1)
  10. 前記工程(D)に代えて、下記工程(E)および(F)を有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
    (E)前記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に90%以下の圧下率の冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
    (F)前記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施して溶融亜鉛めっき鋼板とする溶融亜鉛めっき工程。
  11. 前記工程(A)において、移動磁場による溶鋼の攪拌を施して鋳造することを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  12. 前記工程(A)において、鋳片表面から鋳片厚の1/4の深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度が0.2℃/秒以上となる条件で鋳造することを特徴とする請求項8〜請求項11のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  13. 前記工程(B)において、1200℃以上の温度域で8時間以上保持した鋳片を熱間圧延に供することを特徴とする請求項8〜請求項12のいずれかに記載の熱処理用溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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