JP2009228134A - ホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板及びホットスタンピング方法 - Google Patents

ホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板及びホットスタンピング方法 Download PDF

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重人 竹林
Masaharu Oka
正春 岡
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Abstract

【課題】高温でのプレス成形と金型との接触による焼入れを一工程で行うホットスタンピング後の、強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板、強度及び耐水素脆化特性に優れたホットスタンピング成形品を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.15〜0.55%、Al:0.010〜0.100%、Ti:0.001〜0.040%、B:0.0003〜0.0050%を含有し、MnとSiを0.05%≦(Mn+Si)≦0.40%を満足するように含有し、P:0.030%以下、S:0.020%以下に制限した鋼板。該鋼板を、Ac3変態点以上に加熱し、Ar3変態点未満に冷却することなくプレス成形し、そのまま金型との接触による焼入れを行うホットスタンピング方法。上記成分からなり、金属組織がマルテンサイトからなるホットスタンピング成形品。
【選択図】なし

Description

本発明は、高温でのプレス成形と金型との接触による急冷を利用し、成形加工と焼入れを同時に行い、高強度の成形品を得るホットスタンピング方法及びホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板、ホットスタンピング成形品に関するものである。
近年、自動車の軽量化を目的として、素材である鋼板の高強度化が進められている。しかし、鋼板を高強度化すると延性や加工性が低下し、適用し得る部材が制限される。そのため、成形性を向上させた高強度鋼板の開発や、成形性の劣る高強度鋼板の加工を可能にする成形方法の開発が進められている。
また、鋼板を熱間でプレス成形し、それとほぼ同時に金型を利用して急冷し、高強度鋼製部品を製造する技術が提案されており、ホットスタンピングと呼ばれている(例えば、特許文献1〜4)。しかし、このホットスタンピングによって製造された部品にピアス穴を開ける際、ピアス穴の端面に亀裂が入ることがある。これは、鋼板を加熱する際や、熱間でのプレス成形を行う際に、鋼板の内部に侵入した水素に起因する遅れ破壊である。
特に、ホットスタンピングでは、高温に加熱して鋼の組織をオーステナイトにするため水素が侵入し易く、急冷によって焼入れ、マルテンサイト変態させると遅れ破壊が生じ易い。そのため、ホットスタンピング後の強度と耐水素脆化特性の両立は非常に重要な問題である。
なお、非特許文献1及び2には、水素脆化に及ぼす鋼中の成分の影響が記載されている。例えば、非特許文献1には、MnとSiが、PやSと共存すると水素脆化を起こしやすくなること、(Mn+0.5Si+P+S)<0.2%にすれば、水素脆化を避けられることが記載されている。しかし、非特許文献1には、適切な水素量の評価がなされていないため、ホットスタンピング後の製品でも同様の結果になるか、定かではない。
また、非特許文献2には、Mnの含有量を減少させると、水素脆化が起きにくくなることが記載されている。しかし、Mnを減少させると、ホットスタンピング後の製品の強度の低下が懸念される。
特開2004−211197号公報 特開2003−82436号公報 特開2000−234153号公報 特開平10−96031号公報
N. BANDYOPADHYAY,JUN KAMEDA and C. J. McMAHON, Jr. "Hydrogen-Induced Cracking in 4340-Type Steel: Effects of Composition, Yield Strength, and H2 Pressure", Metallurgical TransactionA, (米国)、1983年5月、14A巻、p.881〜888 M. NAGUMO and H. MATSUDA, "Function of hydrogen in intergranular fracture of martensitic steels", Philosophical Magazine A, (英国)、 2002年、82巻、p.3415〜3425
本発明は、プレス成形と焼入れを一つの工程で行うホットスタンピングにおいて、ホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板、強度及び耐水素脆化特性に優れたホットスタンピング成形品及びホットスタンピング方法を提供することを目的とする。
本発明は、鋼板に含まれるSi量とMn量を制限することにより、ホットスタンピング後の耐水素脆化特性が向上すること、Si量とMn量の制限によって低下した強度を確保するためにはB及びTiの添加が有効であることを知見し、その知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.15〜0.55%、Ti:0.001〜0.040%、B:0.0003〜0.0050%を含有し、MnとSiを
0.05%≦(Mn+Si)≦0.40%
を満足するように含有し、Al:0.100%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とするホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
(2)鋼板が、更に、質量%で、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(1)に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
(3)鋼板が、更に、質量%で、Ni:2%以下、Cu:2%以下、Sn:2%以下の1種又は2種以上含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
(4)鋼板が、更に、質量%で、Nb:0.05〜1.0%、V:0.01〜3.0%の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
(5)鋼板が、更に、質量%で、Ca:0.0005〜0.05%、Mg:0.0005〜0.05%、REM:0.0005〜0.05%の1種又は2種以上含有することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
(6)質量%で、C:0.15〜0.55%、Ti:0.001〜0.040%、B:0.0003〜0.0050%を含有し、MnとSiを
0.05%≦(Mn+Si)≦0.40%
を満足するように含有し、Al:0.100%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、金属組織がマルテンサイトからなることを特徴とするホットスタンピング成形品。
(7)ホットスタンピング成形品が、更に、質量%で、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(6)に記載のホットスタンピング成形品。
(8)ホットスタンピング成形品が、更に、質量%で、Ni:2%以下、Cu:2%以下、Sn:2%以下の1種又は2種以上含有することを特徴とする上記(6)又は(7)に記載のホットスタンピング成形品。
(9)ホットスタンピング成形品が、更に、質量%で、Nb:0.05〜1.0%、V:0.01〜3.0%の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(6)〜(8)の何れか1項に記載のホットスタンピング成形品。
(10)ホットスタンピング成形品が、更に、質量%で、Ca:0.0005〜0.05%、Mg:0.0005〜0.05%、REM:0.0005〜0.05%の1種又は2種以上含有することを特徴とする上記(6)〜(9)の何れか1項に記載のホットスタンピング成形品。
(11)質量%で、C:0.15〜0.55%、Ti:0.001〜0.040%、B:0.0003〜0.0050%を含有し、MnとSiを
0.05%≦(Mn+Si)≦0.40%
を満足するように含有し、Al:0.100%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板を、Ac3変態点以上に加熱し、Ar3変態点未満に冷却することなくプレス成形し、そのまま金型との接触による焼入れを行うことを特徴とするホットスタンピング方法。
(12)鋼板が、更に、質量%で、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下の一方又は双方をすることを特徴とする上記(11)に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れたホットスタンピング方法。
(13)鋼板が、更に、質量%で、Ni:2%以下、Cu:2%以下、Sn:2%以下の1種又は2種以上含有することを特徴とする上記(11)又は(12)に記載のホットスタンピング方法。
(14)鋼板が、更に、質量%で、Nb:0.05〜1.0%、V:0.01〜3.0%の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(11)〜(13)の何れか1項に記載のホットスタンピング方法。
(15)鋼板が、更に、質量%で、Ca:0.0005〜0.05%、Mg:0.0005〜0.05%、REM:0.0005〜0.05%の1種又は2種以上含有することを特徴とする上記(11)〜(14)の何れか1項に記載のホットスタンピング方法。
鋼中のMnとSi含有量を低減させると、水素脆化を回避できる可能性はあるものの、ホットスタンピングによって成形された、高強度を有する鋼製部材に発生する遅れ破壊への対策として十分であるかどうか、明確ではない。また、Siは固溶強化元素であり、Mnは焼入れ性を高め、ホットスタンピング後の成形品の組織をマルテンサイトとするために必要な元素である。したがって、MnとSiを低減させると、十分な強度が得られなくなる可能性がある。
そこで、本発明者らは、まず、鋼板のMn及びSiの含有量と、ホットスタンピング後の成形品の水素脆化との関係に着目して検討を行った。その結果、(Mn+Si)≦0.40質量%とすれば、ホットスタンピング後の耐水素脆化特性の低下を抑制できることがわかった。
一方、(Mn+Si)を低下させると、十分な強度が得られないという問題が生じた。そこで、本発明者らは、鋼板のMn及びSiの含有量を制御し、更に、焼入れ性を高めるBの含有を検討した。その結果、(Mn+Si)≧0.05質量%とし、Bを添加するとともに、BNの生成を抑制するTiの添加を必須とすれば、必要とする十分な強度が確保できるという知見が得られた。
更に選択元素として、Cr、Moを添加すると、焼入れ性が高まり、金型の冷却能力に起因する成形品の部分的な強度の低下を防止することができる。また、Ni、Cu、Snの添加により耐食性を付与すると、耐水素脆化特性を安定化することができるという知見も得た。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の、ホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板は、特定の化学組成を有する熱延鋼板又は冷延鋼板である。冷延鋼板には亜鉛めっき、アルミめっき等の表面処理を施しても良い。また、本発明のホットスタンピング方法は、特定の化学組成を有する熱延鋼板又は冷延鋼板を、金属組織がオーステナイトとなる温度に加熱し、プレス成形と金型による急冷を一つの工程で行う成形方法である。
また、本発明のホットスタンピング成形品は、上述のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板を、上述のホットスタンピング方法で成形したものであり、金属組織がマルテンサイトからなり、極めて高い強度と優れた耐水素脆化特性とを有する。
まず、鋼板の化学成分について説明する。特に指定しない限り、%は質量%を意味する。
Si及びMnは、本発明において極めて重要な元素である。Siは固溶強化元素であり、Mnは焼入れ性を高める元素である。したがって、ホットスタンピング後の強度を確保するために、(Mn+Si)≧0.05%を満足することが必要である。一方、MnとSiを過剰に含有させると、耐水素脆化特性を損なう。したがって、(Mn+Si)≦0.40%を満足することが必要である。
Bも、本発明において極めて重要な元素である。本発明の鋼板は、SiとMnを低減させているため、高強度を得るために、微量で焼入れ性を大幅に向上させるBを0.0003%以上添加することが必要である。特に、ホットスタンピング後の成形品の引張強度を向上させるためには、Bを0.0005%以上添加することが好ましい。一方、0.0050%を超えるBを含有させても焼入れ性を向上させる効果は飽和し、成形品が脆化することもある。
Tiも、本発明において極めて重要な元素である。Tiは、不純物であるNと結合してTiNを生成させるために添加する。これにより、BNの生成を抑制して、焼入れ性の向上のために添加したBを有効に作用させることができる。この効果を得るためには、Tiを0.001%以上添加することが必要である。一方、0.040%超のTiを添加すると、炭化物を生成し、ホットスタンピング後の成形品の強度が低下したり、脆化することがある。
Cは、ホットスタンピング後の強度の確保に必要な元素である。特に、ホットスタンピング後の成形品の引張強度を1200MPa以上にするためには、0.15%以上の添加が必要である。一方、Cを過剰に含有すると、ホットスタンピング後の成形品が脆くなるため、上限を0.55%とした。
Alは、脱酸元素であり、0.100%を超えると非金属介在物が多くなり製品に表面疵が発生しやすくなる。また、AlにはNを固定する効果もあり、AlNを形成して、結晶粒径の微細化に寄与するため、0.010%以上を含有させることが好ましい。なお、鋼中のNを固定には、Alよりも高温で窒化物を生成するTiの添加が有効である。
Pは、溶接割れ性及び衝撃特性に悪影響を及ぼす不純物元素であるため、0.030%以下に制限する。好ましくは0.015%以下である。
Sも不純物元素であり、加工性の劣化、衝撃特性の劣化をもたらし、再熱割れ感受性の増大の原因となる。したがって、Sは、0.020%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
更に、Cr、Moの一方又は双方を添加しても良い。
Cr、Moは、焼入れ性を高め、M236型の炭化物を安定的に生成し、強度を上昇させる元素である。しかし、Cr、Moは、多量に添加するとめっき性が劣化することがあり、また、コストアップを招く。したがって、Cr及びMoの上限は、それぞれ、2.0%以下とすることが好ましい。
更に、Ni、Cu、Snの1種又は2種以上を添加しても良い。
Ni、Cu、Snは、鋼板表面付近の酸化物に影響を及ぼし、耐食性を向上させる元素である。しかし、Ni、Cu、Snを、それぞれ、2%を超えて添加すると加工性が劣化することがある。したがって、Ni、Cu、Snの上限は、それぞれ、2%以下にすることが好ましい。なお、衝撃特性及び耐水素脆化特性を向上させるためには、Ni、Cu、Snを、それぞれ、0.005%以上添加することが好ましい。
更に、Nb、Vの一方又は双方を添加しても良い。
Nb、Vは、炭窒化物を形成する元素であり、強度向上に寄与する。また、Nb、Vの炭化物は、鋼中に侵入した水素をトラップし、耐水素脆化特性を向上させる。これらの効果を得るためには、Nbは0.05%以上、Vは0.01%以上を添加することが好ましい。一方、Nbは1.0%を超えると、Vは3.0%を超えると、靭性がやや劣化し、耐水素脆化特性を損なうことがある。そのため、Nb添加量の上限は1.0%以下、V添加量の上限は、3.0%以下とすることが好ましい。なお、耐水素脆化特性を更に向上させるためには、NbとVの両者を複合添加することが好ましい。
更に、Ca、Mg、REMの1種又は2種以上を添加しても良い。
Ca、Mg、REMは、硫化物を形成し、MnSなどの介在物の形態を制御するために添加してもよい。衝撃特性や耐水素脆化特性を向上させるためには、Ca、Mg、REMの1種又は2種以上を、それぞれ、0.0005%以上添加することが好ましい。また、Ca、Mg、REMを過剰に添加すると、加工性を損なうことがあるため、それぞれ、上限を0.05%以下とすることが好ましい。なお、REMとは、Rare Earth Metalの略であり、周期律表においてLaから始まるランタノイド系元素の総称である。
本発明の鋼板の製造条件については特に規定しないが、以下に好ましい製造条件について説明する。常法によって溶製、鋳造して得られた鋼片を、再加熱するか、鋳造後、そのまま熱間圧延を施す。鋼片の再加熱温度は、1000〜1300℃が好ましい。また、熱間圧延の圧延終了温度はAr3変態点以上とすることが好ましい。熱間圧延後は、冷却し、550℃以上で巻取ることが好ましい。
更に、酸洗、冷間圧延を施しても良く、めっきを施しても良い。なお、これらの工程は、常法で良く、めっきは、溶融アルミめっき、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっきの何れでも良い。
次に、本発明のホットスタンピング方法について説明する。
成形及び急冷により、金属組織をマルテンサイト変態させるためには、プレス成形時の金属組織をオーステナイトにすることが必要である。したがって、鋼板の加熱温度をAc3変態点以上とする。Ac3[℃]は、C、Mn、Si、P、Al、Tiの含有量[質量%]から、次式(式1)によって求めることができる。加熱方法は、加熱炉、誘導加熱、通電加熱などの何れでも良い。なお、鋼板を均一に加熱するには、加熱炉を使用することが好ましい。
Ac3=910−203C1/2−30Mn+44.7Si+700P+400(Al+Ti) ・・・(式1)
また、プレス成形を行う際に、Ar3変態点より低い温度に冷却されるとフェライト変態が開始するため、ホットスタンピング成形品の金属組織の一部がマルテンサイトにならず、強度が低下する。したがって、Ar3変態点未満に冷却することなくプレス成形することが必要である。Ar3[℃]は、C、Mn、Si、P、Alの含有量[質量%]から、次式(式2)によって求めることができる。
Ar3=901−325C−92Mn+33Si+287P+40Al ・・・(式2)
プレス成形の際には、金型と接触するので、プレス成形後、そのまま金型による抜熱を利用し、焼入れを施す。また、通常、プレス成形では、鋼板よりも熱容量が十分に大きい金型を使用するため、冷却速度は80℃/s以上となる。更に、冷却速度を高めるには、水などの冷却剤を用いても良い。この場合、金型の内部に冷却剤を循環させても良く、金型から冷却剤を噴出させても良い。
本発明の鋼板及び方法によって得られた本発明のホットスタンピング成形品は、金属組織がマルテンサイトからなり、高強度が得られる。また、上述のように素材である鋼板のMnとSiを低減させているため、耐水素脆化特性にも優れる。
表1に示す成分組成を有する鋼を溶製し、鋳造して鋼片とした。表1のAc3[℃]及びAr3[℃]は、C、Mn、Si、P、Al、Tiの含有量[質量%]から、次式(式1)及び(式2)によって求めた。また、表1には(Mn+Si)の計算値も示した。
Ac3=910−203C1/2−30Mn+44.7Si+700P+400(Al+Ti) ・・・(式1)
Ar3=901−325C−92Mn+33Si+287P+40Al ・・・(式2)
これらの鋼片を1050〜1250℃に再加熱後、熱間圧延し、更に、酸洗及び冷間圧延を施し、板厚1.2mmの鋼板とした。その後、一部の鋼板には、めっき処理を施した。めっき処理は、溶融アルミめっきの場合は、目付け量120g/m2、溶融亜鉛めっきの場合は、目付け量90g/m2とした。表1にめっきの有無及び種類を示した。
これらの鋼板から、幅が240mm、長さが500mmの試験片を採取した。試験片を、加熱炉にて950℃で5分間保持した。表1のいずれの実施例も、加熱温度がAc3変態点以上であった。抽出後、直ちに曲げ及び曲げ戻し加工するプレス成形を行い、金型で急冷した。加熱炉から抽出された鋼板の温度を放射温度計によって測定し、プレス成形開始前の温度が850℃以上であることを確認した。表1のいずれの実施例も、プレス成形開始前温度がAr3変態点温度以上であった。このプレス成形品から、引張試験、遅れ破壊試験の試験片を採取し、評価を行った。なお、プレス成形品は、底部が70mm、高さが60mmのハット形状である。
引張試験は、JIS Z 2201の5号試験片をプレス成形品の底部から採取し、JIS Z 2241に準拠して行った。
耐水素脆化特性は、以下のようにして評価した。プレス成形品の底部から、80mm×30mmの短冊状の小片をシャー切断で採取し、試験片の両端にボルトを通すための穴を設けた。その後、短冊状の試験片に、曲げ半径を10mmとし、U曲げ加工を施した。次に、曲げ部の外周に耐水性のひずみゲージを貼付した。その後、試験片の両端の穴にボルトを通し、ナットで締め付けながら、曲げ部に歪を加えた。
ひずみゲージで測定した歪量に、一般的な鋼のヤング率である205800MPaを掛けて負荷応力を算出し、負荷応力が590MPaになるように歪量を調整した。その後、試料を0.5mol/lの硫酸中に漬け、電流密度40mA/cm2として電解チャージを行った。電解チャージの時間は最大120分とし、電解チャージ中の割れ発生の有無を評価した。割れの発生は、曲げ部に貼付した歪ゲージで、電解チャージ中のひずみの変化を測定し、急激なひずみの変化の検出によって判定した。
結果を表1に示す。強度1200MPa以上を良好とした。表1の耐水素脆化特性は、電解チャージ中に割れが発生したものを×、発生しなかったものを○として示した。本発明の鋼板を用いて、本発明のホットスタンピング方法によって得られた成形品(A1〜A11)は、金属組織がマルテンサイトからなり、強度及び耐水素脆化特性が良好である。符号A1〜A3において、Si含有量:0.05〜0.20%、Mn含有量:0.20〜0.35%の範囲で、Si+Mnを0.40%とし、かつBとTiを本発明範囲内で含有すれば、良好な強度と耐水素脆化特性が得られることが明らかである。
一方、(Mn+Si)が本発明の上限を外れるB1及びB3は、成形品の電解チャージ中に割れを生じる。また、(Mn+Si)が本発明の下限を外れるB2、及びTiを含有しないB4は、成形品の強度が低下している。
Figure 2009228134
表2に示す成分組成を有する鋼を溶製し、鋳造して鋼片とした。なお、表2には、それぞれのベース鋼の符号も併せて示した。ベース鋼とは、表2の「その他」成分を含まず、その他成分以外の成分が表2に示す成分とほぼ等しい鋼であって、表1に記載された鋼を意味する。表2のAc3[℃]及びAr3[℃]は、C、Mn、Si、P、Al、Tiの含有量[質量%]から、次式(式1)及び(式2)によって求めた。また、表2には(Mn+Si)の計算値も示した。
Ac3=910−203C1/2−30Mn+44.7Si+700P+400(Al+Ti) ・・・(式1)
Ar3=901−325C−92Mn+33Si+287P+40Al ・・・(式2)
これらの鋼片を1050〜1250℃に再加熱後、熱間圧延し、更に、酸洗及び冷間圧延を施し、板厚1.2mmの鋼板とした。これらの各鋼板及びベース鋼の鋼板から、30枚ずつ試料を採取し、ホットスタンピング成形を行った。なお、ホットスタンピング成形によるハット形状のプレス成形品の製造、試験片の採取、引張強度及び耐水素脆化特性の評価は、実施例1と同様にして行った。各鋼板及びベース鋼の引張強度目標値を表2に示す。
表2に示す引張強度目標値を満足し、耐水素脆化特性も良好であるサンプル数を30で除し、歩留まりを求めた。結果を表2に示す。これらの歩留まりを各鋼板のベース鋼と比較すると、表2に示すように、いずれもベース鋼より高い歩留まりを示すことがわかった。また、このホットスタンピングの前後で金型に劣化が無いことを確認した。このように、選択的にCr、Mo、Ni、Cu、Sn、Nb、V、Ca、Mg、REMを含有する本発明の鋼によれば、ベース鋼よりも高い歩留まりで、ホットスタンピング成形品を安定して製造することができる。
Figure 2009228134

Claims (15)

  1. 質量%で、
    C:0.15〜0.55%、
    Ti:0.001〜0.040%、
    B:0.0003〜0.0050%
    を含有し、MnとSiを
    0.05%≦(Mn+Si)≦0.40%
    を満足するように含有し、
    Al:0.100%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.020%以下
    に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とするホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
  2. 鋼板が、更に、質量%で、
    Cr:2.0%以下、
    Mo:2.0%以下
    の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項1に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
  3. 鋼板が、更に、質量%で、
    Ni:2%以下、
    Cu:2%以下、
    Sn:2%以下
    の1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
  4. 鋼板が、更に、質量%で、
    Nb:0.05〜1.0%、
    V:0.01〜3.0%
    の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
  5. 鋼板が、更に、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.05%、
    Mg:0.0005〜0.05%、
    REM:0.0005〜0.05%
    の1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れた鋼板。
  6. 質量%で、
    C:0.15〜0.55%、
    Ti:0.001〜0.040%、
    B:0.0003〜0.0050%
    を含有し、MnとSiを
    0.05%≦(Mn+Si)≦0.40%
    を満足するように含有し、
    Al:0.100%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.020%以下
    に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、金属組織がマルテンサイトからなることを特徴とするホットスタンピング成形品。
  7. ホットスタンピング成形品が、更に、質量%で、
    Cr:2.0%以下、
    Mo:2.0%以下
    の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項6に記載のホットスタンピング成形品。
  8. ホットスタンピング成形品が、更に、質量%で、
    Ni:2%以下、
    Cu:2%以下、
    Sn:2%以下
    の1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項6又は7に記載のホットスタンピング成形品。
  9. ホットスタンピング成形品が、更に、質量%で、
    Nb:0.05〜1.0%、
    V:0.01〜3.0%
    の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載のホットスタンピング成形品。
  10. ホットスタンピング成形品が、更に、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.05%、
    Mg:0.0005〜0.05%、
    REM:0.0005〜0.05%
    の1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載のホットスタンピング成形品。
  11. 質量%で、
    C:0.15〜0.55%、
    Ti:0.001〜0.040%、
    B:0.0003〜0.0050%
    を含有し、MnとSiを
    0.05%≦(Mn+Si)≦0.40%
    を満足するように含有し、
    Al:0.100%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.020%以下
    に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板を、Ac3変態点以上に加熱し、Ar3変態点未満に冷却することなくプレス成形し、そのまま金型との接触による焼入れを行うことを特徴とするホットスタンピング方法。
  12. 鋼板が、更に、質量%で、
    Cr:2.0%以下、
    Mo:2.0%以下
    の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項11に記載のホットスタンピング後の強度及び耐水素脆化特性に優れたホットスタンピング方法。
  13. 鋼板が、更に、質量%で、
    Ni:2%以下、
    Cu:2%以下、
    Sn:2%以下
    の1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項11又は12に記載のホットスタンピング方法。
  14. 鋼板が、更に、質量%で、
    Nb:0.05〜1.0%、
    V:0.01〜3.0%
    の一方又は双方を含有することを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載のホットスタンピング方法。
  15. 鋼板が、更に、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.05%、
    Mg:0.0005〜0.05%、
    REM:0.0005〜0.05%
    の1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項11〜14の何れか1項に記載のホットスタンピング方法。
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